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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01C
管理番号 1211910
審判番号 不服2007-19402  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-14 
確定日 2010-03-01 
事件の表示 平成 9年特許願第370506号「容積形流体モータ式ユニバーサルフューエルコンバインドサイクル発電装置。」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 6日出願公開、特開平11-182202〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成9年12月24日の出願であって、平成11年3月3日付けで提出された手続補正書により明細書の特許請求の範囲の記載が補正され、平成18年11月13日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し平成19年1月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され明細書(全文)及び図面(全図)が補正されたが、平成19年4月27日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、平成19年6月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明について
本件出願に係る発明は、平成19年1月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
容積形流体モータは、ロータ枠の1方に吸入口を設け反対側に排出口を設け、ロータ枠の中に凸部を3片凹部を3個所設け、凸部は曲面でそして凹部も曲面をもつロータを2個収容し、1方のロータの凸面と他方のロータの凹面は接っしながら各各逆回転で等角回転し、各各のロータに直結した回転軸をロータ側枠外へ出して各各同等のギヤを設けて噛み合わせ、以降の(当審注:「以降の」は「以上の」の誤記と解される。)容積形流体モータの組み合わせは他の容積形流体モータの組み合わせに引用出来、圧縮機を容積式にし、複数個直列に組み合わせ、直列とは、前の圧縮機の排出口と後の圧縮機の吸入口を連結する事であり、圧縮機を順次空気を圧縮する見掛上の容積をしだいに少なくし、見掛上とは、空気の圧縮を考えずに見た目の事であり、各各の圧縮機に直結する回転軸を1軸に連結させ、気圧の高くなった空気をボイラー室に送り、前記ボイラー室に燃料も入れて燃焼させ、膨張した燃焼ガスを流体モータに送り、前記流体モータは、容積式とし、複数個直列に組み合わせ、直列とは、前の流体モータの排出口と後の流体モータの吸入口を連結する事であり、各各の流体モータに直結する回転軸を1軸に連結させ、そして前記各各の流体モータに係わる1軸と、前記各各の圧縮機に係わる1軸を連結させ、そして発電機にも連結させ、最後の流体モータを通過した燃焼ガスを蒸気発生室に送り、液体を気化させて気体をタービンに送り、タービンを回わし、そして発電機を連結させて発電し、各各の段階毎に燃焼ガスが、流体モータを通過する見掛上の燃焼ガスの容積をしだいに多くする事を特徴とし、容積形流体モータ式ユニバーサルフューエルコンバインドサイクル発電装置。」

3.引用刊行物
(1)刊行物1に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-173715号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次のことが記載されている。

a)「【0002】【従来の技術】一般的なガスタービン設備の例を、発電機Gを駆動するガスタービン設備の模式的系統図の図3を参照しながら説明すると、1段タービン1_(1) と2段タービン1_(2)とからなるタービン1と、1段コンプレッサ2_(1)と2段コンプレッサ2_(2)とからなるコンプレッサ2とが同一軸心を通る出力軸3を介して連結される一方、コンプレッサ2の反タービン1側に突出する回転軸4はギヤトレーン5gを有する減速機5に連結されると共に、この減速機5の反コンプレッサ2側の軸はカップリングCを介して発電機Gに連結されている。また、1段コンプレッサ2_(1 )の空気出口と2段コンプレッサ2_(2)の空気流入口との間には、大気中へ空気を放出する抽気弁7vを有する空気通路7が介装される一方、2段コンプレッサ2_(2)の空気出口と燃焼器9との間には、大気中へ空気を放出する抽気弁8vが設けられている。」(段落【0002】)

b)「【0003】なお、減速機5のギヤトレーン5gにクラッチ5cを介して連結されてなるものは、空気供給タンク14から始動用空気の供給を受けて駆動される始動用エアモータ6であり、また1段タービン1_(1)の燃焼ガス出口と2段タービン2_(2)(当審注、「2_(2)」は「1_(2)」の誤記と解される。)の燃焼ガス入口との間に介装されてなるものは燃焼ガス通路10であり、さらに2段ガスタービン2_(2)(当審注、「2_(2)」は「1_(2)」の誤記と解される。)の燃焼ガス出口には、タービンロータ(図示省略)を回転させるという仕事をした後の燃焼排ガスを大気中に排出する排気ディフューザ11が設けられている。」(段落【0003】)

c)また、刊行物1には図3等に概略的な記載しかないが、1段コンプレッサ2_(1)及び2段コンプレッサ2_(2)とからなるコンプレッサ2のように多段化されたコンプレッサを使用する場合、各段のコンプレッサによる圧縮の結果順次圧力が上昇するものであるから、その結果、各段のコンプレッサの見掛け上の容積は順次小さいものとなることは熱力学上当然のことである。同様に、1段タービン1_(1)及び2段タービン1_(2)とからなるタービン1のように多段化されたタービン1を使用する場合、各段のタービン内を通過する燃焼ガスの圧力は順次低下し、燃焼ガスの圧力が低下するにつれて燃焼ガスの体積は増大するものであるから、その結果、各段のタービンの見掛け上の容積も順次大きなものとなることも熱力学上当然のことである。

d)以上のこと、及び図3等の記載からみて、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。

「コンプレッサ2を1段コンプレッサ2_(1)及び2段コンプレッサ2_(2)と2段直列に組み合わせ、1段コンプレッサ2_(1)の空気出口と2段コンプレッサ2_(2)の空気流入口を連結し、コンプレッサ2を順次空気を圧縮する見掛け上の容積をしだいに少なくし、1段コンプレッサ2_(1)及び2段コンプレッサ2_(2)に直結する出力軸3を1軸に連結させ、気圧の高くなった空気を燃焼器9に送り、前記燃焼器9に燃料も入れて燃焼させ、燃焼ガスをタービン1に送り、前記タービン1は、1段タービン1_(1)と2段タービン1_(2)とを2段直列に組み合わせ、1段タービン1_(1)の燃焼ガス出口と2段タービン2_(2)の燃焼ガス入口とを連結し、1段タービン1_(1)と2段タービン1_(2)とに直結する出力軸3を1軸に連結させ、そして、各々のタービンに係わる1軸と、各々のコンプレッサに係わる1軸とを連結させ、そして発電機Gにも連結させて発電し、各各の段階毎に燃焼ガスが、流体モータを通過する見掛け上の燃焼ガスの容積をしだいに大きくする、ガスタービン設備。」(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)

(2)刊行物2に記載された発明
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-26327号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次のことが記載されている。

a)「(1)スクリュー式の空気圧縮機と回転膨脹機とを直結し、前記空気圧縮機からの高圧空気を脈動減衰手段と減圧手段を介して燃焼室に、また燃料供給管からの燃料を燃焼室に、夫々導入して燃焼させるようにし、燃焼ガスを前記回転膨脹機において膨脹させて動力を発生させるようにしたことを特徴とする動力発生装置。」(公報第1頁左下欄第5乃至11行)

b)「本発明は、スクリュー式の空気圧縮機と直結する回転膨脹機に燃焼ガスを導入して膨脹仕事を遂行する動力発生装置に関する。」(公報右下欄第10乃至12行)

c)「また、スタート時の燃焼効率を良くするために、容積型の空気圧縮機を使用するように改良した第3図の例について考えてみると、容積型の例えばスクリュー式の空気圧縮機2から吐出された脈動空気は、吐出管6を経て燃焼室3に流入して燃料供給管9からの燃料と混合して燃焼するが、前記脈動に合せて点火栓19によりタイミングよく着火しなければならないため、構造が複雑となり、またコスト高になるという欠点が存在する。」(公報第2頁左上欄第3乃至11行)

d)「第1図は本発明の第1の実施例である。
スクリュー式の空気圧縮機2を軸11によってスクリュー式又はタービン式の膨脹機1と直結するとともに、前記膨脹機1を軸12によって発電機10に連結する。空気圧縮機2と燃焼室3の間に、圧力タンク15と減圧弁17が順次設けられる。19は点火栓である。
空気圧縮機2から吐出された脈動ある圧縮空気は、吐出管6を経て一旦圧力タンク15に貯溜されて一定圧力となり、次いで噴射管13を流れ、減圧弁17を介して、一定圧で連続的に燃焼室3中ヘフラッシュされる。燃焼室3における燃料の燃焼は、点火栓19により正常的に行われ、脈動的でない。
燃焼ガスは均一で連続的な流動ガスとなってガス管7を経て膨脹機1に流入するので、膨脹機1の回転にもむらがない。なお、点火栓19は必要に応じ常時着火している点火バーナとすることもできる。」(公報第2頁右上欄第19行乃至左下欄第16行)

e)以上のこと並びに第3図及び第1図等の記載からみて、刊行物2には次の発明が記載されているといえる。

「容積型のスクリュー式の空気圧縮機2により気圧の高くなった空気を燃焼室3に送り、前記燃焼室3に燃料も入れて燃焼させ、膨脹した燃焼ガスを容積型のスクリュー式の膨脹機1に送り、膨脹機1に係わる軸12と空気圧縮機2に係わる軸11とを連結させ、そして発電機10にも連結させた、動力発生装置。」(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)

(3)刊行物3に記載された発明
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-246812号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次のことが記載されている。

a)「【0023】図1は、本発明の発電システムの一実施例を示す。本システムは、ごみ焼却炉1と蒸気発生器2と蒸気タービン3aと発電機4a及び復水器5aから構成されるごみ焼却排熱発電設備と,空気圧縮機7と燃焼器8とガスタービン9及び発電機4cから構成されるガスタービ発電設備と,吸収冷凍機6a及び冷水貯槽12から構成される冷熱製造設備と,ガスタービンの排熱を回収する排熱回収ボイラ10と,空気圧縮機7へ導入する空気を冷却する吸気冷却器11と,蒸気タービン3bと,発電機4bと復水器5bとから構成されている。」(段落【0023】)

b)「【0030】ガスタービン発電設備の空気圧縮機7に導入される空気3000は、吸気冷却器11において前記した系統200から送られてきた冷水により冷却されたのち系統300から空気圧縮機7へ導入されて高圧となり、燃焼器8へ導入されると共に燃料2000の燃焼に伴い、高温のガスとなってガスタービン9へ導入される。ガスタービン9を駆動し発電機4cを回転させたガスは系統301から排熱回収ボイラ10へ導入され、系統402から供給される熱媒体(一般に水が用いられているので、以降当該熱媒体を単に水と称する)を加熱して過熱蒸気を発生させた後、降温して系統302から系外へ排出される。」(段落【0030】)

c)「【0033】排熱回収ボイラ10で発生した過熱蒸気は、系統400から蒸気タービン3bへ導入され発電機4bを駆動した後、系統401から復水器5bに導入され、系統601を流れる冷却水により冷却されて復水され系統402によって再び排熱回収ボイラ10へ導入(給水加熱器,ポンプ,脱気器等々のボイラ給水系統に係る一般的諸設備は省略している)される。」(段落【0033】)

d)以上のこと及び図1等の記載からみて、刊行物3には次の発明が記載されていると認められる。

「ガスタービン9を駆動し、発電機4cを回転させたガスを排熱回収ボイラ10に送り、水を気化させて過熱蒸気を蒸気タービン3bに送り、タービン3bを回わし、そして発電機4bを連結させて発電する、排熱回収ボイラ付ガスタービン発電設備。」(以下、「刊行物3に記載された発明」という。)

4.本願発明と刊行物1に記載された発明との対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の備える「コンプレッサ2」、「1段コンプレッサ2_(1)の空気出口」、「2段コンプレッサ2_(2)の空気流入口」、「燃焼器9」、「タービン1」、「1段タービン11の燃焼ガス出口」及び「2段タービンの燃焼ガス入口」は、それぞれ、本願発明の備える「圧縮機」、「前の圧縮機の排出口」、「後の圧縮機の吸入口」、「ボイラー室」、「流体モータ」、「前の流体モータの排出口」及び「後の流体モータの吸入口」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明の備える「出力軸3」は、「1段コンプレッサ2_(1)及び2段コンプレッサ2_(2)に直結」して「1軸に連結させ」、「1段タービン1_(1)と2段タービン1_(2)とに直結」して「1軸に連結させ」、かつ「各々のタービンに係わる1軸と、各々のコンプレッサに係わる1軸とを連結させ」るものであるから、本願発明の備える「各各の圧縮機に直結する回転軸を1軸に連結させ」、「各各の流体モータに直結する回転軸を1軸に連結させ」及び「前記各各の流体モータに係わる1軸と、前記各各の圧縮機に係わる1軸を連結させ」た、各々の「回転軸」に相当する。
次に、刊行物1に記載された発明の備える「ガスタービン設備」は、「流体機械式発電装置」である限りにおいて、本願発明の「容積形流体モータ式ユニバーサルフューエルコンバインドサイクル発電装置」と共通するものである。
さらに、刊行物1に記載された発明の備える「1段コンプレッサ2_(1)と2段コンプレッサ2_(2)とを2段直列に組み合わせ、1段コンプレッサ2_(1)の空気出口と2段コンプレッサ2_(2)の空気流入口を連結」した点、及び「1段タービン1_(1)と2段タービン1_(2)とを2段直列に組み合わせ、1段タービン1_(1)の燃焼ガス出口と2段タービン1_(2)の燃焼ガス入り口とを連結」した点は、それぞれ、本願発明の備える「圧縮機は、‥ ‥ 複数個直列に組み合わせ、直列とは、前の圧縮機の排出口と後の圧縮機の吸入口を連結する事であり」なる点、及び「流体モータは、‥ ‥ 、複数個直列に組み合わせ、直列とは、前の流体モータの排出口と後の流体モータの吸入口を連結する事であり」なる点に相当するものである。
加えて、刊行物1に記載された発明の備える「コンプレッサを順次空気を圧縮する見掛け上の容積をしだいに少なく」してなる点、及び「各々の段階毎に燃焼ガスが、タービンを通過する見掛け上の燃焼ガスの容積を次第に大きくする事」なる点は、本願発明の備える「圧縮機を順次空気を圧縮する見掛上の容積をしだいに少なくし、見掛け上とは、空気の圧縮を考えずに見た目の事」なる点、及び「各各の段階毎に燃焼ガスが、流体モータを通過する見掛上の燃焼ガスの容積をしだいに多くする事」に相当する。
なお、本願発明では「膨張した燃焼ガスを流体モータに送り」とされているのに対し、刊行物1に記載された発明において、「1段タービン1_(1)」に送られる「燃焼ガス」が膨張したものであるか明らかではないが、当該「膨張した」なる点は、タービン装置等における燃焼後のガスの属性をいうにすぎず、実質的な相違ではない。

したがって、両者は、
「圧縮機を複数個直列に組み合わせ、直列とは、前の圧縮機の排出口と後の圧縮機の吸入口を連結する事であり、圧縮機を順次空気を圧縮する見掛上の容積をしだいに少なくし、見掛上とは、空気の圧縮を考えずに見た目の事であり、各各の圧縮機に直結する回転軸を1軸に連結させ、気圧の高くなった空気をボイラー室に送り、前記ボイラー室に燃料も入れて燃焼させ、膨張した燃焼ガスを流体モータに送り、前記流体モータを複数個直列に組み合わせ、直列とは、前の流体モータの排出口と後の流体モータの吸入口を連結する事であり、各各の流体モータに直結する回転軸を1軸に連結させ、そして前記各各の流体モータに係わる1軸と、前記各各の圧縮機に係わる1軸を連結させ、そして発電機にも連結させて発電し、各各の段階毎に燃焼ガスが、流体モータを通過する見掛上の燃焼ガスの容積をしだいに多くする、流体モータ式発電装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(1)相違点1
本願発明は、「容積形流体モータ」を備えるものであり、かつ「容積形流体モータは、ロータ枠の1方に吸入口を設け反対側に排出口を設け、ロータ枠の中に凸部を3片凹部を3個所設け、凸部は曲面でそして凹部も曲面をもつロータを2個収容し、1方のロータの凸面と他方のロータの凹面は接っしながら各各逆回転で等角回転し、各各のロータに直結した回転軸をロータ側枠外へ出して各各同等のギヤを設けて噛み合わせ」るもので、かつ「以降の容積形流体モータの組み合わせは他の容積形流体モータの組み合わせに引用出来」るものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、「ガスタービン」を備えるものであり、本願発明のような容積形流体モータであるかどうか明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2
本願発明は、圧縮機が「容積式」のものであるのに対し、刊行物1に記載された発明の備える「コンプレッサ」は、容積式であるかどうか明らかではない点(以下、「相違点2」という。)。

(3)相違点3
本願発明は、「最後の流体モータを通過した燃焼ガスを蒸気発生室に送り、液体を気化させて気体をタービンに送り、タービンを回わし、そして発電機を連結させて発電」するものであるのに対し、刊行物1に記載された発明において、「2段ガスタービン2_(2)」を通過した「燃焼ガス」がその後どのような役割を果たすものか明らかではない点(以下、「相違点3」という。)。

5.当審の判断
以下、相違点1乃至3について検討する。

(1)相違点1について
ケース(ローター枠)の1方に吸入口を設け反対側に排出口を設け、ケース(ロータ枠)の中に突部を3葉(片)、凹部を3個所設け、凸部は曲面でそして凹部も曲面をもつロータを2個収容し、1方のロータの凸面と他方のロータの凹面とを接しながら各々逆回転で等角回転し、各々のロータに直結した回転軸をロータ側板外へ出して各々同等のギヤを設けて噛み合わせ」たような容積形流体機械は、俗に3葉ルーツ型流体機械と称されるが、原査定の理由においても指摘されているとおり、例えば特開昭59-203894号公報(公報第2ページ右下欄第15乃至第3ページ左下欄第4行、第1図乃至第4図等)、実願昭53-51575号(実開昭54-154413号)のマイクロフィルム、米国特許第3724427号明細書(第7欄第22乃至34行)に記載されているように本願出願前において周知のもの(以下、「周知技術」という。)であり、しかも、刊行物2に記載された発明に示されるとおり、容積形流体機械を膨張機すなわち流体モータとして使用することも本願出願前において知られたことであるから、刊行物1に記載された発明の備えるタービンの各々の段について刊行物2に記載された発明の示唆の下、容積形流体機械として周知の3葉ルーツ型流体機械を採用し、3葉ルーツ型流体機械のようなものを他の流体型モータとしても流用する等なし、上記相違点に係る本願発明のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲でなし得る程度のことにすぎない(なお、3葉ルーツ型を含め容積形機械を流体モータとして使用し、順次大容積となるものを多段に一軸に連結した状態で使用することも、原査定の理由において指摘されているとおり、例えば特開昭50-102711号公報、米国特許第3724427号明細書、特表平6-505330号公報又は仏国特許発明第2054758号明細書に記載されているように、本願出願前に周知である。)。

(2)相違点2について
刊行物2に記載された発明は、圧縮機と膨張機とを用いて動力を得る機械において、圧縮機として「容積式」のものを使用することを示唆するものであり、当該示唆に従い、刊行物1に記載された発明の備えるコンプレッサの各々の段について容積形機械を採用し、上記相違点2に係る本願発明のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲でなし得る程度のことにすぎない(なお、3葉ルーツ型を含め容積形機械を圧縮機として使用し、順次容積の小さなものを使用し多段に一軸に連結した状態で使用することも、原査定の理由において指摘されているとおり、例えば特開昭50-102711号公報、米国特許第3724427号明細書、特表平6-505330号公報又は仏国特許発明第2054758号明細書に記載されているように、本願出願前に周知である。)。

(3)相違点3について
刊行物3に記載された発明は、ガスタービン発電機等の発電システムにおいて、発電に使用した後の燃焼ガスをさらに発電用のタービンに送り、タービンを回し発電するようにする、従前コンバインドサイクル発電といわれるような発電装置であり、刊行物1に記載された発明のガスタービンに、当該刊行物3に記載された発明を採用し、上記相違点3に係る本願発明のようにすることは、当業者にとりごく普通に想到する程度のことにすぎない。

また、本願発明を全体としてみても、上記刊行物1乃至3に記載された発明及び周知技術から予測される以上の効果が生じたものとも認められない。

(4)請求人の主張について
なお、請求人は、原査定の理由において容積形流体機械として例示された特開昭59-203894号公報に記載されたものについて、容積形ではないと主張するが、当該公報には「特許請求の範囲第1項の発明は ‥ ‥ 移動容積式気体用複軸流体機械に関する。」(公報第2ページ右下欄第15乃至20行)、及び「気体入口圧力P_(1),気体出口圧力P_(2),気体中間口圧力P_(3),移動空間71の容積をV_(11)とする。 ‥
‥ ‥ さらに回転が進み移動空間71の主たる連絡先が気体出口52になると出口気体が移動空間71に流入し入り口気体の容積はV_(12),中間気体の容積はV_(22)になり残りの線分IJ相当分が出口気体の流入容積である。」(公報第3頁右上欄第8乃至20行)等の記載からみて、当該公報に記載されたものが容積形の機械(ポンプ又はモータ)であることは明らかである。

また、請求人は、審判請求書の請求の理由及び平成19年1月14日付けで提出した意見書において、本願発明は「容積形流体モータ(y)」を使用するものである点について特徴を有する旨主張するが、当該「容積形流体モータ(y)」の構造およびその出力に関する請求人の主張は、上記意見書においてあらたに主張されたことであり、当該主張の内容については、本願の出願時における願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されておらず、また当初明細書等の記載から自明でもなかったことである。したがって、上記の請求人の主張は当初明細書等に根拠のないものであるから、本願発明の特許性の判断において考慮することはできない(明細書を補正する場合には、当初明細書等に記載された事項の範囲でしなければならない、と法律に規定されている(特許法第17条の2第3項)ように、当初明細書等に記載されていた範囲にない内容を明細書に加えることは許されないし、当然、そのような内容に基づいて本願発明の特許性を主張することはできない。)。
(さらに補足すると、各モータの出力に関しては、上に例示した特表平6-505330号公報に記載されているような熱力学プロセスに基づいて算出するのが通常であるところ、請求人が上記請求の理由又は意見書等に記載した計算は、技術的にみてその根拠が不明である。)。

第5 むすび
したがって、本願発明は、上記刊行物1乃至3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、上記結論の通り審決する。
 
審理終結日 2009-06-02 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-22 
出願番号 特願平9-370506
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 大紀  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 大谷 謙仁
金澤 俊郎
発明の名称 容積形流体モータ式ユニバーサルフューエルコンバインドサイクル発電装置。  

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