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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  E03F
審判 全部無効 2項進歩性  E03F
審判 全部無効 発明者・出願人  E03F
管理番号 1219012
審判番号 無効2008-800164  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-08-26 
確定日 2010-07-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第3348192号発明「グレーチング」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3348192号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3348192号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の特許第3348192号に係る出願は、平成8年5月9日に出願され(特願平8-114767号)、平成14年9月13日に、その請求項1及び2に係る発明につき、特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人より平成20年8月25日付けで、請求項1及び2に係る発明についての特許に対し本件無効審判の請求がなされ、次いで、被請求人より平成20年12月25日付けで答弁書が提出された。
当審は、平成21年4月23日に口頭審理を行い、請求人は、審判請求書、平成21年4月8日付け口頭審理陳述要領書のとおり陳述し、被請求人は答弁書、平成21年4月8日付け及び平成21年4月23日付け口頭審理陳述要領書のとおり陳述した。

第2 本件発明
本件の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】接面部が側溝等の受け部に対応した曲面をなすグレーチングにおいて、前記接面部は断面が前記受け部に対応した外形形状を有するパイプ材を固着してなることを特徴としたグレーチング。
【請求項2】接面部が側溝等の受け部に対応した曲面をなすグレーチングにおいて、前記接面部は断面が前記受け部に対応した外形形状を有するゴム状の弾性材料を固着して形成されたことを特徴としたグレーチング。」
(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2に係る発明を「本件発明2」という。)

第3 当事者の主張の概要
1.請求人の主張
請求人は、本件発明1及び本件発明2についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、次のように主張するとともに、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。

[本件発明1に対する無効理由]
(1)無効理由1
本件発明1は、甲第21号証に記載された発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2)無効理由2
本件発明1は、甲第11号証に記載の発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)無効理由3
本件発明1は、甲第13,14号証に開示された発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第1号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)無効理由4
本件発明1は、甲第18号証の契約に係る発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第1号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(5)無効理由5
本件発明1は、甲第19、20号証に示すリボーン側溝説明会で開示された発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第1号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(6)無効理由6
本件発明1は、甲第17号証に開示された発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第1号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(7)無効理由7
本件発明1は、甲第16号証に記載された発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
また、本件発明1は、甲第16号証に開示された「岐阜県八百津町須賀」、「可児市今渡」、「美濃加茂市蜂屋町」の3箇所で実施された発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるというものである。
(8)無効理由8
本件発明1は、甲9,10に記載された発明であるか、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(9)無効理由9
本件発明1は、甲2ないし甲4に示すあやめ会館前で実施された発明であるか同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(10)無効理由10
本件発明1は、甲第21号証に係る他人の発明と抵触するものであって、冒認出願であるから、特許法第123条第1項第6号の規定により特許を受けることができないものであり、また公序良俗に違反するから、特許法第32条の規定により特許を受けることができないものである(なお、請求人は特許法第39条第6項の規定に違反するとしているが、その趣旨からみて特許法第123条第1項第6号違反を主張するものと認める。)。
(11)本件発明1の進歩性について
曲面を形成する手段として、曲面の形成が容易なパイプ材を用いることは容易に想到することができるから、無効理由1ないし9で開示された発明において、「接面部をパイプ材」とすることは、当業者が容易になしうることである。

[本件発明2に対する無効理由]
(12)無効理由11
本件発明2は、甲第2号証ないし甲第4号証に示すあやめ会館前で実施された発明であるから、本件発明2は、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものである。
また、甲第2号証ないし甲第4号証に示す、上記発明において、接面部は鋳鉄であるが、甲第20号証で開示された特開平6-248688号公報には、側溝の素材として、合成樹脂、セラミックス等が例示されており、グレーチングの接面部の材料としてゴム状の弾性部材を用いることは当業者が適宜なしうることであるから、本件発明2は、上記発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

[証拠方法]
(審判請求書に添付)
甲第1号証:特許第3348192号公報
甲第2号証:埼玉県菖蒲町長による、国立岐阜工業高等専門学校環境都市工学科 助教授廣瀬康之宛の、平成16年4月30日付けの「曲面蓋受型側溝の調査実施承諾書」
甲第3号証:国立岐阜工業高等専門学校 環境都市工学科 助教授 廣瀬康之氏の「曲面蓋受型側溝の蓋における曲面接触部の形状に関する調査報告書」
甲第4号証:埼玉県南埼玉郡菖蒲町菖蒲193あやめ会館前の側溝、側溝の蓋、及びグレーチングを請求人有限会社リタッグの代表者平田純一が撮影した写真
甲第5号証-1:本件特許の審査において、平成10年2月27日に特許庁へ「特許を受けられない発明の参考資料」として提出された書類。
甲第6号証:甲第5号証中で「甲第3号証」として提出された資料。
甲第7号証-1:平成9年10月28日付けの株式会社大沢コンクリート工業の証明書
甲第8号証:平成9年(ワ)第85号不当利得返還請求事件判決
甲第9号証-1及び甲第9号証-2:株式会社ウチコン、株式会社大沢コンクリート工業及び櫻コンクリート株式会社のパンフレット「ガタガタしない消音側溝&蓋」の表裏
甲第10号証-1及び甲第10号証-2:株式会社テラコン、香南工業株式会社、株式会社アマハ及び千葉コンクリート株式会社のパンフレット「リボーン側溝&蓋ガタガタしない」の表裏
甲第11号証-1及び甲第11号証-2:株式会社ダイクレ及び荒井コンクリート工業株式会社のパンフレット「リボーン側溝用グレーチング」「FS-Rシリーズ 消音型可変側溝用グレーチング」の表裏
甲第12号証:平成8年4月8日付け「リボーン側溝工業会準備委員会第一回会議」資料、平成8年6月13日付け「千葉県型リボーン側溝試作品見学及びリボーン側溝会議」資料、及び「4月26日代表者会議」と記載の会議録
甲第13号証:平成7年9月21日にNHK東海ニュースウェーブで放送された番組の録画ビデオの画面の一部を印刷したもの
甲第14号証:平成7年10月20日にNHK総合で放送された番組の録画ビデオの画面の一部を印刷したもの
甲第15号証:平成9年審判第40021号審決
甲第16号証:「THE KAMO JOURNAL」平成8年4月6日発行に掲載された「角を丸くした側溝」の記事
甲第17号証:週間ブロック通信第1782号 平成7年12月4日発行に掲載された「リボーン側溝を全国に普及へ」の記事
甲第18号証:有限会社リタッグと株式会社プロックスとが交わした仮契約書
甲第19号証-1:リボーン側溝説明会の情景写真
甲第20号証-1:「リボーン(R)側溝説明会のお知らせ」、及び平成7年11月22日開催のリボーン側溝説明会配布資料
甲第21号証-1:特許第2514918号公報
甲第22号証:商標登録第4121733号公報「リボーン側溝」
甲第23号証-1:実用新案3031035号公報
甲第23号証-2:実用新案3031035号の実用新案登録原簿の写し
甲第24号証-1:確認書(確認日付第134号、平成9年9月24日)
甲第25号証:平成19年1月9日差し出しの「警告」
甲第26号証-1:平成19年11月1日付け「リボーン側溝の模倣品対策における委託」
甲第27号証:平成11年8月19日付けのリボーン側溝工業会鹿児島支部一同の嘆願書
甲第28号証:週刊ブロック通信第2000号 平成11年12月27日発行に掲載された全国リボーン側溝工業会の広告
検甲第1号証:平成7年9月21日にNHK東海ニュースウェーブで放送された番組の録画ビデオ、及び、平成7年10月20日にNHK総合で放送された番組の録画ビデオ

(口頭審理陳述要領書に添付)
甲第5号証-2:本件特許の審査において、平成10年2月27日に特許庁へ「特許を受けられない発明の参考資料」として提出された書類。
甲第7号証-2:平成21年2月27日付けの有限会社リタッグの証明書、平成21年2月15日付けの株式会社大沢コンクリート工業の確認書
甲第19号証-2:名刺
甲第19号証-3:有限会社リタッグ及びRETUG INC.と株式会社ウチコンとが交わした技術提供契約書
甲第20号証-2:名刺
甲第20号証-3:平成8年6月8日付けの株式会社プロックスの回答書
甲第21号証-2:特許第2514918号に係る米国特許出願の資料
甲第21号証-3:平成10年審判35242号無効審判請求書
甲第24号証-2:「建設物価」1997年5月号の宝機材の広告「消音側溝」
甲第24号証-3:「週刊ブロック通信」第1993号 平成11年11月8日発行に掲載された全国消音側溝工業会の広告「消音側溝」
甲第26号証-2ないし甲第26号証-9:平成21年2月20日付けの全国リボーン側溝工業会会長及び、同工業会会員又は賛助会員の証明書
甲第26号証-10:特許第3398371号特許証
甲第26号証-11:愛知県土木部編集「道路構造の手引き」平成7年4月発行
甲第29号証:平成21年2月12日付けの有限会社リタッグの証明書、平成21年2月5日付けの株式会社丸治コンクリート工業所の確認書
甲第30号証:「リボーン側溝(R側溝)」株式会社丸治コンクリート工業所、平成7年5月25日付け「側溝蓋板の構造解析」日本電子計算株式会社、平成7年7月20日付け「側溝本体の構造解析」日本電子計算株式会社、
甲第31号証:模倣品110番のパンフレット 特許庁・発明協会発行
甲第32号証:名刺
甲第33号証:押収品目録交付書
甲第34号証:平成18年3月10日差し出しの「警告及び請願」
甲第35号証:特許第2880941号公報
甲第36号証:平成21年1月19日付の特許庁のFAX書面

2.被請求人の主張
被請求人は、本件発明1、2についての特許を維持し、審判費用は請求人の負担とするとの審判を求め、無効理由について概略次のとおり主張した。
(1)無効理由1に対して
甲第21号証は、本件の出願後に発行された刊行物である。
(2)無効理由2に対して
甲第11号証は、何時配布されたものか不明であり、公知日が明確でない。また、接面部がパイプ材であるとの記載もなく、パイプ材を固着したグレーチングを開示するものではない。
(3)無効理由3に対して
甲第13号証及び甲第14号証には、パイプ材を固着したグレーチングも、ゴム状の弾性材料を固着したグレーチングも開示されていない。
(4)無効理由4に対して
甲第18号証は、「仮契約書」であって、年月日の記載がない。また、「リボーン側溝応用グレーチング」がパイプ材を固着したグレーチングに関するものであることも、ゴム状の弾性材料を固着したグレーチングに関するものであることも記載されていない。
(5)無効理由5に対して
甲第19号証には、側溝や側溝蓋は開示されていない。
甲第20号証には、パイプ材を固着したグレーチングに関する記載も、ゴム状の弾性材料を固着したグレーチングに関する記載もない。
(6)無効理由6に対して
甲第17号証には、コンクリート製の側溝が開示されているが、パイプ材を固着したグレーチングも、ゴム状の弾性材料を固着したグレーチングも開示されていない。
(7)無効理由7に対して
甲第16号証には、コンクリート製の側溝が開示されているが、パイプ材を固着したグレーチングも、ゴム状の弾性材料を固着したグレーチングも開示されていない。
(8)無効理由8に対して
甲第9号証及び甲第10号証には、発行日が示されておらず、グレーチングの構成は何ら示されていない。
(9)無効理由9、11に対して
甲第2号証ないし甲第5号証に示されるあやめ会館前の実施が、本件特許の出願前である平成8年3月1日頃?4月1日頃に実施されたことは証明されていない。
甲第3号証、甲第4号証のグレーチングの接面部は、断面形状が曲面か多角面か不明りょうであり、パイプ材でないことは明らかである。また、ゴム状の弾性材料ではなく、鉄製か鋳鉄製と判断され、グレーチングの接面部をパイプ材とすること又はゴム状の弾性材料とすることは開示されていないし、示唆もない。
(10)無効理由10に対して
本件発明は、従来技術を前提としてグレーチングにおける技術課題を解決したものであって公知の発明を盗用したものではなく、冒認出願でもない。(11)本件発明1、2の進歩性について
本件発明1、2は、請求人の出願に係る特開平6-248688号公報記載の側溝を従来技術とし、この技術をグレーチングに適用する際の技術課題を解決するものであって、ガタつきのないグレーチングを提供するという格別の作用効果を奏するものであり、公知発明に比べ進歩性を有する。

第4 証拠方法の記載事項等
甲第2号証の「曲面蓋受型側溝の調査実施承諾書」には、調査対象住所地として、埼玉県南埼玉郡菖蒲町菖蒲193あやめ会館近辺、工期として平成8年3月1日頃?平成8年4月1日頃、調査日として、平成16年4月30日と記載されている。

甲第3号証の「調査概要」には、次のとおり記載されている。
「1 調査題目 曲面蓋受型側溝の蓋における曲面接触部の形状に関する調 査」
「4 目 的 依頼者よりの調査依頼物件について、曲面蓋受型側溝が敷 設、共用されている側溝蓋を対象として、蓋における曲面 接触部の形状について計測し、結果を纏める。」
「6 調査日程 調査依頼年月日 平成16年4月1日
実地計測年月日 平成16年4月30日
調査報告年月日 平成16年5月14日」
また、甲第3号証添付の資料写真2ないし5には、受け部の上部が曲面に形成された側溝と、側壁が曲面に形成されたコンクリート製側溝蓋と、下部に、断面が略三角形状の脚部を有するグレーチングが掲載されている。

甲第4号証には、「株式会社宝機材が特許第3348192号の出願前に実施したグレーチング(3)」、「同(4)」として次の写真が提示され(以下、「写真(3)上(又は下)」、「写真(4)上(又は下)」という。)、次の事項が示されている。

写真(3)上及び下

写真(4)上及び下

(4a)「写真(3)上及び下」及び「写真(4)上及び下」には、グレーチングは、本体の下部にL型アングル材が取り付けられ、該アングル材に側面視台形の桁材が設けられ、桁材の外側に、板状の部材を介して、中央部が両側部より肉厚の接面部材が固着されていること、
(4b)「写真(3)下」には、さらに、側溝は、受け部の上部が曲面に形成され、その下端角部を介して下部受け部が形成されていること、コンクリート製側溝蓋は、側壁が曲面に形成されていること、グレーチングを取り外した後の側溝の上部受け部及び下部受け部に茶色の錆様のものが固着していること、グレーチング下部の接面部材は、グレーチングの両側長手方向に沿って設けられ、ビス止めされていること、
(4c)「写真(4)上及び下」には、さらに、グレーチングは、側溝の上部曲面受け部、角部、下部受け部に跨って載置されていること。

甲第5号証-1に添付の甲第1号証には、
「甲第四号証の1・・・
場 所 :埼玉県南埼玉郡菖蒲町 あやめ会館前」
施工期間:平成8年1月12日?平成8年3月31日の期間
現場への製品納入期間:平成8年3月6日から平成8年3月31日の期 間の間」
と記載され、添付の甲第4号証の3の3頁、4目には、「埼玉県南埼玉郡菖蒲町のリボーン側溝現場に使用されたグレーチング」との記載とともにグレーチングの写真が添付されている。

甲第8号証には、次のとおり記載されている。
(8a)「ア 平成7年9月21日,本件特許権の発明がNHKテレビのローカルニュースで取り上げられ・・・,同年10月20日には全国ネットで放送された・・・。」(21頁4?6行)、
(8b)「エ プロックスは,平成7年11月22曰,関東地方のコンクリート業者を集めて,平田と共催で,「関東リボーン側溝説明会」と題する説明会を杉並公会堂で開催し,・・・。この席上,平田はリボーン側溝開発の経緯を説明し,NHK放送のビデオを見せて解説するとともに,本件特許権の申請状況を説明し,プロックスにおいて,構造解析に関する説明を行った。」(22頁5?10行)、
(8c)「ク 平成8年1月12日,原告を含む関東地方の契約希望社7社と被告ら及びプロックスとの間で,本件実施契約が締結され,原告は,埼玉県分と千葉県分の2つの契約を行った(甲1の1及び2)。・・・
そして,原告は,平成8年1月19日までに,大沢コンクリート工業,櫻コンクリートとともに,リボーン側溝のパンフレットを作成した。そのパンフレットには,『カタカタしない! 消音側溝&蓋』と大きな文字による記載があり,また『この形状(側溝と側溝蓋の曲面部分(R=5)を指す)が音を出さない秘密です。』『特徴リボーン側溝は曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受けています。全体にかかる荷重も分散され,音の発生を未然に防いでいます。』『これが噂の消音側溝&消音蓋NHK総合テレビ(H7.10/20)で紹介されています。』との記載がある・・・。」(23頁21行?24頁16行)、
(8d)「シ 平成8年3月ころ,原告は,櫻コンクリートに対して,「消音側溝」と称する側溝ブロックを販売し・・・,櫻コンクリートはこれをさらに他の業者に販売して,その業者が埼玉県南埼玉郡菖蒲町のあやめ会館前にこれを敷設した・・・。」(26頁7?10行)、
(8e)「ス 平成8年4月6日,リボーン側溝工業会準備委員会第1回会議が開かれ,契約社のうち,各県の代表が集まった。原告は,埼玉県の代表として出席し,準備委員長に選出された。
会議の中で,各県の進捗状況が報告され,埼玉県からは『多数試作をし現在の形状になった(R部)』『3市町に施工実績あり,音はしない』旨の報告がなされ,千葉県からは『接点は『ウチコンタイプ』で検討』との報告がなされた。・・・
上述の『埼玉県において3市町に施工実績あり』というのは,・・・原告が製作した『消音側溝』と称する側溝の施工実績(うち1つは平成8年3月ころの,あやめ会館前に敷設された側溝・・・)を指すものであり,・・・また,上述の『多数試作をし現在の形状になった(R部)』というのも,唯一『施工実績』のある,側溝躯体と側溝蓋が躯体角部で接触するタイプの形状のことを指すと考えるのが合理的である。」(26頁12行?27頁12行)。

甲第9号証-1には、「ガタガタしない! 消音側溝&蓋」との記載とともに、コンクリート製の側溝と側溝蓋の写真が掲載され、写真の下に「これが噂の消音側溝&消音蓋NHK総合テレビ(H7.10/20)で紹介されています。」と記載されている。
甲第9号証-2には「騒音問題 これで解決!」「ガタ付音が全く無い」との記載とともに、側溝と蓋の図が記載され、図の説明として、「この形状(側溝と側溝蓋の曲面部分(R=5)を指す)が音を出さない秘密です。」と記載され、特徴として、
「1)点から線への変換
在来製品は側溝と蓋との接点が平面構造になっており、現実には点で支える構造となっています。リボーン側溝は曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受けています。全体にかかる荷重も分散され,音の発生を未然に防いでいます。・・・
3)敷ゴムなどは使用しないため経年による劣化がありません。」
と記載されている。

甲第10号証-1には、「リボーン側溝&蓋」「ガタガタしない!」と記載され、コンクリート製の側溝と側溝蓋の写真が掲載され、写真の下に「特殊な形状により不快なガタ付音が全くありません。」「噂の消音側溝&消音蓋NHK総合テレビ(H7.10/20)で紹介されています。」と記載されている。
甲第10号証-2には「騒音問題解消」「ガタ付音が出ない秘密」との記載とともに、側溝と蓋の図が記載され、さらに、特長として、
「1.点から線への変換
在来製品は側溝と蓋との接点が平面構造(平面支持)になっていますが、現実には面ではなく点で支える構造となってガタ付音の原因となっています。
リボーン側溝は曲面(R面)を採用することにより蓋の荷重を線で受け、全体にかかる荷重を分散し,音の発生源をなくしています。・・・
3)敷ゴムなどは使用しないため経年による劣化がありません。」
と記載されている。

甲第11号証-1には、図面及び写真とともに「R リボーン側溝用グレーチング」と記載され、甲第11号証-2には、図面及び写真とともに「消音型可変側溝用グレーチング 荒井コンクリート工業株式会社FS-R側溝対応型」と記載されている。

甲第12号証には、リボーン側溝工業会設立の主旨とともに、
「ダクタイル グレーチング→宝機材」との書き込みがあり、
「2.各県の進捗状況について」の欄に、次の書き込みがある。
「埼玉・3社 多数試作をし現在の形状になった(R部)
・3市町に施工実績有 音はしない。」

甲第13号証には、次の事実が開示されている。
(13a)画面1には、「騒音解消」との表示。
(13b)画面7には、側溝に、透水孔を多数有する鋳鉄蓋(ダクタイル)が載置されていること、画面8には、側溝の受け部は曲面を有していること、鋳鉄蓋は、表面板の下部に、内方に向かって湾曲した板状の脚部を有していること。
(13c)画面9ないし11には、側溝蓋の受け部が曲面に形成されたコンクリート製側溝に、該受け部との接面部が、受け部の曲面に対応した曲面に形成されたコンクリート製の側溝蓋が載置されていること。
(13d)画面20には、「新しい側溝とふた」との表示とともに、側溝の受け部が曲面に形成され、側溝蓋の受け部との接面部が受け部の曲面に対応した半径5.5センチの円弧状に形成されていることを示す模式図。

甲第14号証には、次の事実が開示されている。
(14a)画面7には、側溝に、透水孔を多数有する鋳鉄蓋(ダクタイル)が載置されていること、画面8には、側溝の受け部は曲面を有していること、鋳鉄蓋は、表面板の下部に、内方に向かって湾曲した板状の脚部を有していること。
(14c)画面9ないし11、17、18には、側溝蓋の受け部が曲面に形成されたコンクリート製側溝に、該受け部との接面部が、受け部の曲面に対応した曲面に形成されたコンクリート製の側溝蓋が載置されていること。
(14d)画面25には、側溝の受け部が曲面に形成され、側溝蓋の受け部との接面部が中心角30°の円弧状に形成されていることを示す模式図。

甲第16号証には、コンクリート製の側溝と側溝蓋の写真とともに、「側溝・蓋ともに直角の従来の製品(右)と街の米屋さんのアイデアをもとに製品化された騒音の少ないReborn側溝(左)」と記載され、さらに「昨年八月からこれまでに、八百津町須賀、可児市今渡、美濃加茂市蜂屋町の道路で試験施工。」と記載されている。

甲第17号証には、コンクリート製の側溝と側溝蓋の写真とともに、「たまたま店の前の側溝蓋のガタツキが多く、騒音が多いことから、蓋と側溝側のアゴ部分をアール型の型状にした側溝を考案して、大学の研究室に持ち込んで実験した結果、両者が接触する部分をアール型にすることで、ガタツキを防止できることが明らかになった。」と記載されている。

甲第18号証には、「有限会社リタッグを甲とし、株式会社プロックスを乙として、特許品リボーン側溝及びリボーン側溝応用製品用グレーチング(以下単にグレーチングという。)の製造及び販売に関し、以下の通り契約した。」と記載されている。

甲第19号証は、「リボーン側溝説明会」の会場の写真であり、少なくとも14名以上が出席したことが示されている。

甲第20号証-1には、次の事項が記載されている。
(20a)1頁目の「リボーン(R)側溝説明会のお知らせ」には、
「リボーン側溝につきましてはNHKの放送などで、既にど存知のこととと思いますが、・・・騒音発生を全面解決した画期的な新製品です。・・・当日は、ビデオによる紹介の他、詳しい資料を用意して、皆様のご参加をお待ち致しております。・・・

1.日時 11月22日(水) 2:00PM?4:00PM
2.場所 東京都 杉並区 杉並公会堂 第一集会室」、
と記載されている。

(20b)甲第20号証-1の2頁目の「リボーン側溝説明会タイムテーブル」には、「平成7年11月22日(水) 2:00pm?4:00pm」、
と記載されている。

(20c)甲第20号証-1添付の特開平6-248688号公報には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 側溝蓋の接面部a5を曲面に成形加工し、幾何学的に相似な曲面に成形加工された接面部b6を持つ側溝2の側溝蓋1となし、側溝蓋1と側溝2の密着性を高めた側溝。」
「【0002】
【従来の技術】従来土木工事において側溝を設置する場合、通常、フラットなコンクリート面で側溝蓋を支えており、特に平面精度を要求される。従来の側溝蓋受け部のフラット部については、その構造上の特性から土や小石が溜りやすく、人の手で清掃しなければならなかった。発生する騒音の解消についてはゴムパッキング等を挟み騒音の軽減を計っている。また設置工事の際、側溝蓋の脱着作業は垂直方向になされる必要が有る。」
「【0005】
【課題を解決するための手段】図1はこの発明の原理を説明する図である。まず図1の正面図で示すように、接面部を曲面に成形加工した側溝蓋1を、幾何学的に相似な曲面に成形加工した接面部を持つ側溝2に、密着するように設置する。
【0006】
【作用】この様にして幾何学的に相似した曲面を持った側溝蓋1と側溝2を設置すると、両者は側溝蓋1の自重により密着する。」
「【0007】
【実施例】具体的な実施例について説明すれば、側溝蓋1のコンクリート製のものは、型枠成形とし、鉄製のものについても型枠成形とし、素材は鋳鉄による。側溝2についてもコンクリート型枠成形による。また、合成樹脂、セラミックス等の新素材であっても、強度が許容されれば選択される。」
「【0008】
【発明の効果】この発明は側溝蓋の接面部とと側溝の接面部が曲面で密着することに特徴が有る。これにより車両等の通過騒音を解消することが可能になり、側溝蓋、及び側溝の破損の発生をも防ぐ。」
【図1】の平面図には、「鋳鉄蓋7」が記載されている。

甲第20号証-1の「リボーン(R)側溝説明会のお知らせ」で紹介されたとされる検甲第1号証には、甲第13号証及び甲第14号証に開示された事項が示されている。

甲第21号証は、平成8年7月10日発行の特許第2514918号公報であり、「騒音の発生しない側溝」について記載されている。

第5 無効理由についての判断
1.無効理由3について
(1)甲第13号証に開示された発明との対比・判断
甲第13号証及び検甲第1号証によれば、本件出願前の平成7年9月21日にNHK東海ニュースウェーブにおいて放送された番組において、次の発明が開示されたものと認められる。
「接面部が曲面をなす側溝の受け部に載置され、下部が内方に向かって湾曲した板状脚部を有する鋳鉄蓋。」(以下、「甲13開示発明」という。)

本件発明1と甲13開示発明とを対比する。
ア.甲13開示発明の「鋳鉄蓋」と本件発明1のグレーチングは、「透水性蓋」である点で共通する。
イ.本件特許明細書には、本件発明1の実施例として【図1】【図2】とともに「このグレーチング1は四角形状をしていて、その下面1aの2側辺には、側溝20の受け部21に対応するように2本のパイプ材2が平行に溶接してある。このパイプ材2は断面が略扇形状の鉄材によるパイプ材であり、接面部3を図示したように下方外向きにして受け部21に対応させてある。」と記載されており、本件発明1においては、グレーチング本体に固着した、脚部として作用するパイプ材により側溝の受け部との接面部を形成することが示されている。
ウ.一方、甲13開示発明は、湾曲した板状脚部が、接面部が曲面をなす側溝の受け部に対応した形状の接面部を形成していることは明らかである。
そして、甲第13号証には、接面部が曲面をなす側溝の受け部に、該受け部との接面部が、受け部の曲面に対応した曲面をなす外形形状に形成されたコンクリート製の側溝蓋を載置することにより、騒音を防止することが開示されており(開示事項(13c)(13d)参照)、側溝の一部に、コンクリート製の側溝蓋に代えて鋳鉄蓋を設置しようとするものであるから、鋳鉄蓋の接面部も、コンクリート製の側溝蓋と同様に受け部の曲面に対応した外形形状に形成されていると認められる。
そうすると、甲13開示発明の「下部が内方に向かって湾曲した板状脚部を有する」ことと、本件発明1の「接面部は断面が側溝の受け部に対応した外形形状を有するパイプ材を固着してなる」こととは、「接面部は受け部の曲面に対応した外形形状を有する脚部である」点で共通する。
したがって、両者は、
「接面部が側溝の受け部に対応した透水性蓋において、前記接面部は受け部の曲面に対応した外形形状を有する脚部である透水性蓋。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件発明1は、透水性蓋が「グレーチング」であり、曲面を有する脚部が「パイプ材を固着してなる」ものであるのに対し、甲13開示発明は、透水性蓋が「鋳鉄蓋」であり、曲面を有する脚部が「湾曲板状の脚部」であって、パイプ材ではない点。

上記相違点1について検討する。
側溝の一部に、透水性蓋としてグレーチングを設置することは、本件特許の出願前周知であり、甲13開示発明において、透水性蓋として鋳鉄蓋に代えてグレーチングを採用しようとすることは当業者が容易に想到しうることである。
そして、グレーチングにおいて、格子状部材の下部にパイプ材からなる嵩上げ用脚部を設けることは、例えば、実願平5-28378号(実開平6-87495号)のCD-ROM、実願昭58-176816号(実開昭60-85383号)のマイクロフイルムに記載されているように、本件特許出願前周知であり、パイプ材は押出成形の際の型枠の形状により任意の断面形状とすることができるものであって、容易に任意の曲面を形成することができることも周知である。
甲第13号証には、側溝蓋の下端部のみを半径5.5cmの円弧面とすれば、騒音を防止するという作用効果が得られることが示されているから、甲13開示発明において、鋳鉄蓋に代えてパイプ材からなる嵩上げ用脚部を設けた周知のグレーチングを採用し、このパイプ材からなる脚部の一部を、側溝の受け部の曲面に対応した円弧面に形成して接面部としようとすることは当業者が容易に想到しうることである。
また、パイプ材は、均一な断面がえられることは周知であり、正確な同一形状の曲面を得ることができるとの本件発明1の作用効果は、上記周知技術から予測することが出来るものであって、本件発明1の作用効果は全体として甲13開示発明及び周知技術から当業者が予測することができる程度のものである。
したがって、本件発明1は、甲13開示発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、上記のとおり、甲13開示発明はパイプ材を固着したグレーチングではないから、本件発明1は、甲13開示発明ではない。

(2)甲第14号証に開示された発明との対比・判断
甲第14号証及び検甲第1号証によれば、本件出願前の平成7年10月22日にNHK総合において放送された番組において、次の発明が開示されたものと認められる。
「接面部が曲面をなす側溝の受け部に載置され、下部が内方に向かって湾曲した板状脚部を有する鋳鉄蓋。」(以下、「甲14開示発明」という。)

甲14開示発明は、甲13開示発明と同一であり、本件発明1と甲14開示発明を対比すると、甲13開示発明と同様の一致点及び相違点1を有する。
相違点1及び作用効果についての判断は、上記(1)で検討したとおりであり、本件発明1は、甲14開示発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、上記のとおり、甲14開示発明はパイプ材を固着したグレーチングではないから、本件発明1は、甲14開示発明ではない。

2.無効理由5に対して
(1)甲第20号証-1に示す「リボーン側溝説明会」において開示された発明との対比
甲第20号証-1の記載事項(20a)(20b)からみて、本件特許出願前である平成7年11月22日に開催されたと認められる、甲第20号証-1に示す「リボーン側溝説明会」において、検甲第1号証に示される、平成7年9月21日にNHK東海ニュースウェーブにおいて放送された番組及び平成7年10月22日にNHK総合において放送された番組の放送内容のビデオ映像が紹介されたものと認められ、甲第19号証によれば、甲第20号証-1に示す「リボーン側溝説明会」は不特定多数の者に公開されていたと認められるから、平成7年11月22日開催の「リボーン側溝説明会」において、検甲第1号証に示される次の発明が公開されたと認められる。
「接面部が曲面をなす側溝の受け部に載置され、下部が内方に向かって湾曲した板状脚部を有する鋳鉄蓋。」(以下、「検甲1開示発明」という。)」

検甲1開示発明は、甲13開示発明及び甲14開示発明と同一であり、本件発明1と検甲1開示発明を対比すると、甲13開示発明と同様の一致点及び相違点1を有する。
相違点1及び作用効果についての判断は、上記(1)で検討したとおりであり、本件発明1は、検甲1開示発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、検甲1開示発明はパイプ材を固着したグレーチングではないから、本件発明1は、検甲1開示発明ではない。

(2)甲第20号証-1に添付された特開平6-248688号公報との対比
上記記載事項(20c)によれば、特開平6-248688号公報(以下、「甲20刊行物」という。)には、次の発明が開示されていると認められる。
「接面部が側溝等の受け部に対応した曲面をなす鉄製蓋において、前記接面部は断面が前記受け部に対応した外形形状を有するように型枠成形された蓋の側壁である鋳鉄蓋。」(以下、「甲20刊行物発明」という。)
本件発明1と甲20刊行物発明を対比すると、甲20刊行物発明の「鋳鉄蓋」は透水性を有するものであることは明らかであり、本件発明1のグレーチングとは、「透水性蓋」である点で共通するから、両者は、
「接面部が側溝等の受け部に対応した曲面をなす透水性蓋において、前記接面部は断面が前記受け部に対応した外形形状を有する透水性蓋。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点2:本件発明1は、透水性蓋が「グレーチング」であり、接面部は「パイプ材を固着してなる」ものであるのに対し、甲20刊行物発明は、透水性蓋が「鋳鉄蓋」であり、接面部は、型枠成形されて形成された鋳鉄蓋の側壁である点。

上記相違点2について検討する。
甲20刊行物発明として、上記甲20刊行物に具体的に記載されている蓋は、蓋の側面全体が側溝の受け部に対応した曲面を有するものであり、上記甲20刊行物にはこのような曲面の接面部を正確に形成するために型枠成形手段を採用することが示されているにすぎない。
透水性蓋としてグレーチングを使用することが、本件特許出願前周知であるとしても、鉄材を格子状に組み合わせて製造されるグレーチングにおいて、グレーチング本体あるいはさらに嵩上げ用脚部を備えたグレーチングの側面全体を正確に曲面に形成する手段は、上記甲20刊行物には何ら示されていないから、本件発明1が、甲20刊行物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

また、甲20刊行物発明はパイプ材を固着したグレーチングではないから、本件発明1は、甲20刊行物発明ではない。

3.本件発明1に対するその他の無効理由について
(1)無効理由1に対して
甲第21号証は、本件の出願後に発行された刊行物であるから、特許法第29条第1項第3号、及び同条第2項で規定する刊行物には相当しない。
したがって、無効理由1は理由がない。

(2)無効理由2に対して
全証拠方法を検討しても、甲第11号証の公知日は明らかでなく、甲第11号証は、本件特許出願前に頒布された刊行物とすることはできない。
したがって、無効理由2があるとすることはできない。

(3)無効理由4に対して
甲第18号証は、「仮契約書」であって、仮契約日の記載がなく、本件特許出願前に作成されたものとすることはできないし、当該「仮契約書」の内容が、契約者以外に公開されたことを示す証拠も何ら提示されていないから、甲第18号証に示される「仮契約書」に示された発明が本件特許出願前に公開されたものとすることはできない。
さらに、甲第18号証には、「リボーン側溝応用グレーチング」との記載はあるが、パイプ材を固着したグレーチングについては何ら記載されていない。
したがって、無効理由3があるとすることはできない。

(4)無効理由6に対して
甲第17号証には、コンクリート製の側溝及び側溝蓋が開示されているが、グレーチングに関しては何ら記載されていない。
したがって、本件発明1は、甲第17号証に記載された発明であるとも、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(5)無効理由7に対して
甲第16号証には、コンクリート製の側溝及び側溝蓋が開示されているが、グレーチングに関しては何ら記載されていない。
したがって、本件発明1は、甲第17号証に記載された発明であるとも、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
また、甲第16号証には、八百津町須賀、可児市今渡、美濃加茂市蜂屋町の道路で試験施工されたことが記載されているが、具体的な内容は何ら記載されておらず、上記記載のみから、本件発明1が、八百津町須賀、可児市今渡、美濃加茂市蜂屋町の道路の施工で実施されたとすることはできないし、同箇所で実施された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(6)無効理由8に対して
甲第9号証及び甲第10号証には、発行日が示されておらず、グレーチングの構成は何ら示されていない。
したがって、本件発明1は、甲第9号証又は甲第10号証に記載された発明であるとも、又は同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

(7)無効理由9に対して
甲第3号証ないし甲第5号証-1に開示されたグレーチングに係る発明の実施時期について検討する。
甲第3号証ないし甲第5号証-1には、側溝にグレーチングが設置されている写真が示されており、該グレーチングは、埼玉県南埼玉郡菖蒲町菖蒲193あやめ会館近辺の「曲面蓋受型側溝」に設置されたものと認められるが、提出された証拠方法によっても、その設置時期は明らかでない。
すなわち、甲第2号証は、平成16年4月30日付けの「調査実施承諾書」であり、本件特許の出願前である平成8年3月1日頃?4月1日頃に、埼玉県南埼玉郡菖蒲町菖蒲193あやめ会館近辺において、「曲面蓋受型側溝」に関する工事が行われたことが示されているものの、上記工事において、甲第3号証ないし甲第5号証-1に示されるグレーチングが設置されたことまでは示されていないし、平成8年4月1日より後に、当該グレーチングを設置する工事が行われなかったことを示すものでもない。
甲第3号証は、平成16年4月30日に撮影された写真であって、グレーチングの設置時期を示すものではなく、甲第4号証は撮影時期が不明なものである。なお、請求人は甲第4号証の撮影時期は、平成8年4月と主張しているが、これを裏付ける証拠方法は提示されていない。
甲第5号証-1は、平成10年2月27日に特許庁に提出された書類であり、添付された甲第4号証の3の4頁目に「埼玉県南埼玉郡菖蒲町のリボーン側溝施工現場に使用されたグレーチング」との記載とともに、甲第4号証の写真と類似のグレーチングの写真が添付されているが、写真の撮影時期は不明であり、埼玉県南埼玉郡菖蒲町のあやめ会館近辺にグレーチングが設置されたのが、甲第5号証-1が特許庁に提出された平成10年2月27日前であることは明らかであるものの、本件出願前であるか否かは明らかでない。
さらに、甲第8号証において、埼玉県南埼玉郡菖蒲町のあやめ会館近辺に側溝ブロックを敷設したのは、「平成8年3月ころ」と判示しているが(記載事項(8d))、側溝ブロックを敷設した時期を示すにとどまり、グレーチングが設置された時期を示すものではない。
したがって、甲第3号証ないし甲第5号証-1に開示された埼玉県南埼玉郡菖蒲町のあやめ会館近辺に側溝に設置されたグレーチングに係る発明の実施時期は明らかではなく、該グレーチングに係る発明が、本件特許の出願前に実施されたものであるとすることはできないから、無効理由9があるとすることはできない。

なお、甲第3号証ないし甲第5号証-1に示されるグレーチングはパイプ材を固着したグレーチングではないから、本件発明1は、当該グレーチングに係る発明と同一でないことは明らかである。

(8)無効理由10に対して
以上のとおり、本件発明1を特定する、「接面部は断面が前記受け部に対応した外形形状を有するパイプ材を固着してなる」グレーチングは、甲第2号証ないし甲第5号証-1、甲第9号証-1及び甲第9号証-2、甲第10号証-1及び甲第10号証-2、甲第13号証、甲第14号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第18号証並びに甲第20号証-1には何ら記載されていない。
また、本件発明1が本件特許出願前に発明されていたことは、他のいずれの証拠方法にも示されていない。
さらに、本件発明1の経緯について、本件特許明細書には次のように記載されている。
「特開平6ー248688号公報に開示された騒音の発しない側溝があり、側溝蓋の接面部と側溝の接面部が曲面で密着することに特徴がある。」(段落【0003】)
「また上記の様な『接面部が曲面』といった特徴をグレーチングにおいて実現しようとするなら、グレーチングに適するようなアレンジが求めら、例えば、流し込み成形によるコンクリート蓋であれば、型枠成形により同一形状の曲面形成が可能であるが、個々の鉄材を溶接して作られるグレーチングにおいてはこの様なことができず、よって容易に曲面が形成できその曲面は密着性の実現される正確さが得られる方法が求められている。
また仕上がり具合や品質のバラツキによっては曲面が密着し難くなることもある。或いはグレーチング側の接面部が正確に形成されても、相手方の受け部に狂いがあればやはり密着が困難となる。従って先に開示された曲面による接面部の良さが活かされない。
よってこの発明は、接面部が曲面をなすグレーチングを容易且つ正確に作ることができ、現場で容易かつ確実に設置でき、確かな密着によりガタツクこともなく、また曲面での接面にも拘わらずズレることのないグレーチングを提供することにある。」(段落【0004】、【0005】)
本件特許明細書の上記記載によれば、被請求人は、特開平6-248688号公報(甲20刊行物)に示された、側溝蓋の接面部と側溝の接面部が曲面で密着する側溝を前提とし、接面部が正確に曲面をなす側溝用グレーチングを得ることを課題とし、パイプ材を固着して接面部を形成する本件発明1を発明したものと認められる。
したがって、本件発明1が、被請求人の発明したものでないとすることも、他人の発明を盗用したものとすることもできない。

4.無効理由11に対して
(1)甲第3号証ないし甲第5号証-1に開示された発明の実施時期について
上記「第5 3.(7)」で検討したとおり、提出された証拠方法によっては、甲第3号証ないし甲第5号証-1に開示されたグレーチングに係る発明の実施時期が、本件特許の出願前であるとすることはできないから、無効理由11があるとすることはできない。

(2)特許法第29条第1項第1号、同条第2項の判断
上記のとおり、甲第3号証ないし甲第5号証-1に開示されたグレーチングに係る発明が本件出願前に実施されたものか否か不明であるが、仮に当該グレーチングに係る発明が本願出願前に実施されたものであるとして、本件発明2と対比し、新規性進歩性について検討する。

(2-1)甲第3号証ないし甲第5号証-1に開示された発明
甲第3号証ないし甲第5号証-1に示されるグレーチングの構造は、格子状本体の下部にL型アングル材が取り付けられ、該アングル材に側面視台形の桁材が設けられ、桁材の外側に、グレーチングの長手方向に沿って、側溝の受け部と接触する接面部材がビス止めされているものと認められる。
そして、甲第4号証には、該接面部材の一部及び側溝受け部に茶色の錆と思われるものが示されているから、該接面部材は、鋳鉄等の金属であると認められ、この点については当事者間に争いはない。
また、該接面部材の外形形状は明確ではないが、側溝の受け部と接触する接面部を有していることは明らかである。
そうすると、甲第3号証ないし甲第5号証-1には、次の発明が開示されていると認められる。
「接面部が側溝の受け部と接触するグレーチングにおいて、前記接面部は鋳鉄等の金属の接触部材を固着してなるグレーチング。」(以下、「実施発明」という。)

(2-2)本件発明2と実施発明との対比・判断
本件発明2と実施発明を対比すると、両者は、
「接面部が側溝等の受け部と接触するグレーチング」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点3:接面部が、本件発明2では、断面が前記受け部に対応した曲面の外形形状を有するゴム状の弾性材料を固着したものであるのに対し、実施発明は、接面部が、鋳鉄等の金属を固着したものであって、ゴム状の弾性材料を固着したものではなく、具体的な外形形状が不明な点。

上記相違点3について検討する。
実施発明のグレーチングが設置されている側溝の受け部は、上部が曲面受け部に形成され、その下部に角部を介して下部受け部が形成されたものであり、実施発明のグレーチングの接面部は、その具体的な外形形状は不明であるが、側溝の受け部と接触する特定の形状とするために、鋳鉄等の金属を固着しているものであって、鋳鉄等の金属に代えてゴム状の弾性材料とすることは、何ら示唆されていない。
請求人は、接面部の材質は適宜選択しうるものである旨主張するが、鋳鉄等の金属とゴム状の弾性材料とは全く異なる性質の材料であり、鋳鉄等の金属に代えてゴム状の弾性材料を採用することが当業者が容易になしうるとすることはできない。
そして、本件発明2は、接面部をゴム状の弾性材料とし、かつ、その外形形状を曲面を有する側溝の受け部に対応した形状としたことにより、荷重は接面部の曲面から、側溝受け部の曲面に分散して伝達され騒音が発生しないとともに、グレーチング側の接面形状や、側溝受け部の形状に多少の不良があっても、ゴム板の弾性変形によりこれを補うこととができる等の、特有の作用効果を奏するものである。
よって、実施発明が本件特許出願前に実施されたものか否かに拘わりなく、本件発明2は、実施発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、上記のとおり、実施発明は、ゴム状の弾性材料を固着したグレーチングではないから、本件発明2は、実施発明ではない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1は、甲13開示の発明、甲14開示の発明及び甲第20号証-1に示す「リボーン側溝説明会」において開示された検甲1開示発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件発明1に係る特許は無効とされるべきである。
また、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明2に係る特許を、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、これを2分し、その1を請求人が負担し、残部を被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-06-11 
出願番号 特願平8-114767
審決分類 P 1 113・ 121- ZC (E03F)
P 1 113・ 113- ZC (E03F)
P 1 113・ 15- ZC (E03F)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 深田 高義藤原 伸二  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
関根 裕
登録日 2002-09-13 
登録番号 特許第3348192号(P3348192)
発明の名称 グレーチング  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  
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