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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1218785
審判番号 不服2008-17901  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-14 
確定日 2010-06-14 
事件の表示 特願2001-328236「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 7日出願公開、特開2003-126434〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成13年10月25日に出願されたものであって、平成20年6月6日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年7月14日付けで本件審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成22年1月19日付けで、新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成22年3月10日付けで、意見書及び手続補正書を提出した。

2.当審の判断
2.-1 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月10日付けで補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであり、その記載は次のとおりである。
「左列、中列、右列からなる3列の識別情報群を変動表示可能な表示装置と
、該表示装置に表示される前記3列の識別情報群を変動表示させた後に、表示結果を確定表示させる制御を実行する表示制御手段と、前記表示装置に確定表示される表示結果が、予め定められた特定表示結果になった場合に、遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能な遊技制御手段とを含む遊技機において、
前記表示制御手段は、前記3列の識別情報群を第1の方向である上から下へスクロール変動表示させた後、前記中列の識別情報群が変動表示中で、かつ前記左列と前記右列とが同一の識別情報で一旦停止した場合に、該一旦停止した前記左列と前記右列の識別情報を前記第1の方向とは異なる第2の方向へ移動表示させ、続いて画面を切り換えて、前記中列の識別情報群を形成する複数の識別情報の中から前記一旦停止している左列と右列の識別情報と同一のリーチ識別情報を含んで、かつ前記複数の識別情報の一部で複数の選択識別情報を選択し、前記左列と右列の識別情報を一旦停止させたまま、前記中列の識別情報群から選択した前記複数の選択識別情報を前記第1及び前記第2の方向とは異なる第3の方向である横方向へ一直線に並んだ態様で横方向へ変動表示させることによって、一旦停止している前記左列と前記右列の識別情報が、当該一旦停止している前記左列の識別情報と前記右列の識別情報との間の捕捉表示領域に前記中列の複数の選択識別情報のうち前記リーチ識別情報以外の選択識別情報を表示した態様で前記中列の複数の選択識別情報を横方向へ追跡するような態様で表示制御する追跡表示制御手段を含み、
前記追跡表示制御手段は、前記中列の複数の選択識別情報のうち前記捕捉表示領域に表示されていた前記選択識別情報が前記捕捉表示領域から外れて、前記捕捉表示領域に、横方向に一直線に並んで横方向へ変動している前記中列の複数の選択識別情報のうち前記リーチ識別情報を表示した場合、前記予め定められた特定表示結果とすることを特徴とする遊技機。」

2.-2 引用刊行物の記載事項
当審の拒絶理由に引用したパチンコ必勝ガイド1998年8月16日号(以下「引用文献1」という。)の「CRパチンピックZ」というパチンコ機を紹介するページには、以下の記載が図示とともにある。

ア.第4ページの遊技機の遊技盤の図
第4ページ右下側には、「7 7 7」と表示された表示装置を中央部に有するパチンコ遊技機の図が記載されている。

イ.第5ページの「判別のチャンスは一瞬!見逃すな!!」の項
第5ページの左上隅に「大当り成立」というコメントとともに「7 7 7」が表示された表示装置の図と、「大当り時のデジタル左ランプの状態」とタイトルが付された図表に大当り出目として「0?V」までの14種類の絵柄が記載されている。

ウ.第6ページの連続スベリの項
「リーチorホッピングに発展すれば期待大 連続スベリ」というタイトル、「連続回転中に右デジタルの1コマスベリが立て続けに発生すれば大当たり予告となる・・・」という文章とともに、左列及び中列が表示装置中央部に完全な形で視認できる「8 2」の絵柄と、右列に変動中であることを示す赤い下向き矢印と「9 8」の部分的に視認できる絵柄からなる図が表示されている。

エ.第7ページの「キャラクターリーチへは右から発展」の囲み表示の項
「この機種のリーチの特徴は左・中・右のどこのデジタルでもリーチがかかるということである。デジタルの停止順は左→中→右の順なのだが、中・右とテンパイすれば左デジタルで、左・右とテンパイすれば中デジタルでリーチがかかるのだ。・・・ノーマルヒル系、フィギュア系、ホッケー系、ラージヒル系と計4系統ある各キャラクター系のリーチも右リーチからしか発展しない。各キャラクターリーチへは右リーチ確定後、ジャンプアクション出現から発展(そのままノーマルヒル系へ発展する場合あり)。・・・」

オ.第7ページの「リーチ発生」の囲み表示の項
「全てのキャラリーチへはジャンプアクションから発展!」及び「右リーチ確定後、ながのくんのジャンプシーンが出現しなければキャラクターリーチへは発展しない。」という文章とジャンプ台を背景にした「ながのくん」の上半身正面の図が記載されている。

カ.第7ページのラージヒル系のラージヒルビッグの項
「スキージャンプの飛行中をちょうど横から写した(引用例1には「移した」と記載されているが、当審にて「写した」の誤記と認定する)」アングルとなり、それに合わせてデジタルも横スクロール。飛距離が長く、バックが青空からふもとの建物へと流れる。」という文章とともに、表示装置の上部左側に「3 3」の絵柄とジャンプスキーヤー(ながのくん)の姿、中間部から下部にかけて左下がりの雪面、下部に「6 5 4」の絵柄が表示される図が記載されている。

キ.第7ページのラージヒル系のラージヒル雪だるまの項
「ハズレ絵柄で着地したと思いきや、ながのくんがころころと転がり、デジタルが再始動するという2段階。ながのくんが雪だるまになったところで停止。」という文章とともに、表示装置の上部左側に「3 3」の絵柄、中間部から下部にかけて左下がりのランディングバーンらしき雪面と雪上の雪だるま、下部に停止した絵柄が表示される図が記載されている。

2.-3.引用文献1記載の発明の認定
記載事項ア.によれば、引用文献1には、表示装置を有するパチンコ遊技機が記載されている。

記載事項イ.によれば、引用文献1には、表示装置に大当りが成立した例として「7 7 7」が表示された場合と、大当たりが成立する出目として14種類の絵柄のあることが記載されているから、絵柄が揃うと大当りとなる点が記載されている。

記載事項ウ.によれば、引用文献1の表示装置は、左列、中列、右列の3列において絵柄が変動表示可能であって、リーチに発展する前は表示装置の中央部に前記3列における絵柄が上から下へスクロール変動表示される点が記載されている。

記載事項エ.及びオ.によれば、引用文献1には、左→中とデジタルが停止した際にリーチ状態となっている右リーチが確定し、「ながのくん」のジャンプシーンが出現すると、 ノーマルヒル系、フィギュア系、ホッケー系、ラージヒル系と計4系統あるキャラクターリーチへ発展する点が記載されている。

記載事項カ.によれば、引用文献1には、ラージヒル系とよばれるキャラクターリーチにおいて、左上部に「3 3」の絵柄が表示される表示装置の下部に、キャラクターの横方向への移動に合わせて絵柄が横スクロールして表示されるラージヒルビッグという表示が行われる点が記載されている。
また、「バックが青空からふもとの建物へと流れる」という記載から、キャラクターと絵柄は固定的に所定の位置に表示され続けるが、背景は移動するように表示されていることも明らかである。

記載事項キ.によれば、引用文献1には、ラージヒル系とよばれるキャラクターリーチにおいて、記載事項カ.のラージヒルビッグに引き続き、上部に「3 3」の絵柄の表示が維持されており、キャラクタが変身した後に、表示装置の下部で横スクロールしていた絵柄が停止表示される点が記載されている。

以上を整理すると、引用文献1には、
「左列、中列、右列からなる3列の14種類の絵柄を変動表示可能な表示装置と、該表示装置に表示される前記3列の変動表示列を変動表示させた後に、表示結果を確定表示させ、前記表示装置に確定表示される表示結果が同じ絵柄で揃った場合に、大当りとなる遊技機において、
前記3列の14種類の絵柄は表示装置において上から下へスクロール変動表示され、
上から下にスクロール変動表示の結果、左列と中列が停止してリーチになったとき、キャラクターリーチが表示され、リーチ状態を構成している2つの列に表示された絵柄は表示装置の上部左側で表示され、
前記2つの列に表示された絵柄はその場所で表示が維持され、所定のキャラクターが出現し、変動中の右列は表示装置下部において横スクロールにスクロール方向が変更されるとともに、背景が移動するように表示され、
その後、スキージャンプで飛行していたキャラクタが着地して、変身すると横スクロールで変動していた変動表示列が停止表示される遊技機。」が開示されていると認めることができる。(以下、「引用発明」という。)

2.-4. 本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明の記載における「14種類の絵柄」は、本願発明における「識別情報群」に相当する。
「表示装置に確定表示される表示結果が同じ絵柄で揃った場合」は、「予め定められた特定表示結果」に、
「大当り」は、「遊技者にとって有利な遊技状態」に相当することは、遊技機の技術分野における周知技術を考慮すると自明である。
そして、パチンコ遊技機において、引用文献1に記載されているような演出表示を行う場合、本願発明の「表示制御手段」、「遊技制御手段」に相当する構成を有していることは当然のことであり、引用発明が上記両手段を有していることは自明である。
さらに、引用発明の遊技機において、3列の14種類の絵柄は、まず上から下へスクロール変動表示していることから、本願発明の「第1の方向」を有していると言え、その後キャラクターリーチになったときにはリーチを構成している絵柄の表示位置は表示装置の上部左側に変更されており、その際に表示装置の中央部から上部左側へ移動表示されることは自明であるから、本願発明の「第2の方向」を有していると言え、さらにキャラクターリーチになったときに、いまだ変動中の絵柄列はスクロール方向が変更されて横スクロールの変動表示を行うようになるから、本願発明の「第3の方向」を有していると言える。
また、引用発明は、キャラクターリーチ中は、表示装置の上部左側において、リーチを構成する絵柄とキャラクターが固定的に表示され続け、変動を続けている絵柄は、表示装置の下部において横スクロールしているとともに、本願において「追跡」とは、リーチ状態を構成する識別情報が画面の同じ位置に表示された状態で、横方向に一直線に並んだ他の識別情報が横方向に移動するという表示態様を「追跡」と定義していることを考慮すると、本願発明の「追跡表示」に相当する表示を行っていることになり、それに伴い「追跡表示手段」を有していることは自明である。
以上のことより、引用発明と本願発明とは、
〈一致点〉
「左列、中列、右列からなる3列の識別情報群を変動表示可能な表示装置と
、該表示装置に表示される前記3列の識別情報群を変動表示させた後に、表示結果を確定表示させる制御を実行する表示制御手段と、前記表示装置に確定表示される表示結果が、予め定められた特定表示結果になった場合に、遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能な遊技制御手段とを含む遊技機において、
前記表示制御手段は、前記3列の識別情報群を第1の方向である上から下へスクロール変動表示させた後、ある一列の識別情報群が変動表示中で、かつ他の二列が同一の識別情報で一旦停止した場合に、該一旦停止した前記二列の識別情報を前記第1の方向とは異なる第2の方向へ移動表示させ、前記二列の識別情報を一旦停止させたまま、前記一列の識別情報群を前記第1及び前記第2の方向とは異なる第3の方向である横方向へ一直線に並んだ態様で横方向へ変動表示させることによって、一旦停止している前記二列の識別情報が、前記一列の複数の選択識別情報を横方向へ追跡するような態様で表示制御する追跡表示制御手段を有する遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
追跡表示を含む一連のリーチ演出を開始する際のリーチを構成する識別情報群の列が、本願発明では「左列と右列」であるのに対して、引用発明では「左列と中列」である点。

<相違点2>
リーチ成立後、横方向に変動表示している識別情報が、本願発明では「左列と右列の識別情報と同一のリーチ識別情報を含んで、かつ前記複数の識別情報の一部で複数の選択識別情報を選択したもの」であるのに対して、引用発明ではどのような識別情報が用いられるのかが不明な点。

<相違点3>
本願発明では「一旦停止している前記左列と前記右列の識別情報が、当該一旦停止している前記左列の識別情報と前記右列の識別情報との間の捕捉表示領域に前記中列の複数の選択識別情報のうち前記リーチ識別情報以外の選択識別情報を表示した態様で前記中列の複数の選択識別情報を横方向へ追跡するような態様で表示制御」するのに対して、引用発明では「複数の選択識別情報を横方向へ追跡するような態様で表示制御」しているものの、「左列の識別情報と右列の識別情報との間の捕捉表示領域」がなく、追跡対象も、相違点2に記載した点に関連して相違点となっており、さらに、本願発明「中列の複数の選択識別情報のうち捕捉表示領域に表示されていた選択識別情報が前記捕捉表示領域から外れて、前記捕捉表示領域に、横方向に一直線に並んで横方向へ変動している前記中列の複数の選択識別情報のうちリーチ識別情報を表示した場合、予め定められた特定表示結果とする」のに対して、引用発明ではどのような態様で大当りが表示されるのか不明である点。

2.-5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
記載事項エ.には、 左・中・右のどこの列からでもリーチがかかる点が記載されているから、本願発明と同様に左列と右列とが同一の識別情報で一旦停止した場合に、追跡表示を含む一連のリーチ演出を開始するようにすることは、当業者にとって容易である。

(2)相違点2について
当審での平成22年1月19日付け拒絶理由通知で引用した特開2001-149559号公報(以下、「引用文献2」という。)には、リーチの成立後に、変動表示を行う識別情報群から不利な図柄を減らして、図柄群を構成する図柄の数を減らして大当りの期待を高めることが記載(【0032】)されており、これは本願発明と同じく「リーチ識別情報を含んで、かつ複数の識別情報の一部で複数の選択識別情報を選択したもの」のことである。
また、この点は、遊技機の技術分野において周知技術(以下、「周知技術1」という。)でもある。
周知技術1として必要ならば、以下の文献を参照されたい。
周知技術を示す文献1:特開2001-259161号公報(【図8】)
周知技術を示す文献2:特開2000-153028号公報(【図6】)
よって、引用発明のリーチの成立後に、変動表示を行う識別情報群として、周知技術1を用いて、相違点2にかかる本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3について
引用文献2には、【図6】から【図8】にかけて、以下のようなリーチ時の演出表示の態様が記載されている。
・変動領域の中央部付近で変動している3列の図柄列から、左と右の図柄列 が停止する。
・停止した左と右の図柄列が、同じ特別図柄を表示すると、リーチ図柄とな る。
・左図柄は縮小しながら変動領域の左隅に移動して表示が維持される。
・右図柄は縮小しながら変動領域の右隅に移動して表示が維持される。
・変動中の中図柄の変動速度が低下して、大爆発のアニメーションが表示さ れる。
・上から下へ変動していた中図柄は、縮小表示されている左図柄及び右図柄 の間、かつ、上方の領域において、楕円軌道上に図柄が整列され、回転す るように変動する。
・楕円軌道上の図柄のうちいくつかが、縮小表示されている左図柄及び右図 柄と同じ図柄に変更され、変動を続ける。
・縮小表示されている左図柄、右図柄の間、かつ、上方の領域のほぼ中央部 において、左図柄及び右図柄と同じ図柄が停止した場合、大当り図柄とな り、大当り遊技が行われる。

引用文献2において、本願発明における「横方向へ一直線に並んだ態様で横方向へ変動表示」する構成がなく「追跡するような態様」をとらないものの、「縮小表示されている左図柄、右図柄の間、かつ、上方の領域のほぼ中央部において、左図柄及び右図柄と同じ図柄が停止した場合、大当り図柄となり、大当り遊技が行われる」のであるから、引用文献2の「縮小表示されている左図柄、右図柄の間、かつ、上方の領域」は、本願発明の「捕捉表示領域」に相当し、リーチ成立後の識別情報群として「左列と右列の識別情報と同一のリーチ識別情報を含んで、かつ複数の識別情報の一部で複数の選択識別情報を選択したもの」とすることは、相違点2で検討したように、引用文献2にも記載されている周知技術1であるから、引用発明のリーチの成立後に識別情報群を変動表示させる領域として、引用文献2に記載された「縮小表示されている左図柄、右図柄の間、かつ、上方の領域であって、前記領域に縮小表示されている左図柄、右図柄と同じ図柄が停止した場合、大当り図柄となり、大当り遊技が行われる」演出表示態様を用いて、相違点3にかかる本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

2.-6.進歩性のまとめ
以上のとおり、相違点1?4に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易であり、当該構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-05 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-27 
出願番号 特願2001-328236(P2001-328236)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
池谷 香次郎
発明の名称 遊技機  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  

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