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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない C22C
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない C22C
管理番号 1217219
審判番号 訂正2009-390141  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-11-26 
確定日 2010-05-17 
事件の表示 特許第2930880号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第2930880号(平成6年10月14日特許出願、平成11年5月21日設定登録)の明細書及び図面を本件審判請求書に添付された全文訂正明細書及び訂正図面のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正事項は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
訂正前の図面の【図5】を削除し、【図6】を【図5】と訂正する。

(2)訂正事項2
発明の詳細な説明の【0031】の「図5?図6」を「図5」と訂正する。

(3)訂正事項3
発明の詳細な説明の【0032】の「図5は、本実施例において、アーク式差圧鋳造法により製造された2種の異なる寸法のZr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊のほぼ中央部でしかも横断面の中心域でのX線回折図形を示している。これらの合金塊は直径10mmΦと直径16mmΦの丸棒状であった。」
を、
「本実施例において、アーク式差圧鋳造法により製造された2種の異なる寸法のZr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊は直径10mmΦと直径16mmΦの丸棒状であった。」
と訂正する。

(4)訂正事項4
発明の詳細な説明の【0032】の「いずれの合金塊においても、X線回折図形にはブロードなハローピークのみしか見られず、構成相は主としてアモルファス相であることがわかる。」
を、
「いずれの合金塊においても、X線回折の結果(図示せず)、構成相は主としてアモルファス相であることがわかった。」
と訂正する。

(5)訂正事項5
発明の詳細な説明の【0035】の「図6」を「図5」と訂正し、図面の簡単な説明の「【図6】」を「【図5】」と訂正する。

(6)訂正事項6
図面の簡単な説明の「【図5】 本発明の実施例において製造された直径10mmΦおよび直径16mmΦの円柱状大型のバルク状Zr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊の横縦断面における中央域から取られたX線回折パターンである。」を削除する。

2.訂正拒絶理由の要旨

平成22年2月3日付けで通知した訂正拒絶理由の要旨は、「訂正事項1?6は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものとはできないから、訂正事項1?6を有する本件補正は、特許法第126条第1項ただし書き各号のいずれにも該当せず、特許法第126条第1項の規定に適合するものではないから、本件訂正は認められない。」というものである。(なお、ここでいう特許法第126条第1項とは、平成6年改正特許法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項をいい、以下、同じ意味で用いる。)

3.当審の判断
請求人は、上記訂正拒絶理由に対して、指定した期間内である平成22年3月8日付けで意見書を提出し、『特許第2930880号の明細書及び図面を本件審判請求書に添付された全文訂正明細書及び訂正図面のとおりとする訂正(以下、本件訂正という)の内容は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に該当するものであり、特許法第126条第1項の規定に適合するものである』(意見書5頁18行?22行)と主張する。
そこで、まず、訂正事項1について、その訂正の目的が、特許法第126条第1項ただし書き第3号にいう「明りょうでない記載の釈明」に該当するかを検討し、その後、特許法第126条第1項ただし書き第1号、第2号に該当するかを検討する。
次に、訂正事項1の図面を削除する訂正に合わせて行う訂正事項2?6について検討する。

(1)訂正事項1について

(1-1)明りょうでない記載の釈明について

ア)請求人の前記主張についての具体的内容は、審判請求書にて主張した内容と同趣旨のものであり、『本件訂正は、本件特許の特許図面の図5と、添付書類(3)(審決注;Materials Transaction, JIM, VOl.34, No.12, (1993), PP.1234 to 1237)に掲載された図3とは、それぞれ異なる製造方法によって製造された同一合金組成及び同一寸法形状のバルク状アモルファス合金のX線回折パターンであるということができるが、両者は同一であることを請求人自らが確認した結果、先に添付書類(3)に掲載された図3と同一の本件の特許明細書の図5が、添付書類(3)に記載された「石英管中においてZr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)の溶融合金の水中焼入れを行う」という製造方法によって作製された直径10mmΦと直径16mmΦの2種の寸法の異なるZr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)の円筒状合金のX線回折パターンであり、本件特許のアーク式差圧鋳造法により製造された直径10mmΦと直径16mmΦの2種の寸法の異なるZr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)丸棒状合金の横縦断面における中央域から取られたX線回折パターンではないことを確認した上で、本出願人自らがその訂正をするものである。』(意見書6頁3行?15行)から、『図5及び図5に関する明細書の記載は、本件特許発明を不明確にするとされ、特許法36条第6項第2号の規定に違背する恐れがある以上、また、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確に記載したものではないとされ、特許法36条第4項第1号の規定に違背する恐れがある以上、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する不明瞭な記載の釈明に該当し、法の趣旨からして、認められるべきものである。』(意見書6頁27行?7頁2行)というものである。

イ)しかしながら、平成22年2月3日付け訂正拒絶理由においても指摘したとおり、「明りょうでない記載の釈明」とは、その記載の不明りょうさを正して、その記載本来の意味内容を明らかにすることであるところ、【図5】に記載されたバルク状Zr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊の横縦断面に係るX線回折パターンについて、それ自体の記載内容は明りょうであり、また、それ自体の記載内容が明細書や他の図面の記載との関係で不合理を生じている記載ということもできない。
すなわち、本件特許第2930880号の請求項1?8に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、本件特許第2930880号の明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の記載によれば、アモルファス金属について、従来法である金型鋳造法または高圧ダイキャスト法によって厚さ9mmまでのバルク形状のものは製造できるものの、従来のすべての方法では、任意形状の大型のアモルファス合金を製造することはできなかったため、大型のアモルファス合金の製造に至る新しい固化技術の開発及びさらに低い臨界冷却速度を持つアモルファス合金の開発を発明が解決すべき課題とし(【0004】、【0005】)、本発明者が、先に、Zr-Al-Ni-Cu系において、石英管内の溶融物を水中に入れて急冷することにより、直径16mm以下、長さ150mmのバルク状アモルファス合金を製造できることを知見し、溶融状態の金属材料を水冷鋳型に瞬時に鋳込むことにより、簡単な操作で容易に種々の形状のさらに大型の金属ガラスを製造することができる差圧鋳造式金属ガラスの製造方法、および、差圧鋳造式金属ガラスの製造装置を提供するものである。(【0006】、【0007】、【0009】)
そして、本件特許明細書の「図5」に関連した記載事項についてみると、【0025】には、実施例として、本発明者が、先に、石英管内の溶融物を水中に入れて急冷することによりバルク状アモルファス合金を得たとするZr-Al-Ni-Cu系合金である、Zr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金について、本件特許発明に係る製造方法および製造装置を用いて、「直径10mmΦ×長さ500mm、16mmΦ×長さ200mm、30mmΦ×長さ100mmの3種の大型のアモルファスZr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊を製造した。」ことが記載され、【0032】には、「図5」は、前記の3種の大型のアモルファスZr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊のうち、「直径10mmΦと直径16mmΦ」の「Zr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊のほぼ中央部でしかも横断面の中心域でのX線回折図形」を示している、そして、この「X線回折図形にはブロードなハローピークのみしか見られず、構成相は主としてアモルファス相であることがわかる」と記載され、さらに、図面の【図5】には、確かに、前記【0032】に記載されたとおりの、アモルファス相であることの根拠となるブロードなハローピークを示すX線回折パターンが記載されている。
そうすると、本件特許明細書の【図5】に記載されたバルク状Zr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊の横縦断面に係るX線回折パターンは、それ自体の記載内容は明りょうであり、また、それ自体の記載内容が、本件特許明細書の【0025】や【0032】等の関連する記載内容と整合し、何ら不合理を生じている記載は認められず、他の図面の記載との関係で不合理を生じている記載ということもできない。

ウ)また、請求人は、意見書において、『そもそも、訂正の審判は、一部に瑕疵がある特許には、その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判を請求される恐れがあるので、そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておこうとする者のための制度であり、また、不明瞭な記載あることにより、侵害事件などを起こしやすいので、記載を明確にして争いを事前に防ぐためのものである。』(意見書6頁22行?26行)と主張する。
しかしながら、請求人の主張は、特許明細書中に瑕疵があることを前提とするものであるところ、本件特許明細書には、その記載内容において、不明りょうな記載や不合理を生じるような記載はなんら見あたらず、明りょうでない記載の釈明を特段に必要とする記載はないのであるから、前記請求人の主張は、前提において誤っており、採用することはできない。(東高判平成5(行ケ)第151号(平成6.10.26)参照)

エ)また、請求人は、意見書において、新たに、『本件特許の明細書及び図面は、当業者が実施しても製造することができない記載を含むものであり、この記載は、本件特許発明を不明確にする恐れがあり、特許法36条第6項第2号の規定に違背する恐れがあるものであり、また、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確に記載したものではないとされる恐れがあり、特許法36条第4項第1号の規定に違背する恐れがあるものであり、この点において、本件特許は、一部に瑕疵があるものである。』(意見書6頁16行?21行)と主張する。
しかしながら、前記イ)、ウ)において述べたとおり、本件特許明細書には、その記載内容において、不明りょうな記載や不合理を生じるような記載はなんら見あたらないのであるから、当業者が実施しても製造することができない記載を含むものとはいえない。

オ)してみると、「訂正前の図面の【図5】を削除し、【図6】を【図5】と訂正する。」とする訂正事項1は、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものには該当しない。

(1-2)特許請求の範囲の減縮について
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を生じるものではないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。

(1-3)誤記の訂正について
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいうものであり、「誤記であるかどうかは、本件明細書自体から明らかでなければならない。」(東高判平成15(行ケ)第525号(平成16.8.24)の「第5」の「1」の「(3)」を参照)から、誤記の根拠は、訂正前の特許明細書又は図面に基づかなければならない。
しかしながら、訂正前の本件特許明細書又は図面を検討しても、【図5】に記載されたバルク状Zr_(65)Al_(7.5)Ni_(10)Cu_(17.5)合金塊の横縦断面に係るX線回折パターンについて、誤記の根拠となる記載は認められない。
してみると、訂正事項1は、「誤記の訂正」を目的とするものには該当しない。

(1-4)小括
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものに該当するものとはできない。

(2)訂正事項2?6について
訂正事項2?6は、前記訂正事項1の図面を削除する訂正に合わせて、発明の詳細な説明、及び、図面の簡単な説明の記載を訂正するものである。 しかしながら、訂正事項1が、前記「3.当審の判断」の「(1)訂正事項1について」にて検討したとおり、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものとはできないのであるから、訂正事項1に合わせて行う、訂正事項2?6についても、訂正事項1と同様、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものとはできない。

4.むすび
以上のとおり、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き各号のいずれにも該当せず、特許法第126条第1項の規定に適合するものではない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-16 
結審通知日 2010-03-18 
審決日 2010-04-05 
出願番号 特願平6-249254
審決分類 P 1 41・ 853- Z (C22C)
P 1 41・ 852- Z (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 青木 千歌子

山本 一正
登録日 1999-05-21 
登録番号 特許第2930880号(P2930880)
発明の名称 差圧鋳造式金属ガラスの製造方法および装置  
代理人 三和 晴子  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 三和 晴子  
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