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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1212214 |
審判番号 | 不服2007-11798 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-24 |
確定日 | 2010-02-17 |
事件の表示 | 平成10年特許願第257179号「シリコンウェーハの品質評価及び管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月31日出願公開、特開2000- 91172〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成10年9月10日の出願であって,平成18年6月30日付けの拒絶理由通知に対して,同年8月30日に手続補正書及び意見書が提出され,同年10月20日付けの最後の拒絶理由通知に対して,同年12月21日に手続補正書及び意見書が提出されたが,平成19年3月14日付けで補正の却下の決定がされて平成18年12月21日付け手続補正書でした明細書についての補正が却下されるとともに,同日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年4月24日に審判請求がされるとともに,同日付けで手続補正書が提出され,その後,当審において平成21年10月19日付けで審尋がされ,同年11月12日に回答書が提出されたものである。 第2 平成19年4月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年4月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 平成19年4月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の請求項1を補正後の請求項1として, 「シリコンウェーハの表面全面に酸化膜を形成し,該シリコンウェーハをメタノール溶液中に浸漬し,該シリコンウェーハに銅電極を用い電圧を印加して酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法を用い,所定の電界強度を設定し,当該電界強度における銅析出密度によって,当該シリコンウェーハの全面の品質を評価するシリコンウェーハの品質評価方法において,前記酸化膜を10?50nmの厚さに形成し,銅析出時間を1?60分として,前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定し,前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定し,当該電界強度における銅析出密度が20個/cm^(2)以下の場合は良品,20個/cm^(2)を越えた場合は不良品と評価することを特徴とするシリコンウェーハの品質評価方法。」と補正するものである。 上記補正は,補正前の請求項1の「当該シリコンウェーハの全面の品質を評価することを特徴とするシリコンウェーハの品質評価方法。」を補正後の請求項1の「当該シリコンウェーハの全面の品質を評価するシリコンウェーハの品質評価方法において,前記酸化膜を10?50nmの厚さに形成し,銅析出時間を1?60分として,前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定し,前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定し,当該電界強度における銅析出密度が20個/cm^(2)以下の場合は良品,20個/cm^(2)を越えた場合は不良品と評価することを特徴とするシリコンウェーハの品質評価方法。」と限定するものであるから,平成14年法律第24号改正附則2条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について検討する。 2 独立特許要件について (1)本願補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(本願補正発明)は,再掲すると次のとおりである。 「【請求項1】 シリコンウェーハの表面全面に酸化膜を形成し,該シリコンウェーハをメタノール溶液中に浸漬し,該シリコンウェーハに銅電極を用い電圧を印加して酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法を用い,所定の電界強度を設定し,当該電界強度における銅析出密度によって,当該シリコンウェーハの全面の品質を評価するシリコンウェーハの品質評価方法において,前記酸化膜を10?50nmの厚さに形成し,銅析出時間を1?60分として,前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定し,前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定し,当該電界強度における銅析出密度が20個/cm^(2)以下の場合は良品,20個/cm^(2)を越えた場合は不良品と評価することを特徴とするシリコンウェーハの品質評価方法。」 (2)引用例1の記載と引用発明 (2-1)引用例1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-227729号公報(以下「引用例1」という。)には,「ウェーハの欠陥分析方法」(発明の名称)に関して,図1?図3,図5,図7,図8とともに,次の記載がある。 ア 特許請求の範囲 ・「【請求項5】 ベアウェーハの表面上に所定の厚さの熱酸化膜を形成させる段階と,前記ウェーハのバックサイドをエッチングする段階及び前記ウェーハの欠陥部位に銅のデコレーティングを遂行する段階とを備えることを特徴とするウェーハの欠陥分析方法。」 ・「【請求項8】 前記熱酸化膜を形成する段階で生成される熱酸化膜の厚さが250ないし1500Åの範囲内であることを特徴とする請求項5に記載のウェーハの欠陥分析方法。」 ・「【請求項16】 前記電解物質として,メタノールを用いることを特徴とする請求項10に記載のウェーハの欠陥分析方法。」 ・「【請求項18】 前記銅をデコレーションさせる段階で,前記上部及び下部プレートに印加する外部の電圧は3ないし10MV/cmの範囲内であることを特徴とする請求項14に記載のウェーハの欠陥分析方法。 【請求項19】 前記銅のデコレーティングの遂行段階の以後に,銅でデコレーションされたウェーハの欠陥部位を分析する段階をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のウェーハの欠陥分析方法。」 ・「【請求項22】 前記ベアウェーハはチョクラルスキー法によって結晶成長されたシリコンウェーハであることを特徴とする請求項5に記載のウェーハの欠陥分析方法。」 イ 発明の背景等 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はウェーハの欠陥分析方法に関するもので,より詳しくは結晶成長させた半導体ウェーハの表面欠陥の分布,密度,及びモルホロジーなどを正確に分析できるウェーハの欠陥分析方法に関する。 【0002】 【従来の技術】半導体素子の集積度が増加することにより,半導体素子が具現されるウェーハの品質が半導体素子の収率と信頼性に大きな影響を及ぼしている。半導体ウェーハの品質は結晶成長,またウェーハを製作するいわゆるウェーハリング(wafering)の全過程を通じて,どのくらいの欠陥が発生するかに左右されるもので,このような欠陥はシリコンのインゴット成長中に発生する結晶欠陥(crystal defect)と外部汚染源による欠陥とに大きく分けられる。」 ウ 実施例 ・「【0033】本発明が適用される目的のウェーハとしては,チョクラルスキー法によって結晶成長されたベアウェーハが使用される。」 ・「【0034】続いて,ウェーハを電気炉等の拡散装置に投入し,熱酸化(thermal oxidation )を行い,ウェーハ上に酸化膜を形成する。この熱酸化膜の厚さは250ないし1500Åの範囲内で選択され,このような厚さの酸化膜を用いることにより,どのようなウェーハ製造会社の製品であるかにかかわらず,続けて行われる銅のデコレーションを良好に達成することができる。」 ・「【0035】続いて,表面が熱酸化膜という絶縁膜で覆われたウェーハに対して,後述される銅のデコレーションの時に,ウェーハの上部と下部との間に電気的な通路を確保するために,ウェーハのバックサイドの一部をエッチングする。ウェーハのバックサイド全体をエッチングすることもできるが,本発明の分析方法では最小の電気的な通路を確保することだけで十分である。なお,エッチングはフッ化水素(HF)の蒸気を用いて実施する。 【0036】次に,ウェーハを純水で洗浄して,エッチングガス等残留物を除去する。その後,酸化膜が形成された前記の目的ウェーハに対して銅のデコレーションを実施する。」 ・「【0038】図2を参照すると,銅でできた下部プレート10と上部プレート12が所定の間隔を持って配置され,四方向の側壁部14と共に所定の空間を構成し,この空間がウェーハを安着するウェーハ安着部20となる。前記下部のプレート10と上部のプレート12には各々接続端子が連結され,外部電源18によって可変可能に電圧が上,下部プレートに印加され,これらのプレート間で一定な電界が形成されようになっている。」 ・「【0042】続いて,ウェーハの安着部20の空間内に電解物質(電解剤)として,例えば,メタノールを注入する。」 ・「【0046】次に,前記上,下部のプレートに外部電圧を印加して銅のイオンを目的のウェーハの欠陥部位上にデコレーションさせる。前記銅をデコレーションさせる段階で印加する電界の強度は,3ないし10MV/cmの範囲内とするが,例えば最初の10分間に目的ウェーハ上の酸化膜の厚さとの関係から電界強度を調節することもできる。」 ・「【0048】前記,銅のデコレーション装置の中で目的のウェーハ上に銅のデコレーションを行った後,図1に示すようにウェーハ上の欠陥部位の分布,密度,及びトポロジー等に関して分析を実施する。具体的な分析などについては,図7以下で後述する。」 ・「【0052】図5は,本発明によって目的ウェーハ上に形成された酸化膜について,印加した電界を変化させた場合の酸化膜の厚さと欠陥密度との関係を示すグラフである。図5から,酸化膜の欠陥密度は,同じ酸化膜の厚さで印加した電界の値が3.0MV/cmから7.0MV/cmまで増加することにより,増加することが分かり,一方,同一の電界の値の下では,酸化膜の厚さが増加するにつれて欠陥密度が増加するものの,一定の変曲点以上の酸化膜の厚さでは再び減少することが分かる。」 ・「【0054】図7は,図1の分析段階の内容を具体的に示す図面である。つまり,本発明によって銅のデコレーション部を直接的に肉眼分析するか,またSEMかTEMを用いて分析して,目的のウェーハ自体の結晶欠陥の分布,密度,及びモルホロジーを正確に分析評価することができる。TEM分析をする前には,通常的に知られているFIB(Focus Ion Beam)でTEM分析用薄膜試料を製作した後,実施する。 【0055】図8は,ウェーハ上の銅のデコレーション状態を示す写真である。図8から銅がデコレーションされた結晶欠陥部は肉眼でもその分布状態を確認することができ,従って,欠陥密度も容易に算出することができる。」 エ 発明の効果 ・「【0061】 【発明の効果】従って,本発明によると,結晶成長された半導体ウェーハの欠陥部位にデコレーションされた銅の析出物を肉眼で直接分析することができ,欠陥の分布や密度を正確に分析できるという効果がある。 【0062】また,本発明によると,結晶成長された半導体ウェーハの欠陥の位置が正確に測定されるのでSEMまたはTEMによって欠陥の大きさやモルホロジーを確実に分析できるという効果がある。」 ・「【0064】もう一つ,本発明によると,ウェーハ上の結晶欠陥に対する情報,例えばその分布,密度,及びモルホロジー等が正確に分かるのでこれらの情報を基礎として,ウェーハの作製の最初の時から結晶欠陥の発生を抑制できるように検討することができるという付随的な効果がある。」 オ 要約 ・「【課題】 銅のデコレーション法を利用して,半導体のベアウェーハの結晶欠陥を直接分析できるウェーハの欠陥分析方法を提供すること。」 (2-2)引用発明 上記ア?オによれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「シリコンウェーハの表面上に酸化膜を形成し,前記シリコンウェーハのバックサイドをエッチングし,前記シリコンウェーハを銅でできた下部プレート10と上部プレート12が所定の間隔を持って配置されメタノールが注入されたウェーハの安着部に安着し,前記上,下部のプレートに可変可能な外部電圧を印加して前記上,下部のプレート間に電界を形成し銅のイオンを前記シリコンウェーハの欠陥部位上にデコレーションさせる銅のデコレーション法を利用して,所定の電界の値における欠陥密度によって,前記シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価する方法において,前記酸化膜を250ないし1500Åの厚さに形成し,前記シリコンウェーハはチョクラルスキー法によって結晶成長されたシリコンウェーハであり,電界の値は3ないし10MV/cmの範囲内であることを特徴とするシリコンウェーハを分析評価する方法。」 (3)対比 (3-1)次に,本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「シリコンウェーハの表面上に酸化膜を形成し,前記シリコンウェーハのバックサイドをエッチング」することは,本願補正発明の「シリコンウェーハの表面全面に酸化膜を形成」することに相当する。 イ 引用発明の「前記シリコンウェーハを」「メタノールが注入されたウェーハの安着部に安着」することは,本願補正発明の「該シリコンウェーハをメタノール溶液中に浸漬」することに相当する。 ウ 引用発明の「銅でできた下部プレート10と上部プレート12」は,本願補正発明の「銅電極」に相当する。 また,引用発明において,シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価するためには,欠陥密度に対応するデコレーションされた銅の密度を測定する必要があることは,明らかであるから,引用発明の「銅のイオンを前記シリコンウェーハの欠陥部位上にデコレーションさせる銅のデコレーション法」は,本願補正発明の「酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法」に相当する。 そうすると,引用発明の「前記上,下部のプレートに可変可能な外部電圧を印加して前記上,下部のプレート間に電界を形成し銅のイオンを前記シリコンウェーハの欠陥部位上にデコレーションさせる銅のデコレーション法を利用」することは,本願補正発明の「該シリコンウェーハに銅電極を用い電圧を印加して酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法を用」いることに相当する。 エ 引用発明の「電界の値」,「欠陥密度」,「前記シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価する方法」は,それぞれ,本願補正発明の「電界強度」,「銅析出密度」,「シリコンウェーハの品質評価方法」に相当し,また,引用例1の図8の記載を参照すると,シリコンウェーハの表面全体に銅がデコレーションされた結晶欠陥部が分布しているから,引用発明がシリコンウェーハの表面全体の評価ができることは,明らかであるので,引用発明の「所定の電界の値における欠陥密度によって,前記シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価する方法」は,本願補正発明の「当該電界強度における銅析出密度によって,当該シリコンウェーハの全面の品質を評価するシリコンウェーハの品質評価方法」に相当する。 (3-2)したがって,本願補正発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりとなる。 《一致点》 「シリコンウェーハの表面全面に酸化膜を形成し,該シリコンウェーハをメタノール溶液中に浸漬し,該シリコンウェーハに銅電極を用い電圧を印加して酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法を用い,所定の電界強度を設定し,当該電界強度における銅析出密度によって,当該シリコンウェーハの全面の品質を評価するシリコンウェーハの品質評価方法。」 《相違点》 《相違点1》 本願補正発明は,「前記酸化膜を10?50nmの厚さに形成」するのに対して,引用発明は,「前記酸化膜を250ないし1500Åの厚さに形成」する点。 《相違点2》 本願補正発明は,「銅析出時間を1?60分として」いるのに対して,引用発明は,銅析出時間についての構成がない点。 《相違点3》 本願補正発明は,「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定し,前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定し」ているのに対して,引用発明は,「前記シリコンウェーハはチョクラルスキー法によって結晶成長されたシリコンウェーハであり,電界の値は3ないし10MV/cmの範囲内である」点。 《相違点4》 本願補正発明は,「当該電界強度における銅析出密度が20個/cm^(2)以下の場合は良品,20個/cm^(2)を越えた場合は不良品と評価する」のに対して,引用発明は,このような構成がない点。 (4)相違点についての判断 (4-1)相違点1について ア 引用発明の形成された酸化膜の厚さ250ないし1500Åは,nmの単位とすると25?150nmであるから,本願補正発明の形成された酸化膜の厚さである10?50nmと数値範囲が重なっているので,相違点1は,実質的に相違しない。 イ 仮に,相違しているとしても,酸化膜の厚さは,当業者が実験等により適宜決定し得たものであるから,引用発明において,本願補正発明のように,「前記酸化膜を10?50nmの厚さに形成」することは,当業者が適宜なし得たことと認められる。 (4-2)相違点2について ア 引用例1の図8には,「ウェーハ上の銅のデコレーション状態を示す写真」が示されており,「銅がデコレーションされた結晶欠陥部」「の分布状態を確認する」(段落【0055】)ことができる。 イ そして,引用例1の図8に示される「ウェーハ上の銅のデコレーション状態を示す写真」からは,銅析出時間は不明であるが,少なくとも,「銅がデコレーション」されており,銅が析出しているから,所定の銅析出時間を有することは,理解できる。 ウ また,本願明細書の段落【0026】には,「銅析出物は析出時間の増加とともにサイズは大きくなるものの密度はほぼ一定であった。」ことが,記載されているから,銅析出物は,一旦析出を始めると,析出時間が増加しても,密度はほぼ一定であることが,理解できる。 エ そうすると,上記ア,イの記載から,銅析出時間については,ウェーハの結晶欠陥部分に銅が観測可能な程度に充分析出されるよう当業者が実験等に基づき選択し得る設計的事項であり,また,上記ウの記載から,銅析出時間は,増加しても析出物の密度はほぼ一定であるから,本願補正発明のように,「銅析出時間を1?60分」とすることは,当業者が必要に応じて適宜設定できた程度のことと認められる。 (4-3)相違点3について ア 本願補正発明の「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定し,前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することは,「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することと「前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することの択一的な事項と認められるので,「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することと「前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することのいずれか一つを選択することで足りる。 イ そこで,本願補正発明の「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することについて検討する。 ウ 引用発明の「前記シリコンウェーハはチョクラルスキー法によって結晶成長されたシリコンウェーハであり,電界の値は3ないし10MV/cmの範囲内である」ことにおける,「前記シリコンウェーハはチョクラルスキー法によって結晶成長されたシリコンウェーハ」,「電界の値」は,それぞれ,本願補正発明の「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハ」,「電界強度」に相当する。 そうすると,引用発明の「前記シリコンウェーハはチョクラルスキー法によって結晶成長されたシリコンウェーハであり,電界の値は3ないし10MV/cmの範囲内である」ことは,本願補正発明の「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することと,電界強度の数値範囲が重なっている。 さらに,引用例1では,「印加した電界の値が3.0MV/cmから7.0MV/cmまで」(【0052】)実験しており,本願補正発明の「前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することを満足している。 また,電界強度は,当業者が実験等により適宜決定し得たものでもある。 エ また,本願補正発明の「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することは,本願の図1の記載と,本願明細書の「【0037】つまり,FZウェーハ,Epiウェーハにおいては,5MV/cmの電界強度で急激な銅析出が起こるということは,5MV/cmの電界強度で銅の析出が生ずるに十分なFN電流が流れはじめていることを意味しているものである。【0038】図1に示されるごとく,良品のCZウェーハであれば7MV/cmまでは銅析出密度が20個/cm^(2) を超えることはないが,良品のFZウェーハやEpiウェーハ等では5MV/cm以上で,急激に銅析出密度が増えてしまうため,良品であるにもかかわらず,CZウェーハと同様な判定基準では,品質的に異常と判断してしまう可能性がある。従って,ウェーハの種類毎にFN電流値を把握し,FN電流による銅析出が生じない電界強度でウェーハの品質を管理する必要があるのである。」の記載とに基づく構成であるが,図1のCZウェーハのグラフは,酸化膜厚が25nmの場合のグラフであり,酸化膜厚が25nmとは異なると,当然ながら,FN電流が流れはじめる電界強度が異なるために,急激な銅析出が起こる電界強度が,7MV/cmとは違う値になるから,酸化膜厚を25nmに特定しないで(本願補正発明では,「10?50nm」),「前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することには,格別な技術的意義が認められない。 オ したがって,引用発明において,本願補正発明のように「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することは,当業者が適宜なし得たことと認められる。 カ 仮に,相違点3が,「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することと「前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することの択一的な事項でなく,両者を備えたものであるとした場合についても,念のため検討する。 そして,「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定」することについては,既に上記ウ?オで検討したので,「前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することについて,以下に検討する。 キ Epiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハは,いずれも,周知のシリコンウェーハであり,これら周知のシリコンウェーハにおいても欠陥があるおそれのあることは,明らか若しくは容易に予想されることであるから,引用発明のシリコンウェーハを評価する方法を周知のEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハの評価に適用することに,格別の困難性は認められない。 ク 引用発明の「電界の値」は,本願補正発明の「電界強度」に相当するので,引用発明の「電界の値は3ないし10MV/cmの範囲内である」こと,及び引用例1の「印加した電界の値が3.0MV/cmから7.0MV/cmまで」(【0052】)実験を行ったことは,本願補正発明の「電界強度を7MV/cm以下に設定」することと,電界強度の数値範囲が重なっている。 また,電界強度は,当業者が実験等により適宜決定し得たものでもある。 ケ また,本願補正発明の「前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することは,本願の図1の記載と,本願明細書の「【0037】つまり,FZウェーハ,Epiウェーハにおいては,5MV/cmの電界強度で急激な銅析出が起こるということは,5MV/cmの電界強度で銅の析出が生ずるに十分なFN電流が流れはじめていることを意味しているものである。【0038】図1に示されるごとく,良品のCZウェーハであれば7MV/cmまでは銅析出密度が20個/cm^(2) を超えることはないが,良品のFZウェーハやEpiウェーハ等では5MV/cm以上で,急激に銅析出密度が増えてしまうため,良品であるにもかかわらず,CZウェーハと同様な判定基準では,品質的に異常と判断してしまう可能性がある。従って,ウェーハの種類毎にFN電流値を把握し,FN電流による銅析出が生じない電界強度でウェーハの品質を管理する必要があるのである。」の記載とに基づく構成であるが,図1のCZ以外のウェーハのグラフは,酸化膜厚が25nmの場合のグラフであり,酸化膜厚が25nmとは異なると,当然ながら,FN電流が流れはじめる電界強度が異なるために,急激な銅析出が起こる電界強度が,5MV/cmとは違う値になるから,酸化膜厚を25nmに特定しないで(本願補正発明では,「10?50nm」),「前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することには,格別な技術的意義が認められない。 コ したがって,引用発明において,本願補正発明のように「前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することは,当業者が適宜なし得たことと認められる。 サ 以上から,引用発明において,本願補正発明のように「前記シリコンウェーハがチョクラルスキー法によって製造されたCZウェーハのときは前記電界強度を7MV/cm以下に設定し,前記シリコンウェーハがEpiウェーハ,FZウェーハ,IGウェーハ,H_(2)アニールCZウェーハのときは前記電界強度を5MV/cm以下に設定」することは,当業者が適宜なし得たことと認められる。 (4-4)相違点4について ア 本願明細書の段落【0031】には,「すなわち,本発明の品質評価方法による銅析出密度が20個/cm^(2)以下のウェーハであれば品質的に良好であるので,この値を基準値として品質の評価および製造工程の管理を行えばよい。この基準値は要求される品質にもよるが,特に高品質のウェーハが必要とされる場合,更にこの銅析出密度が少ないウェーハ,例えば銅析出密度が10個/cm^(2)以下としウェーハを管理・製造すればよい。」ことが,記載されている。 イ すなわち,「本発明の品質評価方法による銅析出密度が20個/cm^(2)以下のウェーハであれば品質的に良好である」とする場合の他に,「特に高品質のウェーハが必要とされる場合,更にこの銅析出密度が少ないウェーハ,例えば銅析出密度が10個/cm^(2)以下」のウェーハであれば品質的に良好であるとする場合も記載されている。 ウ このことは,銅析出密度によるウェーハ品質の評価の基準値を,種々の値に決めることができるということであり,どの程度の銅析出密度の場合に良品又は不良品とするかは,必要なウェーハ品質の程度に応じて当業者が適宜設定し得たことである。 エ また,本願明細書の段落【0026】に,「銅析出密度は電界強度に依存し,電界強度が高くなるに従って高密度になることもわかった。」と記載されているように,本願の図1のグラフを参照すると,例えば,CZウェーハは,電界強度が7MV/cmの時は,銅析出密度がほぼ20個/cm^(2)であるが,電界強度が4MV/cmの時は,銅析出密度がほぼ10個/cm^(2)であるので,電界強度が異なると銅析出密度によるウェーハ品質の評価の基準値を異ならせる必要がある。 それにもかかわらず,電界強度が異なる場合(本願補正発明では,「電界強度を5又は7MV/cm以下」で下限なし。)に銅析出密度によるウェーハ品質の評価の基準値を異ならせることなしに,電界強度に関係なく一律に「当該電界強度における銅析出密度が20個/cm^(2)以下の場合は良品,20個/cm^(2)を越えた場合は不良品と評価する」ことには,格別な技術的意義が認められない。 オ したがって,引用発明において,本願補正発明のように,「当該電界強度における銅析出密度が20個/cm^(2)以下の場合は良品,20個/cm^(2)を越えた場合は不良品と評価する」ようになすことは,当業者が適宜設定できた程度のことと認められる。 (5)以上のとおり,相違点1?4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到できたものである。 よって,本願補正発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 以上の次第で,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?7に係る発明は,平成18年8月30日に提出された手続補正書の請求項1?7に記載されたとおりのものであるが,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。 「【請求項1】 シリコンウェーハの表面全面に酸化膜を形成し,該シリコンウェーハをメタノール溶液中に浸漬し,該シリコンウェーハに銅電極を用い電圧を印加し,酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法を用い,所定の電界強度を設定し,当該電界強度における銅析出密度によって,当該シリコンウェーハの全面の品質を評価することを特徴とするシリコンウェーハの品質評価方法。」 2 引用例1の記載と引用発明 引用例1の記載と引用発明は,上記「第2 2(2)」で認定したとおりである。 3 対比・判断 (3-1)本願発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「シリコンウェーハの表面上に酸化膜を形成し,前記シリコンウェーハのバックサイドをエッチング」することは,本願発明の「シリコンウェーハの表面全面に酸化膜を形成」することに相当する。 イ 引用発明の「前記シリコンウェーハを」「メタノールが注入されたウェーハの安着部に安着」することは,本願発明の「該シリコンウェーハをメタノール溶液中に浸漬」することに相当する。 ウ 引用発明の「銅でできた下部プレート10と上部プレート12」は,本願発明の「銅電極」に相当する。 また,引用発明において,シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価するためには,欠陥密度に対応するデコレーションされた銅の密度を測定する必要があることは,明らかであるから,引用発明の「銅のイオンを前記シリコンウェーハの欠陥部位上にデコレーションさせる銅のデコレーション法」は,本願発明の「酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法」に相当する。 そうすると,引用発明の「前記上,下部のプレートに可変可能な外部電圧を印加して前記上,下部のプレート間に電界を形成し銅のイオンを前記シリコンウェーハの欠陥部位上にデコレーションさせる銅のデコレーション法を利用」することは,本願発明の「該シリコンウェーハに銅電極を用い電圧を印加して酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法を用」いることに相当する。 エ 引用発明の「電界の値」,「欠陥密度」,「前記シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価する方法」は,それぞれ,本願発明の「電界強度」,「銅析出密度」,「シリコンウェーハの品質評価方法」に相当し,また,引用例1の図8の記載を参照すると,シリコンウェーハの表面全体に銅がデコレーションされた結晶欠陥部が分布しているから,引用発明がシリコンウェーハの表面全体の評価ができることは,明らかであるので,引用発明の「所定の電界の値における欠陥密度によって,前記シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価する方法」は,本願発明の「当該電界強度における銅析出密度によって,当該シリコンウェーハの全面の品質を評価するシリコンウェーハの品質評価方法」に相当する。 (3-2)したがって,引用発明の「シリコンウェーハの表面上に酸化膜を形成し,前記シリコンウェーハのバックサイドをエッチングし,前記シリコンウェーハを銅でできた下部プレート10と上部プレート12が所定の間隔を持って配置されメタノールが注入されたウェーハの安着部に安着し,前記上,下部のプレートに可変可能な外部電圧を印加して前記上,下部のプレート間に電界を形成し銅のイオンを前記シリコンウェーハの欠陥部位上にデコレーションさせる銅のデコレーション法を利用して,所定の電界の値における欠陥密度によって,前記シリコンウェーハの結晶欠陥の密度を分析評価する方法」は,本願発明の「シリコンウェーハの表面全面に酸化膜を形成し,該シリコンウェーハをメタノール溶液中に浸漬し,該シリコンウェーハに銅電極を用い電圧を印加し,酸化膜上に析出した銅密度を測定する銅析出法を用い,所定の電界強度を設定し,当該電界強度における銅析出密度によって,当該シリコンウェーハの全面の品質を評価することを特徴とするシリコンウェーハの品質評価方法。」に相当する。 (3-3)そうすると,結局,本願発明と引用発明(引用例1に記載された発明)は,実質的に一致するので,本願発明は,引用例1に記載された発明である。 第4 結言 以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に掲げる発明に該当し,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-24 |
結審通知日 | 2009-12-25 |
審決日 | 2010-01-06 |
出願番号 | 特願平10-257179 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北島 健次 |
特許庁審判長 |
橋本 武 |
特許庁審判官 |
河口 雅英 小野田 誠 |
発明の名称 | シリコンウェーハの品質評価及び管理方法 |
代理人 | 石原 進介 |
代理人 | 石原 詔二 |