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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1215960
審判番号 不服2009-8219  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-16 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 特願2006-158099「情報表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月 7日出願公開,特開2006-331431〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は,平成7年1月10日に出願した特願7-1602号の一部を平成18年6月7日に新たな特許出願としたものであって,平成21年3月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年4月16日に拒絶査定不服審判が請求され,その後同年5月15日付けで手続補正がなされたものである。


第2 平成21年5月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成21年5月15日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[補正却下の決定の理由]

(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の記載は,平成21年1月21日付け手続補正書に記載された,次のとおりである。

「【請求項1】
テキスト,画像,および音声が組み合わされ,ジャンルが付属されたデータを伝送路を介して受信装置で受信し,前記受信装置で受信した前記データを記録媒体に記録し,前記記録媒体に記録した前記データを表示装置に表示する情報表示方法であって,
入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,前記記録媒体に記録したデータに付属された前記ジャンルを指定する第1の指定ステップと,
第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定されたとき,指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを前記表示装置に一覧表示する第1の表示ステップと,
第1の指定ステップにおいて指定された前記ジャンルに属する前記データの見出しが第1の表示ステップにより一覧表示されている状態において,入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,個別の前記データを指定する第2の指定ステップと,
第2の指定ステップにおいて指定された前記データに関するサマリー記事を前記表示装置に表示する第2の表示ステップと
を有することを特徴とする情報表示方法。
【請求項2】
前記ジャンルは,トップ,総合,解説,政治,国際,経済,商況,家庭,ラジオ,スポーツ,地域,社会,テレビ,特集,天気,お知らせ,読書である
ことを特徴とする請求項1に記載の情報表示方法。」

(2)本件補正後の請求項1
本件補正後の請求項1の記載は,次のとおりである。

「テキスト,画像,および音声が組み合わされ,ジャンルが付属されたデータを伝送路を介して受信装置で受信し,前記受信装置で受信した前記データを記録媒体に記録し,前記記録媒体に記録した前記データを表示装置に表示する情報表示方法であって,
入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,前記記録媒体に記録したデータに付属された前記ジャンルを指定する第1の指定ステップと,
第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定された場合,前記データの見出しの表示が指示されたとき,前記第1の指定ステップにおいて予め指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを前記表示装置に一覧表示する第1の表示ステップと,
第1の指定ステップにおいて指定された前記ジャンルに属する前記データの見出しが第1の表示ステップにより一覧表示されている状態において,入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,個別の前記データを指定する第2の指定ステップと,
第2の指定ステップにおいて指定された前記データに関するサマリー記事を前記表示装置に表示する第2の表示ステップと
を有することを特徴とする情報表示方法。」

(3)本件補正の適否
本件補正は,平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第1項第5号の規定に基づきされたものと認められ,当該規定については,同条第3項本文により同項各号に掲げる事項を目的とするものに限られる。

そして,本件補正について請求人は,平成21年5月15日付けで手続補正がなされた審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】(2)補正の根拠の明示」において,「請求項1の補正事項は,出願当初の明細書の記載,特に番号65乃至番号76,および番号104乃至番号107の段落の記載に基づくものである。この特許請求の範囲についてする補正は,第1の表示ステップの処理内容を限定するものであり,特許請求の範囲の限定的限縮を目的とするものである。」と主張し,また,平成22年1月26日付け回答書の「【回答の内容】(2)特許法第17条の2第3項の規定に違反するとの指摘について」において,「この補正(当審注:審判請求後の平成21年5月15日付け手続補正)は,ジャンルが指定され,見出しが表示される処理に,見出しの表示が指示されたときに,見出しが表示されるという限定を加えるものであり,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定することに該当する。」と主張している。

そこで,初めに,本件補正が,上記改正前の特許法第17条の2第3項第2号に掲げられた,「特許請求の範囲の減縮(前号に規定する一の請求項に記載された発明(第一項第四号又は第五号の規定による補正前のものに限る。以下この号において「補正前発明」という。)と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において,その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものに限る。)」を目的とするものに該当するか否かについて検討する。

本件補正は,補正前の請求項1に記載された「第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定されたとき,指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを前記表示装置に一覧表示する第1の表示ステップ」を,「第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定された場合,前記データの見出しの表示が指示されたとき,前記第1の指定ステップにおいて予め指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを前記表示装置に一覧表示する第1の表示ステップ」に変更するものである。

補正前の請求項1に記載された「第1の表示ステップ」は,「第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定された」ことを表示条件として特定し,「第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定されたとき」を表示タイミングとして特定し,「指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出し」を表示対象として特定し,「前記表示装置に一覧表示する」ことを表示態様として特定するものと解され,本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0099】,【0106】,及び【0115】に記載された内容と対応する。
また,「第1の表示ステップ」で表示される見出しは,後続する「第2の指定ステップ」で利用されるから,「第1の表示ステップ」により特定される前記表示条件,表示タイミング,表示対象,及び表示態様は,すべて補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項である。

一方,補正後の請求項1に記載された「第1の表示ステップ」は,「第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定された」こと及び「前記データの見出しの表示が指示された」ことを表示条件として特定し,「前記データの見出しの表示が指示されたとき」を表示タイミングとして特定し,「前記第1の指定ステップにおいて予め指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出し」を表示対象として特定し,「前記表示装置に一覧表示する」ことを表示態様として特定するものと解される。
また,請求人が補正の根拠であるとする,願書に最初に添付された明細書には,「ジャンル登録処理を行った後…情報の再生を指令すると…最初に…図9に示すようなメニュー画面を…表示する」(段落【0071】),「図9に示す画面に表示されているボタンアイコンのいずれかが操作されるまで待機し,「おこのみコース」のボタンアイコンと,その再生時間を指定する…ボタンアイコンが選択されると…自動再生処理が実行され…「おすすめコース」のボタンアイコンと…再生時間を選択するボタンアイコンが選択された場合…しおり再生が実行される。」(段落【0073】),「自動再生処理の詳細について説明する。最初に…予め登録したジャンルのうち,最初のジャンルの見出し画面が表示される。」(段落【0075】),「しおり再生処理の詳細について説明する。最初に…所定のジャンルの最初の見出し画面が表示される。」(段落【0104】)などと記載されている。
よって,補正後の請求項1に記載された発明では,ジャンルが指定されたときに見出しは表示されず,その後見出しの表示が指示されたとき,見出しが表示されるものと解される。

そして,補正前の請求項1に記載された「第1の表示ステップ」が特定する内容と,補正後の請求項1に記載された「第1の表示ステップ」が特定する内容とを比較すると,補正後の「第1の表示ステップ」が特定する表示対象及び表示態様は,それぞれ補正前の「第1の表示ステップ」が特定する表示対象及び表示態様に相当するといえる。
また,補正後の「第1の表示ステップ」が特定する表示条件は,補正前の「第1の表示ステップ」が特定する表示条件に対して,「前記データの見出しの表示が指示された」ことを直列的に付加するものであるから,補正前の表示条件を限定するものといえる。
しかしながら,補正後の「第1の表示ステップ」が特定する表示タイミングは,補正前の「第1の表示ステップ」が特定する表示タイミングに相当するものでなく,また,補正前の「第1の表示ステップ」が特定する表示タイミングを限定するものでもない。

したがって,補正後の請求項1に記載された「第1の表示ステップ」は,補正前の請求項1に記載された「第1の表示ステップ」を限定する部分を含むものの,全体としては補正前の請求項1に記載された「第1の表示ステップ」を限定するものではないから,本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものではない。

また,同じ理由により,本件補正は,補正前の請求項1の記載を引用する,補正前の請求項2に記載された発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものではない。

以上のとおり,本件補正後の請求項1に記載された内容は,本件補正前の請求項1?2のいずれをも限定したものでないから,本件補正は,上記改正前の特許法第17条の2第3項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。


次に,本件補正が,請求項の削除(同項第1号),誤記の訂正(同項第3号),または明りようでない記載の釈明(同項第4号),のいずれをも目的としたものでないことは明らかである。


したがって,本件補正は,平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

平成21年5月15日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年1月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

「テキスト,画像,および音声が組み合わされ,ジャンルが付属されたデータを伝送路を介して受信装置で受信し,前記受信装置で受信した前記データを記録媒体に記録し,前記記録媒体に記録した前記データを表示装置に表示する情報表示方法であって,
入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,前記記録媒体に記録したデータに付属された前記ジャンルを指定する第1の指定ステップと,
第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定されたとき,指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを前記表示装置に一覧表示する第1の表示ステップと,
第1の指定ステップにおいて指定された前記ジャンルに属する前記データの見出しが第1の表示ステップにより一覧表示されている状態において,入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,個別の前記データを指定する第2の指定ステップと,
第2の指定ステップにおいて指定された前記データに関するサマリー記事を前記表示装置に表示する第2の表示ステップと
を有することを特徴とする情報表示方法。」


第4 刊行物

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に頒布された特開平6-311119号公報(平成6年11月4日公開。以下「刊行物1」という。)には,図面とともに以下のような記載がある。

(ア)「本発明は,例えば,新聞,雑誌,書籍など,毎日,あるいは定期的に配達,販売される,テキスト(文字)を中心とした情報を,衛星を用いて電子的に配信する場合に用いて好適なデータ放送システムに関する。」(段落【0001】)

(イ)「【実施例】図1は,本発明のデータ放送システムの構成例を示している。情報提供者としての新聞社は,大型計算機1を有している。この大型計算機1には,紙面データベースが蓄えられている。この紙面データベースには,新聞に印刷するための記事情報や,レイアウト情報などを含んでいる。このデータベースのデータは,必要に応じてワークステーション2に伝送され,そこにおいて編集される。
【0012】即ち,各紙面(ジャンル)毎に,受信側において最も検索し易い形に記事データを編集する。例えば,この編集により,レイアウトはそのままで,見出しだけが見える形で紙面がそのまま縮小された検索のための画面を作成する。さらにまた,この見出しから,それに対応する記事を表示することができるように,検索の画面(見出し)と,その詳細を記述した記事との関係付けが行われる。このように,受信側で検索し易い形態に編集したデータが,地上のデータ回線を介して放送センタ(放送局)3に伝送される。
【0013】放送センタ3は,例えば図2に示すような送信装置を有している。即ち,新聞社から伝送されくるデータは,新聞データ,スクランブルキー,共通情報,受信装置ID,および契約内容などのデータとなされている。」(段落【0011】?【0013】)

(ウ)「独立データチャンネル多重化回路12は,データスクランブラ14より供給されるスクランブルされた新聞データと,暗号化回路11より供給される関連情報とを多重化し,ディジタルチャンネル信号多重化回路15に出力する。
【0016】以上の構成が,図4を参照して後述する独立データチャンネルにおけるデータを生成するためのエンコーダ25を構成している。
【0017】ディジタルチャンネル信号多重化回路15にはまた,図3を参照して後述する,ディジタルチャンルネル信号として伝送される音声信号(少なくともその一部は,後述する映像信号に付随する音声信号である)が入力される。ディジタルチャンネル信号多重化回路15は,入力される音声信号(ディジタル音声信号)と,エンコーダ25より供給されるデータとを多重化し,4相DPSK変調器16に供給する。」(段落【0015】?【0017】)

(エ)「映像信号/ディジタルチャンネル信号多重化回路17は,入力される映像信号と,4相DPSK変調器16より供給される信号とを周波数多重化し,FM変調器18に出力する。FM変調器18は,入力された信号で所定のキャリアをFM変調し,アップコンバータ19に出力する。アップコンバータ19は,入力されたFM信号の周波数をギガヘルツのオーダの周波数に周波数変換する。アップコンバータ19より出力されたFM信号は,電力増幅器20により電力増幅された後,送信アンテナ21に供給され,そこから衛星(放送衛星または通信衛星)4(図1)に送出される。」(段落【0019】)

(オ)「この図4に示す独立データチャンネルのデータは,パケットを単位としてデータが伝送される。」(段落【0033】)

(カ)「図11は,パケットのより詳細なフォーマットを表してる。同図に示すように,288ビットよりなるパケットは,その最初の16ビットがヘッダとされ,そこに関連情報や新聞データなどの識別データ(図6におけるサービス識別データ)が配置される。ヘッダに続く190ビットには,関連情報あるいは新聞データが配置され,最後の82ビットに誤り訂正符号が配置される。」(段落【0039】)

(キ)「一方,新聞データは,検索紙面のデータと記事紙面のデータとに区分される。検索紙面のデータは,その最初にスタートコードが割り当てられている(検索紙面a)。このスタートコードは,例えば新聞Aの新聞データが,ここから開始されることを表すものである。スタートコードの次には,新聞データ識別子が配置されている。この新聞データ識別子は,新聞社A,B,C,・・・のいずれの新聞社のデータであるのかを識別するためのコードである。この新聞データ識別子の次には,検索紙面と記事紙面とを識別するための種類識別コードが割り当てられている。さらに,その次には,紙面識別データが割り当てられている。この紙面識別データは,例えば政治面,経済面,スポーツ面などの紙面(ジャンル)を識別するものである。
【0046】紙面識別データの次には,見出し文が配置され,さらにその次に,その見出し文の文字サイズとフォント,さらにその位置データがそれぞれ配置される。また,位置データの次には,その見出し文が縦書きであるのか,横書きであるのかを表すレイアウトデータが配置されている。そして,さらにその次には,見出し文に対応する詳細な記事が記載されている位置へアクセスするためのポインタが配置されている。
【0047】以上の検索紙面aは,最初のパケットのフォーマットであるが,2番目以降のパケットにおいては,検索紙面bに示すようなフォーマットでよい。即ち,このパケットにおいては,スタートコードと新聞データ識別子が省略されたものとなっている。
【0048】一方,新聞データのうちの記事紙面は,その先頭に種類識別データが配置され,その次にレイアウトが配置されている(記事紙面a)。レイアウトの次には概要,そして,それに続いて詳細な記事の内容を表す記事データが配置されている。概要あるいは記事データが長く,1パケット内に収容しきれない場合においては,上述した記事紙面aに続いて,記事紙面bに示すパケットが必要に応じて付加される。そして,記事データの終了位置には,エンドコードが付加される。
【0049】図12は,検索紙面と記事紙面を模式的に表している。検索紙面は,図12(a)に示すように,見出しだけが見えるように表示される。これに対して,記事紙面は,同図(b)に示すように,見出しだけでなく,それに続いて概要,さらに詳細な記事が見えるように表示される。契約者は必要に応じて検索紙面の所定の見出しを,例えばマウスなどによりクリックすることにより,それを選択すると,その見出しに対応する概要と記事が,図12(b)に示すように表示されるようになされている。
【0050】図13は,検索紙面と記事紙面の各パケットの全体の配置を表している。同図に示すように,記事紙面のパケットに先行して,検索紙面のパケットが配置されており,各検索紙面のパケットには,対応する記事紙面へアクセスすることを可能とするためのポインタが配置されている。
【0051】以上のようなデータが,図1における放送センタ3から衛星4に伝送され,衛星4から,さらに例えば各家庭における受信者(契約者)に伝送される。各家庭においては,室外装置5により受信された信号が,所定の中間周波信号(IF信号)に変換される。このIF信号は,データ受信装置6に入力される。データ受信装置6により受信されたデータは,そこにおいて復調され,記録装置7に供給されて,例えばミニディスク(商標)8などの記録媒体に記録される。使用者は,このミニディスク8を,例えばポータブル端末器9に装着し,受信したデータを検索紙面から検索し,必要な記事紙面を表示させることができる。あるいはまた,記録装置7に記録したデータを読み出して,必要に応じてテレビジョン受像機10に出力し,表示させることができる。
【0052】図14は,データ受信装置6の構成例を示している。」(段落【0045】?【0052】)

(ク)「デコーダ33は,契約した新聞データが含まれるパケット位置のデータをデコードする。処理回路35は,デコーダ33がデコードしたデータを,記録装置7の記録媒体駆動回路41を介して記録媒体42に供給し,記録させる。この記録媒体42は,例えばハードディスクにより構成される。あるいはまた,処理回路35は,例えばミニディスク8により構成される記録媒体に,記録媒体駆動回路43を介してデコーダ33の出力を記録させる。
【0055】処理回路35は,所定の指令が入力されたとき,記録媒体42またはミニディスク8に記録されたデータを再生させ,ビデオ回路38に供給し,ビデオ信号に変換させる。ビデオ回路38より出力された信号は,テレビジョン受像機10に出力され,表示される。あるいはまた,図1を参照して説明したように,新聞データが記録されたミニディスク8を,ポータブル端末器9に装着することにより,ポータブル端末器9において新聞記事を見ることができる。
【0056】この場合,図12を参照して説明したように,新聞データは,検索紙面と記事紙面とにより構成されるので,最初に検索紙面(図12(a))を表示させ,見出しを見て,必要な見出しを選択することにより,それに対応する記事紙面(図12(b))を表示させることができる。」(段落【0054】?【0056】)

(ケ)「以上,本発明を新聞データを伝送する場合を例として説明したが,雑誌,書籍,その他のキャラクタデータを伝送する場合に,本発明は応用することが可能である。さらにまた,キャラクタデータ以外に,イメージデータや音声データを同時に伝送することも可能である。」(段落【0066】)


これらの記載から,刊行物1には,次の発明(以下,「刊行物1記載発明」という。)が記載されている。

「テキスト(文字)を中心とした情報を配信するデータ放送システムであって,
新聞社では,各紙面(ジャンル)毎に,受信側において最も検索し易い形に記事データを編集し,レイアウトはそのままで,見出しだけが見える形で紙面がそのまま縮小された検索のための画面を作成し,この見出しから,それに対応する記事を表示することができるように,検索の画面(見出し)と,その詳細を記述した記事との関係付けが行われ,このように,受信側で検索し易い形態に編集したデータが,放送センタに伝送され,
放送センタでは,送信装置が,新聞データと関連情報とを多重化して独立データチャンネルにおけるデータを生成し,さらに,音声信号と映像信号を多重化した信号を衛星に送出し,
新聞データは,検索紙面のデータと記事紙面のデータとに区分され,
検索紙面のデータは,政治面,経済面,スポーツ面などの紙面(ジャンル)を識別する紙面識別データと,見出し文と,見出し文に対応する詳細な記事が記載されている位置へアクセスするためのポインタが配置されており,
一方,新聞データのうちの記事紙面は,概要と,それに続いて詳細な記事の内容を表す記事データが配置されており,
放送センタから衛星に伝送されたデータは,さらに各家庭における契約者に伝送され,各家庭において,データ受信装置により受信されたデータは,記録装置の記録媒体に記録され,データ受信装置の処理回路は,所定の指令が入力されたとき,記録媒体に記録されたデータを再生させ,ビデオ信号に変換された信号をテレビジョン受像機に出力して表示させ,
この場合,最初に見出しだけが見えるように検索紙面を表示させ,契約者は必要に応じて検索紙面の所定の見出しを,マウスによりクリックして選択することにより,それに対応する記事紙面を表示させることができる,
データ放送システム。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に頒布された刊行物である,妹尾宏,外3名,“高機能テレテキスト(PRESENT)の伝送法の一検討”,テレビジョン学会技術報告,社団法人テレビジョン学会,1992年10月29日,第16巻,第71号,p.1?6(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに以下のような記載がある。

(コ)「マルチメディア化の利点は,メディアを自由に組み合わせて効果的な情報の提示ができる点が挙げられる。データ放送においても文字情報,幾何学図形,静止画などのメディアを自由に組み合わせることができる柔軟性と,更に新しいメディアを追加できる拡張性を考慮し,マルチメディアを利用した効果的な番組を提供していく必要がある。
以上の機能を実現するために検討している放送サービスが高機能テレテキストである。」(第2ページ左欄第24?33行)

(サ)「検索のためには,例えば,「夕イトル表」や「ジャンル表」や「キーワード表」をディスプレイ上に表示し,各表からカーソルの移動やマウスなどによる簡単なポインティン操作で番組やキーワードを選択できるようにする。
このような受信機利用形態を想定したうえで,図1に示すように,「メニュー表」や「キーワード表」などのインデックスデータを利用して番組を簡単に選択する方法を検討した。
放送局側では,各番組に「番組番号」,「ジャンル番号」,「キーワード」および「関連番組番号」を付し,さらに「タイトル」を付して番組データを制作する。「夕イトル」は番組内容を短い見出し語で表したものである。「ジャンル番号」は政治・経済などのジャンル番号を表したものである。」(第2ページ右欄第24?40行)

(シ)「受信側ではインデックスデータを利用して,簡単に,しかも多彩な方法で番組を選択できる。受動的に番組を見たい場合は「メニュー表」や「夕イトル表」を利用する。能動的に番組を見たい場合は,「ジャンル表」からジャンルを選択したり,さらに,「経済」のジャンルの番組から「株価暴落」というキーワードを含む番組だけを選択することもできる。」(第3ページ左欄第11?18行)

(ス)「Fig.1」には,「Program selection using index data(訳:インデックスデータを用いた番組選択)」として,「受信者側」と記載された矩形の下であって,「ジャンルを利用した選択」という文字列の下の位置に,2つの矩形が横並びに記載されており,左側の矩形の中には,「大ジャンル表」と「政治小ジャンル表」の文字列が記載され,さらに,「大ジャンル表」の下には,「政治 経済 社会 国際」などと記載され,また「政治小ジャンル表」の下には,「政治一般 外交 行政 国会 財政」などと記載されており,右側の矩形の中には,「国会に関するニュースは10件」という文字列の下に,「1 宮沢首相国会での…」,「2 社会党田辺委員長「PKO…」などと記載されている。


第5 対比

本願発明と刊行物1記載発明とを対比する。

刊行物1記載発明において,概要と記事データを含む記事紙面のデータは,少なくともテキストを含むことは明らかであり,また,ジャンルを識別する紙面識別データを含む検索紙面のデータとポインタにより対応付けられているから,刊行物1記載発明の「記事紙面のデータ」は,本願発明の「テキスト,画像,および音声が組み合わされ,ジャンルが付属されたデータ」と,「テキスト」を含み,「ジャンルが付属されたデータ」である点において一致する。

刊行物1記載発明の「記録媒体」及び「テレビジョン受像機」は,それぞれ本願発明の「記録媒体」及び「表示装置」に相当し,刊行物1記載発明において,記事紙面のデータを含む新聞データと他のデータを多重化したデータが,放送センタから衛星を介して各家庭に伝送され,各家庭において,データ受信装置により受信されたデータを記録媒体に記録し,所定の指令が入力されたとき再生してテレビジョン受像機に表示させることは,本願発明の「データを伝送路を介して受信装置で受信し,前記受信装置で受信した前記データを記録媒体に記録し,前記記録媒体に記録した前記データを表示装置に表示する」ことに相当する。

刊行物1記載発明の「見出し」は,それに対応する記事紙面を表示するためのものであるから,本願発明の「前記データの見出し」に相当し,刊行物1記載発明において,見出しが見えるように検索紙面を表示することは,本願発明の「第1の表示ステップ」と,「データの見出しを前記表示装置に」「表示する」点において一致する。

刊行物1記載発明では,データ受信装置の処理回路は,所定の指令が入力されたとき,記録媒体に記録されたデータを再生させてテレビジョン受像機に表示させ,この場合,最初に見出しだけが見えるように検索紙面を表示させ,契約者が所定の見出しをマウスによりクリックして選択すると,それに対応する記事紙面を表示させるから,刊行物1記載発明は,本願発明の「第2の指定ステップ」と,「データの見出しが第1の表示ステップにより」「表示されている状態において,入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,個別の前記データを指定する」点において,共通する処理を行うものといえる。

刊行物1記載発明の記事紙面に含まれる「概要」は,本願発明の「サマリー記事」に相当するから,契約者が検索紙面の所定の見出しをマウスによりクリックして選択すると,それに対応する記事紙面を表示させる刊行物1記載発明は,本願発明の「第2の指定ステップにおいて指定された前記データに関するサマリー記事を前記表示装置に表示する第2の表示ステップ」に相当する処理を行うものといえる。

そして,刊行物1記載発明は「情報表示方法」に関するものであるから,本願発明と刊行物1記載発明は,以下の点において一致ないし相違する。

<一致点>
「テキストを含みジャンルが付属されたデータを伝送路を介して受信装置で受信し,前記受信装置で受信した前記データを記録媒体に記録し,前記記録媒体に記録した前記データを表示装置に表示する情報表示方法であって,
データの見出しを前記表示装置に表示する第1の表示ステップと,
データの見出しが第1の表示ステップにより表示されている状態において,入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,個別の前記データを指定する第2の指定ステップと,
第2の指定ステップにおいて指定された前記データに関するサマリー記事を前記表示装置に表示する第2の表示ステップと
を有することを特徴とする情報表示方法。」である点。

<相違点1>
テキストを含みジャンルが付属されたデータについて,本願発明では「画像,および音声が組み合わされ」ているのに対して,刊行物1記載発明では「画像,および音声が組み合わされ」ているとは記載されていない点。

<相違点2>
本願発明は,「入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,前記記録媒体に記録したデータに付属された前記ジャンルを指定する第1の指定ステップ」を有し,本願発明の第1の表示ステップでは「第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定されたとき,指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを前記表示装置に一覧表示する」のに対して,刊行物1記載発明では,本願発明の「第1の指定ステップ」の処理を行うとは記載されておらず,また第1の表示ステップについて,「第1の指定ステップにおいて指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを一覧表示する」とは記載されていない点。


第6 当審の判断

上記各相違点について検討する。

<相違点1について>
一般に,印刷される新聞の紙面はテキスト(文字)と画像を組み合わせて構成されていること,刊行物1に「雑誌,書籍,その他のキャラクタデータを伝送する場合に,本発明は応用することが可能である。さらにまた,キャラクタデータ以外に,イメージデータや音声データを同時に伝送することも可能である。」(上記「第4 刊行物 (1)刊行物1 (ケ)」を参照。)と記載されていること,刊行物1と同じく,文字データと文字以外のデータを組み合わせて放送するデータ放送の技術に関する刊行物2に「データ放送においても文字情報,幾何学図形,静止画などのメディアを自由に組み合わせることができる柔軟性と,更に新しいメディアを追加できる拡張性を考慮し,マルチメディアを利用した効果的な番組を提供していく必要がある。」(上記「第4 刊行物 (2)刊行物2 (コ)」を参照。)と記載されていること,を考慮すれば,刊行物1記載発明において,テキストを含みジャンルが付属されたデータを「画像,および音声が組み合わされ」たものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
刊行物2には,ディスプレイ上にジャンル表を表示し,カーソルの移動やマウスなどによるポインティング操作で番組を選択することが記載されており,また,「Fig.1」に記載された「1 宮沢首相国会での…」,「2 社会党田辺委員長「PKO…」などの文字列は,大ジャンル「政治」に含まれる小ジャンル「国会」に該当するニュースの見出しとしてディスプレイ上に表示されるものと解されるから,刊行物2には,ユーザによりジャンルが指定されると,そのジャンルに関するニュースの見出しを一覧表示することが開示されているといえる。(この点は,平成22年1月26日付け回答書の「【回答の内容】 (3)請求項に記載の発明が独立して特許を受けることができないとの指摘について(ii)引用例の説明」において,請求人も認めている。)
一方,刊行物1記載発明の検索紙面のデータは紙面(ジャンル)を識別するための紙面識別データを含み,受信側において検索し易い形に編集されているから,刊行物1記載発明の処理回路は,検索紙面を表示させる際に,記録媒体に記録された検索紙面の中から選択された検索紙面を表示するものと解され,ここで検索紙面の選択は,検索紙面における見出しの選択と同様の操作(マウスのクリック)に応じて行うようにすることが自然であるから,刊行物1記載発明において,「入力装置へのユーザの操作に応じて前記受信装置の処理回路によって,前記記録媒体に記録したデータに付属された前記ジャンルを指定する第1の指定ステップ」の処理を設け,第1の表示ステップでは「第1の指定ステップにおいて前記ジャンルが指定されたとき,指定された前記ジャンルに該当する前記データの見出しを前記表示装置に一覧表示する」ようにすることは,刊行物1と同じく,文字データと文字以外のデータを組み合わせて放送するデータ放送の技術に関する刊行物2に記載された技術に基づいて,当業者が容易になし得たことである。


そして,本願発明のように構成したことによる効果も,刊行物1記載発明,刊行物2に記載された技術,及び周知技術から予測できる程度のものである。


第7 むすび

以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載発明,刊行物2に記載された技術,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-05 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願2006-158099(P2006-158099)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 圓道 浩史
清水 稔
発明の名称 情報表示方法  
代理人 稲本 義雄  
代理人 稲本 義雄  

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