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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する G01C
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G01C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G01C
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G01C
管理番号 1214795
審判番号 訂正2010-390012  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-01-28 
確定日 2010-04-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2876389号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2876389号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 請求の趣旨及び手続の経緯
本件の訂正審判の請求の趣旨は、特許第2876389号(以下「本件特許」という。)の願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)を、本件の審判請求書に添付した明細書(以下「訂正明細書」という。)のとおり訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものである。

本件特許に係る発明についての出願(以下「本件特許出願」という。)は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成6年12月7日(優先日、平成5年12月17日、平成6年2月3日、平成6年3月14日)の出願であって、平成11年1月22日にその発明について特許の設定登録がなされた。
そして、平成21年11月19日に訂正審判(審判番号:訂正2009-390139、以下「第1次訂正審判」という。)が請求されたが、平成22年1月13日に第1次訂正審判の請求は取り下げられた。
その後、本件特許について、平成22年1月22日付けで株式会社コノエより刊行物等提出書(以下「本件刊行物提出書」という。)が提出された後、請求人から同年同月28日に本件の訂正審判が請求されるとともに、同年3月9日付けで上申書が提出された。

第2 本件訂正の内容
本件訂正の内容は次のとおりである。なお、請求項の数は訂正の前後とも7である。

(1)訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。
(訂正前)
「【請求項1】 地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体を有し、前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け、前記情報を非接触で読み取るよう構成した設置位置情報標示器。」

(訂正後)
「【請求項1】 上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体を有し、
前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、
前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け、
前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており、前記情報を非接触で読み取るよう構成した設置位置情報標示器。」
(下線は、訂正箇所を示すために請求人が付したものである。以下の訂正事項においても同様。)

即ち、訂正事項1は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1についての、次の2つの訂正事項からなるものである。

訂正事項1-1
訂正前の「地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体」を「上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体」と訂正する。

訂正事項1-2
「前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており」を追加する。

(2)訂正事項2
特許明細書の特許請求の範囲の請求項6を次のとおり訂正する。
(訂正前)
「【請求項6】 地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体と、
この設置本体に取り付けられて、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体とを備え、さらに、
この磁気識別体に指向性のある磁界を付加して発生した前記特有の周波数の電磁波を検知する磁気検知器、
前記特有の周波数に対応した設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を記憶したメモリ、
検知された特有の周波数に対応した前記情報をメモリから読み出す読出手段、読み出された前記情報を表示する表示手段、および
前記磁気検知器が前記磁気識別体に近接して前記電磁波の強度が大きくなったとき、これを識別して報知する報知手段を有する読み取り装置を備えた設置位置情報標示装置。」

(訂正後)
「【請求項6】 上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体と、
この設置本体に取り付けられて、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体とを備え、さらに、
この磁気識別体に指向性のある磁界を付加して発生した前記特有の周波数の電磁波を検知する磁気検知器、
前記特有の周波数に対応した設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を記憶したメモリ、
検知された特有の周波数に対応した前記情報をメモリから読み出す読出手段、
読み出された前記情報を表示する表示手段、および
前記磁気検知器が前記磁気識別体に近接して前記電磁波の強度が大きくなったとき、これを識別して報知する報知手段を有する読み取り装置を備えた設置位置情報標示装置。」

即ち、訂正事項2は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項6について、訂正前の「地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体」を「上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体」と訂正するものである。

(3)訂正事項3
特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】を次のとおり訂正する。
(訂正前)
「【0005】
【課題を解決するための手段】即ち本発明のうち第一の発明は、地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体を有し、前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け、前記情報を非接触で読み取るよう構成している。」

(訂正後)
「【0005】
【課題を解決するための手段】即ち本発明のうち第一の発明は、上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体を有し、前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け、前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており、前記情報を非接触で読み取るよう構成している。」

(4)訂正事項4
特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】を次のとおり訂正する。
(訂正前)
「【0010】本発明のうち第六の発明は、地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体と、この設置本体に取り付けられて、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体とを備え、さらに、この磁気識別体に指向性のある磁界を付加して発生した前記特有の周波数の電磁波を検知する磁気検知器、前記特有の周波数に対応した設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を記憶したメモリ、検知された特有の周波数に対応した前記情報をメモリから読み出す読出手段、読み出された前記情報を表示する表示手段、および前記磁気検知器が前記磁気識別体に近接して前記電磁波の強度が大きくなったとき、これを識別して報知する報知手段を有する読み取り装置を備えている。」

(訂正後)
「【0010】本発明のうち第六の発明は、上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体と、この設置本体に取り付けられて、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体とを備え、さらに、この磁気識別体に指向性のある磁界を付加して発生した前記特有の周波数の電磁波を検知する磁気検知器、前記特有の周波数に対応した設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を記憶したメモリ、検知された特有の周波数に対応した前記情報をメモリから読み出す読出手段、読み出された前記情報を表示する表示手段、および前記磁気検知器が前記磁気識別体に近接して前記電磁波の強度が大きくなったとき、これを識別して報知する報知手段を有する読み取り装置を備えている。」

第3 当審の判断
1 訂正の目的の適否
(1)訂正事項1について
(1)-1 訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1の「地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体」を、「上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体」と訂正することで、地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体を、上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体に限定したものである。
よって、訂正事項1-1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(1)-2 訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に記載した設置本体について、「前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており」との要件を追加したものである。
よって、訂正事項1-2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなる訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項6の「地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体」を、「上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体」と訂正することで、地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる設置本体を、上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体に限定したものである。
よって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)訂正事項3,4について
訂正事項3,4について併せて検討する。
訂正事項3,4は、発明の詳細な説明の段落【0005】、【0010】のそれぞれに対して、訂正事項1,2による訂正後の請求項1,6の記載との関係において生じている不整合を正すためのものである。
よって、訂正事項3,4は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

したがって、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

2 新規事項の有無
(1)訂正事項1について
(1)-1 訂正事項1-1について
訂正事項1-1の「上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体」についての特許明細書の記載について検討する。

ア 特許明細書の段落【0053】には、「定礎石ユニット203は、図8(a)、図8(b)及び図9に示すように、耐熱、耐久性材料であり、かつ磁気を透過させる材料(例えば、大理石等)によって形成された直方体状の、設置本体としての本体205を有しており、本体205の6つの外面のうちの1つの面(図では上面)は表示部としての刻印面205aとなっている。本体205は、刻印面205aを水平でかつ上方に向け、しかも該刻印面205a側を地上に露出させた形で前記地盤202に埋設されており、従って、定礎石ユニット203は、本体205が地盤202に埋設された形で設置されている。」と記載されており、設置本体の上面を地上に露出させて地盤に埋設することが記載されている。
この他、特許明細書に記載された実施例はいずれも、設置本体に相当する構成は上面を露出させて地盤に埋め込まれるものである。

よって、訂正事項1-1は、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(1)-2 訂正事項1-2について
訂正事項1-2の「前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており」についての特許明細書の記載について検討する。

ア 特許明細書の段落【0023】には、「そして、該ハブ部3eの上面には、図1に示すように、該ハブ部3eの中心を示す二本の中心線13a、13bが、それら中心線13a、13bの交点XPが該ハブ部3eの上面の中心に形成される形で記入されている。」と記載されている。
イ 特許明細書の段落【0050】には、「また、図6のキャップ112の頂面に種々の情報を印刷、刻印などを直接付加するか、または、キャップ112にこれら情報を付加した標示プレートを装着しておいてもよい。」と記載されている。
ウ 特許明細書の段落【0052】には、「また、これら位置標示部材101の上面には、土地の区画番号および方角が情報123として刻印されている。」と記載されている。

訂正事項1-2の中心線を上面に記入することに関する上記アの記載は、打設位置(各基準ポイントの三次元位置)や打設用杭の打設目的等の杭情報を格納しうる記憶手段を有する設置位置情報標示杭についての記載であって(特許明細書の段落【0023】、【0029】、【0032】)、訂正後の請求項1に係る発明で特定される、「土地の区画番号を含む土地に関する情報」を読み出し自在な記録部材を設けた設置位置情報標示器についての記載ではない。
また、訂正事項1-2の区画番号又は方角が記入されることに関する上記ウの記載は、磁気識別体が収容される収容部が設けられた位置標示部材についての記載であるが(特許明細書の段落【0052】)、記録部材である磁気識別体からどのような情報が読み出し自在であるのかについての明示的な記載はない。
しかし、上記イの記載は土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設けた設置位置情報標示器に関する記載であり、当該設置位置情報標示器においても上面に種々の情報を印刷、刻印などを直接付加することが記載されていることを勘案すれば、当該土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設けた設置位置情報標示器の上面に、上記ア、ウの記載のように、区画番号、中心線または方角を記入することは、特許明細書の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

よって、訂正事項1-2は、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

したがって、訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなる訂正事項1は、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(2)訂正事項2について
上記(1)-1に記載したとおり、特許明細書に記載された実施例はいずれも、設置本体に相当する構成は上面を露出させて地盤に埋め込まれるものである。
よって、訂正事項2は、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(3)訂正事項3,4について
訂正事項3,4は、それぞれ訂正事項1,2と同内容の訂正事項であるから、上記(1)、(2)に記載したとおり、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

したがって、本件訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

3 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
上記1の(1)及び(2)に記載したとおり、本件訂正のうち特許請求の範囲についての訂正である訂正事項1及び訂正事項2は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3及び訂正事項4も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

よって、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

4 独立特許要件
(1)本件刊行物提出書について
「第1」に記載したとおり、本件特許に対して、本件の訂正審判の請求前に本件刊行物提出書が提出されている。そして、本件刊行物提出書には、第1次訂正審判により訂正しようとした請求項1に係る発明は、本件刊行物提出書で提出された刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨が記載されている。
そして、第1次訂正審判により訂正しようとした請求項1は、本件訂正後の請求項1と同一のものである。
なお、本件刊行物提出書には、請求項1以外の発明も特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は同条第2号の規定により特許を受けることができない旨が記載されているが、請求項1以外の発明については実質的な理由は記載されていない。

そこでまず、本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明1」という。)が、本件刊行物提出書に記載されるように、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるかどうかについて検討する。

(2)本件訂正発明1
本件訂正発明1は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「 上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体を有し、
前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、
前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け、
前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており、前記情報を非接触で読み取るよう構成した設置位置情報標示器。」

(3)刊行物等に記載された発明
本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物であって、本件刊行物提出書で提出された刊行物1である特表昭58-501693号公報には、以下の事項が図面とともに記載されている(なお、「従つて」を「従って」とする等、通常の仮名遣いに正した箇所がある。)。

<記載事項1>
「 本発明は、電気コイルを基礎とした内部共振回路をもつハウジングを備える、地中における目印用標識に関するものである。」(第1欄第7行?同第9行)

<記載事項2>
「 従って、本発明は、目印目的全般に、すなわち、特定の物体又は線の目印用及び-本発明によって-例えば、土地登記制度における特色ある境界点のような実体をもつ目標と特に関連をもたない座標点の目印用にも、地中コイルが広範に使用される条件を与えるものであるが、本発明による標識が据付けられ、検出される機会が増加し、また確度が向上することによって、前記のような広範な使用が実現するであろう。」(第3欄第9行?同第16行)

<記載事項3>
「 本発明の標識は、製造と据付けの両費用、確度、選択度、及び信頼性について利点をもつので、いままでに予想されていたよりも、はるかに大きなスケールで使用されるであろう。パイプ又はケーブルのように、長く延びた物体に沿って、多数の標識を使用することによって、多数の目標物の目印を設けることができる。しかしながら、本発明の特に重要な態様は、目標物の直接目印に関するものではなくて、土地登記制度における固定点の目印に関するものである。例えば、私有土地区画間の境界点の目印については、すでに例として説明したが、本発明の使用について、さらに大きなステップは、測地固定点の目印が得られることであって、これは、後日に特定の地域における土地測量作業が、大スケールでも又は小スケールでも行われるとき作業を極めて容易にするのに役立つ。本発明による標識が、そのような公共目的に対して使用可能であることは、すでに実演して一般に受け容れられている。公的測地固定点を設定することについての本発明の新しい概念は、極めて重要であり、また、そのような目印は、物質的に現れるものでないので、通常の地表面処理作業の障害物とならないし、また地表面処理作業によって破損されることがないことも利点である。関係地図から固定点の位置を粗く知るときは、現地における正確な位置を適当な捜索装置によって見出すことができる。そして、標識の位置が一旦見出されると、その地点を測量棒又は類似物で、臨時的に見えるような目印をつけておいて、その後は、通常の方法で測量作業を実施できる。」(第5欄第17行?第6欄第19行)

<記載事項4>
「 本発明による標識を、図面を参酌して、以下に詳細説明する。
第1図は、標識の斜視分解図であり、また、第2図は、地中への標識の据付けを示す断面図である。
第1図にも示してあるように、標識は、外部の棒形ケーシング2を備えるが、これは、良好な機械特性と誘電特性をもって、かつ水吸収性の極めて少いPVC(ポリ塩化ビニル)又は類似の材料からなる厚壁の円筒である。ケーシング、すなわち円筒2は、ケーシングがダイカストのときは、後でポリエチレンによって底を完全に閉鎖することが望ましく、また、ケーシング2が、PVC材料の円筒形押出から切断した円筒部材であるときは、適当な密封用栓材料によって底を閉鎖する。どちらの場合でも、ケーシング2は、中心チャネル4をもっており、このチャネルは片方の端末が開放されていて、フェライト棒6を受け入れるようになっている。フェライト棒6の上に、電気コイル8が巻かれており、コイルの対向端末は、コンデンサ10を介して相互に接続されて、共振回路を形成して、50-200KHzの共振周波数をもつことが望ましい。コイル8は、一層のコイルであるので、一般的に、チャネルすなわち穴4は、コア棒6の直径よりもわずか1mm程度大きい直径あればよい。コンデンサ10は、もちろん、棒6の厚みに加わるが、しかし、棒6をチャネル4に挿入したとき、棒6の外側の自由空間を最小にするために、チャネルの壁に、コンデンサ10を収容するためのくぼみ12を設けておく。」(第6欄第20行?第7欄第21行)

<記載事項5>
「 第2図は、狭くかつ埋め戻した地中穴16中に据付けた標識14を示す。」(第8欄第12行?第13行)

<記載事項6>
「 既知の標識は、一般に、上方から粗く検出されると、標識への道を示すことによって、文字通り、発見される目的に役立ってきた。本発明による標識は、もちろん、地中で発見されるべき目的物の目印に関連して同一の目的に役立つことができるが、本発明の前記特別の態様によって、標識を測地用目印及び類似の目印に使用できるので、標識の目的が、第2図に示すように、標識の上の地表地点Pの位置の目印をつけられるというだけが重要である。
公的使用に対しては、標識を据付けた後に、表面レベルがかなり変化しても、高い確度で、地点Pの位置を求めたいという要求があろうが、本発明による標識は、正しく据付けられ、また適度に正確な捜索装置によって捜索されるときは、前記高い確度の条件に十分に適合していることを実験が証明している。」(第9欄第18行?第10欄第7行)

<記載事項7>
「 標識の動作方法又は応答方法を精巧にする多くの可能性がある。例えば、標識に能動素子を含めておき、必要な特性周波数又は、ほかに上方から発生され送信される特性信号、例えば、特別なパルス列によって動作されるコイルに応答して特別の識別信号を発生することができる。前記能動素子は、電池から供給される電圧、又は上方からの無線エネルギー放射によって動作される供給回路からの電圧であってもよい。電池は同じ方法で充電できる。
捜索信号がパルスを基礎とするときは、受動コイル回路から、例えば、最初の共振で動作される周波数変換器によって、又は共振信号を変調する回路の動作によって、別の応答信号を発生することができる。標識の回路は、捜索装置からの符号化アクチュエータ信号にだけ応答して動作するようにできる。さらに、標識の応答回路は、例えば、他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとすることができ、またそのようなプログラミングは、適当な無線動作によって、上方から影響を受けたり、又は再度影響を受けるようにさえもできる。これらすべての可能性及びさらに相当する可能性について、ここにこれ以上詳細を述べる必要ないと考える。これらは、関連技術分野の当業者には公開されるかかである。」(第10欄第8行?第11欄第5行)

ア 記載事項1から、「地中における目印用標識」との技術事項が読み取れる。
また、記載事項3の「公的測地固定点を設定することについての本発明の新しい概念は、極めて重要であり、また、そのような目印は、物質的に現れるものでないので、通常の地表面処理作業の障害物とならないし、また地表面処理作業によって破損されることがないことも利点である。関係地図から固定点の位置を粗く知るときは、現地における正確な位置を適当な捜索装置によって見出すことができる。そして、標識の位置が一旦見出されると、その地点を測量棒又は類似物で、臨時的に見えるような目印をつけておいて、その後は、通常の方法で測量作業を実施できる。」との記載、記載事項5の「第2図は、狭くかつ埋め戻した地中穴16中に据付けた標識14を示す。」との記載、及び、記載事項6の「本発明の前記特別の態様によって、標識を測地用目印及び類似の目印に使用できるので、標識の目的が、第2図に示すように、標識の上の地表地点Pの位置の目印をつけられるというだけが重要である。」との記載からも明らかなように、刊行物1には、地中における目印用標識は、標識全体が地中に埋められるものとして、一貫して記載されている。

イ 記載事項2、記載事項3から、上記アの目印用標識を「土地登記制度における私有土地区画間の境界点の目印として使用する」との技術事項が読み取れる。

ウ 上記アの標識全体が地中に埋められるものであることを考慮すれば、記載事項4から、上記アの目印用標識として、「全体が地中に埋められるケーシング2を備え、ケーシング2は中心チャネル4をもっており、中心チャネル4はフェライト棒6を受け入れ、フェライト棒の上に電気コイル8が巻かれており、電気コイル8の対向端末はコンデンサ10を介して相互に接続されて共振回路を形成して、チャネルの壁にコンデンサ10を収容するためのくぼみ12を設けた標識」との技術事項が読み取れる。

エ 記載事項7から、上記ウの標識の動作方法又は応答方法の変形例として、「標識の応答回路は、捜索信号に応答して他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとする」との技術事項が読み取れる。そして、上記ウの標識においては、共振回路が応答回路であることは明らかであるから、中心チャネル4は、応答回路を受け入れるためのものであるといえる。
そうすると結局、上記ウの標識において、「中心チャネル4に、捜索信号に応答して他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとした応答回路を受け入れる」との技術事項が読み取れる。

したがって、上記ア?エの技術事項を総合勘案すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「全体が地中に埋められるケーシング2を備え、ケーシング2は中心チャネル4をもっており、中心チャネル4に、捜索信号に応答して他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとした応答回路を受け入れ、土地登記制度における私有土地区画間の境界点の目印として使用する、地中における目印用標識。」

本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物であって、本件刊行物提出書で提出された刊行物4である実開平1-97209号公報についての実用新案登録出願の実願昭62-193518号(実開平1-97209号)のマイクロフィルム(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<記載事項8>
「 本考案は、境界石として使用しうるような標杭に関する。」(明細書第1頁第17行?同第18行)

<記載事項9>
「 本考案による標杭は、少なくとも下端部を地中に埋設される標杭であって、その上端部に永久磁石を設けてなるものである。
〔作用〕
埋設された標杭の永久磁石から磁力線が出るため、磁気センサーを使用して、標杭を容易に発見することができる。」(明細書第2頁第10行?同第16行)

<記載事項10>
「 次に、本考案を、第1図ないし第3図に示す第1実施例について説明する。
(1)は、標杭の例として、例えば合成樹脂材からなる測量杭を示し、断面八角形をなす柱体(1a)の下端部は尖端部(1b)に形成され、同じく上端面(1c)の中央には、標識として、例えば十字線(2)が刻設され、基準点を表すようになっている。
柱体(1a)の上端面よりやや下方の中心部には、第3図に示すような円柱状の永久磁石(3)が、その軸線を上下に向けて埋込まれている。
この測量杭(1)は、測量を終えた土地(4)の境界に、第1図に示すように、その上端部を土地(4)の表面からやや露出させて埋設される。」(明細書第2頁第18行?同第3頁第10行)

<記載事項11>
「 再度の測量等の際、もしこの測量杭(1)の上端部が、想像線で示すように、土砂により埋められているか、雑草あるいは落葉等で蔽われて発見が難しいときには、磁気センサー、例えばコンパス(5)を近付ければ、測量杭(1)の近くでは、永久磁石(3)の磁力線により第2図に示すように、その指針(5a)が振れるため、測量杭(1)を容易に見つけ出すことができる。」(明細書第3頁第11行?同第18行)

記載事項8?記載事項11を総合勘案すると、引用文献には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「上端面を土地の表面から露出させて埋設される柱体を有し、柱体には永久磁石が埋込まれ、柱体の上端面の中央には、標識として、基準点を表す十字線が刻設され、永久磁石からの磁力線により磁気センサーを使用して容易に発見することができるようにした測量杭。」

(4)対比
本件訂正発明1と引用発明1とを比較する。

ア 引用発明1の「全体が地中に埋められるケーシング2」と、本件訂正発明1の「上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体」とは、「地盤に埋め込まれる設置本体」の点で共通する。

イ 引用発明1の「捜索信号に応答して他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとした応答回路」は、ケーシング2の外部から非接触で他の標識に対する距離と方向についての個別情報を読み出し自在なものであることは明らかであり、また、当該個別情報の記録部材であるといえる。
したがって、引用発明1の「捜索信号に応答して他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとした応答回路」と、本件訂正発明1の「前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材」とは、前記設置本体の外部から非接触で情報を読み出し自在な記録部材の点で共通する。

ウ 上記イの内容を考慮すると、引用発明1の「中心チャネル4」は、本件訂正発明1の「記録部材保持空間」に相当する。そうすると、引用発明1の「ケーシング2は中心チャネル4をもっており」は、本件訂正発明1の「前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し」に相当する。
また、引用発明1の「中心チャネル4に、捜索信号に応答して他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとした応答回路を受け入れ」と、本件訂正発明1の「前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け」とは、前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で情報を読み出し自在な記録部材を設ける点で共通する。

エ 引用発明1の「土地登記制度における私有土地区画間の境界点の目印として使用する、地中における目印用標識」は、本件訂正発明1の「設置位置情報標示器」に相当する。
また、上記イの内容から、引用発明1の「土地登記制度における私有土地区画間の境界点の目印として使用する、地中における目印用標識」と、本件訂正発明1の「前記情報を非接触で読み取るよう構成した設置位置情報標示器」とは、「情報を非接触で読み取るよう構成した設置位置情報標示器」の点で共通するといえる。

よって、上記ア?エを勘案すれば、本件訂正発明1と引用発明1の両者は、
「 地盤に埋め込まれる設置本体を有し、
前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、
前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で情報を読み出し自在な記録部材を設け、
前記情報を非接触で読み取るよう構成した設置位置情報標示器。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
設置本体の埋め込みについて、本件訂正発明1は、上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体であるのに対して、引用発明1は、全体が地中に埋められるケーシング2である点。

[相違点2]
記録部材から読み出される情報について、本件訂正発明1は、設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報であるのに対して、引用発明1は、他の標識に対する距離と方向についての個別情報である点。

[相違点3]
設置本体について、本件訂正発明1は、上面に区画番号、中心線または方角が記入されているのに対して、引用発明1は、ケーシング2の上面への記入について特定されていない点。

(5)相違点についての判断
上記相違点について検討する。

[相違点1について]
設置本体が上面を露出させて地盤に埋め込まれる旨の特定は、設置位置情報標示器の使用方法を特定するものであるが、本件訂正発明1は設置位置情報標示器の発明であって、その使用方法の発明ではない。
そして、当該使用方法の特定により、本件訂正発明1の設置本体と、引用発明1のケーシング2との間に構成上の差異を生ずるものとも認められない。

よって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

[相違点2について]
引用発明1は、土地登記制度における私有土地区画間の境界点の目印として使用する目印用標識であって、個別情報を発生する応答回路を有するものである。
そうすると、個別情報として、私有土地区画間の境界点を示す際に一般的に必要とされる土地に関する情報を選択することは当業者が適宜なし得る設計変更に過ぎず、土地に関する情報として土地の区画番号はごく一般的なものであるから、引用発明1において、個別情報を土地の区画番号を含む土地に関する情報とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ところで、本件訂正発明1に設けられる記録部材から読み出される「土地の区画番号を含む土地に関する情報」について、訂正明細書の記載を参酌すると、記録部材から直接読み出される具体的な情報は記録部材が発生する電磁波の周波数であり、当該周波数を設置位置情報標示器の外部で土地に関する情報に対応づけることが記載されている(訂正明細書の段落【0031】、【0032】、【0034】、【0043】、【0049】を参照。)。
そうすると、本件訂正発明1における「土地の区画番号を含む土地に関する情報」は、「設置位置情報標示器の外部で土地の区画番号を含む土地に関する情報と対応付け可能な情報」を含むと解される。また、本件訂正発明1の対象である設置位置情報標示器を単独としてみた場合、「土地の区画番号を含む土地に関する情報」は、設置位置情報標示器の外部で土地の区画番号を含む土地に関する情報と対応付け可能なように、設置位置情報標示器毎に識別可能な情報を含むと解される。
これに対して、刊行物1には、標識に能動素子を含めておき、必要な特性周波数に応答して特別の識別信号を発生することができることも記載されている(上記記載事項7を参照。)。そして、当該識別信号は標識毎に識別可能なものであるから、上記の理由により、本件訂正発明1の設置位置情報標示器を単独としてみると、「土地の区画番号を含む土地に関する情報」と区別できないと考えられる。この意味において、当該識別信号は、本件訂正発明1の「土地の区画番号を含む土地に関する情報」に相当するとも解される。

よって、相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。

[相違点3について]
引用発明2を再掲する。
「上端面を土地の表面から露出させて埋設される柱体を有し、柱体には永久磁石が埋込まれ、柱体の上端面の中央には、標識として、基準点を表す十字線が刻設され、永久磁石からの磁力線により磁気センサーを使用して容易に発見することができるようにした測量杭。」

引用発明2の「柱体」、「上端面」、「十字線」、「刻設」は、それぞれ本件訂正発明1の「設置本体」、「上面」、「中心線」、「記入」に相当する。
そこで、引用発明1に引用発明2を適用して、ケーシング2の上面に十字線を刻設、すなわち中心線を記入することが当業者が容易に想到し得る事項であるかどうかについて検討する。

まず、上記「(3)ア」にも記載したとおり、刊行物1には、地中における目印用標識は、標識全体が地中に埋められるものとして、一貫して記載されている。
さらに、上記「(3)ア」で摘記した個別の記載についてみると、「そのような目印は、物質的に現れるものでないので、通常の地表面処理作業の障害物とならないし、また地表面処理作業によって破損されることがないことも利点である。」との利点は、標識の上面が露出されていては得られない利点である。また、「標識の位置が一旦見出されると、その地点を測量棒又は類似物で、臨時的に見えるような目印をつけておいて」との記載は、目視できる目印が必要な場合は、引用発明1の目印用標識とは別の目印を用いることを教示するものである。
したがって、引用発明1の目印用標識は、引用発明2のように上面を露出させて使用することが意図されておらず、上面を露出させて使用することが意図されていない以上、上面に中心線を記入することが容易に想到し得る事項であるとすることはできない。

さらに、引用発明1の捜索信号に応答して他の標識に対する距離と方向についての個別情報を発生するようなプログラムとした応答回路の技術的意義について検討する。
引用発明1は上記のとおり、目印用標識全体が地中に埋め込まれるものであるから、目印用標識自体に個別情報を持たせようとすれば、引用発明1の応答回路のように目視以外の方法により検知できる情報とする必要がある。そうすると、仮に引用発明1の目印用標識を、引用発明2のように上面を露出させて使用するとしても、標識自体に個別情報を持たせる際には、引用発明1のような目視によらない手段である応答回路である必要はなく、引用発明2のようにケーシング2の上面に目視可能な情報があれば足りるのである。
一方、引用発明2は、柱体の上端面に十字線が刻設されると共に、測量杭が埋められたり蔽われて発見が難しいときに、永久磁石の磁力線により容易に発見することができるように柱体に永久磁石が埋込まれたものである(上記記載事項10?記載事項11参照。)。即ち、永久磁石が担う役割は測量杭を発見するためにとどまるのであって、測量杭についての個別情報については、永久磁石に持たせるのではなく、永久磁石により測量杭を発見した後に目視できるよう、柱体の上端面等に表示することを予定するものであると認められる。
そうすると、仮に引用発明1の目印用標識を引用発明2のように上面を露出させて使用し、引用発明2を適用して上面に十字線を刻設したとしても、上面を露出して用いる場合にもなお、個別情報を発生するようなプログラムとした応答回路を採用する動機づけはないと言わざるを得ない。

以上のとおり、上記相違点3に係る本件訂正発明1の発明特定事項は、引用発明1,2に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項であるとすることはできない。

なお、本件刊行物提出書において、上記の刊行物1,4以外に、刊行物2として特開昭61-1884号公報が、刊行物3として実開平3-54815号公報が提出されているが、情報を読み出し可能な記録部材が設けられた設置本体の上面に、さらに区画番号、中心線または方角を記入することは、刊行物2,3のいずれにも記載されていない。また、当審は、この点が記載された本件特許出願の最先の優先日前に頒布された刊行物を発見しない。

よって、本件訂正発明1は、本件刊行物提出書で提出された刊行物1ないし4及び引用文献に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

したがって、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできない。

(6) 特許を受けることができない他の理由
当審は、本件訂正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができない他の理由を発見しない。
また、訂正事項2により訂正される本件訂正後の請求項6に係る発明について、本件刊行物提出書の内容を含めて検討しても、本件刊行物提出書で提出された刊行物1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないし、本件訂正後の請求項6に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない他の理由を発見しない。
さらに、本件訂正後の請求項1を直接又は間接に引用する請求項2ないし5に係る発明、及び、本件訂正後の請求項6を引用する請求項7に係る発明についても、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

(7) 独立特許要件についてのまとめ
よって、本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件の訂正審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の平成6年改正前特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
設置位置情報標示器及び設置位置情報標示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体を有し、
前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、
前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け、
前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており、前記情報を非接触で読み取るよう構成した設置位置情報標示器。
【請求項2】請求項1において、前記設置本体に蓋を、前記記録部材保持空間を開閉自在な形に設けて構成した設置位置情報標示器。
【請求項3】請求項1または2において、前記記録部材は、前記記録部材保持空間から取出し自在なる形で設けられたことを特徴とする設置位置情報標示器。
【請求項4】請求項3において、前記記録部材は、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体である設置位置情報標示器。
【請求項5】請求項1ないし4のいずれかに記載の設置位置情報標示器と、前記設置位置情報標示器内の記録部材に記録された前記情報を非接触で読み取り得る読み取り装置とを備え、前記読み取り装置は、読み出された前記情報を表示する表示手段を備えている設置位置情報標示装置。
【請求項6】上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体と、
この設置本体に取り付けられて、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体とを備え、さらに、
この磁気識別体に指向性のある磁界を付加して発生した前記特有の周波数の電磁波を検知する磁気検知器、
前記特有の周波数に対応した設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を記憶したメモリ、
検知された特有の周波数に対応した前記情報をメモリから読み出す読出手段、
読み出された前記情報を表示する表示手段、および
前記磁気検知器が前記磁気識別体に近接して前記電磁波の強度が大きくなったとき、これを識別して報知する報知手段を有する読み取り装置を備えた設置位置情報標示装置。
【請求項7】請求項6において、さらに、前記磁気識別体に特有の周波数を付加する識別コード付加手段を備えてなる設置位置情報標示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、土地や道路などの位置や、敷地についての各種情報等を標示するのに好適な設置位置情報標示器及び、設置位置情報標示装置及び、設置位置情報標示杭及び、設置位置情報標示定礎石ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、設置位置に関する情報である設置位置情報(例えば土地や道路などの位置や、敷地についての各種情報等)を標示する設置位置情報標示器が使用されている。設置位置情報標示器の具体例としては、位置指示用の杭や測量用の杭などがある。即ち、測量や工事などを行なうためのポイントや、国家軸を成すための基準点などポイントを指示するためには、それらのポイントに杭等を打ち込んで打設し、それら杭により、それらポイントの位置を明示するようにして行なわれていた。また、地籍調査などを行う場合には、位置標示部材として、たとえば実開平2-118815号公報に示されているような測量杭が使用される。この測量杭は、地盤に打ち込まれるもので、細長い棒状とされた杭本体の頭部に、地表に露出するキャップを取付け、このキャップの外面側にその土地の区画番号や基準点からの距離などの情報が付された標示プレートを釘などで打ち付けている。また従来、ビル等の建築物には記念碑的、装飾品的な目的のために、該建築物の建築を着工した日付等が刻印された定礎石が設置されていた。しかし最近、定礎石に、着工した日付だけでなく、該定礎石の設置された敷地についての地球座標上の三次元位置(即ち、緯度、経度、標高)或いは、該定礎石の設置された敷地の所有者名等を刻印記録し、定礎石に、該定礎石の設置された敷地に対する情報記録をもさせようという提案がなされている。なぜなら、敷地に対する情報を定礎石に記録し標示しておくことによって、地震や戦乱等により、建築物等が破壊され、各敷地に対する真の所有者の対応関係或いは、敷地所有者各人の所有している敷地の三次元位置や範囲等を目視判別することが困難になっても、該敷地に設置されている定礎石を探し出して、該定礎石に刻印記録されている、該敷地に対する情報を読み取ることによって、各敷地に対する真の所有者の対応関係或いは、敷地所有者各人の所有している敷地の三次元位置や範囲等を判別することができるからである。このような最近提案されている定礎石は、該定礎石の設置位置である敷地に関する情報を標示することから上述した設置位置情報標示器の一例である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の位置指示用の杭等はどれも同じような形状に形成されているので、杭を見ただけでは、該杭が打設されたポイントの位置や打設目的等の杭情報等の設置位置情報を認識することが出来ない(即ち、地形図や既に作成された測量図面と照らし合わせて、当該杭の位置や目的等をいちいち認識しなければならない。)という不都合があった。また、実開平2-118815号公報に示されているような測量杭によれば、その杭頭が落ち葉や雪などで埋まってしまうと、その標示プレートに付した情報の確認ができなくなる。また、従来提案されている定礎石では、地震や戦乱等により建築物等が破壊されると、破壊による瓦礫が敷地内に堆積し、該瓦礫等の障害物が、最近提案されている前記定礎石を覆い隠すので、該定礎石を探し出しても、該定礎石の刻印記録を読み取るために、定礎石の上方の瓦礫を撤去しなくてはならず、よって、該定礎石の刻印記録の読み取りは困難である。
【0004】
本発明は上記事情に鑑み、設置位置情報の確認を容易に行うことができる設置位置情報標示器及び、設置位置情報標示装置及び、設置位置情報標示杭及び、設置位置情報標示定礎石ユニットを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明のうち第一の発明は、上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体を有し、前記設置本体の内部に記録部材保持空間を形成し、前記記録部材保持空間に、前記設置本体の外部から非接触で設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を読み出し自在な記録部材を設け、前記上面に前記区画番号、中心線または方角が記入されており、前記情報を非接触で読み取るよう構成している。
【0006】
本発明のうち第二の発明は、第一の発明による設置位置情報標示器(1、A、203)において、前記設置本体(2、101、205)に蓋(3、112、206)を、前記記録部材保持空間(12a、113、209)を開閉自在な形に設けて構成される。
【0007】
本発明のうち第三の発明は、第一の発明または第二の発明による設置位置情報標示器において、前記記録部材は、前記記録部材保持空間から取出し自在なる形で設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明のうち第四の発明は、第三の発明による設置位置情報標示器において、前記記録部材は、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体である。
【0009】
本発明のうち第五の発明は、第一の発明ないし第四の発明のいずれかによる設置位置情報標示器と、前記設置位置情報標示器内の記録部材に記録された前記情報を非接触で読み取り得る読み取り装置とを備え、前記読み取り装置は、読み出された前記情報を表示する表示手段を備えている。
【0010】
本発明のうち第六の発明は、上面を露出させて地盤に埋め込まれる設置本体と、この設置本体に取り付けられて、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別体とを備え、さらに、この磁気識別体に指向性のある磁界を付加して発生した前記特有の周波数の電磁波を検知する磁気検知器、前記特有の周波数に対応した設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を記憶したメモリ、検知された特有の周波数に対応した前記情報をメモリから読み出す読出手段、読み出された前記情報を表示する表示手段、および前記磁気検知器が前記磁気識別体に近接して前記電磁波の強度が大きくなったとき、これを識別して報知する報知手段を有する読み取り装置を備えている。
【0011】
本発明のうち第七の発明は、第六の発明において、さらに磁気識別体に特有の周波数を付加する識別コード付加手段を備えてなる。
【0012】
なお、()内の番号等は、図面における対応する要素を示す、便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。以下の作用の欄についても同様である。
【0013】
【作用】
上記した構成により本発明のうち第一の発明では、設置本体に格納された記録部材に記録されている設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を非接触で読み取るので、その情報内容を外部から容易に取り出すことができる。
【0014】
本発明のうち第二の発明では、記録部材(5、102、210)は設置本体(2、101、205)内の記録部材保持空間(12a、113、209)に収納され、かつ蓋(3、112、206)により外部から閉塞される形で設けられる。
【0015】
本発明のうち第三の発明では、記録部材保持空間から記録部材を取出して、別の記録部材と交換したり、記録部材のメンテナンスを行ったり或いは、記録部材の設置位置情報の更新を行ったりする。
【0016】
本発明のうち第四の発明は、記録部材に記録された設置位置情報の読み取りは電磁波を介して行う。
【0017】
上記した構成により本発明のうち第五の発明では、設置位置情報標示器が設置されている場所付近で、読み取り装置を介して、記録部材に記録されている設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を埋設設置された前記設置本体に対して非接触で読み取り、当該情報を表示手段により表示するので、情報の確認を容易かつ正確に行うことができる。
【0018】
本発明のうち第六の発明では、上記設置本体の磁気識別体から発信される電磁波の周波数と対応する設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報がメモリに記憶され、上記磁気識別体から電磁波が発信されたとき、上記メモリに記憶された情報が読出手段により読み出されて表示手段により表示されので、情報の確認を容易かつ正確に行うことができ、各種情報の管理も容易に行われる。また、上記磁気識別体に磁気検知器が近接して、その電磁波の強度が大になったとき、報知手段により報知がなされるので、上記設置本体の位置を確認することができる。従って、上記設置本体の一部だけが地盤に埋め込まれ、この設置本体が落ち葉などで埋まってしまっているような場合、また、上記設置本体の全部が地盤に埋め込まれている場合においても、その位置確認および情報確認が容易かつ正確に行われる。さらに、磁気識別体は設置本体の表面に露出させる必要がなく、設置本体の内部に入れることができるので、火災やいたずらによって消失するおそれがない。また、設置本体の全部を磁気識別体とともに地盤内に埋め込むことにより、これら両者の火災などによる焼失や盗難が一層確実に防止される。
【0019】
本発明のうち第七の発明では、上記磁気識別体から発信される電磁波の特有の周波数が識別コード付加手段により任意に付加または変更される。つまり、磁気識別体に記憶された区画番号のような情報を容易に変更できる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は、本発明による設置位置情報標示器のうち設置位置情報標示杭の一実施例を地盤に打設して、杭情報を読み取り装置により読み取っているようすの一例を示す図、図2は、図1に示す設置位置情報標示杭の断面図、図3は、図1に示す設置位置情報標示杭に収納されている記録部材の一例を示す図、図4は、本発明による設置位置情報標示杭の一実施例が、工事現場に打設されたようすを示す図、図5は、この発明にかかわる設置位置情報標示装置を示すブロック図、図6は、設置位置情報標示器の一例を示す位置標示器一部切欠いた正面図、図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、位置標示器の他の例を示す斜視図、図8(a)は、本発明による設置位置情報標示器のうち設置位置情報標示定礎石ユニットの一例を示した垂直断面図、図8(b)は、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットの表示部を示した平面図、図9は、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットが設置された住宅敷地の平面図、図10は、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットの記録部材を示した斜視図、図11は、図10に示す記録部材より敷地情報の読み取りを行う際に使用される読み取り装置を示した図、図12は、図10に示す記録部材に対して敷地情報の記録を行う際に使用される情報記録装置を示した図、図13は、本発明による設置位置情報標示定礎石ユニットのうち、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットとは別の一例を示した平面図である。
【0021】
工事現場61の地盤表面62eには、図4に示すように、工事を行なううえで基準となる複数の基準ポイントPT(PT1?PT4等)が設定されており、それら基準ポイントPTの設定位置の緯度、経度、高さ等の三次元位置は、事前に測量等を行なって、正確に把握されている。そして、それら基準ポイントPTには、該基準ポイントPTの位置を明示するために、それぞれ設置位置情報標示杭(設置位置情報標示器)としての打設用杭1が打設されている。各打設用杭1は、図1及び図2に示すように、プラスチック等の磁気を透過させ得る材料により形成された設置本体としての杭本体2を有しており、杭本体2は、先端先細り状に形成されている。そのため、杭本体2の図2中下部には、該杭本体2の先端が突出する形で杭打点指示部11が、該杭本体2の図2中上下方向に伸延する軸心TL1に整合する形で形成されており、該杭本体2は、前記軸心TL1が各基準ポイントPTに整合し、且つ軸心TL1が鉛直方向に伸延するように地盤62に打設された形で設置されている。そして、杭本体2の内部には、蓋装着穴12が、該杭本体2の上側(杭打点指示部11と反対側の面)に向けて開口する形で形成されている。
【0022】
従って、杭本体2の周囲のうち該杭本体2の下部側には、図1及び図2に示すように地盤62に埋設されて該地盤62に接した側面6が形成されている。
【0023】
また、杭本体2の前記蓋装着穴12には、図1及び図2に示すように、蓋3が装着されている。即ち、蓋3には、柱部3fが設けられており、蓋3は、該柱部3fによって、前記杭本体2に形成された蓋装着穴12を閉塞開放自在になっている。なお、柱部3fの長さは、前記蓋装着穴12の深さよりも短く形成されている。また、蓋3の上部には、盤状に形成された表示部としてのハブ部3eが、柱部3fと一体に設けられており、ハブ部3eは、前記杭本体2の上面と等しい大きさに形成されている。そして、該ハブ部3eの上面には、図1に示すように、該ハブ部3eの中心を示す二本の中心線13a、13bが、それら中心線13a、13bの交点XPが該ハブ部3eの上面の中心に形成される形で記入されている。このように形成された蓋3は、図1及び図2に示すように、ハブ部3eが杭本体2の上面を覆い、前記蓋装着穴12の深さよりも短い長さに形成された柱部3fが、前記蓋装着穴12に挿嵌された形で、各基準ポイントPTに打設された杭本体2に装着されている。従って、杭本体2に設けられた蓋装着穴12の下部には、図1及び図2に示すように、杭本体2に装着された蓋3の柱部3fが、該蓋装着穴12の底まで届かない形で、記録部材保持空間としての素子収納空間12aが形成されており、該素子収納空間12aには、打設位置及び打設目的等の杭情報INFを格納し得る記憶手段である、記録部材(磁気識別体)としての記憶素子5が、挿入取出自在な形で収納されている。なお、前記交点XPは、蓋3のハブ部3eの上面の中心に形成されているので、該交点XPは、鉛直方向に伸延する前記軸心TL1と整合した位置に配置された形で形成されており、従って、該交点XPは、各基準ポイントPTの鉛直上方に形成されている。
【0024】
記憶素子5は、図3に示すように、浅形容器状に形成された磁気透過製樹脂材からなるトレイ21を有しており、トレイ21の内部には、溝21sが形成されている。溝21sには、薄板状に形成された非晶質金属の磁気歪材料(アモルファス等)からなる磁気歪ストリップ22が、該トレイ21に対して非接着な状態で(即ち、該磁気歪ストリップ22が溝21s中において機械的に振動し得るように)収納保持されており、磁気歪ストリップ22の図3中の上側には、硬質強磁性材料(磁性ステンレス鋼、ニッケル、フェライト等)を板状に形成してなるプレート23が、前記磁気歪ストリップ22が収納された溝21sを蓋する形で、トレイ21に接合されて設けられている。プレート23は、これが磁化されたときに、前記磁気歪ストリップ22に磁気的バイアスを付与し得るようになっており、プレート23の磁化は複数の磁気パターンMPを選択的に形成する形での磁化が可能である。即ち、記憶素子5には、前記基準ポイントPTに打設された打設用杭1の打設位置及び打設目的等を示す杭情報INFが、プレート23によって異なる所定の磁気パターンMPに磁化された形で記憶格納されている。なお、前記磁気パターンMPは、所定の磁気コードKDに対応した形で設定されており、該磁気コードKDは、前記杭情報INF(即ち、打設用杭1の打設位置及び打設目的等)を、該杭情報INFに対応する複数の数値に変換した形で設定されている。このため、杭情報INFを、任意な数値の磁気コードKDに変換しても、1つの杭情報INFに、1つの磁気コードKDが対応するように設定されていれば、1つの磁気パターンMPには、必ず1つの磁気コードKD(即ち、杭情報INF)が対応し、複数の磁気コードKD(即ち、複数の杭情報INF)が対応することはない。
【0025】
なお、素子収納空間12aにおいて、杭本体2と記憶素子5との間は、樹脂等の図示しない充填材で充填されていてもよい。
【0026】
そして、記憶素子5に格納された杭情報INFは、プレート23の磁気パターンMPを判読し得る、読み取り装置としての情報読取装置7により、容易に読み取り、解読することが出来る。打設用杭1と共に設置位置情報標示装置を構成する情報読取装置7は、図1に示すように、主制御部31を有しており、主制御部31にはバス線31aを介して、キーボード等の入力部32、ディスプレイ等の出力部(表示手段)33、磁場発生制御部36、コード変換部40、共振検出部42、パターン検出部43が接続されている。また、情報読取装置7は、コイルからなる送受信アンテナ39を有しており、送受信アンテナ39は、磁場発生制御部36及び共振検出部42の両方に接続されている。
【0027】
打設用杭1及び、情報読取装置7は、以上のように構成されているので、打設用杭1の各基準ポイントPTへの設置は、次のようにして行なわれる。まず、杭本体2に、蓋3を装着する。すると、蓋3の柱部3fが杭本体2に設けられた蓋装着穴12に挿嵌され、該蓋3のハブ部3eが杭本体2の上面(杭打点指示部11と反対側の面)を覆う形で装着される。そこで、蓋3の装着された杭本体2を、図2に二点鎖線で示すように、杭打点指示部11が基準ポイントPTに当接した形で鉛直なるように調整し、該杭本体2を、真っ直ぐに鉛直下方(図2中矢印F方向)に向かって打設して、図2に実線で示すように、地盤62に鉛直に貫入した形に設置する。すると、蓋3の装着された杭本体2は、図2に示すように、杭打点指示部11、交点XP及び、基準ポイントPTが、鉛直方向に伸延する該杭本体2の軸心TL1にそれぞれ整合する形で鉛直に打設される。
【0028】
また、各基準ポイントPTに蓋3の装着された杭本体2を鉛直に打設する一方で、図示しない磁化手段により、前記記憶素子5のプレート23に、各杭情報INF(INF1?INF4)に対応する所定の磁気パターンMP(MP1?MP4)を付与して、該プレート23に接続された溝21s及び磁気歪ストリップ22によって形成される情報記憶部に、各杭情報INF(INF1?INF4)をそれぞれ記憶格納する磁化作業を行なう。なお、この磁化作業は、工事現場61において行ってもよいし、工場等において行われてもよい。
【0029】
記憶素子5を、各杭情報INFに対応する所定の磁気パターンMPに磁化する磁化作業が終了すると、それら、所定の磁気パターンMPにそれぞれ磁化された記憶素子5を、所定の杭情報INF(INF1?INF4)を表示するために各基準ポイントPT(PT1?PT4等)に打設された各打設用杭1の杭本体2の素子収納空間12aにそれぞれ収納する。即ち、打設用杭1には、前述したように、杭本体2に設けられた蓋装着穴12の上部を閉塞開放することにより、前記素子収納空間12aを外部に対して開閉自在に成し得る蓋3が設けられており、該蓋3を、該蓋装着穴12に装着したり、該蓋装着穴12から取り外したりするだけで、容易に、記憶素子5を収納し得る素子収納空間12aを開閉することが出来る。従って、記憶素子5を打設用杭1に収納する場合には、杭本体2の蓋装着穴12に装着された蓋3を杭本体2から取り外して蓋装着穴12を開放し、こうして開放された蓋装着穴12に前記記憶素子5を挿入し、再度蓋3を蓋装着穴12に装着するだけで、簡単に記憶素子5を素子収納空間12aに収納することが出来る。こうして、各基準ポイントPT(PT1?PT4等)に打設された各打設用杭1の杭本体2の素子収納空間12aに所定の杭情報INFに対応する磁気パターンMP(MP1?MP4)に磁化された記憶素子5をそれぞれ収納することにより、それら打設用杭1に、各基準ポイントPT(PT1?PT4等)に打設された各々の打設用杭1の打設位置(各基準ポイントPTの三次元位置)や打設用杭1の打設目的等の杭情報INF(INF1?INF4)を格納することが出来る。
【0030】
一方、各基準ポイントPTに打設された打設用杭1に格納された杭情報INFは、前記情報読取装置7を用いて次のようにして読み取り、解読して、容易にそれら杭情報INFを認識することが出来る。まず、図示しないオペレータは、情報読取装置7の送受信アンテナ39を、打設用杭1の付近に位置させ、次いで、情報読取装置7の入力部32を介して読取作業開始の命令を入力する。入力された該命令はバス線31aを介して主制御部31に伝送され、主制御部31は、該読取作業開始の命令を受けて、磁場発生制御部36に磁場の発生を行わせると共に、共振検出部42に共振の検出を行わせる。即ち、磁場発生制御部36は、周波数HZ1、HZ2、……、HZn等の複数の周波数HZの交流磁場を、各周波数HZ1、HZ2、……、HZnを順番に、所定の間隔で断続的に、送受信アンテナ39を介して発生させる。一方、打設用杭1に格納されている記憶素子5のプレート23は、前述したように、所定の杭情報INFに対応する磁気パターンMPで磁化されており、送受信アンテナ39により該プレート23に、その磁気パターンMPに対応する所定の周波数HZ(即ち、所定の磁気パターンMPを構成する周波数HZ)の交流磁場が発生すると、前記磁気歪ストリップ22は、該磁気パターンMPに対応する周波数HZの交流磁場と共振振動して、磁気歪ストリップ22の共振振動による磁場を発生する。こうして発生した磁場は、打設用杭1の杭本体2及び蓋3を透過して送受信アンテナ39に到達し、送受信アンテナ39(即ち、コイル)に誘導電圧を生じさせる。なお、送受信アンテナ39から、特定の周波数HZ1、HZ2、……、HZn以外の周波数の交流磁場が発生した場合には、磁気歪ストリップ22が共振振動しないので、磁気歪ストリップ22は磁場を発生させず、送受信アンテナ39には誘導電圧が生じない。
【0031】
また、共振検出部42では、打設用杭1に収納された記憶素子5の磁気歪ストリップ22の共振の検出を行なっており、該共振の検出は、送受信アンテナ39(即ち、コイル)に生じる誘導電圧を検出することにより行なわれている。即ち、共振検出部42は、主制御部31からの共振の検出を実行する旨の命令を受けとると、各周波数HZ毎に、送受信アンテナ39に生じる誘導電圧の有無を検知し、各周波数HZの交流磁場において、誘導電圧が発生しているかどうかを主制御部31を介して、パターン検出部43に出力する。パターン検出部43には、送受信アンテナ39を介して発生させる磁場の各周波数HZ1、HZ2、……、HZnのパターンが予め入力されており、パターン検出部43では、前記誘導電圧の発生の有無と、前記パターンを比較対象することにより、磁気歪ストリップ22の共振した周波数HZを検出することが出来る。検出された周波数HZはコード変換部40に伝送され、コード変換部40では、周波数HZを所定の電気信号からなる磁気コードKDに変換する。ところで、杭情報INFを記憶素子5に記憶格納する際には、前述したように、杭情報INFが磁気コードKDに変換され、該磁気コードKDに対応した磁気パターンMPで記憶素子5のプレート23を磁化することによって記憶格納した。よって、記憶素子5が共振した周波数HZは、磁気コードKDに対応した磁気パターンMPで磁化され、該磁気パターンMPに対応した磁気的バイアスのパターンに対応した特定の周波数である。そして、各周波数HZは所定の磁気コードKDに対応しているので、コード変換部40に伝送された周波数HZが磁気コードKDに変換される際の磁気コードKDは、杭情報INFを記憶素子5に記録する際に、該杭情報INFを変換した前記磁気コードKDと一致する。
【0032】
コード変換部40において検出された磁気コードKDは、主制御部31を介して出力部33に伝送され、出力部33では、図示しないディスプレイ等によって、該磁気コードKDを、それぞれの磁気コードKDに対応する所定の杭情報INFに変換して外部に表示する。こうして表示された杭情報INFを図示しないディスプレイ等から読み取ることによって、各基準ポイントPT(PT1?PT4等)に打設された各々の打設用杭1の打設位置(各基準ポイントPTの三次元位置)や打設用杭1の打設目的等を容易に認識することが出来る。
【0033】
従って、打設用杭1を用いれば、工事現場61の各基準ポイントPTに設置された打設用杭1の杭本体2の素子収納空間12aに所定の杭情報INFに対応する所定の磁気パターンMPに磁化された記憶素子5を収納し、該記憶素子5の磁気パターンMPを情報読取装置7により読み取ることにより、記憶素子5に格納記憶された杭情報INFを認識することが出来る。そして、前記記憶素子5の磁気パターンMPは、交流磁場を発生し得る送受信アンテナ39を交流磁場を発生させた状態で記憶素子5の収納された杭本体2に近づけるだけで、即ち杭本体2と該送受信アンテナ39とが非接触の状態であっても、該杭本体2の外部から検出することが出来るので、該磁気パターンMPに対応する杭情報INFを、杭本体2と該送受信アンテナ39とが非接触の状態であっても、該杭本体2の外部から直接読み取って認識することが簡単に出来る。従って、地形図や既に作成された測量図面と、杭本体2をいちいち照らし合わせる必要がない。更に、打設用杭1を用いれば、前記杭本体2に蓋3を装着することにより形成される素子収納空間12aは、該蓋3を、杭本体2から取り外したり、杭本体2に装着することにより、開閉自在な形に形成されているので、前記素子収納空間12aに収納された前記記憶素子5を、前記杭本体2が地盤62に打設された状態で、該素子収納空間12aから取り出して、該記憶素子5に代えて、該記憶素子5に記憶格納された杭情報INFと異なった杭情報INFの記憶格納された記憶素子5を、素子収納空間12aに収納することが出来る。従って、工事の手順等に沿って、次に行なう作業等の杭情報INFが記憶格納された記憶素子5を杭本体2に収納したり、台風等の気象条件の影響による作業内容の変更に対応して、作業の変更内容等の杭情報INFが記憶格納された記憶素子5を杭本体2に収納するなどして、杭本体2に収納される杭情報INFの更新が非常に容易である。
【0034】
なお、本実施例においては、杭本体2の素子収納空間12aに収納される記憶素子5は、所定の周波数HZの交流磁場が発生すると、該交流磁場において振動し得る形で杭情報INFを格納し、情報読取装置7は、各周波数HZにおける記憶素子5の振動の有無、即ち、磁気パターンMPを、杭本体2の外側から非接触で検出して、該記憶素子5に格納されている杭情報INFを検出するように構成されていたが、記憶素子5及び情報読取装置7の構成は、素子収納空間12aに収納される記憶素子5の杭情報INFを外部から非接触で認識し得るように構成されておれば、これに限定される必要はない。例えば、記憶素子5を、所定の杭情報INFに対応して、所定の周波数の信号を所定の間隔で発信する発信機等により構成し、情報読取装置7を、該発信機から発せられる信号を受信して該信号の周波数HZ及び発信間隔等を解析演算し得る受信機等により構成して、該発信機の発する杭情報INFを情報読取装置7により認識するようにして構成してもよい。また、本実施例においては、蓋3は、蓋3の柱部3fを蓋装着穴12に挿嵌したり、引き抜いたりすることにより、素子収納空間12aを開閉自在に成すように形成されていたが、蓋3は、蓋装着穴12を開閉自在に成すように形成されていれば、これに限定されるものでない。例えば、杭本体2の上面に板等を、蓋装着穴12を開閉自在なように、回転自在またはスライド自在に装着し、こうして回転、スライドする板等により素子収納空間12aを開閉し得るようにして蓋3を構成してもよい。
【0035】
以下、本発明のうち別の実施例を図面に基づいて説明する。設置位置情報標示器(或いは設置位置情報標示杭)としての位置標示器Aは、図6に示すように、杭形状とされた設置本体としての位置標示部材101の先端側に杭打点指示部としての先鋭部111を形成し、かつ、頭部側に金属や樹脂からなる、蓋としてのキャップ112を取付けるとともに、上記位置標示部材101の頭部側に頂部が開口された、記録部材保持空間としての収容部113を形成して、この収容部113に、外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する磁気識別素子121を樹脂ケース内に収納してなる磁気識別体102(従って記録部材)を内装している。この磁気識別体102は、上記キャップ112を取外した状態で位置標示部材101の頂部開口から収容部113内に挿入され、その上から上記キャップ112を被せることにより、位置標示部材101に内蔵されている。
【0036】
なお、収容部113において、位置標示部材101と磁気識別体102との間は、樹脂等の図示しない充填材で充填されていてもよい。
【0037】
また、位置標示部材101のうち先鋭部111側は地盤等に打ち込まれ得るようになっており、従って位置標示部材101の周囲のうち該位置標示部材101の先鋭部111側には、図6に示すように地盤に埋設されて該地盤に接し得る側面109が形成されている。
【0038】
上記磁気識別体102としては、たとえば特表平3-501303号公報に記載されたマーカーが好適に使用される。この磁気識別体102の磁気識別素子121は、共鳴物質と磁性材料を適当に配置し、または、両者を適当に混合して形成され、これに磁界が付加されたときの磁気共鳴現象を利用して特有の周波数(共鳴周波数)の電磁波を発生するように形成される。つまり、磁気共鳴現象は、磁気モーメントをもつ粒子が静磁場中にある場合に、振動磁場または電磁波を印加したとき生ずるものであり、原子核のスピンによる核磁気共鳴(NMR)、核四重極共鳴(NQR)、電子のスピン共鳴または電子の常磁性共鳴(ESR、EPR)もしくは、強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、反フェリ磁性共鳴などがある。そして、上記磁気共鳴現象は、磁界において歳差運動する双極子モーメントが、その歳差運動における歳差周波数またはその近傍でマイクロ波、つまり所定周波数(共鳴周波数)の電磁波を吸収または二次放射する形で表われる。
【0039】
また、上記磁気識別素子121としては、上記ESRによる磁気共鳴現象が好適に利用される。そして、このようなESRに用いる共鳴物質としては、常磁性塩類、たとえば銅、鉄、マンガンなどの常磁性イオンが使用される。さらに、ナフタレン、ニトロオキサイドなどの安定した遊離基をもつ有機物なども使用することができる。
【0040】
さらに、上記磁気識別素子121としては、上記NMRによる磁気共鳴現象を利用することも可能であり、このときは、水素、窒素、塩素およびカルシウムなどのように、純核スピンを有する核を含む化合物を共鳴物質として使用することもできる。
【0041】
また、上記磁気識別素子121を構成する磁性材料としては、上記共鳴物質として使用される金属の結晶やアモルファス(非結晶)金属またはフェライトなどが使用され、さらには、永久磁石や半永久磁石なども使用できる。
【0042】
前記位置標示器Aと共に設置位置情報標示装置を構成する、読み取り装置としての検出器Bは、図5に示すように、磁気検知器103と報知手段104を備えている。この磁気検知器103は、指向性のある磁界を発生させる磁界発生器131と、この磁界発生器131で発生する磁界が上記磁気識別体102の磁気識別素子121に付加されたとき、この磁気識別素子121から発信される特有の周波数の電磁波を受信する受信器132とから構成されている。また、上記報知手段104は、たとえば光マーカーや警報ブザーなどからなり、上記磁気検知器103が磁気識別体102に近接して、その磁気識別素子121から発信される電磁波の強度が大きくなったとき、これを識別して報知するようにしている。
【0043】
また、上記検出器Bには、上記磁気識別素子121から発信する特有の周波数に対応する各種情報を記憶したメモリ105と、検知された周波数に対応する情報をメモリ105から読み出す読出手段106と、読み出された情報を表示するディスプレイやプリンタなどの表示手段107を備えている。
【0044】
さらに、以上の設置位置情報標示装置には、上記磁気識別体102の磁気識別素子121に特有の周波数を付加または変更するための識別コード付加手段108が設けられている。
【0045】
上記識別コード付加手段108としては、上述した公報に記載されているように、上記磁気識別体102の磁気識別素子121の共鳴特性を化学的または結晶学的もしくは物理的に変更可能な電磁ビームや粒子ビームなどが使用され、このようなビームを上記磁気識別素子121に発射することによって、この磁気識別素子121自身がもつ情報である特有の周波数、つまり共鳴周波数を付加し、さらにその周波数を適宜変更する。さらには、上記磁気識別素子121に化学剤を接触させたり、または、この磁気識別素子121の共鳴素子と磁性材料の配置関係や配合比率を変更することによっても周波数付加や変更を行うことが可能である。
【0046】
次に、以上の設置位置情報標示装置による作用について説明する。たとえば地籍調査などを行う場合には、先ず、上記磁気識別体102を備えた位置標示部材101が地盤の所定の測量箇所に一部または全部が打ち込まれる。そして、地籍の再確認を行うようなときに、上記検出器Bを用いて位置標示部材101の探索が行われる。
【0047】
このとき、上記検出器Bを構成する磁気検知器103の磁界発生器131で発生する指向性のある磁界が、上記位置標示部材101の磁気識別体102の磁気識別素子121に付加されると、この磁気識別素子121から特有の周波数の電磁波が発信されて、受信器132で受信される。そして、上記検出器Bが磁気識別体102に接近して、上記受信器132で受信される電磁波の強度が大となったとき、上記報知手段104が作動して位置標示部材101の位置が確認される。従って、上記位置標示部材101はたとえ落ち葉や雪で埋まった状態にあっても、その位置確認が上記検出器Bにより容易かつ正確に行われる。
【0048】
また、上記位置標示部材101に収容部113を形成して、この収容部113内に上記磁気識別体102を収容することにより、つまり、位置標示部材101の内側に磁気識別体102を入れることにより、磁気識別体102が保護されて長期使用が可能となる。さらに、上記位置標示部材101の全部を磁気識別体102とともに地盤内に埋め込むときには、これら両者のいたずらや火災などによる焼失または盗難が一層確実に防止される。
【0049】
さらに、上記検出器Bに設けたメモリ105には、設置された土地に関する情報である、その土地の区画番号つまり地籍番号、土地所有者の氏名、基準点からの距離および方角、標高などの各種情報が記載されている。上記磁気検知器103の磁界発生器131からの磁界が上記磁気識別体102の磁気識別素子121に付加されて、この磁気識別素子121から電磁波が発信されたとき、その特有の周波数に対応して予め付された、例えば区画番号と各種記憶情報とが、上記メモリから読出手段106により読み出されて表示手段107で表示される。このため、地籍管理を行う上での各種情報の管理が容易に行える。上記区画番号を土地台帳にも付しておけば、その位置を土地台帳によって確認することもできる。
【0050】
また、図6のキャップ112の頂面に種々の情報を印刷、刻印などを直接付加するか、または、キャップ112にこれら情報を付加した標示プレートを装着しておいてもよい。
【0051】
さらに、位置標示部材101は、その土地の地下に埋設されたケーブル、水道管、ガス管などの埋設状況を示すために用いられる場合もあり、その場合、図5のメモリ105または図6の位置標示部材101のキャップ112には、上記埋設状況を示す情報が記憶または付加される。
【0052】
また、位置標示部材101としては、上記杭に限られず、地盤に埋設されるカプセル型容器やコンクリート通路上などに装着される、図7(a)に示すようなねじ120が固着された鋲や、図7(b)に示すような、別体のねじ121または釘によって地盤に固定されるプレートでもよい。これら鋲やプレートのいずれ1つも磁気識別体が収容される収容部(図示せず)が設けられている。また、これら位置標示部材101の上面には、土地の区画番号および方角が情報123として刻印されている。
【0053】
以下、本発明のうち別の実施例を図面に基づき説明する。住宅敷地201内の地盤202には、図8(a)、図8(b)及び図9に示すように、本発明による設置位置情報標示器としての定礎石ユニット203が設置されている。なお、住宅敷地201内には家屋等の建築物が建築されているが、図8(a)、図8(b)及び図9では便宜上、家屋等の建築物を省略した形で示してある。定礎石ユニット203は、図8(a)、図8(b)及び図9に示すように、耐熱、耐久性材料であり、かつ磁気を透過させる材料(例えば、大理石等)によって形成された直方体状の、設置本体としての本体205を有しており、本体205の6つの外面のうちの1つの面(図では上面)は表示部としての刻印面205aとなっている。本体205は、刻印面205aを水平でかつ上方に向け、しかも該刻印面205a側を地上に露出させた形で前記地盤202に埋設されており、従って、定礎石ユニット203は、本体205が地盤202に埋設された形で設置されている。本体205は、蓋部材206と保持部材207との2つの部分から構成されており、蓋部材206が該本体205のうちの上側の部分、保持部材207が該本体205のうちの下側の部分となっている(従って、前記刻印面205aは蓋部材206に形成されている。)。また、蓋部材206と保持部材207とは互いに着脱自在に係合している。なお、本体205は、その自重によって地盤202中に固定されているが、地震等の予想され得る最大の振動等によっても本体205の地盤202に対する相対位置がズレないように、本体205の自重が予め設定されている。また、蓋部材206と保持部材207との間の係合が、地震等の予想され得る最大の振動等によっても不用意にはずれることのないように、これら蓋部材206と保持部材207との間を、着脱自在の図示しない接合手段(例えば、ボルト等)によって接合補強する形で、着脱自在に係合してもよい。
【0054】
上述したように本体205が地盤202に埋設された形で設置されているので、本体205の周囲のうち該本体205の側部側及び底部側には、図8(a)に示すように地盤202に埋設されて該地盤202に接した側面204が形成されている。
【0055】
蓋部材206に形成され刻印面205aには、図8(b)に示すように、住宅敷地201の建築物の建築工事の開始日時即ち、着工日時と、該住宅敷地201の所有者名と、住宅敷地201についての三次元位置情報が刻印記録されている。特に、刻印面205aには、図8(b)に示すように、敷地地形表示部としての敷地形状表示エリア205bが形成されており、該敷地形状表示エリア205bには、住宅敷地201の形状YKJ1(図9で図示)を相似縮小して形状YKJ2として刻印している。また、住宅敷地201の形状YKJ1は4つの角隅部201a、201b、201c、201dをもった四角形状であるが、これら4つの角隅部201a、201b、201c、201dに対応した形状YKJ2の4つの角隅部201e、201f、201g、201hには、角隅部201a、201b、201c、201dの緯度、経度、標高が、それぞれ数値として刻印記録されている。このように、つまり、定礎石ユニット203の刻印面205aには、従来の定礎石と同様に、着工日時や住宅敷地201の所有者名等が刻印されており、記念碑的、装飾品的な性質を発揮しているが、刻印面205aの敷地形状表示エリア205bには住宅敷地201の形状YKJ1を形状YJK2として表示し得るので、定礎石ユニット203においては、その設置される住宅敷地201におけるシンボルとしての性質が向上され、記念碑的、装飾品的な性質が更に一層発揮される。一方、本体205の保持部材207の上面側には、図8(a)に示すように、上下方向に伸延した孔の形をした記録部材保持空間としてのタグ保管空間209が形成されており、蓋部材206と保持部材207とが互いに係合することによって、タグ保管空間209は蓋部材206と保持部材207とによって上下から挾まれた状態となり、タグ保管空間209と本体205外部との間が、該本体205によって遮断されるようになっている。タグ保管空間209には、記録部材としての記録タグ210が挿入されている。なお、記録タグ210は、タグ保管空間209において、保持部材207上に載置される形で挿入されれば良く、記録タグ210と本体205との間は接合される必要はない。
【0056】
なお別の実施例として、タグ保管空間209において、本体205と記録タグ210との間は、樹脂等の図示しない充填材で充填されていてもよい。
【0057】
記録タグ210は、図10及び図12に示すように、板面が一方に伸延した長方形状である底板部211aと、該底板部211aの板面の4辺に沿って該底板部211aと一体的に設けられた長方形枠状の側壁部211bからなるトレイ211を有しており、トレイ211には、底板部211aと側壁部211bにより囲まれた空間であるストリップ保持溝212が形成されている。なお、トレイ211は磁気を透過させる材料(プラスチック等)によって形成されている。トレイ211のストリップ保持溝212には、前記底板部211aの板面の形状(即ち、一方に伸延した長方形状)に整合した形状で、しかも薄板状の非晶質金属の磁気歪材料(アモルファス等)からなる磁気歪ストリップ213が、ストリップ保持溝212に整合した状態で挿入されている。トレイ211のストリップ保持溝212の開口部211c側には、前記底板部211aの板面の形状(即ち、一方に伸延した長方形状)に整合した板状のプレート215が、ストリップ保持溝212の開口部211cに整合した形で、しかもトレイ211の側壁部211bに接合された形で設けられている。プレート215は硬質強磁性材料(磁性ステンレス鋼、ニッケル、フェライト等)により形成されており、プレート215が磁化された際には、該プレート215は、前記磁気歪ストリップ213に磁気的バイアスを与えるようになっている。また、プレート215の磁化は複数の磁気パターンを形成する形での磁化が可能であり、この磁気パターンは選択的に形成され得るようになっている。なお、ストリップ保持溝212の形状は、プレート215が設けられたトレイ211のストリップ保持溝212内で、前記磁気歪ストリップ213が機械的に振動し得るように、磁気歪ストリップ213よりもやや大きめに設定されている。記録タグ210は以上のように構成されており、定礎石ユニット203は、上述したように、前記本体205と、該本体205のタグ保管空間209に挿入された前記記録タグ210により構成されている(なお、記録タグ210は、図8に示すように、トレイ211やプレート215等の伸延方向と、タグ保管空間209の伸延方向即ち、上下方向とが一致する形で、該タグ保管空間209に挿入されている。)。
【0058】
一方、上述した記録タグ210には情報の記録ができ、かつ記録タグ210からは、該記録タグ210に記録された情報を読み取ることができる。この記録動作、読み取り動作を行う際には以下に説明する情報記録装置216及び、情報読み取り装置225が使用される。情報記録装置216は、図12に示すように、主制御部217を有しており、主制御部217にはバス線217aを介して、ディスプレイ等の表示部219、キーボード等の入力部220、磁気ヘッド制御部221、コード変換部222が接続されている。また、磁気ヘッド制御部221には公知の(即ち、電磁石式の)磁気ヘッド223が接続されている。
【0059】
前記定礎石ユニット203と共に設置位置情報標示装置を構成する読み取り装置としての情報読み取り装置225は、図11に示すように、主制御部226を有しており、主制御部226にはバス線226aを介して、キーボード等の入力部227、ディスプレイ等の出力部229、コード変換部230、磁場発生制御部231、周波数検出部232、共振検知部235が接続されている。また、情報読み取り装置225は、コイルからなる送受信アンテナ233を有しており、送受信アンテナ233は、磁場発生制御部231及び共振検知235の両方に接続されている。
【0060】
住宅敷地201及び、該住宅敷地201に設置された定礎石ユニット203及び、情報記録装置216と情報読み取り装置225は以上のように構成されているので、定礎石ユニット203の住宅敷地201への設置は次のように行う。まず、住宅敷地201の三次元位置を測量する。例えば、図9に示すように、この住宅敷地201の形状YJK1における4つの角隅部201a、201b、201c、201dの緯度、経度、標高をそれぞれ測量する。測量の方法は任意であり、例えば、人工衛星からの衛星信号を受信解析して受信位置の緯度、経度、標高を演算検出する、公知のGPS測量等を適用できる。住宅敷地201の三次元位置が測量された後、定礎石ユニット203の本体205のうち、蓋部材206の刻印面205aに、住宅敷地201における建築物の着工日時及び、住宅敷地201の所有者名等を刻印し、刻印面205aの敷地形状表示エリア205bに住宅敷地201の三次元位置を刻印する。住宅敷地201の三次元位置の刻印は、住宅敷地201の形状YJK1を形状YJK2の形で刻印すると共に、上述した測量によって得られた4つの角隅部201a、201b、201c、201dの緯度、経度、標高を、形状YJK2の4つの角隅部201e、201f、201g、201hに数値の形でそれぞれ刻印する形で行われる(なお、この刻印作業は工場等において適宜行われる。)。
【0061】
また一方で、住宅敷地201の三次元位置が測量された後、情報記録装置16を用いて、記録タグ210に、上述した、住宅敷地1の三次元位置、着工日時、所有者名からなる敷地情報YJH(従って設置位置情報)を記録する(なお、この記録作業は、住宅敷地1において行ってもよいし、工場等において行われてもよい。)。即ち、定礎石ユニット203の本体205より前記記録タグ210を取り出し、該記録タグ210のプレート215の表面215aに、図12に示すように、前記情報記録装置216の磁気ヘッド223の記録面223aを近接対向させる。次いで、図示しないオペレータは、情報記録装置216の入力部220を介して、前記敷地情報YJHを、複数の数値によるコードYKDの形で入力する。なお、住宅敷地201の三次元位置、着工日時、所有者名からなる敷地情報YJHをどのようなコードYKDに変換するかは任意であるが、1つの敷地情報YJHは必ず1つのコードYKDに対応し、1つのコードYKDには2つ以上の敷地情報YJHが対応することはない。入力部220を介して入力されたコードYKDは、所定の電気信号としてバス線217aを介して主制御部217に伝送され、主制御部217は該コードYKDを表示部219に数値等により表示(図示せず)する。図示しないオペレータは、表示部219の表示(図示せず)を見ることにより直前に入力したコードYKDが誤入力されていないことを確認して、入力部220を介して記録実行の命令を入力する。入力された命令は主制御部217に伝送され、主制御部217は前記入力されたコードYKDをコード変換部222に伝送する。コード変換部222では、伝送された所定の電気信号からなるコードYKDを、該コードYKDに対応した磁気ヘッド制御信号YJSに変換し、磁気ヘッド制御信号YJSは磁気ヘッド制御部221に伝送される。磁気ヘッド制御部221では伝送された磁気ヘッド制御信号YJSに基づいて、磁気ヘッド223を駆動させる。即ち、磁気ヘッド223はコードYKDに対応した磁気ヘッド制御信号YJSに基づいて、記録面223aから、コードYKDに対応したパターンで大きさが変化する磁界を発生させる形で駆動される。磁気ヘッド223から磁界が発生されると共に、上述したように表面215aを該磁気ヘッド223の記録面223aに近接対向させた状態の記録タグ210を、該記録タグ210の表面215aを前記磁気ヘッド223の記録面223aに近接対向させた状態のまま、図示しない公知の送り出し装置を介して、該記録タグ210のプレート215の伸延方向のうちの一方向である図12の矢印YA方向にスライドさせる。スライドさせた結果、従来の磁気記録方法と同様にして、プレート215はコードYKDに対応した磁化パターンで磁化された。つまり、記録タグ210には敷地情報YJHが、該敷地情報YJHに対応したコードYKDの形で磁気記録された。
【0062】
次いで、定礎石ユニット203の本体205を、保持部材207から蓋部材206が取り外された状態にして、保持部材207のタグ保管空間209に、上述したように敷地情報YJHが磁気記録された記録タグ210を挿入し、挿入の後、上述したように刻印面205aに刻印がなされた蓋部材206と保持部材207とを係合させる(なお、蓋部材206と保持部材207との間に、着脱自在の図示しない接合手段が設けられている場合には、該図示しない接合手段によって、蓋部材206と保持部材207を接合補強して係合させる。)。次いで、定礎石ユニット203の本体205を、住宅敷地201内の地盤202の所定の位置に、該本体205の刻印面205a側を地上に露出させた形で埋設する。以上で定礎石ユニット203の住宅敷地201への設置が完了した。
【0063】
また、住宅敷地201の三次元位置或いは、住宅敷地201における着工日時或いは、住宅敷地201の所有者名等は、上述したように、刻印面205aに刻印記録されていると共に、敷地情報YJHとして記録タグ210にも磁気記録されている。記録タグ210に磁気記されている敷地情報YJHは、情報読み取り装置225を用いて次のようにして読み取ることができる。即ちまず、情報読み取り装置225の送受信アンテナ233を、前記定礎石ユニット203の付近に位置させる。次いで、図示しないオペレータは、情報読み取り装置225の入力部227を介して読み取り作業開始の命令を入力する。入力された該命令はバス線226aを介して主制御部226に伝送され、主制御部226は、該読み取り作業開始の命令を受けて、磁場発生制御部231に磁場の発生を行わせると共に、共振検知部235に共振の検出を行わせる。即ち、磁場発生制御部231は、所定の周波数YH1(即ち、前記磁気歪ストリップ213の機械的共振周波数と同値の周波数)による交流磁場を、送受信アンテナ233を介して一撃の形で発生させ、その後、所定の時間間隔YT1の間、磁場の発生を停止させ、その後、所定の周波数YH2(即ち、前記周波数YH1の2倍の周波数)の交流磁場を一撃の形で発生させた後、磁場の発生を時間間隔YT1の間停止させ、その後、所定の周波数YH3(即ち、前記周波数YH1の3倍の周波数)の交流磁場を一撃の形で発生させた後、磁場の発生を時間間隔YT2の間停止させ、以降順次、周波数YH4、YH5、YH6、……(即ち、周波数YH1の倍音周波数)の磁場を時間間隔YT1の間隔をおきながら一撃の形で発生させる。
【0064】
一方、定礎石ユニット203の本体205に挿入されている記録タグ210のプレート215は、上述したように、コードYKDに対応した磁化パターンで磁化されており、従って、磁化された該プレート215は、前記磁気歪ストリップ213にコードYKDに対応したパターンの磁気的バイアスを与えているので、磁気歪ストリップ213は、外部から加わる磁場に対して所定の磁気機械的結合作用を起こし得る状態になっている。即ち、非晶質の磁気歪ストリップ213は所定の磁場内にある場合、磁気歪ストリップ213内の各磁区が一定方向に転向し、これら磁区の転向により、磁気エネルギーが磁気歪ストリップ213内に蓄積される。また、各磁区が一定方向に転向して磁気歪ストリップ213が磁化されることにより、磁気歪ストリップ213は磁気歪を起こし、この歪による機械的エネルギー(弾性エネルギー等)が磁気歪ストリップ213内に蓄積される。また、直流磁場及び交流磁場が磁気歪ストリップ213に加えられると、磁気歪ストリップ213の各磁区に作用する磁束の増減が起こる。各磁区に作用する磁束が減少すると、各磁区はそれらのもとの配向に戻ろうとするため磁気エネルギーが放出されると共に、磁気歪ストリップ213の磁化が弱くなるので磁気歪が解かれ、機械的エネルギーが放出される。逆に、磁区に作用する磁束が増加すると、磁気及び機械的エネルギーは更に蓄積される。蓄積放出される機械的エネルギーは、磁気歪ストリップ213に加わる交流磁場の周波数が、該磁気歪ストリップ213の機械的共振周波数数の倍音周波数と一致する際に増大し、これ以外の周波数において減少する。このように、磁気歪ストリップ213は磁気エネルギーを放出し、機械的エネルギーを磁気エネルギーの形で放出することにより交流磁場を発生させ、発生させる交流磁場は、磁気歪ストリップ213に加わる交流磁場の周波数が、該磁気歪ストリップ213の機械的共振周波数の倍音周波数と一致する際に増大し、これ以外の周波数において減少する。なお、以上説明した磁気機械的結合作用は、磁気歪ストリップ213がプレート215による磁気的バイアスを受けて活性化されている際に顕著に起こることが知られており、磁気歪ストリップ213が、該磁気歪ストリップ213の機械的共振周波数の倍音周波数のうち、どの周波数に呼応して強い交流磁場を発生させるかは、プレート215により磁気歪ストリップ213に加わる磁気的バイアスのパターンに対応している、即ち、プレート215の磁化パターンに対応している。よって、送受信アンテナ233から周波数YH1、YH2、YH3、……の磁場が、上述したように、掃引発生されることにより、磁気歪ストリップ213に、これらの磁場が順次かけられるので、磁気歪ストリップ213は、プレート215による磁気的バイアスのパターンに対応した前記特定の周波数YHn(機械的共振周波数の倍音周波数のうちの1つ以上の周波数)をもつ磁場がかけられた際に磁気機械的結合作用により共振振動し、特定の周波数YHn以外の周波数の磁場がかけられた際に殆ど振動しない。従って、送受信アンテナ233から特定の周波数YHnの磁場が発生された際には、磁気歪ストリップ213が共振振動し、該周波数YHnの磁場が送受信アンテナ233から一撃の形で発生された直後の、磁場が発生しない時間間隔YT1の間、磁気歪ストリップ213が続けて減衰振動するので、磁気歪ストリップ213の該減衰振動により、記録タグ210は磁場を発生させる。記録タグ210が減衰振動して発生した磁場は定礎石ユニット203の本体205を透過して送受信アンテナ233に到達し、送受信アンテナ233(即ち、コイル)に誘導電圧を生じさせる。また、送受信アンテナ233から特定の周波数YHn以外の周波数の磁場が発生された際には、磁気歪ストリップ213が殆ど共振振動しないので、記録タグ210は磁場を発生させず、送受信アンテナ233には誘導電圧が生じない。
【0065】
ところで、主制御部226は、上述したように、該読み取り作業開始の命令を受けて、磁場発生制御部231に磁場の掃引発生を行わせると共に、共振検知部235に共振の検出を行わせている。即ち、共振検知部235では共振の検出が行われる。即ち、共振検知部235は、主制御部226からの共振の検出を実行する旨の命令を受けた時刻、従って、主制御部226が、磁場発生制御部231に磁場の掃引発生の命令を伝送した時刻、従って、磁場発生制御部231が所定の周波数YH1の磁場を送受信アンテナ233を介して一撃発生した時刻を基準として、時間の経過と共に送受信アンテナ233に生じる誘導電圧の有無を検知する。送受信アンテナ233に誘導電圧が生じた場合には、磁気歪ストリップ213が共振しているので、検知された、時間の経過に伴った誘導電圧の有無を、時間の経過に伴った磁気歪ストリップ213の共振の有無の共振情報YGHとして主制御部226に順次報告する。
【0066】
磁場発生制御部231による磁場の掃引発生が所定の時間行われ、共振検知部235による共振の検出が前記掃引発生と略同一時間行われた後、主制御部226は、受け取った前記共振情報YGHを周波数検出部232に伝送する。周波数検出部232には、磁場発生制御部231において、時間の経過に伴って各々一撃の形で発生させる磁場の周波数YH1、YH2、YH3、……のパターンが予め入力されている。従って、周波数検出部232では、時間の経過に伴った磁気歪ストリップ213の共振の有無の共振情報YGHと、前記パターンとを比較対照することにより、磁気歪ストリップ213の共振した周波数YHnが検出される。検出された周波数YHnはコード変換部230に伝送され、コード変換部230では、周波数YHnを所定の電気信号からなるコードYKDに変換する。ところで、敷地情報YJHを記録タグ210に記録する際には、上述したように、敷地情報YJHがコードYKDに変換され、コードYKDが磁気ヘッド制御信号YJSに変換され、磁気ヘッド制御信号YJSに対応した磁化パターンで記録タグ210のプレート215を磁化することによって磁気記録した。よって、記録タグ210が共振した周波数YHnは、磁気ヘッド制御信号YJSに対応した磁化パターンで磁化され、磁気ヘッド制御信号YJSに対応した磁気的バイアスのパターンに対応した特定の周波数である。また、周波数YHnは磁気ヘッド制御信号YJSに対応しており、磁気ヘッド制御信号YJSはコードYKDに対応しているので、周波数YHnはコードYKDに対応している。つまり、コード変換部230に伝送された周波数YHnがコードYKDに変換される際のコードYKDは、敷地情報YJHを記録タグ210に記録する際に、該敷地情報YJHを変換した前記コードYKDと一致する。
【0067】
コード変換部230において検出されたコードYKDは主制御部226に伝送され、主制御部226は該コードYKDを出力部229に伝送して外部に出力させる。出力部229では、図示しないディスプレイ等によって、コードYKDが数値等によって表示される。表示されたコードYKDは、上述したように、記録タグ210に記録された敷地情報YJHに対応しているので、該コードYKDを読み取ることによって、前記敷地情報YJH即ち、住宅敷地1の三次元位置、着工日時、所有者名等を知ることができる。
【0068】
なお、上述した記録タグ210からの敷地情報YJHの読み取りは、定礎石ユニット203の刻印面205a側に何らの障害物も存在しない場合にのみ可能であるのではなく、定礎石ユニット203の刻印面205a側に障害物がある場合にも可能である。例えば、地震や戦乱等により住宅敷地201の建築物(図示せず)が破壊され、破壊された該建築物の瓦礫260が、図8の二点鎖線で示すように、定礎石ユニット203の刻印面205a側を覆う形で堆積している場合には、瓦礫260はコンクリートや木材等の磁場を透過させるものなので、瓦礫260の地面からの厚さが極端に厚い場合(例えば1mを越える場合)を除いては、瓦礫260の上方に位置する情報読み取り装置225と瓦礫260の下方に位置する記録タグ210の間で磁場のやり取りが可能である。つまり、建築物(図示せず)の破壊や、瓦礫260の堆積により、各土地に対する真の所有者の対応関係を、目視判別により判別するのが困難になった場合にも、設置されている定礎石ユニット203の記録タグ210から敷地情報YJHを読み取ることによって、各土地に対する真の所有者の対応関係は容易に判別できる。また、各所有者の所有している土地がどの範囲であるか等も記録タグ210から敷地情報YJHを読み取ることによって容易に判別できる。また、定礎石ユニット203の刻印面205a側に存在する障害物が、コンクリートや木材等の瓦礫260以外でも、該障害物の地面からの厚さが所定の厚さを越えておらず、該障害物が電磁波を透過させるもの(例えば、火山の噴火による火山灰の堆積層や洪水による土砂の堆積層等)であれば、上述した瓦礫260の例と同様にして、該障害物の上方からの敷地情報YJHの読み取りが可能である。
【0069】
また、住宅敷地201の所有者が変更したり、住宅敷地201の三次元位置が変更(即ち、住宅敷地201の縮小或いは拡大)したりした場合には、定礎石ユニット203に刻印されている内容及び、記録タグ210に記録されている敷地情報YJHを変更することができる。これらの変更は以下のように行う。即ちまず、地盤202に埋設されている定礎石ユニット203のうち本体205の蓋部材206のみを、該本体205の保持部材207から取り外す。なお、蓋部材206と保持部材207とは、上述したように、着脱自在に設けられているので、この取り外し動作は容易に行われる。蓋部材206を取り外した後、本体205のタグ保管空間209内の記録タグ210を取り出す。次いで、取り出した記録タグ210に、変更され新しくなった敷地情報YJHを、上述した記録作業と同様にして記録する。即ち、取り出した記録タグ210のプレート215に、図12に示すように、前記情報記録装置216の磁気ヘッド223を近接対向させると共に、情報記録装置216に新しい敷地情報YJHを、コードYKDの形で入力し、入力したコードYKDを該コードYKDに対応した磁気ヘッド制御信号YJSに変換し、磁気ヘッド223より磁気ヘッド制御信号YJSに基づいた磁界を発生させる。磁界の発生と共に、磁気ヘッド223に近接対向させた状態の記録タグ210を、図12の矢印YA方向にスライドさせて、従来の磁気記録方法と同様にして磁気記録する(なお、磁気記録の結果、前回の記録作業で磁気記録されていた内容は消去更新された。)。以上のように、この記録作業は情報記録装置216によって簡単に行われ、またこの記録作業は住宅敷地201において行われるので、作業に手間がかからない。一方、取り出された蓋部材206は廃棄され、新しい蓋部材206と交換される。新しい蓋部材206は、その刻印面205aに、変更され新しくなった住宅敷地201の三次元位置或いは、住宅敷地201の所有者名等を工場等において刻印されたものである。次いで、地盤202に埋設されている、蓋部材206が取り外された保持部材207のタグ保管空間209に、新しい敷地情報YJHが記録された記録タグ210を挿入し、挿入後、新しい蓋部材206を地盤202中の保持部材207に係合させて、刻印されている内容及び、記録タグ210の敷地情報YJHの変更が完了する。以上のように、定礎石ユニット203において、刻印されている内容及び、記録タグ210の敷地情報YJHの変更を行う作業では、記録タグ210については、その記録作業に作業に手間がかからず、また、本体205については、蓋部材206のみを交換するだけでよく、従って、本体205全体を掘り起こしたり、大重量の本体205全体を運搬したりする手間が省かれる。つまり、刻印されている内容及び、記録タグ210の敷地情報YJHの変更を行う作業は手間をかけずに行うことができる。
【0070】
なお、上述した実施例では、設置位置情報標示定礎石ユニットの表示部を刻印面205aの形で、設置位置情報標示定礎石ユニットの敷地地形表示部を敷地形状表示エリア205bの形で構成したが、設置位置情報標示定礎石ユニットの表示部は、住宅敷地201等の三次元位置、所有者名或いは、着工日時等を表示し得るならどのような形で形成されていてもよく、表示部の敷地地形表示部は、住宅敷地201の形状YKJ1等を相似縮小した形で表示し得るならどのような形で形成されていてもよい。例えば、図13に示すように、刻印面205aを水平断面が住宅敷地201の形状YKJ1に相似的対応した形状YJK2に形成し、形状YJK2である刻印面205a全体を敷地形状表示エリア205bとしてもよい。
【0071】
また、上述した実施例では、定礎石ユニット203は、地盤202に埋設される形で設置されたが、定礎石ユニット203は、住宅敷地201に対して安定した形で設置されればどのように設置されても良く、例えば、図示しない建築物の基礎の上に本体205の保持部材207側を接合固定する形で設置しても良い。
【0072】
また、上述した実施例では、敷地情報を記録し得る記録部材を記録タグ210の形で構成しているが、該記録部材は、本体205のタグ保管空間209に挿入取り出し自在であり、かつ該記録部材に記録された敷地情報を本体205外部から非接触で読み出し自在であるならばどのように構成されていても良い。例えば、記録部材を集積回路の形で構成してもよい。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のうち第一の発明は、設置本体に格納された記録部材に記録されている設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を非接触で読み取るので、その情報内容を外部から容易に取り出すことができる。従って、設置位置情報標示器に対する土地に関する情報を、地形図や既に作成された測量図面と、設置本体とをいちいち照らし合わせる必要なく容易に認識し確認することができる。更に、前記記録部材に記録されている土地に関する情報を埋設設置された前記設置本体に対して非接触で読み取れることから、地盤に埋設設置された設置本体が土砂や落ち葉などで埋まってしまっているような場合においても、また地震や戦乱等により破壊された建築物の瓦礫等の障害物が、設置されている設置本体を地上から覆い隠している場合においても、土地に関する情報の確認を容易に行うことができる。また、記録部材は設置本体内の記録部材保持空間に収納する形で設けられるので、該記録部材が火災やいたずらによって消失するおそれが少なく、風雨から保護されるため長期使用が可能になる。
【0074】
本発明のうち第二の発明は、第一の発明による設置位置情報標示器において、前記設置本体に蓋3、キャップ112、蓋部材206等の蓋を、前記記録部材保持空間を開閉自在な形に設けて構成されるので、記録部材は設置本体内の記録部材保持空間に収納され、かつ蓋により外部から閉塞される形で設けられる。よって、第一の発明による効果に加えて、記録部材が火災やいたずらによって消失するおそれが少なく、風雨から保護されるため長期使用が可能になる。また、蓋を開閉することによって記録部材保持空間を設置本体の外部に対して開閉することができる。従って設置本体の外部に対して記録部材保持空間が開放された状態にして、記録部材の交換やメンテナンス或いは、記録部材の土地に関する情報の更新等の作業ができるので、これら作業が容易になり都合がよい。
【0075】
本発明のうち第三の発明は、第一の発明または第二の発明による設置位置情報標示器において、前記記録部材は、前記記録部材保持空間から取出し自在なる形で設けられたことを特徴とするので、第一の発明による効果に加えて、記録部材保持空間から記録部材を取出して、別の記録部材と交換したり、記録部材のメンテナンスを行ったり或いは、記録部材の土地に関する情報の更新を行ったりすることが容易になり都合がよい。
【0076】
本発明のうち第四の発明は、第三の発明による設置位置情報標示器において、前記記録部材は外部から磁界が付加されたとき特有の周波数の電磁波を発生する記憶素子5、磁気識別体102、記録タグ210等の磁気識別体であるので、記録部材に記録された土地に関する情報の読み取りは電磁波を介して行える。つまり、第一の発明による効果に加えて、地盤に埋設設置された設置本体を覆い隠している障害物等が電磁波を透過させる物質であればどのようなものであっても、記録部材に記録された土地に関する情報の読み取り確認を容易に行える。また土地に関する情報の読み取りは特有の周波数の電磁波を介して行われるので、読み取った情報と、読み取ろうとした土地に関する情報との同一性の確認が容易であり(即ち、ノイズの排除が容易であり)、土地に関する情報の読み取りにおける信頼性が向上する。
【0077】
本発明のうち第五の発明は、設置位置情報標示器が設置されている場所付近で、読み取り装置を介して、記録部材に記録されている設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報を埋設設置された前記設置本体に対して非接触で読み取り、当該情報を表示手段により表示するので、情報の確認を容易かつ正確に行なうことができる。従って、設置位置情報標示器に対する土地に関する情報を、地形図や既に作成された測量図面と、設置本体とをいちいち照らし合わせる必要なく容易に認識し確認することができる。更に、前記記録部材に記録されている土地に関する情報を埋設設置された前記設置本体に対して非接触で読み取れることから、地盤に埋設設置された設置本体が土砂や落ち葉などで埋まってしまっているような場合においても、また地震や戦乱等により破壊された建築物の瓦礫等の障害物が、設置されている設置本体を地上から覆い隠している場合においても、土地に関する情報の確認を容易に行うことができる。また、記録部材は設置本体内の記録部材保持空間に収納する形で設けられるので、該記録部材が火災やいたずらによって消失するおそれが少なく、風雨から保護されるため長期使用が可能になる。
【0078】
本発明のうち第六の発明は、上記設置本体の磁気識別体から発信される電磁波の周波数と対応する設置された土地の区画番号を含む土地に関する情報がメモリに記憶され、上記磁気識別体から電磁波が発信されたとき、上記メモリに記憶された情報が読出手段により読み出されて表示手段により表示されたので、情報の確認を容易かつ正確に行なうことができ、各種情報の管理も容易に行われる。また、上記磁気識別体に磁気検知器が接近して、その電磁波の強度が大になったとき、報知手段により報知がなされるので、上記設置本体の位置を確認することができる。従って、設置本体の一部だけが地盤に埋め込まれ、この設置本体が落ち葉などで埋まってしまっているような場合、また、上記設置本体の全部が地盤に埋め込まれている場合においても、その位置確認および情報確認を容易かつ正確に行うことができる。さらに、磁気識別体は設置本体の表面に露出させる必要がなく、設置本体の内部に入れることができるので、火災やいたずらによって消失するおそれがなく、長期使用が可能になる。また、上記設置本体の全部を磁気識別体とともに地盤内に埋め込むことにより、これら両者の火災などによる焼失や盗難が一層確実に防止できる。
【0079】
本発明のうち第七の発明は、第六の発明において、さらに磁気識別体に特有の周波数を付加する識別コード付加手段108等の識別コード付加手段を備えてなるので、第六の発明による効果に加えて、上記磁気識別体から発信する電磁波の特有の周波数、つまり、磁気識別体が有する情報を識別コード付加手段により任意に付加または変更できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明による設置位置情報標示器のうち設置位置情報標示杭の一実施例を地盤に打設して、杭情報を読み取り装置により読み取っているようすの一例を示す図である。
【図2】
図2は、図1に示す設置位置情報標示杭の断面図である。
【図3】
図3は、図1に示す設置位置情報標示杭に収納されている記録部材の一例を示す図である。
【図4】
図4は、本発明による設置位置情報標示杭の一実施例が、工事現場に打設されたようすを示す図である。
【図5】
図5は、この発明にかかわる設置位置情報標示装置を示すブロック図である。
【図6】
図6は、設置位置情報標示器の一例を示す位置標示器の一部切欠いた正面図である。
【図7】
図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、位置標示器の他の例を示す斜視図である。
【図8】
図8(a)は、本発明による設置位置情報標示器のうち設置位置情報標示定礎石ユニットの一例を示した垂直断面図である。図8(b)は、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットの表示部を示した平面図である。
【図9】
図9は、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットが設置された住宅敷地の平面図である。
【図10】
図10は、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットの記録部材を示した斜視図である。
【図11】
図11は、図10に示す記録部材より敷地情報の読み取りを行う際に使用される読み取り装置を示した図である。
【図12】
図12は、図10に示す記録部材に対して敷地情報の記録を行う際に使用される情報記録装置を示した図である。
【図13】
図13は、本発明による設置位置情報標示定礎石ユニットのうち、図8(a)に示す設置位置情報標示定礎石ユニットとは別の一例を示した平面図である。
【符号の説明】
1……設置位置情報標示器、設置位置情報標示杭(打設用杭)
2……設置本体(杭本体)
3……蓋
3e……表示部(ハブ部)
5……記録部材、磁気識別体(記憶素子)
6……側面
7……読み取り装置(情報読取装置)
11……杭打点指示部
12a……記録部材保持空間(素子収納空間)
62……地盤
101……設置本体(位置標示部材)
102……記録部材、磁気識別体(磁気識別体)
103……磁気検知器
104……報知手段
105……メモリ
106……読出手段
107……表示手段
108……識別コード付加手段
109……側面
111……杭打点指示部(先鋭部)
112……蓋(キャップ)
113……記録部材保持空間(収容部)
202……地盤
203……設置位置情報標示器、設置位置情報標示定礎石ユニット(定礎石ユニット)
204……側面
205……設置本体(本体)
205a……表示部(刻印面)
205b……敷地地形表示部(敷地形状表示エリア)
209……記録部材保持空間(タグ保管空間)
210……記録部材、磁気識別体(記録タグ)
225……読み取り装置(情報読み取り装置)
A……設置位置情報標示器、設置位置情報標示杭(位置標示器)
B……読み取り装置(検出器)
INF……設置位置情報、杭情報(杭情報)
YJH……設置位置情報、敷地情報(敷地情報)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-03-16 
結審通知日 2010-03-18 
審決日 2010-03-30 
出願番号 特願平6-330672
審決分類 P 1 41・ 856- Y (G01C)
P 1 41・ 851- Y (G01C)
P 1 41・ 853- Y (G01C)
P 1 41・ 121- Y (G01C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 波多江 進
飯野 茂
登録日 1999-01-22 
登録番号 特許第2876389号(P2876389)
発明の名称 設置位置情報標示器及び設置位置情報標示装置  
代理人 野田 雅士  
代理人 野田 雅士  
代理人 金子 大輔  
代理人 金子 大輔  
代理人 杉本 修司  
代理人 杉本 修司  
代理人 堤 健郎  
代理人 林田 久美子  
代理人 堤 健郎  
代理人 堤 健郎  
代理人 杉本 修司  
代理人 林田 久美子  
代理人 金子 大輔  
代理人 林田 久美子  
代理人 野田 雅士  

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