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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01D |
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管理番号 | 1217145 |
審判番号 | 不服2007-28452 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-18 |
確定日 | 2010-05-20 |
事件の表示 | 特願2002- 83535「回転センサと回転角度の検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月18日出願公開、特開2003-202240〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年3月25日(特許法第41条に規定する優先権主張を伴い、優先日は平成13年11月1日である。)の出願であって、平成18年10月10日付けで明細書又は図面(以下、「明細書等」という。)についての補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成19年9月11日付けで拒絶査定がなされた(送達日:同年同月18日)ところ、同年10月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月19日付けで明細書等についての補正(以下、「補正2」という。)がなされたものである。 その後、当審より、平成21年12月1日付けで補正2を却下する旨の補正の却下の決定がなされる(送達日:同年同月15日)とともに、同日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知した(発送日:同年同月9日)ところ、平成22年2月5日付けで明細書等についての補正(以下、「補正3」という。)がなされた。 第2 当審の拒絶理由 当審拒絶理由の通知は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第1項第2号に規定する最後の拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)であり、当審拒絶理由の概要は、本願請求項1ないし3に係る発明は、本願優先日前に国内又は外国において頒布された刊行物である、特開平5-52588号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 第3 補正却下の決定 [結論] 補正3を却下する。 [理由] 1 補正の内容 補正3は、特許請求の範囲の請求項3を次のように補正する補正事項を含むものである。 (補正前:補正1による補正後のもの) 「複数個の 励磁コイルと、回転角度に対応して幅が変化するセンシング部とを回転するシャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置すると共に、前記複数個の励磁コイルの少なくとも二つを前記シャフトの回転中心に対して180度間隔で配置し、前記シャフトの回転による前記励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて前記シャフトの回転角度を検出することを特徴とする回転角度の検出方法。」 (補正後) 「複数個の励磁コイルと、シャフトの回転軸を中心とする円の周方向に沿って延在する円環状をなし、当該円環の起点から周方向に沿って移動するに従い幅方向の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で幅方向の大きさが最大となるセンシング部とを回転するシャフトの軸線方向に間隔をおいて、前記励磁コイルの磁界中心が前記センシング部の幅方向の中心である前記円と略一致するように対向配置すると共に、前記複数個の励磁コイルの少なくとも二つを前記シャフトの回転中心に対して180度間隔で配置し、前記シャフトの回転による前記励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて前記シャフトの回転角度を検出することを特徴とする回転角度の検出方法。」(下線は、補正箇所を明示するために請求人が付したものである。) この補正は、当審による前記最後の拒絶理由通知に対応して、請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「回転角度に対応して幅が変化するセンシング部」を「シャフトの回転軸を中心とする円の周方向に沿って延在する円環状をなし、当該円環の起点から周方向に沿って移動するに従い幅方向の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で幅方向の大きさが最大となるセンシング部」と限定するとともに、「対向配置する」を「前記励磁コイルの磁界中心が前記センシング部の幅方向の中心である前記円と略一致するように対向配置する」と、それぞれ限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、この補正後の前記請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討することとする。 2 引用例に記載の事項・引用発明 引用例には、回転位置検出装置(発明の名称)に関し、図面とともに以下の記載(a)ないし(d)がある。 (a)「【産業上の利用分野】本発明は、磁気抵抗変化を利用した回転位置検出装置に係り、特に磁気抵抗変化を出力交流信号の電気的位相角の変化として検出する位相シフト方式の回転位置検出装置に関する。」(段落【0001】) (b)「【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施例である回転位置検出装置の概略構成を示す図である。図1の(a)は回転位置検出装置を回転軸方向から見た正面図であり、(b)はそれを回転軸の垂直方向から見た側面図である。 本実施例の回転位置検出装置が従来のものと異なる点は、図7及び図8の回転位置検出装置に設けられていた2次コイルが省略され、ロータ11bの回転角度θに応じた電気的位相角度だけ位相シフトした信号Y=sin(ωt-θ)が1次コイルから取り出されるようになっている点である。 本実施例の回転位置検出装置は、回転軸方向に沿って磁束を発生するように1次コイル1A?1Dがステータ11a上に設けられている。この1次コイル1A?1Dは円周方向に約90度の間隔で4極設けられている。本実施例では出力検出用の2次コイルが省略されているので、1次コイルに鉄心を設けなくてもよくなり、その結果1次コイル1A?1Dとしてステータ表面に銅を渦巻き状に形成したフィルム状のコイルを用いることができ、1次コイルの厚さをmm単位以下まで薄くすることができる。 ロータ11bは、回転角度に応じて各1次コイル1A?1Dのリラクタンスを変化させる形状及び材質からなり、図8のものと同様に回転軸に対して中心の偏心した円板で構成されている。回転軸を挟んで互いに対向する1次コイル1Aと1次コイル1Cからなる第1の対及び1次コイル1Bと1次コイル1Dからなる第2の対は、差動的に動作するようにコイルが巻かれており、かつ差動的なリラクタンス変化が生じるように構成されている。 ロータ11bの材質としては、珪素鋼板等の磁性体や銅板等の非磁性体を用いることができる。銅板は1次コイルから発生される磁束を打ち消す方向に渦電流を発生し、珪素鋼板等の磁性体を用いた場合とは逆のリラクタンス変化を生じさせるという働きがあるからである。なお、珪素鋼板と銅板とを適宜組み合わせることによって検出感度を向上することもできるが、この組み合わせたについては後述する。」(段落【0014】?【0018】) (c)「以下、出力信号Yがsin(ωt-θ)になる過程を説明する。まず、1次コイル1A?1Dにはそれぞれ基準信号発生部から定電圧信号が印加される。図では、1次コイル1Aに正弦波電圧信号ea=Esinωt、1次コイル1Bに余弦波電圧信号eb=Ecosωt、1次コイル1Cに正弦波電圧信号ec=-Esinωt、1次コイル1Dに余弦波電圧信号ed=-Ecosωtがそれぞれの定電圧で印加されている。 1次コイル1A,1Cは互いに反対方向に磁束が発生するように巻き回されている。すなわち、1次コイル1Aに正弦波電圧信号ea=Esinωtが印加することによって図面の前方(ステータ11aからロータ11b)に向かって磁束が発生しているとき、1次コイル1Cには図面の後方(ロータ11bからステータ11a)に向かって磁束が発生するように、1次コイル1A,1Cは巻き回されている。1次コイル1B,1Dについても同様に巻き回されている。 ロータ11bは、各1次コイル1A?1Dに対して一定のギャップを介在して対峙しており、回転軸の回転と応じて回転するようになっている。この回転軸に検出対象である回転角度θが与えられる。ロータ11bは、各1次コイル1A?1Dに対向する面積を回転角度θに応じて変化させる形状をしている。本実施例では、回転軸に対して中心が偏心するように取り付けられた円板で構成されている。 各1次コイル1A?1Dと、ロータ11bの円板との対向する面積が回転角度θに応じて変化することによって、各1次コイル1A?1Dを介する磁路のリラクタンスが変化し、各1次コイル1A?1Dのインピーダンス(インダクタンス)La,Lb,Lc,Ldを変化させる。ここで、ステータ11a及びロータ11bの機械的寸法及び形状等を適当に選定することによって、各1次コイル1A?1Dのインピーダンス変化が次式のような三角関数に従うようにすることができる。 1/La=(1/L)・(1+kcosθ) 1/Lb=(1/L)・(1+ksinθ) 1/Lc=(1/L)・(1-kcosθ) 1/Ld=(1/L)・(1-ksinθ) 上式において、L及びkはステータ11a及びロータ11bの構造及び励磁信号の周波数(ω/2π)によって定まる定数である。なお、上式では、図2に示すように1次コイル1Aとロータ11bとが対向する面積が最小のときの回転角度θを0度としている。 各1次コイル1A?1Dに印加される信号ea?edが定電圧であるため、各1次コイル1A?1Dのインピーダンス変化に逆比例した電流ia?idが各1次コイル1A?1Dに流れる。これらの電流ia?idは次式のようになる。 ia=ea/La=(Esinωt)(1/L)(1+kcosθ) ib=eb/Lb=(Ecosωt)(1/L)(1+ksinθ) ic=ec/Lc=(-Esinωt)(1/L)(1-kcosθ) id=ed/Ld=(-Ecosωt)(1/L)(1-ksinθ) 従って、1次コイル1A,1Cの中点から得られる第1の出力Y1及び1次コイル1B,1Dの中点から得られる第2の出力Y2は、次式のようになる。 Y1=ia+Ic=(2kE/L)sinωtcosθ Y2=ib+Id=(2kE/L)cosωtsinθ 差動アンプ26から出力される出力信号Yは次式のようになる。 Y=(2kE/L)(sinωtcosθ-cosωtsinθ) これは、三角関数の加法定理:sin(α-β)=sinαcosβ-cosαsinβに基づいて次のように変形される。 Y=(2kE/L)sin(ωt-θ) この式から明らかなように、差動アンプ26から出力される出力信号Yは基準交流信号sinωtに対して回転角度θに対応した位相角だけ位相がずれた交流信号である。従って、この出力信号Yと基準交流信号sinωtとの位相差を検出することによって回転角度θを求めることができる。」(段落【0030】?【0038】) (d)【図1】は、本発明の一実施例である回転位置検出装置を示す図であり、その内容は以下のとおりである。 ・上記記載(a)ないし(d)より、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。 「4つの一次コイル1A?1Dと、回転軸に対してその中心が偏心するように取り付けられる円板状をなし、当該円板の一次コイル1A?1Dと対向する面積が最小のところ(回転角度θが0°)から回転軸の回転角度θが大きくなるに従って一次コイル1A?1Dと対向する面積が大きくなり、前記一次コイル1A?1Dと対向する面積が最小のところ(回転角度θが0°)の反対側の点(回転角度θが180°)で一次コイル1A?1Dと対向する面積が最大となるロータ11bとを回転軸方向に一定のギャップを介在して、前記一次コイル1A?1Dと前記ロータ11bとの対向する面積が回転軸の回転角度θに応じて変化するように対峙すると共に、前記4つの一次コイル1A?1Dを回転軸の円周方向に約90度の間隔で設け、前記回転軸の回転による前記一次コイル1A?1DのインピーダンスLa?Ldの変化に基づいて前記回転軸の回転角度θを検出する回転角度の検出方法。」(以下、「引用発明」という。) 3 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明における、「4つの」、「一次コイル1A?1D」、「一次コイル1A?1Dと対向する面積が最小のところ(回転角度θが0°)」、「反対側の点(回転角度θが180°)」、「対峙する」及び「インピーダンスLa?Ldの変化」は、 本願補正発明における、「複数個の」、「励磁コイル」、「起点」、「反対側の点」、「対向配置する」及び「インピーダンス変動」に、それぞれ相当する。 (イ)シャフトとは、一般に、棒状の回転部品というほどの意味であるから、引用発明の「回転軸」は、本願補正発明の「シャフト」や「シャフトの回転軸」に相当する。 また、引用発明の「回転軸方向に一定のギャップを介在して」は、本願補正発明の「回転するシャフトの軸線方向に間隔をおいて」に相当する。 (ウ)引用発明における「4つの一次コイル1A?1Dを回転軸の円周方向に約90度の間隔で設け」は、本願補正発明における「複数個の励磁コイルの少なくとも二つを前記シャフトの回転中心に対して180度間隔で配置し」に相当する。 (エ)引用発明に係るロータ11bは、各一次コイル1A?1Dのリラクタンスを変化させる形状及び材質からなる(前記記載事項(b)を参照のこと。)から、引用発明における「ロータ11b」は、本願補正発明における「センシング部」に相当する。 (オ)本願補正発明において、センシング部の構成を「円環の起点から周方向に沿って移動するに従い幅方向の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で幅方向の大きさが最大となる」ようにしたのは、本願補正発明が、センシング部の幅方向の大きさに依存して生ずる渦電流に起因する励磁コイルのインピーダンス変動を測定することによりロータの回転角度を検出するという計測手法を採用しているからである。このことは、本願明細書の発明の詳細な説明に「・・・回転センサ1においては、センシング部2bの幅はロータ2の回転角度に比例するように設定されている。このため、ロータ2の回転に伴い、センシング部2bに生ずる渦電流によって誘起される交流磁界は、励磁コイル3b1のインピーダンスを変動させる。励磁コイル3b1のインピーダンスの変動量は、ロータ2の回転角度に比例する。従って、励磁コイル3b1におけるインピーダンスの変動量を測定することでロータ2の回転角度を測定することが本発明の回転センサ1の基本原理である。」(段落【0020】)と記載されていることからも明らかである。 してみると、引用発明における、「回転軸に対してその中心が偏心するように取り付けられる円板状をなし、当該円板の一次コイル1A?1Dと対向する面積が最小のところ(回転角度θが0°)から回転軸の回転角度θが大きくなるに従って一次コイル1A?1Dと対向する面積が大きくなり、前記一次コイル1A?1Dと対向する面積が最小のところの反対側の点(回転角度θが180°)で一次コイル1A?1Dと対向する面積が最大となるロータ11b」も、 本願補正発明における、「シャフトの回転軸を中心とする円の周方向に沿って延在する円環状をなし、当該円環の起点から周方向に沿って移動するに従い幅方向の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で幅方向の大きさが最大となるセンシング部」も、 共に、「外周が円形である板状をなし、当該外周が円形である板の起点から周方向に沿って移動するに従い励磁コイルと対向する面積の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で励磁コイルと対向する面積の大きさが最大となるセンシング部」である点で共通する。 (カ)引用発明において「4つの一次コイル1A?1Dと、・・・ロータ11bとを・・・前記一次コイル1A?1Dと前記ロータ11bとの対向する面積が回転軸の回転角度θに応じて変化するように対峙」していることは、4つの一次コイル1A?1Dが発生する磁界の方向が円板状のロータ11bに対して垂直となっていることに外ならない。 同様に、本願補正発明において「複数の励磁コイルと、・・・センシング部とを・・・前記励磁コイルの磁界中心が前記センシング部の幅方向の中心である前記円と略一致するように対向配置」していることは、複数の励磁コイルが発生する磁界の方向が円環状のセンシング部に対して垂直となっていることに外ならない。 してみると、引用発明における、「前記一次コイル1A?1Dと前記ロータ11bとの対向する面積が回転軸の回転角度θに応じて変化するように対峙する」も、 本願補正発明における、「前記励磁コイルの磁界中心が前記センシング部の幅方向の中心である前記円と略一致するように対向配置する」も、 共に、「前記励磁コイルの磁界方向が前記センシング部を成す平面に対して垂直となるように対向配置する」点で共通する。 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、下記の点で一致し、その他の点で相違する。 (一致点) 「複数個の励磁コイルと、外周が円形である板状をなし、当該外周が円形である板の起点から周方向に沿って移動するに従い励磁コイルと対向する面積の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で励磁コイルと対向する面積の大きさが最大となるセンシング部とを回転するシャフトの軸線方向に間隔をおいて、前記励磁コイルの磁界方向が前記センシング部を成す平面に対して垂直となるように対向配置すると共に、前記複数個の励磁コイルの少なくとも二つを前記シャフトの回転中心に対して180度間隔で配置し、前記シャフトの回転による前記励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて前記シャフトの回転角度を検出することを特徴とする回転角度の検出方法。」 (相違点) ・相違点1:センシング部の形状に関して 本願補正発明では、「シャフトの回転軸を中心とする円の周方向に沿って延在する円環状をなし、当該円環の起点から周方向に沿って移動するに従い幅方向の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で幅方向の大きさが最大となるセンシング部」であるのに対して、 引用発明では、「回転軸に対してその中心が偏心するように取り付けられる円板状をなし、当該円板の一次コイル1A?1Dと対向する面積が最小のところから回転軸の回転角度θに応じて一次コイル1A?1Dと対向する面積が大きくなり、前記一次コイル1A?1Dと対向する面積が最小のところの反対側の点で一次コイル1A?1Dと対向する面積が最大となるロータ11b」である点。 ・相違点2:励磁コイルとセンシング部との配置関係に関して 本願補正発明では、「前記励磁コイルの磁界中心が前記センシング部の幅方向の中心である前記円と略一致するように対向配置する」のに対し、 引用発明では、「前記一次コイル1A?1Dと前記ロータ11bとの対向する面積が回転軸の回転角度θに応じて変化するように対峙する」としているにとどまる点。 4 判断 上記相違点について検討する。 相違点1と相違点2を併せて検討する。 一般に、励磁コイルとセンシング部との相対的な位置関係を計測することを目的に、両者を、該励磁コイルが生じる磁界方向が該センシング部を成す平面に対して垂直となるように対向配置し、該励磁コイルにより導電部材から成る該センシング部に磁界を印加し、該励磁コイルが該センシング部に対向する面積の大きさに依存する渦電流に起因する該励磁コイルのインピーダンス変化を測定することにより前記相対的な位置関係を計測することは周知な計測手法であり、しかも、導電部材から成るセンシング部として、計測方向に対して幅方向の大きさが単調に変化する形状のものを用いること、及び、該励磁コイルをその磁界中心が該センシング部の幅方向の中心と略一致するように配置することも、いずれも周知な技術である。(以下、前記周知な計測手法と併せて「周知技術」という。) この点に関しては、例えば、当審拒絶理由通知で示した特開平6-50703号公報の図1及び発明の詳細な説明の段落【0009】に記載された固定側導電板21と電磁石22、特公昭47-27268号公報の第2図及びこれに関する発明の詳細な説明に記載された金属帯14とコイル15、又は特開2001-174206号公報の図1?3及びこれらに関する発明の詳細な説明に記載された磁気応答部5a,5bとコイルLa,Lbをそれぞれ参照のこと。 引用発明に係るロータ11bは、前述したように、外周が円形である板状をなし、当該外周が円形である板の起点から周方向に沿って移動するに従い励磁コイルと対向する面積の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で励磁コイルと対向する面積の大きさが最大となるようなセンシング部として機能するものであるから、かかるセンシング部であるロータ11bに計測手法が同一の前記周知技術を適用することに当業者ならば何らの困難性はなく、前記周知技術を適用すれば、引用発明の計測方向が本願補正発明と同じく円周方向であることから、引用発明に係るロータ11b(センシング部)の形状は、おのずと、本願補正発明の如き、「回転軸を中心とする円の周方向に沿って延在する円環状をなし、当該円環の起点から周方向に沿って移動するに従い幅方向の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で幅方向の大きさが最大となる」ようなものとなる。 また、引用発明に係る一次コイル1A?1Dとロータ11bとの配置関係は、前述したように、一次コイル1A?1D(励磁コイル)の磁界方向がロータ11b(センシング部)を成す平面に対して垂直となるように両者が対向配置されるものであるところ、引用発明に前記周知技術を適用すれば、引用発明の計測方向が本願補正発明と同じく円周方向であることから、両者の配置関係は、おのずと、本願補正発明の如き「前記励磁コイルの磁界中心が前記センシング部の幅方向の中心である前記円と略一致するように対向配置する」ものとなる。 そして、本願補正発明によって得られる効果は、上記引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できた程度のものであり、格別なものではない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第4 本願発明について 1 本願発明 補正3は上記のとおり却下され、また、補正2は当審において平成21年12月1日付けの補正の却下の決定により却下されているので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、補正1によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項3に係る発明は次のとおりである。 「複数個の励磁コイルと、回転角度に対応して幅が変化するセンシング部とを回転するシャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置すると共に、前記複数個の励磁コイルの少なくとも二つを前記シャフトの回転中心に対して180度間隔で配置し、前記シャフトの回転による前記励磁コイルのインピーダンス変動に基づいて前記シャフトの回転角度を検出することを特徴とする回転角度の検出方法。」(以下、「本願発明」という。) 2 引用例記載の事項・引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された発明・事項は、前記「第3 2 引用例に記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記「第3 1 補正の内容」で検討した本願補正発明の「シャフトの回転軸を中心とする円の周方向に沿って延在する円環状をなし、当該円環の起点から周方向に沿って移動するに従い幅方向の大きさが大きくなり、前記起点の反対側の点で幅方向の大きさが最大となるセンシング部」を、「回転角度に対応して幅が変化するセンシング部」と上位概念化するとともに、「前記励磁コイルの磁界中心が前記センシング部の幅方向の中心である前記円と略一致するように対向配置する」を「対向配置する」と上位概念化するものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、当該発明特定事項の一部を下位概念化して限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第3 3 対比、4 判断」に記載したとおり引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-19 |
結審通知日 | 2010-03-23 |
審決日 | 2010-04-05 |
出願番号 | 特願2002-83535(P2002-83535) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(G01D)
P 1 8・ 121- WZ (G01D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山下 雅人 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
下中 義之 濱本 禎広 |
発明の名称 | 回転センサと回転角度の検出方法 |
代理人 | 住吉 秀一 |
代理人 | 川和 高穂 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 杉本 博司 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 二宮 浩康 |