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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1216096
審判番号 不服2007-33285  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-10 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 特願2004-542529「通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法とシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日国際公開、WO2004/034713、平成18年 1月19日国内公表、特表2006-502639〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2003年10月8日(パリ条約による優先権主張 2002年10月9日 (EP)欧州特許庁)の出願であって、平成19年4月9日付けで手続補正がなされたが、同年9月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年12月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
上記手続補正は、平成19年4月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、15、21、24、30に記載された、

「【請求項1】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法であって、
前記第1のユーザ装置を利用して仮想識別子を要求するステップ(200)と、
前記第1のユーザ装置と前記サービス網のうちの少なくとも1つで、前記第1のユーザ装置のために前記仮想識別子を確立するステップ(202)と、
前記第1のユーザ装置の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置の前記第1の固有識別子とリンクさせるステップ(202)と、
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信のために、該第1のユーザ装置の前記仮想識別子を利用するステップと、
を特徴とする方法。
【請求項15】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置(100)と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網(112)とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すシステムにおいて、
前記第1のユーザ装置(100)を利用して仮想識別子を要求し、
前記第1のユーザ装置(100)と前記サービス網(112)のうちの少なくとも1つで、該第1のユーザ装置(100)のために前記仮想識別子を確立し、
前記第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクさせ、
前記第1のユーザ装置(100)と前記第2のユーザ装置(102)の間の通信のために該第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を利用するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
第1の固有識別子を有するユーザ装置であって、サービス網(112)を介して第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と通信する前記ユーザ装置(100)において、
前記ユーザ装置(100)と前記サービス網(112)のうちの少なくとも1つで、該ユーザ装置(100)のために仮想識別子を確立し、
前記ユーザ装置(100)の前記仮想識別子を、該第ユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクさせ、
前記ユーザ装置(100)と前記第2のユーザ装置(102)の間の通信のために該ユーザ装置(100)の前記仮想識別子を利用するように構成されていることを特徴とするユーザ装置。
【請求項24】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置(100)と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置を接続するサービス網(112)とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すサービスを提供する方法であって、
前記第1のユーザ装置(100)と前記サービス網(112)のうちの少なくとも1つで、該第1のユーザ装置(100)のために仮想識別子を確立し、
前記第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクさせ、
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置(100、102)の間の通信のために、該第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を利用することを特徴とする方法。
【請求項30】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置(100)と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置を接続するサービス網(112)とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すサービスを提供する方法であって、
前記第1のユーザ装置(100)と前記サービス網(112)のうちの少なくとも1つで、該第1のユーザ装置のために確立され且つ該第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクされた仮想識別子が、該第1のユーザ装置への接続を確立するために前記第2のユーザ装置によって使用される場合に、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置の間の接続を確立することを特徴とする方法。」

という発明を、補正後の請求項1、2、3、4、5として

「【請求項1】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法であって、
前記第1のユーザ装置を利用して仮想識別子を要求するステップ(200)と、
前記第1のユーザ装置で、前記第1のユーザ装置のために前記仮想識別子を確立するステップ(202)と、
前記第1のユーザ装置の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置の前記第1の固有識別子とリンクさせるステップ(202)と、
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信のために、該第1のユーザ装置の前記仮想識別子を利用するステップと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置(100)と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網(112)とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すシステムにおいて、
前記第1のユーザ装置(100)を利用して仮想識別子を要求し、
前記第1のユーザ装置(100)で、該第1のユーザ装置(100)のために前記仮想識別子を確立し、
前記第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクさせ、
前記第1のユーザ装置(100)と前記第2のユーザ装置(102)の間の通信のために該第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を利用するように構成されていることを特徴とす
るシステム。
【請求項3】
第1の固有識別子を有するユーザ装置であって、サービス網(112)を介して第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と通信する前記ユーザ装置(100)において、
前記ユーザ装置(100)で、該ユーザ装置(100)のために仮想識別子を確立し、
前記ユーザ装置(100)の前記仮想識別子を、該第ユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクさせ、
前記ユーザ装置(100)と前記第2のユーザ装置(102)の間の通信のために該ユーザ装置(100)の前記仮想識別子を利用するように構成されていることを特徴とするユーザ装置。
【請求項4】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置(100)と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置を接続するサービス網(112)とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すサービスを提供する方法であって、
前記第1のユーザ装置(100)で、該第1のユーザ装置(100)のために仮想識別子を確立し、
前記第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクさせ、
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置(100、102)の間の通信のために、該第1のユーザ装置(100)の前記仮想識別子を利用することを特徴とする方法。
【請求項5】
第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置(100)と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置(102)と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置を接続するサービス網(112)とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠すサービスを提供する方法であって、
前記第1のユーザ装置(100)で、該第1のユーザ装置のために確立され且つ該第1のユーザ装置(100)の前記第1の固有識別子とリンクされた仮想識別子が、該第1のユーザ装置への接続を確立するために前記第2のユーザ装置によって使用される場合に、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置の間の接続を確立することを特徴とする方法。」

という発明に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の請求項1の「前記第1のユーザ装置と前記サービス網のうちの少なくとも1つで」という記載を、補正後の請求項1において「前記第1のユーザ装置で」として、選択肢を削除して限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、補正前の請求項15、21、24、30における「前記第1のユーザ装置(100)と前記サービス網(112)のうちの少なくとも1つで」という記載を、補正後の請求項2、3、4、5で「前記第1のユーザ装置(100)で」とする補正も、上記の請求項1の補正と実質的に同じである。
よって上記補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(ア)補正後の発明
本願の補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正後の発明」という)は、上記「1.補正の内容」の項に記載した、平成19年12月10日付け手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

(イ)引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開平11-355440号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項(A)?(C)が記載されている。

(A)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話番号一時的使用装置及び方法に関し、特に、加入者端末が自己に割り当られている電話番号以外の電話番号を使用して一時的に通話を行うことを実現する電話番号一時的使用装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ある加入者が、自分の電話番号を教えたくない相手から、必要上どうしても電話連絡をして貰わねばならない場合、例えば、個人売買、サークル勧誘、紛失物の捜索願等のような公開の伝言板に自分の連絡先を掲示する必要がある場合や、自分の電話をある人の連絡先として一時的に貸す場合において、当該加入者は、電話に新規に加入して別の電話番号を取得するか、あるいは本来の自分の電話番号を相手に知らせるか、の2つの方法しかなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、電話に新規に加入して別の電話番号を取得する場合、加入料金が高く、また、依頼してから実際に登録されるまでや、不要になって登録解除になるまでに時間がかかるという問題点があった。
【0004】本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、加入料金を必要とせず、別の電話番号を一時的に使用することが迅速にできる電話番号一時的使用装置及び方法を提供することを目的とする。」(段落【0001】?【0004】)

(B)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、第1の実施の形態における原理構成を、図1を参照して説明する。第1の実施の形態は、第1の加入者端末61aが、一時的に使用できる電話番号である仮想電番の割り当てを要求してきたときに、第1の加入者端末61aに仮想電番を割り当てて通知する仮想電番通知手段11aと、第1の加入者端末61aに割り当てられた仮想電番を、第1の加入者端末61aの接続情報と対応づけて登録する仮想電番登録手段12aと、 第2の加入者端末64aから仮想電番により発呼要求を受けると、仮想電番登録手段12aを参照して、要求された仮想電番に対応する接続情報を読み出し、第2の加入者端末64aを、接続情報に対応する加入者端末に接続する呼接続手段11bとから構成される。
【0011】以上のような構成において、電話番号一時的使用装置10aは通常、交換機に収容され、電話番号一時的使用装置10aに、第1の加入者端末61a及び第2の加入者端末64aが接続される。第1の加入者端末61aは、自分に本来割り当てられている電話番号とは別の電話番号(仮想電番)を一時的に使用するべく、電話番号一時的使用装置10aに仮想電番の割当要求を送信する。
【0012】これを受けた仮想電番通知手段11aは、仮想電番の空きを探し、存在すれば、それを第1の加入者端末61aに割り当て、第1の加入者端末61aに通知する。それと同時に、電話番号一時的使用装置10aの仮想電番登録手段12aが、第1の加入者端末61aに割り当てられた仮想電番を、第1の加入者端末61aの接続情報と対応づけて登録する。接続情報は、加入者端末収容位置を示す情報である。
【0013】第1の加入者端末61aに割り当てられた仮想電番が、第1の加入者端末61aの操作者から第2の加入者端末64aの操作者に伝えられ、これによって、第2の加入者端末64aから仮想電番を用いて発呼要求が電話番号一時的使用装置10aへ送信されたとする。すると、電話番号一時的使用装置10aの呼接続手段11bは、仮想電番登録手段12aを参照して、要求された仮想電番に対応する接続情報を読み出す。この場合には第1の加入者端末61aの接続情報が読み出される。そして、呼接続手段11bは第2の加入者端末64aを、接続情報に基づき第1の加入者端末61aに接続する。」(段落【0010】?【0013】)

(C)「【0015】次に、第1の実施の形態を詳しく説明する。なお、以下に説明する第1の実施の形態では、図1に示す電話番号一時的使用装置10aは図2の集中管理局10に対応し、同様に、第1の加入者端末61aは加入者端末61に、第2の加入者端末64aは加入者端末64に、仮想電番通知手段11a及び呼接続手段11bは中央制御装置11に、仮想電番登録手段12aはメモリ12に対応する。
【0016】図2は、ネットワーク構成の一例を示すブロック図である。ネットワークでは、集中管理局10に下位局20,30,40が接続され、また、集中管理局10に保守端末50が接続される。下位局20には加入者端末61,62,63が接続され、下位局40には加入者端末64が接続される。下位局30にも加入者端末が接続され、また、各下位局にはもっと多数の加入者端末が接続されるが、ここでは図示を省略する。加入者端末は電話機である。
【0017】集中管理局10は交換機であり、内部に中央制御装置11,メモリ12,ネットワークインタフェース13,タイマー装置14を含む。下位局20も、内部に中央制御装置21,メモリ22,ネットワークインタフェース23を含む。下位局30,40も下位局20と同じ内部構成となっている。集中管理局10と各下位局20,30,40とは、それぞれの内部に含まれるネットワークインタフェースによって接続される。
【0018】図3は、集中管理局10内のメモリ12に記憶される仮想電番データの内容を示す図である。メモリ12には、仮想電番を割り当てられた加入者端末の情報が、仮想電番毎に格納される。すなわち、「登録加入者電番」欄121に、対応する仮想電番を割り当てられた加入者端末の本来の電話番号が記載され、「登録加入者収容位置」欄122に、対応仮想電番を割り当てられた加入者端末が接続されている下位局の識別名と、その下位局において当該加入者端末が接続されているポート番号とが記載され、「登録/解除フラグ」欄123に、対応仮想電番が加入者端末に割り当て済みであるか否かを示すフラグが記載され、「登録加入者名」欄124に、対応仮想電番を割り当てられた加入者端末の加入者名が記載され、「通話の基本料金」欄125に、対応仮想電番を割り当てられた加入者端末と通話する際の通話基本料金が記載される。
【0019】ここで、加入者端末61が仮想電番を集中管理局10に登録し、その後、加入者端末64が加入者端末61の仮想電番を用いて発呼を行った場合を例にして、集中管理局10や各下位局20,30,40の動作を説明する。
【0020】図4は仮想電番の登録処理を示すフローチャートである。この処理は、加入者端末のオフフックで起動される。加入者端末61が下位局20へ仮想電番登録要求を送信したとする。下位局20内の中央制御装置21は、集中管理局10に仮想電番登録要求を転送する。集中管理局10内の中央制御装置11は、仮想電番登録要求を送信されたことを認識すると(S1)、メモリ11内の仮想電番データを参照し、「登録/解除フラグ」欄123に、仮想電番が未割当であることを示すフラグが記載されている仮想電番を探す(S2)。発見されたならば、すなわち空き仮想電番が存在すれば、仮想電番データにおいて、その空き仮想電番に対応する各欄に、加入者端末61に関する加入者電話番号、加入者収容位置、加入者名、通話の基本料金を設定する。そして、「登録/解除フラグ」欄123には、仮想電番が割り当て済みであることを示すフラグを記載する(S3)。なお、空き仮想電番が存在しなければ、下位局20に空き仮想電番無しの通知を送る。下位局20内の中央制御装置21は、加入者端末61にROT(Reorder Tone)または音声を送出して空き仮想電番無しを通知する(S4)。
【0021】図5は仮想電番を用いた発呼要求に対する発信処理を示すフローチャートである。この処理は、加入者端末からの仮想電番を用いた発呼によって起動される。ここで、加入者端末64が、加入者端末61が登録した仮想電番を用いて発信要求を下位局40へ送信したとする。下位局40内の中央制御装置41は、加入者端末64から仮想電番を用いた発信要求を受けた場合、集中管理局10にこの仮想電番の登録状態を問い合わせる。問い合わせを受けた集中管理局10内の中央制御装置11は、メモリ12内にある仮想電番データを仮想電番で検索し、該当する仮想電番の対応データ内の「登録/解除フラグ」欄123を参照する(S11,S12)。仮想電番が割り当て済みであることを示すフラグが記載されていたら、「登録加入者収容位置」欄122を参照して加入者収容位置を認識し、接続する下位局(この場合下位局20)の中央制御装置に接続要求を送信し、加入者端末64を該当加入者端末に接続する(S13)。これによって、通話が可能となる(S14)。なお、メモリ12内にある仮想電番データを仮想電番で検索し、「登録/解除フラグ」欄123を参照した結果、仮想電番が未割当であることを示すフラグが記載されていたら、加入者端末64に仮想電番が未割当であることをROTまたは音声で知らせる(S15)。」(段落【0015】?【0021】)

a.上記摘記事項(C)の段落【0015】、【0016】、及び図2によれば、引用例には「第1の加入者端末と、第2の加入者端末と、ネットワークとを備える通信システム」が開示されていることは明らかである。ここで、ネットワークが第1の加入者端末と第2の加入者端末との間に電話通信というサービスを提供していること、また、第1の加入者端末と第2の加入者端末が、それぞれ加入者電話番号を有していることは、技術常識から明らかである。
一方、上記摘記事項(A)の段落【0001】の記載によれば、引用例は、この通信システムにおいて行われる、「加入者端末が自己に割り当られている電話番号以外の電話番号を使用して一時的に通話を行うことを実現する電話番号一時的使用方法」を開示するものであるが、ここで、段落【0002】、【0004】の記載も参酌すると、「ある加入者が、自分の電話番号を教えたくない相手」に対しては、「別の電話番号を一時的に使用する」ことができるようにしたものであり、さらに上記摘記事項(B)の段落【0011】、【0013】によれば、相手には別の電話番号である仮想電番を伝えるのみでよく、自分の電話番号という真の識別情報を隠して電話を受けることができるものということができるから、「電話番号一時的使用方法」は、「加入者の真の識別情報を隠す方法」であるといえる。
そうすると、引用例には、「第1の加入者電話番号を有する第1の加入者端末と、第2の加入者電話番号を有する第2の加入者端末と、該第1の加入者端末と該第2の加入者端末にサービスを提供するネットワークとを備える通信システムにおいて加入者の真の識別情報を隠す方法」が開示されているといえる(なお、加入者電話番号についても、便宜上それぞれを「第1の」、「第2の」と称した)。

b.上記摘記事項(C)の段落【0020】には、「図4は仮想電番の登録処理を示すフローチャートである。この処理は、加入者端末のオフフックで起動される。加入者端末61が下位局20へ仮想電番登録要求を送信したとする。」と記載されている。「加入者端末61」は「第1の加入者端末61a」に対応しているから(段落【0015】参照)、段落【0020】の記載は「第1の加入者端末を利用して仮想電番を要求する」ことといえる。

c.上記摘記事項(C)の段落【0020】には、「集中管理局10内の中央制御装置11は、仮想電番登録要求を送信されたことを認識すると(S1)、メモリ11内の仮想電番データを参照し、「登録/解除フラグ」欄123に、仮想電番が未割当であることを示すフラグが記載されている仮想電番を探す(S2)。発見されたならば、すなわち空き仮想電番が存在すれば、仮想電番データにおいて、その空き仮想電番に対応する各欄に、加入者端末61に関する加入者電話番号、加入者収容位置、加入者名、通話の基本料金を設定する。」と記載されているが、仮想電番はネットワークを構成する集中管理局10内で、加入者端末61に関する加入者電話番号等に対応付けられて設定がなされ、確立されていると解される。すなわち、「ネットワークで、第1の加入者端末のために前記仮想電番を確立する」ことが行われ、かつ、「第1の加入者端末の仮想電番を、第1の加入者端末の第1の加入者電話番号とリンクさせる」ことが行われているものといえる。

d.上記摘記事項(B)の段落【0012】には、「これを受けた仮想電番通知手段11aは、仮想電番の空きを探し、存在すれば、それを第1の加入者端末61aに割り当て、第1の加入者端末61aに通知する。」と記載されており、「ネットワークから仮想電番を第1の加入者端末に通知する」ことが行われているといえる。

e.上記摘記事項(B)の段落【0013】には「第2の加入者端末64aから仮想電番を用いて発呼要求が電話番号一時的使用装置10aへ送信されたとする。すると、電話番号一時的使用装置10aの呼接続手段11bは、仮想電番登録手段12aを参照して、要求された仮想電番に対応する接続情報を読み出す。この場合には第1の加入者端末61aの接続情報が読み出される。そして、呼接続手段11bは第2の加入者端末64aを、接続情報に基づき第1の加入者端末61aに接続する。」と記載され、上記摘記事項(C)の段落【0021】には「加入者端末64が、加入者端末61が登録した仮想電番を用いて発信要求を下位局40へ送信したとする。下位局40内の中央制御装置41は、加入者端末64から仮想電番を用いた発信要求を受けた場合、集中管理局10にこの仮想電番の登録状態を問い合わせる。問い合わせを受けた集中管理局10内の中央制御装置11は、メモリ12内にある仮想電番データを仮想電番で検索し、該当する仮想電番の対応データ内の「登録/解除フラグ」欄123を参照する(S11,S12)。仮想電番が割り当て済みであることを示すフラグが記載されていたら、「登録加入者収容位置」欄122を参照して加入者収容位置を認識し、接続する下位局(この場合下位局20)の中央制御装置に接続要求を送信し、加入者端末64を該当加入者端末に接続する(S13)。これによって、通話が可能となる(S14)。」と記載されている。すなわち、第2の加入者端末が仮想電番を使って発呼して第1の加入者端末に接続し、通信が行われるから、「第1の加入者端末と第2の加入者端末の間の通信のために、第1の加入者端末の仮想電番を利用する」ものといえる。

したがって、これらの記載事項によると、引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「第1の加入者電話番号を有する第1の加入者端末と、第2の加入者電話番号を有する第2の加入者端末と、該第1の加入者端末と該第2の加入者端末にサービスを提供するネットワークとを備える通信システムにおいて加入者の真の識別情報を隠す方法であって、
前記第1の加入者端末を利用して仮想電番を要求するステップと、
前記ネットワークで、前記第1の加入者端末のために前記仮想電番を確立するステップと、
前記第1の加入者端末の前記仮想電番を、該第1の加入者端末の前記第1の加入者電話番号とリンクさせるステップと、
前記ネットワークから前記仮想電番を前記第1の加入者端末に通知するステップと、
前記第1の加入者端末と前記第2の加入者端末の間の通信のために、該第1の加入者端末の前記仮想電番を利用するステップと、
を特徴とする方法。」

(ウ)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。

a.補正後の発明の「ユーザ」、「第1のユーザ装置」、「第2のユーザ装置」、「サービス網」は、引用発明の「加入者」、「第1の加入者端末」、「第2の加入者端末」、「ネットワーク」と一致している。

b.引用発明の「加入者電話番号」は、ユーザに固有な識別子といえるから、補正後の発明の「固有識別子」と一致している。

c.引用発明の「仮想電番」は、加入者電話番号(固有識別子)とリンクして確立され、通信のために利用されるものであるから、補正後の発明の「仮想識別子」と一致している。

d.引用発明の「前記ネットワークで、前記第1の加入者端末のために前記仮想電番を確立するステップ」は、「前記第1のユーザ装置のために前記仮想識別子を確立するステップ」である点で、補正後の発明の「前記第1のユーザ装置で、前記第1のユーザ装置のために前記仮想識別子を確立するステップ(202)」と一致している。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「第1の固有識別子を有する第1のユーザ装置と、第2の固有識別子を有する第2のユーザ装置と、該第1のユーザ装置と該第2のユーザ装置にサービスを提供するサービス網とを備える通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法であって、
前記第1のユーザ装置を利用して仮想識別子を要求するステップと、
前記第1のユーザ装置のために前記仮想識別子を確立するステップと、
前記第1のユーザ装置の前記仮想識別子を、該第1のユーザ装置の前記第1の固有識別子とリンクさせるステップと、
前記第1のユーザ装置と前記第2のユーザ装置の間の通信のために、該第1のユーザ装置の前記仮想識別子を利用するステップと、
を特徴とする方法。」

(相違点)
「仮想識別子を確立するステップ」に関し、補正後の発明では「第1のユーザ装置で」と記載されているのに対し、引用発明では「ネットワークで」とされている点。

上記相違点について検討する。
補正後の発明では、「前記第1のユーザ装置で…仮想識別子を確立するステップ(202)」と記載されているが、さらに補正後の発明は、「前記第1のユーザ装置を利用して仮想識別子を要求するステップ(200)」も含むものであるところ、実施例において仮想識別子を要求する動作を伴うのは、仮想識別子の確立を「サービス網」で行う場合のみである(段落【0037】に仮想識別子の確立を「第1のユーザ装置」で行う例が記載されているが、この例では仮想識別子の要求を出していない)。また、各ステップに付された番号((200)、(202))からすれば、補正後の発明は、発明の詳細な説明の段落【0041】や、図4の記載に対応すると考えられるが、この記載においても仮想識別子の確立を「サービス網」で行っていることは明らかである。
以上のことから、補正後の発明は、仮想識別子の確立を「サービス網」で行う実施例を含むことは明らかである。一方で、この実施例において第1のユーザ装置で行われていることは「仮想識別子の記憶」であるから、「前記第1のユーザ装置で…仮想識別子を確立する」ということには、第1のユーザ装置で行われる「仮想識別子を記憶する」ことが包まれるとも考えられる。
よって、補正後の発明の「前記第1のユーザ装置で、前記第1のユーザ装置のために前記仮想識別子を確立するステップ(202)」が、「サービス網で仮想識別子を確立する」ことと、「ユーザ装置で仮想識別子を記憶する」ことを含むものと解するとすれば、まず、「サービス網で仮想識別子を確立する」ことについては、上記のa.で述べたように、補正後の発明の「サービス網」と、引用発明の「ネットワーク」とは一致するものであるから、両発明に差異はない。また、「ユーザ装置で仮想識別子を記憶する」ことについては、引用発明はネットワークから仮想電番を第1の加入者端末に通知するステップをさらに含むものであるところ、通知された情報を例えば備忘のために端末装置に記録ないし記憶させることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

また、効果についても、引用発明から当業者が予測し得る範囲のものである。

以上のとおり、本願の補正後の発明は引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(なお、本願の補正後の請求項1、2、3、4、5に係る発明は、本願の分割出願である特願2008-2585号(特開2008-167454号公報)の平成20年3月18日付け手続補正書における請求項1、9、11、14、19に係る発明と、それぞれ同一であるから、特許法第39条第2項の規定によっても、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。)

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年12月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.補正の内容」の項に記載した、平成19年4月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)特許法第29条第2項について」の項中の「(イ)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明に、「仮想識別子を確立するステップ(202)」が「サービス網」で行われるという選択肢が付加されているものであるが、当該選択肢が選択される場合は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)特許法第29条第2項について」の項中の「(ウ)対比・判断」の項で説示したとおり、引用発明とは差異がないと認められる。
そしてその余の点は既に検討したとおり、引用発明に基づいて容易に想到できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に想到できたものである。

第4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-30 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-14 
出願番号 特願2004-542529(P2004-542529)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 勝広  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 萩原 義則
小宮 慎司
発明の名称 通信システムにおいてユーザの真の識別情報を隠す方法とシステム  
代理人 鶴田 準一  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  
代理人 水谷 好男  
代理人 下道 晶久  
代理人 島田 哲郎  
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