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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1217173
審判番号 不服2008-18969  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2010-05-20 
事件の表示 特願2005-375326「X線CTシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-116342〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年8月30日に出願した特願平8-230949号(以下、「原出願」の一部を平成17年12月27日に新たな特許出願としたものであって、平成20年2月22日付け拒絶理由通知に対し、同年4月28日付けで手続補正されたが、同年6月18日付けで拒絶査定され、これに対し、同年7月24日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年8月25日付けで手続補正されたものである。

第2 平成20年8月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年8月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により特許請求の範囲請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】X線を曝射するX線管と、
このX線管から曝射されたX線を検出する放射線検出器と、
この放射線検出器の出力を収集するデータ収集部と、
このデータ収集部により収集された信号に基づき画像を再構成する画像再構成部を備え、前記放射線検出器及び前記データ収集部により複数の断面のデータを同時に収集するX線CTシステムにおいて、
前記放射線検出器は、
基板と、
前記基板に取り付けられ、シンチレータによりX線から変換された光を電気信号に変換するマトリックス状のフォトダイオードアレイと、
前記フォトダイオードアレイにより変換された電気信号を束ねる若しくは選択して、当該束ねられた又は選択された複数のフォトダイオード分の電気信号を出力するものであって、出力側信号線の本数が入力側信号線の本数より少なく且つ複数であるスイッチ部と、 このスイッチ部により束ね若しくは選択された電気信号を外部に取り出すためのフレキシブルプリント基板と、
前記スイッチ部と前記フレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングを介して電気的に接続する接続手段とを備えたことを特徴とするX線CTシステム。」(下線は補正された箇所である。)

すると、本件補正は、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に関し、
「スイッチ部」と「フレキシブルプリント基板」との間の接続関係に対して、「前記スイッチ部と前記フレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングを介して電気的に接続する接続手段」を付加して限定したものを含むものである。

したがって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」とする。)の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶理由通知で引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第95/23415号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、原文とともに、引用例1に対応する国内出願である特表平8-509896号公報を訳文として記載事項を示す。

(1-ア)「What is claimed is:
1. A computerized tomography system for imaging at least a region of interest in a body, said system comprising:
a source of imaging energy for producing a beam of imaging energy substantially along a beam axis, said beam of imaging energy having a predetermined thickness in a direction orthogonal to said beam axis;
an array detector positioned to receive said beam of imaging energy, said array detector including a set of detector subelements aligned with each other along said beam thickness direction to receive successive portions of said beam of energy along its thickness direction to produce a corresponding set of thin-slice attenuation signals;
a switching matrix coupled to said set of detector subelements to receive each thin-slice attenuation signal and to selectively interconnect a predetermined number of respective ones of said detector subelements to supply at least one set of interconnect thin-slice attenuation signals corresponding to one slice of said region of interest;
summing means coupled to said matrix for additively combining output signals of the selectively interconnected detector subelements to produce a single slice-constituent attenuation signal; and
image reconstruction means for receiving said single slice-constituent signal and producing an image in response thereto.」(特許請求の範囲)
訳文「【特許請求の範囲】1.物体の中の少なくとも関心領域のイメージングを行うためのコンピュータ断層撮影システムにおいて、
ビーム軸に対して直角な方向に所定のビーム厚さを持つイメージング・エネルギのビームをほぼ上記ビーム軸に沿って発生するイメージング・エネルギ源、
上記イメージング・エネルギのビームを受けるように位置決めされたアレー検出器であって、上記ビーム厚さ方向に沿って互いに整列した1組の小検出素子を含み、該1組の小検出素子により上記ビームの厚さ方向に沿った上記ビームの相次ぐ部分を受けて対応する1組の薄スライス減衰信号を作成するアレー検出器、
上記小検出素子の組に結合されたスイッチング・マトリクスであって、各薄スライス減衰信号を受けて、上記小検出素子の内の所定数の小検出素子をそれぞれ選択的に相互連結することにより、上記関心領域中の1つのスライスに対応する少なくとも1組の相互連結薄スライス減衰信号を供給するスイッチング・マトリクス、
上記マトリクスに結合された加算手段であって、上記の選択的に相互連結された小検出素子の出力信号を加算結合して単一スライス構成減衰信号を作成する加算手段、および
上記単一スライス構成信号を受けて、上記単一スライス構成信号に応じて画像を作成する画像再構成手段をそなえているコンピュータ断層撮影システム。」

(1-イ)「As shown in Fig. 1, a CT system used to produce images of at least a region of interest of the human anatomy has a patient table 10 which can be positioned within the aperture 11 of a gantry 12. ・・・(中略)・・・The x-ray source 13 and detectors 14 are revolved about the aperture 11 during a scan of the patient to obtain x-ray attenuation measurements from many different angles through a range of at least 180°of revolution.」(第7頁第9?22行)
訳文「図1に示されるように、人体組織の少なくとも関心領域の画像を作成するために使用されるCTシステムは、ガントリ12の開口11の中に位置決めすることができる患者テーブル10を有する。好ましくは高度にコリメーションされたX線を発生するイメージング・エネルギ源13が開口11の一方の側でガントリ12内に取り付けられる。1つ以上の検出器14が開口の他方の側に取り付けられる。本明細書で使用される「イメージング・エネルギ」とは、イメージングの用途で使用することができる種々の形式の放射エネルギを指す。X線エネルギは放射エネルギの一例である。X線源13および検出器14は、患者のスキャンの間、開口11のまわりを回転して、少なくとも180°の回転範囲内の多数の異なる角度からX線減衰測定値を求める。」(第10頁第22?28行)

(1-ウ)「In the preferrcd embodiment the number of detector subelements in each detector element is 16. Thus, in the preferred embodiment, array detector 14, by way of example and not of limitation, is a two-dimensional array detector comprising about 800x16 individual subdetector elements.」(第12頁第2?7行)
訳文「好ましい実施例では、各検出素子の中の小検出素子の数は16である。したがって好ましい実施例では、アレー検出器14は約800×16個の個別の小検出素子を有する二次元アレー検出器である。これは例として示したものであり、限定するものではない。」(第13頁第23?26行)

(1-エ)「Referring to Figs 7, 8A and 8B, switching matrix 60 is coupled to the set of detector subelements 41-48 to receive each thin-slice attenuation signal produced therefrom.・・・(中略)・・・For simplicity of explanation only two summing amplifiers Σ_(1) and Σ_(2) constitute the summing means illustrated in Figs. 7, 8A and 8B and therefore the switching matrix and the two summing amplifiers can be operated to produce two separate slice-constituent signals each respectively mapping a different slice in the region of interest.」(第13頁第1?20行)
訳文「図7、8Aおよび8Bを参照して説明すると、スイッチング・マトリクス60は小検出素子41乃至48の組に結合されて、それらの小検出素子からの各々の薄スライス減衰信号を受ける。スイッチング・マトリクス60は、所定数の小検出素子を選択的に相互連結して少なくとも1組の相互連結薄スライス減衰信号を作成するように変更される。加算手段80がスイッチング・マトリクス60に結合されて、少なくとも1組の相互連結薄スライス減衰信号を加算結合することにより、関心領域の1つのスライスを測定する単一スライス構成減衰信号を作成する。加算手段は、関心領域のこのような1つのスライスに対する1つの単一ライス構成減衰信号を供給する単一の加算増幅器で構成することができる。しかし、関心領域の中の対応する付加的なスライスを写像するために付加的な加算増幅器を使用できることが理解されよう。説明を簡単にするため、図7、8Aおよ8Bに示される加算手段を2つの加算増幅器Σ_(1)およびΣ_(2)だけで構成するものとする。したがって、スイッチング・マトリクスおよび2つの加算増幅器を動作させることにより、関心領域の異なるスライスをそれぞれ写像する2つの異なるスライス構成信号を作成することができる。」(第14頁第11?25行)

(1-オ)「In each of the above-described modes of operation, each respective slice-constituent attenuation signal is supplied to data acquisition system 31 where it is converted to digital form, and then to data processing system 25 where it is processed to provide an image data so as to enable reconstruction of a respective CT image.」(第18頁第4?9行)
訳文「上記の各動作モードにおいて、各スライス構成減衰信号はデータ取得システム31に供給されて、そこでディジタル形式に変換され、次いでデータ処理システム25に供給されて、そこで処理されて、CT画像を再構成できるような画像データが作成される。」(第17頁第20?23行)

(1-カ)「It will he appreciated that switching matrix 60, as illustrated in Fig. 7, can be readily expanded to handle a larger number of detector subelements, such as sixteen, for example. ・・・(中略)・・・Preferably, each detector subelement comprises a photodiode which includes suitable means for receiving a fixed bias voltage so as to provide good linearity characteristics for each of the detector subelements.」(第18頁第17行?第19頁第4行)
訳文「図7に示されるようなスイッチング・マトリクス60は一層多くの小検出素子、たとえば16個の小検出素子を取り扱うように容易に拡張することができることが理解されよう。更に、ケーブル布線の要求を低減するために、スイッチング・マトリクスをアレー検出器14と一体で構成できることも理解されよう。スイッチング・マトリクス60に対する他の構成は、同様に有利な動作を提供することができる。たとえば、スイッチング・マトリクスは別の集積回路モジュール上に構成することもでき、あるいはデータ取得システム31(図4)の一部として構成することもできる。各小検出素子は、各小検出素子に対して良好な直線性特性を持たせるように固定バイアス電圧を受けるための適当な手段を含むホトダイオードで構成することが好ましい。」(第18頁第2?11行)

上記摘記事項(1-エ)及び(1-オ)の記載事項から、データ取得システム31は、アレー検出器14からの出力を加算手段を通して取得していることが読み取れる。

上記摘記事項(1-エ)の記載事項から、アレー検出器14と加算手段により複数のスライス構成信号を同時に収集できることが読み取れる。

上記摘記事項(1-ウ)の記載事項から、アレー検出器14は、二次元配列の複数の小検出素子を備えていることが読み取れる。

これらの記載事項によると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「X線を発生するイメージング・エネルギ源13と、
イメージング・エネルギのビームを受けるように位置決めされたアレー検出器14と、
前記アレー検出器14からの出力を加算手段を通して取得するデータ取得システム31と、
前記データ取得システム31から供給されたスライス構成減衰信号を処理してCT画像を再構成するデータ処理システム25を備え、アレー検出器14と加算手段により複数のスライス構成信号を同時に収集するコンピュータ断層撮影システムにおいて、
前記アレー検出器14は、
二次元配列された複数の小検出素子と、
前記小検出素子に結合され、所定数の小検出素子を選択的に相互連結し、少なくとも1組の相互連結薄スライス減衰信号を作成するように変更する機能を有するスイッチング・マトリクス60を備えたコンピュータ断層撮影システム」

(2)原査定の拒絶理由通知で引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-606号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(2-ア)「【0013】【課題を解決するための手段】本発明は、X線発生源と、該X線発生源と被検体との間に設けられ、ファンビームX線のスライス方向であるX線スライス幅Wi(但し、iはスライス幅番号であって、i=1、2、…、n)を、最小スライス幅W1の整数倍に調整することができるX線スライス幅調整機構と、チャンネル幅t0、最小スライス幅W1相当のスライス検出幅d1のサイズを有する検出素子が、ファンビーム方向にチャンネル相当分、スライス方向に少なくとも最大スライス幅Wn相当のスライス検出幅分配列した構成をなし、且つ前記X線発生源と対向して回転するX線検出器と、を備えたX線CT装置を開示する。」

(2-イ)「【0030】図8には、検出素子構成を示す。スライス厚方向に4個のシンチレータ素子を配し、その下部にフォトダイオードを配し、ワイヤボンディングで電気的接続をはかった。フォトダイオードはd1の領域毎に電気的に独立している必要があるがシンチレータは必ずしも分離されている必要はない。シンチレータのd1毎の区分には光を反射あるいは吸収する膜状のもの(金属でもよい)を用いる。」

(2-ウ)図8には、板状部材の上にフォトダイオードとシンチレータが積層された構造が描かれている。

3.対比・判断
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明の「X線を発生するイメージング・エネルギ源13」は、X線発生装置の技術常識からみて、本願補正発明の「X線を曝射するX線管」に相当する。

(2)引用例1発明の「イメージング・エネルギのビームを受けるように位置決めされたアレー検出器14」は、機能・構造からみて、本願補正発明の「このX線管から曝射されたX線を検出する放射線検出器」に相当する。

(3)引用例1発明の「前記アレー検出器14からの出力を加算手段を通して取得するデータ取得システム31」は、加算手段とデータ取得システム31とによりデータを収集しているといえるから、本願補正発明の「この放射線検出器の出力を収集するデータ収集部」に相当する。

(4)引用例1発明の「前記データ取得システム31から供給されたスライス構成減衰信号を処理してCT画像を再構成するデータ処理システム25」は、機能からみて、本願補正発明の「このデータ収集部により収集された信号に基づき画像を再構成する画像再構成部」に相当する。

(5)引用例1発明の「アレー検出器14と加算手段により複数のスライス構成信号を同時に収集する」ことは、上記(3)と同様に加算器は、データ収集の機能の一部を有しているから、本願補正発明の「前記放射線検出器及び前記データ収集部により複数の断面のデータを同時に収集する」ことに相当する。

(6)引用例1発明の「二次元配列された複数の小検出素子」と、本願補正発明の「シンチレータによりX線から変換された光を電気信号に変換するマトリックス状のフォトダイオードアレイ」とは、機能・構造からみて、「マトリックス状のフォトダイオードアレイ」という点で共通する。

(7)引用例1発明の「前記小検出素子に結合され、所定数の小検出素子を選択的に相互連結し、少なくとも1組の相互連結薄スライス減衰信号を作成するように変更する機能を有するスイッチング・マトリクス60」は、機能・構造からみて出力側信号線の本数が入力側信号線の本数より少なく且つ複数有している構造といえるから、本願補正発明の「前記フォトダイオードアレイにより変換された電気信号を束ねる若しくは選択して、当該束ねられた又は選択された複数のフォトダイオード分の電気信号を出力するものであって、出力側信号線の本数が入力側信号線の本数より少なく且つ複数であるスイッチ部」に相当する。

(8)引用例1発明の「コンピュータ断層撮影システム」は、X線を用いるものであるから、本願補正発明の「X線CTシステム」に相当する。

以上、(1)?(8)の考察から、両者は、

(一致点)
「X線を曝射するX線管と、
このX線管から曝射されたX線を検出する放射線検出器と、
この放射線検出器の出力を収集するデータ収集部と、
このデータ収集部により収集された信号に基づき画像を再構成する画像再構成部を備え、前記放射線検出器及び前記データ収集部により複数の断面のデータを同時に収集するX線CTシステムにおいて、
前記放射線検出器は、
マトリックス状のフォトダイオードアレイと、
前記フォトダイオードアレイにより変換された電気信号を束ねる若しくは選択して、当該束ねられた又は選択された複数のフォトダイオード分の電気信号を出力するものであって、出力側信号線の本数が入力側信号線の本数より少なく且つ複数であるスイッチ部と、を備えたことを特徴とするX線CTシステム。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
フォトダイオードアレイが、本願補正発明では、「基板に取り付けられ」、かつ、「シンチレータによりX線から変換された光を電気信号に変換する」のに対し、引用例1発明では、そのような構造の有無が不明な点。

(相違点2)
放射線検出器が、本願補正発明では、「スイッチ部により束ね若しくは選択された電気信号を外部に取り出すためのフレキシブルプリント基板」と、「前記スイッチ部と前記フレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングを介して電気的に接続する接続手段」とを有しているのに対し、引用例1発明では、そのような構造の有無が不明な点。

4.当審の判断
上記(相違点1)について検討する。
引用例2には上記2.(2)の摘記事項(2-ア)及び(2-イ)の記載事項から、基板の上にX線検出のためのシンチレータを有する複数のフォトダイオードを取り付ける構造が記載されているといえる。

したがって、引用例1発明のフォトダイオードの具体的な構造として、引用例2に記載された基板とシンチレータを有する構造のものを採用し、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になしうることである。

上記(相違点2)について検討する。
各種検出装置の技術分野において、回路が電気的に接続されているフレキシブルプリント基板を検出器に具備する構造は、周知のものである。
例えば、特開平4-263837号公報には、「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、マトリクス状に配置された検出器要素によってX線イメージインテンシファイアの出力螢光面上の像輝度を検出するための検出器に関する。」及び「【0016】図8は基板18上にワイヤ16、端子17を備えた半導体検出器8を示す。基板18はフレキシブルプリント板20を備えた接続板19上に配置されている。接続板19の背面には集積回路21が配置され、この集積回路21はワイヤ22によって端子17とフレキシブルプリント板20とに電気的に接続されている。集積回路21はホトダイオードエレメント8a等を選択するためのスイッチならびに増幅器を含んでいる。」と記載されており、
特開平8-131400号公報には、「【0045】モジュール15は、図2及び図3に示すように、多数の画素に相当する受光素子(フォトダイオード等)を有するチップ状のCCD14と、このCCD14の前面(受光)側に貼付される、回路基板としての機能を一部に有する撮像面保護用の板状のカバーガラス(以下、「ガラス基板」と呼ぶ)18と、このガラス基板18に接続される回路基板である2枚のフレキシブルプリント基板(FPC)19a、19bと、このFPC19a、19bに実装される駆動用及び映像信号処理用の複数の電子部品20とを備えた構成で、この構成の内のガラス基板18の前面(入射)側を除く大部分が樹脂21により一体にモールドされている。このモジュール15は、導電性リング22及び複合同軸ケーブル23を介して装置本体2に電気的に接続されている。」と記載されている。

また、本願補正発明の「前記スイッチ部と前記フレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングを介して電気的に接続する接続手段」は、電気的に接続する構造である点及び出願当初の明細書の記載からみて、「前記スイッチ部と前記フレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングによって電気的に接続する接続手段」と解するのが自然といえる。
そうすると、上記周知の構造とは、「回路部とフレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングによって電気的に接続する接続手段」という点で共通するといえる。

そして、引用例1発明において、上記2.(1)の摘記事項(1-カ)の記載事項からみて、スイッチング・マトリクスは、任意の箇所に構成できることが示唆されている。

したがって、引用例1発明に記載されたアレー検出器に、本願出願前に周知の検出装置に用いられる回路と電気的に接続する構造のフレキシブル基板を付加し、その際、回路として引用例1発明のスイッチングマトリクスを採用することで、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果についても、引用例1、2及び上記周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、当審における審尋に対する平成21年12月28日付け回答書において、「出願人は、本願発明は、スイッチ部とフレキシブルプリント基板との接続において、ワイヤボンディングやバンプボンディングが可能なように信号線の本数を減らしてフレキシブルプリント基板に接続すること、そして図4、図5等をご参照頂ければ幸いなのですがこれらスイッチ部35及び信号線をフォトダイオードアレイ33とともに、硬化性の高いプリント配線板31に設けるのではなく、フレキシブルプリント基板37に配置したことが重要な技術的特徴と考えております。
つまり、本願発明は、単にスイッチ部35をフレキシブルプリント基板37に接続するのにワイヤボンディング又はバンプボンディングを用いただけの思想ではないものです。
基板31及びフレキシブルプリント基板37に対してフォトダイオードアレイ33、スイッチ部35及び信号線をどのように分配して配置したかが重要な点です。」と主張している。
しかしながら、本願補正発明では、「前記基板に取り付けられ、シンチレータによりX線から変換された光を電気信号に変換するマトリックス状のフォトダイオードアレイ」として、基板にフォトダイオードアレイが取り付けられており、「前記スイッチ部と前記フレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングを介して電気的に接続する接続手段」と「スイッチ部」と「フレキシブルプリント基板」との間の電気的接続関係は規定されているものの、スイッチ部がフレキシブルプリント基板に配置されていることの限定はない。なお、請求項2に係る発明に関しては、「基板には、前記フォトダイオードアレイとともに、前記スイッチ部が取り付けられたことを特徴とする」と限定されているため、上記主張とは異なる構造のものといえる。
したがって、上記主張は、本願補正発明または請求項2に係る発明の構成に基づくものとはいえないため、上記主張は採用できない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年8月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成20年4月28日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】X線を曝射するX線管と、
このX線管から曝射されたX線を検出する放射線検出器と、
この放射線検出器の出力を収集するデータ収集部と、
このデータ収集部により収集された信号に基づき画像を再構成する画像再構成部を備え、前記放射線検出器及び前記データ収集部により複数の断面のデータを同時に収集するX線CTシステムにおいて、
前記放射線検出器は、
基板と、
前記基板に取り付けられ、シンチレータによりX線から変換された光を電気信号に変換するマトリックス状のフォトダイオードアレイと、
前記フォトダイオードアレイにより変換された電気信号を束ねる若しくは選択して、当該束ねられた又は選択された複数のフォトダイオード分の電気信号を出力するものであって、出力側信号線の本数が入力側信号線の本数より少なく且つ複数であるスイッチ部と、 このスイッチ部により束ね若しくは選択された電気信号を外部に取り出すためのフレキシブルプリント基板とを備えたことを特徴とするX線CTシステム。」

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び2は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「前記スイッチ部と前記フレキシブルプリント基板とをワイヤボンディング又はバンプボンディングを介して電気的に接続する接続手段」との限定を除いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定的な発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3.」に記載したとおり,引用例1発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである以上、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-19 
結審通知日 2010-03-23 
審決日 2010-04-07 
出願番号 特願2005-375326(P2005-375326)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 居島 一仁
後藤 時男
発明の名称 X線CTシステム  
代理人 中村 誠  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 村松 貞男  

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