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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02M
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1215159
審判番号 不服2008-20778  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-13 
確定日 2010-04-15 
事件の表示 特願2002-249081「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 88956〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成14年8月28日(優先日、平成14年7月4日)の出願であって、平成20年7月8日付で拒絶査定(発送日:平成20年7月15日)がなされ、これに対し、平成20年8月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成20年9月2日付で手続補正がなされたものである。


2.平成20年9月2日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年9月2日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の適否
本件補正前の特許請求の範囲は、平成20年2月20日付の手続補正書に記載された以下のとおりである。
「【請求項1】直流電源から入力される入力電圧から所定の定電圧を生成して出力端子から出力する電源回路を備えた半導体集積回路からなる半導体装置において、
前記電源回路は、
所定の基準電圧を生成して出力する基準電圧発生回路部と、
前記出力端子からの出力電圧を分圧して出力する分圧回路部と、
該分圧回路部から出力される分圧電圧が前記基準電圧になるように、前記入力電圧から定電圧を生成して前記出力端子に出力する電圧制御回路部と、
を備え、
前記分圧回路部は、外部から入力される信号に応じて分圧比を変えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】前記分圧回路部は、
前記出力端子と前記分圧電圧を出力する出力端との間に直列に接続された複数の第1抵抗からなる第1の抵抗回路と、
入力される制御信号に応じて該第1の抵抗回路における少なくとも1つの第1抵抗を短絡する第1のスイッチ回路と、
一端がそれぞれ接続された複数の第2抵抗からなる第2の抵抗回路と、
該第2の抵抗回路における各第2抵抗の他端に一端が対応して接続され、他端がそれぞれ接続された各第2スイッチからなる第2のスイッチ回路と、
外部から入力される制御信号に応じて前記第1及び第2の各スイッチ回路の動作制御を行って分圧比を切り換える切換制御回路と、
を備え、
前記第2抵抗と前記第2スイッチが直列に接続された各直列回路が、前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に並列に接続され、前記切換制御回路は、前記第2の抵抗回路における少なくとも1つの第2抵抗を、前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に並列に接続するように、前記各第2スイッチの動作制御を行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】前記分圧回路部は、
一端がそれぞれ接続された複数の第1抵抗からなる第1の抵抗回路と、
該第1の抵抗回路における各第1抵抗の他端に一端が対応して接続され、他端がそれぞれ接続された各第1スイッチからなる第1のスイッチ回路と、
前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に直列に接続された複数の第2抵抗からなる第2の抵抗回路と、
入力される制御信号に応じて該第2の抵抗回路における少なくとも1つの第2抵抗を短絡する第2のスイッチ回路と、
外部から入力される制御信号に応じて前記第1及び第2の各スイッチ回路の動作制御を行って分圧比を切り換える切換制御回路と、
を備え、
前記第1抵抗と前記第1スイッチが直列に接続された各直列回路が、前記出力端子と前記分圧電圧を出力する出力端との間に並列に接続され、前記切換制御回路は、前記第1の抵抗回路における少なくとも1つの第1抵抗を、前記出力端子と前記分圧電圧を出力する出力端との間に並列に接続するように、前記各第1スイッチの動作制御を行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】前記電圧制御回路部は、
入力される制御信号に応じて、前記直流電源からの入力電圧を出力するスイッチングを行うスイッチングトランジスタと、
前記基準電圧に対する前記分圧回路部からの分圧電圧の誤差を増幅する誤差増幅器と、
該誤差増幅器からの出力信号に応じて前記スイッチングトランジスタのスイッチング制御を行う制御回路部と、
前記スイッチングトランジスタからの出力信号を平滑して前記出力端子に出力する平滑回路部と、
を備えることを特徴とする請求項1、2又は3記載の半導体装置。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】直流電源から入力される入力電圧から所定の定電圧を生成して出力端子から出力する電源回路を備えた半導体集積回路からなる半導体装置において、
前記電源回路は、
所定の基準電圧を生成して出力する基準電圧発生回路部と、
外部から入力される信号に応じて分圧比を変え、前記出力端子からの出力電圧を分圧して出力する分圧回路部と、
該分圧回路部から出力される分圧電圧が前記基準電圧になるように、前記入力電圧から定電圧を生成して前記出力端子に出力する電圧制御回路部と、
を備え、
前記分圧回路部は、
前記出力端子と前記分圧電圧を出力する出力端との間に直列に接続された複数の第1抵抗からなる第1の抵抗回路と、
入力される制御信号に応じて該第1の抵抗回路における少なくとも1つの第1抵抗を短絡する第1のスイッチ回路と、
一端がそれぞれ接続された複数の第2抵抗からなる第2の抵抗回路と、
該第2の抵抗回路における各第2抵抗の他端に一端が対応して接続され、他端がそれぞれ接続された各第2スイッチからなる第2のスイッチ回路と、
外部から入力される制御信号に応じて前記第1及び第2の各スイッチ回路の動作制御を行って分圧比を切り換える切換制御回路と、
を備え、
前記第2抵抗と前記第2スイッチが直列に接続された各直列回路が、前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に並列に接続され、前記切換制御回路は、前記第2の抵抗回路における少なくとも1つの第2抵抗を、前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に並列に接続するように、前記各第2スイッチの動作制御を行い、
前記電圧制御回路部は、
入力される制御信号に応じて、前記直流電源からの入力電圧を出力するスイッチングを行うスイッチングトランジスタと、
前記基準電圧に対する前記分圧回路部からの分圧電圧の誤差を増幅する誤差増幅器と、
該誤差増幅器からの出力信号に応じて前記スイッチングトランジスタのスイッチング制御を行う制御回路部と、
前記スイッチングトランジスタからの出力信号を平滑して前記出力端子に出力する平滑回路部と、
を備え、
前記基準電圧発生回路部、分圧回路部、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】直流電源から入力される入力電圧から所定の定電圧を生成して出力端子から出力する電源回路を備えた半導体集積回路からなる半導体装置において、
前記電源回路は、
所定の基準電圧を生成して出力する基準電圧発生回路部と、
外部から入力される信号に応じて分圧比を変え、前記出力端子からの出力電圧を分圧して出力する分圧回路部と、
該分圧回路部から出力される分圧電圧が前記基準電圧になるように、前記入力電圧から定電圧を生成して前記出力端子に出力する電圧制御回路部と、
を備え、
前記分圧回路部は、
一端がそれぞれ接続された複数の第1抵抗からなる第1の抵抗回路と、
該第1の抵抗回路における各第1抵抗の他端に一端が対応して接続され、他端がそれぞれ接続された各第1スイッチからなる第1のスイッチ回路と、
前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に直列に接続された複数の第2抵抗からなる第2の抵抗回路と、
入力される制御信号に応じて該第2の抵抗回路における少なくとも1つの第2抵抗を短絡する第2のスイッチ回路と、
外部から入力される制御信号に応じて前記第1及び第2の各スイッチ回路の動作制御を行って分圧比を切り換える切換制御回路と、
を備え、
前記第1抵抗と前記第1スイッチが直列に接続された各直列回路が、前記出力端子と前記分圧電圧を出力する出力端との間に並列に接続され、前記切換制御回路は、前記第1の抵抗回路における少なくとも1つの第1抵抗を、前記出力端子と前記分圧電圧を出力する出力端との間に並列に接続するように、前記各第1スイッチの動作制御を行い、
前記電圧制御回路部は、
入力される制御信号に応じて、前記直流電源からの入力電圧を出力するスイッチングを行うスイッチングトランジスタと、
前記基準電圧に対する前記分圧回路部からの分圧電圧の誤差を増幅する誤差増幅器と、
該誤差増幅器からの出力信号に応じて前記スイッチングトランジスタのスイッチング制御を行う制御回路部と、
前記スイッチングトランジスタからの出力信号を平滑して前記出力端子に出力する平滑回路部と、
を備え、
前記基準電圧発生回路部、分圧回路部、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】前記基準電圧発生回路部、分圧回路部、スイッチングトランジスタ、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】前記平滑回路部は、制御回路部によって動作制御されフライホイールダイオードと同様の働きを行うトランジスタを備え、該トランジスタ、前記基準電圧発生回路部、分圧回路部、スイッチングトランジスタ、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。」

そこで、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
本件補正後の請求項1に係る半導体装置は、電源回路が、基準電圧発生回路部、分圧回路部、電圧制御回路部を備え、分圧回路部は、直列に接続された複数の第1抵抗からなる第1の抵抗回路、複数の第2抵抗からなる第2の抵抗回路、第1及び第2のスイッチ回路、第1及び第2のスイッチ回路の動作制御を行う切換制御回路を備え、電圧制御回路部は、スイッチングトランジスタ、誤差増幅器、制御回路部、平滑回路部を備えており、これら全てを有する本件補正前の請求項は、本件補正前の請求項4のみであるから、本件補正前の請求項4に、本件補正後の請求項1が対応している。そして、本件補正前の請求項4を引用する他の請求項は、本件補正前には存在せず、又、本件補正前の請求項4には、構成要件が択一的なものとして記載されてもいない。
これに対し、本件補正後の請求項3ないし4は、何れも本件補正後の請求項1を引用している。
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そして、本件補正後の請求項1ないし4は、本件補正後の各請求項の記載により特定される各発明が、全体として、本件補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても、上述したような一対一又はこれに準ずるような対応関係がないから、同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当せず、本件補正後の請求項3ないし4が実質的に新たな請求項を追加したものであることは明らかである。

なお、この点に関し、審判請求人は、平成20年9月17日付手続補正書(請求の理由)において、
「(3-2)補正の根拠の明示
平成20年9月2日付けの手続補正書における各補正事項は、すべて明細書及び図面に基づくものである。
すなわち、
a)請求項1を削除し、請求項1に請求項2の内容を加えて更に減縮補正を行い新たな請求項1にした。この減縮補正は、明細書の段落[0017]?[0024]及び[0028]の記載、並びに図面の図1及び図2に基づくものである。」
と主張しているが、仮に請求人の主張どおりであるとしても、本件補正前の請求項2を引用するのは本件補正前の請求項4のみであるから、本件補正後の請求項1を引用している本件補正後の請求項3ないし4が、実質的に新たな請求項を追加したものであることは明らかである。

したがって、本件補正は、請求項数を増加する補正に該当し、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-337008号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

1-a「各種電子回路用電源としてスイッチングレギュレータが多用されている。電源としての所要電圧は5V、3.3V、2.5V等、各種が要求され、所定のスイッチングレギュレータの出力電圧を調整して対応している。
図2は、従来技術に係るスイッチングレギュレータの一例を示している。この回路では、出力電圧Voをレギュレータ用集積回路(以下、IC)用の電源電圧とするとともに、Voを可変抵抗R1、R2による分割比(R2/(R1+R2))で分割した電圧をAMP1において基準電圧Vaと比較する。その結果、分割された電圧がVaより低い場合は、IC外に設けたスイッチング用トランジスタQ1のオン時間比(デューティ比)を増加させトランジスタQ2のデューティ比を減少させ、高い場合はトランジスタQ1のデューティ比を減少させトランジスタQ2のデューティ比を増加させることによりVoを一定値に保つ。出力電圧Voは基準電圧Vaに分割比の逆数を乗じた値になるから、可変抵抗R1、R2により出力電圧Voを調整することができる。なお、トランジスタQ1が接続される電源電圧Vccは、供給先の消費電流の急速な変化に追随できるようにIC用内部電源電圧より高く設定されている。」(【0002】-【0003】)

図2を参照すると、基準電圧Vaを出力する手段と、出力端子と接地との間に接続された可変抵抗R1、R2により分割比を変え、出力端子からの出力電圧Voの分割された電圧を取り出して比較増幅器AMP1に出力する出力電圧分割回路部と、電源電圧Vccから出力電圧Voを生成して出力端子に出力する電圧の制御回路部とを備える電圧調整回路が示されると共に、
出力電圧分割回路部は、出力端子と分割された電圧を出力する出力端との間に接続された可変抵抗R1からなる第1の抵抗回路と、分割された電圧を出力する出力端と接地との間に接続された可変抵抗R2からなる第2の抵抗回路からなり、前記電圧の制御回路部が、スイッチング用トランジスタQ1、Q2、比較増幅器AMP1、制御回路、平滑用であるキャパシタC等を備える態様が示され、さらに、基準電圧Vaを出力する手段、比較増幅器AMP1及び制御回路がレギュレータ用集積回路ICとして構成される態様が示されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「入力される電源電圧Vccから一定値に保たれる出力電圧Voを生成して出力端子から出力する電圧調整回路を備えたレギュレータ用集積回路ICを有するスイッチングレギュレータにおいて、
前記電圧調整回路は、
基準電圧Vaを出力する手段と、
可変抵抗R1、R2により分割比を変え、前記出力端子からの出力電圧Voの分割された電圧を取り出す出力電圧分割回路部と、
該出力電圧分割回路から取り出される分割された電圧が前記基準電圧Vaに基づいて、前記電源電圧Vccから一定値に保たれる出力電圧Voを生成して前記出力端子に出力する電圧の制御回路部と、
を備え、
前記出力電圧分割回路部は、
前記出力端子と前記分割された電圧を出力する出力端との間に接続された可変抵抗R1からなる第1の抵抗回路と、
前記分割された電圧を出力する出力端と接地との間に接続された可変抵抗R2からなる第2の抵抗回路と、
を備え、
前記電圧の制御回路部は、
入力される制御信号に応じて、デューティ比を変化させるスイッチング用トランジスタQ1、Q2と、
前記基準電圧Vaと前記出力電圧分割回路部からの分割された電圧を比較して増幅する比較増幅器AMP1と、
該比較増幅器AMP1からの出力信号に応じて前記スイッチング用トランジスタQ1、Q2のデューティ比を変化させる制御回路と、
前記スイッチング用トランジスタQ1、Q2からの出力信号を平滑して前記出力端子に出力するキャパシタCと、
を備え、
前記基準電圧Vaを出力する手段、比較増幅器AMP1及び制御回路は、レギュレータ用集積回路ICとして構成されるスイッチングレギュレータ。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-95769号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

2-a「本発明はスイッチング電源用の可変周波数発振回路に係わり、特にスイッチングレギュレータの制御回路に用いて好適な可変周波数発振回路に関する。」(【0001】)

2-b「図16に示すものは複数のスイッチS_(1) ?S_(9) に対し直列に接続した抵抗R_(S) と並列に接続した抵抗R_(P) を互に並列接続し、抵抗R_(S) 及びR_(P) の値とスイッチの開閉状態を適宜選択することで充放電電流を可変して充放電時間を調整する様にして可変電流回路としたものである。」(【0064】)

2-c「さらにスイッチ32,32A,32B,S等はFET等の半導体素子からなる電気的スイッチ或はリレー等の機械的スイッチであってもよいことは明らかである。」(【0066】)

図16を参照すると、一端がそれぞれ接続された複数の抵抗R_(S) ,R_(P) を直列及び並列に接続すると共に、各抵抗を短絡するスイッチS_(4) ,S_(5) あるいは各抵抗に直列接続するスイッチS_(1) ?S_(3) を組み合わせてなる可変抵抗回路が示されている。

(2)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「入力される電源電圧Vcc」、「一定値に保たれる出力電圧Vo」、「電圧調整回路」は、それぞれ本願補正発明の「直流電源から入力される入力電圧」、「所定の定電圧」、「電源回路」に相当している。
引用例1発明の「レギュレータ用集積回路IC」は本願補正発明の「半導体集積回路」に相当するから、引用例1発明の「レギュレータ用集積回路ICを有するスイッチングレギュレータ」は本願補正発明の「半導体集積回路からなる半導体装置」に相当しているといえる。
引用例1発明の「基準電圧Vaを出力する手段」、「分割比」、「電圧の制御回路部」、「キャパシタC」は、それぞれ本願補正発明の「所定の基準電圧を生成して出力する基準電圧発生回路部」、「分圧比」、「電圧制御回路部」、「平滑回路部」に相当している。
その機能をも考慮すると、引用例1発明の「出力端子からの出力電圧Voの分割された電圧を取り出す出力電圧分割回路部」は、本願補正発明の「出力端子からの出力電圧を分圧して出力する分圧回路部」に相当し、引用例1発明の「出力電圧分割回路から取り出される分割された電圧が基準電圧Vaに基づいて、電源電圧Vccから一定値に保たれる出力電圧Voを生成」する態様は、本願補正発明の「分圧回路部から出力される分圧電圧が基準電圧になるように、入力電圧から定電圧を生成」する態様に相当し、引用例1発明の「入力される制御信号に応じて、デューティ比を変化させるスイッチン用グトランジスタQ1、Q2」は、本願補正発明の「入力される制御信号に応じて、直流電源からの入力電圧を出力するスイッチングを行うスイッチングトランジスタ」に相当し、引用例1発明の「基準電圧Vaと出力電圧分割回路部からの分割された電圧を比較して増幅する比較増幅器AMP1」は、本願補正発明の「基準電圧に対する分圧回路部からの分圧電圧の誤差を増幅する誤差増幅器」に相当し、引用例1発明の「比較増幅器AMP1からの出力信号に応じてスイッチング用トランジスタQ1、Q2のデューティ比を変化させる制御回路」は、本願補正発明の「誤差増幅器からの出力信号に応じてスイッチングトランジスタのスイッチング制御を行う制御回路部」に相当する。
引用例1発明の「基準電圧Vaを出力する手段、比較増幅器AMP1及び制御回路は、レギュレータ用集積回路ICとして構成される」態様と、本願補正発明の「基準電圧発生回路部、分圧回路部、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積される」態様とは、「基準電圧発生回路部、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積される」との概念で共通している。

したがって、両者は、
「直流電源から入力される入力電圧から所定の定電圧を生成して出力端子から出力する電源回路を備えた半導体集積回路からなる半導体装置において、
前記電源回路は、
所定の基準電圧を生成して出力する基準電圧発生回路部と、
分圧比を変え、前記出力端子からの出力電圧を分圧して出力する分圧回路部と、
該分圧回路部から出力される分圧電圧が前記基準電圧になるように、前記入力電圧から定電圧を生成して前記出力端子に出力する電圧制御回路部と、
を備え、
前記電圧制御回路部は、
入力される制御信号に応じて、前記直流電源からの入力電圧を出力するスイッチングを行うスイッチングトランジスタと、
前記基準電圧に対する前記分圧回路部からの分圧電圧の誤差を増幅する誤差増幅器と、
該誤差増幅器からの出力信号に応じて前記スイッチングトランジスタのスイッチング制御を行う制御回路部と、
前記スイッチングトランジスタからの出力信号を平滑して前記出力端子に出力する平滑回路部と、
を備え、
前記基準電圧発生回路部、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積される半導体装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
分圧回路部の分圧比を変える態様に関し、本願補正発明は、「外部から入力される信号に応じて」なされるのに対し、引用例1発明は、この様な構成を備えていない点。
〔相違点2〕
分圧回路部に関し、本願補正発明は、「出力端子と分圧電圧を出力する出力端との間に直列に接続された複数の第1抵抗からなる第1の抵抗回路と、入力される制御信号に応じて該第1の抵抗回路における少なくとも1つの第1抵抗を短絡する第1のスイッチ回路と、一端がそれぞれ接続された複数の第2抵抗からなる第2の抵抗回路と、該第2の抵抗回路における各第2抵抗の他端に一端が対応して接続され、他端がそれぞれ接続された各第2スイッチからなる第2のスイッチ回路と、外部から入力される制御信号に応じて前記第1及び第2の各スイッチ回路の動作制御を行って分圧比を切り換える切換制御回路と、を備え、前記第2抵抗と前記第2スイッチが直列に接続された各直列回路が、前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に並列に接続され、前記切換制御回路は、前記第2の抵抗回路における少なくとも1つの第2抵抗を、前記分圧電圧を出力する出力端と直流電源の負側電源端子との間に並列に接続するように、前記各第2スイッチの動作制御を行」っているのに対し、引用例1発明は、「出力端子と分割された電圧を出力する出力端との間に接続された可変抵抗R1からなる第1の抵抗回路と、分割された電圧を出力する出力端と接地との間に接続された可変抵抗R2からなる第2の抵抗回路とを備え」る点。
〔相違点3〕
ICに集積される対象に関し、本願補正発明は、「分圧回路部」が含まれているのに対し、引用例1発明は、「分圧回路部」は含まれていない点。

(3)判断
〔相違点1〕、〔相違点2〕について
一般に、電気回路の分野において、回路素子の切換等は手動で行うか自動-即ち外部入力で行うかの何れかであり、また、引用例2に示されるように、一端がそれぞれ接続された複数の抵抗(「R_(S) ,R_(P) 」が相当)を直列及び並列に接続すると共に、各抵抗を短絡するスイッチ(「S_(4) ,S_(5) 」が相当)及び各抵抗に直列接続するスイッチ(「S_(1) ?S_(3) 」が相当)を、外部から入力される制御信号に応じて動作制御が行われるスイッチ(「FET等の半導体素子からなる電気的スイッチ」が相当)で構成することにより、抵抗値を適宜選択し得るようにすることは、可変抵抗回路の分野における周知の事項である。
そうすると、引用例1発明において、分圧回路部を構成する、可変抵抗R1からなる第1の抵抗回路と、可変抵抗R2からなる第2の抵抗回路に対し、抵抗値を適宜選択するとの目的の範囲内で、上記周知の事項を適用し、相違点1、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に考えられたものである。
その際、本願補正発明において、各抵抗、各スイッチ及び前記切換制御回路の具体的な接続態様による格別な作用効果も認められないから、この様な接続態様は、分圧比の切り換えを実現する範囲内のものとして、当業者が必要に応じて適宜設定し得る設計的事項にすぎない。

〔相違点3〕について
ICに集積される対象として何を含ませるかは、当業者が必要に応じて適宜選定し得る設計的事項にすぎず、引用例1発明において、分圧回路部を構成する、可変抵抗R1からなる第1の抵抗回路と、可変抵抗R2からなる第2の抵抗回路に対し、上記周知の事項を適用した場合に、上記分圧回路部をICに集積される対象として含ませるようにすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1発明及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、上記した本件補正前の特許請求の範囲(平成20年2月20日付手続補正書)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、引用例2、及び、その記載事項は、上記「2.[理由II](1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2.[理由II]で検討した本願補正発明から、
実質的に、「分圧回路部」について「出力端子と分圧電圧を出力する出力端との間に直列に接続された複数の第1抵抗からなる第1の抵抗回路と、入力される制御信号に応じて該第1の抵抗回路における少なくとも1つの第1抵抗を短絡する第1のスイッチ回路と、一端がそれぞれ接続された複数の第2抵抗からなる第2の抵抗回路と、該第2の抵抗回路における各第2抵抗の他端に一端が対応して接続され、他端がそれぞれ接続された各第2スイッチからなる第2のスイッチ回路と、外部から入力される制御信号に応じて前記第1及び第2の各スイッチ回路の動作制御を行って分圧比を切り換える切換制御回路と、を備え、前記第2抵抗と前記第2スイッチが直列に接続された各直列回路が、前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に並列に接続され、前記切換制御回路は、前記第2の抵抗回路における少なくとも1つの第2抵抗を、前記分圧電圧を出力する出力端と前記直流電源の負側電源端子との間に並列に接続するように、前記各第2スイッチの動作制御を行い」との限定を省き、
「電圧制御回路部」について「入力される制御信号に応じて、直流電源からの入力電圧を出力するスイッチングを行うスイッチングトランジスタと、基準電圧に対する分圧回路部からの分圧電圧の誤差を増幅する誤差増幅器と、該誤差増幅器からの出力信号に応じて前記スイッチングトランジスタのスイッチング制御を行う制御回路部と、前記スイッチングトランジスタからの出力信号を平滑して出力端子に出力する平滑回路部と、を備え」るとの限定を省き、
さらに、「基準電圧発生回路部、分圧回路部、誤差増幅器及び制御回路部は、1つのICに集積される」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用例1発明とを対比した際の相違点は、上記「2.[理由II](2)」で抽出した〔相違点1〕のみとなるため、上記「2.[理由II](3)」での検討を踏まえれば、本願発明も、引用例1発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-12 
結審通知日 2010-02-16 
審決日 2010-03-03 
出願番号 特願2002-249081(P2002-249081)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H02M)
P 1 8・ 121- Z (H02M)
P 1 8・ 575- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩治 雅也櫻田 正紀  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 槙原 進
大河原 裕
発明の名称 半導体装置  
代理人 石野 正弘  
代理人 田村 恭生  
代理人 田中 光雄  

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