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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1216184
審判番号 不服2009-10524  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-01 
確定日 2010-05-07 
事件の表示 平成10年特許願第189836号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月11日出願公開、特開2000- 5425〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願の手続の概要は、次のとおりである。

平成10年6月19日 本願出願
平成20年6月 9日付け 拒絶理由通知
平成20年7月18日 手続補正
平成21年1月15日付け 拒絶理由通知(最後)
平成21年3月27日 手続補正
平成21年4月15日付け 補正却下の決定、拒絶査定
平成21年6月 1日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正

第2.平成21年6月1日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年6月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の図柄を可変表示可能な複数の図柄表示部を図柄表示器に設け、
図柄変動信号により図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、図柄が確定表示する可変表示ゲームが行われ、その可変表示ゲームにはリーチアクションを実施後に大当たりになる場合とならない場合及び外れの場合がある遊技機であって、
1個の入賞球に伴う図柄変動開始信号に基づいて、前記図柄表示器には図柄が疑似確定表示される制限回数を表示し、
その後、前記図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、外れ図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲームを前記制限回数まで実施した後に、前記図柄表示部に外れ図柄、又は大当たり図柄を確定表示することを特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1の「図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲーム」との記載を「外れ図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲーム」と限定するものであり、同「図柄を確定表示する」との記載を「前記図柄表示部に外れ図柄、又は大当たり図柄を確定表示する」と限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について

原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-313684号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「連設された3個の表示部を含む主表示部、及び1個の表示部を含む補助表示部で形成され表示状態が変化可能な可変表示手段と、前記主表示部のうちの左図柄表示部及び右図柄表示部により表示される変動後の停止図柄が所定当り図柄の一部を構成する待ち図柄となるとき、前記補助表示部の図柄の変動及び停止を行うとともに中図柄表示部の図柄の変動及び停止を行い、前記3個の表示部に表示される停止図柄が前記所定の当り図柄を構成しないとき、前記補助表示部の停止図柄の色、字句又は数字の意味するところに従って、前記中図柄表示部の図柄の再度の変動及び停止を行う図柄変動停止手段と、前記主表示部に表示される停止図柄が前記所定の当り図柄を構成するとき、遊技者にとって有利となる第1の状態、前記主表示部に表示される停止図柄が前記所定の当り図柄を構成しないとき、遊技者にとって不利となる第2の状態に変化可能な可変入賞手段と、を設けたことを特徴とする遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項4】)
・記載事項2
「液晶表示盤9は、画像処理装置からのデータを受け可変表示を行うダイナミック駆動方式のものであり、主表示部としての左ないし右図柄表示部5?7が連設され、その上部に副表示部としての補助図柄表示部8が設けられているものである。画像処理装置3は、CPU10からの指令があると、必要な画像データを選択し、そのデータ処理を行い、特別図柄表示装置としての液晶表示盤9に図柄を変動表示及び停止表示するものである。」(段落【0010】)
・記載事項3
「次に、特別図柄表示装置としての液晶表示盤9について詳細に説明する。左ないし右図柄表示部5?7は、それぞれ、「1」「2」「3」「4」の黄赤青緑の4種の色からなる16種類の数字から構成される図柄配列からなっており、左から、特別図柄Aを表示する左図柄表示部5、特別図柄Bを表示する中図柄表示部6、及び特別図柄Cを表示する右図柄表示部7の順序で連設された3桁の図柄配列を構成し、「111」?「444」までの黄赤青緑のいずれかに着色された256種類の整数値の組合わせからなる3桁の特別図柄ABCが液晶表示盤9にスクロール変動表示及び停止表示がされるようになっている。図柄の停止は特別図柄A、C、Bの順序に行われるように設定されている。」(段落【0012】)
・記載事項4
「次の本発明の特徴的な構成をなす、補助図柄表示部8と、それに表示される補助図柄Dの決定とについて説明する。補助図柄表示部8は、右図柄Cの停止時に、左図柄Aと右図柄Cとが等しいとき(所謂リーチ時)に変動を開始し、中図柄Bが停止すると同時に停止するように設定されている。そして中図柄Bが大当りでない場合には、補助図柄Dの停止図柄の意味するところに従って再度中図柄Bが変動して中図柄Bが停止し、大当りとなることがあるように設定している。補助図柄表示部8には、「ドロー4」「ドロー2(赤)」「ドロー2(青)」「ドロー2(黄)」「ドロー2(緑)」「スキップ(赤)」「スキップ(青)」「スキップ(黄)」「スキップ(緑)」「リバース(赤)」「リバース(青)」「リバース(黄)」「リバース(緑)」「ワイルド」の14種類の補助図柄Dがスクロール表示及びいずれか1つが停止表示されるようになっている。上記において、たとえば、「ドロー2(赤)」というのは、赤色に着色された「ドロー2」という文字である。「ドロー4」は中図柄Bを4駒進めさせるもの、「ドロー2」は、左、右図柄A,Cの色と「ドロー2」の色とが同色であれば、中図柄Bを2駒進めさせるもの、「スキップ」は、左、右図柄A,Cの色と「スキップ」の色とが同色であれば、ランダムに中図柄Bの駒を進めさせるもの、「リバース」は、左、右図柄A,Cの色と「リバース」の色とが同色であれば、中図柄Bを1駒戻させるもの(15駒進めることと同じ)、「ワイルド」は、その色が左、右図柄A,Cの色以外の色であれば、左、右図柄A,Cの色と同色の、中図柄B停止図柄の示す数字まで駒を進めさせるものである。・・・補助停止図柄Dの決定は、図5に示す通り、補助停止図柄決定カウンタ15eに基づいてランダムに実行されるようになっている。CPU10は、これら乱数発生器としての補助停止図柄決定カウンタ15eのカウント値を微小時間毎に読み込むこととしている。同様に図6に示すようにスキップ乱数が設定されており、スキップカウンタ15fのカウント値0?14に基づいてスキップの数を設定するようにしている。また、各決定乱数に対応して、補助停止図柄D、スキップ内容等のデータがRAM12の所定のエリアに格納されている。」(段落【0015】)
・記載事項5
「一方、第1種始動口32又は33に打球が入賞すると、始動入賞球検出器34がオン信号を発生するので、肯定判断され、特別図柄の当否決定カウンタ15aのカウント値、即ち、設定1の場合0?391、設定2の場合0?421、設定3の場合0?447のいずれか1つを取り出して、RAM12に格納する(S101)。そして液晶表示盤9への図柄の変動表示、スピーカ23からの音声出力、各種LED29a?29cのオン等の開始を指示し、続いて液晶表示盤9における特別図柄表示の変動開始から微小時間が経過してから、RAM12に格納された前述のカウント値を取り出し、その数値が図2に示す大当り数値に該当するかどうか判断し、該当する場合には、大当り、非該当の場合には外れを判断する(S102)。・・・そして、大当りの場合には左停止図柄決定カウンタ15bのカウント値0?15からランダムに1つの数値を選択し、このカウント値に応じて対応する1つの大当り図柄を図3に基づいて決定する(S103)。」(段落【0023】)
・記載事項6
「次に液晶表示盤9の左図柄表示部5、右図柄表示部7の順序で停止させて所謂リーチ表示をさせるとともに、補助図柄Dが変動表示を開始する(S104)。そして、図10に示す中図柄及び補助図柄の変動停止ルーチン処理にジャンプし、所定時間後に中図柄B及び補助図柄Dを停止させ、補助図柄Dの意味するところに従って、再度、中図柄Bの変動及び停止をさせる(S105)。この特徴的な処理については後に詳述する。こうして特定遊技状態となり、画像処理装置3から大当りの画像データを読みだし、液晶表示盤9への前述の大当りに対応する特別図柄表示を行うとともに、スピーカ23からの大当り音の出力、各種LED29a?29cのオン等を指示するとともに、大入賞口36を所定時間開放し、その間、遊技領域24を落下する打球を特定領域37内に受け入れる等の前述した大当り処理を行う(ステップS106)。」(段落【0024】)
・記載事項7
「一方、S102において否定判断されると、所定の外れ処理(S108?S113)を行い、処理はリターンに抜ける。すなわち、外れの場合には前述の外れ停止図柄決定カウンタ15b?dのカウント値の数値からランダムに1つの数値を選択し、このカウント値に応じて対応する外れ停止図柄を決定する(S108)。次にリーチ表示であるか否か、すなわち左図柄Aと右図柄Cの色と数字が同一であるか否か判断し(S109)、肯定判断された場合には、リーチ表示を行い(S110)、補助図柄Dの変動を開始させ、前述の図10のサブル?チンを実行し、前記で説明したように、中図柄B及び補助図柄Dの変動及び停止を行う(S111)。一方、 S109で否定判断された場合には、単に特別図柄ABCの変動停止を行うだけであり、補助図柄Dの意味するところに従って中図柄Bの再度の変動は行わない(S112)。次に所定の外れ処理(S113)を行いリターンに抜ける。」(段落【0025】)
・記載事項8
「他の実施形態としては、上述の実施形態と同様の構成とされ、図10のサブルーチンに代えて、補助図柄Dの表示態様を図11(a)を図11(b)に変更したものがある。その詳細については図示及び説明を割愛するが、図11(b)に示す通り、補助図柄Dは、「星」「チャンス1」「チャンス2」「チャンス3」の4つの図柄から構成されており、「星」で停止した場合には、外れを意味し、中図柄Bの再度の変動は行わず、「チャンス1」で停止した場合には、大当りでない場合再度変動して停止し、「チャンス2」で停止した場合には、チャンス1と同様の動作を2回繰り返し、「チャンス3」で停止した場合には、チャンス1と同様の動作を3回繰り返すようにしているものである。この実施態様では、外れを設定するとともに、補助図柄の数字の意味するところに従って、中図柄Bを再度変動させることが特徴となっている。なお、上記回数設定については最大3回に限定されず、その上限を増加することも可能である。」(段落【0029】)

「他の実施形態」(記載事項8参照)としての構成を採用し、上記各記載事項を含む全記載及び図示によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。

「特別図柄A,B,Cがスクロール変動表示及び停止表示がされるようになっている、主表示部としての左ないし右図柄表示部5?7が連設され、その上部に副表示部としての補助図柄表示部8が設けられた液晶表示盤9を備え、
始動入賞球検出器34がオン信号を発生すると、液晶表示盤9への特別図柄A,B,Cの変動表示の開始を指示し、特別図柄の当否決定カウンタ15aから取り出されてRAM12に格納されたカウント値が大当り数値に該当する場合には、1つの大当り図柄を決定して左図柄表示部5、右図柄表示部7の順序で停止させて所謂リーチ表示をさせ、所定時間後に中図柄Bを停止させ、大当り処理を行うとともに、前記RAM12に格納されたカウント値が大当り数値に該当しない場合には、外れ停止図柄を決定し、左図柄Aと右図柄Cが同一であれば、リーチ表示を行い中図柄Bを停止させ、所定の外れ処理を行う遊技機であって、
リーチ表示となるとき、液晶表示盤9の補助図柄表示部8の補助図柄Dの変動を開始させ、所定時間後に中図柄B及び補助図柄Dを停止させ、補助図柄Dの意味するところに従って、再度、中図柄Bの変動及び停止をさせるものであって、
補助図柄Dは、「星」「チャンス1」「チャンス2」「チャンス3」の4つの図柄から構成されており、「星」で停止した場合には、外れを意味し、中図柄Bの再度の変動は行わず、「チャンス1」で停止した場合には、大当り図柄でない場合再度変動して停止し、「チャンス2」で停止した場合には、チャンス1と同様の動作を2回繰り返し、「チャンス3」で停止した場合には、チャンス1と同様の動作を3回繰り返すようにした、遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「特別図柄A,B,C」は本願補正発明の「複数の図柄」に相当し、以下同様に、「スクロール変動表示及び停止表示がされるようになっている」は「可変表示可能な」に、「左ないし右図柄表示部5?7」は「複数の図柄表示部」に、「液晶表示盤9」は「図柄表示器」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明について、以下のことがいえる。
(1)「特別図柄A,B,Cがスクロール変動表示及び停止表示がされるようになっている」「左ないし右図柄表示部5?7が連設され」た「液晶表示盤9」は、本願補正発明の「複数の図柄を可変表示可能な複数の図柄表示部を図柄表示器に設け、」に相当する。
(2)「液晶表示盤9への特別図柄A,B,Cの変動表示の開始を指示」するということは、特別図柄A,B,Cの変動を開始させる信号を液晶表示盤9へ送信していることは自明であって、当該信号は本願補正発明の「図柄変動信号」及び「図柄変動開始信号」に相当する。また、大当り処理又は外れ処理が行われる直前において、中図柄Bが停止した状態は、当該状態の図柄に対応して大当り処理又は外れ処理が行われるものであって、本願補正発明の「図柄が確定表示する」に相当する。そして、特別図柄A,B,Cが変動を開始し、所定時間後に「図柄が確定表示する」までの変動表示は、本願補正発明の「可変表示ゲーム」に相当する。そして、引用発明では、「リーチ表示」が行われた後、「大当り」になる場合と「外れ」になる場合があるが、本願補正発明では「リーチアクションを実施する」以上、少なくとも「リーチ表示」があることは自明である。
そうすると、「リーチアクション」があるか否かは別にして、引用発明と本願補正発明は、「図柄変動信号により図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、図柄が確定表示する可変表示ゲームが行われ、その可変表示ゲームにはリーチ表示を実施後に大当たりになる場合とならない場合及び外れの場合がある」である点で共通している。
(3)「補助図柄Dの意味するところに従って、再度、中図柄Bの変動及び停止をさせる」ものであり、再度変動させる前の中図柄Bの停止は、「確定表示」とは異なるものの停止するという点では似ているものであるから、本願補正発明の「疑似確定表示」に相当する。
また、補助図柄Dの「星」「チャンス1」「チャンス2」「チャンス3」は、再度の変動を0回、1回、2回、3回行うことを意味しており、上記のように再度の変動の前には「疑似確定表示」が行われるから、補助図柄Dは「疑似確定表示される回数」を表示するものということができ、当該回数は本願補正発明の「制限回数」に相当する。そして、当該疑似確定表示が「制限回数」行われるのは始動入賞に基づいて特別図柄A,B,Cのスクロール変動表示が開始された後確定表示が行われるまでの間であるから、1個の始動入賞球に基づいて制限回数の疑似確定表示が行われるということができる。
そうすると、引用発明と本願補正発明は、「1個の入賞球に基づいて、図柄表示器には図柄が疑似確定表示される制限回数を表示し、」という点で共通している。
(4)例えば、「チャンス2」が表示される場合は、始動入賞に基づき、特別図柄A,B,Cが変動を開始し、所定時間後に全図柄A,B,Cが停止して疑似確定表示が行われ、次に中図柄Bが再度変動して停止し疑似確定表示が行われ、更に中図柄Bが再度変動して停止し確定表示が行われ、大当り又は外れとなる。ここで、中図柄Bが再度変動するのは「大当り図柄でない場合」であるから、疑似確定表示時には「外れ図柄」が表示されており、また、左右図柄A,Cが停止して中図柄Bのみが変動する場合も「図柄が変動を開始」ということができる。更に、大当り又は外れとなるということは、確定表示時に外れ図柄又は大当たり図柄が表示されることである。
そうすると、「特別図柄A,B,Cが変動を開始し、所定時間後に全図柄A,B,Cが停止して疑似確定表示が行われ」及び「次に中図柄Bが再度変動して停止し疑似確定表示が行われ」は本願補正発明の「図柄が変動を開始し、所定時間後に、外れ図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲーム」に相当し、「中図柄Bが再度変動して停止し確定表示が行われる」は本願補正発明の「図柄表示部に外れ図柄、又は大当たり図柄を確定表示する」に相当する。
以上により、引用発明は、本願補正発明の「図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、外れ図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲームを制限回数まで実施した後に、図柄表示部に外れ図柄、又は大当たり図柄を確定表示する」に相当する構成を実質的に具備するものである。

そうすると、本願補正発明と引用発明は、
「複数の図柄を可変表示可能な複数の図柄表示部を図柄表示器に設け、
図柄変動信号により図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、図柄が確定表示する可変表示ゲームが行われ、その可変表示ゲームにはリーチ表示を実施後に大当たりになる場合とならない場合及び外れの場合がある遊技機であって
1個の入賞球に基づいて、図柄表示器には図柄が疑似確定表示される制限回数を表示し、
図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、外れ図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲームを制限回数まで実施した後に、図柄表示部に外れ図柄、又は大当たり図柄を確定表示する遊技機」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
リーチ表示の実施時に、本願補正発明はリーチアクションを実施するのに対して、引用発明ではそのような構成を有するか不明である点。
<相違点2>
制限回数の表示が、本願補正発明では、図柄変動開始信号に基づいて行われ、その後、図柄が変動を開始するのに対し、引用発明では、図柄が変動を開始してリーチ表示となった後、最初に中図柄Bが停止した時に行われる点。

4.判断
上記相違点に検討する。
(1)相違点1について
図柄をゆっくり変動させたり、図柄の背景、ランプ、LED、音を通常時と異ならせる等のリーチアクションをリーチ時に実施することは、遊技機において慣用手段である。
そうすると、引用発明において、リーチ表示の実施時にリーチアクションを実施することとし、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。
(2)相違点2について
疑似確定表示される回数の報知をいつ行うかは、演出上の効果を考慮しつつ、適宜決定すればよいものであることは明らかであり、また、図柄変動を開始する前に停止図柄に関する報知を行うことは従来周知(周知例として拒絶理由通知に引用された特開平9-56893号公報(段落0039)参照)である。
また、図柄変動開始信号に基づいて行うことに何ら技術的困難性はない。
そうすると、引用発明において、制限回数の表示を図柄変動開始信号に基づいて行うこととし、その後、図柄変動を開始させ、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。
そして、本願補正発明の効果は、引用発明、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

6.予備的検討
請求人は平成20年7月18日付け意見書、審判請求書において、上記引用文献に開示の発明は「最後の図柄のみを再変動する」という発明であり、本願発明は「「全図柄変動から、最終停止図柄を停止する」という可変表示ゲームを」「制限回数に到るまで行うことを報知する発明」である旨、主張している。また、平成22年2月16日付け回答書において、「前記図柄表示部の全図柄が変動を開始し、所定時間後に、全ての図柄が停止して外れ図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲームを前記制限回数まで実施」のように、「全図柄」、「全ての図柄」と限定する補正案を記載している。
そして、上記のように、本願補正発明は独立して特許を受けることができないものであるが、上記主張、補正案について、予備的に検討する。
本願補正発明は、「前記図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、外れ図柄を複数回疑似確定表示する可変表示ゲームを前記制限回数まで実施した後に、前記図柄表示部に外れ図柄、又は大当たり図柄を確定表示する」というものであり、可変表示ゲームにおいて変動を開始して停止するものは「図柄」であって、この「図柄」が「全図柄」であるとも「全ての図柄」であるとも記載されておらず、このように限定して解釈すべき特段の事情もない。そうすると、可変表示ゲームにおいて変動を開始して停止する「図柄」は、「図柄」であればよいのであって、この点において本願補正発明と引用発明に差異はない。
仮に、「図柄」を「全図柄」と解釈すべきとした場合、補正案を採用した場合について検討すると、一旦疑似確定表示された全図柄を再変動させることは、特開平10-33774号公報における「リーチ4」、「コマコマ倶楽部,パチンコ必勝ガイド,株式会社白夜書房,1995年6月2日,P15-16」に示されるように、従来周知の技術手段である。そうすると、引用発明において、再変動する中図柄Bに加えて左右図柄A,Cも再変動させることは、当業者であれば容易に想到する程度のことである。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成21年6月1日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年7月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。なお、平成21年3月27日の手続補正は、前審において却下されている。
「複数の図柄を可変表示可能な複数の図柄表示部を図柄表示器に設け、
図柄変動信号により図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、図柄が確定表示する可変表示ゲームが行われ、その可変表示ゲームにはリーチアクションを実施後に大当たりになる場合とならない場合及び外れの場合がある遊技機であって、
1個の入賞球に伴う図柄変動開始信号に基づいて、前記図柄表示器には図柄が疑似確定表示される制限回数を表示し、
その後、前記図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に、図柄を複数回の疑似確定表示する可変表示ゲームを前記制限回数まで実施した後に、図柄を確定表示することを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記第2の「[理由]1.」に記載した限定を戻したものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-03 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願平10-189836
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
池谷 香次郎
発明の名称 遊技機  
代理人 犬飼 達彦  

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