• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580321 審決 特許
無効200680038 審決 特許
無効200480150 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施  G01N
審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  G01N
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部無効 特174条1項  G01N
審判 全部無効 1項1号公知  G01N
審判 全部無効 2項進歩性  G01N
管理番号 1215830
審判番号 無効2008-800209  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-10-16 
確定日 2010-05-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3998184号発明「有精卵の検査法および装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3998184号に係る出願は、平成14年9月4日の出願であって、平成15年1月31日付け手続補正により発明者の変更がされ、平成15年2月3日付けで発明者相互の宣誓書および発明者変更の理由を記載した書面が手続補足書として提出され、その後、平成16年4月2日に特開2004-101204号公報として出願公開がされ、平成19年5月8日付け拒絶理由通知に対し、指定された期間内の平成19年7月5日付けで特許請求の範囲の補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、平成19年8月17日に特許権の設定登録がされたものである。

これに対して、請求人により平成20年10月16日付けで特許無効の審判が請求され、その後請求人により平成21年2月10日付けで上申書が提出された。そして無効審判の請求に対し、被請求人により平成21年2月20日付けで答弁書が提出され、その後、請求人により平成21年3月31日付けの弁駁書および平成21年5月19日付けの上申書および手続補足書が提出された。


第2 請求人の主張の概略
請求人は、「特許第3998184号は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、審判請求書の請求の理由、平成21年2月10日付け上申書、弁駁書、および平成21年5月19日付け上申書によれば、次の理由および証拠に基づいて、本件特許は無効とされるべきであると主張する。

[理由]
理由1
本件補正は、特許出願時の請求項1から9までの請求項に「新規事項」が追加されている。したがって、本件補正は、最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

特に「一定の太さ以上の血管の総血管長」(請求項1)、「検査領域面積に占める総血管長の割合」(請求項2)、「検査領域の面積」(請求項3)、「気室境界付近の濃度分布情報」(請求項4)、「血管の分布するブロック数」(請求項5)、「気室境界別胎児側に向けて所定の間隔で計測した投影値減衰率の平均値」(請求項6)の各測定基準は出願時の明細書には全く明記されていない。

補正の主要部分の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し」と「一定の太さ以上の血管の総血管長」の2ケ所の文言は、補正時に追加挿入された文言であり、前者の追加挿入された補正を前提にした後者の追加挿入補正による新規の発明効果が得られる請求項に改められている。よって、この追加挿入された請求項1の補正は出願時には全く考えらていなかった発明の構成要件であるから、この補正を認めた特許(登録)査定は出願時の改良発明又は新規発明と解するべきである。
血管抽出方法は従来の公知公用方法であるから、追加挿入して補正された請求項1は新規性を有しない発明と解すべきである。
「血管総長」(総画素数)を算出することが従来公知公用の技術を前提にした構成要件であるから、その構成要件に基づく判定結果も当然公知公用の効果と解すべきである。

よって、特許法第123条第1項第1号に該当する。

理由2
本件特許第3998184号の請求項1?9は、新規事項を追加する本件補正に基づくものであるから、却下されるべきものである。そうすると、請求項1?9に係る発明は、甲第4号証?甲第8号証の先行技術文献に記載されている発明から容易に発明することができたものであるから、いわゆる新規性及び進歩性のない発明である。
よって、特許法第123条第1項第2号に該当する。

理由3-1
本件特許と同一の「有精卵の検卵装置」の設計図と最初の仕様書などの関連資料(甲第9号証)が「化学及血清療法研究所」から「財団法人阪大微生物病研究所」に流出されたことが容易に考えられる。また、甲第11号証の資料から外国において公知公用の特許発明といえるから、本件特許第3998184号は、日本国又は外国において公知公用の発明に該当する特許である。
甲第10号証は、被請求人(四国計測工業株式会社)のホームページアドレスから検索した「自動検卵機」の「装置概要」「装置の特徴」などを宣伝するためのインターネット上のパンフレットである。パンフレット・チラシ・インターネット等により宣伝する場合は、具体的な発行日を記載しないのが一般的であるから、このホームページがいつ発表されたかは不明である。甲第10号証の「自動検卵機」が公知公用であったことを第9号証の追加補充資料(検卵機関発経過報告書)と合わせて立証する。
書面以外の証人による立証が必要な場合は、証人申請することを要望する。

理由3-2
本件特許は審判請求人が開発した装置をあたかも四国計測工業(株)が開発したようにホームページに掲載するとともに、(財)阪大微生物病研究所に持ち込み研究所の研究者を発明者にして四国計測工業(株)が特許出願をなした疑いがある。また、本件特許の出願時における発明者が「財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所」の研究員(2名)でありながら、その後「四国計測工業株式会社」の従業員(4名)が発明者に追加されている。甲第10号証の「有精卵の検査方法」によれば、従業員が開発した旨の表示と謝辞によると、正しい発明者は出願時の発明者ではなく追加された発明者であることが明白である。
よって、出願時の発明者は冒認発明者である。

[証拠]
甲第1号証 拒絶理由通知書(平成19年5月11日発送)
甲第2号証 手続補正書(平成19年7月5日提出)
甲第3号証 意見書(平成19年7月5日提出)
甲第4号証 特開平 9-127096号公報
甲第5号証 特開平11-173996号公報
甲第6号証 特開2001-211776号公報
甲第7号証 特開平 7-209209号公報
甲第8号証 特開平 7-229841号公報
甲第9号証 有精卵の検卵装置に関する経過説明
(甲第9号証には、別途に作成された8種の証拠が含まれるため、
以下に示すように当審において枝番を付した。)
甲第9号証の1 「有精卵の検卵装置に関する経過説明」
(全1頁)平成17年10月25日
甲第9号証の2 「打合せ議事録」(全1頁)平成13年 9月15日
甲第9号証の3 「たまご検卵シリンダー機構 構想図」
(全1頁)平成14年 1月 5日
甲第9号証の4 「たまごけ検卵器」(全1頁)
甲第9号証の5 「FAX送付状」(全1頁)平成13年12月 3日
甲第9号証の6 「検卵装置 全体図」(全1頁)平成14年10月12日
甲第9号証の7 「ライトガイド外観図」
(全1頁)平成13年11月28日
甲第9号証の8 「設備見積仕様書」(全11頁)平成14年10月 8日

また、平成21年3月31日付け弁駁書において、甲第9号証の追加補充資料(検卵機開発経過報告書)として、4種の証拠が追加されたため、以下に示すように当審において番号を付した。
甲第9号証の9 「検卵機開発経過報告書」
(全2頁)平成21年 3月25日
甲第9号証の10「四国計測工業株式会社」
(全1頁)平成21年 3月17日
甲第9号証の11「四国計測工業/製品紹介/自動検卵機」
(全2頁)平成21年 3月17日
甲第9号証の12「四国計測工業/製品紹介/産業用製品」
(全2頁)平成21年 3月17日

甲第10号証 本件特許「自動検卵機」の資料
甲第10号証には、別途に作成された2種の証拠が含まれるため、以下に示すように当審において枝番を付した。
甲第10号証の1 「自動検卵機」(全1頁)
甲第10号証の2 「有精卵の検査手法」(全11頁)

甲第11号証「会社概要」(日本語翻訳、原文)

さらに、請求人は、平成21年2月10日付け上申書において、番号を付けずに先行技術文献を提示しているので、提示された文献のうち、審判請求書に証拠として添付されていない文献について、以下に示すように当審において番号を付した。
刊行物1 特開平11-118722号公報
刊行物2 特開2002-153262号公報
刊行物3 特開昭59- 37460号公報
刊行物4 特開平 9- 61418号公報
刊行物5 特開平10-328625号公報
刊行物6 特開平11- 56159号公報
刊行物7 特開平11-326202号公報
刊行物8 特開2000- 23505号公報


第3 被請求人の主張の概略
一方、被請求人は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、答弁書によれば、次の理由に基づいて、請求人が主張する理由および証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできないと主張する。

[理由]
理由1について
請求人の主張は、なぜ新規事項であるかその理由を述べることなく、請求項1?9についてした補正(特許公報でアンダーラインが付されている部分)は新規事項である、と言うだけのものである。

a.出願当初明細書の【0029】、【0006】、【0019】及び図12の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、「一定の太さ以上の血管」を扱えばよいことが当然に理解できる。

b.出願当初明細書の【0029】、【0019】のような記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、「前記検査領域面積に占める総血管長の割合」の構成を当業者は当然に読み取ることができる。

c.出願当初の明細書の【0028】には「上述の方法は、検査領域として、正常な色合いの血管分布領域のみを特定できる効果がある。特定した検査領域の総画素数を面積として計測し、正常卵判定の判断材料として、1次判定時に使用する。…」と記載され、R画像由来の画像とG画像由来の画像の2つの画像中両方に存在する領域を検査領域とし、その総画素数を面積として計測し正常卵判定をするのであり、これが「検査領域の面積」で正常卵を判定することを意味することは明らかである。

d.補正前の請求項4には「気室境界付近の濃度分布情報を把握し」と記載されている。

e.出願当初明細書の【0029】には図19の方法を用いて血管候補領域を抽出し、その領域を複数のブロックに分割し、血管の分布ブロック数を計測し、血管の分布ブロック数が多いものを正常卵とする、ことが記載されている。

f.出願当初明細書の【0026】には、気室境界より一定間隔で投影値減衰率平均を計測し、その全計測結果の減衰率平均値で、正常卵を判定する、ことが記載されている。「全計測結果の減衰率平均値」は、全ての測定値平均するのであるから「計測した投影値減衰率の平均値」である。また、間隔の設定が胎児側に向かっていることは「正常卵は、気室から胎児にかけて濃度が減衰する」と言う記載や図16の記載から明らかである。そして、これに基づいて正常卵を判定することも「減衰率平均値を正常卵判定の判断材料として」という記載から明らかである。

理由2について
請求人の主張は、審査官の特許法第29条第2項の拒絶理由を免れたのはひとえに請求項1?9についての補正が容認されたという前提に誤りがあったからである、と言うものである。請求人の主張は、その前提においてすでに妥当なものとは言えず、成り立たないものである。

理由3について
理由3は明瞭でないため、公知公用に的をしぼって反論する。
本件発明に係る特願2002-259297号の出願日である平成14年9月4日以前に、不特定の人が知っていて、しかもその内容は秘密でない場合に当たること、公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況での実施がなされていること、不特定多数が見ることができるような状態におかれた刊行物(公衆に頒布により公開することを目的に複製された文書、図面、これに類する情報伝達媒体)に記載されていること、電気通信回線を通じて利用可能になっている発明であること、これらのうちのいずれをも立証されているとは言えない。
したがって、これらの証拠によって本件特許発明が出願時に日本国又は外国において公知公用の発明に該当するということはできない。


第4 当審の判断
無効理由1として、本件補正が、請求人が理由1として挙げている、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしているかについて検討する。
無効理由2として、本件発明1?9が、請求人が理由2として挙げている甲第4号証?甲第8号証に基づいて、特許法第29条第1号第3号に該当するかについて検討する。
無効理由3として、本件発明1?9が、請求人が理由2として挙げている甲第4号証?甲第8号証に基づいて、特許法第29条第2項に該当するかについて検討する。
無効理由4として、本件発明1?9が、請求人が理由3-1として挙げている甲第9号証の1?甲第11号証のそれぞれに基づいて、特許法第29条第1項第1号または第2号に該当するかについて検討する。
無効理由5として、本件特許に係る出願が、請求人が理由3-2として挙げている、特許法第49条第7号に規定する要件を満たしているかについて検討する。
職権による審理の理由1として、本件発明1?9が、請求人が平成21年2月10日付け上申書において提示した刊行物1?8に基づいて、特許法第29条第1項第3号に該当するかについて検討する。
職権による審理の理由2として、本件発明1?9が、請求人が平成21年2月10日付け上申書において提示した刊行物1?8に基づいて、特許法第29条第2項に該当するかについて検討する。
職権による審理の理由3として、本件発明1?9が、甲第9号証の1?甲第11号証に基づいて、特許法第29条第1項第3号に該当するかについて検討する。
職権による審理の理由4として、本件発明1?9が、甲第9号証の1?甲第11号証に基づいて、特許法第29条第2項に該当するかについて検討する。

1.無効理由1(特許法第17条の2第3項)
(1)本件発明1について
本件発明1に係る本件補正は、出願時の特許請求の範囲の請求項1
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、検査領域内の血管情報を計測し、それに基づいて正常卵を判定することを特徴とする有精卵の検査法。」を
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項1]「撮像したカラー画像から検査領域を抽出」する工程を追加する事項。
[補正事項2]正常卵を判定する工程について、「一定の太さ以上の血管の総血管長」に基づき、「自動」で行うと限定する事項。

[補正事項1]について
本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「本件当初明細書」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(ア)「【0016】
《卵内部の色情報》
卵内部の色情報は、卵上部(気室側)より照明光を照射し、卵殻を透過した照明光を、カラーCCDカメラを用いて撮像し、カラー画像(RGB表色系)として得る。十数日齢の正常な有精卵の内部を撮像したカラー画像上では、気室、胎児、漿尿膜腔、血管は、色合い、明度、形状等それぞれに異なった特徴を持つ。胎児部は暗く、色合いも少ない。気室および漿尿膜腔、血管は、黄色から赤色にかけての色合いが多く、それぞれ明度が異なる。
卵内部の、気室から胎児にかけての、漿尿膜腔のある領域を検査領域として、胎児の位置(領域の大きさ)や気室境界付近の濃度情報、血管情報を取得し、正常卵判定を行う。
検査領域は、赤色から黄色にかけての色情報が多く含まれているため、RGB画像のG成分とR成分を用いて、検査領域の特定を行う。特定した検査領域の面積を計測し、正常卵判定の判断材料として使用する。」

上記(ア)の「卵内部の、気室から胎児にかけての、漿尿膜腔のある領域を検査領域として」という記載によれば、卵内部の色情報をカラー画像として得た後、漿尿膜腔のある領域を検査領域とし、血管情報を取得し、正常卵判定を行うことが記載されているといえる。ここで、卵内部の色情報をカラー画像として得る工程は、本件発明1の「卵内部のカラー画像を撮像」する工程に該当し、血管情報を取得する工程は、本件発明1の「検査領域内の血管情報を計測」する工程に該当するものであるから、本件当初明細書には、卵内部のカラー画像を撮像する工程と検査領域内の血管情報を計測する工程の間において実行される、「漿尿膜腔のある領域を検査領域」とする工程が記載されていたといえる。そして、「抽出」という直接の記載はないものの、撮像されたカラー画像の一部の領域を検査領域とすることは、一般に検査領域を「抽出」すると称されることである。
したがって、本件当初明細書には、「撮像したカラー画像から検査領域を抽出」する工程が実質的に記載されていたといえる。

[補正事項2]について
本件当初明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(イ)「【0006】
本発明は、有精卵の上部から内部に光を照射して撮像した卵内部のカラー画像において、血管の有無、太さ、分布状態などの情報を、画像処理を用いて計測し、その結果に基づいて正常卵を自動で判定する有精卵の非破壊検査手法である。すなわち、撮像した卵内部のカラー画像における血管の有無、太さ、分布状態などを把握し、それに基づいて死卵や発育不良卵を自動で検出しており、その場合、本発明は、有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、血管の有無、太さ、分布状態などの検査領域内の血管情報を計測し、それに基づいて死卵や発育不良卵を自動で検出して正常卵と区別することで、正常卵を判定することを特徴とする有精卵の検査法を要旨としている。」
(ウ)「【0029】
図19は、血管抽出方法を簡単に説明する図である。
血管抽出は、図19の方法を用いて血管候補領域を抽出し、ノイズ除去、細線化を行い、幅1画素の線分として血管を抽出する。
抽出血管は、a*画像とG画像を用い、血管ごとにa*およびGの色合い平均値を計測する。
各色合い平均値と設定しきい値との比較により、極端に細い血管を判別し、除去する。残った抽出血管は、検査卵の有する正常な血管として、血管総長(総画素数)を算出する。また、複数のブロックに分割した検査領域上における、血管の分布ブロック数を計測する。一次判定は、4画像の総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって、正常卵を判定する。二次判定は、一次判定時に死卵と判定された検査卵に対してのみ実施する。ここでは、4画像の気室近傍濃度変化量(濃度減衰率)と血管分布ブロック数を、設定したしきい値と比較し、正常卵を判定する。濃度の減衰が急激なもの、血管分布ブロック数が多いものを正常卵とする。死卵は、気室境界付近における出血を検出した時と二次判定時に、判定結果が確定し、正常卵は、一次判定時と二次判定時に判定結果が確定する。
本発明は、気室境界付近における出血有無の検査、気室近傍濃度変化計測、検査領域特定・面積計測、斑点除去、血管検査領域内における出血確認・対策、血管抽出等の処理の後、一次、二次の二段階の正常卵判定を実施することによって、高精度な有精卵の検査に効果がある。
正常卵判定の結果は、画像処理装置より選別コンベアに出力され、結果によって振り分けられる。
正常卵判定をうけた卵は、選別ラインから、複数個同時に吸着してホイルから専用トレイに移載し、排出する。選別した死卵(発育不良卵、気室境界付近出血卵を含む)は、複数個同時に吸着して、ホイルから死卵回収設備へ移載し、回収する。」

上記(ウ)の「一次判定は、4画像の総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって、正常卵を判定する。」という記載によれば、正常卵の判定を、「総血管長」に基づいて行うことが記載されていることは明らかである。また、「極端に細い血管を判別し、除去する。残った抽出血管は、検査卵の有する正常な血管として、血管総長(総画素数)を算出する。」という記載によれば、「血管総長」の算出に用いられる抽出血管は、極端に細い血管を判別し、除去し、残った血管であるから、「一定の太さ以上の血管」を抽出血管とし、「血管総長」を算出していることが記載されているといえる。
また、上記(イ)には、「正常卵を自動で判定する」と記載されている。
したがって、本件当初明細書には、正常卵を判定する工程について、「一定の太さ以上の血管の総血管長」に基づき、「自動」で行うことが記載されていたといえる。

以上より、[補正事項1]および[補正事項2]のいずれも本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明1は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(2)本件発明2について
本件発明2に係る本件補正は、特許請求の範囲に、
「【請求項2】 前記検査領域面積に占める総血管長の割合に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1に記載の有精卵の検査法。」
を追加するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項3]正常卵を判定する工程について、「前記検査領域面積に占める総血管長の割合」に基づくと限定する事項。

前記(ウ)の「一次判定は、4画像の総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって、正常卵を判定する。」という記載によれば、「総血管長」と「検査領域総面積」との「兼ね合い」に基づいて正常卵を判定しているといえる。そして、広辞苑第4版(岩波書店)によると、「兼合い」とは、「かねあうこと。つりあい。均衡。標準。」を意味すると記載されている。そうすると、「総血管長と検査領域総面積との兼ね合いによって、正常卵を判定する」とは、総血管長と検査領域総面積とのつりあいがとれているかどうか、または、総血管長と検査領域総面積との均衡がとれているかどうかによって正常卵を判定するという意味であると解釈できる。そして、総血管長と検査領域総面積の「つりあい」または「均衡」とは、総血管長と検査領域総面積のバランスを意味し、総血管長と検査領域総面積のバランスとは、総血管長と検査領域総面積の「割合」を意味することといえる。
したがって、本件当初明細書には、「前記検査領域面積に占める総血管長の割合」に基づいて正常卵を判定することが記載されていたといえる。

以上より、[補正事項3]は本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明2は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(3)本件発明3について
本件発明3に係る本件補正は、出願時の特許請求の範囲の請求項3
「 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、検査領域内の内部色情報を計測し、それに基づいて正常卵を判定することを特徴とする有精卵の検査法。」を
「 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、 前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、 第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項4]「検査領域内の内部色情報を計測し、それに基づいて」判定を行うを、「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて」判定を行うと限定する事項。
[補正事項5]正常卵を判定する工程について、「自動」判定すると限定する事項。

[補正事項4]について
本件当初明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(エ)「【0027】
カラー画像(RGB)中のRとGを、それぞれの成分によりモノクロ画像化し、設定しきい値にて2値化する。R画像を、設定値以上で2値化すると、周囲の暗い部分より、気室や血管分布領域(漿尿膜腔等)を中心とした卵全体が抽出される。
G画像を、設定値以下で2値化すると、気室や死卵で生じやすい明度の高い血管分布領域を除去した画像が抽出される。
得られた2つの2値画像中、両方に存在する領域を、検査領域として特定する。」

上記(エ)の「カラー画像(RGB)中のRとGを、それぞれの成分によりモノクロ画像化し、設定しきい値にて2値化する。」および「得られた2つの2値画像中、両方に存在する領域を、検査領域として特定する。」という記載によれば、「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域」することが記載されていたといえる。
また、前記(ア)の「RGB画像のG成分とR成分を用いて、検査領域の特定を行う。特定した検査領域の面積を計測し、正常卵判定の判断材料として使用する。」という記載によれば、G成分とR成分により特定された「該検査領域の面積に基づいて」正常卵の判定を行うことが記載されているといえる。
そして、前記(ア)の「卵内部の色情報は、卵上部(気室側)より照明光を照射し、卵殻を透過した照明光を、カラーCCDカメラを用いて撮像し、カラー画像(RGB表色系)として得る。」という記載によれば、本願明細書では、RGB表示系のカラー画像を内部色情報と呼称していたものといえる。
したがって、本件当初明細書には、「検査領域内の内部色情報を計測し、それに基づい」た正常卵の判定として、「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて」正常卵を判定することが記載されていたといえる。

[補正事項5]について
前記(イ)には、「正常卵を自動で判定する」と記載されている。
したがって、本件当初明細書には、正常卵を判定する工程について、「自動」で行うことが記載されていたといえる。

以上より、[補正事項4]および[補正事項5]のいずれも本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明3は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(4)本件発明4について
本件発明4に係る本件補正は、出願時の特許請求の範囲の請求項3
「 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、検査領域内の内部色情報を計測し、それに基づいて正常卵を判定することを特徴とする有精卵の検査法。」を
「 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項6]「撮像したカラー画像から検査領域を抽出」する工程を追加する事項。
[補正事項7]「気室境界付近の濃度分布情報を把握」する工程を追加する事項。
[補正事項8]正常卵を判定する工程について、「気室境界付近の出血の有無を検出することにより」判定すると限定する事項。
[補正事項9]正常卵を判定する工程について、「自動」判定すると限定する事項。

[補正事項6]について
前記[補正事項1]においてすでに検討したとおり、本件当初明細書には、「撮像したカラー画像から検査領域を抽出」する工程が記載されていたといえる。

[補正事項7]について
本件当初明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(オ)「【請求項4】
撮像した卵内部のカラー画像における気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて死卵や気室境界付近の出血の有無を自動で検出する請求項3の有精卵の検査法。」

上記(オ)の「カラー画像における気室境界付近の濃度分布情報を把握し」という記載によれば、カラー画像を計測した後、「気室境界付近の濃度分布情報を把握」する工程を実行することが記載されているといえる。
したがって、本件当初明細書には、「撮像したカラー画像から検査領域を抽出」する工程が記載されていたといえる。

[補正事項8]について
前記(オ)の「気室境界付近の出血の有無を自動で検出する」という記載によれば、正常卵を判定するに際して「気室境界付近の出血の有無を自動で検出する」ことが記載されていたといえる。
したがって、本件当初明細書には、正常卵を判定する工程について、「気室境界付近の出血の有無を検出することにより」判定することが記載されていたといえる。

[補正事項9]について
前記[補正事項5]においてすでに検討したとおり、本件当初明細書には、正常卵を判定する工程について、「自動」で行うことが記載されていたといえる。

以上より、[補正事項6]?[補正事項9]のいずれも本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明4は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(5)本件発明5について
本件発明5に係る本件補正は、特許請求の範囲に、
「 前記検査領域内の血管情報を計測し、該検査領域を複数のブロックに分割し、血管の分布するブロック数に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。」
を追加するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項10]正常卵を判定する工程について、「検査領域内の血管情報を計測し、該検査領域を複数のブロックに分割し、血管の分布するブロック数」に基づくと限定する事項。
[補正事項11]正常卵を判定する工程について、「自動」判定すると限定する事項。

[補正事項10]について
本件当初明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(カ)「【請求項1】
有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、検査領域内の血管情報を計測し、それに基づいて正常卵を判定することを特徴とする有精卵の検査法。」
上記(カ)の「検査領域内の血管情報を計測し、」という記載によれば、正常卵の判定を行う際に、検査領域内の血管情報を計測することが記載されているといえる。
また、前記(ウ)の「複数のブロックに分割した検査領域上における、血管の分布ブロック数を計測する。」および「濃度の減衰が急激なもの、血管分布ブロック数が多いものを正常卵とする。」という記載によれば、「検査領域を複数のブロックに分割し、血管の分布するブロック数」に基づいて正常卵を判定することが記載されているといえる。
したがって、本件当初明細書には、正常卵を判定する工程について、「検査領域内の血管情報を計測し、該検査領域を複数のブロックに分割し、血管の分布するブロック数」に基づくことが記載されていたといえる。

[補正事項11]について
前記[補正事項5]においてすでに検討したとおり、本件当初明細書には、正常卵を判定する工程について、「自動」で行うことが記載されていたといえる。

以上より、[補正事項10]および[補正事項11]のいずれも本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明5は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(6)本件発明6について
本件発明6に係る本件補正は、特許請求の範囲に、
「 前記カラー画像における気室境界より胎児側に向けて所定の間隔で投影値減衰率を計測し、計測した投影値減衰率の平均値に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。」
を追加するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項12]正常卵を判定する工程について、「カラー画像における気室境界より胎児側に向けて所定の間隔で投影値減衰率を計測し、計測した投影値減衰率の平均値」に基づくと限定する事項。
[補正事項13]正常卵を判定する工程について、「自動」判定すると限定する事項。

[補正事項12]について
本件当初明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(キ)「【0025】
図15は、正常卵と気室境界付近に出血のある卵の、各出血確認用検査領域での平均濃淡値について簡単な例を示す。
気室境界付近に出血がある場合、気室境界付近と血管分布領域(漿尿膜腔)との濃淡差が大きい。
濃淡比が設定した値以上の場合を、気室境界付近に出血有りとして判定結果を出力する。
検査結果、気室境界付近に出血有りと判定した場合、その時点で検査対象卵を死卵として判定する。
検査結果、気室境界付近に出血無しと判定した場合は、気室近傍濃度変化を計測する。
ノイズ抑制後の画像を用いた、X軸上の濃度情報の投影結果をもとに、気室の存在するX軸上の範囲を特定する。
【0026】
図16は、正常卵と死卵のX軸上の濃度情報投影について簡単な例を示す。
正常卵は、気室から胎児にかけて濃度が減衰するが、気室境界を境にその勾配が急になる場合が多いが、死卵は気室境界が不明瞭な場合があり、気室境界からの濃度の減衰が、緩やかな勾配になる場合がある。X軸上の濃淡情報が、ある設定値を指定数以上連続して越えた最も左側の範囲を、気室の範囲と特定する。
気室範囲最右端を気室境界点とし、一定間隔の投影値減衰率平均を、気室境界より設定数計測し、全計測結果の減衰率平均値を正常卵判定の判断材料として、2次判定時に使用する。次に、卵内部の色情報を用いて,血管情報の取得に必要な検査領域を特定する。」

前記(オ)の「カラー画像における気室境界付近の濃度分布情報を把握」という記載によれば、気室境界付近の濃度情報を「カラー画像」から得ることが記載されているといえる。
また、上記(キ)の「正常卵は、気室から胎児にかけて濃度が減衰するが、気室境界を境にその勾配が急になる場合が多いが、死卵は気室境界が不明瞭な場合があり、気室境界からの濃度の減衰が、緩やかな勾配になる場合がある。」という記載によれば、気室境界より胎児側に向けて濃度が減衰することが記載されているといえる。
さらに、上記(キ)の「濃度情報の投影結果」および「一定間隔の投影値減衰率平均を、気室境界より設定数計測し、全計測結果の減衰率平均値を正常卵判定の判断材料として、2次判定時に使用する。」との記載から、濃度情報の投影結果の減衰率を、一定間隔で計測し、減衰率の平均値に基づいて正常卵を判定することが記載されているといえる。
したがって、本件当初明細書には、「カラー画像における気室境界より胎児側に向けて所定の間隔で投影値減衰率を計測し、計測した投影値減衰率の平均値」に基づいて正常卵を判定する工程が記載されていたといえる。

[補正事項13]について
前記[補正事項5]においてすでに検討したとおり、本件当初明細書には、正常卵を判定する工程について、「自動」で行うことが記載されていたといえる。

以上より、[補正事項12]および[補正事項13]のいずれも本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明6は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(7)本件発明7について
本件発明7に係る本件補正は、出願時の特許請求の範囲の請求項5
「 L*a*b*表色系の色情報に基づいて、卵殻の斑点状の模様を除去した後実施される1ないし4のいずれかの有精卵の検査法。」を
「 L*a*b*表色系の色情報に基づいて、卵殻の斑点状の模様を除去した後に、前記検査領域内における計測を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものであるが、出願時の特許請求の範囲における請求項1に係る発明は「検査領域内の血管情報を計測」しており、また請求項3に係る発明は「検査領域内の内部色情報を計測」しているため、これらの請求項1または請求項3を引用する出願時の特許請求の範囲の請求項5に係る発明は、「検査領域内における計測を行うこと」を含んでいたといえる。
したがって、本件発明7に係る本件補正は、発明の内容を実質的に補正するものではない。このため、本件発明7は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(8)本件発明8について
本件発明8に係る本件補正は、出願時の特許請求の範囲の請求項8
「 請求項1ないし7のいずれかの有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置であって、有精卵を配置する検査用ホイル、有精卵内部に光を照射する手段と卵内部のカラー画像を撮像するカラーCCDカメラを具備する画像撮像部、および撮像した卵画像を用いて正常卵判定を行う非破壊検査部を備えた有精卵の検査装置。」を
「 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置であって、
有精卵を配置する検査用ホイルと、有精卵内部に光を照射する照明装置を有する照明部と、卵内部のカラー画像を撮像する画像撮像部と、撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部とを備えた有精卵の検査装置。」(下線部は補正箇所を示す。)
と補正するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項14]「有精卵内部に光を照射する手段と卵内部のカラー画像を撮像するカラーCCDカメラを具備する画像撮像部」を「有精卵内部に光を照射する照明装置を有する照明部」と「卵内部のカラー画像を撮像する画像撮像部」に変更する事項。
[補正事項15]「撮像した卵画像を用いて正常卵判定を行う非破壊検査部」を「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」に変更する事項。

[補正事項14]について
本件当初明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(ク)「【0023】
実施例1
図8?図11は、本発明の検査手法を実現するための検査装置の一実施例の概略構成を示す模式図である。
検査装置では、専用トレイで搬送された多数の卵を検査用ホイルに1個毎に移載し、整列コンベアにて複数個並べ、ピック&プレスで複数個を一度に画像撮像部へ搬送する。搬送された卵は、ホイル支持台を上昇させ、画像処理時の外乱を防ぐため、遮光性のある撮影用の筒に入れる。なお、撮影用筒の上部には、照明装置の入った照明装置内蔵用の筒があり、その筒の先が卵に接するまで、ホイル支持台を上昇させ、卵を気室側より照明する。
照明内蔵用筒の先端部は、卵形状やサイズが異なってもその先端から外部に照明光が漏れないよう、柔らかい材質で構成している。そのため、卵表面での照明光の反射が防止でき、卵内部のみを通過した照明光をカラーCCDカメラにより撮像し、卵内部の色情報を得る。
カラーCCDカメラは撮影用筒の反対側に設置し、支持台の上昇端で1枚目の卵画像を撮影する。撮影後、撮影完了信号にて、90度支持台を回転させ、停止後2枚目を撮影する。同様に、3・4枚目を撮影し、1つの検査卵に対して4方向からの画像を得、これらを用いて正常卵判定処理を行う。
4枚目の画像撮影完了信号にて、支持台を下降させ、次に卵が整列コンベアより搬送されると、撮影済み卵は、画像撮像部より押し出され、選別コンベアで受ける。
画像の撮影後から、選別コンベアに移載されるまでの間に、撮影した卵の正常卵判定処理を行い、選別コンベアに判定結果信号を出力する。」

前記(ア)の「卵内部の色情報は、卵上部(気室側)より照明光を照射し、卵殻を透過した照明光を、カラーCCDカメラを用いて撮像し、カラー画像(RGB表色系)として得る。」および「十数日齢の正常な有精卵の内部を撮像したカラー画像上では、気室、胎児、漿尿膜腔、血管は、色合い、明度、形状等それぞれに異なった特徴を持つ。」という記載によれば、照明光により、有精卵内部に光を照射することが記載されているといえる。
また、上記(ク)の「照明装置の入った照明装置内蔵用の筒」および「卵内部のみを通過した照明光」という記載によれば、卵内部に照射される照明光が、「筒」を備えた「照明装置」が、卵内部に光を照射することが記載されているといえる。
さらに、出願時の特許請求の範囲の請求項8の「卵内部のカラー画像を撮像するカラーCCDカメラを具備する画像撮像部」という記載によれば、画像撮像部が「卵内部のカラー画像を撮像」する機能を有することが記載されているといえる。
そして、上記(ク)の記載によれば、「画像撮像部」に、「撮影用の筒」、「照明装置」、「照明装置内蔵用の筒」、「カラーCCDカメラ」などの部材が備えられているものと認められるが、機能の違いに基づいて、「照明部」と「画像撮像部」に区分けして表現することは、通常行われることである。
したがって、本件当初明細書には、「有精卵内部に光を照射する照明装置を有する照明部」と「卵内部のカラー画像を撮像する画像撮像部」が、実質的に記載されていたといえる。

[補正事項15]について
本件当初明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)
(ケ)「【0020】
《検査装置》
本発明の有精卵の非破壊検査を可能とする装置では、供給された卵を画像処理による非破壊検査により正常卵判定を行い、正常卵と死卵(発育不良卵を含む)の選別をする。非破壊検査部では、遮光性を有する構造内に有精卵を配置し、カラーCCDカメラで撮像した画像に基づいて検査が実施される。検査装置では、検査用ホイルに載せた卵を、ホイル支持台を90度づつ回転させることにより、4方向から卵内部のカラー画像を撮像する。得られた4方向からの卵画像を用いて正常卵判定を行う。正常卵判定の結果によって、選別コンベアにて振り分ける。」

出願時の特許請求の範囲の請求項8の「卵内部のカラー画像を撮像するカラーCCDカメラを具備する画像撮像部」という記載によれば、「撮像した卵画像」は「カラー画像」であるといえる。また、上記(ケ)の記載によれば、本願明細書では、非破壊検査を「画像処理」により行うことが記載されているといえるから、非破壊検査部を画像を用いる処理部ということもできる。
したがって、本件当初明細書には、「撮像した卵画像を用いて正常卵判定を行う非破壊検査部」として、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」が記載されていたといえる。

以上より、[補正事項14]および[補正事項15]のいずれも本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明8は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(9)本件発明9について
本件発明9に係る本件補正は、特許請求の範囲に、
「 前記検査用ホイルは、昇降・回転ユニットにより昇降および回転自在に支持され、
前記照明部は、先端部が柔らかい材質で構成され、内部に照明装置が配置される照明用筒を備え、
前記画像撮像部は、遮光性のある撮影用筒を備えることを特徴とする請求項8に記載の有精卵の検査装置。」
を追加するものであるから、以下の補正事項からなるものである。
[補正事項16]検査用ホイルが「昇降・回転ユニットにより昇降および回転自在に支持され」ると限定する事項。
[補正事項17]「先端部が柔らかい材質で構成され、内部に照明装置が配置される照明用筒を備え」る照明部を追加する事項。
[補正事項18]画像撮像部が「遮光性のある撮影用筒を備える」と限定する事項。

[補正事項16]について
前記(ク)の「ホイル支持台を上昇させ、」、「90度支持台を回転させ、」、「支持台を下降させ、」という記載によれば、検査用ホイルは、昇降および回転自在な「ホイル支持台」により支持されることが記載されている。そして「昇降・回転ユニット」という直接の記載はないものの、昇降および回転自在な「ホイル支持台」は、その機能に基づいて、一般に「昇降・回転ユニット」とも称されるものである。
したがって、本件当初明細書には、検査用ホイルが「昇降・回転ユニットにより昇降および回転自在に支持され」ることが実質的に記載されていたといえる。

[補正事項17]について
前記(ク)の「照明装置の入った照明装置内蔵用の筒」および「照明内蔵用筒の先端部は、卵形状やサイズが異なってもその先端から外部に照明光が漏れないよう、柔らかい材質で構成している。」という記載によれば、「照明装置」と「先端部が柔らかい材質で構成され、内部に照明装置が配置される照明用筒」とにより照明するための部材が構成されることが記載されているといえる。そして、「照明部」という直接の記載はないが、前記部材は、その機能に基づいて、一般に「照明部」と称されるものである。
したがって、本件当初明細書には、「先端部が柔らかい材質で構成され、内部に照明装置が配置される照明用筒を備え」る照明部が実質的に記載されていたといえる。

[補正事項18]について
前記(ク)の「検査装置では、専用トレイで搬送された多数の卵を検査用ホイルに1個毎に移載し、整列コンベアにて複数個並べ、ピック&プレスで複数個を一度に画像撮像部へ搬送する。搬送された卵は、ホイル支持台を上昇させ、画像処理時の外乱を防ぐため、遮光性のある撮影用の筒に入れる。」という記載によれば、画像撮像部には、「遮光性のある撮影用の筒」が備えられていることが記載されているといえる。
したがって、本件当初明細書には、画像撮像部が「遮光性のある撮影用筒を備える」ことが記載されていたといえる。

以上より、[補正事項16]?[補正事項18]のいずれも本件当初明細書に記載されていたものであるから、本件発明9は、本件当初明細書に記載されていたものといえる。

(10)まとめ
以上より、本件補正は、いずれも本件当初明細書に記載されていた事項の範囲に基づいて行われたものであるから、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしているものである。

そうすると、本件特許第3998184号の請求項1?9に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる(以下、「本件発明1」?「本件発明9」という。)。
「【請求項1】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。
【請求項2】 前記検査領域面積に占める総血管長の割合に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1に記載の有精卵の検査法。
【請求項3】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、
前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、
第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。
【請求項4】 有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定することを特徴とする有精卵の検査法。
【請求項5】 前記検査領域内の血管情報を計測し、該検査領域を複数のブロックに分割し、血管の分布するブロック数に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。
【請求項6】 前記カラー画像における気室境界より胎児側に向けて所定の間隔で投影値減衰率を計測し、計測した投影値減衰率の平均値に基づいて正常卵を自動判定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。
【請求項7】
L*a*b*表色系の色情報に基づいて、卵殻の斑点状の模様を除去した後に、前記検査領域内における計測を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の有精卵の検査法。
【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置であって、
有精卵を配置する検査用ホイルと、有精卵内部に光を照射する照明装置を有する照明部と、卵内部のカラー画像を撮像する画像撮像部と、撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部とを備えた有精卵の検査装置。
【請求項9】 前記検査用ホイルは、昇降・回転ユニットにより昇降および回転自在に支持され、
前記照明部は、先端部が柔らかい材質で構成され、内部に照明装置が配置される照明用筒を備え、
前記画像撮像部は、遮光性のある撮影用筒を備えることを特徴とする請求項8に記載の有精卵の検査装置。」


2.無効理由2(特許法第29条第1項第3号)

2-1.甲第4号証ないし甲第8号証
(1)[甲第4号証]特開平9-127096号公報
本件特許に係る出願前の平成9年5月16日に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の記載がある。
[1a]「【請求項1】 孵化処理が施された一定期間経過後の卵の上端部又は下端部に照射光を照射する光照射手段と、
前記照射光により前記卵中を透過・散乱し前記卵の前記上端部又は下端部を除く部位より出射する光を検出して光電変換する受光素子を有する光検出手段と、
前記光検出手段より出力される検出信号から卵中の心臓の脈拍に相当する所定周波数成分を抽出する信号処理手段と、
前記信号処理手段にて抽出される光検出信号の振幅変化の有無及び変動量に基づいて、有精卵の有無、有精卵の活性状態、有精卵の生死状態を判定して、各判定信号を出力する鑑別手段と、を具備することを特徴とする有精卵鑑別装置。」
[1b]従来の技術として「【0007】更に、たとえ有精卵であっても活性状態に差異があるので、ワクチン移植前に元気なものと元気でないものとを鑑別して、元気でないものを予め取除くことができれば、ワクチン培養中の卵の死亡率を減少させてワクチンの精製効率を向上させることができることになる。しかし、従来の技術では、かかる活性状態の判断はできず、結局のところ、熟練した検査員が一つ一つの卵に光を当てて、卵の殻を通して内部の心臓や血管の状態を目視観察することによって元気な卵を選んでいた。また、当然に、一人の検査員が複数個の卵を同時に目視観察することができないので、鑑別処理に時間を要し、作業効率を向上させることができないという問題があった。」
[1c]「【0030】次に、かかる構成を有する有精卵鑑別装置の動作を説明する。尚、孵化器内で4?5日保温し孵化した後の有精卵を鑑別対象のとする。
【0031】オペレータ等が鑑別開始の指令を鑑別部16に入力すると、鑑別部16が発光素子駆動回路18に制御信号S_(ON)を供給することによって、光源4を一定光強度にて点灯させる。
【0032】次に、アクチュエータ駆動回路20を介して所定のアクチュエータに制御信号S_(A) を供給することにより、図1(b)に示す如く、センサヘッド部を被検体である卵EGに被ぶさせる。
【0033】センサヘッド部が卵EGに被さると、上記アクチュエータから所定のタイミング信号S_(T) が出力され、鑑別部16がこの信号S_(T) をタイミング信号入力インタフェース22を介して入力するのと同時に、増幅回路12a?12d中のリセットスイッチSW1(図4(a)を参照)をオフにすることによって、受光素子6a?6dで検出される信号Sa?Sdの入力を開始する。
【0034】図1(c)は、孵化保温期間が8日目の有精卵EGを測定した場合の光検出信号Sa?Sdの波形例(実験例)を示す。信号Sa,Sbは、受光素子6a,6bが心臓に近い部分に配置された状態での測定結果を示し、約2Hzの周期の脈拍が明瞭に測定されている。また、信号Sc,Sdは、上記脈拍よりも低周波数の胎動による波形に、約2Hzの周期の脈拍が重畳した状態が測定されている。
【0035】これらの信号Sa?Sdの波形から明らかなように、光源4から卵EGへ光を入射したときのその透過散乱光が受光素子6a?6dで検出され、更に、これらの検出信号が増幅器12a?12d及び変動成分抽出部14a?14dを通過することによって、孵化後の卵EGの脈拍を示す所定周波数の信号Sa?Sdを特徴抽出することができる。
【0036】また、各信号Sa?Sdの振幅は、卵EGが活性な状態であるほど大きくなり、卵EGが活性な状態に無ければそれよりも小さくなり、一方、死んでいる場合や無精卵の場合には僅かな振幅のノイズ成分のみが現れるので図1(c)に示すような波形が現れない。
【0037】そして、鑑別部16が、信号Sa?Sdについて前記しきい値V_(refH),V_(refL)と対比することによって、卵EGの状態を示す判定信号S_(ALVH),S_(ALVL),S_(DTH)が出力される。
【0038】このように、この実施の形態によれば、孵化後の有精卵の脈拍を光学的に特徴抽出することにより、精度の良い鑑別処理を実現している。」

上記[1b]の記載によれば、甲第4号証には、
「一つ一つの卵に光を当てて、卵の殻を通して内部の心臓や血管の状態を目視観察することによって元気な卵を選ぶ、有精卵鑑別方法。」の発明(以下、「甲第4号証発明1」という。)が記載されていると認められる。
さらに、上記[1a]および[1c]の記載によれば、甲第4号証には、
「光源から卵へ光を入射したときのその透過散乱光を受光素子で検出し、孵化後の卵の脈拍を示す所定周波数の信号Sa?Sdを特徴抽出し、信号Sa?Sdについてしきい値V_(refH),V_(refL)と対比することによって、卵の状態を示す判定信号S_(ALVH),S_(ALVL),S_(DTH)を出力する、有精卵鑑別方法。」の発明(以下、「甲第4号証発明2]が記載されていると認められる。

(2)[甲第5号証]特開平11-173996号公報
本件特許に係る出願前の平成11年7月2日に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の記載がある。
[2a]「【0001】
【発明の属する分野】本発明は、殻付鶏卵内に発現する血卵等の異常部分を短時間に非破壊でかつ正確に判定するための検卵方法に関する。」
[2b]「【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明は、鶏卵に透過光を照射して得られる透過画像について、カラーCCDカメラとビデオ信号処理およびA/D変換装置を介して色成分に変換し、その色成分から求められる色度座標を所定値と比較する色度比較を行い、血卵であるか否かを判別することを特徴とする異常鶏卵の非破壊検出方法出ある。」
[2c]「【0016】図1に示すように、カラーCCDカメラ1と光源2の間に鶏卵3を水平横長に置き、透過光を用いて卵の透過画像を作成する。さらに、その透過画像はビデオ信号処理およびA/D変換回路を備えた画像処理ボード4により各画素の色成分(R,G,B)に分解されて、コンピュータ5に取り込まれる。また鶏卵から見て光源側には光源照射用の小孔6を備えた遮光板7を設置し、CCDカメラ側には背後光源から照明が卵外表面に漏洩するのを防止する黒色支持台8を設置する。なお、CCDカメラ1のレンズの前に偏光フィルタ9を設置する。」
[2d]「【0020】画像処理によって血卵と正常卵を判別するためには、血卵の部分と正常卵の部分の特徴を抽出し、しきい値を決定する必要がある。収集された画像データから「血卵」の部分を抽出するために、透過画像データの色成分(R,G,B)または色度座標(r,g,b)を用いて、しきい値による画像抽出法を検討する。
【0021】いま、0≦R≦255階調,0≦G≦255階調,0≦B≦255階調として、得られた1画素ごとの色成分(R,G,B)を用いて、下記の演算式により各色度r、g、bを算出する。
r=R/(R+G+B) (1)
g=G/(R+G+B) (2)
b=B/(R+G+B) (3)
【0022】本実施形態では、背景色と卵殻画像を含んだ原画像から卵殻画像のみを抽出する方法として原画像データの色成分Rを用い、多くの予備実験結果から経験的にR>80をしきい値として、卵殻画像を輪郭抽出することができた。」
[2e]「【0025】図3(a)では血卵と正常卵が混在している部分があることから、色成分(R,G,B)を用いた場合では、血卵を判別することは困難であることがわかる。一方、図3(b)の色度座標(r,g,b)を用いた場合では、血卵と正常卵を区別できることがわかる。図3(b)の場合、色度rおよびbでは血卵と正常卵を選別することは困難であるが、g=0.3付近で血卵と正常卵を明確に区別できることから、色度gにしきい値を設定することで、血卵を検出することが可能であることがわかる。」
[2f]「【0030】図2は、本実施の形態における血卵判定のフローチャートの一例である。同図において、鶏卵の透過画像をビデオ信号入力し(10)、それをA/D変換して(11)、色成分(R,G,B)を求め(12)た後、前述の式(1)、(2)、及び(3)を用いて色度座標(r,g,b)を計算する(13)。そして背景色と卵殻画像を含んだ原画像から卵殻画像のみを抽出(14)した後、血卵部分判定用のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定する(15)。そして、g≦0.29の画素が血卵部分であると判定され、その画素の合計値(16)が計数され、全卵の全域が終了(17)し、血卵画素γがγ≧500の時の鶏卵を「血卵」とし、γ<500の時には「正常卵である」と判定し(18)、血卵か(19)、正常卵か(20)をコンピュータ5の表示部に表示する。」

上記[2a]?[2f]の記載によれば、甲第5号証には、
「鶏卵に透過光を照射して得られる透過画像について、カラーCCDカメラとビデオ信号処理およびA/D変換装置を介して色成分(R,G,B)に変換し、R>80をしきい値として、卵殻画像のみを輪郭抽出し、血卵部分判定用の色度のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定し、血卵であるか否かを判別する異常鶏卵の非破壊検出方法。」の発明(以下、「甲第5号証発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)[甲第6号証]特開2001-211776号公報
本件特許に係る出願前の平成13年8月7日に頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある。
[3a]「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鶏卵の検査工程で使用するために好適な、有色卵を含めた鶏卵の内部に血腫などが混入した内部欠陥状態を判定することが可能な、鶏卵の非破壊内部検査方法に関するものである。」
[3b]「【0010】そこで、殻の色合いにより光スペクトルが同様となるように鶏卵を分類して、分類毎に判定基準を変更することで、殻の色合いが異なっていても判断可能となる。ここでは、図2の濃淡画像ヒストグラムから分かるように、濃淡画像から殻の色合い毎に分類が可能であることから、殻の色合い評価を行うために濃淡画像を用いる。
【0011】次に公知の鶏卵検査装置が特定波長領域の透過光画像を撮像して、2値化処理を行い、その画素値を評価して、内部欠陥を判別する装置とした場合、殻の色合いにより2値化処理の閾値や画素の判定基準値を変える処理を施すことで、有色卵への判断が可能になる。」

上記[3a]および[3b]の記載によれば、甲第6号証には、
「殻の色合い評価を行うために濃淡画像を用い、殻の色合いにより光スペクトルが同様となるように鶏卵を分類して、分類毎に判定基準を変更し、鶏卵検査装置が特定波長領域の透過光画像を撮像し、2値化処理を行い、その画素値を評価して、内部欠陥を判別する、有色卵を含めた鶏卵の内部に血腫が混入した内部欠陥状態を判定することが可能な、鶏卵の非破壊内部検査方法。」の発明(以下、「甲第6号証発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)[甲第7号証]特開平7-209209号公報
本件特許に係る出願前の平成7年8月11日に頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の記載がある。
[4a]「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生卵を検査する検卵装置に関する。」
[4b]「【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために検卵装置は以下の要件を備えたことを特徴とする。
(イ)生卵を回転させながら搬送するコンベアの通路の一部に暗箱を配置したこと
(ロ)上記暗箱には、上記暗箱内を通過するコンベア上の生卵にスポット光を照射する光源と、照射された生卵を少なくとも2回撮影するカメラとを配置したこと
(ハ)上記カメラには、撮影された画像を分析し、生卵の良否を判定する画像処理装置が接続されていること」
[4c]「【0023】次に、上述のように構成された検卵装置の作動態様について説明する。
【0024】コンベア2に載置された生卵1はローラ5のくびれ部5aに保持され、ローラ5とともに回転しながら移動し、暗箱Aの内部に進入する。暗箱Aの内部に配置された集光レンズ16の上を生卵1が通過すると生卵1の殻を透過した透過光で生卵1が半透明状に目視することができる。殻に傷や肉薄部が存在すると正常な殻に比べて光が透過しやすいので、傷や肉薄部の透過光が他の部分に比べて明度が高くなるので、カメラ3で撮影した画像を2値化して正常部分と不良部分とを判定することが可能となる。又、ふん等の汚れがあれば、光が透光しにくいので、正常な殻に比べて明度が低くなり、閾値をかえて再度、2値化して汚卵として判定することができる2値化する場合の閾値は、どの範囲までの傷、肉薄、汚れ等を正常とするかによって設定すればよいし、2値化した結果の判定もどの程度の面積であれば正常にするかも予め設定すればよい。」

上記[4a]?[4c]の記載によれば、甲第7号証には、
「生卵にスポット光を照射し、生卵の殻を透過した透過光によりカメラで撮影した画像を2値化して、面積に基づいて正常部分と不良部分とを判定する検卵方法。」の発明(以下、「甲第7号証発明」という。)が記載されていると認められる。

(5)[甲第8号証]特開平7-229841号公報
本件特許に係る出願前の平成7年8月29日に頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の記載がある。
[5a]「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、割卵機で割卵された鶏卵の中身のうち白身、即ち液卵を処理する過程で、画像処理により不良液卵を検出して分別するための装置に関する。」
[5b]「【0006】
【課題を解決するための手段】この発明の特徴は、以下の点にある。即ち、等間隔に配設されて、割卵機から供給される液卵を収容して搬送されるカップを検知するセンサと、光源と、CCDカラ-カメラとをそれぞれ設置する。前記センサのカップ検知による画像取込みトリガ信号を受けて、CCDカラ-カメラで液卵の画像の取込みを行わせる画像処理装置に、割卵機制御装置を介して不良液卵をカップから排出させる分別機構を接続する。
【0007】そして、液卵の良否判定により分別機構を作動させる出力トリガ信号を送る結果出力バッファを画像処理装置に設け、CCDカラ-カメラは、出力基準位置からカップの間隔の整数倍の位置に設置して、画像取込みトリガ信号を出力トリガ信号に流用させる。
【0008】
【作用】搬送されてきたカップをセンサが検知して画像取込みトリガ信号を画像処理装置に送ると、画像処理装置はCCDカラ-カメラを作動させ、カップに収容されている液卵の画像を取り込む。画像処理装置は画像から液卵の良否を判定し、不良液卵と判定すると、結果出力バッファを経て流用した画像取込みトリガ信号を出力トリガ信号として、割卵機制御装置を経て分別機構へ送って分別装置を作動させ、カップの搬送と同期させてカップを傾けて不良液卵を排出する。」
[5c]「【0012】画像処理装置7は、図2で示すように、液卵2の画像を撮影したCCDカラ-カメラ6の画像信号をRGB画像信号入力として取り入れ、パラメ-タ変換、設定色抽出、A/D変換、色分離、2値画像処理、画素カウント、良否判定処理、後述の結果出力バッファを経て、割卵機制御装置8へ出力する。」
[5d]「【0015】そして、搬送されてきたカップ1を検知したセンサ3aの発する信号の波SaWと、同じカップ1を検知したセンサ3bの発する信号の波SbWとが重なるタイミングtで、画像取込み用のトリガ信号を画像処理装置7へ送り、ストロボ4を発光させてCCDカラ-カメラ6で画像の取込むように構成している。
【0016】なお図示実施例ではセンサ3を2個としたが、これを2個以上の複数個とするのは任意である。又センサ3として、透過型、反射型等の光電センサ、或いは高周波発振型、静電容量型等の近接センサを用いることもできる。」

上記[5a]?[5d]の記載によれば、甲第8号証には、
「ストロボを発光させて透過型のCCDカラ-カメラで液卵の画像の取込みを行い、CCDカラ-カメラの画像信号をRGB画像信号入力として取り入れ、パラメ-タ変換、設定色抽出、A/D変換、色分離、2値画像処理、画素カウント、良否判定処理を行い、画像から液卵の良否を判定する、不良液卵を検出して分別するための方法。」の発明(以下、「甲第8号証発明」という。)が記載されていると認められる。

2-2.対比・判断

2-2-1.本件発明1について
(1)甲第4号証との対比・判断
ア 本件発明1と甲第4号証発明1との対比・判断
本件発明1と甲第4号証発明1とを対比する。
(ア)甲第4号証発明1は、有精卵鑑別方法であるから、甲第4号証発明1の「卵」は「有精卵」であるといえる。そうすると、甲第4号証発明1の「一つ一つの卵に光を当てて、」は、本件発明1の「有精卵内部に光を照射して」に相当する。
(イ)甲第4号証発明1の「有精卵鑑別方法」は、本件発明1の「有精卵の検査法」に相当する。
以上より、両者は、
「有精卵内部に光を照射する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1では、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定するのに対し、甲第4号証発明1では、卵の殻を通して内部の心臓や血管の状態を目視観察することによって元気な卵を選ぶ点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明1と甲第4号証発明2との対比・判断
本件発明1と甲第4号証発明2とを対比する。
(ア)甲第4号証発明2は有精卵鑑別方法であるから、甲第4号証発明2の「卵」は「有精卵」であるといえる。そうすると、甲第4号証発明2の「光源から卵へ光を入射」は、本件発明1の「有精卵内部に光を照射」に相当する。
(イ)甲第4号証発明2の「孵化後の卵の脈拍を示す所定周波数の信号Sa?Sdを特徴抽出し、信号Sa?Sdについてしきい値V_(refH),V_(refL)と対比することによって、卵EGの状態を示す判定信号S_(ALVH),S_(ALVL),S_(DTH)を出力する」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「情報を抽出し、情報に基づいて正常卵を自動判定する」点で共通する。
(ウ)甲第4号証発明2の「有精卵鑑別方法」は、本件発明1の「有精卵の検査法」に相当する。
以上より、両者は、
「有精卵内部に光を照射し、情報を抽出し、情報に基づいて正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件発明1ではカラー画像を撮像するのに対し、甲第4号証発明2では透過散乱光を検出しており、カラー画像を撮像するものではない点。
[相違点2]判定を、本件発明1では、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて行うのに対し、甲第5号証発明-1では、孵化後の卵の脈拍を示す所定周波数の信号Sa?Sdを特徴抽出し、信号Sa?Sdについてしきい値V_(refH),V_(refL)と対比することによって行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第5号証との対比・判断
本件発明1と甲第5号証発明とを対比する。
(ア)甲第5号証発明の「鶏卵に透過光を照射して得られる透過画像」と本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第5号証発明の「卵殻画像のみを輪郭抽出し」は、本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し」に相当する。
(ウ)甲第5号証発明の「血卵部分判定用の色度のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定し、血卵であるか否かを判別する」と本件発明1の「検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定するのに対し、甲第5号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、血卵部分判定用の色度のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第6号証との対比・判断
本件発明1と甲第6号証発明とを対比する。
(ア)甲第6号証発明の「鶏卵検査装置が特定波長領域の透過光画像を撮像し」と本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第6号証発明の「2値化処理を行い、その画素値を評価して、内部欠陥を判別する」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定するのに対し、甲第6号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、2値化処理を行い、その画素値を評価して、内部欠陥を判別する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)甲第7号証との対比・判断
本件発明1と甲第7号証発明とを対比する。
(ア)甲第7号証発明の「生卵にスポット光を照射し、生卵の殻を透過した透過光によりカメラで撮影」と本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」とは、「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第7号証発明の「画像を2値化して、面積に基づいて正常部分と不良部分とを判定する」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「撮像した画像に基づいて正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し、撮像した画像に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]画像が、本件発明1ではカラーであるのに対し、甲第7号証発明ではカラーであるか不明である点。
[相違点2]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定するのに対し、甲第7号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、画像を2値化して、面積に基づいて正常部分と不良部分とを判定する点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、画像を2値化して卵の判定を行うに際し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定を行うことが自明であったことを示す証拠はないから、[相違点2]は実質的に相違するものである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(5)甲第8号証との対比・判断
本件発明1と甲第8号証発明とを対比する。
(ア)甲第8号証発明の「画像」は、「RGB画像信号入力」されるものであるから、本件発明1の「カラー画像」に相当する。
そうすると、甲第8号証発明の「ストロボを発光させて透過型のCCDカラ-カメラで液卵の画像の取込みを行い」と本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第8号証発明の「CCDカラ-カメラの画像信号をRGB画像信号入力として取り入れ、パラメ-タ変換、設定色抽出、A/D変換、色分離、2値画像処理、画素カウント、良否判定処理を行い、画像から液卵の良否を判定する」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する」点で共通する。
以上より、両者は、
「卵に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、有精卵の検査を行うために、検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定するのに対し、甲第8号証発明は、液卵の検査を行うために、パラメ-タ変換、設定色抽出、A/D変換、色分離、2値画像処理、画素カウント、良否判定処理を行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

2-2-2.本件発明3について
(1)甲第4号証との対比・判断
ア 本件発明3と甲第4号証発明1との対比・判断
本件発明3と甲第4号証発明1とを対比する。
(ア)甲第4号証発明1は有精卵鑑別方法であるから、甲第4号証発明1の「卵」は「有精卵」であるといえる。そうすると、甲第4号証発明1の「一つ一つの卵に光を当てて」は、本件発明3の「有精卵内部に光を照射して」に相当する。
(イ)甲第4号証発明1の「有精卵鑑別方法」は、本件発明3の「有精卵の検査法」に相当する。
以上より、両者は、
「有精卵内部に光を照射する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3では、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定するのに対し、甲第4号証発明1では、卵の殻を通して内部の心臓や血管の状態を目視観察することによって元気な卵を選ぶ点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明3と甲第4号証発明2との対比・判断
本件発明3と甲第4号証発明2とを対比する。
(ア)甲第4号証発明2は有精卵鑑別方法であるから、甲第4号証発明2の「卵」は「有精卵」であるといえる。そうすると、甲第4号証発明2の「光源から卵へ光を入射」は、本件発明3の「有精卵内部に光を照射」に相当する。
(イ)甲第4号証発明2の「有精卵鑑別方法」は、本件発明3の「有精卵の検査法」に相当する。
以上より、両者は、
「有精卵内部に光を照射する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件発明3ではカラー画像を撮像するのに対し、甲第4号証発明2では透過散乱光を検出しており、カラー画像を撮像するものではない点。
[相違点2]判定を、本件発明3では、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて行うのに対し、甲第4号証発明2では、透過散乱光を受光素子で検出し、孵化後の卵の脈拍を示す所定周波数の信号Sa?Sdを特徴抽出し、信号Sa?Sdについてしきい値V_(refH),V_(refL)と対比することによって行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第5号証との対比・判断
本件発明3と甲第5号証発明とを対比する。
(ア)甲第5号証発明の「鶏卵に透過光を照射して得られる透過画像」と甲第6号証発明の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第5号証発明の「カラーCCDカメラとビデオ信号処理およびA/D変換装置を介して色成分(R,G,B)に変換し、R>80をしきい値として、卵殻画像のみを輪郭抽出し」は、本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し」に相当する。
(ウ)甲第5号証発明の「血卵部分判定用の色度のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定し、血卵であるか否かを判別する」と本件発明3の「第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、R成分をモノクロ化した画像および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定するのに対し、甲第5号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、血卵部分判定用のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第6号証との対比・判断
本件発明3と甲第6号証発明とを対比する。
(ア)甲第6号証発明の「鶏卵検査装置が特定波長領域の透過光画像を撮像し」と本件発明3の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第6号証発明の「2値化処理を行い」は、本件発明3の「設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し」に相当する。
(ウ)甲第6号証発明の「その画素値を評価して、内部欠陥を判別する」と本件発明3の「前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、撮像したカラー画像中のR成分およびG成分をモノクロ画像化し、前期画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定するのに対し、甲第6号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、画素値を評価して判別する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)甲第7号証との対比・判断
本件発明3と甲第7号証発明とを対比する。
(ア)甲第7号証発明の「生卵にスポット光を照射し、生卵の殻を透過した透過光によりカメラで撮影」と本件発明3の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」とは、「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第7号証発明の「画像を2値化して」は、本件発明3の「設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し」に相当する。
(ウ)甲第7号証発明の「面積に基づいて正常部分と不良部分とを判定する」と本件発明3の「前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「面積に基づいて正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、面積に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]画像が、本件発明3ではカラーであるのに対し、甲第7号証発明ではカラーであるか不明である点。
[相違点2]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定するのに対し、甲第7号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、R成分およびG成分を用いない点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、画像を2値化するに際し、R成分およびG成分を選択しモノクロ画像化することが自明であったことを示す証拠はないから、[相違点2]は実質的に相違するものである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(5)甲第8号証との対比・判断
本件発明3と甲第8号証発明とを対比する。
(ア)甲第8号証発明の「画像」は、「RGB画像信号入力」されるものであるから、本件発明3の「カラー画像」に相当する。
そうすると、甲第8号証発明の「ストロボを発光させて透過型のCCDカラ-カメラで液卵の画像の取込みを行い」と本件発明3の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第8号証発明の「色分離、2値画像処理、」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、」とは、「撮像したカラー画像中のR成分、G成分、B成分のいずれかまたは複数をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した画像を取得」する点で共通する。
(ウ)甲第8号証発明の「画像から液卵の良否を判定する」と本件発明3の「第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」である点で共通する。
以上より、両者は、
「卵に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分、G成分、B成分のいずれかまたは複数をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した画像を取得し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、有精卵の検査を行うために、R成分を2値化した画像およびG成分を2値化した画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うのに対し、甲第8号証発明は、液卵の検査を行うために、2値画像処理した後、画素カウントを行い、判定を行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

2-2-3.本件発明4について
(1)甲第4号証との対比・判断
ア 本件発明4と甲第4号証発明1との対比・判断
本件発明4と甲第4号証発明1とを対比する。
(ア)甲第4号証発明1は有精卵鑑別方法であるから、甲第4号証発明1の「卵」は「有精卵」であるといえる。そうすると、甲第4号証発明1の「一つ一つの卵に光を当てて」は、本件発明4の「有精卵内部に光を照射して」に相当する。
(イ)甲第4号証発明1の「有精卵鑑別方法」は、本件発明4の「有精卵の検査法」に相当する。
以上より、両者は、
「有精卵内部に光を照射する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4では、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定するのに対し、甲第4号証発明1では、卵の殻を通して内部の心臓や血管の状態を目視観察することによって元気な卵を選ぶ点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明4と甲第4号証発明2との対比・判断
本件発明4と甲第4号証発明2とを対比する。
(ア)甲第4号証発明2は有精卵鑑別方法であるから、甲第4号証発明2の「卵」は「有精卵」であるといえる。そうすると、甲第4号証発明2の「光源から卵へ光を入射」は、本件発明4の「有精卵内部に光を照射」に相当する。
(イ)甲第4号証発明2の「有精卵鑑別方法」は、本件発明4の「有精卵の検査法」に相当する。
以上より、両者は、
「有精卵内部に光を照射する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件発明4ではカラー画像を撮像するのに対し、甲第4号証発明2では透過散乱光を検出しており、カラー画像を撮像するものではない点。
[相違点2]判定を、本件発明4では、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより行うのに対し、甲第4号証発明2では、透過散乱光を受光素子で検出し、孵化後の卵の脈拍を示す所定周波数の信号Sa?Sdを特徴抽出し、信号Sa?Sdについてしきい値V_(refH),V_(refL)と対比することによって行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第5号証との対比・判断
本件発明4と甲第5号証発明とを対比する。
(ア)甲第5号証発明の「鶏卵に透過光を照射して得られる透過画像」と甲第7号証発明の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第5号証発明の「卵殻画像のみを輪郭抽出し」は、本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し」に相当する。
(ウ)甲第5号証発明の「血卵部分判定用の色度のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定し」と本件発明4の「該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「該検査領域内の内部色情報を計測し、出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、気室境界付近の濃度分布情報を把握して判定するのに対し、甲第5号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、血卵部分判定用の色度のしきい値gを用いて各画素ごとに血卵部分か否かを判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第6号証との対比・判断
本件発明4と甲第6号証発明とを対比する。
(ア)甲第6号証発明の「鶏卵検査装置が特定波長領域の透過光画像を撮像し」と本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第6号証発明の「2値化処理を行い、その画素値を評価して、内部欠陥を判別する」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定するのに対し、甲第6号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、画素値を評価して判別する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)甲第7号証との対比・判断
本件発明4と甲第7号証発明とを対比する。
(ア)甲第7号証発明の「生卵にスポット光を照射し、生卵の殻を透過した透過光によりカメラで撮影」と本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」とは、「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第7号証発明の「面積に基づいて正常部分と不良部分とを判定する」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し、撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]画像が、本件発明4ではカラーであるのに対し、甲第7号証発明ではカラーであるか不明である点。
[相違点2]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定するのに対し、甲第7号証発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、画像を2値化して、面積に基づいて判定する点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、卵の検査を行うにあたり、気室境界付近の濃度分布情報を把握することが自明であったことを示す証拠はないから、[相違点2]は実質的に相違するものである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(5)甲第8号証との対比・判断
本件発明4と甲第8号証発明とを対比する。
(ア)甲第8号証発明の「画像」は、「RGB画像信号入力」されるものであるから、本件発明4の「カラー画像」に相当する。
そうすると、甲第8号証発明の「ストロボを発光させて透過型のCCDカラ-カメラで液卵の画像の取込みを行い」と本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)甲第8号証発明の「良否判定処理を行い、画像から液卵の良否を判定する」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、有精卵の検査を行うために、検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定するのに対し、甲第8号証発明は、液卵の検査を行うために、パラメ-タ変換、設定色抽出、A/D変換、色分離、2値画像処理、画素カウント、良否判定処理を行い判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

2-2-4.本件発明8について
本件発明8は、「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置」であり、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」を必須の構成要素としている。
してみると、本件発明8の「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」は、本件発明1、本件発明3、本件発明4に記載された検査法のいずれかを実施するものであるが、前記「2-2-1.本件発明1について」、「2-2-2.本件発明3について」、および、「2-2-3.本件発明4について」において、すでに検討したとおり、本件発明1、本件発明3、本件発明4は、甲第4号証?甲第8号証に記載された発明と同一ではないから、本件発明8も同様に、甲第4号証?甲第8号証に記載された発明のいずれとも同一ということはできない。

2-2-5.本件発明2、5?7、9について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明に該当する。また、本件発明5?7は、本件発明1、3、4の何れかを限定した発明に該当する。さらに、本件発明9は、本件発明8を限定した発明に該当する。
したがって、限定を省いた発明に相当する本件発明1、3、4、8が、甲第4号証?甲第8号証に記載された発明のいずれとも同一ではないのであるから、さらに限定した発明に該当する本件発明2、5?7、9も、甲第4号証?甲第8号証に記載された発明のいずれとも同一ではないことは明らかである。

2-3.まとめ
以上において検討したように、本件発明1?9は、いずれも、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲第4号証?甲第8号証に記載された発明とはいえない。
よって、本件発明1?9は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

3.無効理由3(特許法第29条第2項)

3-1.甲第4号証ないし甲第8号証
甲第4号証?甲第8号証の記載事項および甲第4号証?甲第8号証に記載された発明は、前記「2-1.甲第4号証ないし甲第8号証」に記載したとおりである。

3-2.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定する工程を必須の要件としている。
しかし、すでに「2-2-1.本件発明1について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定することが甲第4号証?甲第8号証に記載されていたとはいえない。また、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定することが、当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。そして、他に、正常卵を判定する際に、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」行うことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明1は、本件出願前に、甲第4号証?甲第8号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明3について
本件発明3は、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行う工程を必須の要件としている。
しかし、すでに、「2-2-2.本件発明3について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが甲第4号証?甲第8号証に記載されていたとはいえない。また、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。そして、他に、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明3は、本件出願前に甲第4号証?甲第8号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明4について
本件発明4は、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定する工程を必須の要件としている。
しかし、すでに、「2-2-3.本件発明4について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定することが甲第4号証?甲第8号証に記載されていたとはいえない。また、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定することが当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。そして、他に、正常卵を判定する際に、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明4は、本件出願前に甲第4号証?甲第8号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(4)本件発明8について
本件発明8は、「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置」であり、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」を必須の構成要素としている。
してみると、本件発明8の「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」は、本件発明1、3、4に記載された検査法のいずれかを実施するものであるが、前記(1)?(3)において、すでに検討したとおり、本件発明1、3、4は、本件出願前に甲第4号証?甲第8号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、本件発明8も同様に、本件出願前に甲第4号証?甲第8号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(5)本件発明2、5?7、9について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明に該当する。また、本件発明5?7は、本件発明1、3、4の何れかを限定した発明に該当する。さらに、本件発明9は、本件発明8を限定した発明に該当する。
したがって、限定を省いた発明に相当する本件発明1、3、4、8は、前記(1)?(4)において検討したとおり、甲第4号証?甲第8号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、さらに限定した発明に該当する本件発明2、5?7、9も、甲第4号証?甲第8号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-3.まとめ
以上より、本件発明1?9は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

4.無効理由4(特許法第29条第1項第1号および第2号)

4-1.甲第9号証の1ないし甲第11号証

4-1-1.甲第9号証の1ないし甲第11号証の記載事項
(1)甲第9号証の1「有精卵の検卵装置に関する経過説明」
甲第9号証の1には、以下の記載がある。
[6a]「平成17年10月25日 坪井條一郎」および「坪井」の押印(右上欄)
[6b]「(1)公開されている『有精卵の検卵装置』は、別紙資料1-2(打合せ議事録)のとおり、(株)坪井種鶏孵化場の坪井社長と(株)熊本アイディエムの高倉社長とが、平成13年9月15日坪井工場にて打合せにおいて試作品の作成について決定しました。その際、具体的な設計図も添付されております。」(第4?7行)
[6c]「(2)この決定に基づいて、平成14年10月8日に『設備見積仕様書(別紙資料1-3)』が、(株)熊本アイディーエムから坪井種鶏孵化場に提出されました。この仕様書は最終的なものであり、その間には、何回も検討や改良が加えられております。」(第8?10行)
[6c]「(3)この最終決定された仕様書が坪井種鶏孵化場に提出されるまでの間には、設計図とその仕様に関する資料が『化学及血清療法研究所』に提出されております。従って、有精卵の検卵装置に関する情報は、(株)熊本アイディエム、林時計工業(株)、化学及血清療法研究所等において知る得る状態であるばかり、そこから更に第三者に知れ渡る可能性もあります。
以上のような経過によって、このような情報が財団法人阪大微生物病研究会等の関係団体に洩れる場合もあります。従って、(株)坪井種鶏孵化場が独自に開発された『有精卵の検卵装置』が第三者によって特許出願される可能性もあります。」(第11?18行)

(2)甲第9号証の2「打合せ議事録」
甲第9号証の2には、以下の記載がある。
[7a]「打合せ議事録 坪井種鶏孵化場殿」(左上)
[7b]「平成13年9月15日( )13時00分?16時30分」(日時の欄)
[7c]高倉の押印(記録者の欄)
[7d]「1.自動取出し」(本文第1行)
[7e]「2.ダブルチェックは場所.」(本文第2行)
[7f]「4.ダブルチェックを追加.」(本文第4行)
[7g]「決定事項. 12月.試運転.中旬までに見きわめ」(本文第7行)
[7h]「1.不良品取出はつける.
2.落下式 バケツ等に排出.
3.ダブルチェックが追加出来るようにする.
4.不良品はスイッチ式・ランプ・消灯.
5.不良品.カウント.」(本文第8?12行)

(3)甲第9号証の3「たまご検卵シリンダー機構 構想図」
甲第9号証の3には、以下の記載がある。
[8a]「卵に対しファイバー先端がジャバラパットを介して接し、目視を行う、たまご検卵シリンダー機構。」が図示されている。
[8b]「化学及び血清療法研究所殿」(右下 提出先欄)
[8c]「高倉」(右下 設計欄)
[8d]「2002 01 05」(右下 年月日欄)
[8e]「熊本アイディーエム」(右下)

(4)甲第9号証の4「たまご検卵器」
甲第9号証の4には、以下の記載がある。
[9a]「卵に対しファイバー先端がジャバラパットを介して接し、目視を行う、たまご検卵器。」が図示されている。
[9b]「化学及血清療法研究所殿」(右下 提出先欄)
[9c]「熊本アイディーエム」(右下)
なお、設計欄および年月日欄は判読不明である。

(5)甲第9号証の5「FAX送付状」
甲第9号証の5には、以下の記載がある。
[10a]「01-12-3;17:05 ;林時計工業(株)福岡営業所 ;092 624 9670 # 1/ 3」(上)
[10b]「平成13年12月3日」(右上)
[10c]「(株)熊本アイディエム 高倉社長 様」(送信先欄)
[10d]「林時計工業株式会社 福岡営業所 山中幸久」(発信元欄)
[10e]表題として「『検卵用照明の件』」
[10f]「2.回答概要
(1)ライトガイド結束径
2001年11月13日デモの状況から、ライトガイドφ3、光源150Wと致しました。
(2)分岐数
分岐毎の光量バラツキを軽減するために、6分岐と致しました。
また、超ランダム結束と言う手法に致しております。
※ 今回のご依頼から、ライトガイド及び150W光源は3式となります。」(本文第3?9行)
[10g]「3.見積書、外観図
別紙御参照ください。」(本文第10?11行)

(6)甲第9号証の6「検卵装置 全体図」
甲第9号証の6には、以下の記載がある。
[11a]「投入部、整列部、検査部(1)、検査部(2)、排出部、良品供給、予備スペース(1)、予備スペース(2)、取出部を備えた、検卵装置。」の全体図が図示されている。
[11b]「吉田」(右下 設計欄)
[11c]「2002.10.12」(右下 年月日欄)
[11d]「熊本アイディーエム」(右下)
なお、提出先欄に記入はない。

(7)甲第9号証の7「ライトガイド外観図」
甲第9号証の7には、以下の記載がある。
[12a]「HAYASHI GROUP 比内時計工業株式会社」(右上欄外)
[12b]「01-12-3;17:05 ;林時計工業(株)福岡営業所 ;092 624 9670 # 3/ 3」(左欄外)
[12c]「6分岐を有するライトガイド。」が図示されている。
[12d]「2001年11月28日」(右下 設計年月日欄)

(8)甲第9号証の8「設備見積仕様書」
甲第9号証の8には、以下の記載がある。
[13a]「作成日 2002年10月8日」(右上)
[13b]「設備見積仕様書
坪井種鶏孵化場 殿
名称 検卵装置」(第1頁中央)
[13c]「株式会社熊本アイディーエム」(右下)
[13d]高倉の押印(右下 承認欄)
[13e]吉田の押印(右下 作成欄)
[13f]「1.装置概要
卵トレーを、装置内にセットし、そのトレーを1個毎に搬送させ、整列・検卵・不良取出しを行うもので、検卵部でライトアップを行い、目視によって、良否判定を行い、次工程で不良品を自動的に取り出す装置です。」(第4頁第1?5行)
[13g]「4)検卵部
卵トレーの下部より、各卵毎にゴム製カップを持ち上げ上部にある光ファイバーに押し当て、目視による検卵を行い、不良の位置のスイッチを押すことによって、次工程に不良取出信号を送る機構で、検卵完了時、スイッチをONにすることによって、カップが下降して、ピッチ送りを行います。」(第6頁第1?6行)
[13h]「(11)工場試運転立会
(株)熊本アイディーエム工場にて、本運転と同等の運転を行い、試運転立会いをいただき、運転性能および、装置の検収をいただくものとします。」(第11頁下から6行?下から4行)

(9)甲第9号証の9「検卵機開発経過報告書」
甲第9号証の9には、以下の記載がある。
[14a]「坪井 條一郎 殿」(左上欄)
[14b]「平成21年3月25日
株式会社熊本アイディーエム
代表取締役 高倉 信」(右上欄)
[14c]「甲第10号証の『自動検卵機』は、開発者及び発明者の坪井 條一郎氏から設計依頼を受けた我が社において設計したものであります。」(第1頁 本文第1?2行)
[14d]「平成13年9月15日 株式会社坪井種鶏孵化場(代表取締役 坪井 條一郎氏)の会議室において、高倉社長と坪井社長との間で最初の打合せをしました。その内容は『打合せ議事録』(甲9号証の『打合せ議事録参照)のとおりであります。」(第1頁 本文第4?7行)
[14e]「平成13年11月13日 その後、報告した設計図(甲第9号証に添付されている検卵装置の全体図参照)に基づき試作品を作成して何日かの試験テストを繰り返しながら最終的な製品の実証をしました。」(第1頁 本文第9?11行)
[14f]「平成13年12月3日 引き続きライトガイド・見積書・外観図などを作成して坪井社長に報告した。その際、ライトガイド関連の照明機具についての下請会社(林時計工業株式会社福岡営業所 山久幸久)から、坪井社長及び高倉社長あての通知(甲第9号に添付されているFAX内容参照)があり、本特許製品の重要部分である『検卵用照明装置』の見積書と外観図が明らかとなりました。」(第1頁 本文第14?19行)
[14g]「平成13年12月中旬 坪井社長から化学血清療法研究所に対して『自動検卵機』を提案したい旨の要請がありましたので、(株)熊本アイデイーエムから『検卵機の概要図』を添付して研究所へ提出しました。合わせて自動検卵機についても提案し開発を開始したことを報告しました。
なお、(株)熊本アイデイーエムが化学及血清療法研究所に提出した『たまご検卵シリンダー機構』の概要図は甲9号証に添付されているとおりであります。」(第1頁 本文第20行?第2頁第4行)
[14h]「平成14年10月8日 そこで、坪井社長から坪井種鶏孵化場で製品化し市場化する申し入れがあったので、正式な仕様書と見積書を作成(甲第3号証に添付されている『設備見積仕様書』参照)して坪井種鶏孵化場に提出しました。」(第2頁第13?15行)

(10)甲第9号証の10「四国計測工業株式会社」
甲第9号証の10には、以下の記載がある。
[15a]「四国計測工業株式会社」(左上 表題)
[15b]「ホーム トピックス 製品紹介 技術紹介 会社案内 リンク」(左上 表題の下)
[15c]「・日本化学会第89春季年会 付設展示会に出展いたします。NEW 2009/03/09」(新着情報欄)
[15d]「http://www.yonkei.co.jp 2009/03/17」(最下行の印字)

(11)甲第9号証の11「四国計測工業/製品紹介/自動検卵機」
甲第9号証の11には、以下の記載がある。
[16a]「四国計測工業株式会社」(左上 表題)
[16b]「ホーム トピックス 製品紹介 技術紹介 会社案内 リンク」(左上 表題の下)
[16c]「自動検卵装置」(中央上部)
[16d]「概要
本装置は、インフルエンザワクチン用有精卵を良卵と死卵に選別する装置です。
36個詰め専用トレイに乗せられた卵を装置に供給すると、専用トレイ毎に画像処理を行い、死卵を抜き取り良卵を専用トレイに残して排出します。
特徴
専用トレイに乗せられた有精卵の卵の内部状態をCCDカメラで撮影し、
色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の検査(判定)を行います。」
[16e][画像撮影部のシステム構成」の図には、卵を照射する照明装置が図示されている。
[16f]「http://www.yonkei.co.jp 2009/03/17」(最下行の印字)

(12)甲第9号証の12「四国計測工業/製品紹介/産業用製品」
甲第9号証の12には、以下の記載がある。
[17a]「四国計測工業株式会社」(左上 表題)
[17b]「ホーム トピックス 製品紹介 技術紹介 会社案内 リンク」(左上 表題の下)
[17c]「自動化・省力化製品
工場ラインの自動化や省力化をサポートします。
『薬品・製剤業界に導入実績があります。有精卵の生死判定や培養液の揺動、反転などの自動化装置などの導入で好評をいただいています。』」(本文第5?8行)
[17d]「http://www.yonkei.co.jp 2009/03/17」(最下行の印字)

(13)甲第10号証の1
甲第10号証の1には、以下の記載がある。
[18a]「自動検卵機」(表題)
[18b]「装置概要 特開2004-101204(2004年4月2日公開)
本装置は、インフルエンザワクチン用有精卵を良卵と死卵に選別する装置です。専用トレイ(36個詰)に乗せられた卵を装置に供給すると、トレイ毎に画像判定を行い死卵を抜き取り、良卵をトレイに残して排出します。排出したトレイは死卵のところが空席になっています。死卵は、回収用の空トレイに乗せて排出します。
装置の特徴
トレイに整列された有精卵の内部状態をCCDカメラで撮影し、色あい、血管の分布状況などから発育状態を画像処理で検査(判定)を行います。」(右欄第1?15行)
[18c][画像撮影部のシステム構成」の図には、卵を照射する照明装置が図示されている。
[18d]「四国計測工業株式会社 善通寺工場
■お客様相談窓口 」(下欄)
[18e]「ホームページアドレス http://www.yonkei.co.jp」

(14)甲第10号証の2
甲第10号証の2には、以下の記載がある。
[19a]「有精卵の検査手法
林 亜希子 大西 英希 林 高義 三島 靖史
四国計測工業株式会社」
[19b]「3.システム構成
有精卵の検査業務を自動化するため、所定のパレットに気室側を上に向けて整列された卵を、搬送しながら、卵の内部状態をカメラで撮影し、その発育状態を検査する装置を開発した。図3に画像撮像部のシステム構成を示す。画像検出部の遮光性構造物内において、気室側から卵内部に光を照射し、内部に散乱した光を、カラーCCDカメラにて撮影し、画像処理装置にて発育状態を検査する。」(第2頁左欄第1?9行)
[19c]「4.3 特徴量の計測
撮像した有精卵の画像4枚それぞれから、以下に示す特徴量を計測し、発育状態の判断材料とする。
4.3.1気室付近における出血の状態
気室と血管分布領域の境界にある出血の有無を判定するため、撮影した画像の輝度情報をもとに、出血の分布領域を検出し、領域内の濃度特性を計測する。図7に出血の分布領域の抽出方法を、図8にその領域における濃度特性を示す。計測した画像の輝度情報について、注目点とその近傍の濃度分布を比較し、濃度分布が急激に変化する部分を出血分布領域として抽出する。抽出した出血分布領域と、一定間隔で胎児側へシフトした領域との濃度差を特徴量として定義する。」(第2頁右欄第18行?第3頁左欄第2行)
[19d]「4.3.2 気室付近における濃度勾配
気室と血管分布領域の境界の明瞭さを評価するため、計測した画像の輝度情報から、気室付近における濃度勾配を定量化する。図9に定量化の方法を示す。計測した画像の輝度情報について、予め設定した気室から胎児までの領域に着目し、領域内におけるY軸への最大濃度投影値を利用して、濃度勾配を計測する。図10に良卵と死卵それぞれについてY軸への最大濃度投影値をプロットした図を示す。」(第3頁左欄第3?12行)
[19e]「4.3.3 血管分布領域の面積
血管分布領域が著しく狭い卵を検出するため、血管分布領域の面積を計測する。図11に血管分布領域の抽出方法を示す。撮影したカラー画像のR成分を用いて卵全体を、気室と血管分布領域のコントラスト差が大きいG成分を用いて気室の領域を抽出し、両者の排他的論理和をとることで血管分布領域を抽出する。図12に、良卵と死卵それぞれについて、血管分布領域の代表例を示す。実線で囲まれた部分が血管分布領域として抽出された領域である。」(第3頁右欄第1?11行)
[19f]「4.3.4 血管分布領域における血管の分布状況
血管の有無や発育状態を評価するため、血管分布領域における血管の分布状況を計測する。図13に血管部の濃度特性を示す。上の画像は、計測したRGB画像をL*a*b*表色系に返還後、a*成分の一部をコントラスト強調したもので、下のグラフは、画像上の横線で示した部分の濃度分布をプロットしたものである。図14に血管の抽出方法を示す。血管の抽出には、図14に示す差分フィルタを使用し、注目画素付近の濃度平均値とその外側の領域の濃度平均値とを比較し、濃度分布の凹部を、血管候補点として抽出する。垂直方向についても同様の処理を行う。抽出した候補点の集合を血管とし、その長さと分布範囲を計測する。図15に血管を抽出した結果を示す。画像中の白い線が、血管として抽出した部分である。」(第3頁右欄第12行?第4頁左欄第7行)
[19g]「4.4 発育状態の判定
気室付近における出血の状態、気室境界付近の濃度勾配、血管分布領域の面積、血管長、血管分布範囲などの計測結果をもとに、経験的に設定した判別式を用いて、良卵/死卵を判定する。」(第4頁右欄第1?5行)
[19h]「7.謝辞
本研究をすすめるにあたり、評価サンプルや実験場所をご提供頂き、また、目視検査の内容についてご指導を頂きました(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所殿の皆様に厚くお礼を申し上げます。」(第4頁右欄第33?37行)

(15)甲第11号証 ジェームスウェイインキュベーターの「会社概要」
甲第11号証には、以下の記載がある。
[20a]「会社概要」(第1頁第1行)
[20b]「Jamesway Incubator Company Inc.(ジェームズウェイ インキュベーター 株式会社)はカナダのオンタリオ、ケンブリッジに本社を置き、世界最大の孵卵機製造施設(16,225.6m^(2))を有する孵卵機メーカーです。」(第1頁第2?4行)
[20c]「1959年にジェームスウェイの技術者が画期的な孵卵システムを開発しました。はじめて、農場で種卵を集めるトレーをそのまま孵卵器で使用できるようになり、これによりトレーからトレーへ移すための労働時間を大幅に削減することが出来るようになったのです。あまりにも画期的なアイディアであったため特許が取得され、ジェームスウェイはプラスチック・エッグ・トレーの使用について特許を取得した初めての孵卵器システムとなりました。また、ジェームスウェイはすべての作業が孵卵器の外で出来るよう台車を使用した初めての孵卵器システムであり、これにより、移卵の時間を大幅に短縮でき、更に破卵の数も減らすことが出来るようになりました。」(第2頁第13?19行)

4-1-2.甲第9号証の1ないし甲第11号証に開示された発明および公然知られた時期および公然実施をされた時期
(1)甲第9号証の1から甲第9号証の9に記載された発明について
甲第9号証の1の[6a]、[6b]および、甲第9号証の9の[14a]、[14b]、[14d]?[14f]の記載によれば、請求人が開発したとする発明(以下、「甲第9号証の1発明」という。)の開発には、発明者の坪井條一郎のほかに、株式会社熊本アイディーエムの高倉信および林時計工業株式会社福岡営業所の山中幸久が関与したと認められる。
一方、各証拠の作成者について検討すると、甲第9号証の1の作成者は、[6a]の記載から坪井條一郎であると認められる。甲第9号証の2の作成者は、[7c]の記載から高倉であると認められる。甲第9号証の3の作成者は、[8c]および[8e]の記載から熊本アイディーエムの高倉であると認められる。甲第9号証の4の作成者は、[9c]の記載から熊本アイディーエムであると認められる。甲第9号証の5の作成者は、[10d]の記載から、林時計工業株式会社福岡営業所の山中幸久であると認められる。甲第9号証の6の作成者は、[11d]の記載から熊本アイディーエムであると認められる。甲第9号証の7の作成者は、[12a]の記載から、比内時計工業株式会社であると認められる。甲第9号証の8の作成者は、[13c]および[13e]の記載から、株式会社熊本アイディーエムの吉田であると認められる。甲第9号証の9の作成者は、[14b]の記載から、株式会社熊本アイディーエムの高倉信であると認められる。甲第9号証の10の作成者は、[15a]の記載から、四国計測工業株式会社であると認められる。甲第9号証の11の作成者は、[16a]の記載から、四国計測工業株式会社であると認められる。甲第9号証の12の作成者は、[17a]の記載から、四国計測工業株式会社であると認められる。甲第10号証の1の作成者は、[18d]の記載から、四国計測工業株式会社であると認められる。甲第10号証の2の作成者は、[19a]の記載から、四国計測工業株式会社の林亜希子、大西英希、林高義、三島靖史であると認められる。甲第11号証の作成者は、[20a]および[20b]の記載から、ジェームズウェイインキュベーター株式会社であると認められる。
以上より、坪井條一郎、株式会社熊本アイディーエムの高倉信、林時計工業株式会社福岡営業所の山中幸久の3名または上記3名がそれぞれ所属する法人が作成したと推定できる甲第9号証の2?甲第9号証の6および甲第9号証の8の記載事項は、甲第9号証の1発明に関する記載事項であるといえる。
また、甲第9号証の5の[10a]、[10g]および甲第9号証の7の[12b]の記載によると、甲第9号証の7「ライトガイド外観図」は、甲第9号証の5「FAX送り状」に、別紙として添付された外観図であると認められるから、甲第9号証の7の記載事項も、甲第9号証の1発明に関する記載事項であるといえる。
そうすると、[7d]?[7f]、[7h]、[8a]、[9a]、[10e]、[10f]、[11a]、[12b]、[13f]?[13h]の記載に基づくと、[甲第9号証の1発明]は、
「投入部、整列部、検査部(1)、検査部(2)、排出部、良品供給、予備スペース(1)、予備スペース(2)、取出部を備えた検卵装置において、卵トレーを、装置内にセットし、そのトレーを1個毎に搬送させ、整列・検卵・不良取出しを行うもので、6分岐のライトガイドφ3および150W光源を有する検卵用照明を用い、卵トレーの下部より、各卵毎にゴム製カップを持ち上げ上部にある光ファイバー先端にジャバラパットを介して押し当てて、検卵部でライトアップを行い、目視によって、良否判定を行い、不良の位置のスイッチを押すことによって、次工程で不良品を自動的に取り出し、バケツ等に落下させて排出し、不良品をカウントする検卵方法。」であると認められる。
そして、公然知られまたは公然実施をされた時期について検討すると、甲第9号証の1は特許庁に提出することを目的に作成された書類と推測されることから、甲第9号証の1に記載された事項が公然知られる状態にあったとはいえない。そして、甲第9号証の2?甲第9号証の5および甲第9号証の8、甲第9号証の9は、[7a]、[8b]、[9b]、[10c]、「13b」、[14a]の記載から、いずれも特定の組織または人物に対して提出または送付されたものであると認められ、不特定の者に公開したことを推測させる記載はない。さらに、甲第9号証の6は[11d]の記載から熊本アイディーエムが作成したものといえるが、提出先が空欄であり、不特定の者に公開したことを推測させる記載はない。また、甲第9号証の7は[12b]および[10a]の記載からFAXに添付された書類であるといえるが、不特定の者に公開したことを推測させる記載はない。したがって、甲第9号証の2?甲第9号証の8に記載された発明が公然知られる状態にあったとはいえない。
また、[7g]、[10f]、[13h]の記載によれば、本件特許に係る出願前の平成13年12月に、少なくとも一部について試運転を行う予定であったこと、本件特許に係る出願前の平成13年11月13日に少なくとも一部についてデモを行ったこと、本件特許に係る出願後の平成14年10月8日以降に、本運転と同等の試運転を行う予定であったことが認められる。しかしながら、デモおよび試運転が不特定多数の者が見ることができる状態でなされたことについては、立証されていない。

(2)甲第9号証の10に記載された発明について
甲第9号証の10には、メニューおよび新着情報のヘッドライン等が記載されているが、検査法または検査装置に関する発明については、何ら記載されていない。
また、甲第9号証の10の[15b]の記載様式は、一般に電気通信回線を通じて不特定の者に公開されるホームページに用いられるものであり、[15d]の記載は、ホームページのアドレスおよび閲覧日と推測されるものである。そして、[15a]の記載から、四国計測工業株式会社のホームページであって、[15c]の記載から、平成21年3月9日以降に更新されたものといえる。
以上より、甲第9号証の10は、四国計測工業株式会社のホームページであって、本件特許に係る出願後の平成21年3月9日から平成21年3月17日の間に公開されたものであると認められる。

(3)甲第9号証の11に記載された発明について
[16c]?[16e]の記載によれば、甲第9号証の11には、
「36個詰め専用トレイに乗せられた卵を装置に供給すると、専用トレイに乗せられた有精卵の卵を照明装置により照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し、専用トレイ毎に、色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の判定を行い、死卵を抜き取り良卵を専用トレイに残して排出する、インフルエンザワクチン用有精卵を良卵と死卵に選別する自動検卵装置。」の発明(以下、「甲第9号証の11発明」という。)が記載されていると認められる。
また、甲第9号証の11の[16b]の記載様式は、一般に電気通信回線を通じて不特定の者に公開されるホームページに用いられるものであり、[16f]の記載は、ホームページのアドレスおよび閲覧日と推測されるものである。そして、[16a]の記載から、四国計測工業株式会社のホームページであるといえる。したがって、甲第9号証の11発明は、四国計測工業株式会社のホームページに平成21年3月17日以前に公開されたものであると認められるが、本件特許の出願前に公開されたものであるかは不明であり、甲第9号証の11発明が、本件出願前に公然知られていたか、または公然実施されていたかは不明である。

(4)甲第9号証の12に記載された発明について
[17c]の記載によれば、甲第9号証の12には、
「有精卵の生死判定の自動化法。」の発明(以下、「甲第9号証の12発明」という。)が記載されていると認められる。
また、甲第9号証の12の[17b]の記載様式は、一般に電気通信回線を通じて不特定の者に公開されるホームページに用いられるものであり、[17d]の記載は、ホームページのアドレスおよび閲覧日と推測されるものである。そして、[17a]の記載から、四国計測工業株式会社のホームページであるといえる。したがって、甲第9号証の12発明は、四国計測工業株式会社のホームページに平成21年3月17日以前に公開されたものであると認められるが、本件特許の出願前に公開されたものであるかは不明であり、甲第9号証の12発明が、本件出願前に公然知られていたか、または公然実施されていたかは不明である。

(5)甲第10号証の1に記載された発明について
[18a]?[18c]の記載によれば、甲第10号証の1には、
「専用トレイに乗せられた卵を装置に供給し、トレイ毎に、トレイに整列された有精卵を照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し、色あい、血管の分布状況などから発育状態を画像処理で判定を行う画像判定を行い、死卵を抜き取り、良卵をトレイに残して排出する、有精卵を良卵と死卵に選別する自動検卵方法。」の発明(以下、「甲第10号証の1発明」という。)が記載されていると認められる。
また、[18d]の記載によれば、甲第10号証の1は、被請求人である四国計測工業株式会社が作成し、不特定の者に対して頒布したものといえる。しかし、上記[18b]には、本件特許第3998184号にかかる出願の、出願公開番号および公開日が記載されている。本件特許にかかる出願の出願公開番号および公開日は、本件特許の出願前に知り得ることができないものであるから、甲第10号証の1は本件特許の出願前に頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるとはいえない。また、甲第10号証の1発明が、本件出願前に公然知られていたこと、または公然実施されていたことを示す証拠はない。
したがって、甲第10号証の1発明が、本件特許に係る出願前に公然知られた発明または公然実施されていた発明ということはできない。

(6)甲第10号証の2に記載された発明について
[19b]?[19g]の記載によれば、甲第10号証の2には、
「画像検出部の遮光性構造物内において、気室側から卵内部に光を照射し、内部に散乱した光を、カラーCCDカメラにて撮影し、画像処理装置にて、撮影したカラー画像のR成分を用いて卵全体を、気室と血管分布領域のコントラスト差が大きいG成分を用いて気室の領域を抽出し、両者の排他的論理和をとることで血管分布領域を抽出し、気室付近における出血の状態、気室境界付近の濃度勾配、血管分布領域の面積、血管長の計測結果をもとに、良卵/死卵を判定する発育状態を検査する有精卵の検査法。」の発明(以下、「甲第10号証の2発明」という。)が記載されていると認められる。
また、[19a]の記載によると、甲第10号証の2は、本件特許の発明者の一部とされている林亜希子、大西英希、林高義、三島靖史の4名が作成し、頒布したものといえるが、公知となった日時は不明である。

甲第10号証として添付されている「自動検卵機」の各資料が本件特許に係る出願前に公知公用であったとする主張について、当審が平成21年3月6日付けで請求人に対して弁駁を求めたところ、請求人は、
「 なお、パンフレット・チラシ・インターネット等により宣伝する場合は、具体的な発行日を記載しないのが一般的であるから、このホームページがいつ発表されたかは不明である。
そこで、甲第10号証の『自動検卵機』が公知公用であったことを第9号証の追加補充資料(検卵機関発経過報告書)と合わせて立証する。」(平成21年3月31日付け弁駁書 第3頁29行?第4頁第4行)
と主張している。
そこで、甲第10号証の2に記載された甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公知公用であったことが、甲第9号証の追加補充資料である甲第9号証の9?甲第9号証の12により立証されているかについて検討する。
まず、甲第10号証の2発明と、甲第9号証の9?甲第9号証の12に記載された発明とが同一であるかについて検討すると、甲第9号証の9には、請求人等の発明した有精卵の検卵装置に関する開発経緯が記載されているが、有精卵の検査法についての具体的な記載はない。また、甲第9号証の10?甲第9号証の12のいずれにも、「画像処理装置にて、撮影したカラー画像のR成分を用いて卵全体を、気室と血管分布領域のコントラスト差が大きいG成分を用いて気室の領域を抽出し、両者の排他的論理和をとることで血管分布領域を抽出し、気室付近における出血の状態、気室境界付近の濃度勾配、血管分布領域の面積、血管長の計測結果をもとに、良卵/死卵を判定する発育状態を検査する有精卵の検査法」について記載されていないから、甲第10号証の2発明と甲第9号証の10?甲第9号証の12に記載された発明とが同一であるとはいえない。したがって、仮に甲第9号証の10?甲第9号証の12に記載された発明が公知公用であったことが立証されたとしても、甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施をされていたとはいえない。
加えて、甲第9号証の9は、[14b]の記載によれば、本件特許に係る出願後に作成されたものであるから、仮に甲第9号証の9に甲第10号証の2発明についての記載がなされていたとしても、甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証するとはいえない。また、甲第9号証の10も、前記「(2)甲第9号証の10に記載された発明について」に記載したとおり、本件特許に係る出願後に公開されたものであるから、仮に甲第9号証の10に甲第10号証の2発明についての記載がなされていたとしても、甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証するとはいえない。さらに、甲第9号証の11および甲第9号証の12も、前記「(3)甲第9号証の11に記載された発明について」および「(4)甲第9号証の12に記載された発明について」に記載したとおり、本件特許の出願前に公開されたものであるかは不明であるから、甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証するものではない。
さらに、甲第9号証の1?甲第9号証の8についても検討すると、[6a]、[11c]および[13a]の記載によれば、甲第9号証の1、甲第9号証の6および甲第9号証の8は、いずれも本件特許に係る出願後に作成されたものであるから、仮に甲第10号証の2発明についての記載がなされていたとしても、甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証するとはいえない。また、甲第9号証の2?甲第9号証の5および甲第9号証の7は、本件特許に係る出願前に作成されたか、作成日が不明であるが、[7c]、[8c]、[8e]、[9c]、[10d]および[12a]の記載によれば、甲第9号証の2?甲第9号証の5および甲第9号証の7の作成者は、いずれも[甲第10号証の2]の作成者とは異なっており、甲第10号証の2発明との関係についてなんら記載されていないから、甲第10号証の2発明が本件出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証するとはいえない。
そして、請求人は、平成21年5月19日付けの上申書において、「本件無効審判については、職権により書面審理することになっておりますが、書面以外の証人による立証が必要な場合は、請求人は証人申請することを要望します。」(本文第1頁第2?3行)と上申している。そこで、証人による立証が必要であるかについて検討すると、すでに検討したように、甲第10号証の2発明と甲第9号証の2?甲第9号証の8、甲第9号証の10?甲第9号証の12に記載された発明とは同一とはいえないものであるから、請求人等の発明の経緯を証言し、甲第9号証の2?甲第9号証の8、甲第9号証の10?甲第9号証の12に記載された発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証しても、甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証できない。したがって、書面以外の証人による証言がなされたとしても、甲第10号証の2発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたことを立証するには至らないものであり、また証人が特定されておらず、尋問事項が不明であるから、証人申請は採用しない。
よって、甲第10号証の2発明は、甲第9号証の1?甲第9号証の12を考慮しても、本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたとはいえないものである。

(7)甲第11号証に記載された発明について
[20c]の記載によれば、甲第11号証には、
「農場で種卵を集めるトレーをそのまま孵卵器で使用でき、台車を使用した、孵卵システム。」の発明(以下、「甲第11号証発明」という。)が記載されていると認められる。
また、[20a]および[20b]の記載によると、[甲第11号証]は、ジェームズウェイインキュベーター株式会社の会社概要を紹介するものであると推測されるが、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物または電気通信回路を通じて公衆に利用可能となったものであるかは不明であり、甲第11号証発明が本件特許に係る出願前に公然知られていたか、または公然実施されていたかも不明である。

4-2.対比・判断
以下、本件特許に係る出願前に、公然知られていたことあるいは公然実施されていたかが提出された証拠から不明である甲第9号証の1発明、甲第9号証の11発明、甲第9号証の12発明、甲第11号証発明について、対比・判断を行う。

4-2-1.本件発明1について
(1)甲第9号証の1発明との対比・判断
本件発明1と甲第9号証の1発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の1発明の「6分岐のライトガイドφ3および150W光源を有する検卵用照明を用い、卵トレーの下部より、各卵毎にゴム製カップを持ち上げ上部にある光ファイバー先端にジャバラパットを介して押し当てて、検卵部でライトアップを行い」は、本件発明3の「卵内部に光を照射して」に相当する。
(イ)甲第9号証の1発明の「目視によって、良否判定を行い」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して、正常卵を判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を対象とし、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて自動で判定するのに対し、甲第9号証の1発明は、対象が有精卵に限定されておらず、目視により判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第9号証の11発明との対比・判断
本件発明1と甲第9号証の11発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の11発明の「画像」は、色合いなどから判定を行うものであるから、本件発明1の「カラー画像」に相当する。
そして、甲第9号証の11発明の「有精卵の卵を照明装置により照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し」は、本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)甲第9号証の11発明の「色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の判定を行い」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から血管情報を計測し、正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から血管情報を計測し、正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]判定を、本件発明1は、検査領域を抽出して行うのに対し、甲第9号証の11発明は、検査領域を抽出するか不明である点。
[相違点2]判定を、本件発明1は、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて行うのに対し、甲第9号証の11発明は、血管の分布状態に基づいて行う点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、血管情報として、分布領域を用いることと一定の太さ以上の血管の総血管長を用いることとは、構成が異なることは明らかである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第9号証の12発明との対比・判断
本件発明1と甲第9号証の12発明とを対比すると、「正常卵を自動判定する有精卵の検査法」である点で一致し、甲第9号証の12発明は、判定を「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」行うものではない点で相違する。そして、有精卵の検査を行う際に、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定を行うことが自明であるとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者は同一ということはできない。

(4)甲第11号証発明との対比・判断
本件発明1と甲第11号証発明とを対比すると、両者は卵の処理に関する発明である点では一致するものの、甲第11号証発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

4-2-2.本件発明3について
(1)甲第9号証の1発明との対比・判断
本件発明3と甲第9号証の1発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の1発明の「6分岐のライトガイドφ3および150W光源を有する検卵用照明を用い、卵トレーの下部より、各卵毎にゴム製カップを持ち上げ上部にある光ファイバー先端にジャバラパットを介して押し当てて、検卵部でライトアップを行い」は、本件発明3の「卵内部に光を照射して」に相当する。
(イ)甲第9号証の1発明の「目視によって、良否判定を行い」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して、正常卵を判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を対象とし、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて自動で判定するのに対し、甲第9号証の1発明は、対象が有精卵に限定されておらず、目視により判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第9号証の11発明との対比・判断
本件発明3と甲第9号証の11発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の11発明の「画像」は、色合いなどから判定を行うものであるから、本件発明1の「カラー画像」に相当する。
そして、甲第9号証の11発明の「有精卵の卵を照明装置により照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し」は、本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)甲第9号証の11発明の「色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の判定を行い」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]判定を、本件発明3は、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて行うのに対し、甲第9号証の11発明は、どのように行うのかが不明である点。
そして、上記[相違点]について検討すると、有精卵の判定を行う際に、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うことが自明であったとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第9号証の12発明との対比・判断
本件発明3と甲第9号証の12発明とを対比すると、「正常卵を自動判定する有精卵の検査法」である点で一致し、甲第9号証の12発明は、判定を「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて」行うものではない点で相違する。そして、有精卵の検査を行う際に、有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うことが自明であるとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)甲第11号証発明との対比・判断
本件発明3と甲第11号証発明とを対比すると、両者は卵の処理に関する発明である点では一致するものの、甲第11号証発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

4-2-3.本件発明4について
(1)甲第9号証の1発明との対比・判断
本件発明4と甲第9号証の1発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の1発明の「6分岐のライトガイドφ3および150W光源を有する検卵用照明を用い、卵トレーの下部より、各卵毎にゴム製カップを持ち上げ上部にある光ファイバー先端にジャバラパットを介して押し当てて、検卵部でライトアップを行い」は、本件発明4の「卵内部に光を照射して」に相当する。
(イ)甲第9号証の1発明の「目視によって、良否判定を行い」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して、正常卵を判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を対象とし、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより自動で判定するのに対し、甲第9号証の1発明は、対象が有精卵に限定されておらず、目視により判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第9号証の11発明との対比・判断
本件発明4と甲第9号証の11発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の11発明の「画像」は、色合いなどから判定を行うものであるから、本件発明4の「カラー画像」に相当する。
そして、甲第9号証の11発明の「有精卵の卵を照明装置により照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し」は、本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)甲第9号証の11発明の「色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の判定を行い」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から内部色情報を計測し、正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から内部色情報を計測し、正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]判定を、本件発明4は、検査領域を抽出して行うのに対し、甲第9号証の11発明は、検査領域を抽出するか不明である点。
[相違点2]判定を、本件発明4は、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより行うのに対し、甲第9号証の11発明は、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより行うか不明である点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、色合いから有精卵の判別を行う際に、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することが自明であったとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第9号証の12発明との対比・判断
本件発明4と甲第9号証の12発明とを対比すると、「正常卵を自動判定する有精卵の検査法」である点で一致し、甲第9号証の12発明は、判定を「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより」行うものではない点で相違する。そして、有精卵の検査を行う際に、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより行うことが自明であるとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)甲第11号証発明との対比・判断
本件発明1と甲第11号証発明とを対比すると、両者は卵の処理に関する発明である点では一致するものの、甲第11号証発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

4-2-4.本件発明8について
本件発明8は、「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置」であり、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」を必須の構成要素としている。
してみると、本件発明8の「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」は、本件発明1、3、4に記載された検査法のいずれかを実施するものであるが、前記「4-2-1.本件発明1について」、「4-2-2.本件発明3について」、「4-2-3.本件発明4について」において、すでに検討したとおり、本件発明1、3、4は、甲第9号証の1発明、甲第9号証の11発明、甲第9号証の12発明、甲第11号証発明のいずれとも同一ということはできないものであるから、本件発明8も同様に、甲第9号証の1発明、甲第9号証の11発明、甲第9号証の12発明、甲第11号証発明のいずれとも同一ということはできないものである。

4-2-5.本件発明2、5?7、9について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明に該当する。また、本件発明5?7は、本件発明1、3、4の何れかを限定した発明に該当する。さらに、本件発明9は、本件発明8を限定した発明に該当する。
したがって、限定を省いた発明に相当する本件発明1、本件発明3、本件発明4、本件発明8が、甲第9号証の1発明、甲第9号証の11発明、甲第9号証の12発明、甲第11号証発明のいずれとも同一ではないのであるから、さらに限定した発明に該当する本件発明2、5?7、9も、甲第9号証の1発明、甲第9号証の11発明、甲第9号証の12発明、甲第11号証発明のいずれとも同一ではないことは明らかである。

4-3.まとめ
以上より、甲第9号証の2?甲第9号証の8、甲第9号証の11、甲第9号証の12、甲第11号証に記載された発明が、本件特許に係る出願前に公然知られたか、および、本件特許に係る出願前に公然実施をされたかについて検討するまでもなく、上記発明はいずれも本件発明1?9と同一ではないから、本件発明1?9は、その出願前に日本国内又は外国において、公然知られた発明または公然実施をされた発明であるとはいえない。また、甲第9号証の1、甲第9号証の9、甲第9号証の10には、検査法または検査装置に関する発明が記載されていない。さらに、甲第10号証の1および甲第10号証の2に記載された発明は、本件特許に係る出願前に公然知られた発明であるとも、公然実施をされた発明であるともいえない。
したがって、本件発明1?本件発明9は、特許法第29条第1項第1号または第2号に該当するものではない。

5.無効理由5(特許法第49条第7号)

(1)本件特許の真の発明者が審判請求人であるかについて
ア 審判請求人が開発したとされる発明
甲第9号証の1?甲第10号証の2の記載を検討すると、請求人が開発したとされる発明は、前記「4-1-2.(1)甲第9号証の1から甲第9号証の9に記載された発明について」において検討したとおり、甲第9号証の1発明として認定したとおりの発明であるといえる。

イ 本件発明1ないし本件発明9と甲第9号証の1発明との対比・判断
本件発明1?本件発明9と甲第9号証の1発明とを対比すると、すでに、「4-2-1.(1)甲第9号証の1発明との対比・判断」、「4-2-2.(1)甲第9号証の1発明との対比・判断」、「4-2-3.(1)甲第9号証の1発明との対比・判断」、「4-2-4.本件発明8について」、および、「4-3-5.本件発明2、5?7、9について」において検討したとおり、本件発明1?本件発明9と甲第9号証の1発明とは同一ということはできないものである。
したがって、甲第9号証の1発明の情報が、被請求人に漏れたかどうかについて検討するまでもなく、本件特許1?本件特許9の発明者が審判請求人であるとは認められない。

(2)本件特許の発明者が四国計測工業株式会社の4名のみであるかについて
本件特許に係る出願は、平成15年2月3日付けで手続補足書が提出されており、発明者相互の宣誓書が2通、発明者変更の理由を記載した書面が1通添付されている。
そして、1通目の宣誓書(平成15年1月289日付け)には、四国計測工業に所属する林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子の4名の氏名および押印とともに、以下の記載がある。
「 下記発明は、私共と安藤 隆章、ならびに杉本 有一郎6名の共同発明であることに相違ありません。

1 事件の表示
特願2002-259297
2 発明の名称
有精卵の検査法および装置」
また、2通目の宣誓書(平成15年1月24日付け)には、財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究所に所属する安藤隆章、杉本有一郎の2名の氏名および押印とともに、以下の記載がある。
「 下記発明は、私共と林 高義、三島 靖史、大西 英希、ならびに林 亜希子6名の共同発明であることに相違ありません。

1 事件の表示
特願2002-259297
2 発明の名称
有精卵の検査法および装置」

上記1通目の宣誓書によれば、四国計測工業株式会社に所属する4名は、安藤隆章および杉本有一郎を含めた6名が本件発明の発明者であることを宣誓しており、上記2通目の宣誓書によれば、安藤隆章および杉本有一郎も、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子を含めた6名が本件発明の発明者であることを是認しているものと認められる。また、本件特許の発明者の一部とされている林亜希子、大西英希、林高義、三島靖史の4名が作成したと認められる[甲第10号証の2]の[19h]には、安藤隆章および杉本有一郎が所属する「(財)阪大微生物病研究会観音寺研究所の皆様」に対し、「目視検査の内容についてご指導を頂きました」こと、および謝辞が記載されているが、本件発明1?本件発明9は、明細書の段落【0004】に記載されているように、「本発明は、有精卵の生死およびその発育状態を、非破壊にて、検査員の判断基準により近く、かつ、確実に判定することを目的としている。」ものであるから、[19h]の記載は、本件発明1?本件発明9を発明するに際し、特に判定の基準を定めるにあたって、阪大微生物病研究会観音寺研究所に所属する者が関与したことを推測させるものであり、安藤隆章、杉本有一郎、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子の6名を発明者とすることと矛盾するものではない。ほかに、本件特許の発明者が、安藤隆章、杉本有一郎、林高義、三島靖史、大西英希、林亜希子の6名でないことを示す証拠も存在しない。
したがって、本件特許の発明者は四国計測工業株式会社に所属する4名のみではなく、安藤隆章および杉本有一郎を含めた6名であると認められる。

(3)まとめ
以上より、本件特許第3998184号に係る出願は、特許法第49条第7号に規定する要件を満たしている。

6.職権による審理の理由1
本件発明1?9が、刊行物1?8に基づいて、特許法第29条第1項第3号に該当するかについて検討する。

6-1.刊行物1ないし刊行物8
(1)[刊行物1]特開平11-118722号公報
本件特許に係る出願前の平成11年4月30日に頒布された刊行物である刊行物1には、以下の記載がある。
[21a]「【請求項1】 卵殻を有する卵を搬送する搬送装置と、前記卵の一方側に配置される画像撮影装置に向けて、前記卵の他方側から光を照射し、卵の内部に光を透過させるための照明装置とを備えた卵の自動検査装置において、前記照明装置は、卵殻面を通じて光を導入させる導光部と、この導光部が前記卵殻面に接近する位置と、前記卵殻面から離間する位置との間を昇降させる昇降機構とを備えており、前記昇降機構による昇降動作と、前記搬送装置による卵の搬送動作とを連動させたことを特徴とする卵の自動検査装置。」
[21b]「【0002】
【従来の技術】係る自動検査装置の従来技術として、特開平8-297100号公報に開示される装置がある。この装置では、卵搬送用ローラに搭載される卵の下面側に配置された光源から光を照射し、卵の上面側に配置された画像撮影装置により卵を透過した光を撮影し、これを画像処理することで、すじやひび割れなどの不良卵の検出を行っている。」
[21c]「【0019】搬送経路の上方には多数のCCDカメラ15が設置されている。CCDカメラ15の出力は画像処理装置25に伝達され、画像処理の結果はモニター26に表示される。画像処理の方法は公知の技術でよく、例えば、特開平8-297100号公報に開示されている。CCDカメラ15による撮像は4回行われる。これは不良卵を検査するためには、鶏卵1の全面を調べる必要があり、そのために複数回の撮像が行われる。また、搬送用ローラ17は回転しているから鶏卵1も回転しながら搬送されている。このように、鶏卵1を回転させるのは不良の個所を効率よく発見するためである。」
上記[21a]?[21c]の記載によれば、刊行物1には、
「卵搬送用ローラに搭載される卵の下面側に配置された光源から光を照射し、卵の上面側に配置された画像撮影装置により卵を透過した光を撮影し、これを画像処理することで、すじやひび割れなどの不良卵の検出を行う方法。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)[刊行物2]特開2002-153262号公報
本件特許に係る出願前の平成14年5月28日に頒布された刊行物である刊行物2には、以下の記載がある。
[22a]「【請求項1】 保持手段に保持された鶏卵を供給する工程と、供給された鶏卵の殻に注射針を挿通してこの鶏卵内にワクチンを接種する工程と、注射針を挿入することによって鶏卵の殻に開けられた孔に、ホットメルト接着剤を噴射して塞ぐ工程とを有する鶏卵の処理方法。」
上記[22a]の記載によれば、刊行物2には、
「鶏卵の殻に開けられた孔を塞ぐ鶏卵の処理方法。」の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)[刊行物3]特開昭59-37460号公報
本件特許に係る出願前の昭和59年2月29日に頒布された刊行物である刊行物3には、以下の記載がある。
[23a]「 透光検査装置において、卵選別装置によつて処理される血斑,肉斑,汚物の汚れ,卵殻の亀裂などの欠陥をもつ卵がその中に無作為に散在している卵の集合体11が,複数のスプールバー12を含むスプールバーコンベヤによつて高照度の光源(第2図参照)の上を連続的に運ばれ、コンベヤに隣接して立つているオペレータが上記のような不良卵を視覚により発見することを可能にしている。」(第8頁右下欄第5?13行)
[23b]「 運転に際しては、卵11が指示手段13の下方で透光検査装置10の上方においてスプールバー12上に載つて運ばれる。指示手段13がその上を動くことのできる透光検査装置の選択された範囲を通つて卵が運ばれていく間に、卵はオペレータにより、血斑,肉斑,汚物の汚れ,卵殻の亀裂などの欠陥について視覚的に検査される。」(第10頁左下欄第6?12行)
上記[23a]および[23b]の記載によれば、刊行物3には、
「卵が透光検査装置の選択された範囲を通って運ばれていく間に、オペレータにより、血斑,肉斑,汚物の汚れ,卵殻の亀裂などの欠陥について視覚的に検査される方法。」の発明(以下、「刊行物3発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)[刊行物4]特開平9-61418号公報
本件特許に係る出願前の平成9年3月7日に頒布された刊行物である刊行物4には、以下の記載がある。
[24a]「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、検査対象卵にスポット光を照射する光源と、前記スポット光の照射位置を移動させるスポット光走査手段と、前記検査対象卵を透過した光を検出する受光手段と、その受光手段の検出信号に基づいて、前記検査対象卵の良否を判別する判別手段と、検査対象卵を設定軸芯周りに回動駆動する回動駆動手段とが設けられ、前記スポット光走査手段は、前記スポット光を前記設定軸芯方向に移動させるように構成されている卵検査装置に関する。」
[24b]「【0016】検出部LDは、図1に概略的に示すように、受光手段である受光素子30と、検査対象卵1aの透過光を受光素子30の受光面に集光するための集光レンズ31と、受光素子30の検出信号を処理して検査対象卵1aにひび割れがあるか否かを判別し、検査対象卵1aの良否を判別する判別手段である判別回路32とが備えられて構成されている。判別回路32は、図6に示すように、受光素子30の出力電流を電流-電圧変換するI-V変換回路32a、I-V変換回路32aの出力電圧を増幅するアンプ32b、増幅後の信号を微分する微分回路32c及び基準電圧(Vref )と比較する比較回路32dからなっている。受光素子30の検出信号をI-V変換回路32a及びアンプ32bで処理した後の信号を例示すると、図7(イ)に示すようなものとなる。尚、図7(イ)では、縦軸は光の強度に相当する。図7(イ)に示す信号を微分回路32cにて微分すると、図7(ロ)に示す信号となる。この図7(ロ)に示す信号を比較回路32dで設定基準値である基準電圧(Vref )と比較し、基準電圧を超えた場合に、検査対象卵1aにひび割れが存在すると判別する。
【0017】以下、上記構成の卵検査装置ECの作動を概略説明する。卵1が、搬送装置TRの搬送方向上流側端部に位置する前後2組のローラ15a,15b上に順次載置されて、6列で列状に搬送される。卵1が投光部LE及び検出部LDの設置箇所まで搬送されると、レーザ光源20から出射したレーザ光がスポット光として照射され、検査対象卵1aとなる。検査対象卵1aは、搬送装置TRにより搬送されながら、図5に示すような状態でスポット光を照射され、判別回路32にてひび割れの有無が判断される。この検査が終了した卵1はそのまま搬送され、搬送装置TRの搬送方向下流側端部で卵1の梱包装置等に渡される。判別回路32の出力は図示しない管理装置に送られ、その管理装置は、判別回路32の出力に基づいて、梱包装置等において、不具合の有る卵1を取り除くように制御する。」
上記[24a]および[24b]の記載によれば、刊行物4には、
「卵が投光部及び検出部の設置箇所まで搬送され、レーザ光源から出射したレーザ光がスポット光として照射され、判別回路にて受光素子の出力電流を電流-電圧変換し、出力電圧を増幅し、増幅後の信号を微分し、基準電圧と比較し、基準電圧を超えた場合に、検査対象卵にひび割れが存在すると判別する方法。」の発明(以下、「刊行物4発明」という。)が記載されていると認められる。

(5)[刊行物5]特開平10-328625号公報
本件特許に係る出願前の平成10年12月15日に頒布された刊行物である刊行物5には、以下の記載がある。
[25a]「【0014】図2により、不良卵を検出するための検査装置7の詳細を説明する。この検査装置7は主に腐敗卵(鮮度を識別する)を検査することができ、一対の長波長UV照射ランプ13,13と、UV吸収フィルター14と、バンドパスフィルター15と、テレビカメラ16とを備えている。テレビカメラ16は一点鎖線で示される検査区域R(1行×6列)における鶏卵1の鮮度を検査する。この装置7は、鶏卵1に紫外線を照射して自家蛍光を測定することにより鮮度を識別するものであり、例えば特公平6-87043号公報に開示された装置があげられる。更に、テレビカメラ16が捉えた画像を解析してひび卵や血卵の検査も行うことが出来る。図2のように、給卵コンベア3は多数の回転バー17を備えており、鶏卵1は回転しながら矢印A方向へ搬送される。回転バー17には、鶏卵1を載置しやすいように、6列分の凹部17aが形成されている。給卵コンベア3の駆動シャフト等に連動して位置検出センサー18が設けられており、これはエンコーダ、光電スイッチ、または、近接スイッチなどで構成される。」
上記[25a]の記載によれば、刊行物5には、
「テレビカメラにより、検査区域における鶏卵の鮮度を自家蛍光を測定することにより検査し、更に、テレビカメラが捉えた画像を解析してひび卵や血卵の検査も行うことが出来る不良卵を検出するための方法。」の発明(以下、「刊行物5発明」という。)が記載されていると認められる。

(6)[刊行物6]特開平11-56159号公報
本件特許に係る出願前の平成11年3月2日に頒布された刊行物である刊行物6には、以下の記載がある。
[26a]「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鶏卵の検査工程で使用するための、殻の表面に光を集光して内部に透過した光が散乱し、再び外部に透過した透過光の映像を撮像した画像を処理することで不良品検出を行うことを特徴とする鶏卵検査方法および検査装置に関する。」
[26b]「【0015】先に、血卵検査方法の実施例における処理手順について説明する。鶏卵を撮像手段14により、カラー画像のG画面をコンピュータ16に取り込む(図4のステップS1)。この画像は、0?255の値の濃度情報を有するので、濃度値の出現頻度を示すヒストグラムを計算すると図6に示す様なグラフが得られる。図6の(A)は正常卵、図6の(B)は血卵のヒストグラムである。装置によって、十分な濃度差が得られる場合は、このまま、2値化処理を行っても構わないが、濃度差が充分得られない場合は、濃度階調変換処理(図4のステップS2)を行い、画像を改善することにより、次の2値化処理の閾値を固定化しても安定に検出を行うことが可能になる。実施例では、濃度値5?63の範囲を0?255の範囲に線形変換を行った。ここで用いた値は、鶏卵の種類や照明装置、カメラレンズの絞りなどの状態で変わる。濃度階調変換処理により得られたヒストグラムを図6に示す。図6の(C)は正常卵、図6の(D)は血卵画像に対するヒストグラムである。ヒストグラムを比較すると図6の(C)では、濃度値約70以上に鶏卵領域部分に対する画素の濃度が出現するが、図6の(D)では、濃度値約60以上の濃度値を有する画素がない。このヒストグラムの濃度値70以上にある画素数を計数しても構わないが、実施例では2値化処理(図4のステップS3)を行う。閾値70の固定閾値で処理を行うと、正常卵は鶏卵領域の画素が抽出されるが、血卵では画素が抽出されない。鶏卵の種類や血卵の程度で抽出される画素数に相違が出現するため、画素数を計数して(図4のステップS4)、基準の画素数以下を血卵と判定できる(図4のステップS5)。この値は、画像の総画素数や鶏卵の種類、照明装置、カメラなどの撮像環境に依存するため、実験などにより決定できる。」
[26c]「【0016】次に、破卵検査方法の実施例について説明する。鶏卵を受光手段14により取り込み、濃淡情報を得る。本実施例では、血卵検査に続いて処理を行うこととして、血卵検査のときに取り込んだR、G、B画面から、簡易的な明度値として(R+G+B)/3を濃淡情報として用いた(図5のステップS6)が輝度が充分得られていればG画面など特定の1画面をそのまま用いることも可能である。濃度差が十分に得られない場合には、画像改善のために濃度階調変換処理を行い(図5のステップS7)、このままでは、濃度値が離散化するため、平滑化処理(図5のステップS8)を施す。次に、破れを検出するために、実施例では、エッジ検出処理(図5のステップS9)により破れの抽出を行ったが、2値化処理やテクスチャー解析などによる濃度差を抽出する処理により検出を行っても良い。
【0017】エッジ検出結果を2値化処理して破れ抽出を行うが、エッジ検出結果が2値化処理をするのに充分な値が得られない場合には、明瞭化のために濃度階調変換を行った後、2値化処理を行うことで破れ抽出精度が向上する。実施例では濃度値0?63を0?255の範囲へ濃度階調変換(図5のステップS10)を行い、閾値32で2値化処理(図5のステップS11)を行った。さらに、連結成分の補修のために膨張処理および縮退処理を行い(図5のステップS12)、雑音除去処理を希望する場合には、孤立点除去などの処理を行う(図5のステップS13)。
【0018】次に、エッジ検出処理では、鶏卵の輪郭も抽出されるので、輪郭線の除去処理を行う(図5のステップS14)。例えば、鶏卵を背景と分離するような閾値で2値化処理を行った画像をエッジ処理における輪郭線出現画素相当分の複数回、縮退処理を行った画像を準備しておく。このとき、鶏卵領域部分の濃度値を255として、この画像とエッジ処理を行った画像の論理積を計算することで、輪郭を除去したエッジ抽出画像を得ることができる。鶏卵と背景の分離は、鶏卵の大きさがある程度想定できることから、p-タイル法による2値化処理が有効である。本実施例では、縮退回数として雑音成分も考慮して5回行った。もちろん、輪郭線除去処理はこの例に限られない。ここまでの処理結果の一例を図7に示す。
【0019】得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い(図5のステップS15)、連結成分毎にラベル付けを行う。このとき、一定面積(画素数)以下のラベルは除去する(図5のステップS16)。この結果、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して、例えば、大きな面積を有するラベルが一つでもあれば不良、ある程度以上の面積を有するラベルがいくつ以上あれば不良などの条件を設定して、良・不良判定を行うことができる(図5のステップS17)。この判定基準は、計測環境などで異なるため、現場などでの実験により決定する。最後に、判定結果を出力手段に出力する。本実施例では、血卵検査を行った後で、破卵検査を行っているが、これらの順序の変更や2台のコンピュータなどにより並列に検査処理を行うなど、処理方法の手順を限定するものではない。」
上記[26a]および[26b]の記載によれば、刊行物6には、
「殻の表面に光を集光して、鶏卵を撮像手段により、カラー画像のG画面をコンピュータに取り込み、濃度階調変換処理を行い、2値化処理を行い、固定閾値で処理を行い、画素数を計数して、基準の画素数以下を血卵と判定する血卵検査方法。」の発明(以下、「刊行物6発明1」という。)が記載されていると認められる。
また、上記[26a]および[26c]の記載によれば、刊行物6には、
「殻の表面に光を集光して、鶏卵を受光手段により取り込み、R、G、B画面から濃淡情報を得、濃度階調変換処理を行い、平滑化処理を施し、濃度階調変換を行った後、2値化処理を行い、さらに、膨張処理および縮退処理を行い、孤立点除去などの処理を行、輪郭線の除去処理を行い、得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い、連結成分毎にラベル付けを行い、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して、良・不良判定を行う破卵検査方法。」の発明(以下、「刊行物6発明2」という。)が記載されていると認められる。

(7)[刊行物7]特開平11-326202号公報
本件特許に係る出願前の平成11年11月26日に頒布された刊行物である刊行物7には、以下の記載がある。
[27a]「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられた撮像装置により卵の濃淡画像を取り込み、この画像を処理することにより血卵、腐敗卵、汚卵と言った不良卵を検出する卵の自動検査装置に関する。」
[27b]「【0006】この構成は血卵や腐敗卵を検出するのに適しているが、特に血卵の検出に好適である。血卵とは卵の内部に血が混じっている不良卵を言い、正常卵と比較した場合に赤色光の透過光量が多くなる。そこで、前記照明装置に備えられた光源から前記撮像装置に至るまでの光路に設けられた、赤色部分の特定の波長領域の光の透過率を低下させるフィルターを用いることで、血卵か否かを判定できる。撮像装置としては、CCDカメラが代表的であり、カラーでもモノクロでもよい。フィルターの配置としては光路上であればどこでもよく、上記カメラのレンズの前面などである。または、照明装置の方に設けてもよい。上記フィルターの配置により、赤色光を透過させる量が減少する( 撮像装置に入力される光量が減少する。) ので、撮像装置の捉えた第1画像から卵存在部分の明度値を求めて、これをあらかじめ設定した設定値と比較して設定値以下のときは、血卵であると判定できる。」
[27c]「【0039】画像処理装置25により行われる手順の概要は図11に示される。まず画像をimage 1として入力する(#01)。次に、画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求める(#02)。つまり1個の鶏卵につき4回測定するから、その平均値を求めるのである。そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かを判断する(#03)。大きければ、正常卵であると判定される(#04)。ステップ#03で第1の設定値よりも小さいと判断されると、次に明度値が第2の設定値よりも大きいか否かを判断する(#05)。この第2の設定値は第1の設定値よりもかなり小さくなるように設定されている。ステップ#05で第2の設定値よりも小さいと判断された場合は、腐敗卵であると判定される(#07)。また、そうでない場合には血卵であると判定される(#06)。なお、ステップ#05の判断を省略し、第1の設定値よりも小さな場合は腐敗卵または血卵のいずれかであると判定するように構成してもよい。」
[27d]「【0043】まず、CCDカメラ15からの濃淡画像をimage 1として取り込む(#20)。この画像は図14(a)に示される。濃度分布は図14(b)に示される。図14(b)に矢印で示されるところが汚れの部分であり、明度値が下がっていることが理解されよう。このimage 1を所定のしきい値で2値化して卵存在部分と背景とを区分したマスク画像をimage 2として作成する(#21)。これは図15に示される。また、image 1の各画素に対して近傍n*nの平均をとった平均化画像をimage 3として作成する(#22)。image 3の画像と濃度分布は図16に示される。図16(b)の矢印に示されるように、汚れのある部分は明度が少し低下していることがわかる。次にimage 3の各画素からimage 1の対応する各画素の引き算処理を行う(#23)。これは明度補正を行うためであり、鶏卵独特の明度ムラ除去と汚れ部分の明度反転を行う。式で示すと、
image 4(i,j) =image3(i,j) -image 1(i,j)
であり、(i,j) は各画素の座標を示すものである。Image 4およびその濃度分布は図17に示される。次にimage 4を一定のしきい値Lv1で2値化して汚れ部分を含む2 値化画像を、image 5として作成する(#24)。これは図18に示される。このimage 5には境界部分と汚れの部分が示されている。次にマスク画像であるimage 2とimage 5の論理積を取ったimage 6を作成する(#25)。図19に示すように、このimage 6では境界部分がなくなり、汚れの部分のみが強調されて残っている。このimage 6に基づいて汚卵か否かを判定する。具体的には、連続した抽出部分の面積Sが、あらかじめ設定した設定値SET1以上であれば汚卵であると判定する(#26)。ちなみに、図19には連続した抽出部分は3個所存在している。」
上記[27a]、[27b]および[27c]の記載によれば、刊行物7には、
「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像を取り込み、画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め、そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かを判断し、大きければ、正常卵であると判定し、第1の設定値よりも小さいと判断されると、次に明度値が第2の設定値よりも大きいか否かを判断し、第2の設定値よりも小さいと判断された場合は、腐敗卵であると判定され、そうでない場合には血卵であると判定される卵の自動検査方法。」の発明(以下、「刊行物7発明1」という。)が記載されていると認められる。
また、上記[27a]、[27b]および[27d]の記載によれば、刊行物7には、
「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像をimage 1として取り込み、このimage 1を所定のしきい値で2値化して卵存在部分と背景とを区分したマスク画像をimage 2として作成し、また、image 1の平均化画像をimage 3として作成し、次にimage 3の各画素からimage 1の対応する各画素の引き算処理を行いimage 4(i,j)を作成し、次にimage 4を一定のしきい値で2値化して汚れ部分を含む2値化画像をimage 5として作成し、次にマスク画像であるimage 2とimage 5の論理積を取ったimage 6を作成し、このimage 6に基づいて汚卵か否かを判定する卵の自動検査方法。」の発明(以下、「刊行物7発明2」という。)が記載されていると認められる。

(8)[刊行物8]特開2000-23505号公報
本件特許に係る出願前の平成12年1月25日に頒布された刊行物である刊行物8には、以下の記載がある。
[28a]「【請求項1】 移動車輌1の前側に駆動縦軸2を設け、この駆動縦軸2下端に回転板3を配設すると共に回転板3に複数本の耕耘ナタ爪4,4..を取り付けたことを特徴とする水耕植物の培地撹拌装置。」
上記[28a]の記載によれば、刊行物8には、
「水耕植物の培地撹拌装置。」の発明(以下、「刊行物8発明」という。)が記載されていると認められる。

6-2.対比・判断

6-2-1.本件発明1について
(1)刊行物1との対比・判断
本件発明1と刊行物1発明とを対比する。
(ア)刊行物1発明の「卵搬送用ローラに搭載される卵の下面側に配置された光源から光を照射し、卵の上面側に配置された画像撮影装置により卵を透過した光を撮影し」と本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し」ている点で共通する。
(イ)刊行物1発明の「卵の検出を行う方法」は、本件発明の「卵の検査法」に相当する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]画像が、本件発明1ではカラーであるのに対し、刊行物1発明ではカラーであるか不明である点。
[相違点2]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長を求めるのに対し、刊行物1発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、すじやひび割れなどの不良卵の検査を行うために画像処理を行う点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、画像処理を行うに際し、一定の太さ以上の血管の総血管長を求めることが自明であったことを示す証拠はないため、上記[相違点2]は実質的に相違するものである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)刊行物2との対比・判断
本件発明1と刊行物2発明とを対比すると、両者は卵の処理方法である点では一致するものの、刊行物2発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)刊行物3との対比・判断
本件発明1と刊行物3発明とを対比する。
(ア)刊行物3発明は、「卵が透光検査装置の選択された範囲を通って運ばれていく間」において、卵に光が照射されているといえるから、刊行物3発明は、本件発明1の「卵内部に光を照射」する工程を有している。
(イ)刊行物3発明の「血斑,肉斑,汚物の汚れ,卵殻の亀裂などの欠陥について視覚的に検査される方法」は、卵11の欠陥について検査するものであるから、本件発明1の「卵の検査方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵を判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を対象とし、「卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長」を求め、「自動」判定するのに対し、刊行物3発明は、対象が有精卵であるか不明であり、視覚的に検査する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)刊行物4との対比・判断
本件発明1と刊行物4発明とを対比する。
(ア)刊行物4発明の「卵が投光部及び検出部の設置箇所まで搬送され、レーザ光源から出射したレーザ光がスポット光として照射され」は、本件発明1の「卵内部に光を照射」する工程を包含する。
(イ)刊行物4発明の「判別回路にて受光素子の出力電流を電流-電圧変換し、出力電圧を増幅し、増幅後の信号を微分し、基準電圧と比較し、基準電圧を超えた場合に、検査対象卵にひび割れが存在すると判別する」と本件発明1の「卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を対象とし、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定を行うのに対し、刊行物4発明は、対象が有精卵に限定されるものではなく、ひび割れを、判別回路にて受光素子の出力電流を電流-電圧変換し、出力電圧を増幅し、増幅後の信号を微分し、基準電圧と比較して判別する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(5)刊行物5との対比・判断
本件発明1と刊行物5発明とを対比する。
(ア)刊行物5発明の「テレビカメラが捉えた画像」と本件発明1の「卵内部のカラー画像」とは、「卵の画像」である点で共通する。
(イ)刊行物5発明の「不良卵を検出する」方法は、テレビカメラが捉えた画像を解析して行われるものであるから、本件発明1の「正常卵を自動判定する」に相当する。
そうすると、両者は、
「卵の画像を撮像し、撮像した画像に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定を行うのに対し、刊行物5発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、テレビカメラにより、検査区域における鶏卵の鮮度を自家蛍光を測定し、更に、テレビカメラが捉えた画像を解析する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(6)刊行物6との対比・判断
ア 本件発明1と刊行物6発明1の対比・判断
本件発明1と刊行物6発明1を対比する。
(ア)刊行物6発明1の「殻の表面に光を集光して、鶏卵を撮像手段により、カラー画像のG画面をコンピュータに取り込み」と本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)刊行物6発明1の「濃度階調変換処理を行い、2値化処理を行い、固定閾値で処理を行い、画素数を計数して、基準の画素数以下を血卵と判定する」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定することを特徴と」とは、「撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定するのに対し、刊行物6発明1は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、濃度階調変換処理を行い、2値化処理を行い、固定閾値で処理を行い、画素数を計数して、基準の画素数以下を血卵と判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明1と刊行物6発明2の対比・判断
本件発明1と刊行物6発明2を対比する。
(ア)刊行物6発明2の「殻の表面に光を集光して、鶏卵を受光手段により取り込」む工程は、R,G,B画面を得るものであるから、刊行物6発明2の「鶏卵を受光手段14により取り込み」と本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)刊行物6発明2の「R、G、B画面から濃淡情報を得、濃度階調変換処理を行い、平滑化処理を施し、濃度階調変換を行った後、2値化処理を行い、さらに、膨張処理および縮退処理を行い、孤立点除去などの処理を行、輪郭線の除去処理を行い、得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い、連結成分毎にラベル付けを行い、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して、良・不良判定を行う」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定するのに対し、刊行物6発明2は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、R、G、B画面から濃淡情報を得、濃度階調変換処理を行い、平滑化処理を施し、濃度階調変換を行った後、2値化処理を行い、さらに、膨張処理および縮退処理を行い、孤立点除去などの処理を行、輪郭線の除去処理を行い、得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い、連結成分毎にラベル付けを行い、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して、良・不良判定を行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(7)刊行物7との対比・判断
ア 本件発明1と刊行物7発明1との対比・判断
本件発明1と刊行物7発明1とを対比する。
(ア)刊行物7発明1の「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像を取り込み」は、本件発明1の「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)刊行物7発明1の「画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め」る工程は、鶏卵が存在する部分を抽出しているといえるから、本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出」する工程を包含している。
(ウ)刊行物7発明1の「画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め、そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かを判断し、大きければ、正常卵であると判定し」と本件発明1の「該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定を行うのに対し、刊行物7発明1は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め、そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かに基づいて判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明1と刊行物7発明2との対比・判断
本件発明1と刊行物7発明2とを対比する。
(ア)刊行物7発明2の「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像をimage 1として取り込み」は、本件発明1の「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)刊行物7発明2の「このimage 1を所定のしきい値で2値化して卵存在部分と背景とを区分したマスク画像をimage 2として作成し」は、本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し」に相当する。
(ウ)刊行物7発明2の「image 3の各画素からimage 1の対応する各画素の引き算処理を行いimage 4(i,j)を作成し、次にimage 4を一定のしきい値で2値化して汚れ部分を含む2値化画像をimage 5として作成し、次にマスク画像であるimage 2とimage 5の論理積を取ったimage 6を作成し、このimage 6に基づいて汚卵か否かを判定する」と本件発明1の「該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明1は、「有精卵」を検査の対象とし、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定を行うのに対し、刊行物7発明2は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、image 3の各画素からimage 1の対応する各画素の引き算処理を行いimage 4(i,j)を作成し、次にimage 4を一定のしきい値で2値化して汚れ部分を含む2値化画像をimage 5として作成し、次にマスク画像であるimage 2とimage 5の論理積を取ったimage 6を作成し、このimage 6に基づいて汚卵か否かを判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(8)刊行物8との対比・判断
本件発明1と刊行物8発明とを対比すると、前者は有精卵の検査法に関する発明であるのに対し、後者は水耕植物の培地撹拌に関する発明であり、一致点は存在しない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

6-2-2.本件発明3について
(1)刊行物1との対比・判断
本件発明3と刊行物1発明とを対比する。
(ア)刊行物1発明の「卵搬送用ローラに搭載される卵の下面側に配置された光源から光を照射し、卵の上面側に配置された画像撮影装置により卵を透過した光を撮影し」と本件発明3の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し」ている点で共通する。
(イ)刊行物1発明の「これを画像処理することで、すじやひび割れなどの不良卵の検出を行う」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]画像が、本件発明3ではカラーであるのに対し、刊行物1発明ではカラーであるか不明である点。
[相違点2]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定するのに対し、刊行物1発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、すじやひび割れなどの不良卵の検査を行うための画像処理を行う点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、画像処理を行うに際し、カラー画像中のR成分およびG成分をそれぞれ2値化した画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが自明であったことを示す証拠はないため、上記[相違点2]は実質的に相違するものである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)刊行物2との対比・判断
本件発明3と刊行物2発明とを対比すると、両者は卵の処理方法である点では一致するものの、刊行物2発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)刊行物3との対比・判断
本件発明3と刊行物3発明とを対比する。
(ア)刊行物3発明は、「卵が透光検査装置の選択された範囲を通って運ばれていく間」において、卵に光が照射されているといえるから、刊行物3発明は、本件発明3の「卵内部に光を照射して」いる工程を有している。
(イ)刊行物3発明の「血斑,肉斑,汚物の汚れ,卵殻の亀裂などの欠陥について視覚的に検査される方法」は、卵11の欠陥について検査するものであるから、本件発明3の「卵の検査方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵を判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を対象とし、「卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積」を求め、「自動」判定するのに対し、刊行物3発明は、対象が有精卵であるか不明であり、視覚的に検査する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)刊行物4との対比・判断
本件発明3と刊行物4発明とを対比する。
(ア)刊行物4発明の「卵が投光部及び検出部の設置箇所まで搬送され、レーザ光源20から出射したレーザ光がスポット光として照射され」は、本件発明3の「卵内部に光を照射」する工程を包含する。
(イ)刊行物4発明の「判別回路にて受光素子の出力電流を電流-電圧変換し、出力電圧を増幅し、増幅後の信号を微分し、基準電圧と比較し、基準電圧を超えた場合に、検査対象卵にひび割れが存在すると判別する」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して正常卵を自動判定するの検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を対象とし、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うのに対し、刊行物4発明は、対象が有精卵に限定されるものではなく、ひび割れを、判別回路にて受光素子の出力電流を電流-電圧変換し、出力電圧を増幅し、増幅後の信号を微分し、基準電圧と比較して判別する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(5)刊行物5との対比・判断
本件発明3と刊行物5発明とを対比する。
(ア)刊行物5発明の「テレビカメラが捉えた画像」と本件発明3の「卵内部のカラー画像」とは、「卵の画像」である点で共通する。
(イ)刊行物5発明の「不良卵を検出する」方法は、テレビカメラが捉えた画像を解析して行われるものであるから、本件発明3の「正常卵を自動判定する」に相当する。
そうすると、両者は、
「卵の画像を撮像し、撮像した画像に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うのに対し、刊行物5発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、テレビカメラにより、検査区域における鶏卵の鮮度を自家蛍光を測定し、更に、テレビカメラが捉えた画像を解析する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(6)刊行物6との対比・判断
ア 本件発明3と刊行物6発明1との対比・判断
本件発明3と刊行物6発明1とを対比する。
(ア)刊行物6発明1の「殻の表面に光を集光して、鶏卵を撮像手段により、カラー画像のG画面をコンピュータに取り込み」と本件発明3の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)刊行物6発明1は「カラー画像のG画面をコンピュータに取り込」んでいることから、本件発明3の「前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化」する工程を有しているといえる。
(ウ)刊行物6発明1の「2値化処理を行い」は、本件発明3の「設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し」に相当する。
(エ)刊行物6発明1の「固定閾値で処理を行い、画素数を計数して、基準の画素数以下を血卵と判定する」と本件発明3の「第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「面積に基づいて正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、面積に基づいて正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、第一の画像およびG成分を2値化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定するのに対し、刊行物6発明1は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、カラー画像のG画面を固定閾値で処理を行い、画素数を計数しており、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域の面積に基づくものではない点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明3と刊行物6発明2との対比・判断
本件発明3と刊行物6発明2とを対比する。
(ア)刊行物6発明2の「殻の表面に光を集光して、鶏卵を受光手段により取り込」む工程は、R,G,B画面を得るものであるから、刊行物6発明2の「鶏卵を受光手段により取り込み」と本件発明3の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)刊行物6発明2は「R、G、B画面」を用いるため、本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化」および「前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化」する工程を有しているといえる。
(ウ)刊行物6発明2の「平滑化処理を施し」は、本件発明3の「設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し」および「設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し」に相当する。
(エ)甲第7号証発明-2の「さらに、膨張処理および縮退処理を行い、孤立点除去などの処理を行、輪郭線の除去処理を行い、得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い、連結成分毎にラベル付けを行い、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して、良・不良判定を行う」と本件発明3の「第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定するのに対し、刊行物6発明2は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、膨張処理および縮退処理を行い、孤立点除去などの処理を行、輪郭線の除去処理を行い、得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い、連結成分毎にラベル付けを行い、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して判定を行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(7)刊行物7との対比・判断
ア 本件発明3と刊行物7発明1との対比・判断
本件発明3と刊行物7発明1とを対比する。
(ア)刊行物7発明1の「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像を取り込み」は、本件発明3の「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)刊行物7発明1の「画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め、そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かを判断し、大きければ、正常卵であると判定し」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うのに対し、刊行物7発明1は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め、そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かに基づいて判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明3と刊行物7発明2との対比・判断
本件発明3と刊行物7発明2とを対比する。
(ア)刊行物7発明2の「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像をimage 1として取り込み」は、本件発明3の「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)刊行物7発明2の「このimage 1を所定のしきい値で2値化して卵存在部分と背景とを区分したマスク画像をimage 2として作成し、また、image 1の平均化画像をimage 3として作成し、次にimage 3の各画素からimage 1の対応する各画素の引き算処理を行いimage 4(i,j)を作成し、次にimage 4を一定のしきい値で2値化して汚れ部分を含む2値化画像をimage 5として作成し、次にマスク画像であるimage 2とimage 5の論理積を取ったimage 6を作成し、このimage 6に基づいて汚卵か否かを判定する」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「撮像した画像を設定したしきい値により2値化し、正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像した画像を設定したしきい値により2値化し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明3は、「有精卵」を検査の対象とし、R成分およびG成分をモノクロ画像化し、R成分を2値化した画像およびG成分を2値化した画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うのに対し、刊行物7発明2は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、卵の濃淡画像をimage 1として取り込み、このimage 1を所定のしきい値で2値化して卵存在部分と背景とを区分したマスク画像をimage 2として作成し、また、image 1の平均化画像をimage 3として作成し、次にimage 3の各画素からimage 1の対応する各画素の引き算処理を行いimage 4(i,j)を作成し、次にimage 4を一定のしきい値で2値化して汚れ部分を含む2値化画像をimage 5として作成し、次にマスク画像であるimage 2とimage 5の論理積を取ったimage 6を作成し、このimage 6に基づいて判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(8)刊行物8との対比・判断
本件発明3と刊行物8発明とを対比すると、前者は有精卵の検査法に関する発明であるのに対し、後者は水耕植物の培地撹拌に関する発明であり、一致点は存在しない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

6-2-3.本件発明4について
(1)刊行物1との対比・判断
本件発明4と刊行物1発明とを対比する。
(ア)刊行物1発明の「卵搬送用ローラに搭載される卵の下面側に配置された光源から光を照射し、卵の上面側に配置された画像撮影装置により卵を透過した光を撮影し」と本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し」ている点で共通する。
(イ)刊行物1発明の「画像処理することで、すじやひび割れなどの不良卵の検出を行う」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像した画像から正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部の画像を撮像し、撮像した画像から正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]画像が、本件発明4ではカラーであるのに対し、刊行物1発明ではカラーであるか不明である点。
[相違点2]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定するのに対し、刊行物1発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、すじやひび割れなどの不良卵の検査を行うための画像処理を行う点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、卵の検査を行うにあたり、気室境界付近の濃度分布情報を把握することが自明であったことを示す証拠はなく、[相違点2]は実質的に相違するものである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)刊行物2との対比・判断
本件発明4と刊行物2発明とを対比すると、両者は卵の処理方法である点では一致するものの、刊行物2発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)刊行物3との対比・判断
本件発明4と刊行物3発明とを対比する。
(ア)刊行物3発明は、「卵が透光検査装置の選択された範囲を通って運ばれていく間」において、卵に光が照射されているものと認められるから、刊行物3発明は、本件発明4の「卵内部に光を照射」する工程を有しているといえる。
(イ)刊行物3発明の「血斑,肉斑,汚物の汚れ,卵殻の亀裂などの欠陥について視覚的に検査される方法」は、卵11の欠陥について検査するものであるから、本件発明4の「卵の検査方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵を判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を対象とし、「卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出」し、「自動」判定するのに対し、刊行物3発明は、対象が有精卵であるか不明であり、視覚的に検査する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(4)刊行物4との対比・判断
本件発明4と刊行物4発明とを対比する。
(ア)刊行物4発明の「卵が投光部及び検出部の設置箇所まで搬送され、レーザ光源20から出射したレーザ光がスポット光として照射され」は、本件発明4の「卵内部に光を照射」する工程を包含する。
(イ)刊行物4発明の「判別回路にて受光素子の出力電流を電流-電圧変換し、出力電圧を増幅し、増幅後の信号を微分し、基準電圧と比較し、基準電圧を超えた場合に、検査対象卵にひび割れが存在すると判別する」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を対象とし、「卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより判定するのに対し、刊行物4発明は、対象が有精卵に限定されるものではなく、ひび割れを、判別回路にて受光素子の出力電流を電流-電圧変換し、出力電圧を増幅し、増幅後の信号を微分し、基準電圧と比較して判別する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(5)刊行物5との対比・判断
本件発明4と刊行物5発明とを対比する。
(ア)刊行物5発明の「テレビカメラが捉えた画像」と本件発明4の「卵内部のカラー画像」とは、「卵の画像」である点で共通する。
(イ)刊行物5発明の「不良卵を検出する」方法は、テレビカメラが捉えた画像を解析して行われるものであるから、本件発明4の「正常卵を自動判定する」に相当する。
そうすると、両者は、
「卵の画像を撮像し、撮像した画像により正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、カラー画像を撮像し、検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定を行うのに対し、刊行物5発明は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、テレビカメラにより、検査区域における鶏卵の鮮度を自家蛍光を測定し、更に、テレビカメラが捉えた画像を解析する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(6)刊行物6との対比・判断
ア 本件発明4と刊行物6発明1との対比・判断
本件発明4と刊行物6発明1とを対比する。
(ア)刊行物6発明1の「殻の表面に光を集光して、鶏卵を撮像手段により、カラー画像のG画面をコンピュータに取り込み」と本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)刊行物6発明1の「濃度階調変換処理を行い、2値化処理を行い、固定閾値で処理を行い、画素数を計数して、基準の画素数以下を血卵と判定する」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定するのに対し、刊行物6発明1は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、濃度階調変換処理を行い、2値化処理を行い、固定閾値で処理を行い、画素数を計数して、基準の画素数以下を血卵と判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明4と刊行物6発明2との対比・判断
本件発明4と刊行物6発明2とを対比する。
(ア)刊行物6発明2の「殻の表面に光を集光して、鶏卵を受光手段により取り込」む工程は、R,G,B画面を得るものであるから、刊行物6発明2の「鶏卵を受光手段により取り込み」と本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」とは、「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像」する点で共通する。
(イ)刊行物6発明2の「R、G、B画面から濃淡情報を得、濃度階調変換処理を行い、平滑化処理を施し、濃度階調変換を行った後、2値化処理を行い、さらに、膨張処理および縮退処理を行い、孤立点除去などの処理を行、輪郭線の除去処理を行い、得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い、連結成分毎にラベル付けを行い、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して、良・不良判定を行う」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定するのに対し、刊行物6発明2は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、R、G、B画面から濃淡情報を得、濃度階調変換処理を行い、平滑化処理を施し、濃度階調変換を行った後、2値化処理を行い、さらに、膨張処理および縮退処理を行い、孤立点除去などの処理を行、輪郭線の除去処理を行い、得られたエッジ抽出画像をラベリング処理を行い、連結成分毎にラベル付けを行い、残ったラベルの総数や各ラベル毎の画素数を計数して、良・不良判定を行う点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(7)刊行物7との対比・判断
ア 本件発明4と刊行物7発明1との対比・判断
本件発明4と刊行物7発明1とを対比する。
(ア)刊行物7発明1の「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像を取り込み」は、本件発明4の「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)刊行物7発明1の「画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め」る工程は、鶏卵が存在する部分を抽出しているといえるから、本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出」する工程を包含している。
(ウ)刊行物7発明1の「平均明度を求め、そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かを判断し、大きければ、正常卵であると判定し」と本件発明4の「該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定を行うのに対し、刊行物7発明1は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、画像のうち鶏卵が存在する部分の平均明度を求め、そして求められた明度値が予め設定された第1の設定値よりも大きいか否かに基づいて判定する点。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

イ 本件発明4と刊行物7発明2との対比・判断
本件発明4と刊行物7発明2とを対比する。
(ア)刊行物7発明2の「卵殻を有する卵の一方側から光を照射し、卵の他方側に設けられたカラーでもよい撮像装置により卵の濃淡画像をimage 1として取り込み」は、本件発明4の「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)刊行物7発明2の「マスク画像であるimage 2とimage 5の論理積を取ったimage 6を作成し」は、本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し」に相当する。
(ウ)刊行物7発明2の「image 6に基づいて汚卵か否かを判定する」と本件発明4の「検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該正常卵を自動判定する卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]本件発明4は、「有精卵」を検査の対象とし、検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより判定するのに対し、刊行物7発明2は、検査の対象を有精卵に限定しておらず、image 6に基づいて汚卵か否かを判定するものであり、検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出するものであるか不明である点。
上記相違点について検討すると、画像に基づいて汚卵か否かを判定する際に、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、気室境界付近の出血の有無を検出することが自明であったことを示す証拠はなく、上記相違点は実質的に相違するものである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(8)刊行物8との対比・判断
本件発明4と刊行物8発明とを対比すると、前者は有精卵の検査法に関する発明であるのに対し、後者は水耕植物の培地撹拌に関する発明であり、一致点は存在しない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

6-2-4.本件発明8について
本件発明8は、「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置」であり、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」を必須の構成要素としている。
してみると、本件発明8の「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」は、本件発明1、本件発明3、本件発明4に記載された検査法のいずれかを実施するものであるが、前記「6-2-1.本件発明1について」、「6-2-2.本件発明3について」、および、「6-2-3.本件発明4について」において、すでに検討したとおり、本件発明1、3、4は、刊行物1?8に記載された発明と同一ではないから、本件発明8も同様に、刊行物1?8に記載された発明のいずれとも同一ということはできない。

6-2-5.本件発明2、5?7、9について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明に該当する。また、本件発明5?7は、本件発明1、3、4の何れかを限定した発明に該当する。さらに、本件発明9は、本件発明8を限定した発明に該当する。
したがって、限定を省いた発明に相当する本件発明1、3、4、8が、刊行物1?8に記載された発明のいずれとも同一ではないのであるから、さらに限定した発明に該当する本件発明2、5?7、9も、刊行物1?8に記載された発明のいずれとも同一ではないことは明らかである。

6-3.まとめ
以上において検討したように、本件発明1?9は、いずれも、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である刊行物1?8に記載された発明とはいえない。
よって、本件発明1?9は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

7.職権による審理の理由2
本件発明1?9が、刊行物1?8に基づいて、特許法第29条第2項に該当するかについて検討する。

7-1.刊行物1ないし刊行物8
刊行物1?8の記載事項および刊行物1?8に記載された発明は、前記「6-1.刊行物1ないし刊行物8」に記載したとおりである。

7-2.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定する工程を必須の要件としている。
しかし、すでに「6-2-1.本件発明1について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定することが刊行物1?8に記載されていたとはいえず、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定することが、当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。また、他に、正常卵を判定する際に、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」行うことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明1は、本件出願前に、刊行物1?8に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明3について
本件発明3は、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行う工程を必須の要件としている。
しかし、すでに、「6-2-2.本件発明3について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが刊行物1?8に記載されていたとはいえず、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。また、他に、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明3は、本件出願前に刊行物1?8に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明4について
本件発明4は、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定する工程を必須の要件としている。
しかし、すでに、「6-2-3.本件発明4について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定することが刊行物1?8に記載されていたとはいえず、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定することが当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。また、他に、正常卵を判定する際に、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明4は、本件出願前に刊行物1?8に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(4)本件発明8について
本件発明8は、「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置」であり、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」を必須の構成要素としている。
してみると、本件発明8の「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」は、本件発明1、3、4に記載された検査法のいずれかを実施するものであるが、前記(1)?(3)において、すでに検討したとおり、本件発明1、3、4は、本件出願前に刊行物1?8に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、本件発明8も同様に、本件出願前に刊行物1?8に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(5)本件発明2、5?7、9について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明に該当する。また、本件発明5?7は、本件発明1、3、4の何れかを限定した発明に該当する。さらに、本件発明9は、本件発明8を限定した発明に該当する。
したがって、限定を省いた発明に相当する本件発明1、3、4、8は、前記(1)?(4)において検討したとおり、刊行物1?8に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、さらに限定した発明に該当する本件発明2、5?7、9も、刊行物1?8に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

7-3.まとめ
以上より、本件発明1?9は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

8.職権による審理の理由3
本件発明1?9が、甲第9号証の1?甲第11号証に基づいて、特許法第29条第1項第3号に該当するかについて検討する。

8-1.甲第9号証の1ないし甲第11号証
甲第9号証の1?甲第11号証の記載事項は、前記「4-1-1.甲第9号証の1ないし甲第11号証の記載事項」に記載したとおりである。

以下に、甲第9号証の1?甲第11号証が本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものに該当するかについて検討する。また、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものに該当するか不明の場合には記載された発明について検討する。

(1)甲第9号証の1について
甲第9号証の1は、[6a]の記載から本件特許に係る出願後に作成されたものであるといえるから、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(2)甲第9号証の2について
甲第9号証の2は、[7b]の記載から本件特許に係る出願前に作成されたものであるが、[7a]の記載から特定の組織に対して提出されたものといえるから、頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(3)甲第9号証の3について
甲第9号証の3は、[8d]の記載から本件特許に係る出願前に作成されたものであるが、[8b]の記載から特定の組織に対して提出されたものといえるから、頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(4)甲第9号証の4について
甲第9号証の4は、[9b]の記載から特定の組織に対して提出されたものといえるから、頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(5)甲第9号証の5について
甲第9号証の5は、[10a]の記載から本件特許に係る出願前に作成されたものであるが、[10c]の記載から特定の者に対して送付されたものといえるから、頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(6)甲第9号証の6について
甲第9号証の6は、[11c]の記載から、本件特許に係る出願後に作成されたものであるといえるから、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(7)甲第9号証の7について
甲第9号証の7は、[12d]の記載によれば、本件特許に係る出願前に作成されたものといえるが、[12a]の記載から、比内時計工業株式会社内で作成された図面であると認められる。したがって、頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(8)甲第9号証の8について
甲第9号証の8は、[13a]の記載から、本件特許に係る出願後に作成されたものであるといえるから、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(9)甲第9号証の9について
甲第9号証の9は、[14b]の記載から、本件特許に係る出願後に作成されたものであるといえるから、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(10)甲第9号証の10について
甲第9号証の10は、すでに「4-1-2.(2)甲第9号証の10に記載された発明について」に記載したとおり、本件特許に係る出願後に公開されたものであるから、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。

(11)甲第9号証の11について
甲第9号証の11は、すでに「4-1-2.(3)甲第9号証の11に記載された発明について」に記載したとおり、四国計測工業株式会社のホームページとして平成21年3月17日以前に公開されたものであるから、公知日は不明であるものの、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものといえる。
そして、甲第9号証の11には、「4-1-2.(3)甲第9号証の11に記載された発明について」に記載したとおり、甲第9号証の11発明が記載されていると認められる。

(12)甲第9号証の12について
甲第9号証の12は、すでに「4-1-2.(4)甲第9号証の12に記載された発明について」に記載したとおり、四国計測工業株式会社のホームページとして平成21年3月17日以前に公開されたものであるから、公知日は不明であるものの、電気通信回路を通じて公衆に利用可能となったものといえる。
そして、甲第9号証の12には、「4-1-2.(4)甲第9号証の12に記載された発明について」に記載したとおり、甲第9号証の12発明が記載されていると認められる。

(13)甲第10号証の1について
甲第10号証の1は、すでに「4-1-2.(5)甲第10号証の1に記載された発明について」に記載したとおり、本件特許の出願前に頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるとはいえないものである。

(14)甲第10号証の2について
甲第10号証の2は、すでに「4-1-2.(6)甲第10号証の2に記載された発明について」に記載したとおり、本件特許に係る出願前に公然知られていたまたは公然実施されていたとはいえないものであるから、本件特許の出願前に頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるとはいえないものである。

(15)甲第11号証について
甲第11号証は、すでに「4-1-2.(7)甲第11号証に記載された発明について」に記載したとおり、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物または電気通信回路を通じて公衆に利用可能となったものであるかは不明である。
そして、甲第11号証には、「4-1-2.(7)甲第11号証に記載された発明について」に記載したとおり、甲第11号証発明が記載されていると認められる。

8-2.対比・判断
以下、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものに該当するかが提出された証拠から不明である甲第9号証の11、甲第9号証の12および甲第11号証に記載された発明について検討を行う。

8-2-1.本件発明1について
(1)甲第9号証の11との対比・判断
本件発明1と甲第9号証の11発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の11発明の「画像」は、色合いなどから判定を行うものであるから、本件発明1の「カラー画像」に相当する。
そして、甲第9号証の11発明の「有精卵の卵を照明装置により照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し」は、本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)甲第9号証の11発明の「色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の判定を行い」と本件発明1の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から血管情報を計測し、正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から血管情報を計測し、正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]判定を、本件発明1は、検査領域を抽出して行うのに対し、甲第9号証の11発明は、検査領域を抽出するか不明である点。
[相違点2]判定を、本件発明1は、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて行うのに対し、甲第9号証の11発明は、血管の分布状態に基づいて行う点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、血管情報として、分布領域を用いることと一定の太さ以上の血管の総血管長を用いることとは、構成が異なることは明らかである。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第9号証の12との対比・判断
本件発明1と甲第9号証の12発明とを対比すると、「正常卵を自動判定する有精卵の検査法」である点で一致し、甲第9号証の12発明は、判定を「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」行うものではない点で相違する。そして、有精卵の検査を行う際に、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて判定を行うことが自明であるとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者は同一ということはできない。

(3)甲第11号証との対比・判断
本件発明1と甲第11号証発明とを対比すると、両者は卵の処理に関する発明である点では一致するものの、甲第11号証発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の血管情報を計測し、一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

8-2-2.本件発明3について
(1)甲第9号証の11との対比・判断
本件発明3と甲第9号証の11発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の11発明の「画像」は、色合いなどから判定を行うものであるから、本件発明1の「カラー画像」に相当する。
そして、甲第9号証の11発明の「有精卵の卵を照明装置により照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し」は、本件発明1の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)甲第9号証の11発明の「色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の判定を行い」と本件発明3の「撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する」とは、「正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]判定を、本件発明3は、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて行うのに対し、甲第9号証の11発明は、どのように行うのかが不明である点。
そして、上記[相違点]について検討すると、有精卵の判定を行う際に、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うことが自明であったとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第9号証の12との対比・判断
本件発明3と甲第9号証の12発明とを対比すると、「正常卵を自動判定する有精卵の検査法」である点で一致し、甲第9号証の12発明は、判定を「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて」行うものではない点で相違する。そして、有精卵の検査を行う際に、有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて判定を行うことが自明であるとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第11号証との対比・判断
本件発明3と甲第11号証発明とを対比すると、両者は卵の処理に関する発明である点では一致するものの、甲第11号証発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像中のR成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第一の画像を取得し、前記カラー画像中のG成分をモノクロ画像化し、設定したしきい値により2値化した第二の画像を取得し、第一および第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、該検査領域の面積に基づいて正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

8-2-3.本件発明4について
(1)甲第9号証の11との対比・判断
本件発明4と甲第9号証の11発明とを対比する。
(ア)甲第9号証の11発明の「画像」は、色合いなどから判定を行うものであるから、本件発明4の「カラー画像」に相当する。
そして、甲第9号証の11発明の「有精卵の卵を照明装置により照射し、内部状態をCCDカメラで撮影し」は、本件発明4の「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し」に相当する。
(イ)甲第9号証の11発明の「色合い・血管の分布領域などから発育状態を画像処理で良卵、死卵の判定を行い」と本件発明4の「撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する」とは、「撮像したカラー画像から内部色情報を計測し、正常卵を自動判定する」点で共通する。
そうすると、両者は、
「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から内部色情報を計測し、正常卵を自動判定する有精卵の検査法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]判定を、本件発明4は、検査領域を抽出して行うのに対し、甲第9号証の11発明は、検査領域を抽出するか不明である点。
[相違点2]判定を、本件発明4は、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより行うのに対し、甲第9号証の11発明は、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより行うか不明である点。
そして、上記[相違点2]について検討すると、色合いから有精卵の判別を行う際に、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することが自明であったとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(2)甲第9号証の12との対比・判断
本件発明4と甲第9号証の12発明とを対比すると、「正常卵を自動判定する有精卵の検査法」である点で一致し、甲第9号証の12発明は、判定を「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより」行うものではない点で相違する。そして、有精卵の検査を行う際に、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより行うことが自明であるとはいえない。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

(3)甲第11号証との対比・判断
本件発明1と甲第11号証発明とを対比すると、両者は卵の処理に関する発明である点では一致するものの、甲第11号証発明は、「有精卵内部に光を照射して卵内部のカラー画像を撮像し、撮像したカラー画像から検査領域を抽出し、該検査領域内の内部色情報を計測し、気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出することにより正常卵を自動判定する有精卵の検査法」ではない点で相違する。
したがって、両者はその構成を異にするものであり、両者を同一ということはできない。

8-2-4.本件発明8について
本件発明8は、「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置」であり、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」を必須の構成要素としている。
してみると、本件発明8の「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」は、本件発明1、3、4に記載された検査法のいずれかを実施するものであるが、前記「8-2-1.本件発明1について」、「8-2-2.本件発明3について」、および、「8-2-3.本件発明4について」において、すでに検討したとおり、本件発明1、3、4は、甲第9号証の11、甲第9号証の12および甲第11号証に記載された発明と同一ではないから、本件発明8も同様に、甲第9号証の11、甲第9号証の12および甲第11号証に記載された発明のいずれとも同一ということはできない。

8-2-5.本件発明2、5?7、9について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明に該当する。また、本件発明5?7は、本件発明1、3、4の何れかを限定した発明に該当する。さらに、本件発明9は、本件発明8を限定した発明に該当する。
したがって、限定を省いた発明に相当する本件発明1、3、4、8が、甲第9号証の11、甲第9号証の12および甲第11号証に記載された発明のいずれとも同一ではないのであるから、さらに限定した発明に該当する本件発明2、5?7、9も、甲第9号証の11、甲第9号証の12および甲第11号証に記載された発明のいずれとも同一ではないことは明らかである。

8-3.まとめ
以上において検討したように、甲第9号証の1?甲第9号証の10、甲第10号証の1、甲第10号証の2は、いずれも、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとはいえないものである。また、本願発明1?9は、いずれも、甲第9号証の11、甲第9号証の12および甲第11号証に記載された発明とはいえない。
よって、本件発明1?9は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

9.職権による審理の理由4
本件発明1?9が、甲第9号証の1?甲第11号証に基づいて、特許法第29条第2項に該当するかについて検討する。

9-1.甲第9号証の1ないし甲第11号証
甲第9号証の1?甲第11号証が本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものに該当するか、また、本件特許に係る出願前に日本国又は外国において頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものに該当するか不明の場合の記載された発明は、前記「8-1.甲第9号証の1ないし甲第11号証」に記載したとおりである。

9-2.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定する工程を必須の要件としている。
しかし、すでに「8-2-1.本件発明1について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定することが甲第9号証の1?甲第11号証に記載されていたとはいえない。また、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」正常卵を判定することが、当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。そして、他に、正常卵を判定する際に、「一定の太さ以上の血管の総血管長に基づいて」行うことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明1は、本件出願前に、甲第9号証の1?甲第11号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明3について
本件発明3は、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行う工程を必須の要件としている。
しかし、すでに、「8-2-2.本件発明3について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが甲第9号証の1?甲第11号証に記載されていたとはいえない。また、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。そして、他に、R成分をモノクロ画像化した第一の画像およびG成分をモノクロ画像化した第二の画像の両方に存在する領域を検査領域とし、検査領域の面積に基づいて判定を行うことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明3は、本件出願前に甲第9号証の1?甲第11号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明4について
本件発明4は、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定する工程を必須の要件としている。
しかし、すでに、「8-2-3.本件発明4について」において検討したとおり、本件特許に係る出願前に「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定することが甲第9号証の1?甲第11号証に記載されていたとはいえない。また、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことにより正常卵を判定することが当業者にとって周知であったとも、自明であったともいえない。そして、他に、正常卵を判定する際に、「気室境界付近の濃度分布情報を把握し、それに基づいて気室境界付近の出血の有無を検出する」ことが、本件特許に係る出願前に当業者に知られていたことを示唆する証拠もない。
したがって、本件発明4は、本件出願前に甲第9号証の1?甲第11号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(4)本件発明8について
本件発明8は、「請求項1ないし7のいずれか一項に記載の有精卵の検査法を実現するための非破壊検査装置」であり、「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」を必須の構成要素としている。
してみると、本件発明8の「撮像したカラー画像を用いて正常卵判定を行う処理部」は、本件発明1、3、4に記載された検査法のいずれかを実施するものであるが、前記(1)?(3)において、すでに検討したとおり、本件発明1、3、4は、本件出願前に甲第9号証の1?甲第11号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、本件発明8も同様に、本件出願前に甲第9号証の1?甲第11号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものである。

(5)本件発明2、5?7、9について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明に該当する。また、本件発明5?7は、本件発明1、3、4の何れかを限定した発明に該当する。さらに、本件発明9は、本件発明8を限定した発明に該当する。
したがって、限定を省いた発明に相当する本件発明1、3、4、8は、前記(1)?(4)において検討したとおり、甲第9号証の1?甲第11号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、さらに限定した発明に該当する本件発明2、5?7、9も、甲第9号証の1?甲第11号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

9-3.まとめ
以上より、本件発明1?9は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由および証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。また、他に本件特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
審理終結日 2009-06-11 
結審通知日 2009-06-18 
審決日 2009-06-30 
出願番号 特願2002-259297(P2002-259297)
審決分類 P 1 113・ 113- Y (G01N)
P 1 113・ 112- Y (G01N)
P 1 113・ 152- Y (G01N)
P 1 113・ 121- Y (G01N)
P 1 113・ 111- Y (G01N)
P 1 113・ 55- Y (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 岡田 孝博
宮澤 浩
登録日 2007-08-17 
登録番号 特許第3998184号(P3998184)
発明の名称 有精卵の検査法および装置  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 唐木 浄治  
代理人 須藤 阿佐子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ