• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1212041
審判番号 不服2007-25937  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-20 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2001-396817「カプセル玩具、カード、シールの自動販売方法、及びそのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月11日出願公開、特開2003-196493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯

本願は、平成13年12月27日の特許出願であって、平成19年 5月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年 7月30日付けで手続補正書が提出されたが、同年 8月16日付けで拒絶査定され、これに対して同年 9月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月22日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成19年10月22日付けでした手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成19年10月22日付けでした手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容

平成19年10月22日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成19年 7月30日付けでした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下、「本願補正前発明」という。)において、

(a)「カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機からの商品の購入手順と商品の決定、さらには購入者の購入決定された商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定を画面上で実施するコンテンツ」を、「自動販売機コンテンツは、当該受信端末を用いて動作するカプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツは、前記カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツから商品種別の選択を受ける工程と、当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける工程と、当該選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける工程と、前記受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受けて前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる工程と、前記商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する工程と、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報を前記システム提供者側のサーバへ送信する工程とを有し」とし、

(b)「システム提供者側のサーバにおいて、購入者が選択した商品を当該消費者へ配送処理するとともに、代金決済を行なう」を、「前記システム提供者側のサーバは、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う工程と、前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する工程とを有する」としたもの

に相当する。

(2)補正の目的

上記(a)については、平成19年 5月25日付けの拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項である「各処理の動作主体」が明りょうでない点について、各工程の動作の主体が上記受信端末又は購入者のいずれかであることを釈明すると共に、本願補正前発明が備える構成である「商品の購入手順」、「商品の決定」及び「商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定」の各工程を、本願補正発明が備える構成である「前記カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツから商品種別の選択を受ける工程と、当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける工程」と「前記受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受けて」と「前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる工程」とからなる購入手順の工程、「前記自動販売機の商品を無作為に決定し」からなる商品の決定工程及び「当該選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける工程」と「前記商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する工程と、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報を前記システム提供者側のサーバへ送信する工程」とからなる商品の代金支払と配送方法を選択し決定する工程にそれぞれ限定したものと認められる。

また、上記(b)については、本願補正前発明が備える構成である「配送処理するとともに、代金決済を行なう」工程を、本願補正発明が備える構成である「前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う工程と、前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する工程」に限定したものと認められる。

そして、これら特許請求の範囲を限定する補正によっても、本願補正前発明と本願補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるものと認められるから、平成19年10月22日付けの手続補正でした請求項1に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明及び同法同条同項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)独立特許要件

本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから、上記本願補正発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(3-1)本願補正発明

本願補正発明を、平成19年10月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に基づき、次のとおりに認定する。

「 システム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末へ配信され、当該受信端末を用いて動作するカプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツは、
前記カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機から選択された商品種別の選択を受ける工程と、
当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける工程と、
当該選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける工程と、
前記受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受けて前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる工程と、
前記商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する工程と、
前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報を前記システム提供者側のサーバへ送信する工程とを有し
前記システム提供者側のサーバは、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う工程と、
前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する工程とを有することを特徴とするカプセル玩具、カード、シールの自動販売方法。」

なお、上記した特許請求の範囲の請求項1には「前記カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツから商品種別の選択を受ける工程」なる記載が認められるが、本願明細書の記載(段落【0017】等)を参酌すれば、これは「前記カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機から選択された商品種別の選択を受ける工程」の誤記であるものと認められるから、本願補正発明を上記のとおり認定した。

(3-2)特許法第29条第1項柱書きについて

(3-2-1)本願補正発明の分説

まず、本願補正発明を、便宜上分説すると、以下のようになる。

「(ア)システム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末へ配信され、当該受信端末を用いて動作するカプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツは、

(イ)前記カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機から選択された商品種別の選択を受ける工程と、

(ウ)当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける工程と、

(エ)当該選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける工程と、

(オ)前記受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受けて前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる工程と、

(カ)前記商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する工程と、

(キ)前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報を前記システム提供者側のサーバへ送信する工程とを有し

(ク)前記システム提供者側のサーバは、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う工程と、

(ケ)前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する工程と

を有することを特徴とする

(コ)カプセル玩具、カード、シールの自動販売方法。」

(3-2-2)特許法第2条の発明該当性についての判断

本願補正発明は、「カプセル玩具、カード、シールの自動販売方法」であって、コンピュータである「受信端末」が、ソフトウェアである上記「自動販売機コンテンツ」によって動作することにより、上記(イ)乃至(キ)の各工程を行うと共に、コンピュータである「サーバ」が、上記(ク)及び上記(ケ)の各工程を行う方法の発明であるから、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところのいわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。そして、こうしたコンピュータ・ソフトウェア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、上記ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることを要件とする。

そして、本願発明のソフトウェアによる情報処理は、上記(イ)乃至(ケ)の各工程を含むものである。

そこで、本願発明が特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かについて、以下上記(イ)乃至(ケ)の各工程にしたがって検討する。

(上記(イ)について)

上記(イ)の「自動販売機から選択された商品種別の選択を受ける」は、単に入力される選択内容を特定するに留まり、具体的な情報処理が記載されているとは認められない。

(上記(ウ)について)

上記(ウ)の「当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける」は、単に入力される選択内容を特定するに留まり、具体的な情報処理が記載されているとは認められない。

(上記(エ)について)

上記(エ)の「当該選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける」は、単に入力される選択内容を特定するに留まり、具体的な情報処理が記載されているとは認められない。

(上記(オ)について)

上記(オ)の「前記受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受け前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる」は、単に、入力される指示内容を特定するにすぎないので、上記(オ)の記載は、当該指示内容に基づいて行われるコンピュータの機能を「前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる」ことに特定するに留まり、コンピュータのハードウェア資源をどのように動作させて「前記受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受け前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が記載されているとは認められない。

(上記(カ)について)

上記(カ)の「前記商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する」は、単に入力される指示内容を特定するにすぎないので、上記(カ)の記載は、当該指示内容に基づいて行われるコンピュータの機能を「購入商品合計金額を算出する」ことに特定するに留まり、コンピュータのハードウェア資源をどのように動作させて「前記商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が記載されているとは認められない。

(上記(キ)について)

上記(キ)の「前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報を前記システム提供者側のサーバへ送信する」は、「システム提供者側のサーバ」とのハードウェア資源の記載があるものの、「システム提供者側のサーバ」に関する記載は、単に情報の送信先を当該「システム提供者側のサーバ」に特定するにすぎないので、上記(キ)の記載は、コンピュータの機能を当該情報を送信することに特定するに留まり、コンピュータのハードウェア資源をどのように用いて「前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報を前記システム提供者側のサーバへ送信する」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が記載されているとは認められない。

(上記(ク)について)

上記(ク)の「前記システム提供者側のサーバは、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う」は、「システム提供者側のサーバ」とのハードウェア資源の記載があるものの、「システム提供者側のサーバ」に関する記載は、単に動作の主体を特定するにすぎないので、上記「ク」の記載は、単に「システム提供者側のサーバ」が「課金と決済を行う」ことを特定するに留まり、コンピュータのハードウェア資源をどのように動作させて「課金と決済を行う」のかは記載されていないため、どのようなハードウェア資源を用いて、当該「課金と決済を行う」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が記載されているとは認められない。

(上記(ケ)について)

上記(ケ)の「前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する」には、コンピュータのハードウェア資源を用いてどのように情報処理して「指示する」のかは具体的に記載されていないため、上記(ケ)の記載は、単に「システム供給者側のサーバ」の処理を「前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する」ことに特定するに留まり、どのようなハードウェア資源を用いて当該「指示する」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が.記載されているとは認められない。

以上の検討によれば、上記(イ)乃至(ケ)の各工程をソフトウェアによる情報処理として含む本願補正発明は、全体として、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえないから、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。

(3-2-3)特許法第29条第1項柱書きについての結論

よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていないものである。

(3-3)特許法第29条第2項について

仮に、上記「(3-2)特許法第29条第1項柱書きについて」の項で示した理由がなく、本願補正発明は、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであったとし、その前提に立って、特許法第29条第2項の理由について、以下検討する。

(3-3-1)引用文献の記載事項並びに引用文献に記載の発明及び周知技術

(引用文献1の記載事項)

原査定の拒絶の理由に引用された『カプセル入りおもちゃ自販機、「ガチャガチャ」大人も熱狂,日本経済新聞,日本,日本経済新聞社,2001年10月2日,夕刊16頁 [online][平成19年5月24日検索]、インターネット http://db.g-search.or.jp/』(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審において付したものである。

(1a)『 おもちゃ入りのプラスチック製カプセル自動販売機、通称「ガチャガチャ」を愛好する大人が増えている。

・・・(中略)・・・

最近のブームを支えているのは二十-三十歳代の男性。「仮面ライダー」「ウルトラマン」といった往年のテレビヒーローのフィギュアが人気で、最大手のバンダイでは購入者の二割が成人男性という。

・・・中略・・・

ウルトラマンに登場する怪獣のフィギュアなどはこれまでにもあったが、中国など海外で生産することで製造コストが下がり、より精巧なものを同じ価格で提供できるようになった。最近は腕時計などが入った三百円の高額機種も登場。愛好家が手持ちのフィギュアを交換・売買するためのホームページも開設されている。』

したがって、上記した全ての摘記事項を参酌すると、引用文献1には、以下の構成が記載されているといえる。

(ア)上記摘記事項(1a)の「・・・(中略)・・・愛好家が手持ちのフィギュアを交換・売買するためのホームページも開設されている。」によれば、引用文献1には、当該「手持ち」の「フィギュア」を販売する側の「愛好家」は、当該「ホームページ」を利用して、当該「フィギュア」を販売するものと解することができる。

そして、上記摘記事項(1a)の『おもちゃ入りのプラスチック製カプセル自動販売機、通称「ガチャガチャ」を愛好する大人が増えている。・・・(中略)・・・最近のブームを支えているのは二十-三十歳代の男性。「仮面ライダー」「ウルトラマン」といった往年のテレビヒーローのフィギュアが人気・・・(中略)・・・という。』によれば、上記「フィギュア」は、当該「プラスチック製カプセル」に入っていたものと解することができる。

したがって、引用文献1には、「プラスチック製カプセルに入っていた手持ちのフィギュアを販売する側のホームページを利用して、当該フィギュアを販売する」ことが記載されているといえる。

(引用文献1発明)

よって、上記(ア)を考慮して、上記摘記事項(1a)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。

「 プラスチック製カプセルに入っていた手持ちのフィギュアを販売する側のホームページを利用して、当該フィギュアを販売する方法。」

(引用文献2の記載事項)

原査定の拒絶の理由に引用された『インターネット版「ガチャロボ」が登場,読売新聞,日本,読売新聞社,1997年9月17日,7頁 [online][平成19年5月24日検索]、インターネット http://db.g-search.or.jp/』(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審において付したものである。

(2a)『 コインを入れるとカプセル入りのミニおもちゃが出てくる駄菓子屋さんでおなじみの通称ガチャポンのインターネット版「ガチャロボ」が登場した。出てくるのは25種類のミニゲームで、設置場所はアクセス数の多いサーチエンジンなどの12サイトと商品を提供するスポンサーのサイト。』

(イ)上記摘記事項(2a)によれば、カプセル玩具等の自動販売機である当該「ガチャポン」を模倣したインタフェースを備えたコンテンツである当該「ミニゲーム」が、サーバである当該「サイト」から、通信ネットワークである当該「インターネット」を介して提供されるものと解することができる。

したがって、引用文献2には、「サーバから通信ネットワークを介して提供されたカプセル玩具等の自動販売機を模倣したインタフェースを備えたコンテンツ」が記載されているといえる。

(引用文献2に記載された周知技術)

上記(イ)を考慮して、上記摘記事項(2a)の記載を総合すると、引用文献2には、次の周知技術が記載されているといえる。

「 サーバから通信ネットワークを介して提供されたカプセル玩具等の自動販売機を模倣したインタフェースを備えたコンテンツ。」

(引用文献3の記載事項)

原査定の拒絶の理由に引用された「博報堂、ネット広告で新方式--まずゲーム提供、終了後動画CM,日経産業新聞,日本,日本経済新聞社,1997年8月4日,3頁 [online][平成19年5月24日検索]、インターネット http://db.g-search.or.jp/」(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審において付したものである。

(3a)「 博報堂はインターネット上で展開する新しい形のサイバー広告を開発した。人気の高い複数のホームページに、子供向けがん具販売機の”ガチャポン”をイメージした画像を配置し、クリックするとゲームを楽しめるウインドーが開く。」

(ウ)上記摘記事項(3a)によれば、カプセル玩具等の自動販売機である当該「子供向けがん具販売機」を模倣した当該「画像」や当該「クリック」等の仕組みからなるインタフェースを備えたコンテンツである当該「ゲーム」が、当該「ホームページ」のサーバから、通信ネットワークである当該「インターネット」を介して提供されるものと解することができる。

したがって、引用文献2には、「サーバから通信ネットワークを介して提供されたカプセル玩具等の自動販売機を模倣したインタフェースを備えたコンテンツ」が記載されているといえる。

(引用文献3に記載された周知技術)

上記(ウ)を考慮して、上記摘記事項(2a)の記載を総合すると、引用文献2には、次の周知技術が記載されているといえる。

「 サーバから通信ネットワークを介して提供されたカプセル玩具等の自動販売機を模倣したインタフェースを備えたコンテンツ。」

(3-3-2)本願補正発明と引用文献1発明との対比

本願補正発明と引用文献1発明を対比する。

本願補正発明の「システム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末へ配信され、当該受信端末を用いて動作するカプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツは、前記カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機から選択された商品種別の選択を受ける工程と、当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける工程と、当該選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける工程と、前記受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受けて前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる工程と、前記商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する工程と、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報を前記システム提供者側のサーバへ送信する工程とを有し前記システム提供者側のサーバは、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う工程と、前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する工程とを有することを特徴とするカプセル玩具、カード、シールの自動販売方法」と引用文献1発明の「プラスチック製カプセルに入っていた手持ちのフィギュアを販売する側のホームページを利用して、当該フィギュアを販売する方法」とは後記の点で相違するものの、引用文献1発明の「販売する側のホームページ」が、通信ネットワークを介して商品購入者の受信端末に配信されるコンテンツとして、販売する側が用意したサーバに保存され、商品購入者側の端末での閲覧に供されることは通常のことであるから、両者は、「システム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末へ配信されるコンテンツを利用した、カプセルに入っていた玩具の販売方法」である点で共通する。

したがって、両者は、

(一致点)

「システム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末へ配信されるコンテンツを利用した、カプセルに入っていた玩具の販売方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)

本願補正発明では、コンテンツが、受信端末を用いて動作するカプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツであり、そのため、
当該コンテンツは、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機から選択された商品種別の選択を受ける工程と、当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける工程と、受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受けて前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる工程を備えるカプセル玩具、カード、シールの自動販売方法であるのに対し、

引用文献1発明では、コンテンツが、玩具を販売するためのコンテンツであるものの、それが受信端末を用いてどのような動作をさせるコンテンツであるのか不明であり、そのため、
当該コンテンツは、上記各工程を備えていない玩具の販売方法である点。

(相違点2)

販売方法に係る一連の処理として、

本願補正発明では、商品購入者側の受信端末において、コンテンツにより、選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける工程と、商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する工程と、決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報をシステム提供者側のサーバへ送信する工程が実施されると共に、前記システム提供者側のサーバが、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う工程と、前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する工程を有するのに対し、

引用文献1発明では、商品購入者側の受信端末において、コンテンツにより、どのような工程が実施されるのか不明であり、また、システム提供者側のサーバがどのような工程を備えているのかも不明である点。

(3-3-3)相違点についての判断

(相違点1について)

玩具、カード或いはシールを販売するに当たり、それぞれのカプセルおもちゃを販売する複数の自動販売機を設置することは慣用技術である。

また、引用文献2及び引用文献3の記載にみられるように、「サーバから通信ネットワークを介して提供されたカプセル玩具等の自動販売機を模倣したインタフェースを備えたコンテンツ」は周知技術である。

してみると、引用文献1発明のコンテンツを利用した、カプセルに入っていた玩具の販売方法において、その販売対象について上記慣用技術を適用すると共に、そのインタフェースの具体化手段として上記周知技術を適用することにより、当該コンテンツを、受信端末を用いて動作するカプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツとすることは、当業者であれば適宜になし得るものである。

そして、引用文献1発明において、当該コンテンツを、受信端末を用いて動作するカプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機コンテンツとするのであれば、当該コンテンツは、カプセル玩具、カード、シールの自動販売機から選択された商品種別の選択を受ける工程と、当該選択した商品種別から自動販売機種別の選択を受ける工程と、受信端末の画面に表示する自動販売機の排出ハンドルを指定方向に回す指示または自動販売機の商品の排出指示を受けるに従って前記自動販売機の商品購入の注文を受けて前記自動販売機の商品を無作為に決定し、前記受信端末の画面に表示する自動販売機から商品を排出させる工程を備える自動販売方法とすることは、上記慣用技術を模倣する程度に応じて、当業者であれば適宜になし得る設計事項にすぎないものである。

したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明、引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術並びに慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2について)

購入者側の端末が受信したホームページ上にて商品購入と代金支払い方法を指定しその旨を商品提供者側の端末に送信し、商品提供者側の端末にて決済と商品配送の処理を行うことは、周知事項(その根拠については、例えば、特開2000-268094号公報(段落【0005】乃至【0008】等)等参照のこと。)である。

してみると、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、商品購入者側の受信端末において、コンテンツにより、選択した自動販売機の商品について代金支払方法の選択を受ける工程と、商品購入に関する操作の終了を受けるに従って購入商品合計金額を算出する工程と、決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報をシステム提供者側のサーバへ送信する工程が実施されると共に、前記システム提供者側のサーバが、前記決定した商品、前記購入商品合計金額、及び前記商品の代金支払方法を有する情報に基づいて前記商品の課金と決済を行う工程と、前記商品購入者に対する前記商品の配送を指示する工程を有することは、当業者であれば適宜になし得るものである。

したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1発明、引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術、慣用技術並びに周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(3-3-4)特許法第29条第2項についての結論

よって、本願補正発明は、仮に、上記「(3-2)特許法第29条第1項柱書きについて」の項で示した理由がなく、本願補正発明は、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであったとしても、引用文献1発明、引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術、慣用技術並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-4)独立特許要件についての結論

よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、仮に、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであったとしても、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)本件補正についてのむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願を拒絶するべき理由

(1)本願発明

平成19年10月22日付けでした手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成19年 7月30日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 システム提供者側のサーバから商品購入者側の受信端末へ、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機からの商品の購入手順と商品の決定、さらには購入者の購入決定された商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定を画面上で実施するコンテンツを、通信ネットワークを通して配信し、
購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、選択された商品の情報と、注文情報を通信ネットワークを通して送信し、
購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、代金支払方法と購入者への商品配送方法についての情報を通信ネットワークを通して送信し、
システム提供者側のサーバにおいて、購入者が選択した商品を当該消費者へ配送処理するとともに、代金決済を行なう、ことを特徴とするカプセル玩具、カード、シールの自動販売方法。」

(2)特許法第29条第1項柱書きについて

(2-1)本願発明の分説

まず、本願発明を、便宜上分説すると、以下のようになる。

「(ア)システム提供者側のサーバから商品購入者側の受信端末へ、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機からの商品の購入手順と商品の決定、さらには購入者の購入決定された商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定を画面上で実施するコンテンツを、通信ネットワークを通して配信し、

(イ)購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、選択された商品の情報と、注文情報を通信ネットワークを通して送信し、

(ウ)購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、代金支払方法と購入者への商品配送方法についての情報を通信ネットワークを通して送信し、

(エ)システム提供者側のサーバにおいて、購入者が選択した商品を当該消費者へ配送処理するとともに、代金決済を行なう、

ことを特徴とする

(オ)カプセル玩具、カード、シールの自動販売方法。」

(2-2)特許法第2条の発明該当性についての判断

本願発明は、「カプセル玩具、カード、シールの自動販売方法」であって、コンピュータである「受信端末」が、ソフトウェアである上記「自動販売機コンテンツ」によって動作することにより、上記(イ)乃至(ウ)の情報処理を行うと共に、コンピュータである「サーバ」が、ソフトウェアによって動作することにより、上記(ア)及び上記(エ)の情報処理を行う方法の発明であるから、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところのいわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。そして、こうしたコンピュータ・ソフトウェア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、上記ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることを要件とする。

そして、本願発明のソフトウェアによる情報処理は、上記(ア)乃至(エ)の各処理を含むものである。

そこで、本願発明が特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かについて、以下上記(ア)乃至(エ)の情報処理にしたがって検討する。

(上記(ア)について)

上記(ア)の「システム提供者側のサーバから商品購入者側の受信端末へ、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機からの商品の購入手順と商品の決定、さらには購入者の購入決定された商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定を画面上で実施するコンテンツを、通信ネットワークを通して配信し」は、単にシステム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末に配信される情報の内容を特定するに留まり、どのようにして配信の対象となるコンテンツを準備するのか、何ら具体的な情報処理が記載されているとは認められない。

(上記(イ)について)

上記(イ)の「購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、選択された商品の情報と、注文情報を通信ネットワークを通して送信し」は、単に購入者側の受信端末からから通信ネットワークを通してシステム提供者側のサーバに配信される情報の内容を特定するに留まり、どのような購入手順により、商品を決定し、当該商品の情報を選択してその注文情報を作成するのか、何ら具体的な情報処理が記載されているとは認められない。

(上記(ウ)について)

上記(ウ)の「購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、代金支払方法と購入者への商品配送方法についての情報を通信ネットワークを通して送信し」は、単に購入者側の受信端末からから通信ネットワークを通してシステム提供者側のサーバに配信される情報の内容を特定するに留まり、代金支払方法と購入者への商品配送方法についての情報をどのように作成するのか、何ら具体的な情報処理が記載されているとは認められない。

(上記(エ)について)

上記(エ)の「システム提供者側のサーバにおいて、購入者が選択した商品を当該消費者へ配送処理するとともに、代金決済を行なう」は、「システム提供者側のサーバ」とのハードウェア資源の記載があるものの、処理を行う装置を特定するにすぎないので、上記(エ)の記載は、当該「システム提供者側のサーバ」の処理を「配送処理するとともに、代金決済を行なう」ことに特定するに留まり、コンピュータのハードウェア資源をどのように利用して、「配送処理するとともに、代金決済を行なう」のかについて記載されていないため、どのようなハードウェア資源を用いて、当該「配送処理するとともに、代金決済を行なう」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が記載されているとは認められない。

以上の検討によれば、上記(ア)乃至上記(エ)の情報処理をソフトウェアによる情報処理として含む本願発明は、全体として、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえないから、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。

(2-3)特許法第29条第1項柱書きについての結論

よって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていない。

(3)特許法第29条第2項について

仮に、上記「(2)特許法第29条第1項柱書きについて」の項で示した理由がなく、本願発明は、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであったとし、その前提に立って、特許法第29条第2項の理由について、以下検討する。

(3-1)引用文献の記載事項並びに引用文献に記載の発明及び周知技術

(引用文献1発明)

上記「(3-3-1)引用文献の記載事項並びに引用文献に記載の発明及び周知技術」の項において示したように、上記引用文献1には、次の発明が記載されているといえる。

「 プラスチック製カプセルに入っていた手持ちのフィギュアを販売する側のホームページを利用して、当該フィギュアを販売する方法。」

(3-2)本願発明と引用文献1発明との対比

本願発明と引用文献1発明を対比する。

本願発明の「システム提供者側のサーバから商品購入者側の受信端末へ、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機からの商品の購入手順と商品の決定、さらには購入者の購入決定された商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定を画面上で実施するコンテンツを、通信ネットワークを通して配信し、購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、選択された商品の情報と、注文情報を通信ネットワークを通して送信し、購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、代金支払方法と購入者への商品配送方法についての情報を通信ネットワークを通して送信し、システム提供者側のサーバにおいて、購入者が選択した商品を当該消費者へ配送処理するとともに、代金決済を行なう、ことを特徴とするカプセル玩具、カード、シールの自動販売方法」と引用文献1発明の「プラスチック製カプセルに入っていた手持ちのフィギュアを販売する側のホームページを利用して、当該フィギュアを販売する方法」とは後記の点で相違するものの、引用文献1発明の「販売する側のホームページ」が通信ネットワークを介して商品購入者の受信端末に配信されるコンテンツとして販売する側が用意したサーバに保存されて商品購入者の閲覧に供されることは通常のことであるから、両者は、「システム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末へ配信されるコンテンツを利用した、カプセルに入っていた玩具の販売方法」である点で共通する。

したがって、両者は、

(一致点)

「システム提供者側のサーバから通信ネットワークを通して商品購入者側の受信端末へ配信されるコンテンツを利用した、カプセルに入っていた玩具の販売方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)

本願発明は、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機からの商品の購入手順と商品の決定を画面上で実施するコンテンツを備えたカプセル玩具、カード、シールの自動販売方法であるのに対し、

引用文献1発明は、画面上で実施されるコンテンツの内容が不明な玩具の販売方法である点。

(相違点2)

本願発明は、購入者の購入決定された商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定を画面上でさらに実施するコンテンツを備え、そのため、
購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、選択された商品の情報と、注文情報を通信ネットワークを通して送信し、購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、代金支払方法と購入者への商品配送方法についての情報を通信ネットワークを通して送信し、システム提供者側のサーバにおいて、購入者が選択した商品を当該消費者へ配送処理するとともに、代金決済を行なうのに対し、

引用文献1発明は、上記のようなコンテンツを備えておらず、そのため、
購入者側の受信端末とシステム提供者側のサーバのそれぞれの処理が不明である点。

(3-3)相違点についての判断

(相違点1について)

玩具、カード或いはシールを販売するに当たり、それぞれのカプセルおもちゃを販売する複数の自動販売機を設置することは慣用技術である。

また、上記「(3-3-1)引用文献の記載事項並びに引用文献に記載の発明及び周知技術」の項において示した上記引用文献2及び上記引用文献3の記載にみられるように、「サーバから通信ネットワークを介して提供されたカプセル玩具等の自動販売機を模倣したインタフェースを備えたコンテンツ」は周知技術である。

してみると、引用文献1発明のコンテンツを利用した、カプセルに入っていた玩具の販売方法において、その販売対象について上記慣用技術を適用すると共に、インタフェースの具体化手段として上記周知技術を適用することにより、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機を模倣した画面上で実施するコンテンツを備えた自動販売方法とすることは、当業者であれば適宜になし得るものである。

そして、引用文献1発明において、カプセル玩具、カード或いはシールの自動販売機を模倣した画面上で実施するコンテンツを備えた自動販売方法とするのであれば、商品の購入手順と商品の決定を画面上で実施することは、上記慣用技術を模倣する程度に応じて、当業者であれば適宜になし得る設計事項にすぎないものである。

したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明、引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術並びに慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2について)

購入者側の端末が受信したホームページ上にて、商品購入の指定と代金引換配送による代金支払方法及び配送方法の指定がなされその旨を商品提供者側の端末に送信し、商品提供者側の端末にて決済と商品配送の処理を行うことは、周知事項(その根拠については、例えば、特開2000-268094号公報(段落【0005】乃至【0008】等)等参照のこと。)である。

してみると、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、購入者の購入決定された商品の代金支払と商品購入者への配送方法の選択、決定を画面上でさらに実施するコンテンツを備え、そのため、購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、選択された商品の情報と、注文情報を通信ネットワークを通して送信し、購入者側の受信端末からシステム提供者側のサーバへ、代金支払方法と購入者への商品配送方法についての情報を通信ネットワークを通して送信し、システム提供者側のサーバにおいて、購入者が選択した商品を当該消費者へ配送処理することは、当業者であれば適宜になし得るものである。

したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用文献1発明及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用文献1発明、引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術、慣用技術並びに周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(3-4)特許法第29条第2項についての結論

よって、本願発明は、仮に、上記「(2)特許法第29条第1項柱書きについて」の項で示した理由がなく、本願発明は、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであったとしても、引用文献1発明、引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術、慣用技術並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

上記のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず、仮に、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであったとしても、引用文献1発明、引用文献2及び引用文献3に記載された周知技術並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-14 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願2001-396817(P2001-396817)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 1- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 山本 穂積
田代 吉成
発明の名称 カプセル玩具、カード、シールの自動販売方法、及びそのシステム  
代理人 蔵合 正博  
代理人 酒井 一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ