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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1219771
異議申立番号 異議2002-70587  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2010-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-05 
確定日 2010-04-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3206646号「多色発光有機ELパネルおよびその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3206646号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 特許異議申立人 古江 恵実子の特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
本件特許3206646号は、平成10年1月22日の出願に係り、平成13年7月6日に設定登録された。
その後、その請求項1ないし7に係る特許について申立人 イーストマン コダック カンパニーにより特許異議の申立てが、また、その請求項3、4、5及び7に係る特許について申立人 古江恵美子により特許異議の申立てがなされ、平成15年3月14日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年5月26日に意見書が提出され、平成17年8月25日付けで、審尋がされ、その指定期間内である平成17年12月2日に回答書が提出されたところ、平成18年2月2日付けで、その請求項1ないし7に係る特許を取り消すとの異議の決定がなされた。
これに対し、特許権者は、上記異議の決定の取り消しを求めて平成18年6月16日に知的財産高等裁判所に出訴(平成18年(行ケ)10275号)し、平成18年9月13日に訂正審判(訂正2006-39153号)の請求がなされた。当該訂正審判については、平成21年12月28日付けで、平成19年1月15日付け手続補正書により補正された審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認めるとの審決がなされ、当該審決は確定した。
その後、知的財産高等裁判所において、前記平成18年2月2日付け異議の決定について、決定を取り消すとの判決(平成21年(行ケ)第10249号 特許取消決定取消請求当事者参加事件(被参加事件 平成18(行ケ)10275号)、平成22年2月10日判決言渡)がなされたので、さらに審理する。

第2 特許異議の申立ての概要
(1)申立人 イーストマン コダック カンパニーは、請求項1ないし7に係る発明の特許は、下記甲第1号証により、特許法第29条第1項3号又は特許法第29条第2項の規定に違反し、また、下記甲第2号証により特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるので取り消すべき旨、さらに請求項1,2,6に係る発明の特許は、下記甲第3号証により特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるので取り消すべき旨、
甲第1号証:特開平9-167684号公報
甲第2号証:特願平9-94613号の公開公報(特開平10-41069号)
甲第3号証:特願平10-149055号の公開公報(特開平11-54275号)
甲第4号証:平成元年電気・情報関連学会連合大会講演論文集〔分冊2:PART2〕第123-125頁、電気・情報関連学会常置連合大会企画委員会、1989年2月25日
(2)申立人 古江恵美子は、請求項3,4,5,7に係る発明の特許は、下記甲第1号証により特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるので取り消すべき旨、それぞれ主張している。
甲第1号証:特願平10-535549号の再公表公報(国際公開99/20080号)

第3 訂正審判による特許請求の範囲の訂正内容
本件特許の設定登録時の請求項1ないし7に係る発明(以下、「設定登録時特許発明1ないし7」という。)は、上記訂正2006-39153号の審判請求書に添付した訂正明細書(平成19年1月15日付け補正後のもの。)に記載のとおり、請求項3,5,7が削除され、当該削除にともなって、請求項の番号の繰り上げと引用する請求項の番号を整合させる訂正が行われた結果、設定登録時特許発明3,5,7は削除され、その他の設定登録時発明のうち、請求項3,5,7を引用する発明が削除されることとなった。また、設定登録時特許発明1,6について、それぞれ、「前記有機発光層のパターンは、前記透明または半透明電極のうちの一方の陽極の長手方向と同じ方向に形成され」、「透明または半透明のストライプ状の陽極を形成する工程と、前記有機発光層のパターンを前記陽極の長手方向と同じ方向に形成するとともに」との発明特定事項が追加された。

第4 特許異議の申立てについての判断
申立人 古江恵美子が取消しを求めた特許3206646号の設定登録時特許発明3,4,5,7のうち、設定登録時特許発明3,5,7は、上述のとおり削除されて存在しないものとなった。また、同人が取消しを求めた設定登録時特許発明4は、設定登録時特許発明3を引用する設定登録時特許発明4(請求項3を引用して記載した請求項4に係る発明)であることは明らかであるので、同人が取消しを求めた設定登録時特許発明4も、同様に削除されて存在しないものとなった。
してみると、申立人 古江恵美子による特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるので、平成15年法律第47号改正附則第2条第7項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第120条の6第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
したがって、以下、申立人 イーストマン コダック カンパニーによる特許異議の申立てについて検討する。

(1)本件特許
上記訂正審判(訂正2006-39153号)により、本件の明細書の特許請求の範囲の記載された訂正された発明は、当該訂正審判の平成19年1月15日付け手続補正書により補正された審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれを「本件特許1」ないし「本件特許4」という。)。
「【請求項1】 少なくとも一方が透明または半透明の対向する、かつ、互いに直交するストライプ状の電極間に、各色に対応して異なる波長を発光する有機発光層、および電子輸送層を有する多色発光有機ELパネルにおいて、
前記有機発光層のパターンは、前記透明または半透明電極のうちの一方の陽極の長手方向と同じ方向に形成され、前記有機発光層同士は隣接する全ての画素間で互いに分離しており、前記電子輸送層は前記隣接する全ての画素間で隙間なく形成されていると共に前記有機発光層同士が互いに分離されている全ての隙間に充填されていることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】 前記電子輸送層が一様な膜として形成されていることを特徴とする請求項1記載の有機ELパネル。
【請求項3】 正孔注入・輸送層をさらに有している請求項1又は2記載の多色発光有機ELパネル。
【請求項4】 透明基板上に、各色に対応する有機発光層を形成する工程と、形成した有機発光層上に電子輸送層を形成する工程とを有する多色発光有機ELパネルの製造方法において、
透明または半透明のストライプ状の陽極を形成する工程と、
前記有機発光層のパターンを前記陽極の長手方向と同じ方向に形成するとともに、前記有機発光層同士を隣接する全ての画素間で互いに分離するように形成する工程と、
形成された有機発光層同士の隙間を充填しながら前記隣接する全ての画素間で隙間なく前記電子輸送層を形成する工程とを有することを特徴とする多色発光有機ELパネルの製造方法。」

(2)引用刊行物
当審が平成15年3月14日付けで通知した取消理由通知のうち、本件特許1ないし4(実質的に特許発明1,2,4,6に対応)について引用した特開平9-115672号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開平9-167684号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開平10-12377号公報(以下、「刊行物3」という。)、および本件特許4について引用した特願平8-263666号(特開平10-92574号公報)(以下、「先願」という。)には、以下の事項が記載あるいは図示されている。

(2-1)刊行物1
(1a)「【0033】図1は、本実施例による有機EL素子の一部分を示した平面図である。この有機EL素子15によれば、例えば 100mm×150mm のサイズのガラス等の透明基板6の一方の面には、例えば 71.98mm×91.55mm のサイズの素子領域44が配されている。この素子領域には、ITO(Indium tin oxide)からなる透明電極5が陽極として幅W_(1)280μm、厚さ 150nm、ピッチP_(1)300μmで 240本分、平行に(ストライプ状に)形成されている。…(以下略)」
(1b)「【0034】そして、基板6に設けた透明電極5の上には、この透明電極5と直交するようにSiO_(2)絶縁層11が、幅W_(3)30μm、厚さ 150nm、ピッチP_(2)100μmで 916本分、平行に(ストライプ状に)形成されている。この絶縁層11は、その後に基板6上に形成する電界発光有機層及び電極(陰極)の幅方向の端縁部を通って電流がリークするのを防ぐためである。…(以下略)」
(1c)「【0035】図2は、図1のII-II線断面図である。図示の如く、基板6上には、ホール輸送層4と、発光材料が混合されている電子輸送層2とがそれぞれ有機層として、更に電極1が陰極としてこの順にほぼ同一の平面形状にストライプ状に積層されている。この積層体からなる赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光色のものを1組40としてこれを多数並列配置しており、この上をSiN又はAlN保護層12で被覆している。」
(1d)「【0041】…(中略)…1つの画素PX(図1参照)が過電流により破壊される場合がある。…(以下略)」
(1e)「【0046】そして、図1及び図2で示した赤、緑及び青色に発光するホール輸送層4と電子輸送層2とからなる有機層、及び電極1は、一枚のマスクを共通に使用して以下の如くにして形成する。図9はそのマスク16を概略的に示し、図10は図9のB部の拡大図、図11は図10のXI-XI線断面図である。」
(1f)「【0048】図12は、このマスク16を用いて有機層及び電極(陰極)を実質的に同一の平面形状に積層する際に、スパッタリング及びパターニングによって基板6の透明電極5を直交して形成された絶縁膜11とマスク16との位置関係を示すものである。…(以下略)」
(1g)「【0049】即ち、a_(1 )?a_(n)の領域において、例えば赤色の発光を生じる有機層と電極の積層体を真空蒸着で形成した後、次に、a_(1 )?a_(n)に隣接する領域b_(1) 、b_(2)、b_(3)…b_(n) にマスク穴17を位置合わせするようにマスク16を平行移動させ、例えば緑色の発光色を生じる別の有機層と電極を真空蒸着で積層する。そして、これが終われば、更にc_(1) ?c_(n)の領域にマスク穴17を位置合わせするようにマスク16を平行移動させ、例えば青色の発光色を生じる別の有機層と電極を積層する。
このようにして、本実施例によれば、1枚の共通のマスク16を用いて有機層及び電極層をほぼ同一パターンに真空蒸着で積層していることは注目すべき特徴である。」
(1h)「【0074】図18は、真空蒸着装置21内における基板6とマスク16のみを拡大して図示したものである。このマスク16は蒸着時に図14?図17に示した機構により移動させ、また蒸着の要領は図12及び図13に示した通りである。
【0075】図18は、…(中略)…ホール輸送層4を一層目として蒸着する状態を示している。この場合、TPDの蒸気24Aはマスク16の開口18Bから18Aを通して基板6上に堆積する(以下、同様)。
【0076】そして、マスク16はそのままにして、a_(1 )?a_(n) 領域において上記のAlq_(3)とDCMを主体とする電子輸送層2及びアルミニウムの電極1をこの順にホール輸送層4に続けて蒸着し、赤色発光用の積層体を形成する。
【0077】こうして領域a_(1 )……a_(n) に1色目の積層体を形成した後、…(中略)…緑色発光用の積層体を形成する。
【0078】更に、上記と同様にマスク16を移動させて…(中略)…青色発光用の積層体を形成する。これによって、図1及び図2に示した如き構造を作製する。」
(1i)「【0086】このようにして、0.1mmピッチ程度の微細な画素からなる単純マトリックス型の有機EL素子を、極めて簡略な設備により製造することができる。」
(1j)「【0090】そして、透明電極5の長さ方向において、隣接する画素間では有機層が存在しないでSiO_(2)絶縁層11が保護層12と直接接し、また、表示領域の周辺部では保護膜12が透明電極5や基板6に直接付着しているので、保護膜12の密着強度を向上させることができる。」
(1k)「【0094】例えば、上述のホール輸送層等の有機層及び電極の積層パターン又はその平面形状はストライプ状以外にも様々であってよいし、また、その層構成や組成等も上述した例のものに限られることはなく、図21で示したように電子輸送層とは別に発光層を有機層として追加してもよい。上述の絶縁層11は必ずしも設けなくてよい。外部端子との接続部だけでなく、電極1の他端部側でも有機層を形成しなくてよい(この場合は、更に電極の接着が良くなる)。」
(1l)「【0098】また、上述の例ではマルチカラー又はフルカラー用のディスプレイとしての有機EL素子を説明したが、モノカラー用のディスプレイにも適用することができる。」
(1m)「【0100】
【発明の作用効果】本発明は、上述した如く、第1の電極上に有機層と前記第1の電極に対向した第2の電極とが設けられ、前記有機層と前記第2の電極とが実質的に同一の平面形状で積層されているので、共通のマスクを使用して有機層と電極とを形成できる。これによって、真空装置内に大掛かりなマスク掛け又はその移動機構を設ける必要がなく、マスクの相対的移動を最小限にし、極めて単純な移動機構を設けるのみで微細な画素パターンを実現できる。しかも、有機層及び電極を共通のマスクで形成できるので、大気に曝すことなしに真空状態下でそれぞれを形成できる。
【0101】そして、隣接する画素間では有機層が存在しないで保護膜が直接下地と接し、また、周辺部では保護膜が電極や基体に直接付着しているので、保護膜の密着強度を向上させることができる。」
(1n)図1には、ストライプ状の透明電極5と同じくストライプ状の電極1が直交して配置されていることが示されている。

上記記載事項及び図示内容からして、刊行物1には、以下の二つの発明(以下、「刊行物1発明の1」及び「刊行物1発明の2」という。)が記載されているものと認められる。
(刊行物1発明の1)
「透明基板6に設けたストライプ状の陽極透明電極5と、上記透明電極5と直交して配置されているストライプ状の陰極電極1間に、赤、緑、青の発光色を生じる有機層を有する単純マトリックス型の有機EL素子を用いたマルチカラー用のディスプレイであって、上記有機層は、ホール輸送層4、発光層3及び電子輸送層2とからなるストライプ状に積層された積層体であり、該積層体からなる赤、緑、青の各発光色のものを1組40としてこれを多数並列配置しており、上記透明電極5の長さ方向において隣接する画素間では上記有機層が存在せず、上記陽極透明電極5の上には、絶縁層11がストライプ状に形成されている単純マトリックス型の有機EL素子を用いたマルチカラー用のディスプレイ。」
(刊行物1発明の2)
「上記刊行物1発明の1の単純マトリックス型の有機EL素子を用いたマルチカラー用のディスプレイを製造する方法であって、透明基板6に設けたストライプ状の陽極透明電極5上に先ず赤色発光用の積層体を形成するために、マスクと蒸着装置を準備し、ホール輸送層4を一層目として蒸着し、続けて赤色発光材料が混入されている発光層3、電子輸送層2を順に蒸着し、最後に陰極電極1を蒸着して赤色発光用の積層体を形成し、マスクを透明基板6に対し相対的に移動させて、該赤色発光用の積層体とは間隔を空けた隣接位置に同じ要領で緑色発光用の積層体を形成し、さらに同じ要領で、間隔を空けた隣接位置に青色発光用の積層体を形成する、このような要領を繰り返して上記有機EL素子を製造する単純マトリックス型の有機EL素子を用いたマルチカラー用のディスプレイを製造する方法。」

(1-2)刊行物2
(2a)「【0014】次に列電極と共に適所に所望のパターンでデバイスの多色有機EL媒体及び行電極部分を形成することが可能である。図2は図1での符号A-Aで示された断面を示す。ELデバイス100は基板110、列電極120、有機EL媒体130、行電極140を示す。有機EL媒体を構成するのは3原色化されたEL媒体131、132、133である。」
(2b)「【0015】第一にパターン化される対象は列電極上に3原色有機EL媒体を選択的に堆積することである。これは近接離間した堆積技術により達成され、堆積のシーケンスは図3の(a)から(e)に示される。図3の(a)は列電極120を有する透明基板110を示す。近接離間した堆積法を用いて最初の主なEL媒体131は図3の(b)に示されるように第一の主な副画素を形成するために3つ毎の列電極上に堆積される。プロセスは繰り返され、第二の主なEL媒体132が図3の(c)に示されるように第一の副画素に隣接する列電極上に選択的に堆積される。プロセスは図3の(d)に示されるように残りのカラム電極上に第三の主なEL媒体133を選択的に堆積するようもう一度繰り返される。図3の(e)に列電極120を有する完成されたELパネル構造を示す。」
(2c)「【0016】近接離間した堆積技術は印刷応用で専ら用いられてきた(米国特許第4772582号)。簡単にいうとこの技術はドナーシートからドナーを選択的に活性化することにより非常に接近して保持される受容体へ材料の所定の量を転写するために用いられる。…(以下略)」
(2d)「【0021】上記で有機EL媒体はその最も簡単な可能な形態で記載されている。それは単一の有機EL媒体を含む従来のデバイスを構築するのに用いられる従来の形態の幾つかを取りうる有機ELである。VanSlyke等により開示されるような(米国特許第5061617号)より効果的な動作は各能動的副画素領域内の有機EL媒体が重畳された層を含むときに実現する。効果的な従来の多層有機ELデバイスではホール注入及び移動帯はホール注入電極上に塗布され、それはまた電子注入及び移動帯でその上に塗布され、これは次に電子注入電極により上塗りされる。」
(2e)「【0022】多層化された有機EL媒体を本発明の実施に適用する場合に近接離間した堆積法により由来するエレクトロルミネセンスからの層のみをパターン化することが必要である。他の層は均一に、真空蒸着法のような従来のどのような方法によってもパターン化せずに堆積される。図4は順次ホール注入層430と、ホール移動層440と、ルミネセンス層130と、電子移動層460とを含むEL媒体を含む有機ELの構造を示す。上記のように基板は110、列電極は120、行電極は140である。ルミネセンス層130を除く全ての層は従来の真空蒸着プロセスにより堆積されうる。ルミネセンス層130は3つの主なEL媒体131、132、133を形成し、本発明で開示された近接離間した堆積により堆積され、パターン化される。」
(2f)図4には、ルミネセンス層130の上の全面に電子移動層460が形成されていることが示されている。

上記記載事項及び図示内容からして、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(刊行物2発明)
「基板110に設けた列電極120と、上記列電極120と直交して配置されている行電極140間に、ホール注入層430,ホール移動層440、青、緑、赤の有機EL媒体131,132,133からなるルミネセンス層130、電子移動層460を順に積層した有機エレクトロルミネセンス表示パネルであって、上記ルミネセンス層130は近接離間した堆積によりパターン化して形成し、上記電子移動層460は真空蒸着法などの方法によりパターン化せずに上記ルミネセンス層130上全面に形成されている有機エレクトロルミネセンス表示パネル。」

(2-3)刊行物3
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリックス型のEL表示体のインクジェット方式を用いた製造方法に関する。」
(3b)「【0018】(実施例2)図2に示すように、ガラス基板201上に薄膜トランジスタ202を形成してから、AlLi反射画素電極203を形成する。
【0019】次に、インクジェットプリント装置207により赤、緑、青色を発色する発光材料をパターニング塗布し、発色層204、205、206を形成する。…(中略)…
【0020】正孔注入材料としてポリマー前駆体であるポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンをキャスト法により形成する。加熱により、前駆体はポリフェニレンビニレンとなり、正孔注入層208が形成される。
【0021】最後に、ITO透明電極209を蒸着法により形成する。」
(3c)図2には、有機発光層204?206が互いに隙間なくパターニングされ、その上に正孔注入層208が設けられていることが図示されている。

(2-4)先願(願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項)
(4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】外部信号により薄膜トランジスタを介して駆動される複数の駆動電極が基板上に設けられ、この基板上に少なくとも有機材料を用いた発光層と上記の駆動電極に対向する対向電極とが積層され、上記の各駆動電極に対応して発光層が分離されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項2】請求項1に記載した有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、上記の駆動電極上にキャリア輸送層が形成され、このキャリア輸送層を覆うようにして上記の発光層が形成されてなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項3】請求項1又は2に記載した有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、可撓性の基板を用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。」
(4b)「【0011】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、有機ELパネルにおける上記のような様々な問題を解決することを課題とするものであり、特に、基板上に薄膜トランジスタにより駆動される駆動電極を各画素に対応して設け、適当な位置における駆動電極を薄膜トランジスタにより駆動させて、駆動電極に対応した部分における有機ELを発光させるようになった有機ELパネルにおいて、この有機ELパネルにおける基板に可撓性のものを用いて、この有機ELパネルを巻き取ったり折り曲げたりするようにした場合であっても、この有機ELパネルに形成された発光層にクラック等が生じて有機ELが劣化するということがなく、有機ELパネルの収納や運搬等が容易に行なえるようにすることを課題とするものである。」
(4c)「【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施形態に係る有機ELパネルを添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0018】この実施形態における有機ELパネルにおいては、可撓性でかつ耐熱性に優れた樹脂製の基板10を用い、図1及び図2に示すように、この基板10上に薄膜トランジスタ1を設けるようにした。
【0019】ここで、基板10上に薄膜トランジスタ1を設けるにあたっては、X方向の各電極線2xにそれぞれ複数のゲート電極3を接続させると共に、Y方向の各電極線2yにそれぞれ複数のソース電極4を接続させ、それぞれのソース電極4にアモルファスシリコン層5を接続させるようにした。
【0020】そして、このようにソース電極4に接続された各アモルファスシリコン層5に対して各駆動電極6を接続させるようにした。
【0021】なお、この薄膜トランジスタ1において、適当なX方向の電極線2xとY方向の電極線2yとに電圧を印加すると、その交点における駆動電極6がアモルファスシリコン層5を介してY方向の電極線2yと等電位になる。
【0022】そして、この実施形態の有機ELパネルにおいては、図2に示すように、上記のように構成された薄膜トランジスタ1において、上記の各電極線2x,2y、各ゲート電極3、各ソース電極4及び各アモルファスシリコン層5を全て絶縁膜7で覆うようにし、駆動電極6のみを露出させるようにした。なお、この実施形態においては、この駆動電極6を電子注入電極として用いるようにし、この電極材料にはマグネシウム・インジウム合金等を用いるようにした。
【0023】次いで、このように薄膜トランジスタ1及びこの薄膜トランジスタ1に接続された各駆動電極6が設けられた基板10上に電子輸送層11を形成した後、この電子輸送層11に対してレーザ光を照射し、図3に示すように、各駆動電極6に対応するようにして電子輸送層11を分離させ、各駆動電極6上に電子輸送層11を形成した。なお、電子輸送層11を構成する材料としては、一般に使用されている電子輸送材料を用いることができ、例えば、下記の化1に示すオキサジアゾール誘導体[tBu-PBD]等を用いることができる。
…(中略)…
【0025】そして、このように各駆動電極6に対応するように電子輸送層11が分離して形成された基板10上に発光層12を形成した後、この発光層12に対してレーザ光を照射し、図4に示すように、各駆動電極6に対応するように発光層12を分離させ、各駆動電極6上に形成された各電子輸送層11を覆うようにして発光層12を形成した。なお、発光層12を構成する材料としては、一般に使用されている有機発光材料を用いることができ、例えば、下記の化2に示すトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム[Alq_(3)]を用いるようにしたり、また電荷輸送性のホスト材料中に下記の化3に示すルブレン等の発光材料をドープさせるようにしてもよい。
…(中略)…
【0028】次いで、このように各駆動電極6に対応するようにして発光層12が分離されて形成された基板10上に、図5に示すように、ホール輸送層13を分離させることなく形成し、さらにこのホール輸送層13上に対向電極14としてホール注入電極を分離させることなく形成した。そして、このようにホール輸送層13を分離させることなく形成した場合においても、この実施形態のものにおいては、前記のように発光層12が各電子輸送層11を覆うようにして形成されているため、ホール輸送層13が電子輸送層11と接触することがない。
【0029】ここで、ホール輸送層13を構成する材料としては、一般に使用されているホール輸送材料を用いることができ、例えば下記の化4に示すN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン[TPD]等のトリフェニルアミン誘導体やヒドラゾン誘導体等を用いることができる。
…(中略)…
【0031】また、ホール注入電極として用いる対向電極14には、透明なITOを用いるようにした。
【0032】そして、この実施形態の有機ELパネルにおいて、基板10上に形成された薄膜トランジスタ1により適当な位置における駆動電極6と対向電極14との間に電圧を印加させると、この駆動電極6に対応した位置における発光層12が発光し、この光が上記の透明なITOで構成された対向電極14から出光されるようになった。
【0033】また、この実施形態の有機ELパネルにおいては、前記のように基板10を可撓性の樹脂で構成すると共に、各発光層12を各駆動電極6に対応するようにして分離させたため、発光層12が設けられていない部分において上記の基板10を折り曲げることにより、発光層12を傷つけることなくこの有機ELパネルをコンパクトにすることができ、有機ELパネルの収納や運搬等が容易に行なえるようになった。」
(4d)「【0035】また、この実施形態における有機ELパネルにおいては、薄膜トランジスタ1によって駆動される駆動電極6を電子注入電極として用いる一方、対向電極14をホール注入電極として用いるようにしたが、上記の駆動電極6を透明なITOで構成してホール注入電極として使用する一方、対向電極14をマグネシウム・インジウム合金等で構成して電子注入電極として使用することも可能である。
【0036】なお、この場合、駆動電極6側から光を出射させるため、上記の基板10には透明なものを用いるようにし、またこの駆動電極6の上にホール輸送層14、発光層13、電子輸送層12の順で積層させるようにする。」

(3)本件特許1ないし4についての対比、判断
(3-1)本件特許1について
本件特許1と刊行物1発明の1とを対比すると、その機能及び構成からみて、刊行物1発明の1の「ストライプ状の陽極透明電極5」及び「ストライプ状の陰極電極1」は、それぞれ本件特許1の「透明または半透明のストライプ状の電極」及び「ストライプ状の電極」に相当し、刊行物1発明の1の「透明基板6に設けたストライプ状の陽極透明電極5と、上記透明電極5と直交して配置されているストライプ状の陰極電極1」は、本件特許1の「少なくとも一方が透明または半透明の対向する、かつ、互いに直交するストライプ状の電極」に相当する。また、刊行物1発明の1の「赤、緑、青の発光色を生じる有機層」のうち「発光層」は、本件特許1「各色に対応して異なる波長を発光する有機発光層」に相当し、同様に「有機EL素子を用いたマルチカラー用のディスプレイ」は「多色発光有機ELパネル」に、相当する。
そして、刊行物1発明の1において、「上記陽極透明電極5の長さ方向において隣接する画素間では有機層が存在せず」ということは、刊行物1発明の1は、本件特許1の「前記有機発光層同士は隣接する全ての画素間で互いに分離して」いる構成に相当する構成を備えているものといえる。

したがって、両者は、「少なくとも一方が透明または半透明の対向する、かつ、互いに直交するストライプ状の電極間に、各色に対応して異なる波長を発光する有機発光層、および電子輸送層を有する多色発光有機ELパネルにおいて、前記有機発光層同士は隣接する全ての画素間で互いに分離している有機ELパネル。」である点で一致し、下記の点で相違しているものと認められる。
〈相違点1〉
透明または半透明電極の陽極と有機発光層の関係が、本件特許1では、「有機発光層のパターンは、前記透明または半透明電極のうちの一方の陽極の長手方向と同じ方向に形成され」ているのに対し、刊行物1発明の1では、「透明電極5と直交して形成されて」いる点。
〈相違点2〉
電子輸送層に関して、本件特許1では、「隣接する全ての画素間で隙間なく形成されていると共に前記有機発光層同士が互いに分離されている全ての隙間に充填されている」のに対して、刊行物1発明の1では、有機層としてホール輸送層及び発光層とともに積層体を構成しており、発光層同士の隙間に充填されていない点。

上記各相違点について検討する。
先ず、相違点1について検討する。
上記相違点1に係る事項については、刊行物2に記載されているといえる。しかしながら、刊行物1発明の1に刊行物2に記載された事項を適用しようとすると、ホール輸送層4及び電子輸送層2と、電極1とで、マスクを90度回転する必要が生じる。
ここで、上記(1h)、(1m)の記載事項からして、刊行物1発明の1は、陽極である第1の電極(透明電極5)上にホール輸送層4、発光層3及び電子輸送層2からなる有機層と、前記第1の電極に対向した陰極である第2の電極(陰極電極1)とが設けられ、前記有機層と前記第2の電極とが実質的に同一の平面形状で積層されているので、共通のマスクを使用して有機層と電極とを形成でき、これによって、真空装置内に大掛かりなマスク掛け又はその移動機構を設ける必要がなく、マスクの相対的移動を最小限にし、極めて単純な移動機構を設けるのみで微細な画素パターンを実現できる上、有機層及び電極を共通のマスクで形成できるので、大気に曝すことなしに真空状態下でそれぞれを形成できるという作用・効果を奏するものである。
そうすると、刊行物1発明の1に、刊行物2に記載された、マスクを90度回転させる必要が生じる構成を適用すると、刊行物1発明の1の上記作用・効果を奏さなくなることは明らかである。
したがって、上記の適用は、採用することができない適用であるということができるので、上記相違点1に係る本件特許1の発明特定事項を、刊行物1発明の1および刊行物2発明に基いて導き出すことが当業者にとって容易ということはできない。
また、刊行物3には、上記相違点1に係る事項については何ら記載されていない。
よって、上記相違点1に係る本件特許1の発明特定事項を、刊行物1発明の1および刊行物2発明ならびに刊行物3に記載された技術的事項に基いて導き出すことが当業者にとって容易ということはできない。

次に、相違点2について検討する。
刊行物2には、「ルミネセンス層130は近接離間した堆積によりパターン化して形成し、電子移動層460は真空蒸着法などの方法によりパターン化せずに上記ルミネセンス層130上全面に形成されている有機エレクトロルミネセンス表示パネル。」に関する発明が記載されている(前記刊行物2発明参照)。
しかし、相違点1についての検討で述べたとおり、刊行物1発明の1は、第1の電極上にホール輸送層4、発光層3及び電子輸送層2からなる有機層と、前記第1の電極に対向した第2の電極とが設けられ、前記有機層と前記第2の電極とが実質的に同一の平面形状で積層されているので、共通のマスクを使用して有機層と電極とを形成でき、これによって、真空装置内に大掛かりなマスク掛け又はその移動機構を設ける必要がなく、マスクの相対的移動を最小限にし、極めて単純な移動機構を設けるのみで微細な画素パターンを実現できる上、有機層及び電極を共通のマスクで形成できるので、大気に曝すことなしに真空状態下でそれぞれを形成できるという作用・効果を奏するものであることから、刊行物1発明の1に刊行物2発明を適用して、有機層の中の電子輸送層2のみをパターン化せずに発光層3上全面に形成することは、その動機付けが無く、むしろ、刊行物1発明の1の作用・効果を奏さなくなるという点で、採用できない適用であるということができる。
また、刊行物3には、前記(3a)?(3c)の記載からして、有機発光層のパターンを形成した後に、その全面に正孔注入層を形成することが記載されていると認められるものの、有機発光層同士が互いに分離されていると認めるべき根拠がなく、その形成手法を電子輸送層の形成手法に転用したとしても、電子輸送層が「隣接する全ての画素間で隙間なく形成され」、「有機発光層同士が互いに分離されている全ての隙間に充填されている」という事項を導き出すことはできない。
したがって、上記相違点2に係る本件特許1の発明特定事項を、刊行物1発明の1および刊行物2発明ならびに刊行物3に記載された技術的事項に基いて導き出すことが当業者にとって容易ということはできない。

よって、本件特許1は、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-2)本件特許2について
本件特許2は、本件特許1に対し、「電子輸送層が一様な膜として形成されていることを」さらに限定した発明である。
そして、本件特許1が、上記(3-1)で検討したように、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許2も、同様の理由で、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-3)本件特許3について
本件特許3は、本件特許1又は2に対し、「正孔注入・輸送層をさらに有している」点をさらに限定した発明である。
そして、本件特許1又は2が、上記(3-1)、(3-2)で検討したように、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件特許3も、同様の理由で、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-4)本件特許4について
本件特許4と刊行物1発明の2とを対比すると、その機能及び構成からみて、刊行物1発明の2の「赤、緑、青色発光材料が混入されている発光層3」、「有機EL素子を用いたマルチカラー用のディスプレイ」及び「ストライプ状の陽極透明電極5」は、本件特許4の「各色に対応する有機発光層」、「多色発光有機ELパネル」及び「透明または半透明のストライプ状の電極」に相当する。また、刊行物1発明の2は、「該赤色発光用の積層体とは間隔を空けた隣接位置に同じ要領で緑色発光用の積層体を形成し、さらに同じ要領で、間隔を空けた隣接位置に青色発光用の積層体を形成する、このような要領を繰り返して上記有機EL素子を製造する」のであるから、本件発明4の「有機発光層同士を隣接する全ての画素間で互いに分離するように形成する工程」を有していることは、明らかである。

したがって、両者は、「透明基板上に、各色に対応する有機発光層を形成する工程と、形成した有機発光層上に電子輸送層を形成する工程とを有する多色発光有機ELパネルの製造方法において、透明または半透明のストライプ状の陽極を形成する工程と、前記有機発光層同士を隣接する全ての画素間で互いに分離するように形成する工程と、を有することを特徴とする多色発光有機ELパネルの製造方法。」である点で一致し、下記の点で相違しているものと認められる。
〈相違点3〉
本件特許4は、「有機発光層のパターンを前記陽極の長手方向と同じ方向に形成する」のに対し、刊行物1発明の2では、「透明電極5と直交して形成されて」いる点。
〈相違点4〉
電子輸送層に関して、本件特許4は、「形成された有機発光層同士の隙間を充填しながら前記隣接する全ての画素間で隙間なく前記電子輸送層を形成する」のに対し、刊行物1発明の2では、ホール輸送層及び発光層とともにストライプ状積層体を形成するために蒸着する点。

上記各相違点について検討するに、相違点3は前記相違点1と、相違点4は前記相違点2と、それぞれ実質的に同じ相違点ということができる、
したがって、本件特許1について既に検討した((3-1)参照)と同様に、相違点3および相違点4に係る本件特許4の発明特定事項を、刊行物1発明の2および刊行物2発明ならびに刊行物3に記載された技術的事項に基いて導き出すことが当業者にとって容易ということはできない。
よって、本件特許4は、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

さらに、本件特許4が先願に記載された発明と同一であるか否か検討する。
前記(4a)?(4d)の記載内容からして、先願には、
「外部信号により薄膜トランジスタを介して駆動される、各画素に対応して設けられた複数の透明駆動電極が透明基板上に設けられ、この基板上に少なくとも有機材料を用いた発光層と上記の透明駆動電極に対向する対向電極とが積層された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法であって、上記の各透明駆動電極に対応してホール輸送層、発光層を分離させて形成し、さらにその上に電子輸送層、電子注入電極を順に、分離させることなく形成する、有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件特許4と先願発明とを対比すると、先願発明の「複数の透明駆動電極」は、「各画素に対応して設けられた」ものであることから、島状であって、「ストライプ状」でないことは明らかである。
してみると、本件特許4が先願発明と同一であるということはできない。
なお、当審が平成15年3月14日付けで通知した取消理由通知において指摘はないが、本件特許1ないし3についても、同様に、先願発明と同一でないことは明らかである。

(4)小括
以上のとおり、本件特許1ないし4は、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明ということはできない。

(5)本件特許異議の申立て手続において示されたその他の証拠について
当審で通知した取消理由通知において提示した、本件特許の出願前に頒布されたその他の刊行物である特開平10-12381号公報、特開平9-241629号公報、ならびに、申立人 イーストマン コダック カンパニーの提出した、同じく本件特許の出願前に頒布されたその他の刊行物である平成元年電気・情報関連学会連合大会講演論文集のいずれにも、上記相違点1ないし4について記載されているとは認められず、また、同じく当審で通知した取消理由通知において提示した他の先願である特願平10-535549号(国際公開99/20080号参照)、ならびに、申立人 イーストマン コダック カンパニーの提示した他の先願である特願平9-94613号(特開平10-41069号公報参照)、および特願平10-149055号(特開平11-54275号公報参照)は、いずれも本件特許の出願前に頒布された刊行物でなく、また、そのいずれにも「有機発光層同士」が、「隣接する全ての画素間で互いに分離」し、「電子輸送層」が、「隣接する全ての画素間で隙間なく形成」されている点について記載されているとは認められないので、それらの証拠をもってしても、本件特許1ないし4が特許法第29条第2項または同法第29条の2のいずれかの規定に違反してなされたものということはできない。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、申立人 イーストマン コダック カンパニーの特許異議の申立ての理由及び証拠によって取り消すことはできず、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
また、申立人 古江恵美子による特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるので、平成15年法律第47号改正附則第2条第7項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第120条の6第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2010-03-24 
出願番号 特願平10-10566
審決分類 P 1 651・ 16- Y (H05B)
P 1 651・ 121- Y (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今関 雅子山岸 利治  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 森林 克郎
岡田 吉美
登録日 2001-07-06 
登録番号 特許第3206646号(P3206646)
権利者 三星エスディアイ株式会社
発明の名称 多色発光有機ELパネルおよびその製造方法  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 実広 信哉  
代理人 竹内 浩二  
代理人 鶴田 準一  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 樋口 外治  

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