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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1213758
審判番号 不服2008-3421  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2010-03-19 
事件の表示 特願2004-186006「多層容器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 8160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年6月24日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成21年12月7日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】ポリアミド層と、ポリエチレン層と、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたポリエチレン層と、から構成される少なくとも3層の積層構造を有する燃料用多層容器であって、
上記ポリアミド層が、ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂を含む樹脂混合物100重量部に対し、粒子径が15nm以上150nm以下の無機化合物を0.01重量部以上0.15重量部以下の割合で含有して成ることを特徴とする燃料用多層容器。」

2.引用発明
当審が平成21年11月5日付け拒絶理由通知書において引用した特開平8-319417号公報(以下、「引用文献1」という)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】 芳香族ポリアミド100?60重量%、及び脂肪族ポリアミド0?40重量%よりなるポリアミド樹脂と、陽イオン交換容量が30ミリ当量/100g以上である層状珪酸塩からなり、該層状珪酸塩が灰分量として0.01?20重量%含まれ、その10%以上が50オングストローム以上の層間距離で分散していることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
…(中略)…
【請求項8】請求項1ないし7記載のポリアミド樹脂組成物を用いてなるフィルム。」
(イ)(段落番号【0012】)
「本発明に用いられる層状珪酸塩としては、粒径が10?1000オングストローム、単位構造がAl、Mg、Li等を含む八面体シート構造を2枚のシリケート四面体シート構造がはさんだ形の2:1型が好適でありその単位構造である1層(以下、単位層と称す)の厚みは通常9.5オングストローム程度、単位層間の距離は10?20オングストロームである。具体的には、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられ、天然のものでも合成されたものでも良い。」
(ウ)(段落番号【0016】)
「本発明のポリアミド樹脂組成物及びフィルムにおける層状珪酸塩の含有量は、灰分量として0.01?20重量%である。…(中略)…好ましい層状珪酸塩の含量は、フィルムにおいては、ガスバリヤー性と靱性の点から0.1?10重量%、更に好ましくは0.3?5重量%、最も好ましくは0.5?3重量%であり、…(後略)…」
(エ)(段落番号【0044】)
「…(前略)…本発明のフィルムは、フィルム状あるいはシート状物、更にはこれから構成される容器、ボトル等の任意の成形体用途に適用できる。例えば食品包装用フィルム、特にレトルト処理食品包装用フィルム等に用いられる。また、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、無水マレイン酸等による酸変性エチレチン-α-オレフィン共重合体、アイオノマー樹脂等の他の熱可塑性樹脂と積層して使用することも可能であり、例えばガソリンや燃料ガス等の燃料用のタンクやホース等のガスバリヤー層、金属缶の内装、医療用輸液バッグ等に用いられる。」
以上の記載から引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。
「ポリアミド樹脂中に、粒径が10?1000オングストロームの層状珪酸塩を、0.1?10重量%含有するポリアミド樹脂混合物を用いてなるフィルムをガスバリヤ-層として、ポリエチレンと積層したガソリンや燃料ガス等の燃料タンク。」

3.対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「層状珪酸塩」と本願発明の「無機化合物」はポリアミド層に含まれる微粒子である限りにおいて一致し、引用発明の層状珪酸塩の粒径「10?1000オングストローム」は、換算すれば、「1?100nm」ということになり、本願発明の無機化合物の粒子径「15nm以上150nm以下」と「15nm?100nm」の範囲で一致し、また、引用発明の層状珪酸塩の含有割合「0.1?10重量%」は、換算すると樹脂材料100重量部に対して0.10重量部以上11.11重量部以下に相当するので、本願発明の無機化合物の含有量である樹脂材料100重量部に対し0.01重量部以上0.15重量部以下の割合とは「0.10?0.15」の数値範囲で一致しているものと認めることができる。
よって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりとなる。
【一致点】
「ポリアミド樹脂100重量部に対し、粒子径が15nm以上100nm以下の微粒子を0.10重量部以上0.15重量部以下の割合で含有したポリアミド層をポリエチレン層と積層した燃料用多層容器」
【相違点1】
本願発明において、微粒子が「無機化合物」であるのに対し、引用発明においては、「層状珪酸塩」である点。
【相違点2】
本願発明において、燃料用多層容器がポリアミド層と、ポリエチレン層と、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたポリエチレン層と、から構成される少なくとも3層の積層構造を有するのに対し、引用発明においては、ポリアミド層とポリエチレン層を積層させている点。

4.判断
そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
無機化合物は層状珪酸塩をも含むものであり、また、本願発明は無機化合物が層状であることや珪酸塩であることを除外していないものと認められるので(上記意見書の(4)参照)、相違点1実質的な相違点ではない。
(2)相違点2について
ポリアミド層とポリエチレン層に不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたポリエチレン層を加えた少なくとも3層の積層構造を有する燃料用多層容器は本願出願前周知(必要なら、3層構造の周知例として、特開平4-47938号公報、特開平4-47918号公報、特開昭55-91634号公報、特開昭54-113678号公報等参照)である。
してみれば、上記引用発明の粒子径が15?100nmの層状珪酸塩を0.10?0.15重量部の割合で含有するポリアミドフィルムを、上記本願出願前周知の「ポリアミド層と、ポリエチレン層と、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたポリエチレン層とから構成される少なくとも3層の積層構造を有する燃料用多層容器」のポリアミド層に用いることは当業者が容易に想到しうる事項と認められる。
なお、出願人は平成21年12月7日付け意見書において、『引用文献1には、特許請求の範囲にこそ「0.01?20重量%」という層状珪酸塩の灰分量が特定されているにも拘わらず、層状珪酸塩を少量側に限定することによって、燃料非透過性と共に、耐衝撃性を向上させることができることはもとより、このような少量添加の実施例すら記載されていないのであります。したがって、引用文献1の上記のような記載内容から、バリヤー層としてのポリアミド層における無機化合物の含有量をポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂を含む樹脂混合物100重量部に対して、0.01重量部以上0.15重量部以下の割合とし、もってガソリンなどの燃料非透過性と耐衝撃性とを両立させるという本願発明の燃料用多層容器に想到することは、たとえ当業者であっても全く不可能であって、本願発明は、上記引用文献1と周知技術との組み合わせによって容易になされたものには当たらないと確信する次第であります。』(「(4)本願発明と引用発明との対比」参照。)と主張しているが、本願明細書の段落【0012】で「…含有量は0.01?0.1重量部であるのがよい。」としながら、本願発明は含有量を0.10?0.15重量部の範囲内とするものを含んでおり、上記2.(ウ)に記載されたように、引用発明はガスバリヤー性と靱性(壊れにくさ)を良好にする目的で0.10?0.15重量部の範囲内の割合で無機化合物を含有させることができるのであるから、このようなものについて引用発明と本願発明の間に顕著な効果上の差異があるとは認められず、本願発明は引用発明から容易になし得たものである(特許庁審査基準「第II部第2章 新規性進歩性」の「2.5論理づけの具体例」(3)中の「数値限定を伴った発明における考え方」の欄を参照)。
なお、付言すれば、上記2.(ア),(ウ)の記載からみて、引用文献1には、引用発明において無機化合物を0.01?0.10重量%(0.01?0.10重量部に相当)の範囲内の割合として実施することも示唆されているものと認められる(同様に、本願においても、発明の詳細な説明の欄の実施例に無いにもかかわらず、特許請求の範囲の請求項1の記載には含有量0.01重量部とすることが含まれ、これを実施することを示唆しているものと解することができる)。

結局、本願発明を全体構成でみても、引用発明及び上述した周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前より周知技術に照らし、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、当審で通知した拒絶理由1によって拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-21 
結審通知日 2010-01-22 
審決日 2010-02-03 
出願番号 特願2004-186006(P2004-186006)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 熊倉 強
谷治 和文
発明の名称 多層容器  
代理人 的場 基憲  

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