ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1211927 |
審判番号 | 不服2006-24559 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-30 |
確定日 | 2010-02-10 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 58852号「固体カラーイメージ素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年1月28日出願公開,特開2000-31446〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成11年3月5日(パリ条約による優先権主張1998年3月5日,大韓民国)の出願であって,平成17年7月12日付けで拒絶理由が通知され,平成17年10月19日に意見書及び手続補正書が提出され,平成18年1月24日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成18年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成18年7月20日付けで,平成18年4月28日に提出の手続補正書による補正が却下されると同時に拒絶査定がされ,これに対し,平成18年10月30日に審判が請求されるとともに,平成18年11月29日に手続補正書が提出されたものである。 なお,上記拒絶査定の内容は,本願は,平成18年1月24日付けの拒絶理由通知書に記載した理由(本願の請求項1?19に係る発明は,刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,拒絶を受けることができない。)により,拒絶をすべきものとするものである。 第2 平成18年11月29日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の却下について [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を補正する補正内容を含むところ,本件補正の前後の請求項1の記載は,次のとおりである(下線は補正か所を示す。)。 〈本件補正前〉(平成17年10月19日に提出された補正書による) 【請求項1】 「要素部分及び伝送部分を有する半導体基板と, 前記要素部分は,入射光に反応して変化キャリアを発生させる半導体基板内に形成された複数の光反応要素を含み,前記伝送部分は,光反応要素から発生されたキャリアを伝送するチャンネル領域の半導体基板上に形成されたゲート電極層を含み, 前記各光反応要素に入射される光を集める上面が凸型の集光レンズ及び前記集光レンズと集光レンズとの間に入射される光を前記各光反応要素に分散させるように前記集光レンズと集光レンズとの間の領域で上面が下に凹むように形成される光分散層を含むレンズ層と, 前記レンズ層によって集まった光がカラーフィルタリングされて各光反応要素に入射させる光透過層とを含むことを特徴とする固体カラーイメージ素子。」 〈本件補正後〉 【請求項1】 「要素部分及び伝送部分を有する半導体基板と, 前記要素部分は,入射光に反応して変化キャリアを発生させる半導体基板内に形成された複数の光反応要素を含み,前記伝送部分は,光反応要素から発生されたキャリアを伝送するチャンネル領域の半導体基板上に形成されたゲート電極層を含み, 前記各光反応要素に入射される光を集める上面が凸型の集光レンズ及び前記集光レンズと集光レンズとの間に入射される光を前記各光反応要素に分散させるように前記集光レンズと集光レンズとの間の領域で不均一な厚さで上面が下に凹むように形成される光分散層を含むレンズ層と, 前記レンズ層によって集まった光がカラーフィルタリングされて各光反応要素に入射させる光透過層とを含むことを特徴とする固体カラーイメージ素子。」 2 補正目的の適否 請求項1に係る本件補正の内容は,補正前の,「集光レンズと集光レンズとの間の領域で上面が下に凹むように形成される光分散層」について,「光分散層」が,集光レンズ間の領域で「不均一な厚さ」で「上面が下に凹むように形成される」ものである点を限定するものであり,形式的には,補正前の請求項1を限定的に減縮する補正といえる。また,集光レンズ間の領域で「不均一な厚さ」で「上面が下に凹むように」形成する目的は,入射される光を光反応要素に分散させることにあることが,容易に理解でき,これは補正前の請求項1に係る発明の目的の範囲内のものということができる。そうすると,請求項1に係る本件補正の内容は,実質的にみても,補正前の請求項1の内容を限定的に減縮するものといえる。 したがって,請求項1に係る本件補正は,特許請求の範囲を限定的に減縮するもの(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの)であるから,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで,以下,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものといえるかどうか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定を満たすかどうか)を,請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。 3 本願補正発明の独立特許要件(容易想到性)について (1)本件補正後の請求項1の記載を再掲すると,次のとおりである。 【請求項1】 「要素部分及び伝送部分を有する半導体基板と, 前記要素部分は,入射光に反応して変化キャリアを発生させる半導体基板内に形成された複数の光反応要素を含み,前記伝送部分は,光反応要素から発生されたキャリアを伝送するチャンネル領域の半導体基板上に形成されたゲート電極層を含み, 前記各光反応要素に入射される光を集める上面が凸型の集光レンズ及び前記集光レンズと集光レンズとの間に入射される光を前記各光反応要素に分散させるように前記集光レンズと集光レンズとの間の領域で不均一な厚さで上面が下に凹むように形成される光分散層を含むレンズ層と, 前記レンズ層によって集まった光がカラーフィルタリングされて各光反応要素に入射させる光透過層とを含むことを特徴とする固体カラーイメージ素子。」 (2)引用例の記載と引用発明 (2-1)原審の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平5-48057号公報(以下「引用例」という。)には,図1とともに,次の記載がある(下線は当審で付加したもの。)。 ア 発明の背景及び課題 ・「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,固体撮像装置に関し,特に,受光部上にマイクロ集光レンズを形成した固体撮像装置に関する。 【0002】【従来の技術】固体撮像装置,例えばCCD固体撮像装置は,そのCCDにおける信号電荷及び雑音と像面照度との関係をみた場合,低照度側において,信号電荷のゆらぎによる雑音(ショット雑音)と暗時雑音の影響が大きくなるということが知られている。 【0003】上記ショット雑音を減らすには,受光部の開口率を大きくすれば良いが,最近の微細化傾向に伴い,上記開口率の増大化には限界がある。そこで,現在,受光部上にマイクロ集光レンズを形成した構造が提案されている。このマイクロ集光レンズを形成した構造の場合,光の利用率が上がり,受光部における感度の向上を図ることができ,上記ショット雑音の低減化に有効となる・・・」 ・「【0004】従来のCCD固体撮像装置は,図2に示すように,シリコン基板11の表面に,イメージエリアを構成する多数の受光部12が形成され,これら受光部12を含む全面に平坦化膜13が形成され,更に,該平坦化膜13上に,例えば赤,緑及び青のカラーフィルタ14R,14Gおよび14Bが夫々対応する受光部12上に形成され,そして,このカラーフィルタ14R,14Gおよび14B上において,各受光部12に対応した位置にマイクロ集光レンズ15が形成されて構成されている。尚,図において,16は転送電極及び遮光膜の形成による段差を模式的に示すものである。 【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来の固体撮像装置においては,受光部12上に1層のマイクロ集光レンズ15を形成して構成しているため,そのマイクロ集光レンズ15の形成上,どうしてもマイクロ集光レンズ15間にギャップgができてしまうという問題があった。即ち,マイクロ集光レンズ15間にギャップgが形成されると,このギャップgの部分に入射した光Lgは,集光されずにそのままカラーフィルタ(図示の例では14R)を通って,遮光膜が存する段差16に入射することになり,受光部12へは到達しない。 【0006】このように,従来の固体撮像装置においては,ギャップg以外のレンズ面に入射する光Lのみしか受光部12に入射させることができず,イメージエリア全体に入射する光を有効利用することができない。従って,マイクロ集光レンズ15を形成したことによる感度の向上には,限界があるという不都合があった。」 ・「【0008】本発明は,このような課題に鑑み成されたもので,その目的とするところは,マイクロ集光レンズ間のギャップをなくすことができ,イメージエリア全体に入射する光を有効利用することができる固体撮像装置を提供することにある。」 イ 課題解決手段及び実施例 ・「【0009】【課題を解決するための手段】本発明は,受光部2上に集光レンズが形成された固体撮像装置において,集光レンズを,夫々屈折率の異なる第1及び第2の集光レンズ5及び7にて構成し,第2の集光レンズ7で第1の集光レンズ5のギャップgを埋めるように形成して構成する。 【0010】この場合,上記第1及び第2の集光レンズ5及び7の各屈折率を夫々n_(1)及びn_(2)としたとき,n_(1)>n_(2)>1の関係にする。 【0011】【作用】上述の本発明の構成によれば,受光部2上に形成される集光レンズを,夫々屈折率の異なる第1及び第2の集光レンズ5及び7にて構成し,第2の集光レンズ7で第1の集光レンズ5のギャップgを埋めるように形成するようにしたので,下層に形成される第1の集光レンズ5間のギャップgを上層に形成される第2の集光レンズ7で埋めるかたちとなり,集光レンズ間のギャップレス化を実現させることができる。その結果,イメージエリア全体に入射する光を有効利用することができ,感度の向上を効率よく図ることができる。」 ・「【0013】【実施例】以下,図1を参照しながら本発明の実施例を説明する。図1は,本実施例に係る固体撮像装置の要部を示す構成図である。 【0014】この固体撮像装置は,図示するように,シリコン基板1の表面に,イメージエリアを構成する多数の受光部2が形成され,これら受光部2を含む全面に平坦化膜3が形成され,更に,該平坦化膜3上に,例えば赤,緑及び青のカラーフィルタ4R,4G及び4Bが夫々対応する受光部2上に形成され,そして,このカラーフィルタ4R,4G及び4B上において,各受光部2に対応した位置に第1のマイクロ集光レンズ5が形成されて構成されている。ここまでの構成は,図2に示す従来例の構成と同じである。尚,図において,6は転送電極及び遮光膜の形成による段差を模式的に示すものである。 【0015】しかして,本例においては,第1のマイクロ集光レンズ5上に,第2のマイクロ集光レンズ7を形成して構成する。この第2のマイクロ集光レンズ7は,第1のマイクロ集光レンズ5の屈折率n_(1)よりも低い屈折率n_(2)を有する材料を約5000ÅほどコーティングまたはECRプラズマCVD法により低温にて形成する。このとき,第1のマイクロ集光レンズ5間に形成されたギャップgを埋めるように第2のマイクロ集光レンズ7が形成される。 【0016】また,第1のマイクロ集光レンズ5の材料としては,例えばポリイミド等,屈折率n_(1)が1.7?1.8のものを使用することができる。また,第2のマイクロ集光レンズ7の材料は,その形成方法によって異なり,コーティングによって形成する場合の材料としては,例えばi線レジスト又はg線レジスト及びフッ素系樹脂など,屈折率n_(2)が1.4?1.6のものを用いることができる。一方,ECRプラズマCVD法により低温にて形成する場合の材料としては,例えばプラズマSiO_(2)膜など,屈折率n_(2)が1.4?1.5のものを用いることができる。」 ・「【0021】上述のように,本例によれば,受光部2上に形成されるマイクロ集光レンズを,夫々屈折率の異なる第1及び第2のマイクロ集光レンズ5及び7にて構成し,第2のマイクロ集光レンズ7で第1のマイクロ集光レンズ5のギャップgを埋めるように形成するようにしたので,下層に形成される第1のマイクロ集光レンズ5間のギャップgを上層に形成される第2のマイクロ集光レンズ7で埋めるかたちとなり,マイクロ集光レンズ間のギャップレス化を実現させることができる。その結果,イメージエリア全体に入射する光を有効利用することができ,感度の向上を効率よく図ることができる。 【0022】特に,第1及び第2のマイクロ集光レンズ5及び7の各屈折率を夫々n_(1)及びn_(2)としたとき,n_(1)>n_(2)>1の関係にすることにより,第1のマイクロ集光レンズ5間のギャップg部分に入射する光Lgを受光部2側へ有効に集光させることができ,更に感度の向上を図ることができる。」 ウ 発明の効果 ・「【0024】【発明の効果】本発明に係る固体撮像装置によれば,マイクロ集光レンズ間のギャップをなくして,イメージエリア全体に入射する光を有効利用することができ,感度の大幅なる向上を図ることができる。」 エ 図1から,第1のマイクロ集光レンズ5は,上面が凸型となっていることが明らかである。 オ 固体撮像装置の「受光部2」は,入射光に反応してキャリアを発生させるものであることが明らかである。 (2-2)引用発明 上記ア?オによれば,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「シリコン基板1と, 当該基板に形成された,入射光に反応してキャリアを発生させる複数の受光部2と,受光部2から発生されたキャリアを転送するための転送電極(段差6として示されている)とを含み, 受光部2に入射される光を集める上面が凸型の第1のマイクロ集光レンズ5(隣接する集光レンズ5はギャップgの間隔がある。)と,第1のマイクロ集光レンズ5を覆い,ギャップgを埋めるように形成された第2のマイクロ集光レンズ7とからなるレンズ層とを有し, このレンズ層により集まった光をカラーフィルタ4R,4G,4Bによりフィルタして受光部2に入射させるようにしたCCD固体撮像装置。」 ここで,第1及び第2の集光レンズ5及び7の各屈折率をそれぞれn_(1)及びn_(2)としたとき,n_(1)>n_(2)>1の関係になっている。 (3)対比 ア 本願補正発明と引用発明を対比すると, 引用発明の「CCD固体撮像装置」は,本願補正発明の「固体カラーイメージ素子」に対応する。 また,引用発明の複数の受光部2から構成される部分は,本願補正発明の「要素部分」に相当し,引用発明の転送電極を含む段差6の部分は,本願補正発明の「伝送部分」に相当し,引用発明の「第2のマイクロ集光レンズ7」は,本願補正発明の「光分散層」に相当する。 さらに,引用発明においても,第1のマイクロ集光レンズの屈折率n_(1)と第2のマイクロ集光レンズの屈折率n_(2)の関係を,n_(1)>n_(2)>1とすることにより,入射光を二段階に屈折させて入射光を受光部に分散させていることが明らかである。 そして,図1の表示や,第2のマイクロ集光レンズ7で光が受光部に向けて屈折する必要から,第2のマイクロ集光レンズ7は,少なくとも上面が下に凹むように形成されていることが明らかである。 イ そうすると,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりとなる。 (一致点) 「要素部分及び伝送部分を有する半導体基板と, 前記要素部分は,入射光に反応して変化キャリアを発生させる半導体基板内に形成された複数の光反応要素を含み, 前記各光反応要素に入射される光を集める上面が凸型の集光レンズ及び前記集光レンズと集光レンズとの間に入射される光を前記各光反応要素に分散させるように前記集光レンズと集光レンズとの間の領域で上面が下に凹むように形成される光分散層を含むレンズ層と, 前記レンズ層によって集まった光がカラーフィルタリングされて各光反応要素に入射させる光透過層とを含むことを特徴とする固体カラーイメージ素子。」 (相違点) (ア)相違点1 本願補正発明では,「伝送部分」は,「光反応要素から発生されたキャリアを伝送するチャンネル領域の半導体基板上に形成されたゲート電極層を含」むのに対し,引用発明では,この点の明示がない点。 (イ)相違点2 本願補正発明では,「光分散層」は,集光レンズと集光レンズとの間の領域で不均一な厚さで上面が下に凹むように形成されるのに対し,引用発明においては,このように不均一な厚さに形成されたものを包含するか否か明らかでない点。 (4)相違点についての検討 ア 相違点1について 引用例には,「伝送部分」について,「・・・図において,6は転送電極及び遮光膜の形成による段差を模式的に示すものである。」(段落【0014】)と記載されているだけであるが,この種のCCD固体撮像素子において,「伝送部分」が「光反応要素から発生されたキャリアを伝送するチャンネル領域の半導体基板上に形成されたゲート電極層を含」むことは技術常識である。引用発明は,この点に発明の要旨があるわけではないので,記載を省いたものと理解できる。 そうすると,引用発明が相違点1に係る構成を含むことは,当業者に自明である。 イ 相違点2について 引用例の段落【0015】では,第2のマイクロ集光レンズ7をプラズマCVD法で形成する例が説明されており,対応する図1では,第2のマイクロ集光レンズ7の厚さは一様のように示されている。 しかし,段落【0016】では,「・・・また,第2のマイクロ集光レンズ7の材料は,その形成方法によって異なり,コーティングによって形成する場合の材料としては,例えばi線レジスト又はg線レジスト及びフッ素系樹脂など,屈折率n_(2)が1.4?1.6のものを用いることができる。」と記載され,流動性の材料を用いてもよいとされている。そして,流動性の材料を用いて第2のマイクロ集光レンズ7を形成した場合は,通常,第1のマイクロ集光レンズ5間の領域で不均一な厚さで上面が下に凹むように形成されると考えるのが自然である。実際,特開平5-145813号公報には,本願補正発明の材料と同じSOG(スピンオングラス)でマイクロレンズを被覆した場合に,被覆が不均一な厚さになることが示されている(同公報【図2】及び段落【0012】の記載。)。 更に言えば,引用例において,第2マイクロ集光レンズ7の厚さが均一でなければならないという記載はない。 そうすると,引用発明は,第2マイクロ集光レンズ7が不均一な厚さで形成される場合を包含するものといえる。少なくとも,第2マイクロ集光レンズ7が必ずしも均一な厚さで形成される必要のないことは,引用例に接した当業者が容易に理解することである。 ウ したがって,相違点1及び2に係る構成は,当業者に自明な事項ないし当業者が容易に理解する事項であるから,本願補正発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 結び 上記3で検討したとおり,本願補正発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,本願の出願時(優先日)に独立して特許を受けることができたものということはできない。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下すべきものである。 第3 本願発明の容易想到性 1 前記第2のとおり,本件補正(平成18年11月29日に提出された手続補正書による補正)は却下されたので,本願発明(補正前の請求項1の発明)は,平成17年10月19日に提出された補正書による特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものとなる(再掲)。 【請求項1】 「要素部分及び伝送部分を有する半導体基板と, 前記要素部分は,入射光に反応して変化キャリアを発生させる半導体基板内に形成された複数の光反応要素を含み,前記伝送部分は,光反応要素から発生されたキャリアを伝送するチャンネル領域の半導体基板上に形成されたゲート電極層を含み, 前記各光反応要素に入射される光を集める上面が凸型の集光レンズ及び前記集光レンズと集光レンズとの間に入射される光を前記各光反応要素に分散させるように前記集光レンズと集光レンズとの間の領域で上面が下に凹むように形成される光分散層を含むレンズ層と, 前記レンズ層によって集まった光がカラーフィルタリングされて各光反応要素に入射させる光透過層とを含むことを特徴とする固体カラーイメージ素子。」 2 引用例の記載と引用発明 引用例の記載と引用発明は,前記第2,3(2)で認定したとおりである。 3 対比・判断 前記第2,2で検討したように,本願補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)は,補正前の請求項1に,「不均一な厚さで」との限定を付したものである。逆に言えば,本願発明(本件補正前の請求項1に係る発明)は,本願補正発明からこのような限定をなくしたものである。 そうすると,本願発明の構成要素をすべて含み,これをより具体的に限定したものである本件補正発明が,前記第2,3で検討したとおり,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 第4 結言 以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-02 |
結審通知日 | 2009-09-08 |
審決日 | 2009-09-25 |
出願番号 | 特願平11-58852 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 恩田 春香 |
特許庁審判長 |
相田 義明 |
特許庁審判官 |
安田 雅彦 廣瀬 文雄 |
発明の名称 | 固体カラーイメージ素子及びその製造方法 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 渡邊 隆 |