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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1218049 |
審判番号 | 不服2009-6811 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-01 |
確定日 | 2010-06-10 |
事件の表示 | 特願2004-241816「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-321836〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件の経緯概要は以下のとおりである。 特許出願 平成16年8月23日(特願2000-351039号(出願日:平成12年11月17日)の分割出願である特願2004-241748号(出願日:平成16年8月23日)の分割出願) 手続補正 平成16年8月23日 審査請求 平成16年8月23日 拒絶理由 平成20年4月14日 手続補正 平成20年6月12日 拒絶理由 平成20年10月15日 手続補正 平成20年12月13日 拒絶査定 平成21年2月26日 審判請求 平成21年4月1日 第2.本願発明について 本件出願の特許請求の範囲の記載は、平成20年12月13日付の手続補正書における請求項1?4に記載された次のとおりのものであり、以下本願発明1?4という。 【請求項1】 複数種類の図柄を表示した複数のリールと、 各前記リールに対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるときに遊技者が操作するストップスイッチと、 役の抽選を行う役抽選手段と、 前記リールの回転開始時から前記ストップスイッチが操作されるまでの時間を計測する回転時間計測手段と、 前記役抽選手段による役の抽選結果に基づいて前記リールを停止制御するリール停止制御手段と を備え、 前記リール停止制御手段は、 前記回転時間計測手段により計測された時間が所定時間を経過するまでに前記ストップスイッチが操作されたときは、第1停止制御によって前記リールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後に前記ストップスイッチが操作されたときは、第2停止制御によってリールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後、予め定められた時間を経過したときは、前記ストップスイッチが操作されない場合でも、前記リールを自動停止制御するとともに、前記リールを自動停止制御するときは、前記第1停止制御及び前記第2停止制御以外の停止制御によってリールを停止制御し、 前記第1停止制御及び前記第2停止制御は、いずれも、前記役抽選手段で小役に当選したときは、当選した小役を入賞させる停止制御であり、 前記リールの自動停止制御は、前記役抽選手段で小役に当選したときは当選した小役を入賞させる停止制御以外の停止制御であって、前記役抽選手段で当選していない役が入賞しないようにする停止制御である ことを特徴とするスロットマシン。 【請求項2】 複数種類の図柄を表示した複数のリールと、 各前記リールに対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるときに遊技者が操作するストップスイッチと、 役の抽選を行う役抽選手段と、 前記リールの回転開始時から前記ストップスイッチが操作されるまでの時間を計測する回転時間計測手段と、 前記役抽選手段による役の抽選結果に基づいて前記リールを停止制御するリール停止制御手段と を備え、 前記リール停止制御手段は、前記役抽選手段で小役に当選した場合において、 前記回転時間計測手段により計測された時間が所定時間を経過するまでに前記ストップスイッチが操作されたとき、及び前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後に前記ストップスイッチが操作されたときは、いずれも、当選した小役を入賞させる停止制御を行い、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後、予め定められた時間を経過したときは、前記ストップスイッチが操作されない場合でも、前記リールを自動停止制御するとともに、前記リールを自動停止制御するときは、当選した小役を入賞させる停止制御以外の停止制御であって、前記役抽選手段で当選していない役が入賞しないようにする停止制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。 【請求項3】 複数種類の図柄を表示した複数のリールと、 各前記リールに対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるときに遊技者が操作するストップスイッチと、 役の抽選を行う役抽選手段と、 前記リールの回転開始時から前記ストップスイッチが操作されるまでの時間を計測する回転時間計測手段と、 前記役抽選手段による役の抽選結果に基づいて前記リールを停止制御するリール停止制御手段と を備え、 前記リール停止制御手段は、 前記回転時間計測手段により計測された時間が所定時間を経過するまでに前記ストップスイッチが操作されたときは、第1停止制御によって前記リールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後に前記ストップスイッチが操作されたときは、第2停止制御によってリールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後、予め定められた時間を経過したときは、前記ストップスイッチが操作されない場合でも、前記リールを自動停止制御するとともに、前記リールを自動停止制御するときは、前記第1停止制御及び前記第2停止制御以外の停止制御によってリールを停止制御し、 前記第1停止制御及び前記第2停止制御は、いずれも、前記役抽選手段で小役に当選したときは、当選した小役を入賞させる停止制御であり、 前記リールの自動停止制御は、前記役抽選手段で小役に当選したときは当選した小役を入賞させない停止制御であって、前記役抽選手段で当選していない役が入賞しないようにする停止制御である ことを特徴とするスロットマシン。 【請求項4】 複数種類の図柄を表示した複数のリールと、 各前記リールに対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるときに遊技者が操作するストップスイッチと、 役の抽選を行う役抽選手段と、 前記リールの回転開始時から前記ストップスイッチが操作されるまでの時間を計測する回転時間計測手段と、 前記役抽選手段による役の抽選結果に基づいて前記リールを停止制御するリール停止制御手段と を備え、 前記リール停止制御手段は、前記役抽選手段で小役に当選した場合において、 前記回転時間計測手段により計測された時間が所定時間を経過するまでに前記ストップスイッチが操作されたとき、及び前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後に前記ストップスイッチが操作されたときは、いずれも、当選した小役を入賞させる停止制御を行い、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後、予め定められた時間を経過したときは、前記ストップスイッチが操作されない場合でも、前記リールを自動停止制御するとともに、前記リールを自動停止制御するときは、当選した小役を入賞させない停止制御であって、前記役抽選手段で当選していない役が入賞しないようにする停止制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。 第3.原出願の記載事項 本件出願は、特願2004-241748号(以下「原出願」という。)の分割出願であると主張されているから、本件出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であるかどうか検討する。 原出願の出願当初の明細書においては、次の記載がある。 【0063】 そして、リール31の回転開始時から10秒以内にストップスイッチ42が操作されたときは、リール停止制御手段64は、第1停止制御によりリール31を停止制御する。 これに対し、リール31の回転開始時から10秒経過後にストップスイッチ42が操作されたときは、リール停止制御手段64は、第2停止制御によりリール31を停止制御する。 【0064】 なお、リール31の回転開始時から60秒を経過した後は、ストップスイッチ42が操作されない場合でも、リール停止制御手段64は、リール31を自動停止制御する。リール31を自動停止制御するときは、第1停止制御、第2停止制御又はこれら以外の停止制御のうち、いずれによってリール31を停止制御しても良い。 【0070】 そして、第1停止制御は、特別役非当選時の遊技においては、特別役非入賞制御を優先して行うとともに、ハズレ目又はチャンス目を出現させる停止制御である(停止位置決定テーブル65aによる停止制御)。ここでは、チャンス目よりハズレ目の方を優先して出現させる。この特別役非当選時の遊技では、リーチ目が出現することはない。 【0071】 さらに、第1停止制御は、特別役当選時の遊技においては、リーチ目又はチャンス目の出現を優先するとともに、特別役入賞制御を行う停止制御である(停止位置決定テーブル65bによる停止制御)。ただし、第1停止制御による特別役入賞制御は、ストップスイッチ42のオンを検知した位置から数えて2図柄前までの図柄に特別役を構成する図柄が存在するときは、その特別役を構成する図柄が有効ライン上に停止するように、リール31の停止位置を定めたものである。 【0072】 また、第2停止制御は、特別役非当選時の遊技においては、特別役非入賞制御を優先して行うとともに、ハズレ目又はチャンス目をランダムに出現させる停止制御である(停止位置決定テーブル65cによる停止制御)。この特別役非当選時の遊技では、リーチ目が出現することはない。 【0073】 さらに、第2停止制御は、特別役当選時の遊技においては、特別役入賞制御を優先して行うとともに、リーチ目又はチャンス目をランダムに出現させる停止制御である(停止位置決定テーブル65dによる停止制御)。ここで、第2停止制御による特別役入賞制御は、ストップスイッチ42のオンを検知した位置から数えて5図柄前までの図柄に特別役を構成する図柄が存在するときは、その特別役を構成する図柄が有効ライン上に停止するように、リール31の停止位置を定めたものである。すなわち、停止位置決定テーブル65bと、停止位置決定テーブル65dとは、特別役当選時の遊技では、ストップスイッチ42の操作時におけるリール31の位置から停止可能位置までの範囲が異なるものである。 【0077】 さらにまた、以上の停止位置決定テーブル65a?65dにおいて、役抽選手段61で特別役以外の役(小役又はリプレイ)に当選したときは、その当選した役を優先的に入賞させるように、リール31の停止位置が定められている。 【0095】 ステップS9からステップS13に進むと、リール停止制御手段64は、ストップスイッチ42の操作の有無にかかわらず、回転中の全てのリール31を自動停止制御する。このときのリール31の停止制御としては、どのようなものであっても良いが、役抽選手段61で当選していない役が入賞しないようにするとともに、特別役に当選していないときは、リーチ目が出現しないように停止制御する。ステップS13の処理後は、ステップS14に進む。 【0121】 (2)本実施形態では、停止制御の種類として、第1停止制御と第2停止制御とを例に挙げて説明した。しかし、さらに多くの種類の停止制御(第1停止制御及び第2停止制御と異なる停止制御)を設けても良い。この場合には、第3実施形態で示したように、抽選によっていずれの停止制御を用いるかを決定しても良い。あるいは、リール31の回転開始時からN1秒経過前は第1停止制御、N1秒経過後かつN2秒経過前は第2停止制御、N2秒経過後かつN3秒経過前は第3停止制御、・・のようにしても良い。 【0122】 (3)本実施形態では、特別役当選時において、第1停止制御はリーチ目又はチャンス目の出現を優先する停止制御とし、第2停止制御は特別役の入賞を優先する停止制御とした。しかし、これに限らず、例えば特別役当選時であってもチャンス目は出現するがリーチ目は出現しない停止制御を設けても良い。さらにまた、特別役当選時であっても特別役入賞制御を行わない停止制御を設けても良い。 【0124】 (5)本実施形態では、第1停止制御と第2停止制御とは、小役の当選時は、小役を入賞させる制御を行うようにした。しかし、これに限らず、小役の当選時についても、複数の異なる停止制御を設けても良い。 例えば、特定小役の当選時の遊技において、第1停止制御では、できる限り特定小役が入賞するような停止制御を行うようにし、第2停止制御では、特定小役が入賞しない又は入賞しにくい停止制御を行うようにしても良い。 【0125】 この場合に、例えばリール31の回転開始時から10秒経過前、10秒経過後20秒経過前、及び20秒経過後、の3種類の時間帯を設けておく。そして、特定の時間帯にストップスイッチ42が操作されたときは、できる限り当選した特定小役が入賞するような第1停止制御を行い、他の時間帯にストップスイッチ42が操作されたときは、当選した特定小役が入賞しない又は入賞しにくい第2停止制御を行うように、停止制御を切り替えるようにする。 【0127】 さらにまた、特定小役が当選したときに、第1停止制御が行われる時間帯を予め設定しておいても良いが、特定小役の当選時ごとに、第1停止制御が行われる時間帯をいずれの時間帯に設定するかを、抽選等によって決定しても良い。 第4.分割要件の適否についての判断 1.本願発明3,4についての検討 本願発明3,4について検討する。 本願発明3においては「前記リールの自動停止制御は、前記役抽選手段で小役に当選したときは当選した小役を入賞させない停止制御」である点、また本願発明4には「前記リールを自動停止制御するときは、当選した小役を入賞させない停止制御」を行う点の構成があるから、当該構成が原出願に記載された事項の範囲内であるかどうか検討する。 (1)判断その1 請求人は、審判請求書の請求の理由を変更する平成21年5月13日付の手続補正書(以下、単に「審判請求書」という。)において、請求項3,4については、原出願の段落【0064】、【0124】、【0127】を根拠に、原出願に記載した事項の範囲内である旨主張している(審判請求書3.(6))。 段落【0124】には「特定小役の当選時の遊技において、第1停止制御では、できる限り特定小役が入賞するような停止制御を行うようにし、第2停止制御では、特定小役が入賞しない又は入賞しにくい停止制御を行うようにしても良い。」とあるから、第2停止制御については「特定小役が入賞しない停止制御」が行われる点は記載されている。そして、段落【0064】においては、「リール31を自動停止制御するときは、第1停止制御、第2停止制御又はこれら以外の停止制御のうち、いずれによってリール31を停止制御しても良い。」と記載があり、すなわち第2停止制御を自動停止制御に用いてもよい旨が開示されているから、その場合は自動停止時に「特定小役が入賞しない停止制御」が行われるものである。 しかし、段落【0124】に記載された例は、「第1停止制御」において「できる限り特定小役が入賞するような停止制御」を行い、かつ「第2停止制御」において「特定小役が入賞しない停止制御」が行われるというものであって、つまりこの例を採用した場合については、自動停止時の制御も併せれば、 第1停止制御:できる限り特定小役が入賞する 第2停止制御:特定小役が入賞しない 自動停止制御:特定小役が入賞しない という例が導くことができるのみである。 一方、請求項3,4における内容は、 第1停止制御(所定時間を経過するまで):小役を入賞させる 第2停止制御(所定時間を経過した後):小役を入賞させる 自動停止制御(所定時間を経過した後予め定められた時間を経過したとき):小役を入賞させない である。これは、上記した段落【0064】及び【0124】から導くことのできる例とは一致しておらず、よって請求項3,4における、自動停止時に「小役を停止させない停止制御」を行うという事項は、原出願の開示の範囲のものではない。 ところで、請求人は、段落【0127】において「特定小役が当選したときに、第1停止制御が行われる時間帯を予め設定しておいても良い」という記載を根拠に、「第1停止制御の時間帯を「60秒」とし、それ以降には第2停止制御を行うようにすることも、自明である。」と主張している。しかし、原出願において時間帯として区切られているものは、あくまで自動停止が行われる前の時間を区切ったものであって、自動停止が行われるまでの60秒を区切らずに1つの時間帯とした例などは記載されていない。よって、請求人の自明との主張は採用できず、段落【0127】の内容を踏まえても、請求項3,4が原出願の開示の範囲外であるという判断に変わりはない。 (2)判断その2 請求人は、審判請求書において、請求項1,2については、原出願の段落【0064】、【0077】、【0124】等を根拠に、原出願に記載した事項の範囲内である旨主張している(審判請求書3.(2)?(5))。 請求人は「小役の当選時は、第1停止制御及び第2停止制御のいずれも、小役を入賞させる制御を行うものである。」と主張し、その根拠として、段落【0077】、【0124】を挙げている。確かに、段落【0124】においては「本実施形態では、第1停止制御と第2停止制御とは、小役の当選時は、小役を入賞させる制御を行うようにした。」という記載があるが、段落【0124】全体としては「本実施形態では…を行うようにした。しかし、これに限らず、…ても良い。」という表現になっていることからすれば、「本実施形態では…を行うようにした。」という部分は、既に述べられた本実施形態の内容を指して確認している記載に過ぎない。 そして、本実施形態について参照すると、段落【0077】には「以上の停止位置決定テーブル65a?65dにおいて、役抽選手段61で特別役以外の役(小役又はリプレイ)に当選したときは、その当選した役を優先的に入賞させるように、リール31の停止位置が定められている。」という記載がある。ここでは「小役を優先的に入賞させる制御」は記載されているものの、「小役を入賞させる制御」は記載されていない。 段落【0077】の「優先的に入賞させる制御」について検討すれば、遊技者の停止操作を要するスロットマシンの技術常識を参酌すると、内部当選時は、遊技者の停止操作タイミングに基づいてできる限り内部当選した役に対応する図柄を引き込む制御を行うことが一般的であるから、段落【0077】の「優先的に入賞させる制御」とは「遊技者の停止操作タイミングに基づいてできる限り内部当選した役に対応する図柄を引き込む制御」のことと解することが自然である。一方、全リールにおいて該当する図柄が中4コマ間隔以内で配置されているような特殊な例を除けば停止操作タイミングによっては当該図柄を引き込めない場合があることも常識であって、すなわち何らかの特別な設定等を行わない限り内部当選時に内部当選した役を常に入賞させることなどは不可能である。 とすれば、段落【0124】の「小役を入賞させる制御」とは、その文言から直接判断すれば「遊技者の停止操作タイミングに関わらず常に小役を入賞させる」といった制御とも解される可能性があるかもしれないが、段落【0124】は段落【0077】の記載内容を受けた記載であることは疑いなく、そして段落【0077】の内容とは異ならせて「停止操作タイミングに関わらず常に小役を入賞させる制御」とするためには段落【0077】(技術常識にも整合している)に対して何らかの特別な設定等を付加する必要があるにも関わらず、段落【0124】にはそのような設定等を示唆する記載は何らないのであるから、段落【0124】の「本実施形態では…を行うようにした。」という部分は、やはり本実施形態である段落【0077】の内容についての確認的記載に留まるとしか解することができず、文言が異なっているのは簡略的に記載したため(あるいは誤記)と解することが自然である。 とすれば、段落【0064】における「リール31を自動停止制御するときは、第1停止制御、第2停止制御又はこれら以外の停止制御のうち、いずれによってリール31を停止制御しても良い。」という記載において、「第1停止制御」、「第2停止制御」とは「小役を優先的に入賞させる制御」と解されるものであって、そしてその場合は「これら以外の停止制御」とは「「小役を優先的に入賞させる制御」以外の停止制御」となるが、これが具体的にどのような停止制御を意味するのか理解することができず、結局、原出願においては、自動停止時に「小役を停止させない停止制御」を行うことなどは開示されていないものである。 よって、請求項3,4における、自動停止時に「小役を停止させない停止制御」を行うという事項は、原出願から導くことができるものではない。 (3)結び よって、上記判断その1,その2いずれによっても、請求項3,4は原出願の開示の範囲外のものであると判断される。したがって、本件出願は分割要件を満たしていない。 2.本願発明1,2についての予備的検討 一方、本願発明1,2については、特段判断は不要であるが、以下の点を付言しておく。 本願発明1,2における「当選した小役を入賞させる停止制御以外の停止制御」という記載は、具体的にどのような停止制御を意味しているのか不明瞭である。 しかし、これについて請求人は、平成20年12月13日付の意見書の(3-b)において「補正後の請求項1では、リールの自動停止制御は、「当選した小役を入賞させる停止制御以外の停止制御」としているが、これに対して補正後の請求項3では、上記記載を、「当選した小役を入賞させない停止制御」という表現にしたものであり、補正後の請求項1と実質同一である。」と主張し、また請求項2についても請求項4と実質同一であるという同様の主張をしている(同意見書の(4-b))から、これを踏まえれば、請求項1,2の「当選した小役を入賞させる停止制御以外の停止制御」という記載は、請求項3,4の「当選した小役を入賞させない停止制御」と同じ意味と解されるから、上記1.(2)における判断に同じく、原出願に開示されているものではないと判断される。 第5.本願発明の進歩性の判断 第4.で検討した通り、本件出願は分割要件を満たしていないから、本願の出願日は平成16年8月23日である。 1.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-153596号公報(以下「引用文献1」という。)は、本件出願がその分割出願であると主張している出願の公開公報であって、その発明の実施の形態(段落【0027】?【0119】)の内容は、本件出願の発明を実施するための最良の形態(段落【0012】?【0104】)の内容と同一であるから、摘記は省略する。 そして、引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「複数種類の図柄を表示した複数のリールと、 各前記リールに対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるときに遊技者が操作するストップスイッチと、 役の抽選を行う役抽選手段と、 前記リールの回転開始時から前記ストップスイッチが操作されるまでの時間を計測する回転時間計測手段と、 前記役抽選手段による役の抽選結果に基づいて前記リールを停止制御するリール停止制御手段と を備え、 前記リール停止制御手段は、 前記回転時間計測手段により計測された時間が所定時間を経過するまでに前記ストップスイッチが操作されたときは、第1停止制御によって前記リールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後に前記ストップスイッチが操作されたときは、第2停止制御によってリールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後、予め定められた時間を経過したときは、前記ストップスイッチが操作されない場合でも、前記リールを自動停止制御するとともに、前記リールを自動停止制御するときは、前記第1停止制御及び前記第2停止制御以外の停止制御によってリールを停止制御し、 前記第1停止制御及び前記第2停止制御は、いずれも、前記役抽選手段で小役に当選したときは、当選した小役を優先的に入賞させる停止制御であり、 前記リールの自動停止制御は、前記役抽選手段で当選していない役が入賞しないようにする停止制御である スロットマシン。」 2.本願発明3についての検討 (1)対比 ここで引用発明と本願発明3を対比すると、引用発明1と本願発明3は、 「複数種類の図柄を表示した複数のリールと、 各前記リールに対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるときに遊技者が操作するストップスイッチと、 役の抽選を行う役抽選手段と、 前記リールの回転開始時から前記ストップスイッチが操作されるまでの時間を計測する回転時間計測手段と、 前記役抽選手段による役の抽選結果に基づいて前記リールを停止制御するリール停止制御手段と を備え、 前記リール停止制御手段は、 前記回転時間計測手段により計測された時間が所定時間を経過するまでに前記ストップスイッチが操作されたときは、第1停止制御によって前記リールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後に前記ストップスイッチが操作されたときは、第2停止制御によってリールを停止制御し、 前記回転時間計測手段により計測された時間が前記所定時間を経過した後、予め定められた時間を経過したときは、前記ストップスイッチが操作されない場合でも、前記リールを自動停止制御するとともに、前記リールを自動停止制御するときは、前記第1停止制御及び前記第2停止制御以外の停止制御によってリールを停止制御し、 前記リールの自動停止制御は、前記役抽選手段で当選していない役が入賞しないようにする停止制御である スロットマシン。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明3においては「前記第1停止制御及び前記第2停止制御は、いずれも、前記役抽選手段で小役に当選したときは、当選した小役を入賞させる停止制御」であるのに対して、引用発明においては「前記第1停止制御及び前記第2停止制御は、いずれも、前記役抽選手段で小役に当選したときは、当選した小役を優先的に入賞させる停止制御」である点。 [相違点2] 本願発明3においては、リールの自動停止制御は「前記役抽選手段で小役に当選したときは当選した小役を入賞させない停止制御」であるのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。 (2)相違点の判断 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 本願発明3における「当選した小役を入賞させる停止制御」の意味について場合分けして検討する。 請求項3の当該記載について発明の詳細な説明の内容に基づいて解釈するとすれば、確かに本件出願の段落【0099】には「第1停止制御と第2停止制御とは、小役の当選時は、小役を入賞させる制御を行うようにした」との記載がある。しかし、上記第4.1.(2)においても説明したように、この表現は既に述べられた本実施形態の内容を指して確認している記載に過ぎないと解されるから、その内容は段落【0052】における、小役を「優先的に入賞させる」という制御であると解される。とすれば、請求項3の当該記載についても同様に解すべきであって、となると相違点1は実質的な相違点ではない。 一方、請求項3の当該記載について、その文言から直接判断すれば、「遊技者の停止操作タイミングに関わらず常に当選した小役を入賞させる停止制御」とも解される可能性があるかもしれない。当業者であれば、例えば上記第4.1.(2)において示したような特別な設定等を行うことによって、「常に当選した小役を入賞させる」ようにすること自体は実施可能であるから、あくまで特許請求の範囲の文言通り解釈すべきという判断もあり得るとも考えられる。しかし、そのような判断が可能であるという立場を取るとすれば、引用文献1における段落【0114】には「小役を入賞させる制御」という記載があって、これは請求項3の当該記載と文言上は同一なのであって、そして引用文献1における当該記載についてもその文言通り解釈することも同様に可能であると判断されるから、やはり相違点1は実質的な相違点ではない。 [相違点2について] 特開2003-79809号公報(以下「引用文献2」という。)の特に段落【0110】?【0111】には、 「所定の当選役に当選しても、 自動停止抽選手段160の抽選の結果入賞させることに決定したとき、停止テーブルとして当選役に対応した自動停止用の停止テーブルを選択し、 一方、自動停止抽選手段160の抽選結果入賞させることに決定していないとき、外れの停止図柄を自動的に停止させるための、いわゆる外れの停止テーブルを選択する」 という技術が記載されており(以下「引用文献2記載の技術」という。)、抽選を介するものの、自動停止制御手段としてハズレで止める技術は公知であった。 また、警察庁から平成16年5月26日付けで「技術上の規格解釈基準」(丁生環発第155号)が開示され、その「(4)「別表第五回胴式遊技機に係る技術上の規格」関係」の(1)イ(ヘ)において、「遊技機が、遊技者による回転停止装置の作動を経ずに回胴の回転を停止させるときに作動中の条件装置に係る図柄の組合せを停止させる性能を持つものである場合には、遊技メダル等の獲得を著しく容易にする性能を持つものであると解し、「遊技の公正を害する調整を行うこと」を可能とする性能を持つものであると解する」という記載がある(警察庁のHPにおける「警察庁の施策を示す通達」の「生活環境課」の当該名のPDF(36ページ)を参照。URLはhttp://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/seikan/seikan20040526-1.pdf)から、自動停止によっては内部当選役に入賞させないようにすることも当分野においては周知のことであった(以下「周知事項」という。)。 よって、引用発明に引用文献2記載の技術の適用にあたり、周知事項を参照して、本願発明3の相違点2にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。 また、本願発明3の作用効果も、引用発明及び引用文献2から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明3は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第6.むすび 以上のとおり、本件出願は適法な分割出願とは認められないから、本願発明の出願日は 平成16年8月23日であり、そして、本願発明3は原査定の拒絶の理由に基づいて特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について判断するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-05 |
結審通知日 | 2010-04-06 |
審決日 | 2010-04-19 |
出願番号 | 特願2004-241816(P2004-241816) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大澤 元成 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 池谷 香次郎 |
発明の名称 | スロットマシン |
代理人 | 中村 正 |