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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1218995
審判番号 不服2007-34562  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-21 
確定日 2010-06-23 
事件の表示 特願2001-369651「ウェハープローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月28日出願公開、特開2002-243761〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成13年12月4日(パリ条約による優先権主張 2000年12月4日、米国)に出願した特許出願であって、平成19年8月29日付けで明細書又は図面についての手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、同年9月14日付け(送達 同年同月25日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書又は図面についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]独立特許要件違反

(1)補正の内容・補正の適否

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正前の、
「(a)支持部と、
(b)前記支持部に支持され、かつ前記支持部から延在する多数の接触フィンガーであって、これら多数の接触フィンガーを、前記支持部に支持しない状態ではタブによって所定の配列に維持し、この所定配列を維持した状態で前記支持部に取り付け、この後前記タブを除去することにより、前記支持部と一体的な組立体をなすようにした該多数の接触フィンガーと、
を具えたことを特徴とするプローブ。」から、補正後の

「(a)支持部(14)と、
(b)前記支持部(14)に支持され、かつ前記支持部(14)から延在する多数の接触フィンガー(16)であって、これら多数の接触フィンガーは、前記支持部(14)に支持しない状態では前記多数の接触フィンガー(16)の末端部分(18)を、共通の支持タブ(26)に取り付け、所定の配列に維持して一体化させた単一のユニットとして製造したものとし、この単一のユニットを前記支持部(14)に取り付け、この後前記支持タブ(26)を除去することにより、前記支持部(14)と一体的な組立体をなすようにした該多数の接触フィンガー(16)と、
を具えたことを特徴とするプローブ。」に補正する補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所を明示するために、請求人が付したものである。)

この補正は、各発明特定事項について、図面符号を括弧で補うとともに、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
(ア)「タブ」を「支持タブ」と限定し、
(イ)「タブによって所定の配列に維持し、この所定配列を維持した状態で前記支持部に取り付け、」を、「前記多数の接触フィンガー(16)の末端部分(18)を、共通の支持タブ(26)に取り付け、所定の配列に維持して一体化させた単一のユニットとして製造したものとし、この単一のユニットを前記支持部(14)に取り付け、」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(2)引用刊行物に記載された事項・引用発明

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-192246号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、「プローブ針の組立て方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。

<記載事項1>
「〔発明の目的〕
(産業上の利用分野)
本発明は半導体ウエハ上に多数のICを作製した最終工程において、作製したICの良、不良を検査する工程で、ICのパッドに接触する多数のプローブ針(以後、探針という)の組立て方法に関する。」(第1ページ左下欄下から第2行?右下欄第5行)

<記載事項2>
「探針の総ての先端が繰り返しパッドに接触するようにプローブカードを組み立てる必要がある。探針の本数は十数本のものから最近では数百本に達するものまで様々であるが、ほとんどの場合、これら多数の探針はボンディングパッドに接触する先端の位置の狂いを少なくするため組立時、絶縁性の高い樹脂で接着成型される。接着成型された探針ブロックを更にガラスエポキシ製のプリント基板に固定し、このプリント基板をウエハプロ-バに取り付けることにより検査工程におけるボンディングパッドへの探針の正確な接触が為される。探針ブロックを固定したプリント基板は通常プローブカードと呼ばれており、一般的にはプローブカードは簡単に交換できる構造となっている。」(第2ページ左上欄第7?20行)

<記載事項3>
「第1図は従来例において示された探針ブロックの断面図で、1が探針となる針金、2が探針ブロックの変形防止のための構造体(例えばセラミックス等)、3が探針群を接着成型するための注型接着剤である。又、第2図は従来例において示された接着成型のための治工具で、図において4は治工具の台、5は接着成型すべき探針(この図では2本しか示していないが、実際はずっと多い)、6は探針の傾きを一定に保つための傾斜面7をもった探針支持リング、8は探針先端10の位置を合わせるための位置決め板9を支持する台である。総ての探針が先端10を位置決め板9の中心付近に空けられた位置決め穴に差し込んだ状態で、探針支持リング6の斜面7の上に並べられた後、該斜面7に注型接着剤を流し、その上に第1図2に示す構造体を乗せて接着成型する。」(第2ページ右上欄第11行?左下欄第6行)

<記載事項4>
「これまで説明したように、探針の先端は、その座標はICのボンディングパッドの座標となるべく正確に合わせる必要がある。」(第2ページ左下欄第8?10行)

・記載事項3及び組立てられた探針ブロックの断面を示す図である第1図から、
(ア)「注型接着剤3によって構造体2に接着成型され、かつ、該構造体2から延在する、多数の探針となる針金1」との技術事項が読み取れる。

・記載事項3、第1図及び従来技術による探針組立て治工具の断面を示す図である第2図から、
(イ)「探針ブロックが組み立てられる前に探針支持リング6の斜面7の上に並べられる「探針5」が、構造体2に接着成型される「探針となる針金1」となる。」との技術事項が読み取れる。

・記載事項3及び第2図から、
(ウ)「多数の探針となる針金1は、構造体2に接着成型しない状態では、該多数の探針となる針金1の先端10を、位置決め板9の位置決め穴に差し込んだ状態で、探針支持リング6の斜面7の上に並べられる。」との技術事項が読み取れる。

・記載事項3及び第1、2図から、最終的に組み立てられる「探針ブロック」は、第1図に図示されるとおり、探針となる針金1、構造体2及び注型接着剤3からなり、探針先端10が差し込まれている位置決め板9は、探針ブロックを構成するものではないことから、
(エ)「探針となる針金1を構造体2に接着成型した後に、位置決め板9を除去する。」との技術事項が読み取れる。

・記載事項3及び第1図から、
(オ)「探針となる針金1を構造体2に接着成型し、探針ブロックとして一体的な組立体をなしている。」との技術事項が読み取れる。

以上の技術事項ア乃至オを総合勘案すると、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。
「構造体2と、
前記構造体2に接着成型され、かつ前記構造体2から延在する多数の探針となる針金1であって、これら多数の探針となる針金1は、前記構造体2に接着成型しない状態では前記多数の探針となる針金1の先端10を、位置決め板9の位置決め穴に差し込んだ状態で、探針支持リング6の斜面7の上に並べられた後、該斜面7に注型接着剤3を流し、その上に前記構造体2を乗せて前記探針となる針金1を前記構造体2に接着成型し、この後前記位置決め板9を除去することにより、前記構造体2と一体的な組立体をなすようにした該多数の探針となる針金1と、
を具えたプローブカード。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「構造体2」は、本願補正発明の「支持部(14)」に、以下同様に、「接着成型」は「支持」に、「多数の探針となる針金1」は「接触フィンガー(16)」に、「先端10」は「末端部分(18)」に、「位置決め板9」は「共通の支持タブ(26)」に、「プローブカード」は「プローブ」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明の「多数の探針となる針金1の先端10を、位置決め板9の位置決め穴に差し込んだ状態で」は、本願補正発明の「多数の接触フィンガー(16)の末端部分(18)を、共通の支持タブ(26)に取り付け」に相当する。

ウ 引用発明において、複数の探針となる針金1は、先端10を一つの位置決め板9の位置決め穴に差し込むことで、一体化させた単一のユニットを形成していることは、明らかである。
よって、引用発明の「多数の探針となる針金1の先端10を、位置決め板9の位置決め穴に差し込んだ状態で、探針支持リング6の斜面7の上に並べられた」も、
本願補正発明の「多数の接触フィンガー(16)の末端部分(18)を、共通の支持タブ(26)に取り付け、所定の配列に維持して一体化させた単一のユニットとして製造したもの」も、
共に、「多数の接触フィンガーの末端部分を、共通の支持タブに取り付け、一体化させた単一のユニットとして製造したもの」である点で共通するといえる。

エ 引用発明の、「斜面7に注型接着剤3を流し、その上に前記構造体2を乗せて前記探針となる針金1を前記構造体2に接着成型し」は、本願補正発明の「単一のユニットを前記支持部(14)に取り付け」に相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明の両者は、
[一致点]
「支持部と、
前記支持部に支持され、かつ前記支持部から延在する多数の接触フィンガーであって、これら多数の接触フィンガーは、前記支持部に支持しない状態では前記多数の接触フィンガーの末端部分を、共通の支持タブに取り付け、一体化させた単一のユニットとして製造したものとし、この単一のユニットを前記支持部に取り付け、この後前記支持タブを除去することにより、前記支持部と一体的な組立体をなすようにした該多数の接触フィンガーと、
を具えたことを特徴とするプローブ。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
一体化させた単一のユニットについて、
本願補正発明が、末端部分を共通の支持タブに取り付けた接触フィンガーを、「所定の配列に維持して」一体化させているのに対し、
引用発明では、先端10を位置決め板9の位置決め穴に差し込んだ探針となる針金1(本願補正発明の「末端部分を共通の支持タブに取り付けた接触フィンガー」に相当。)を、探針支持リング6の斜面7の上に並べて一体化させる際に、所定の配列に維持しているとは明記されていない点。

(4)当審の判断
相違点について検討する。
引用刊行物には、多数の探針となる針金1を構造体2に接着成型させる際の位置合わせに関し、ICボンディングパッドに接触する探針先端10以外の位置合わせについては記載されていないが、この種のプローブカードの技術分野において、探針同士は、探針先端に限らず、先端以外の部分においても電気的な接触を避けなければならないことは、プローブカードの機能を考慮すれば当然な要請であり、例示するまでもなく周知な技術でもある。
よって、多数の探針となる針金1を接着成型する際には、多数の探針の先端以外の箇所も互いに接触しないように、多数の探針となる針金1を予め所定の間隔を保つように固定配置すれば良いことは、当業者にとって明らかである。
してみれば、引用発明において、探針となる針金1を探針支持リング6の斜面7の上に並べる際に、先端10以外の箇所においても、探針同士が電気的に接触しないように、所定の間隔に維持した状態で斜面7の上に並べて一体化させて接着成型すること、すなわち、本願補正発明のように、末端部分を共通の支持タブに取り付けた接触フィンガーを、所定の配列に維持して一体化させるようにすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至22に係る発明は、補正1によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至22に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「(a)支持部と、
(b)前記支持部に支持され、かつ前記支持部から延在する多数の接触フィンガーであって、これら多数の接触フィンガーを、前記支持部に支持しない状態ではタブによって所定の配列に維持し、この所定配列を維持した状態で前記支持部に取り付け、この後前記タブを除去することにより、前記支持部と一体的な組立体をなすようにした該多数の接触フィンガーと、
を具えたことを特徴とするプローブ。」

4 引用刊行物に記載された事項・引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物に記載された事項・引用発明は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

5 対比・判断

本願発明は、本願補正発明の発明特定事項である、「支持タブ」を「タブ」と、また、「前記多数の接触フィンガー(16)の末端部分(18)を、共通の支持タブ(26)に取り付け、所定の配列に維持して一体化させた単一のユニットとして製造したものとし、この単一のユニットを前記支持部(14)に取り付け、」を、「タブによって所定の配列に維持し、この所定配列を維持した状態で前記支持部に取り付け、」に、それぞれ上位概念化したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2(4)」で検討したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-19 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-08 
出願番号 特願2001-369651(P2001-369651)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽飼 知佳  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 松浦 久夫
下中 義之
発明の名称 ウェハープローブ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 来間 清志  
代理人 澤田 達也  
代理人 杉村 興作  

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