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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20056282 審決 特許
不服200627219 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C12Q
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C12Q
管理番号 1212470
審判番号 不服2007-31595  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-22 
確定日 2010-02-26 
事件の表示 平成 6年特許願第275693号「核酸の塩基配列や蛋白質の分子構造等の解析法及び解析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月 7日出願公開、特開平 8-112099〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月14日を出願日とする出願であって、平成18年3月23日に特許請求の範囲について手続補正がなされたが、平成19年10月12日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年11月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年12月20日に特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。
2.平成19年12月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年12月20日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1?11のうち請求項10が削除され、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】核酸分子中の4種の塩基(原子団)や、蛋白質分子中の特定原子団に、特異的に結合し得る、試薬分子に、その試薬分子が何であるかを標識するための異なった色の蛍光を発する蛍光識別型標識分子、または、形態から識別しうる形態識別型分子を結合して成る分子標識試薬を、1個の核酸分子や蛋白質分子中に多数結合させ、走査型電子顕微鏡(走査トンネル電子顕微鏡を包含する)で試料分子及び試薬分子の形を映像化しつつ、個々の蛍光試薬分子に、該電子顕微鏡の微細電子ビームが衝突するごとに発生する蛍光の色彩を光電変換装置によるデータから、または、形態に関するデータから識別し、試薬分子が結合している試料分子中の原子団が何であるかを特定する、一つの核酸分子中の塩基配列や蛋白質の分子構造の解析法に用いるための、試料を境にして、電子顕微鏡の真空容器を上部容器と下部容器に二分し、両容器の試料に向かう壁に、試料に近づくほど直径が小さくなる円錐台形の電子ビーム通過孔を設け、それらの壁の試料に向かう面に、空気は通さないが、電子ビームは通す薄膜を張り付け、孔をふさぎ、上部容器または下部容器を上下に駆動し、試料の出し入れを可能にするための駆動装置を設けて成る、電子顕微鏡。」と補正された。
しかしながら、補正前の特許請求の範囲の請求項1?11のいずれにも、電子顕微鏡に係る発明は記載されていない。
なるほど、補正前の特許請求の範囲第1項及び第4項には、
「【請求項1】核酸分子中の4種の塩基(原子団)や、蛋白質分子中の特定原子団に、特異的に結合し得る、試薬分子に、その試薬分子が何であるかを標識するための異なった色の蛍光を発する蛍光識別型標識分子を結合して成る分子標識試薬を、1個の核酸分子や蛋白質分子中に多数結合させ、走査型電子顕微鏡・走査トンネル電子顕微鏡・透過型電子顕微鏡・原子間力顕微鏡で試料分子及び試薬分子の形を映像化しつつ、個々の蛍光試薬分子に、走査型電子顕微鏡・走査トンネル電子顕微鏡の微細電子ビームが衝突するごとに発生する蛍光の色彩を光電変換装置とコンピューターで識別し、試薬分子が結合している試料分子中の原子団が何であるかを特定する、一つの核酸分子中の塩基配列や蛋白質の分子構造の解析法及び解析装置。」
「【請求項4】試料を境にして、電子顕微鏡の真空容器を上部容器と下部容器に二分し、両容器の試料に向かう壁に、試料に近づくほど直径が小さくなる円錐台形の電子ビーム通過光を設け、それらの壁の試料に向かう面に、空気は通さないが、電子ビームは通す薄膜を張り付け、孔をふさぎ、上部容器または下部容器を上下に駆動し、試料の出し入れを可能にするための駆動装置を設けて成る、電子顕微鏡を用いた、請求項1の核酸の塩基配列や蛋白質の分子構造の解析装置。」と記載されているものの、補正前の請求項4に記載された発明は、そのような電子顕微鏡を用いた解析装置に係る発明であり、電子顕微鏡自体の発明ではなく、補正後の請求項1に記載された電子顕微鏡に係る発明とは、発明の対象及び範囲が異なるものである。
このような補正は、特許請求の範囲を変更するものであって、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明の何れかを目的とするものでもないので、よってこの補正は、同法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
(2)新規事項について
上記補正により、本願の出願当初の明細書及び図面(以下、単に「当初明細書等」という。)の段落【0014】は、「【0014】ここでは、ヌクレオチドの糖の炭素骨格に付いている1個の水素を置換し、塩基Aの物には赤い蛍光を発する物(ローダミン-イソチオシアネイト等)、Gには黄、Tには緑、Cには青の蛍光物質を結び付けた試薬を用いる。
この4種の試薬を含む水溶液を給水管5から送り込み、試薬を試料DNAに結合させる。」から「【0014】4種の核散塩基(または一つの小分子内に、それら塩基を含む誘導体であるヌクレオシドまたはヌクレオチド)の各々に対して、核酸も染色しうる蛍光染料として市販もされている周知の染料を用いて染色した物(誘導体)を用いる等すればよく、例えば、 塩基A(系)は、赤い蛍光を発する、7‐アミノアクチノマイシンD(蛍光波長 647nm)で、塩基G(系)は、黄色の蛍光を発する、iodide(蛍光波長 570nm)で、塩基T(系)は、緑の蛍光を発する、SYTO16(蛍光波長 518nm)で、塩基C(系)は、青の蛍光を発する、DAPI(蛍光波長 461nm)で、それぞれ染色した誘導体から成る試薬を用いる等すればよい。
この4種の試薬を含む水溶液を給水管5から送り込み、試薬を試料DNAに結合させる。」
と補正された。
さらに上記補正により、段落【0030】及び【0048】には、それぞれ当初明細書の当該段落に記載されていない、「なお、1ナノアンペアの電子流でも、毎秒約6.2×10(9)個の電子が飛び、試料に当たるので、蛍光を発するのに必要なエネルギーが試薬に供給される。」及び「(必ずしも一挙に一分子内の全分子構造を調べる必要はない。同種の蛋白質分子を用い、少種類の異なる試薬で、染色して観測し、試薬を変えながら反復し、しだいに全構造を明らかにしてもよい。)」という記載が追加された。
段落【0014】、【0030】及び【0048】に追加された上記事項は、当初明細書等に記載されておらず、また当初明細書等の記載から自明な事項であるといえないので、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、平成6年改正前特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。
(3)むすび
以上のことから、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本件補正は新規事項を含むので、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.本願発明について
平成19年12月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願出願に係る発明は、平成18年3月23日付手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1?11に記載された事項により特定されるものである。
そのうち、請求項2に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項2】蛍光識別型分子試薬または形態識別型分子試薬を試料分子に結合させる装置と、試料分子の形態を映像化する走査型電子顕微鏡・透過型電子顕微鏡、走査トンネル電子顕微鏡・分子間力顕微鏡と、試料分子に結合した蛍光識別型分子試薬の1分子に走査型電子顕微鏡・走査トンネル電子顕微鏡の微細電子ビームが当たって発生する蛍光を捕らえ、試薬の種類を識別する光電変換装置とコンピューターから成るシステム、または、蛍光識別型分子試薬の1分子の形態像から、その試薬の種類を特定する画像認識用コンピューターを設けて成る、核酸の塩基配列や蛋白質の分子構造の解析装置。」(以下、「本願発明2」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願出願日前の平成5年9月24日に頒布された刊行物である特開平5-244997号公報(以下、「引用例」という。)には、
(i)「【請求項1】デオキシリボ核酸DNAまたはリボ核酸RNAの塩基配列を決定する方法において、これらを構成する各塩基種を水素結合を介して、塩基特異的な化学種で標識した後、DNAあるいはRNAの個々の塩基と化学種の結合状態の外形を観測することを特徴とする塩基配列決定法。
【請求項2】標識化学種として、DNAならば、アデニン、シトシン、グアニン、チミンのいずれかと、RNAならばアデニン、シトシン、グアニン、グリシンのいずれかと水素結合を形成する能力を有する化学種を使用することを特徴とする請求項1記載の塩基配列決定法。
【請求項3】観測手段として走査型電子顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡または原子間力顕微鏡を使用することを特徴とする請求項1記載の塩基配列決定法。」(請求項1?3)、
(ii)「本発明では、核酸の本質的構造特性である相補的水素結合を利用した標識法(HBL法)を用いる。二本鎖DNAにおいて、塩基種の一つアデニンAはチミンTと、また、グアニンGはシトシンCとの水素結合により、2本の相補的一本鎖同士が結合している。
DNAは、二本鎖と一本鎖との間を可逆的に変化することができるので、試料を熱し、上記のA-T結合を解離させた(DNAの変性)後、アデニンAに対する標識分子として、チミンTの化学基を含有した化学種(例えば、チミジン三りん酸(TTP))を、先の変性DNAの再生(徐冷)中に溶液中に過剰に添加すると、A-T結合の再生ではなく、A-TTP結合が生じる。
従って、一旦、変性したDNAは、本来の二本鎖には戻らない。他の塩基(チミンT、グアニンG)にも同様に各塩基に特異的に水素結合し、かつ互いに形(特に分子の長さ)の異なる側基を持った標識分子、例えば、デオキシアデノシン二りん酸dADP、デオキシシトシン一りん酸dCMPを添加することで、T-dADP、G-dCMP結合を生じさせる。」(第2頁第1欄下から第2欄第20行)、
(iii)「HBL処理して標識されたDNAは、走査電子顕微鏡(SEM)、走査トンネル顕微鏡(STM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)でその形を直接観察する。DNAを構成する各塩基ごとに水素結合した形の異なる標識分子の外形が観察される。」(第2頁第2欄第45行?第49行)、
(iv)「本実施例で用いたDNAは、ΦX174(5386塩基対(bp))を、制限酵素HincIIで切断して生じた79bp断片を0.1 nmole/mlに精製した(pH7.0)ものである。その水溶液10μl(DNAは1 pmole)を、95℃まで加熱し、DNAを変性させた後、室温まで徐冷する。その際、75℃の時点で、予熱しておいたデオキシシトシン三りん酸dATP、デオキシシトシン二りん酸dGDP、及びデオキシシトシン一りん酸dCMPをDNAと同mole量か一桁多い程度添加する(HBL処理)。」(第3頁第3欄第23行?第31行)、と記載されている。、
(2)対比・判断
(2-1)本願発明2について
本願発明2は、核酸または蛋白質である試料分子に結合させる試薬として、蛍光識別型分子試薬または形態識別型分子試薬を用いることが選択肢として記載されており、このうち、本願明細書の段落【0035】に「明瞭にその形や大きさを現段階の電子顕微鏡等でも識別し得る分子試薬」であると記載された形態識別型分子試薬を用いた、試料分子が核酸である場合の本願発明2について、その進歩性の有無を検討する。
またその際、請求項2から、択一的に記載された蛍光識別型分子試薬及び蛋白質に関する事項を除くと、本願発明2は「形態識別型分子試薬を試料分子に結合させる装置と、試料分子の形態を映像化する走査型電子顕微鏡・透過型電子顕微鏡、走査トンネル電子顕微鏡・分子間力顕微鏡と、蛍光識別型分子試薬の1分子の形態像から、その試薬の種類を特定する画像認識用コンピューターを設けて成る、核酸の塩基配列の解析装置。」に係るものとなるが「蛍光識別型分子試薬の1分子の形態像から」は、その前後の記載及び技術常識からみて明らかに「形態識別型分子試薬の1分子の形態像から」の誤記であるので、以下そのように読み替えた本願発明2について、対比、判断する。
(2-2)対比
そこで、本願発明2と引用例に記載された事項を比較すると、上記引用例記載事項(ii)にある「各塩基に特異的に水素結合し、かつ互いに形(特に分子の長さ)の異なる側基を持った標識分子、例えば、デオキシアデノシン二りん酸dADP、デオキシシトシン一りん酸dCMP」は、本願発明2における「試料分子に結合させる形態識別型分子試薬」に相当し、上記引用例記載事項(i)には、塩基特異的な化学種で標識した後、DNAあるいはRNAの個々の塩基と化学種の結合状態の外形を、走査型電子顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡または原子間力顕微鏡により観測して塩基配列を決定することが記載されているので、本願発明2と引用例に記載された事項は、形態識別型分子試薬を試料分子に結合させ、試料分子の形態を映像化する走査型電子顕微鏡・走査トンネル電子顕微鏡・分子間力顕微鏡と、形態識別型分子試薬の1分子の形態像から、核酸の塩基配列を解析するものである点で一致するが、(イ)前者では、さらに形態識別型分子試薬の種類を特定する画像認識用コンピューターを設けているのに対して、後者には、画像認識用コンピューターを設けることは記載されていない点、及び(ロ)前者は、形態識別型分子試薬を試料分子に結合させる装置を有する塩基配列の解析装置に係るものであるのに対して、後者には、形態識別型分子試薬を試料分子に結合させることは記載されているものの、その装置については具体的に記載されていない点、の2点で相違する。
(2-3)当審の判断
まず、上記(イ)の相違点に関しては、引用例に記載された核酸の塩基配列の解析においては、大量のデータを処理する必要があるから、コンピュータ処理による省力化が望まれることは自明の課題であり、また、本願出願日前、走査型電子顕微鏡・走査トンネル電子顕微鏡・分子間力顕微鏡で試料分子を観察する際に、試料分子から発せられる信号をコンピューターにより処理して、その試料分子解析の目的に応じた画像処理等をすることは、既に周知手段(必要であれば、特開平2-112714号公報、特開平2-268262号公報、特開平2-15545号公報等参照。)であるから、引用例2に記載の核酸の塩基配列決定に用いる走査型電子顕微鏡・走査トンネル電子顕微鏡・分子間力顕微鏡に画像認識用コンピューターを設けて形態像から試薬の種類を特定しようとすることは、当業者であれば極めて容易に想到し得たことである。
また、上記(ロ)の相違点に関しても、上記引用例記載事項(iv)の実施例で形態識別型分子試薬を試料分子に結合させることが記載されており、明記はされていないが、その際何らかの装置を用いて結合させていることは明らかであるから、上記(ロ)の相違点は実質的な相違ではないか、あるいは少なくとも当業者が必要に応じて随時なし得たことにすぎない。
そして、本願明細書には、本願発明2に係る解析装置が記載されているものの、実際にその解析装置により形態識別型分子試薬を結合させた核酸について、その塩基配列を解析したことは記載されていないので、本願発明2において奏される効果が、引用例の記載及び上記周知手段から予測できない程の格別なものであるとはいえない。
したがって、本願発明2は引用例の記載及び上記周知手段に基づき当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項2に係る発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-03 
結審通知日 2009-12-08 
審決日 2010-01-04 
出願番号 特願平6-275693
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12Q)
P 1 8・ 561- Z (C12Q)
P 1 8・ 57- Z (C12Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 大輔高堀 栄二六笠 紀子  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 吉田 佳代子
鵜飼 健
発明の名称 核酸の塩基配列や蛋白質の分子構造等の解析法及び解析装置  
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