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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F |
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管理番号 | 1214281 |
審判番号 | 不服2008-18430 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-18 |
確定日 | 2010-04-02 |
事件の表示 | 特願2003- 44973「液晶パネル用露光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-264371〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は平成15年2月21日の出願であって、平成20年3月17日付けで拒絶理由が通知され、同年5月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月12日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年7月18日に本件審判請求がされるとともに、同年8月12日付けで明細書について手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同年7月18日付けの審判請求書の請求の理由について同年9月8日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本件補正の目的要件の検討 本件補正は、平成20年5月26日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲についての 「【請求項1】 マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方をステージによって移動させながら露光する露光装置において、 前記ステージを構成する材質として、密度が3.0g/cm^(3) 以下のセラミックスを用い、かつ前記ステージをハニカム構造または多孔質構造によるセラミックス部材を中央部が中空になるように構成して軽量化したことを特徴とする液晶パネル用露光装置。 【請求項2】 前記密度が3.0g/cm^(3) 以下のセラミックスとして、室温での熱膨張係数が-1.5?1.5×10^(-6)/℃であり、炭化珪素とガラスを主成分としたセラミックスを用いることを特徴とする請求項1の液晶パネル用露光装置。 【請求項3】 前記密度が3.0g/cm^(3) 以下のセラミックスとして、室温での熱膨張係数が-1.5?1.5×10^(-6)/℃であり、窒化珪素とガラスを主成分としたセラミックスを用いることを特徴とする請求項1の液晶パネル用露光装置。 【請求項4】 前記セラミックスが、多孔質構造を有するセラミックスをハニカム構造にすることにより、緻密質セラミックスに比し1/2以下に軽量化されたことを特徴とする請求項1?3のいずれかの液晶パネル用露光装置。 【請求項5】 マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方をステージによって移動させながら露光する露光装置において、 前記ステージを構成する材質としてセラミックスを用い、該セラミックスは、室温での熱膨張係数が0.5?3.0×10^(-6)/℃である炭化珪素あるいは窒化珪素とガラスによる焼結体からなり、前記ステージとして中央部を中空にすると共にハニカム構造または、多孔質構造、あるいはそれらの組合せにより軽量化されたステージを備えることを特徴とする露光装置。 【請求項6】 マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方をステージによって移動させながら露光する露光装置において、 前記ステージを構成する材質として、密度が3.0g/cm^(3) 以下のセラミックスを用い、かつ前記ステージをハニカム構造または多孔質構造による複数のセラミックス部材を中央部が中空になるように貼り合わせて構成して軽量化したことを特徴とする露光装置。」 の記載を、 「【請求項1】 マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方をステージによって移動させながら露光する露光装置において、 前記ステージを構成する材質として、密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスを用い、かつ前記ステージをハニカム構造または多孔質構造によるセラミックス部材を中央部が中空になるように構成して軽量化し、 前記密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスとして、室温での熱膨張係数が-1.5?1.5×10^(-6)/℃であり、炭化珪素あるいは窒化珪素とガラスを主成分とした複合セラミックスを用いることを特徴とする液晶パネル用露光装置。 【請求項2】 前記複合セラミックスが、多孔質構造を有するセラミックスをハニカム構造にすることにより、緻密質セラミックスに比し1/2以下に軽量化されたことを特徴とする請求項1の液晶パネル用露光装置。」 と補正するものである。 すると、本件補正は、本件補正前の請求項1,5,6を削除し、本件補正前の請求項2,3をまとめて本件補正後の請求項1とし、本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項2とする補正であるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法」という。)第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とする補正に該当する。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合する。 第3 本件出願の請求項1に係る発明の認定 上記第2で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とする補正であるから、当審は、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)を審理対象とする。そして、本件発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方をステージによって移動させながら露光する露光装置において、 前記ステージを構成する材質として、密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスを用い、かつ前記ステージをハニカム構造または多孔質構造によるセラミックス部材を中央部が中空になるように構成して軽量化し、 前記密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスとして、室温での熱膨張係数が-1.5?1.5×10^(-6)/℃であり、炭化珪素あるいは窒化珪素とガラスを主成分とした複合セラミックスを用いることを特徴とする液晶パネル用露光装置。」 第4 当審の判断 1 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2000-281454号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のa?hの記載がある。 a 「【請求項1】LiAlSiO_(4) と、Si_(3) N_(4) 又はSiCと、MgOの3成分から成ることを特徴とする低熱膨張高剛性セラミックス。 【請求項2】LiAlSiO_(4) 60?90体積%、Si_(3) N_(4) 10?40体積%を主成分とし、これらに対しMgO1?3体積%を含むことを特徴とする請求項1記載の低熱膨張高剛性セラミックス。 【請求項3】熱膨張率-0.1?0.9×10^(-6)/℃、ヤング率130?175GPa、比重2.4?2.7であることを特徴とする請求項2記載の低熱膨張高剛性セラミックス 【請求項4】LiAlSiO_(4 )70?90体積%、SiC10?30体積%を主成分とし、これらに対しMgO1?3体積%を含むことを特徴とする請求項1記載の低熱膨張高剛性セラミックス。 【請求項5】熱膨張率-0.1?1.0×10^(-6)/℃、ヤング率130?145GPa、比重2.4?2.5であることを特徴とする請求項4記載の低熱膨張高剛性セラミックス。」 b 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造プロセスにおける露光装置のステージ部品、チャック、構造部品、ミラー等の部材や天体望遠鏡等の光学部品や精密測定機用治工具等に適した低熱膨張高剛性セラミックスに関する。」 c 「【0002】 【従来の技術】LSIなどの製造工程において、シリコンウェハに配線を形成する工程において、ウェハを支持または保持するためのサセプタ、真空チャックや絶縁リングとしてあるいはその他の治具等として、これまでアルミナや窒化珪素や炭化珪素が比較的安価で、化学的にも安定であるため広く用いられている。また、露光装置のX-Yテーブル等としても従来よりアルミナや窒化珪素などのセラミックスが同様に用いられている。 【0003】また、最近では、コージェライトの低熱膨張性を利用し、半導体製造用部品として応用することが、特開平1-191422号や特公平6-97675号で提案されている。特開平1-191422号によれば、X線マスクにおけるマスク基板に接着する補強リングとして、SiO_(2) 、インバーなどに加え、コージェライトによって形成しメンブレンの応力を制御することが提案されている。また、特公平6-97675号では、ウェハを載置する静電チャック用基板としてアルミナやコージェライト系焼結体を使用することが提案されている。 【0004】従来、低熱膨張材料として、コージェライトやリチウムアルミノシリケート(以降、LASと表記)、リン酸ジルコニウム系材料のリン酸ジルコニルやリン酸ジルコニウムカリウム(以降、KZPと表記)がよく知られている。」 d 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】近年、LSIにおける高集積化に伴い、線幅・デザインルールの微細化が急速に進められ、その線幅は0.35μmから0.10μmまで微細化しつつある。そして、Siウェハに微細な線幅を形成するための露光装置に対して、高い精度が要求されるようになり、たとえば露光装置のステージ用部材においては10nm未満の位置決め精度が要求され、露光の位置合わせ誤差の低減が製品の品質向上や歩留まり向上、高スループットの実現の大きな要素技術として捉えられている。 【0008】半導体製造装置用部材として、一般に用いられてきたアルミナ、窒化珪素などのセラミックスは、金属に較べて軽量で熱膨張が小さく、剛性も大きい。それぞれの比重はアルミナが3.8、窒化珪素が3.2と軽量である。しかしながら、露光装置の軽量化、また、ステージ等の駆動系部材の軽量化によるモーター負荷低減、振動抑制のためにより軽量材が必要とされてきている。 【0009】一方、露光装置の使用温度近傍の10?40℃の熱膨張率はアルミナが約5.0×10^(-6)/℃、窒化珪素が約1.5×10^(-6)/℃であり、デザインルールの微細化とともに露光時の熱変形を軽減するために、より低熱膨張材が必要とされてきている。 【0010】これに対して、コージェライト系焼結体は熱膨張率が0?0.2×10^(-6)/℃であり、また、結晶化ガラスは熱膨張率が0.0×10^(-6)/℃であり、アルミナや窒化珪素に比較して熱膨張率が低い。しかしながら、剛性の点では、アルミナが約350GPa、窒化珪素が約300GPaであるのに対し、多孔質コージェライトが70?90GPa、また、結晶化ガラスは90?95GPaと低いため、製造装置として用いる場合、変形や固有振動数低下に伴う共振発生による位置決め時間増加が懸念される。 【0011】また、LAS系焼結体のβ-スポジュメンは、比重2.0?2.4、熱膨張率は0.3?2.7×10^(-6)/℃、磁器が気孔を有するもので-0.3?-1.0×10^(-6)/℃と低い値を示すが、ヤング率は60?80GPaと低いものである。リン酸ジルコニルやリン酸ジルコニル-ジルコン化合物は、比重3.5?3.6、熱膨張率0.0?2.0×10^(-6)/℃、ヤング率150?180GPaを示す。比重が大きい割にヤング率はアルミナの半分程度であり、固有振動数の低下が懸念される。 【0012】KZPもまた、結晶軸方向の熱膨張の異方性による低熱膨張特性を顕す材料である。KZPは比重3.1?3.2、熱膨張率-2.5?-2.8×10^(-6)/℃、ヤング率110?130GPaを示す。KZPの熱膨張特性は、負の熱膨張特性を示しているが、その絶対値は窒化珪素の熱膨張率1.5×10^(-6)/℃と比較して大きく、温度変化に対する寸法変化は大きい材料と言える。 【0013】以上のように、露光装置用部材として軽量・低熱膨張・高剛性特性が要求されてきており、部材特性は比重3.2以下、熱膨張係数が0ppmに限りなく近く、剛性は鋳物の130GPa以上が求められているが、これらを満足する材料は見当たらなかった。 【0014】従って、本発明は低熱膨張を有するとともに剛性の高いセラミックスとその製造方法を提供することを目的とするものである。」 e 「【0015】 【課題を解決するための手段】本発明は、正の熱膨張特性を有しかつ高剛性特性を有する材料と負の熱膨張特性を有する材料とを複合化することにより、低熱膨張特性と高剛性特性を有する材料を得るようにした。 【0016】即ち、本発明の低熱膨張高剛性セラミックスは、負の熱膨張特性を有するLiAlSiO_(4) と、正の熱膨張特性を有しかつ高剛性特性を有するSi_(3) N_(4) 又はSiCと、MgOの3成分から成ることを特徴とする。 【0017】また、本発明の低熱膨張高剛性セラミックスは、LiAlSiO_(4) 60?90体積%、窒化珪素10?40体積%、MgO1?3体積%の組成からなり、比重2.4?2.7、熱膨張係数が-0.1?0.9×10^(-6)/℃、ヤング率130?175GPaとなることを特徴とする。 【0018】また本発明の低熱膨張高剛性セラミックスは、LiAlSiO4 70?90体積%、炭化珪素10?30体積%、MgO1?3体積%の組成からなり、比重2.4?2.5、熱膨張係数が-0.1?1.3×10^(-6)/℃、ヤング率130?145GPaとなることを特徴とする。 【0019】 【発明の実施の形態】本発明の低熱膨張高剛性セラミックスは、軽量高剛性特性を有する窒化珪素もしくは炭化珪素と、LASとして知られる一般式LiAlSiO_(4) で表される複合酸化物とを主成分とし、焼結助剤成分としてMgOを1?3体積%含むものである。」 f 「【0032】次に複合化仕様評価を行った。平均粒径0.9μmで純度99.9%以上の窒化珪素粉末、6.4μmのLiAlSiO_(4) 粉末、平均粒径0.7μmのMgOを窒化珪素粉末とLiAlSiO_(4) 粉末の総量に対し2体積%とし、表2の仕様で配合し、ボールミルにより24時間混合・粉砕した後、造粒・乾燥行った。その原料粉末を所定の形状に成形した後、窒素雰囲気下にて焼成し、複合磁器の外観及び比重・熱膨張率・ヤング率の磁器特性について評価を行った。 【0033】評価の結果を表2に示す。LiAlSiO_(4) :窒化珪素=60:40?90:10で熱膨張率-0.1?0.9×10^(-6)/℃、ヤング率130?175GPaとなる欠陥のない磁器が得られた。 【0034】 【表2】 」 g 「【0039】平均粒径0.7μmで純度99.9%以上の炭化珪素粉末、6.4μmのLiAlSiO_(4) 粉末、平均粒径0.7μmのMgOを窒化珪素粉末とLiAlSiO_(4) 粉末の総量に対し2体積%とし、表4の仕様で配合し、ボールミルにより24時間混合・粉砕した後、造粒・乾燥を行った。その原料粉末を所定の形状に成形した後、窒素雰囲気下にて焼成し、複合磁器の外観及び比重・熱膨張率・ヤング率の磁器特性について評価行った。 【0040】評価の結果を表4に示す。LiAlSiO_(4) :炭化珪素=70:30?90:10で熱膨張率-0.1?0.9×10^(-6)/℃、ヤング率130?145GPaとなる欠陥のない磁器が得られた。 【0041】 【表4】 」 h 「【0042】 【発明の効果】以上、詳述したとおり、本発明によれば、窒化珪素とLiAlSiO_(4) の複合化により、熱膨張率-0.1?0.9×10^(-6)/℃、ヤング率130?175GPa、比重2.4?2.7となる低熱膨張高剛性セラミックスを得ることができる。また、炭化珪素とLiAlSiO_(4) の複合化により、熱膨張率-0.1?0.9×10^(-6)/℃、ヤング率130?145GPa、比重2.4?2.5となる低熱膨張高剛性セラミックスを得ることができる。 【0043】この低熱膨張高剛性セラミックスを高微細な回路を形成するためのウェハの支持または支持台を構成する露光装置用部品、例えば、ステージ部品、真空チャック、ミラーとして用いることにより温度変化に対して寸法安定性に優れ、変形・振動の影響が極めて少なく、半導体素子製造の品質と量産性を高めることができる。」 また、原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である国際公開第02/33485号(以下「引用例2」という。)には、以下のi?nの記載が図面とともにある(なお、引用例2のパテントファミリーである特表2004-512677号公報による訳文を記載した。)。 i 「発明の分野 [0001] 本発明は極紫外リソグラフィ(EUVL)に関する。さらに詳しくは、本発明は石英ガラスベース軽量材料でつくられたEUVL装置に関する。」 j 「[0006] EUVL装置の動作においては、EUV光24がマスク4で反射される。反射光47が、反射光47を導き、反射光47の寸法を縮小するために用いられる、光学系6内部のミラー(図示せず)でさらに反射される。光学系6で達成される寸法縮小により、ウエハ7上に焼き付けられるべき像を(マスク4上の像より)小さくすることができる。一般に、そのような焼付プロセスは、マスク4とウエハ7がともに精密かつ協調的な態様で移動されなければならない、ステップアンドスキャンモードで行われる。そのような移動は、マスク(レチクル)4及びウエハ7をそれぞれ、コンピュータ(図示せず)で制御される、可動ステージ5及び8上におくことにより可能になる。ステージ5または8は一般に、マスク4またはウエハ7を保持するためのホルダ(図示せず)をもつX-Y定盤(X及びY方向に移動できる定盤)を備える。ステージの移動は、コンピュータで制御される電動式位置決め装置により達成される。これらのステージにより、装置の初期設定におけるコンポーネントの位置合せも容易になる。 [0007] 投影型リソグラフィ装置では、コンポーネント(例えば、マスク、ミラー及びウエハ)の精密な位置合せが、ウエハ基板上への正確なパターン作成に絶対に必要である。EUVLに必要な精度は、光リソグラフィに対する精度より厳格である。これらの要因が、動作波長におけるEUVL装置の性能を決定するための、あるいは装置を所望の特性に調整し、適合させるための、高精度EUV波面測定干渉計の開発を促した。これらの目的のためには、容易に調整できるコンポーネントが肝要である。それぞれのコンポーネントが調整可能なステージ上にあれば、そのような調整が容易になるであろう。 [0008] 位置合せ作業またはスキャン動作中のいずれであろうとも、ステージの重量が大きいほど、熱をより多く発生するより強力なモーターが必要となるから、ステージの重量が大きいと精度及び性能が阻害される。熱は装置の温度を高め、EUVL装置は温度変化に極めて敏感である。さらに、重量が大きくなるほど装置の操作性が阻害される(すなわち、スキャン動作における高精度制御の達成が困難になる)。したがって、容易操作性、すなわち 向上した位置決め及びスキャン精度を得るためには、上記のコンポーネントを軽量で高剛性の材料でつくること、あるいはコンポーネントの重量を低減するために磁気浮揚を用いることが望ましい。磁気浮揚はEUVL装置の開発初期に成功裏に用いられたが、今では軽量材料の使用に関心が移っている。」 k 「[0010] コンポーネント重量の最小化だけでなく、理想的なEUVL装置は良好な熱応答も有するべきである。すなわち、装置は温度変化に敏感であるべきではない。したがって、EUVL装置に使用するためには、軽量で低熱膨張のステージを有することが望ましい。」 l 「[0019] 本発明の実施形態のいくつかは、EUVL装置に使用するための軽量ステージに関する。EUVL装置におけるマスク及びウエハのステップアンドスキャン動作は、ステージの総重量が最小化されれば、制御がより容易になる。 [0020] 図2は、本発明にしたがう軽量ステージの一実施形態を示す。本実施形態において、ステージは、定盤31,ホルダ32及びいくつかの付属部品(例えば、位置決めアクチュエータまたはモーター)33,34及び35を備える。定盤31は軽量材料でつくられる。軽量材料は、ガラスまたはガラス-セラミックとすることができる。これらの材料は、重量をさらに低減するために、ハニカム構造体のような空洞包含構造体とすることもできる。熱膨張はEUVL装置の精密動作に有害であるから、これらの軽量材料は低い熱膨張係数(CTE)も有することが好ましい。適切な軽量低CTE材料には、(商品名HPFS(登録商標)ガラスでコーニング社(Corning Inc.)から販売される材料のような)高純度石英ガラス及び(商品名ULE(登録商標)ガラスでコーニング社から販売される材料のような)超低膨張ガラスがある。 [0021] 高純度石英ガラス(例えば、コーニング社のHPFS(登録商標)ガラス)は、火炎加水分解により製造される合成非晶質二酸化ケイ素ガラスである。非晶質で、無色の無水ケイ酸ガラスは極めて低い熱膨張係数を有する。超低膨張ガラス(例えば、コーニング社のULE(登録商標)ガラス)は火炎加水分解により製造される融成チタン-ケイ酸ガラスであり、極めて低いCTE(例えば、5℃から35℃の温度範囲にわたって±30ppb/℃)を有する。超低膨張ガラスはガラス-セラミックではなくガラスであり、超低膨張ガラス内には結晶構造がないという点で、他の超低膨張材料とは異なる。これらのガラスのいずれを使用するかは、用途による。理想的なステージでは、応力及び歪みを最小限に抑えるように、ステージとステージが支持する物品(マスクまたはウエハ)との間の膨張による不整合がほとんどまたは全くないことが必須である。 [0022] 本実施形態の定盤31は、ホルダ32が取り付けられた上面、底面及び4つの側面を有する。図2には2つの側面36及び37が示されている。側面36及び37は、光干渉計を用いるステージの位置合せを容易にするために側面36及び37を用い得るように、研磨することができる。あるいは、同じ目的のために、研磨されたプレート(図示せず)を側面36,37に取り付けることができる。定盤31の形状は、図2では長方形として示されているが、例えば、多角形、正方形、長円形及び円形を含む、適切ないかなる形状であってもさしつかえない。さらに、定盤31の上面及び/または底面は、平坦であっても、ある程度の曲率があってもさしつかえない。 [0023] 図2に示されるようなホルダ32は、マスクを(マスクステージ上に)保持するか、またはウエハを(ウエハステージ上に)保持するためのホルダである。ホルダ32は、真空、機械的、及び静電気的機構を含む、技術上既知の機構のいずれかを用いてマスクまたはウエハを保持することができる。とりわけ、米国特許第5,221,403号、第5,835,333号及び第5,835,334号の各明細書に示されるような、静電気的装置が好ましい。ホルダ32はマスクまたはウエハの保持に適すればいかなる形状であってもさしつかえない;例えば、ホルダ32は円形、多角形、正方形(図3Aの32を参照されたい)または長方形のディスクとすることができる。 [0024] ステージを位置決めするかまたは移動させるための付属部品(例えば、モーターまたはアクチュエータ)がステージの底面にあり得る。例えば、図2には3つのそのような付属部品33,34及び35が示されている。付属部品の数は特定のEUVL装置に依存することになろう。定盤を移動させるための技術上既知のいかなるアクチュエータ装置も用いることができる。これらには、リニアモータ、回転モータ、または、圧気型装置、圧液型装置、圧電型及びその他のタイプの電磁型装置を含めることができる。これらの付属部品を備える代わりに、ステージ自体は付属部品を全く備えないでいることもできる。例えば、EULV装置の位置決め装置に連結するための取付け位置または手段(図3Cの43,44,45を参照されたい)を備えることもできる。」 m 「[0026] 上述したように、本発明の実施形態のための材料は、軽量ガラスまたは軽量ガラス-セラミック材料とすることができる。さらに、より優れた熱統制を与えるためには、これらの材料が低熱膨張係数を有することが好ましい。そのような軽量低熱膨張材料には、(コーニング社のHPFS(登録商標)ガラスのような)高純度石英ガラス及び(コーニング社のULE(登録商標)ガラスのような)超低膨張ガラスを含めることができる。重量をさらに低減するため、これらの材料は材料内に空孔を含む構造体となるように作成することができ、その一例はハニカム構造体である。一般的なハニカム構造体は、同等の中実材料より50%から98%小さい、実効密度を有することができる。 [0027] 図4は、ハニカム材料で作成された、本発明の一実施形態を示す。本実施形態では、ステージの定盤が3つの部品31a,31b及び31cからなることができる。上面部品31aは薄い中実個片であって、ホルダ32を備える。中間部品31bはステージの本体であって、ハニカム基板からなる。本図では、ハニカム構造体の、上面から底面に向かう、“チャネル”が示されているが、これが唯一の許容される方向ではない。当業者には、本発明の範囲を逸脱することなくその他の方向も許容されることがわかっているであろう。底面部品31cも薄い中実個片であって、EUVL装置の位置決め装置と連結するための取付け位置または手段43,44,45を備える。3つの取付け位置/手段が示されている;しかし、取付け位置/手段をより多くするかまたはより少なくすることができることに注意すべきである。そのような取付けのための位置及び機構の正確な数はEUVL装置の位置決め装置により規定されることになろう。上面部品31a及び底面部品31cは、技術上既知の、用いられる材料に適するいずれかの方法を用いて本体31bに組み付けることができる。例えば、これらの部品がコーニング社のHPFS(登録商標)ガラスまたはULE(登録商標)ガラスのような軽量低CTEガラスで作成されていれば、上面部品及び底面部品を、低温融着またはフリット融着プロセスを用いて中間部品に融着することができる。例えば、本発明と同じ譲受人に発行された米国特許第6,048,811号の明細書は上記プロセスに適するフリット融着プロセスを開示している。この特許明細書は参照として本明細書に含まれる。」 n 「【請求項1】 リソグラフィ用投影装置において: 投影光ビームを供給するための光放射装置; マスクを保持するマスクステージであって、高純度石英ガラス及び超低膨張ガラスから選ばれる1つからなる軽量材料でつくられているマスクステージ; ウエハを保持する基板ステージであって、前記軽量材料でつくられている基板ステージ;及び 前記マスクの照射部分を前記ウエハの標的部分上に結像させるための光学系; を備えることを特徴とするリソグラフィ用装置。 【請求項2】 前記軽量材料が空孔包含構造体を含むことを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ用装置。」 また、原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2000-18301号公報(以下「引用例3」という。)には、以下のo?vの記載が図面とともにある。 o 「【請求項1】複数のセラミックス部材を、該セラミックス部材よりも内部摩擦の大きい接合材を用いて接合し、全体の内部摩擦5×10^(-4)以上、固有振動数400?4000Hzであることを特徴とする振動減衰部材。」 p 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体関連の製造装置などの分野において、振動減衰特性を向上させた振動減衰部材に関するものである。 【0002】 【従来の技術】セラミックスは軽量、高剛性、高強度、高硬度という特徴を有し、また、耐熱性、耐食性に優れているという特性を活かし、構造部材・耐摩耗部材・耐食部材として多くの分野で利用されており、半導体製造装置の分野でも使用されている。 【0003】現在、半導体業界ではLSIの高集積化に伴い微細化が進み、パターン最小線幅は年々減少している。現在の設計線幅0.35μmであるが1998年には0.25μm、2001年には0.18μm、2004年には0.13μmへ移行すると予想されている。デバイスの製作に用いる描画方式は現在の光露光方式であるが、将来的には高精度・高品質な処理が可能な電子ビーム描画方式、X線描画方式に変更されるようになるといわれている。 【0004】一般的に用いられている紫外線を利用した露光装置は、石英マスク(レチクル)上にあらかじめ形成されたクロム薄膜のパターンをシリコン基板上の感光性樹脂膜(レジスト)に縮小転写(通常1/5)するものである。このレジストパターンが基板あるいは基板上の積層膜をエッチングする際のマスク材となる。 【0005】また、ウェハーサイズは、現在の200mmから2000年もしくは1999年に300mmへのサイズアップが予定されている。サイズアップに伴う描画面積の増大のため、より高精度な対応と高速描画対応の2点が半導体製造装置に望まれる。 【0006】これまでの200mm以下のウェハー対応半導体製造装置では、ソフト面からのバックアップ等で使いこなすことができたがウェハーサイズアップ、線幅の微細化対応により、対応できなくなった。そこでシステム全体の見直しを行うこととなった。 【0007】半導体製造装置は、およそ照明系・駆動系・支持系の3つの要素からなるといえる。共通して言えることであるが特に駆動系は、熱・振動・磁場の発生源であり、装置の設計は次のような方針で行う。 【0008】○1各部の温度制御を±0.1℃とする。低熱膨張材料から構成すること ○2非磁性材料から構成すること ○3長寿命であること ○4小型であること ○5構造が簡単なこと ○6材料の加工性がよいこと ○7耐摩耗性に優れること 以上の設計方針を満足し、低熱膨張・高剛性という特性を活かして半導体製造装置の部品の材質としてセラミックスが選定されている(当審注:「○1」?「○7」は、「丸付き数字1」?「丸付き数字7」を意味する。)。 【0009】更に半導体製造装置の部材には、スループット向上のため固有振動数の高い部材が求められる。固有振動数の値が低いと共振が発生しやすくなり、ウェハーの位置決めに要する時間が長くなるため、スループットを上げることが難しくなる。しかも、固有振動数が高いままに減衰特性が優れる複雑形状をした構造体が要求されている。 【0010】振動の影響は、装置精度がnmオーダーの精度を問題としているため、振動の安定に要する時間が描画時間の長さに反映される。従って、高速描画対応は装置の駆動系から発生する振動をすみやかに減衰することが必要な条件となる。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】ところが、セラミックスで半導体製造装置用部材を構成する場合、大型化への対応が困難であるという問題があった。 【0012】即ち、上述したようにウェハの大型化に伴い、半導体製造装置の大型化が求められているが、セラミックスはその製造工程上、大型品を製造することが難しく、振動減衰特性に優れ、かつ大型のセラミックス部材を得ることは困難であった。」 q 「【0013】 【課題を解決するための手段】そこで本発明は、複数のセラミックス部材を、該セラミックス部材よりも内部摩擦の大きい接合材を用いて接合し、内部摩擦5×10^(-4)以上、固有振動数400?4000Hzの振動減衰部材を構成したことを特徴とする。 【0014】即ち、複数のセラミックス部材を接合することによって、大型品を容易に作製するとができ、しかもこの接合材として内部摩擦の大きいものを用いることによって、全体の振動減衰特性を向上させることができ、大型の振動減衰部材とすることができるのである。。」 r 「【0018】図1に示す振動減衰部材1は、セラミックス製の第1部材2、第2部材3を、このセラミックスよりも内部摩擦の大きい接合材5で接合し、内部に中空部4を備えたものである。 【0019】このように複数のセラミック部材を接合することによって、大型品や複雑形状品を容易に形成することができ、詳細を後述するように、振動減衰特性を向上させることができる。また、上記中空部4を備えることで、軽量化するとともに、配線配管を施すことができる。 【0020】この振動減衰材1は、例えば半導体製造装置のステージ、スライダー等、外部に電気配線、エア配管を有していたものを中空部4に内装することが可能となり、装置をコンパクトに設計することができる。」 s 「【0021】また、他の実施形態として図2に示すように、中空部4を外部に開口した形状とすることもできる。 【0022】これは、例えば、半導体製造装置のレチクルステージ、ウェハーステージ等の駆動部品に用いることにより、軽量化することで高速駆動を可能とすることができる。」 t 「【0064】実施例2 上記実施例と同様のアルミナセラミックスを使用して300×450×20mmのステッパー用ステージ部材を製作した。 【0065】なお、ステッパーとは、半導体のシリコンウェハー上にパターンを描画行うためにX-Y軸(一部Z軸含む)でステップアンドリピート動作を繰り返すためのステージであり、ここで製作したステージは、シリコンウェハーを装着するステージ全体の最上部に位置する部材を指す。 【0066】ステージは、図2に示す構造として、接合材5として上記と同様のエポキシ樹脂を用い、接合面の全面で接合するようにした。各部材の接合面は、塗布前にアセトンを使用して脱脂処理を行い、両方の部材にスクリーン印刷で接合材5を塗布した。その後、接合面を対向させ、加圧力1kgf/cm^(2) で圧着し、20分保持した後、室中で半日保持した。」 u 「【0071】実施例3 上記と同様のアルミナセラミックスを用いて、300×450×20mmのステッパー用ステージ部材を製作した。構造は図1に示すものとし、内部に温度調節用の配管を施すための高さ3mmの中空部4を備えた。また、図1では厚み方向の1/2の位置に接合面を備えたが、この実施例では、厚み方向の1/4となる部分に接合面を備える構造とした。 【0072】接合材5は上記と同様のエポキシ樹脂を用い、接合材5を塗布する面積は全面積の25%とした。接合面は、アセトンを使用して脱脂処理を行い、洗浄した後、スクリーン印刷で接合材を塗布した。次に、接合面を対向させ、加圧力1kgf/cm^(2) で圧着し、20分保持し、室中で半日保持した。」 v 「【0079】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、複数のセラミックス部材を、該セラミックス部材よりも内部摩擦の大きい接合材で接合して振動減衰部材を構成したことによって、複雑形状品や大型形状品であっても、単純形状の部材を接合することで容易に作製することができ、しかも全体の内部摩擦を大きくして振動減衰特性を向上させることができる。」 2 引用例1記載の発明の認定 引用例1の上記記載事項a?hから、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。 「X-Yテーブルとして、LiAlSiO_(4) 70?90体積%、SiC10?30体積%を主成分とし、これらに対しMgO1?3体積%を含み、熱膨張率-0.1?1.0×10^(-6)/℃、ヤング率130?145GPa、比重2.4?2.5である軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた半導体製造プロセスにおける露光装置。」(以下「引用発明」という。) 3 本件発明と引用発明の一致点及び相違点の認定 (1)引用発明の「X-Yテーブル」は、本件発明の「ステージ」に相当し、引用発明の「X-Yテーブル」を備えた「半導体製造プロセスにおける露光装置」と、本件発明の「マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方をステージによって移動させながら露光する露光装置」とは、「ステージ」を備えた「露光装置」である点で一致する。 (2)引用発明の「X-Yテーブルとして、LiAlSiO_(4) 70?90体積%、SiC10?30体積%を主成分とし、これらに対しMgO1?3体積%を含み、」「比重2.4?2.5である軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた」ことと、本件発明の「前記ステージを構成する材質として、密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスを用い、かつ前記ステージをハニカム構造または多孔質構造によるセラミックス部材を中央部が中空になるように構成して軽量化」することとは、「前記ステージを構成する材質として、密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスを用いて軽量化」する点で一致する。 (3)引用例1の上記記載事項dの段落【0009】の記載に照らし、引用発明の「軽量低熱膨張高剛性セラミックス」の「熱膨張率」は、「露光装置」の使用温度近傍での値であると認めることができる。そして、「露光装置」の使用温度は、通常、室温である(例えば、特開2001-68536号公報(段落【0025】)、特開平11-74334号公報(段落【0013】)を参照。)。 また、引用発明の「LiAlSiO_(4)」がガラスであることは、本件出願時における技術常識である(一例として、特開2001-307671号公報(請求項4、段落【0021】、【0035】)を参照。)。 したがって、引用発明の「比重2.4?2.5である軽量低熱膨張高剛性セラミックス」として、「LiAlSiO_(4) 70?90体積%、SiC10?30体積%を主成分とし、これらに対しMgO1?3体積%を含み、熱膨張率-0.1?1.0×10^(-6)/℃」である「セラミックスを用いた」ことは、本件発明の「前記密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスとして、室温での熱膨張係数が-1.5?1.5×10^(-6)/℃であり、炭化珪素とガラスを主成分とした複合セラミックスを用いること」に相当する。 (4)引用発明の「半導体製造プロセスにおける露光装置」と、本件発明の「液晶パネル用露光装置」とは、「露光装置」である点で一致する。 (5)以上から、本件発明と引用発明とは、 「ステージを備えた露光装置において、 前記ステージを構成する材質として、密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスを用いて軽量化し、 前記密度が3.0g/cm^(3)以下のセラミックスとして、室温での熱膨張係数が-1.5?1.5×10^(-6)/℃であり、炭化珪素とガラスを主成分とした複合セラミックスを用いる露光装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1〉 本件発明の「露光装置」は「マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方をステージによって移動させながら露光する」ものであるのに対し、引用発明の「露光装置」は「X-Yテーブル」を有する「露光装置」である点。 〈相違点2〉 「ステージ」を「軽量化」するために、本件発明の「ステージ」は「ハニカム構造または多孔質構造によるセラミックス部材を中央部が中空になるように構成」されているのに対し、引用発明の「軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた」「X-Yテーブル」にはこのような限定がない点。 〈相違点3〉 本件発明の「露光装置」は「液晶パネル用露光装置」であるのに対し、引用発明の「露光装置」は「半導体製造プロセスにおける露光装置」である点。 4 相違点についての判断 (1)相違点1について 露光装置の技術分野では、X-Yテーブルを備えた露光装置が、マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方を前記X-Yテーブルによって移動させながら露光する露光装置であることは、本件出願時における技術常識である(例えば、特開平11-317440号公報、特開平10-22203号公報を参照。)。かかる上記技術常識に照らすと、引用発明の「X-Yテーブル」を備えた「露光装置」は、マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方を前記X-Yテーブルによって移動させながら露光する露光装置であると認めることができる。 また、仮に、引用発明の「X-Yテーブル」を備えた「露光装置」が、マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方を前記X-Yテーブルによって移動させながら露光する露光装置であると認めることができないとしても、上記技術常識に基づいて、引用発明の「X-Yテーブル」を備えた「露光装置」を、マスク上のパターンを基板上に転写露光するために、前記マスク、前記基板の少なくとも一方を前記X-Yテーブルによって移動させながら露光する露光装置とすることは、当業者にとって容易に想到し得る。 したがって、上記相違点1は実質的に相違点ではない、または、仮に、上記相違点1が実質的に相違点であるとしても、上記相違点1に係る本件発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。 (2)相違点2について ア 引用例2の上記記載事項i?nから、引用例2には、露光装置のマスクステージや基板ステージを軽量化するために、これらステージとして軽量低熱膨張材料をハニカム構造としたものを採用するという発明が記載されていると認めることができる。 そして、引用例1の上記記載事項dの段落【0008】、【0013】の記載、上記記載事項fの【表2】のテストNo.2?4の比重の値、上記記載事項gの【表4】のテストNo.1?4の比重の値に照らすと、引用例1に記載された「露光装置」では、X-Yテーブル等露光装置のステージを軽量化することが目的の一つとなっていることは明らかである。 したがって、引用発明の「半導体製造プロセスにおける露光装置」の「軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた」「X-Yテーブル」の軽量化のために、引用例2に記載された発明を適用して、引用発明の「軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた」「X-Yテーブル」をハニカム構造とすることは、当業者にとって容易に想到し得る。 イ 引用例3の上記記載事項o?vから、引用例3には、露光装置のレチクルステージやウェハーステージを軽量化するために、これらステージに中空部を設けるという発明が記載されていると認めることができる。 そして、引用例1の上記記載事項dの段落【0008】、【0013】の記載、上記記載事項fの【表2】のテストNo.2?4の比重の値、上記記載事項gの【表4】のテストNo.1?4の比重の値に照らすと、引用例1に記載された「露光装置」では、X-Yテーブル等露光装置のステージを軽量化することが目的の一つとなっていることは明らかである。 したがって、引用発明の「半導体製造プロセスにおける露光装置」の「軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた」「X-Yテーブル」の軽量化のために、引用例3に記載された発明を適用して、引用発明の「軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた」「X-Yテーブル」に中空部を設けることは、当業者にとって容易に想到し得る。その際、前記中空部を引用発明の「軽量低熱膨張高剛性セラミックスを用いた」「X-Yテーブル」の中央部に設けることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 ウ なお、請求人は、平成20年9月8日付けの手続補正により補正された同年7月18日付けの審判請求書の請求の理由において、引用例1は「軽量化ではなく緻密質のセラミックスを得ることを目的としています。」と主張しているが、上記ア,イで述べたとおり、引用例1の上記記載事項dの段落【0008】、【0013】の記載、上記記載事項fの【表2】のテストNo.2?4の比重の値、上記記載事項gの【表4】のテストNo.1?4の比重の値に照らすと、引用例1に記載された「露光装置」では、X-Yテーブル等露光装置のステージを軽量化することが目的の一つとなっていることは明らかであるから、請求人の上記主張は採用できない。 エ 以上のとおりであるから、引用発明に上記相違点2に係る本件発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。 (3)相違点3について 半導体用露光装置の技術を液晶パネル用露光装置に転用することは通常行われているから(例えば、特開2002-217082号公報(段落【0001】、【0094】、【0096】等)、特開平11-317440号公報(段落【0001】、【0051】等)を参照。)、引用発明の「半導体製造プロセスにおける露光装置」を、液晶パネルを製造するための露光装置として用いることは、当業者にとって容易に想到し得る。 したがって、引用発明に上記相違点3に係る本件発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。 5 本件発明の進歩性の判断 以上検討したとおり、引用発明に上記相違点1?3に係る本件発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。 また、本件発明の効果も、引用例1?3に記載された発明及び本件出願時における技術常識から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本件発明は引用例1?3に記載された発明及び本件出願時における技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本件発明は引用例1?3に記載された発明及び本件出願時における技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本件発明が特許を受けることができない以上、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-29 |
結審通知日 | 2010-02-03 |
審決日 | 2010-02-16 |
出願番号 | 特願2003-44973(P2003-44973) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多田 達也 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
村田 尚英 日夏 貴史 |
発明の名称 | 液晶パネル用露光装置 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 池田 憲保 |