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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B60R
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B60R
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
管理番号 1220061
審判番号 無効2007-800227  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-19 
確定日 2010-05-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2926040号発明「エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2926040号の請求項1?11に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2926040号に係る発明については、特許法第41条に基づく優先権主張を伴って、平成10年4月16日(優先権主張日:平成9年5月9日)に特許出願され、平成11年5月7日に特許権の設定の登録がなされた。
これに対し、平成12年1月28日に申立人日本化薬株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成12年9月12日及び平成13年6月25日に訂正請求がなされた後、平成13年8月23日付けで、訂正を認め、特許を維持するという異議の決定がなされた。
そして、平成19年10月19日に請求人日本化薬株式会社より特許無効審判が請求され、平成20年1月7日付けで被請求人ダイセル化学工業株式会社より答弁書及び訂正請求書が提出され、また、同年2月15日付けで請求人より弁駁書が提出された。そして、同年4月21日付けで請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、同年4月25日付けで請求人より上申書が提出された後、同年5月12日に口頭審理が行われた。さらに、同年6月9日付けで請求人及び被請求人より上申書が提出され、これを受け、同年6月16日付けで請求人及び被請求人より上申書が提出された。その後、同年6月30日付けで当審より無効理由が通知され、これに対し、同年8月4日付けで被請求人より意見書が提出され、同年9月17日付けで被請求人より上申書が提出されたものである。

2.訂正の可否について
被請求人は、平成20年1月7日付けの訂正請求書を提出して、本件特許明細書の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求しているので、まず、この訂正の可否について検討する。

2-1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】 ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?30mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。」

「【請求項1】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。」
と訂正する。

(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の
「【請求項2】 ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、テトラゾール若しくはその金属塩、トリアゾール若しくはその金属塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド又はニトログアニジンである含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?30mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を450?1300に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。」

「【請求項2】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、テトラゾール若しくはその金属塩、トリアゾール若しくはその金属塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド又はニトログアニジン(「ニトログアージン」の記載は「ニトログアニジン」の誤記と認められる。)である含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)(「k/cm^(2)」の記載は「kg/cm^(2)」の誤記と認められる。)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)(「/cm^(3)」の記載は「g/cm^(3)」の誤記と認められる。)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を450?1300に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。」
と訂正する。

(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3の
「【請求項3】 前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)が、運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、A/At=450?1000であることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。」

「【請求項3】
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)が、運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、A/At=450?1000であり、前記ハウジングは、前記各ガス排出口を有するディフューザシェルと、前記点火手段を収容する中央筒部材が配置される中央孔を有するクロージャシェルとを含み、前記ディフューザシェル、前記中央筒部材、及び前記クロージャシェルは別体のものが一体化されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。」
と訂正する。

(4)訂正事項d
特許請求の範囲の請求項6の
「【請求項6】 前記ガス排出口は、その内径が2?5mmであることを特徴とする請求項1?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」

「【請求項6】
前記ガス排出口は、その内径が2?5mmであり、前記ディフューザシェルはプレス成形によって形成されていることを特徴とする請求項3?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」
と訂正する。

(5)訂正事項e
特許請求の範囲の請求項7の
「【請求項7】 前記ガス発生剤は、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が、7?15mm/secであることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」

「【請求項7】
前記ガス発生剤は、前記含窒素有機化合物が30?40重量%であることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」
と訂正する。

2-2.訂正の可否についての判断
(1)訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度」について、「7?30mm/sec」を「7?15mm/sec」と限定するとともに、「前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、」という限定を付加し、また、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値」を「前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値」と明確化するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に規定された明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、前記訂正事項aは、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同法同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合する。

(2)訂正事項bは、訂正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度」について、「7?30mm/sec」を「7?15mm/sec」と限定するとともに、「前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、」という限定を付加し、また、訂正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値」を「前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値」と明確化するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に規定された明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、前記訂正事項bは、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同法同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合する。

(3)訂正事項cは、訂正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項に「前記ハウジングは、前記各ガス排出口を有するディフューザシェルと、前記点火手段を収容する中央筒部材が配置される中央孔を有するクロージャシェルとを含み、前記ディフューザシェル、前記中央筒部材、及び前記クロージャシェルは別体のものが一体化されている」という限定を付加するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、前記訂正事項cは、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同法同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合する。

(4)訂正事項dは、訂正前の請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項に「前記ディフューザシェルはプレス成形によって形成されている」という限定を付加するとともに、引用する請求項を「請求項1?5の何れか1項」から「請求項3?5の何れか1項」に限定するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項dは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、前記訂正事項dは、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同法同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合する。

(5)訂正事項eは、訂正前の請求項7に記載した発明を特定するために必要な事項である「ガス発生剤」について、「前記含窒素有機化合物が30?40重量%である」という限定を付加するとともに、前記訂正事項aを反映して記載を整合させるものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定された特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に規定された明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、前記訂正事項eは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、前記訂正事項eは、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び同法同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合する。

2-3.訂正の可否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書に適合するものであり、かつ、同法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。
よって、前記結論のとおり、訂正を認める。

3.本件特許発明
平成20年1月7日付けの訂正請求書による本件特許明細書の訂正は、前記のとおり認められたので、本件特許の各請求項に係る発明は、前記訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される次のとおりのものにあると認められる。

「【請求項1】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。
【請求項2】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、テトラゾール若しくはその金属塩、トリアゾール若しくはその金属塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド又はニトログアニジン(「ニトログアージン」の記載は「ニトログアニジン」の誤記と認められる。)である含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)(「k/cm^(2)」の記載は「kg/cm^(2)」の誤記と認められる。)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)(「/cm^(3)」の記載は「g/cm^(3)」の誤記と認められる。)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を450?1300に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。
【請求項3】
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)が、運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、A/At=450?1000であり、前記ハウジングは、前記各ガス排出口を有するディフューザシェルと、前記点火手段を収容する中央筒部材が配置される中央孔を有するクロージャシェルとを含み、前記ディフューザシェル、前記中央筒部材、及び前記クロージャシェルは別体のものが一体化されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項4】
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atは、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、50?200mm^(2)、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、60?500mm^(2)であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項5】 前記各ガス発生剤の表面積の総和Aは、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、4×10^(4)?7×10^(4)mm^(2)、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、6×10^(4)?3×10^(5)mm^(2)であることを特徴とする請求項1?4の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項6】
前記ガス排出口は、その内径が2?5mmであり、前記ディフューザシェルはプレス成形によって形成されていることを特徴とする請求項3?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項7】
前記ガス発生剤は、前記含窒素有機化合物が30?40重量%であることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項8】
前記含窒素有機化合物がニトログアニジンであることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項9】
前記スラグ形成剤が酸性白土であることを特徴とする請求項1又は8項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項10】
前記ガス発生剤は単孔円筒形状であることを特徴とする請求項1?9の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項11】
エアバッグ用ガス発生器と、
衝撃を感知して前記ガス発生器を作動させる衝撃センサと、
前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、
前記エアバッグを収容するモジュールケースとを含み、
前記エアバッグ用ガス発生器が請求項1?10の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。」(以下、請求項1?11に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1?11」という。)

4.請求人の主張の概要
審判請求人は、審判請求書、平成20年2月15日付け弁駁書、同年4月21日付け口頭審理陳述要領書、同年4月25日付け上申書、同年6月9日付け上申書及び同年6月16日付け上申書によれば、次の理由及び証拠から、本件特許発明1?11についての特許を無効とするとの審決を求めている。

4-1.無効理由1
本件特許発明1?11は、優先権主張の効果が認められず、したがって、本件特許発明1?11に関しての先行技術文献等認定のための基準日は、その現実の出願日である「平成10年4月16日」となすべきである。その結果、本件特許発明1?11は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

4-2.無効理由2
本件明細書の発明の詳細な説明の項の記載及び当該分野の技術常識に照らしても、本件明細書の特許請求の範囲に記載の、「開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制する」とする数値限定を満足するものが本件発明の効果を奏功するとの確証を得られるものでなく、また、当該数値限定が、どのようにして導き出されたのか、その根拠、理由さえも皆目、不明であるから、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に違背するものである。
したがって、その特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

4-3.無効理由3
本件明細書の発明の詳細な説明の項の記載は、本件特許発明1?11に関して、当該発明に含まれる実施の形態以外の部分が実施可能でないことにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に当該発明を明確かつ十分に記載してないことになるから、特許法第36条第4項の規定に違背するものである。
したがって、その特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

4-4.無効理由4
本件明細書の特許請求の範囲において、「含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%」(請求項1)のガス発生剤が記載されているが、当該ガス発生剤では、含窒素有機化合物の最大重量%(60%)と酸化剤の最小重量%(40%)及びスラグ形成剤の最小重量%(1%)の総和が101%となり、特許法第36条第6項第2号違反である。請求項2における、「テトラゾール若しくはその金属塩、トリアゾール若しくはその金属塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド又はニトログアニジンである含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%」の記載にも同様の不備が存在する。
したがって、その特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

<証拠方法>
甲第1号証:特開平10-29493号公報
甲第2号証:特開平8-301682号公報
甲第3号証:特開平6-183310号公報
甲第4号証:特開平10-87390号公報

また、請求人は、他の証拠として、平成20年2月15日付け弁駁書において、以下の甲第5号証?甲第13号証を提出し、同年4月21日付け口頭審理陳述要領書において、以下の甲第14号証?甲第17号証を提出し、同年6月9日付け上申書において、以下の甲第18号証?甲第20号証を提出し、同年6月16日付け上申書において、以下の甲第21号証及び甲第22号証を提出している。

甲第5号証:”Proceedings of the Nineteenth International Pyrotechnics Seminar,20-25 February 1994 Christchurch,New Zealand”、第517?530頁、1994年発行
甲第6号証:被請求人有価証券報告書
甲第7号証:国際公開第WO96/10494号パンフレット
甲第8号証:国際公開第WO96/10495号パンフレット
甲第9号証:特開平8-253092号公報
甲第10号証:ウエッブ・ページ
“http://www.nichidaifilter.co.jp/filter/prd_poafuro.html”のプリントアウト
甲第11号証:ウエッブ・ページ
“http://www.dia-web.com/product/gkn/index.html”のプリントアウト
甲第12号証:訂正明細書記載のフィルタ手段圧力損失値測定試験結果を示す実験報告書
甲第13号証:欧州特許公開公報第EP 0763512A1号
甲第14号証:GKN sinter metals filters GmbH社の技術資料
甲第15号証:実験報告書
甲第16号証:平成19年(ワ)第10364号事件の被告第3準備書面及び乙第34号証
甲第17号証:実験報告書
甲第18号証:特開平7-52748号公報
甲第19号証:米国特許公報第5,125,684号公報
甲第20号証:甲第19号証の抄訳
甲第21号証:実験報告書
甲第22号証:実験報告書

さらに、請求人は、参考資料として、審判請求書において、以下の参考資料1?参考資料7を提出し、平成20年6月16日付け上申書において、以下の参考資料8を提出している。

参考資料1:異議2000-70310号事件の経過
参考資料2:特願平9-119548号の明細書
参考資料3:「化学大辞典7 縮刷版」(共立出版株式会社,昭和51年9月10日発行,P56-P59)
参考資料4:欧州特許第800964号公報
参考資料5:”Proceedings of the Nineteenth International Pyrotechnics Seminar,20-25 February 1994 Christchurch,New Zealand”、第517?530頁、1994年発行
参考資料6:染野義信、染野啓子「判例工業所有権法(第二期版)」(第一法規出版株式会社,P611の98-P611の106)、兼子一、染野義信「判例工業所有権法」(第一法規出版株式会社,P2095の156-P2095の158)
参考資料7:新聞記事
参考資料8:「理工学辞典」(株式会社日刊工業新聞社,1996年3月28日発行)

5.当審で通知した無効理由(無効理由5)
本件特許発明1?11についての特許法第29条の規定の適用については、先の出願の時にされたものとみなすことはできず、現実の出願日の平成10年4月16日を出願日とする。
そして、本件特許発明1?11は、第1刊行物(特開平10-29493号公報、請求人提出の甲第1号証)、第2刊行物(特開平7-52748号公報、請求人提出の甲第18号証)及び第3刊行物(国際公開第96/10494号、請求人提出の甲第7号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

6.被請求人の主張の概要
被請求人は、平成20年1月7日付け答弁書、同年4月21日付け口頭審理陳述要領書、同年6月9日付け上申書及び同年6月16日付け上申書によれば、無効理由1?無効理由4に対して次のように主張し、同年8月4日付け意見書によれば、無効理由5に対して次のように主張している。また、被請求人は、同年9月17日付け上申書において、これらの主張を要約している。

6-1.無効理由1について
甲第1号証及び甲第2号証は、本件特許発明1の構成(ハ)「前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており」、及び構成(ニ)「前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器」を開示も示唆もしていない。
してみれば、甲第1号証の発明に甲第2号証の発明を組み合わせたとしても構成(ハ)及び構成(ニ)を有する本件特許発明1を得ることができない。
ここで、本件特許発明1の構成(ハ)及び構成(ニ)が周知事項あるいは設計的事項であるとする証拠も提示されていない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証をもって、容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項に該当するものではない。

また、本件特許発明2、及び直接又は間接的に本件特許発明1又は2を引用する本件特許発明3?11は、甲第1号証及び甲第2号証により開示も示唆もされていない本件特許発明1の構成(ハ)及び構成(ニ)を、その構成の一部としているから、同様の理由により、特許法第29条第2項に該当するものではない。

6-2.無効理由2について
(1)本件特許の明細書の段落【0025】、【0033】、【0034】に記載されているとおり、本件特許発明においては、7?15mm/secの線燃焼速度の非アジド系ガス発生剤を用いても、所望の時間内に当該ガス発生剤を全て燃焼させることができる。
また、A/Atの上限と下限の意義について、段落【0026】には、A/Atの最大値を超えると、ガス発生器内での圧力が過剰に上昇し、ガス発生剤の燃焼速度が大き過ぎる結果となり、最小値に満たない場合は、ガス発生器内の圧力が低くなり、燃焼速度が小さ過ぎ、いずれの場合も所望の燃焼時間の範囲外となり、実用可能なガス発生器を提供し得ないことが明記されている。
このように数値による規定の意義、及び数値の上限と下限の意義についても、ともに明細書に明記されており、当業者がその意義を理解できない筈はない。

本件特許の明細書中の具体例については、明細書の段落【0058】、【0081】に記載しており、そのうち前者について、段落【0089】?【0091】の実施例において、外気の温度差の影響によるガス発生器の作動性能についての評価試験を行っている。
前記の具体例は、請求項の記載の数値範囲全体にわたる具体例全てを示しているわけではないが、上記該数値範囲の技術的意義が発明の詳細な説明に明記してある以上、必ずしもその数値範囲全部についての詳細な具体例が更に必要となるわけではない。
したがって、本件特許の明細書のサポート要件について欠くところはない。

(2)昭和50年以前よりA/At概念をエアバッグ用インフレータに適用した発明が数多く提案されている(乙第5号証:特開昭49-44434号等)ので、当業者は、特に、ガス発生剤の線燃焼速度と燃焼圧力とA/At等の関係の意義については、十分理解していると思われる。

(3)同じ燃焼圧力を維持する場合は、クーラント/フィルタの圧力損失の少ない本件特許発明の方がクーラント/フィルタの圧力損失の大きい甲第1号証よりも大きいA/At値をとるのは当然である。
したがって、同一燃焼圧力を維持する場合でも、甲第1号証のA/Atが100から300に規制され、一方、本件特許発明1のA/Atが300から1300に規制されることに何等技術的矛盾は存在しない。

(4)以上により、「本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反する。」という請求人の主張は失当である。

6-3.無効理由3について
(1)請求人は、甲第1号証のクーラント/フィルタについて誤解がある。甲第1号証は、圧力損失の大きなフィルタ手段を用い、燃焼圧力をコントロールするのは主としてフィルタ手段が担っているという、従来の技術を踏襲しているものであるのに対し、本件特許発明は、圧力損失の小さいフィルタ手段を使用し、燃焼圧力をフィルタ手段ではなくハウジングに設けたガス排出口で行うことを基本的な構成としている点で、明らかに技術思想を異にしている。

(2)以上により、「本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4項の規定に違背する。」とする請求人の主張は失当である。

6-4.無効理由4について
(1)本件特許発明の重量%は、各成分の「含有量」を個別にその数値の幅の中で選択できることを意味しており、各成分の総和が100%を超えないことを前提としていることは、技術常識として当業者に理解できる。

(2)実施例のガス発生剤の当該組成(重量比)は、小数点1桁まで記載し、特許請求の範囲については、被請求人が乙第7号証として提出する「JISZ 8401-1999」に準拠して、小数点1桁を丸めて記載している。
したがって、当業者が、上記した3成分の総和が101%になる本件特許発明の請求項1及び2に接したとき、当該請求項1及び2を乙第7号証の規則により丸めの幅を1として丸めたものと解釈して理解することができる。

(3)以上により、本件特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は不明確とはいえず、これを明確でないとし、特許法第36条第6項2号に違反するという請求人の主張は失当である。

6-5.無効理由5について
(1)第1刊行物は、本件特許発明1の3つの主要な発明特定事項である「10?2000mmH_(2)Oのフィルタ手段」、「ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値より低い圧力損失値のフィルタ手段」、及び「A/Atを300より大きく1300以下に規制する」構成の利用を否定するものであるから、本件特許発明1の進歩性の判断に当たり、第1刊行物を対比判断の資料に使用し得ない。

(2)第2刊行物の冷却捕集フィルタ16を第1刊行物の所定の圧力損失を有するクーラント/フィルタ407に適用した場合、コンバッションリング、コンバスタカップなどを廃止してガス発生器の小型・軽量化、及び部品点数の減少を図るという第1刊行物の発明の目的に反することになるから、これを当業者が容易に想到することができたものと認めることができない。

(3)本件特許発明1?11のガス発生器はガス発生器としての完成品であるのに対し、第2刊行物のガス発生器はガス発生器の部品(燃焼室)であり、また、本件特許発明1?11のガス発生器はトロイダル形式に属し、第2刊行物のガス発生器はボンベ形式に属することから、形状及び構造においてタイプが異なる。

(4)第2刊行物は冷却捕集フィルタ16の圧力損失を一切記載していないし、また、その示唆も行っていない。第2刊行物の段落【0016】を、「燃焼ガスの圧力に影響を与えず、燃焼室14と圧力調整用空間17との圧力をほぼ同等とするフィルタ手段16を用いることにより、固体残渣が押し出されることを防止するという技術思想が開示されている。」と認定しているのは誤りである。
仮に第1刊行物のクーラント/フィルタ407に第2刊行物の技術思想を適用しても、第2刊行物は燃焼ガスが冷えすぎにならないフィルタ16しか開示していないのだから、「その圧力損失を燃焼ガスの圧力に影響を与えず、燃焼室428と間隙409との圧力がほぼ同等となるような値とする」構成を得ることもできない。

(5)第1刊行物の燃焼残渣を捕捉する技術思想によれば、第1刊行物のクーラント/フィルタ407において、固体残渣が押し出されることはないので、固体残渣が押し出されることを防止するという課題は内在していない。よって、無効理由通知が、「第1刊行物に記載されたクーラント/フィルタ407もフィルタである以上、固体残渣が押し出されることを防止するという課題が内在していることは明らかである」と認定しているのは誤りである。これを動機付けとして、第1刊行物に第2刊行物を適用することは誤りである。
また、固形物が押し出されるのを防止する技術思想が、第1刊行物と第2刊行物の間で相違するので、技術思想の異なる第2刊行物の段落【0016】に記載されている「固体残渣の押し出されない技術思想」に基づくフィルタ16を、第1刊行物のクーラント/フィルタ407に適用すると、技術的な前提条件が破綻してしまうという阻害要因が存在する。

(6)第1刊行物のガス発生器の方が第2刊行物のガス発生器に比較して小型・軽量のエアバッグ装置を実現していることが解る。したがって、第2刊行物のガス発生器は第1刊行物の目的(小型・軽量のエアバッグ装置の実現)に逆行するものであるため、第2刊行物を第1刊行物に適用することはできない。

(7)第3刊行物に記載された発明は、A/Atを制御することによって、周囲の温度の変化の影響を受けないようにする技術思想を何ら開示も、示唆もしていない。よって「A/Atを調整するにあたり、周囲の温度の変化の影響を受けないように考慮することにも格別の困難性はない。」という判断は誤りである。

(8)甲22に添付された公正証書の謄本の写しに記載されているA/At=409は、単純に、ガス発生剤の全表面積(A)をガス排出口の総面積(At)で割ったに過ぎず、何の意味もない値である。したがって、「A/Atが300より大きく1300以下という範囲の値自体、格別な値とはいえない。」との判断は誤りである。

(9)以上より、「本件特許発明1は、第1刊行物、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。」と無効理由通知が判断しているのは誤りである。
また、本件特許発明2及び本件特許発明3?11は、第1刊行物、第2刊行物及び第3刊行物をもって、容易に発明できたものであるとする無効理由通知の判断は誤りである。

<証拠方法>
乙第1号証:甲第1号証(特開平10-29493号公報)の優先権主張の基礎出願である特願平8-85389号の明細書
乙第2号証:WO96/23748号公報
乙第3号証:知的財産高等裁判所 第2部 平成18年6月28日判決(平成17年(行ケ)10702号)
乙第4号証:遠藤宏二他「ロケット工学」日刊工業新聞社(昭和35年)の227?238ページ
乙第5号証:特開昭49-44434号公報
乙第6号証:WO2005/014345号公報
乙第7号証:JIS Z 8401-1999

また、被請求人は、他の証拠として、平成20年8月4日付け意見書において、以下の乙第8号証を提出している。

乙第8号証:実験報告書「クーラント・フィルタの圧力損失値に関する検討」

さらに、被請求人は、参考資料として、平成20年4月21日付け口頭審理陳述要領書において、以下の参考資料1?参考資料7を提出している。

参考資料1:特開平4-2541号公報
参考資料2:特開平4-2542号公報
参考資料3:富士電機機器制御株式会社のエアフィルタカタログ
参考資料4:東洋フィルター工業株式会社のエアフィルタカタログ
参考資料5:亀井三郎編著「化学機械の理論と計算(昭和34年4月初版)」産業図書の32?35頁
参考資料6:化学工業協会編「化学工学便覧(改訂五版)」丸善の770?771頁
参考資料7:別紙(訂正明細書の記載)

また、被請求人は、参考資料として、平成20年6月9日付け上申書において、以下の参考資料1?参考資料9を提出し、同年6月16日付け上申書において、以下の参考資料10?参考資料13を提出し、同年8月4日付け意見書において、以下の参考資料14?参考資料26を提出している。

参考資料1:特開平7-285412号公報
参考資料2:特公平3-67723号公報
参考資料3:フィルター写真
参考資料4:関西金網株式会社の徳保氏による陳述書(写)
参考資料5:中央発條株式会社の市川氏による陳述書(写)
参考資料6:特開平5-124482号公報
参考資料7:特開平7-237519号公報
参考資料8:CHEMICAL ENGINEERING November 1993
参考資料9:佐藤計量器製作所製のハンディタイプ電子風速計のカタログ
参考資料10:米国特許3,856,181号公報
参考資料11:参考図
参考資料12:米国特許6,168,199号公報
参考資料13:米国特許4,547,342号公報
参考資料14:昭和62年(行ケ)155号
参考資料15:平成8年(行ケ)91号
参考資料16:参考図A
参考資料17:訂正2003-39165の審決
参考資料18:平成10年(行ケ)第401号
参考資料19:平成7年(行ケ)第280号
参考資料20:特開平4-146842号公報
参考資料21:“PERRY‘S CHEMICAL ENGINEERS’ HADBOOK SIXTH EDITION”の5-39?40
参考資料22:特開平9-39712号公報
参考資料23:Peter Materna,“Advances in Analitical Modeling of AirbagsInflator”、SAE920120 TECHNICL PAPER SERIES誌、9?10頁“FILTRATION”
参考資料24:実開昭48-49738号公報
参考資料25:参考図B
参考資料26:米国特許第3,836,167号公報

7.当審の判断
はじめに、特許法第36条に関する無効理由2?4について、検討する。
7-1.無効理由2について
本件特許発明1?11のA/Atを規制することに関し、発明の詳細な説明の段落【0025】には、非アジド系ガス発生剤を所望の時間で燃焼させるために、A/Atの値を300より大きく1300以下、好ましくは450?1300、更に好ましくは450?1000とする点が記載されており、また、段落【0026】には、A/Atの値が最大値を超えると、ガス発生剤の燃焼速度が大き過ぎる結果となり、最小値に満たない場合は、燃焼速度が小さ過ぎ、いずれの場合も所望の燃焼時間の範囲外となる旨、記載されている。すると、A/Atを規制する意義や、数値の上限と下限の意義は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
ここで、発明の詳細な説明中の具体例について、段落【0058】、【0090】に、A/At=502の例が記載され、段落【0081】に、A/At=679の例が記載されているのみであるが、A/Atの値を連続的に変化させれば、非アジド系ガス発生剤の燃焼時間も連続的に変化することは、明らかであって、A/Atの値が300より大きく1300以下、好ましくは450?1300、更に好ましくは450?1000の範囲であるときの燃焼時間は、当業者であれば、おおよそ予測可能であるから、これら数値範囲全部についての具体例を必ずしも必要とするわけではない。
また、本件特許発明1?11のA/Atの値と、甲第1号証に記載された発明のA/Atの値とは異なっているが、本件特許発明1?11は、「圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)O」のフィルタ手段を備えたものにおいて、A/Atの値を「300より大きく1300以下」、「450?1300」又は「450?1000」とするものであって、一方、甲第1号証に記載された発明のフィルタ手段の圧力損失は、必ずしも本件特許発明1?11の前記値と一致するとはいえないから、甲第1号証に記載された発明のA/Atの値と異なっていることを根拠に、本件特許発明1?11のA/Atの値の合理性を否定することはできない。
以上により、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に違反しているとまではいえない。

7-2.無効理由3について
前記「7-1.無効理由2について」で検討したように、A/Atの値が300より大きく1300以下、好ましくは450?1300、更に好ましくは450?1000の範囲であるときの燃焼時間は、当業者であれば、おおよそ予測可能であり、また、甲第1号証に記載された発明のA/Atの値と異なっていることを根拠に、本件特許発明1?11のA/Atの値の合理性を否定することはできないから、本件特許発明1?11が、明らかに実施不能のものを包含しているとはいえない。
以上により、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定された要件に違反しているとまではいえない。

7-3.無効理由4について
本件特許発明1?11において、ガス発生剤の各成分の総和が100重量%を超えないことを前提としていることは明らかであって、この前提にたてば、被請求人の主張する「丸め」による影響についても、一応の合理性はある。
以上により、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件に違反しているとまではいえない。


続いて、特許法第29条2項に関する無効理由について、検討する。ここで、請求人が主張する無効理由1を検討する前に、無効理由1で引用されている公知文献である甲第1号証を含む、当審で通知した無効理由5について検討することとする。
7-4.無効理由5について
7-4-1.優先権主張について
本件特許発明1の「フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであ」るという点は、優先権の主張の基礎とされた特願平9-119548号(以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、本件特許発明1についての特許法第29条の規定の適用については、先の出願の時にされたものとみなすことはできず、現実の出願日の平成10年4月16日を出願日とする。
本件特許発明2?11についても、前記「フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであ」るという点を発明特定事項の一部としており、同様に、特許法第29条の規定の適用については、先の出願の時にされたものとみなすことはできず、現実の出願日の平成10年4月16日を出願日とする。

7-4-2.本件特許発明1について
(1)引用刊行物
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開平10-29493号公報(請求人提出の甲第1号証、以下「第1刊行物」という。)には、図1?図43とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項53】複数個のガス排出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に配設される点火手段と、
前記ハウジング内に配設され前記点火手段により点火されて燃焼ガスを発生する固形ガス発生剤と、
前記固形ガス発生剤を収容し前記燃焼ガスの冷却及び燃焼残渣の捕集を果たすクーラント/フィルタ手段とを含み、
前記各固形ガス発生剤の表面積の総和をA、前記各ガス排出口の開口面積の総和をAtとするとき、AとAtとの比の値 A/Atが、(a)運転席用エアバッグにおいては、A/At =100?300、(b)助手席用エアバッグにおいては、A/At =80?240、(c)側突用エアバッグにおいては、A/At =250?3600であるエアバッグ用ガス発生器。」

(イ)「【請求項55】前記固形ガス発生剤は、70Kg/cm^(2)の圧力下において、5?15mm/secの線燃焼速度を有する請求項53記載のエアバッグ用ガス発生器。」

(ウ)「【請求項57】前記固形ガス発生剤の充填量が20?50gである請求項53記載のエアバッグ用ガス発生器。」

(エ)「【請求項63】請求項53記載のガス発生器と、
衝撃を感知しその感知信号を出力する衝撃センサと、
前記感知信号を入力し前記ガス発生器の点火手段に作動信号を出力するコントロールユニットと、
前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、及び前記エアバッグを収容するモジュールケースからなるエアバッグ装置。」

(オ)「【0005】アジド化合物をベースとするガス発生材料(例えばNaN_(3)/CuO)は70kg/cm^(2)の圧力下で約45?50mm/秒という比較的高い線燃焼速度を有する。アジド化合物ベースのガス発生材料は、この比較的高い線燃焼速度のため、優れた形状保持性能をもつ比較的大きなペレット又は円板形状片の形でさえ、例えば運転者席用エアバッグガス発生器において使用されるとき、40?60ミリ秒の完全燃焼時間という要求特性を満足させ得る。
【0006】非アジドガス発生材料は、環境に対する影響及び乗員の安全という点で優秀であることで発展してきた。しかしながら、かかる材料は一般に30mm/秒より小さい線燃焼速度を有する。もし線燃焼速度が約20mm/秒であり、ガス発生材料が直径2mmのペレット又は2mm厚みの円板の形で製造されると仮定すれば、燃焼速度は約100mm/秒であり、これは40?60ミリ秒という望ましい燃焼時間を満足させ得ない。望ましい燃焼時間を得るための線燃焼速度が約20mm/秒であるとき、材料のペレットの直径又は円板の厚さは約1mmであることを要する。線燃焼速度が10mm/秒より小さいときは、ガス発生材料の円板は0.5mm又は以下の厚さをもつことを要する。それ故、工業的に安定で長時間の自動車の振動に耐える様なペレット又は円板の形状でガス発生材料を製造することは実際上不可能である。それ故望ましい要求性能に合致するエアバッグ用ガス発生器を提供することは困難であった。」

(カ)「【0012】従来のクーラントは、その空隙構造が単純であるために、微細な燃焼残渣を効果的に捕集することに関し、なお問題がある。そのために、クーラントと別個にフィルタを必要とする。また、従来のクーラントは、圧力損失が小さい(ガスの透過性が良い)ために、クーラントにより圧力室、例えば燃焼室を画成することが困難である。そのために、クーラントと別個に燃焼室画成部材、例えば上記コンバスタカップ、コンバッションリングなどを必要とする。
【0013】従って、従来のクーラントを備えるガス発生器においては、部品点数が増加し、またガス発生器の径が拡大し、そのためにガス発生器の大型化、重量化を招く結果となっている。
【0014】更に、従来のクーラントは、かさ密度(成形体などの質量をそのかさ体積で割った値)が小さいために、クーラントにより圧力室を画成することが困難であると共に、クーラントの保形強度が小さく、そのためにガス圧を受けたときに変形し易く、クーラントの変形は燃焼残渣の捕集に悪影響を与える。
【0015】本発明の目的は、改良された比較的簡単なエアバッグ用ガス発生器構造を提供することである。
【0016】本発明の他の目的は、ガス発生剤を含むガス発生器中での燃焼室の外周境界を区画したクーラント/フィルタを使用した改良されたエアバッグ用ガス発生器構造を提供することである。」

(キ)「【0025】本ガス発生器に備わるクーラント/フィルタは、中央筒部材を取り囲んで配設され、ハウジングと共に、ガス発生手段用燃焼室を画成する。本クーラント/フィルタは、所定の圧力損失を有し、これにより燃焼室内で発生する燃焼ガスの圧力をガス発生手段の正常な燃焼にとって望ましい値に維持することができる。本ガス発生器によれば、従来クーラント/フィルタと別個に備わっていた燃焼室隔壁部材、例えばコンバッションリング、コンバスタカップなどを廃止することができる。また、本クーラント/フィルタは、所定の比較的大きな圧力損失を有することにより、燃焼ガスの燃焼残渣を良く捕集することができる。そのために、従来クーラント/フィルタと別個に備わっていたフィルタを廃止することができる。」

(ク)「【0035】クーラント/フィルターは、平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して成形したものからなることが好ましい。このようにして成形されたクーラント/フィルターは、空隙構造が複雑となり、優れた捕集効果を有する。その様にして、冷却機能と捕集機能を兼ね備えた一体型のクーラント/フィルターが実現できる。好ましい態様に於てかかるクーラント/フィルターは常温及び流量100l/min/cm^(2)の条件下で、0.3×10^(-2)?1.5×10^(-2)kg/cm^(2)の圧力損失を有する。」

(ケ)「【0042】クーラント/フィルタは所定の線径と所定の嵩密度を有し、燃焼室で発生した燃焼ガスの圧力がガス発生剤の正常な燃焼のための正しい値を保つようにする。線径と嵩密度の正しい設定は燃焼ガスの燃焼残渣も捕らえることができ、クーラント/フィルタの保形強度を十分に増すことができる。このように、クーラント/フィルタが燃焼圧力で変形するのを防ぎ、燃焼汚れ残渣を捕らえる正常な機能を確保し、クーラント/フィルタは厚みを減少することができる。このかさ密度は好ましくは3.5?4.5g/cm^(3)で、しかし線径0.3?0.6mmのとき3.0?5.0g/cm^(3)であり得る。」

(コ)「【0048】次に非アジドガス発生剤に適したハウジングのパラメーターを説明する。
【0049】多くの非アジドガス発生剤の比較的遅い燃焼速度(30mm/秒未満)に適応するように、また運転者用、乗員用、側面衝突用に適切な時間でガス発生剤が完全に燃焼することを確実にするように、A/At比を調節する。Aはガス発生剤の全表面積であり、Atはガス発生器のディフューザシェル中のガス排出孔の総面積である。」

(サ)「【0100】図16は、本発明のエアバッグ用ガス発生器の他の例の断面図である。本ガス発生器は、ディフューザシェル401とクロージャシェル402からなるハウジング403と、このハウジング403内の収容空間に配設される点火手段、すなわち点火器404及び伝火薬405と、これらにより点火されて燃焼ガスを発生するガス発生手段、すなわち固形ガス発生剤406と、ハウジング403と共にガス発生剤406を収容する燃焼室428を画成するフィルタ手段、すなわちクーラント/フィルタ407と、そしてこのクーラント/フィルタ407と前記ハウジング403の内周壁408間に形成される間隙409とを含んでいる。
【0101】ディフューザシェル401は、ステンレス鋼板をプレスにより成形してなり、・・・。周壁部410に本実施例では3mm径のガス排出口411が周方向に18個等間隔に配設されている。・・・
【0102】クロージャシェル402は、ステンレス鋼板をプレスにより成形してなり、円形部430と、この円形部430の中央部に形成される中央孔415及びこの円形部430の外周部に形成される周壁部447と、この周壁部447の先端部に半径方向外側に延在するフランジ部420を有している。中央孔415は、その孔縁部に軸方向曲折部414を有している。この中央孔415に嵌合して中央筒部材416が配置され、この中央筒部材416の一端側端面417は曲折部414の端面418と面一になっている。
【0103】ディフューザシェル401とクロージャシェル402は、それぞれフランジ部419、420を有し、これらフランジ部419及び420が重ね合わされてレーザ溶接421がされ、両者は接合されてハウジング403を形成している。
【0104】・・・
【0105】中央筒部材416は両端が開放したステンレス鋼管よりなり、その他端側は電子ビーム溶接422によりディフューザシェルの突出円形部413に固定されている。この中央筒部材416の内側に点火手段収容室423が形成され、この点火手段収容室423内に、センサ(図示せず)からの信号により作動する点火器404と、この点火器404により着火される伝火薬405を充填した伝火薬容器453が配設されている。・・・
【0106】・・・
【0107】クーラント/フィルタ407は、ガス発生剤406を取り囲んで配設され、中央筒部材416の周囲に環状の室、すなわち燃焼室428を画成している。このクーラント/フィルタ407は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮してなる。このクーラント/フィルタ407は、各層においてループ状の編目が押し潰されたような形をしており、それが半径方向に層をなしている。従って、クーラント/フィルタの空隙構造が複雑となり、このクーラント/フィルタは優れた捕集効果を有する。・・・。このクーラント/フィルタ407により、燃焼室428が画成されると共に、燃焼室で発生した燃焼ガスが冷却され、そして燃焼残渣が捕集される。・・・
【0108】・・・
【0109】更に図16について説明すると、クロージャシェルの円形部430を取り囲んで周方向に傾斜部431が形成され、この傾斜部431は、クーラント/フィルタ407の移動を阻止する移動阻止手段として機能すると共に、ハウジングの外周壁408とクーラント/フィルタ407間に間隙409を形成する手段としても機能している。
【0110】・・・。ガス発生剤406は中空円柱体をなしており、この形状の故に、燃焼は外面及び内面で起こり、燃焼の進行につれてガス発生剤全体の表面積はあまり変わらないという利点を有している。・・・
【0111】ハウジングの外周壁408と、クーラント/フィルタの外層429間に間隙409が形成されている。この間隙409によりクーラント/フィルタ407の周囲に半径方向断面が環状のガス通路が形成される。・・・。クーラント/フィルタ周囲のガス通路の存在により、燃焼ガスはガス通路に向かって進み燃焼ガスはクーラント/フィルタの全領域を通過し、これによりクーラント/フィルタの有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。冷却・浄化された燃焼ガスは、上記ガス通路409を通ってディフューザシェルのガス排出口411に至る。
【0112】・・・
【0113】このように構成された本ガス発生器において、衝撃をセンサ(図示せず)が感知すると、その信号が点火器404に送られて点火器404が作動し、これによって伝火薬容器453内の伝火薬405が着火して高温の火炎を生成する。この火炎は貫通孔454より噴出し、貫通孔454付近のガス発生剤406に点火すると共に、防炎板部434により進路が曲げられて燃焼室下部のガス発生剤に点火する。これによりガス発生剤が燃焼して高温・高圧のガスを生成し、この燃焼ガスは、クーラント/フィルタ407の全領域を通過し、その間に効果的に冷却されまた燃焼残渣が捕集され、冷却・浄化された燃焼ガスは、ガス通路(間隙409)を通り、アルミニウムテープ452の壁を破ってガス排出口411より噴出し、エアバッグ(図示せず)内に流入する。これによりエアバッグが膨張し、乗員と堅い構造物の間にクッションを形成して衝撃から乗員を保護する。
【0114】図16のガス発生器を組立てる時は、ディフューザーシェル401を中央筒部材416とその突出円形部413を底にして接合し、プレート部材432を中央筒部材416上に嵌合し、クーラント/フィルター407をプレート部材432の周壁の外側上に配設してクーラント/フィルター407を位置決めし、クーラント/フィルターの内側に固体ガス発生剤406を充填し、ガス発生剤406上にプレート部材433を配設する。次でクロージャシェルの中央孔415が中央筒部材416上に、クロージャシェルのフランジ部420及びディフューザシェルのフランジ部419が重なる様におかれる。重ねられたフランジ部は421及び444に於てレーザ溶接され、ディフューザシェル401及びクロージャシェル402を一緒に溶接し、又クロージャシェル402及び中央筒部材416を一緒に溶接する。最後の工程として、伝火薬容器453及び点火器404が中央筒部材416中に挿入され、次で点火器保持部材412がかしめられて、それらを固定する。」

(シ)「【0136】図16及び図17のガス発生器において、例えば固形ガス発生剤406の表面積の総和をA、ディフューザシェルの各ガス排出口411の開口面積の総表面積をAtとするとき、AとAtとの比の値A/Atが、ガス発生剤20?50gについてA/At=100?300とされている。この表面積の比の設定により、ガス発生剤の燃焼速度が運転席用エアバッグに適した速度に調整され、本ガス発生器に備わるガス発生剤が所望の時間内で完全燃焼することを保証する。」

(ス)「【0179】本ガス発生器に使用する非アジド系ガス発生剤としては、従来提案されている種々のものを使用し得る。例えば、テトラゾール、トリアゾール、又はこれらの金属塩等の含窒素有機化合物とアルカリ金属硝酸塩等の酸素含有酸化剤を主成分とするもの、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド、ニトログアニジン等を燃料及び窒素源とし、酸化剤としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩などを使用したものなどが知られており、何れも本発明においてガス発生剤として使用し得る。しかしこれらに限定されるものではなく、燃焼速度、非毒性及び燃焼温度の要求に応じて適当に選定される。ガス発生剤は、ペレット状、ウエハー状、中空円柱状、多孔体、又はディスク状等の適当な形状に於いて使用される。」

(セ)「【0182】非アジド系ガス発生剤は、70Kg/cm^(2)の圧力下において、5?30mm/secの線燃焼速度を持ち、このガス発生剤を用いて自動車用エアバッグのガス発生器を構成するとき、運転席用エアバッグでは40?60msec、助手席用エアバッグでは50?80msec、側突用エアバッグでは5?15msecでガス発生剤を全て燃焼させる必要がある。そこで、ガス発生剤の燃焼を調整するために、各ガス発生剤の表面積の総和をA、ディフューザシェルの各ガス排出口の開口面積の総和をAtとするとき、AとAtとの比の値A/At について適当な設定がなされる。すなわち、この比A/At は次の様に設定される:
運転席用エアバッグにおいては、20?50gのガス発生剤で、A/At=100?300、
助手席用エアバッグにおいては、40?120gのガス発生剤で、A/At=80?240、
側突用エアバッグにおいては、10?25gのガス発生剤で、A/At=250?3600
A/Atの比が各エアバッグの最大値を超える時、エアバッグ用ガス発生器内の圧力は過大となり、ガス発生材料の燃焼速度が余りに大きくなる結果となる。該比が最小値より小さくなると、エアバッグ用ガス発生器内の圧力が十分上昇せず、燃焼速度が余りに小さくなるという結果となる。何れの場合も、燃焼時間は望ましい範囲外となり、かかる燃焼時間をもつエアバッグ用ガス発生器は使用し得ない。」

(ソ)「【0209】従って、本発明の実施に当って用いられる好ましいガス発生剤組成物は、
(a)約25?60重量%、好ましくは30?40重量%のニトログアニジン
(b)約40?65重量%、好ましくは45?65重量%の酸化剤
(c)約1?20重量%、好ましくは3?7重量%のスラグ形成剤
(d)約3?12重量%、好ましくは4?12重量%のバインダー
から成るガス発生剤組成物であり、特に好ましい組成物としては、
(a)約30?40重量%のニトログアニジン
(b)約40?65重量%の硝酸ストロンチウム
(c)約3?7重量%の酸性白土及び
(d)約4?12重量%のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩から成るガス発生剤組成物である。
【0210】
而して、本発明によれば、
(a)約25?60重量%のニトログアニジン
(b)約40?65重量%の酸化剤
(c)約1?20重量%のスラグ形成剤
(d)約3?12重量%のバインダー
から成るエアバッグ用ガス発生剤成型体が提供される。」

そして、図16には、ハウジング403内にクーラント/フィルタ407が配設されている点が図示されている。

したがって、前記第1刊行物記載事項(ア)?(ソ)及び図面の図示内容を総合すると、第1刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ガス排出口411を有するハウジング403内に、衝撃を感知するセンサからの信号により作動する点火器404及び伝火薬405からなる点火手段と、該点火手段により点火されて燃焼ガスを発生する固形ガス発生剤406と、前記燃焼ガスの冷却及び燃焼残渣の捕集を果たすクーラント/フィルタ407とを配設してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記固形ガス発生剤406は、(a)約25?60重量%のニトログアニジン、(b)約40?65重量%の酸化剤、(c)約1?20重量%のスラグ形成剤、(d)約3?12重量%のバインダーから成り、70Kg/cm^(2)の圧力下において、5?15mm/secの線燃焼速度を有し、充填量が、(a)運転席用エアバッグにおいては20?50g、(b)助手席用エアバッグにおいては40?120gであり、
前記クーラント/フィルタ407は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が常温及び流量100l/min/cm^(2)の条件下で、0.3×10^(-2)?1.5×10^(-2)kg/cm^(2)のもので、前記ガス排出口411を有する前記ハウジング403の外周壁408と前記クーラント/フィルタ407間に間隙409が形成され、この間隙409により環状のガス通路が形成され、
前記固形ガス発生剤406の表面積の総和をA、前記各ガス排出口411の開口面積の総和をAtとするとき、AとAtとの比の値A/Atが、(a)運転席用エアバッグにおいては、A/At=100?300、(b)助手席用エアバッグにおいては、A/At=80?240であるエアバッグ用ガス発生器。」

また、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開平7-52748号公報(請求人提出の甲第18号証、以下「第2刊行物」という。)には、図1?図5とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0015】燃焼室14はハウジング1内においてキャップ4と支持板12との間に形成され、キャップ4側にはガス発生剤15が収容され、支持板12側には冷却捕集フィルタ16が収容されている。前記支持板12は冷却捕集フィルタ16を支持し、フィルタ16がガス圧により変形するのを防止するとともに、ガス排出口2との間に圧力調整用空間17を形成している。
【0016】この圧力調整用空間17は冷却捕集フィルタ16の外周部までガスの流通を可能とし、フィルタ16を均一に利用できるようにする。しかも、燃焼ガスの圧力が縮径されたガス排出口2で決定され、燃焼室14と圧力調整用空間17との間では圧力がほぼ同等となり、フィルタ16を通過するガスの流出速度が抑制されて固体残渣がガス圧によりフィルタ16から押し出されることが防止される。」

(イ)「【0025】なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨より逸脱しない範囲で例えば次のように構成を任意に変更して具体化してもよい。・・・(4)この発明のガス発生器を車両に装着される運転席用のエアバッグ装置でステアリングホイールのパッドに設けたり、助手席用のエアバッグ装置に設けたりすること。」

また、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第96/10494号(請求人提出の甲第7号証、以下「第3刊行物」という。)には、第1図?第5図とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「本発明は、車両のエアバッグ用ガス発生器に係り、特に、収納されたガス発生剤の燃焼速度をガス発生器の容器(ハウジング)等の周囲温度に影響されずに適切な所定範囲内に保つことができるガス発生器に関する。」(第1頁第4行?第7行)

(イ)「しかしながら、ガス発生器に要求される作動環境温度は、-40゜Cの低温から+85゜Cの高温迄と非常に巾広い為、ガス発生剤の燃焼速度は当然ながら温度の影響を受ける。+25゜Cで性能調整されたガス発生器は、-40゜Cの低温ではガス発生の燃焼速度が遅すぎて+85゜Cの高温では速すぎることになる。」(第1頁第17行?21行)

(ウ)「本発明は従来の技術の有する上記の様な問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、非アジ化系ガス発生剤のように燃焼速度の周囲温度による影響が大きい場合であっても、危険のない燃焼速度を保ち、極めて安定に燃焼させることが出来るガス発生器を提供することにある。」(第3頁第11行?第15行)

(エ)「すると、非アジ化系ガス発生剤を用いる場合であっても、低温でのバッグ展開の遅れや、高温での圧力増加によるバッグの破れやガス発生器の容器の破裂の恐れが無くなる。」(第5頁第18行?第20行)

(2)対比
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「衝撃を感知するセンサ」、「固形ガス発生剤406」及び「クーラント/フィルタ407」は、それぞれ本件特許発明1の「衝撃センサ」、「ガス発生剤」及び「フィルタ手段」に相当する。すると、引用発明の「ガス排出口411を有するハウジング403内に、衝撃を感知するセンサからの信号により作動する点火器404及び伝火薬405からなる点火手段と、該点火手段により点火されて燃焼ガスを発生する固形ガス発生剤406と、前記燃焼ガスの冷却及び燃焼残渣の捕集を果たすクーラント/フィルタ407とを配設してなる」という点は、本件特許発明1の「ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなる」という点に相当する。
また、引用発明の「前記固形ガス発生剤406は、(a)約25?60重量%のニトログアニジン、(b)約40?65重量%の酸化剤、(c)約1?20重量%のスラグ形成剤、(d)約3?12重量%のバインダーから成り」という点は、本件特許発明1の「前記ガス発生剤は、含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で」という点に相当する。
そして、引用発明の「70Kg/cm^(2)の圧力下において、5?15mm/secの線燃焼速度を有し」という点と、本件特許発明1の「70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secのもので」という点とは、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secであるものを含む点において共通し、引用発明の「充填量が、(a)運転席用エアバッグにおいては20?50g、(b)助手席用エアバッグにおいては40?120gであり」という点と、本件特許発明1の「充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり」という点とは、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?120gであるものを含む点において共通する。
さらに、引用発明の「前記ガス排出口411を有する前記ハウジング403の外周壁408と前記クーラント/フィルタ407間に間隙409が形成され、この間隙409により環状のガス通路が形成され」という点は、本件特許発明1の「前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており」という点に相当し、引用発明の「記固形ガス発生剤406の表面積の総和をA、前記各ガス排出口411の開口面積の総和をAtとするとき、AとAtとの比の値A/Atが、(a)運転席用エアバッグにおいては、A/At=100?300、(b)助手席用エアバッグにおいては、A/At=80?240である」という点と、本件特許発明1の「前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制する」という点とは、各ガス排出口の開口面積の総和Atに対するガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を規制する点において共通する。

そうすると、本件特許発明1と引用発明とは、次の点で一致する。
「ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secであるものを含み、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?120gであるものを含み、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を規制するエアバッグ用ガス発生器。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
[相違点1]
ガス発生剤の70kg/cm^(2)の圧力下における線燃焼速度について、本件特許発明1は、「7?15mm/sec」であるのに対し、引用発明は、「5?15mm/sec」である点。

[相違点2]
助手席用のエアバッグ用ガス発生器におけるガス発生剤の充填量について、本件特許発明1は、「50?190g」であるのに対し、引用発明は、「40?120g」である点。

[相違点3]
フィルタ手段の圧力損失について、本件特許発明1は、「20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)O」であるのに対し、引用発明は、「常温及び流量100l/min/cm^(2)の条件下で、0.3×10^(-2)?1.5×10^(-2)kg/cm^(2)」である点。

[相違点4]
A/Atの値について、本件特許発明1は、「300より大きく1300以下」に規制しているのに対し、引用発明は、「(a)運転席用エアバッグにおいては、A/At=100?300、(b)助手席用エアバッグにおいては、A/At=80?240」である点。

[相違点5]
フィルタ手段の圧力損失値と、ガス排出口の圧力損失値の関係について、本件特許発明1は、「フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低い」のに対し、引用発明は、このような関係を有するか不明である点。

(3)判断
[相違点1]について
ガス発生剤の70kg/cm^(2)の圧力下における線燃焼速度について、本件特許発明1と、引用発明とは7?15mm/secのものを含む点において共通している。また、前記第1刊行物記載事項(オ)をみると、線燃焼速度が小さいと、望ましい燃焼時間を得ることが困難である旨の示唆がされており、引用発明の線燃焼速度が5?15mm/secであるガス発生剤のうち、線燃焼速度が7?15mm/secのガス発生剤を用い、本件特許発明1の前記相違点1に係る構成とすることに格別の困難性はない。

[相違点2]について
助手席用のエアバッグ用ガス発生器におけるガス発生剤の充填量について、本件特許発明1と、引用発明とは50?120gであるものを含む点において共通している。また、ガス発生剤の充填量は、エアバッグの容積等に応じて、当業者が最適な値に設計し得るものであり、引用発明において、助手席用のエアバッグ用ガス発生器におけるガス発生剤の充填量を50?190gに設計し、本件特許発明1の前記相違点2に係る構成とすることに格別の困難性はない。

[相違点3]について
引用発明のクーラント/フィルタ407の「常温及び流量100l/min/cm^(2)の条件下で、0.3×10^(-2)?1.5×10^(-2)kg/cm^(2)」という圧力損失は、本件特許発明1の「20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)O」という値と比較して、流量条件が異なるため、その異同や、大小関係を直接的に把握することはできないが、引用発明のクーラント/フィルタ407は、前記第1刊行物記載事項(カ)、(キ)によると、燃焼ガスの圧力を望ましい値に維持することができ、燃焼室隔壁部材を廃止することができ、また、燃焼ガスの燃焼残渣を良く捕集することができるように設計されたものといえる。
一方、第2刊行物には、前記第2刊行物記載事項(ア)によると、「しかも、燃焼ガスの圧力が縮径されたガス排出口2で決定され、燃焼室14と圧力調整用空間17との間では圧力がほぼ同等となり、フィルタ16を通過するガスの流出速度が抑制されて固体残渣がガス圧によりフィルタ16から押し出されることが防止される。」と記載されており、燃焼ガスの圧力がガス排出口2で決定されること、燃焼室14と圧力調整用空間17との圧力がほぼ同等であること、及びフィルタ16を通過するガスの流出速度が抑制されることを併せ考慮すると、燃焼ガスの圧力は、フィルタ16を通過する際、ほぼ変化せずに、ガス排出口2によって決定されるものといえ、フィルタ16は燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないものといえる。そうすると、第2刊行物には、燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないフィルタ16を用いることにより、フィルタ16を通過するガスの流出速度を抑制し、固体残渣が押し出されることを防止するという技術思想が開示されているといえる。また、第2刊行物に記載されたフィルタ16は、図1をみると、燃焼室14を画成する機能を有しているといえる。
そして、引用発明のクーラント/フィルタ407と、第2刊行物に記載されたフィルタ16とは、ともにエアバッグ用ガス発生器に用いられ、燃焼室を画成するフィルタである点で共通しており、また、両者は燃焼残渣を良く捕集するためのものである点において共通しているから、引用発明のクーラント/フィルタ407に、固体残渣が押し出されることを防止するべく、第2刊行物に開示された前記技術思想を適用し、燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないものとすることは当業者にとって容易である。
一方、前記第1刊行物記載事項(カ)には、クーラントの圧力損失が小さいとクーラントにより燃焼室を画成することが困難になる点が示唆されているから、引用発明のクーラント/フィルタ407の圧力損失を設計するにあたり、燃焼室隔壁部材を廃止することができる程度に圧力損失を大きな値にすることも当業者であれば、当然、考慮すべき事項といえる。
そうすると、引用発明のクーラント/フィルタ407に第2刊行物に開示された前記技術思想を適用する際、燃焼室隔壁部材を廃止することができる程度に圧力損失を大きくすることも考慮の上、圧力損失値の最適化を図り、20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oの範囲内に設計することに格別の困難性はない。

ここで、引用発明のクーラント/フィルタ407の圧力損失値と、かさ密度とは、相関のあるパラメータではあるが、被請求人も、平成20年6月9日付け上申書(特に、第3頁第16行?第17行)において認めるように、かさ密度を同一にしたまま圧力損失値を変えることもできるのであるから、かさ密度を前記第1刊行物記載事項(ケ)に開示された、クーラント/フィルタが燃焼圧力で変形するのを防ぎ、燃焼汚れ残渣を捕らえる正常な機能を確保し、厚みを減少させるための値である3.0?5.0g/cm^(3) に維持しつつ、前記のように圧力損失値を設計することも可能といえ、格別の困難性もない。

また、引用発明のクーラント/フィルタ407は、前記したように、燃焼ガスの圧力を望ましい値に維持することができるように設計されたものである。一方、前記第1刊行物記載事項(セ)等には、A/Atの値を調整することによって、燃焼ガスの圧力を望ましい値に維持できることが記載されている。すると、引用発明は、クーラント/フィルタ407の圧力損失と、A/Atの値とを制御要因として、燃焼ガスの圧力を適正化しているといえるが、これら二つの要因のうち、いずれか一方の要因のみでは、燃焼ガスの圧力を適正化できないという理由はない。
そうすると、引用発明において、クーラント/フィルタ407が、燃焼ガスの圧力を望ましい値に維持することができるように設計されたものだとしても、前記第2刊行物に開示された、燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないフィルタ16を用いることにより、フィルタ16を通過するガスの流出速度を抑制し、固体残渣が押し出されることを防止するという技術思想を適用できないとする理由はない。

したがって、引用発明のクーラント/フィルタ407の圧力損失を、第2刊行物に記載された発明に基づき、設計し、本件特許発明1の前記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点4]について
引用発明は、前記第1刊行物記載事項(セ)をみると、ガス発生剤を運転席用エアバッグでは40?60msec、助手席用エアバッグでは50?80msecで全て燃焼させるために、ガス発生器内の圧力が最適な値になるようにA/Atの値を調整しているといえる。
そして、このA/Atの最適値は、ガス発生剤の燃焼速度や、ガス発生器内の圧力に影響を与える種々の要素が変化すれば、異なるものになることは明らかといえるところ、引用発明のクーラント/フィルタ407の圧力損失は、ガス発生器内の圧力に影響を与えるものである。したがって、このクーラント/フィルタ407の圧力損失を前記[相違点3」についてで検討したように設計すれば、A/Atの値の最適化が再度、必要になることは明らかである。
また、第3刊行物には、前記第3刊行物記載事項(ア)?(エ)によれば、ガス発生剤の燃焼速度に、周囲温度の変化が影響を与える点が記載されており、引用発明において、A/Atを調整するにあたり、周囲温度の変化の影響を受けないように考慮することにも格別の困難性はない。
そうすると、引用発明のA/Atの値について、前記[相違点3]についてで検討したクーラント/フィルタ407の圧力損失や、周囲温度の変化等、ガス発生剤の燃焼速度や、ガス発生器内の圧力に影響を与える種々の要素を考慮の上、最適化することは当業者にとって容易であって、300より大きく1300以下という範囲の値に設計すること自体、格別の困難性はない。
なお、甲22号証に添付された公正証書の謄本の写しを参酌すると、A/Atの値が409程度のガス発生器も本件特許の出願前より公知であったといえ、300より大きく1300以下の範囲という値自体、この技術分野において、格別な値であるとはいえない。

[相違点5]について
前記[相違点3]についてで検討したように、引用発明に記載されたクーラント/フィルタ407に、第2刊行物に開示された前記技術思想を適用し、その圧力損失を燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないものとし、前記[相違点4]についてで検討したように、引用発明のA/Atの値について、このクーラント/フィルタ407の圧力損失等を考慮の上、最適化すれば、引用発明の燃焼室428の圧力は、クーラント/フィルタ407にほぼ影響を受けることなく、ハウジング403に形成されたガス排出口411により制御されることになる。
このとき、クーラント/フィルタ407の圧力損失値は、ハウジング403に形成されたガス排出口411の圧力損失値よりも低いことは明らかであって、本件特許発明1の前記相違点5に係る構成とすることに格別の困難性はない。

また、本件特許発明1を全体としてみても、作用効果については、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、被請求人は、平成20年8月4日付け意見書において、第1刊行物は、本件特許発明1の3つの主要な発明特定事項である「10?2000mmH_(2)Oのフィルタ手段」、「ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値より低い圧力損失値のフィルタ手段」、及び「A/Atを300より大きく1300以下に規制する」構成の利用を否定するものであるから、本件特許発明1の進歩性の判断に当たり、第1刊行物を対比判断の資料に使用し得ない旨、主張しているが、前記[相違点3]についてで検討したように、引用発明において、クーラント/フィルタ407の圧力損失と、A/Atの値のうち、いずれか一方の要因のみでは、燃焼ガスの圧力を適正化できないという理由はなく、つまり、A/Atの値のみにより、燃焼ガスの圧力を適正化することも可能と認められるから、本件特許発明1の「10?2000mmH_(2)Oのフィルタ手段」、「ハウジングに形成されたガス排出口の圧力損失値より低い圧力損失値のフィルタ手段」という発明特定事項の採用を否定するものではない。さらに、前記[相違点4]についてで検討したように、クーラント/フィルタ407の圧力損失を前記[相違点3」についてで検討したように設計すれば、A/Atの値の最適化が再度、必要になることは明らかであるから、第1刊行物にA/Atの値が、100?300と記載されているとしても、クーラント/フィルタ407の圧力損失を異なる値に設計するに伴い、「A/Atを300より大きく1300以下に規制する」ことを否定するものではない。

同じく、被請求人は、第2刊行物の冷却捕集フィルタ16を第1刊行物の所定の圧力損失を有するクーラント/フィルタ407に適用した場合、コンバッションリング、コンバスタカップなどを廃止してガス発生器の小型・軽量化、及び部品点数の減少を図るという第1刊行物の発明の目的に反することになるから、これを当業者が容易に想到することができたものと認めることができない旨、主張しているが、第2刊行物のフィルタ16は、燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないものでありながら、燃焼室14を画成しているものであり、引用発明のクーラント/フィルタ407に、第2刊行物の前記技術思想を適用しても、クーラント/フィルタ407によって、燃焼室428を画成することは可能といえ、コンバッションリング、コンバスタカップなどを廃止してガス発生器の小型・軽量化、及び部品点数の減少を図るという引用発明の目的に反することにはならない。

同じく、被請求人は、本件特許発明1のガス発生器はガス発生器としての完成品であるのに対し、第2刊行物のガス発生器はガス発生器の部品(燃焼室)であり、また、本件特許発明1のガス発生器はトロイダル形式に属し、第2刊行物のガス発生器はボンベ形式に属することから、形状及び構造においてタイプが異なる旨、主張しているが、第2刊行物に記載された発明のガス発生器自体の構造が、本件特許発明1の構造と異なるとしても、本件特許発明1と同様の構造を有する引用発明に、第2刊行物に開示された前記技術思想を適用できることは前記[相違点3]についてで検討したとおりである。
なお、前記第2刊行物記載事項(イ)には、第2刊行物に記載された発明のガス発生器をステアリングホイールのパッドに設けることが示唆されており、引用発明に、第2刊行物に開示された前記技術思想を適用できることを裏付けている。

同じく、被請求人は、第2刊行物は冷却捕集フィルタ16の圧力損失を一切記載していないし、また、その示唆も行っていない。第2刊行物の段落【0016】を、「燃焼ガスの圧力に影響を与えず、燃焼室14と圧力調整用空間17との圧力をほぼ同等とするフィルタ手段16を用いることにより、固体残渣が押し出されることを防止するという技術思想が開示されている。」と認定しているのは誤りである。仮に第1刊行物のクーラント/フィルタ407に第2刊行物の技術思想を適用しても、第2刊行物は燃焼ガスが冷えすぎにならないフィルタ16しか開示していないのだから、「その圧力損失を燃焼ガスの圧力に影響を与えず、燃焼室428と間隙409との圧力がほぼ同等となるような値とする」構成を得ることもできない旨、主張しているが、前記[相違点3]についてで検討したとおり、第2刊行物には、燃焼ガスの圧力にほぼ影響を与えないフィルタ16を用いることにより、フィルタ16を通過するガスの流出速度を抑制し、固体残渣が押し出されることを防止するという技術思想が開示されている。

同じく、被請求人は、第1刊行物の燃焼残渣を捕捉する技術思想によれば、第1刊行物のクーラント/フィルタ407において、固体残渣が押し出されることはないので、固体残渣が押し出されることを防止するという課題は内在していない。よって、無効理由通知が、「第1刊行物に記載されたクーラント/フィルタ407もフィルタである以上、固体残渣が押し出されることを防止するという課題が内在していることは明らかである」と認定しているのは誤りである。これを動機付けとして、第1刊行物に第2刊行物を適用することは誤りである。また、固形物が押し出されるのを防止する技術思想が、第1刊行物と第2刊行物の間で相違するので、技術思想の異なる第2刊行物の段落【0016】に記載されている「固体残渣の押し出されない技術思想」に基づくフィルタ16を、第1刊行物のクーラント/フィルタ407に適用すると、技術的な前提条件が破綻してしまうという阻害要因が存在する旨、主張している。
しかしながら、引用発明において、ガス発生剤にスラグ形成剤を含有させて燃焼残渣を固体状に変えて燃焼室内に止めているとしても、全ての固体残渣が燃焼室内に止められるとは認められず、引用発明も固体残渣がクーラント/フィルタ407から押し出されることを防止するという課題を内在していることは明らかである。
また、引用発明のクーラント/フィルタ407と、第2刊行物に記載されたフィルタ16との間で、燃焼残渣を捕捉する技術思想や、捕捉のメカニズムが異なるとしても、前記[相違点3]についてで検討したように、少なくとも、両者は燃焼残渣を良く捕集するためのものである点において共通しているのであるから、引用発明のクーラント/フィルタ407の燃焼残渣を捕捉する技術思想、捕捉のメカニズムに代えて、第2刊行物に記載されたフィルタ16の技術思想、メカニズムの適用を試みることは、当業者にとって容易である。

同じく、被請求人は、第1刊行物のガス発生器の方が第2刊行物のガス発生器に比較して小型・軽量のエアバッグ装置を実現していることが解る。したがって、第2刊行物のガス発生器は第1刊行物の目的(小型・軽量のエアバッグ装置の実現)に逆行するものであるため、第2刊行物を第1刊行物に適用することはできない旨、主張しているが、前記[相違点3]についてで検討した事項は、引用発明に、第2刊行物に記載されたガス発生器の構造自体を適用するのではなく、第2刊行物に開示された前記技術思想を適用するものであるから、第1刊行物の目的(小型・軽量のエアバッグ装置の実現)に逆行することにはならない。

同じく、被請求人は、第3刊行物に記載された発明は、A/Atを制御することによって、周囲の温度の変化の影響を受けないようにする技術思想を何ら開示も、示唆もしていない。よって「A/Atを調整するにあたり、周囲の温度の変化の影響を受けないように考慮することにも格別の困難性はない。」という判断は誤りである旨、主張しているが、前記[相違点4]についてで検討したように、引用発明は、ガス発生剤の燃焼時間を所望の値にするために、ガス発生器内の圧力が最適な値になるようにA/Atの値を調整するものであるところ、第3刊行物には、ガス発生剤の燃焼速度(燃焼時間)に、周囲温度の変化が影響を与える点が記載されており、この点を参酌すれば、引用発明において、ガス発生剤の燃焼時間が所望の値になるように、A/Atの値を調整するにあたり、周囲温度の変化の影響を受けないように考慮することに格別の困難性はないといえる。したがって、第3刊行物に記載された発明が、A/Atを制御することによって、周囲の温度の変化の影響を受けないようにする技術思想を何ら開示していないとしても、本件特許発明1の進歩性の判断に影響を与えるものではない。

同じく、被請求人は、甲22に添付された公正証書の謄本の写しに記載されているA/At=409は、単純に、ガス発生剤の全表面積(A)をガス排出口の総面積(At)で割ったに過ぎず、何の意味もない値である。したがって、「A/Atが300より大きく1300以下という範囲の値自体、格別な値とはいえない。」との判断は誤りである旨、主張しているが、甲第22号証に添付された公正証書の謄本の写しは、このガス発生器内の燃焼圧力や、ガス発生剤の燃焼時間がどのような値をとるかはともかく、ガス排出口の総面積(At)と、ガス発生器に含まれるガス発生剤の全表面積(A)の比(A/At)に関し、409のものが本件特許の出願日前より公知であったことを証明するものであって、少なくとも、300より大きく1300以下の範囲という値自体、この技術分野において、格別な値ではないことを裏付けるものである。

よって、前記被請求人の主張は採用できない。

そうすると、本件特許発明1は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-3.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を特定するために必要な事項である「含窒素有機化合物」について、「テトラゾール若しくはその金属塩、トリアゾール若しくはその金属塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド又はニトログアニジンである」と限定し、同じく、本件特許発明1を特定するために必要な事項である「各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)」について、「300より大きく1300以下に規制する」を「450?1300に規制する」とし、数値範囲を限定するものである。

ここで、前記第1刊行物記載事項(ス)には、ガス発生剤の含窒素有機化合物として、テトラゾール若しくはその金属塩、トリアゾール若しくはその金属塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド、ニトログアニジン等を用いることが例示されている。
また、前記「7-4-2.(3)」の[相違点4]についてで検討したように、引用発明のA/Atの最適値は、ガス発生剤の燃焼速度や、ガス発生器内の圧力に影響を与える種々の要素が変化すれば、異なるものになることは明らかであって、クーラント/フィルタ407の圧力損失や、周囲温度の変化等を考慮の上、A/Atの値を最適化することは当業者にとって、容易といえる。そして、450?1300の範囲の値に設計すること自体、格別の困難性はない。
そうすると、本件特許発明2の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明2は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-4.本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1に「前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)が、運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、A/At=450?1000であり、前記ハウジングは、前記各ガス排出口を有するディフューザシェルと、前記点火手段を収容する中央筒部材が配置される中央孔を有するクロージャシェルとを含み、前記ディフューザシェル、前記中央筒部材、及び前記クロージャシェルは別体のものが一体化されている」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、前記「7-4-2.(3)」の[相違点4]についてで検討したように、引用発明のA/Atの最適値は、ガス発生剤の燃焼速度や、ガス発生器内の圧力に影響を与える種々の要素が変化すれば、異なるものになることは明らかであって、クーラント/フィルタ407の圧力損失や、周囲温度の変化等を考慮の上、A/Atの値を最適化することは当業者にとって、容易といえる。そして、運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、450?1000の範囲の値に設計すること自体、格別の困難性はない。
また、前記第1刊行物記載事項(サ)には、ハウジング403が、ガス排出口411を有するディフューザシェル401と、点火手段収容室423が形成された中央筒部材416が配置される中央孔415を有するクロージャシェル402とを含み、ディフューザシェル401とクロージャシェル402がレーザ溶接421されるとともに、中央筒部材416とディフューザシェル401が電子ビーム溶接422される点が記載されている。
そうすると、本件特許発明3の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明3は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-5.本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1?3の何れかに「前記各ガス排出口の開口面積の総和Atは、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、50?200mm^(2)、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、60?500mm^(2)である」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、前記「7-4-2.(3)」の[相違点4]についてで検討したように、引用発明のA/Atを最適化する際、ガス排出口の開口面積の総和Atの値も最適化することは当然であって、運転席用のエアバッグ用ガス発生器において、50?200mm^(2)の範囲の値、助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、60?500mm^(2)の範囲の値とすること自体、格別の困難性はない。
そうすると、本件特許発明4の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明4は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-6.本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明1?4の何れかに「前記各ガス発生剤の表面積の総和Aは、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、4×10^(4)?7×10^(4)mm^(2)、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、6×10^(4)?3×10^(5)mm^(2)である」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、前記「7-4-2.(3)」の[相違点4]についてで検討したように、引用発明のA/Atを最適化する際、各ガス発生剤の表面積の総和Aの値も最適化することは当然であって、運転席用のエアバッグ用ガス発生器において、4×10^(4)?7×10^(4)mm^(2)の範囲の値、助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、6×10^(4)?3×10^(5)mm^(2)の範囲の値とすること自体、格別の困難性はない。
そうすると、本件特許発明5の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明5は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-7.本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明3?5の何れかに「前記ガス排出口は、その内径が2?5mmであり、前記ディフューザシェルはプレス成形によって形成されている」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、前記第1刊行物記載事項(サ)には、ガス排出口411の内径を3mmとする点が記載されている。そして、前記「7-4-2.(3)」の[相違点4]についてで検討したように、引用発明のA/Atを最適化する際、ガス排出口の開口面積の総和Atの値について、ガス排出口411の1個あたりの面積(内径)を変えること、ガス排出口411の個数を変えること、さらにはこれらを組み合わせて変えること等が考えられるが、このうちガス排出口411の内径を3mm程度に維持しつつ、ガス排出口411の個数を変えることを選択することも可能であって、格別の困難性はない。
また、前記第1刊行物記載事項(サ)には、ディフューザシェル401をプレスにより成形する点が記載されている。
そうすると、本件特許発明6の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明6は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-8.本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1?6の何れかに「前記ガス発生剤は、前記含窒素有機化合物が30?40重量%である」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、前記第1刊行物記載事項(ソ)には、ニトログアニジンを、好ましくは30?40重量%の範囲で用いる点が記載されている。
そうすると、本件特許発明7の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明7は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-9.本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明1に「前記含窒素有機化合物がニトログアニジンである」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、引用発明は、ガス発生剤の含窒素有機化合物として、ニトログアニジンを用いるものである。
そうすると、本件特許発明8の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明8は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-10.本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明1又は8に「前記スラグ形成剤が酸性白土である」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、前記第1刊行物記載事項(ソ)には、スラグ形成剤として、酸性白土を用いることが記載されている。
そうすると、本件特許発明9の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明9は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-11.本件特許発明10について
本件特許発明10は、本件特許発明1?9の何れかに「前記ガス発生剤は単孔円筒形状である」という発明特定事項を付加するものである。

ここで、前記第1刊行物記載事項(サ)には、ガス発生剤406を中空円柱体とすることが記載されている。
そうすると、本件特許発明10の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明10は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-12.本件特許発明11について
本件特許発明11は、「エアバッグ用ガス発生器と、衝撃を感知して前記ガス発生器を作動させる衝撃センサと、前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、前記エアバッグを収容するモジュールケースとを含」む、「エアバッグ装置」であって、前記「エアバッグ用ガス発生器」が、本件特許発明1?10の何れかのものであることを発明特定事項とするものである。

ここで、前記第1刊行物記載事項(エ)によると、引用発明の「エアバッグ用ガス発生器」は、エアバッグ用ガス発生器と、衝撃を感知しその感知信号を出力する衝撃センサと、感知信号を入力しガス発生器の点火手段に作動信号を出力するコントロールユニットと、ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、エアバッグを収容するモジュールケースからなるエアバッグ装置に用いられるものといえる。
そうすると、本件特許発明11の前記発明特定事項のように構成することに格別の困難性を見いだすことはできない。

してみれば、本件特許発明11は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4-13.無効理由5についてのまとめ
したがって、本件特許発明1?11は、引用発明、第2刊行物及び第3刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.むすび
以上により、本件特許は、無効理由1及びその証拠を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。
【請求項2】
ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、
前記ガス発生剤は、テトラゾール若しくはその金属塩、トリアゾール若しくはその金属塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド又はニトログアージンである含窒素有機化合物の含有量が25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%で、70k/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?15mm/secのもので、充填量が、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては50?190gであり、
前記フィルタ手段は、かさ密度が3.0?5.0/cm^(3)で、かつ圧力損失が20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10?2000mmH_(2)Oのもので、フィルタ手段の圧力損失値は、前記ハウジングに形成された前記ガス排出口の圧力損失値よりも低いものであり、前記ガス排出口が形成された前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段の間に環状のガス通路となる間隙が形成されており、
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を450?1300に規制することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。
【請求項3】
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)が、運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、A/At=450?1000であり、前記ハウジングは、前記各ガス排出口を有するディフューザシェルと、前記点火手段を収容する中央筒部材が配置される中央孔を有するクロージャシェルとを含み、前記ディフューザシェル、前記中央筒部材、及び前記クロージャシェルは別体のものが一体化されていることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項4】
前記各ガス排出口の開口面積の総和Atは、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、50?200mm^(2)、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、60?500mm^(2)であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項5】前記各ガス発生剤の表面積の総和Aは、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、4×10^(4)?7×10^(4)mm^(2)、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、6×10^(4)?3×10^(5)mm^(2)であることを特徴とする請求項1?4の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項6】
前記ガス排出口は、その内径が2?5mmであり、前記ディフューザシェルはプレス成形によって形成されていることを特徴とする請求項3?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項7】
前記ガス発生剤は、前記含窒素有機化合物が30?40重量%であることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項8】
前記含窒素有機化合物がニトログアニジンであることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項9】
前記スラグ形成剤が酸性白土であることを特徴とする請求項1又は8項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項10】
前記ガス発生剤は単孔円筒形状であることを特徴とする請求項1?9の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項11】
エアバッグ用ガス発生器と、
衝撃を感知して前記ガス発生器を作動させる衝撃センサと、
前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、
前記エアバッグを収容するモジュールケースとを含み、
前記エアバッグ用ガス発生器が請求項1?10の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝撃から乗員を保護するエアバッグ用ガス発生器、及びエアバッグ装置に関する。特にハウジングに形成された各ガス排出口の開口面積の総和Atとハウジング内に収容されるガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を規定したエアバッグ用ガス発生器に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、エアバッグ用ガス発生器は、ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容して構成される。このガス発生器は、衝撃を感知して点火手段が作動することによりガス発生剤を着火・燃焼させて、燃焼ガスを発生させる。該燃焼ガスはハウジング内に於いてフィルタ手段により冷却・浄化されてガス排出口から該ガス発生器の外に排出される。この燃焼ガスを発生する為に使用されるガス発生剤としては、従来においてはアジド系ガス発生剤と、それ以外の非アジド系ガス発生剤に大別することができる。
【0003】
アジド系ガス発生剤(例えばNaN_(3)/CuO)は、70kg/cm^(2)の圧力下において、約45?50mm/secという比較的高い線燃焼速度を有する。それ故に、形状保持に優れた比較的大きいペレット形状、あるいはディスク形状のガス発生剤であっても、例えば運転席用エアバッグにおけるガス発生器に用いられた場合、必要とされる完全燃焼時間40?60msecを十分満足することができている。
【0004】
一方、非アジド系ガス発生剤では、線燃焼速度は一般的に30mm/sec以下であり、ガス発生剤の形状保持に有利な例えば2mm径のペレット形状、あるいは例えば2mm厚のディスク形状のガス発生組成物では、線燃焼速度が約20mm/secの場合、燃焼時間が約100msecとなってしまい、所望の燃焼時間40?60msecには達しない。線燃焼速度20mm/sec前後の場合、所望の燃焼時間とするにはペレット状あるいはディスク状の径又は厚みは1mm前後となり、線燃焼速度が10mm/sec以下では厚みが0.5mm以下の薄肉が要求される。長時間の自動車の振動に耐え、かつ工業的に安定した状態でペレット形状、あるいはディスク形状にガス発生剤を製造することは事実上不可能であり、ガス発生器としての性能が満足されず、実施可能なガス発生器の開発が従来では困難であった。
【0005】
よって本発明は所望の時間内でガス発生剤を完全燃焼することを可能とし、十分な作動性能を示すエアバッグ用ガス発生器を提供することを目的とする。
【0006】
またガス発生器の作動時に於けるハウジング内最大圧力は外気の温度によって異なることから、実質的に外気の温度に依存することなく安定した作動性能を示すことのできるエアバッグ用ガス発生器の提供は困難である。
【0007】
よって本発明は、更に、より製造コストを削減可能であって、外気の温度に依存することなく安定して作動することのできるエアバッグ用ガス発生器を提供することをも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のエアバッグ用ガス発生器は、ハウジングに形成された各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ハウジング内に収容されるガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を規制したことを特徴とする。
【0009】
即ち本発明のエアバッグ用ガス発生器は、ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃センサが衝撃を感知することにより作動する点火手段と、該点火手段により着火されて燃焼し燃焼ガスを発生するガス発生剤と、前記燃焼ガスの冷却及び/又は燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを含んで収容してなるエアバッグ用ガス発生器において、前記ガス発生剤は、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が7?30mm/secのものであり、前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大きく1300以下に規制することを特徴とするものである。
【0010】
このように各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を300より大に規制して、85℃と20℃、また20℃と-40℃とでの、内容量60リットルタンクを用いたタンク内圧力試験におけるそれぞれの最大圧力同士の差を、20℃での該タンク内圧力試験の最大圧力の25%以内とすることができる。特にこの最大圧力同士の差は40kPa以下であることが望ましい。前記各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)は、運転席用及び助手席用エアバッグ用ガス発生器において、A/Atの値を300より大きく1300以下、好ましくは450?1300、更に好ましくは450?1000とすることができる。
【0011】
ただしA/Atの値を上記のように明確に定義する上では、ガスの流れを絞り、燃焼内圧をコントロールする部分より手前側で大きな抵抗を持った部材を有しないことが望ましい。例えば、後で説明する実施例においてでもそうであるが、通常燃焼圧力をコントロールする部分即ちガス排出口の手前にはクーラント・フィルタが配置され、発生したガスの冷却とガス中の固形残渣の捕集を行う。
【0012】
このクーラント・フィルタは金属の線材を網状の多孔質部材に成形し、ガスがその内部を通過する様にして、上記の機能を発揮させる。これは、発生ガスと該クーラント・フィルタの物理的接触により熱交換あるいは残渣の捕集が行われるためであり同時に通気抵抗も生じさせる。この通気抵抗は、燃焼内圧をコントロールする部分であるガス排出口にも存在するが、クーラント・フィルタを配置する際には、ガス排出口の通気抵抗よりもクーラント・フィルタの通気抵抗の方が低い場合にA/Atの値を先述の如く正確に設定することができる。
【0013】
このガス排出口の通気抵抗はその開孔面積と相関があり、同様にクーラント・フィルタの通気抵抗も、ガスの通過面積と相関がある。これらの相関関係の一例は後ほど示す。
【0014】
ここで、上記の運転席用のエアバッグ用ガス発生器とは、運転席側、例えばハンドル等に配置するのに適した構造であって、エアバッグ装置の作動によって、運転者を保護するエアバッグ装置に使用されるガス発生器のことであり、一方、助手席用のエアバッグ用ガス発生器とは、助手席側、例えばダッシュボード近辺等に配置するのに適した構造であって、エアバッグ装置の作動によって助手席の搭乗者を保護するエアバッグ装置に使用されるガス発生器のことである。
【0015】
ハウジングは、鋳造・鍜造によって形成する他、ガス発生剤の燃焼によって生じたガスを排出する為ガス排出口を有するディフューザシェルと、点火手段を配設する為の中央孔を有するクロージャシェルとをプレス成形し、これらを各種溶接法、例えばプラズマ溶接、摩擦溶接、プロゼクション溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、ティグ溶接などにより溶接して形成することもできる。このプレス形成によるハウジングは、その製造が容易になると共に、製造コストを低減することができる。ディフューザシェルとクロージャシェルは、例えば、それぞれ厚さ1.2?3.0mmのステンレス鋼板を用いて形成することができる。ハウジングの内容積は運転席用のエアバッグ用ガス発生器では60?130cc、助手席用のエアバッグ用ガス発生器では150?600ccであることが望ましい。このハウジングに形成されるガス排出口は、内径2?5mmの円形孔であることが望ましく、その開口面積の総和Atは、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、50?200mm^(2)、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、60?500mm^(2)であることが望ましい。
【0016】
このガス排出口には、ハウジング内に外部より湿気が侵入するのを阻止するために、ハウジングのガス排出口がその直径の2?3.5倍の幅を有するアルミニウムテープにより塞がれることが好ましい。アルミニウムテープの貼付は、粘着性アルミニウムテープ、または接着剤、好ましくは加熱により溶融して接着を確実なものとすることができる。例えばホットメルト系接着剤を使用することによても行うことができる。
【0017】
また本ガス発生器に使用するガス発生剤は、特に、70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度が、7?30mm/sec、好ましくは7?15mm/secのものを使用した場合に一層の効果を奏することができる。このようなガス発生剤としては、例えば含窒素有機化合物と、酸化剤と、スラグ形成剤とを含む非アジド系ガス発生剤があり、このガス発生剤中の含窒素有機化合物の含有量は25?60重量%、酸化剤の含有量が40?65重量%、スラグ形成剤の含有量が1?20重量%とすることができる。
【0018】
含窒素有機化合物は、燃料及び窒素源として作用する。このようなものとしては、例えばテトラゾール、トリアゾール、又はこれらの金属塩等の含窒素有機化合物とアルカリ金属硝酸塩等の酸素含有酸化剤を主成分とするもの、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド、ニトログアニジン等があるが、本発明に於いては特にニトログアニジンが好ましい。ガス発生剤中に於けるこの含窒素化合物の含有量は、分子式中の炭素元素、水素元素及びその他の酸化される元素の数によって異なるが、通常25?60重量%の範囲で用いられ、好ましくは30?40重量%の範囲で用いられる。用いられる酸化剤の種類により絶対数値は異なるが、完全酸化理論量より多いと発生ガス中の微量CO濃度が増大し、完全酸化理論量及びそれ以下になると発生ガス中の微量NOx濃度が増大する。両者の最適バランスが保たれる範囲が最も好ましい。
【0019】
また、スラグ形成剤は、ガス発生剤組成物中の特に酸化剤成分の分解によって生成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物をミストとしてインフレータ外へ放出することを避けるため液状から固体状に変えて燃焼室内に止める機能を果たすものであり、金属成分の違いによって最適化されたスラグ形成剤を選ぶことができる。このスラグ形成剤としては、例えばベントナイト系、カオリン系等のアミノケイ酸塩を主成分とする天然に産する粘土並びに合成マイカ、合成カオリナイト、合成スメクタイト等の人工的粘土及び含水マグネシウムケイ酸塩鉱物の1種であるタルク等が挙げられ、この内の少なくとも1種から選ばれたスラグ形成剤を用いることができる。本発明に於ける好ましいスラグ形成剤としては、酸性白土を挙げることができる。ガス発生剤中に於けるこのスラグ形成剤の含有量は1?20重量%の範囲で変えることができるが、好ましくは3?7重量%の範囲である。多すぎると線燃焼速度の低下及びガス発生効率の低下をもたらし、少なすぎるとスラグ形成能を十分発揮することができない。
【0020】
酸化剤は、従来から広く知られているアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩などを使用することができ、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属から選ばれたカチオンを含む硝酸塩の少なくとも1種から選ばれた酸化剤が好ましく、例えば硝酸ストロンチウムなどが挙げられる。ガス発生剤中に於けるこの酸化剤の含有量は、用いられるガス発生化合物の種類と量により絶対数値は異なるが40?65重量%の範囲で用いられ、特に上記のCO及びNOx濃度に関連して45?60重量%の範囲が好ましい。
【0021】
このガス発生剤には、該ガス発生剤を所定形状の成形体とする場合には、各種公知のバインダーを適宜配合することもできる。
【0022】
而して、本発明において、非アジド系ガス発生剤を用いる場合には、31.5重量部のニトログアニジン、51.5重量部のSr(NO_(3))_(2)、10.0重量部のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、7.0重量部の酸性白土からなる非アジド系ガス発生剤、又は31.0重量部のニトログアニジン、54.0重量部のSr(NO_(3))_(2)、10.0重量部のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、5.0重量部の酸性白土からなる非アジド系ガス発生剤を用いることができる。
【0023】
上記のガス発生剤は単孔円筒形状とすることができ、その結果ガス発生剤1個当たりの表面積を大きくすることができる。所望の燃焼時間で完全燃焼を達成する為に、ガス発生剤の1個の形状における肉厚部分の厚みの最も小さい厚み距離を0.01?2.5mm、更には0.01?1.0mmとすることが好ましい。例えばこの厚み距離を0.85mmとする場合には、外径2.5mm、内径0.8mmの単孔円筒形状とすることができ、該厚み距離を1.2mmとする場合には、外径3.2mm、内径0.8mmの単孔円筒形状とすることができる。
【0024】
また、このガス発生剤は、ガス発生器中に、(a)運転席用のエアバッグ用ガス発生器においては、20?50g、(b)助手席用のエアバッグ用ガス発生器においては、50?190g充填することが好ましい。
【0025】
ハウジング内に充填するガス発生剤が非アジド系ガス発生剤である場合、該ガス発生剤は70Kg/cm^(2)の圧力下において、5?30mm/secの線燃焼速度を持ち、このガス発生剤を用いて自動車用エアバッグのガス発生器を構成するとき、運転席用エアバッグでは40?60msec、助手席用エアバッグでは50?80msecでガス発生剤を全て燃焼させる必要がある。そこで、ガス発生剤の燃焼を調整するために、上記の各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を用い、この値を300より大に規制する。このA/Atの値は、運転席用及び助手席用のエアバッグ用ガス発生器において、A/Atの値が300より大きく1300以下、好ましくは450?1300、更に好ましくは450?1000とすることができる。その結果、上記の時間でガス発生剤を全て燃焼させることができる。
【0026】
A/Atの値が最大値を越えると、ガス発生器内での圧力が過剰に上昇し、ガス発生剤の燃焼速度が大き過ぎる。一方、最小値に満たない場合は、ガス発生器内の圧力が低くなり、燃焼速度が小さ過ぎる。その結果、いずれの場合も所望の燃焼時間の範囲外となり、実用可能なガス発生器を提供し得ない。
【0027】
また各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ハウジング内に収容されるガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を上記のように規制した場合には85℃と20℃、また20℃と-40℃とでの、内容量60リットルタンクを用いたタンク内圧力試験におけるそれぞれの最大圧力同士の差を、20℃での該タンク内圧力試験の最大圧力の25%以内とし、更に40kPa以下にすることもでき、ガス発生器の作動時に於けるハウジング内最大圧力が外気の温度に依存することなく、安定した作動性能を発揮することのできるエアバッグ用ガス発生器となる。
【0028】
タンク内圧力試験とは、内容量60リットルのSUS製(ステンレス鋼:JIS規格記号)タンク内に、ガス発生剤成型体を充填したガス発生器を固定し、タンクを密閉後、外部着火電気回路に接続する。別にタンクに配置された圧力トランスデューサー(圧力変換器)により、着火電気回路スイッチを入れた時間を0としてタンク内の圧力上昇変化を時間0?200ミリ秒の間測定する。そして各測定データをコンピュータ処理により最終的にタンク圧力/時間曲線として、ガス発生器を評価する曲線を得る試験である。なおこの試験に於いては、ガス発生剤の燃焼終了後は、タンク内のガスを一部抜き取り、CO及びNO_(X)等のガス分析に供することもできる。本発明に於いてはこのタンク内圧力試験を-40℃と20℃と85℃とにおいて行い、各温度でのタンク圧力/時間曲線に於いての最大圧力(即ち最大タンク内圧力)を測定し、85℃と20℃とにおけるタンク内圧力試験での最大圧力同士の差、及び20℃と-40℃とにおけるタンク内圧力試験での最大圧力同士の差を算出した。
【0029】
ガス発生剤がハウジング内で燃焼する場合、その燃焼性能はガス発生剤が置かれた環境に依存する。特に圧力指数(r_(b)=a・P^(n)のnにあたる指数、r_(b)は燃焼速度、aはガス発生剤の初期温度に依存する定数、Pは内圧を示す)はガス発生剤の燃焼速度に影響を与える因子で、この値が大きい場合、燃焼時の周辺圧力(ハウジング内圧)が高いほど燃焼速度が増大する。従来使用されていたアジド系ガス発生剤では、この圧力指数が0.2?0.5と比較的低いため周辺圧力の変化が燃焼速度に与える影響は小さかったのであるが、非アジド系ガス発生剤では圧力指数が0.4?0.7とアジド系ガス発生剤より高いため、燃焼中のハウジング内圧力変化(周辺圧力)の影響を受けて、燃焼速度の値が大幅に変わり得る。
【0030】
また燃焼速度自体に着目すれば、アジド系ガス発生剤(例えばNaN_(3)とCuO)では、常温に於いて45?50mm/secという比較的高い燃焼速度を有することが知られている一方、非アジド系ガス発生剤の燃焼速度は一般的に30mm/sec以下である。言い換えれば、アジド系ガス発生剤は燃焼中の圧力変化による影響が少なく、比較的高い燃焼速度を維持するが、非アジド系ガス発生剤では燃焼中の圧力変化に応じて、燃焼速度が変化する。また燃焼初期温度によっても、低温ではハウジング内圧が下がり更に燃えにくく、高温では反対にハウジング内圧が上がり燃焼速度が増大する。このように環境温度によって燃焼速度の差が顕著になるような特性を持つ非アジド系ガス発生剤を使ってガス発生器を完成させるには、アジド系ガス発生剤を用いた場合に比べて問題が多いため、以下の様な構造とすることが好ましい。
【0031】
まず遅い燃焼速度でも所定の時間内に燃焼を終了させるため、ガス発生剤を出来るだけ薄く成形し、燃焼距離を短くする必要がある。この場合、自己燃焼時の衝撃や、外部からの振動による破壊/粉砕を避けるため、有孔形状、特に円筒状の単孔形状として、その肉厚を調整するのが好ましい。
【0032】
また時間内に燃焼を終了させるためには、ガス発生剤への着火性を向上させる必要がある。その方法の1つとしては、ガス発生剤の表面積(A)を広げる(大きくする)ことがある。そして燃焼中のハウジング内の圧力環境変化を、出来る限り小さくすることで、燃焼性能が安定してくる。このためには非アジド系ガス発生剤の表面積に合ったノズル面積(At)を設定することが必要となる。
【0033】
非アジド系ガス発生剤はアジド系ガス発生剤と同様、初期温度の違いによって燃焼速度が変化する。その温度依存性は両者でほぼ同じ傾向を示すが、非アジド系ガス発生剤では初期温度の相異に基づく燃焼開始後の圧力環境の違いから、その燃焼性能に大きな差が出る。この差を出来る限り抑えるためには、A/Atを調節してハウジング内圧力環境を出来る限り等しくする必要がある。
【0034】
非アジド系ガス発生剤ではアジド系ガス発生剤よりもA/Atの値を高く設定することで上記の問題が解決できた。
【0035】
フィルタ手段は、ガス発生手段の燃焼によって生成した燃焼残渣を除去すると共に、燃焼ガスを冷却する機能を果たすものである。このようなものとしては、例えば従来使用されている発生ガスを浄化する為のフィルタ及び/又は発生したガスを冷却するクーラントを使用する他、ステンレス鋼或は鉄等の適宜材料から成る金網を環状の積層体として圧縮成形した積層金網フィルタ等も使用できる。この積層金網フィルタは、例えば平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して成形したものからなることができる。このようにして成形されたフィルタ手段は、空隙構造が複雑となり、優れた捕集効果を有する。そのために、冷却機能と捕集機能を兼ね備えたクーラント・フィルター体型のフィルタ手段が実現できる。より具体的には、平編のステンレス鋼製金網を円筒体に形成し、この円筒体の一端部を外側に繰り返し折り曲げて環状の積層体を形成し、この積層体を型内で圧縮成形することによりフィルタ手段を成形することができる。あるいは、平編のステンレス鋼製金網を円筒体に形成し、この円筒体を半径方向に押圧して板体を形成し、この板体を筒状に多重に巻回して積層体を形成し、この積層体を型内で圧縮成形することによってもフィルタ手段を成形することができる。金網の材料であるステンレス鋼は、SUS304、SUS310S、SUS316(JIS規格記号)などを使用することができる。SUS304(18Cr-8Ni-0.06C)は、オーステナイト系ステンレス鋼として優れた耐食性を示す。
【0036】
ここでは主にクーラント・フィルタの線材として、ステンレス鋼を例示したが、これに限定することなく、コスト等の点で利点があれば鉄なども使用可能である。
【0037】
フィルタ手段はまた、その内側又は外側に積層金網体からなる層を有する二重構造とすることができる。内側の層は、燃焼するガス発生剤の燃焼ガスに対しフィルタ手段を保護するフィルタ手段保護機能を有することができる。また外側の層は、ガス発生器作動時にガス圧によりフィルタ手段が膨出してこのフィルタ手段とハウジングの外周壁間に形成される上記間隙を塞ぐことのないように、フィルタ手段の膨出を抑止する抑止手段として機能することができる。なおこのフィルタ手段を、ハウジングの内周面から離間して配置した場合、即ちフィルタ手段の外周面とハウジングの内周面との間に間隙を形成した場合には、該間隙はガス流路として機能することから、発生した燃焼ガスはフィルタ手段全面を通過し効率的に冷却・浄化されることとなる。
【0038】
このクーラント・フィルタはかさ密度が3.0?5.0g/cm^(3)、好ましくは3.5?4.5g/cm^(3)であり、その線材となる金属製金網の線径は0.3?0.6mmである。例えば線材の一例としてステンレス鋼製金網が挙げられるが、このステンレス製線材は線径0.3?0.6mmで平編の編目構造を有する。平編は編目がすべて一方向に引き出されてループ状をなしており、このような編目構造を有する金網を半径方向に積層し、圧縮成形してクーラント・フィルタとなす。また線材はステンレス鋼に限ったものではなく、前述したように鉄製等の線材を用いても同様の編目構造を形成することでクーラント・フィルタとすることができる。
【0039】
本クーラント・フィルタは上記のような複雑な編目構造により、発生ガス中の燃焼残渣捕集性能を呈するため、ガスの流れに対してある程度の抵抗(圧力損失)値を有するものと考えられる。その値の範囲は後ほど述べるクーラント・フィルタ圧力損失測定方法(図8)で測定したとき、20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して10mmH_(2)O?2000mmH_(2)O(1×10^(-3)kgf/cm^(2)?2×10^(-1)kgf/cm^(2))であることが望ましい。
【0040】
本発明において使用されるフィルタ手段の圧力損失値は、望ましい実施の態様に於いては、ディフユーザシェルに形成されたガス排出口の圧力損失値よりも低く、A/Atの関係を明確に定義づける意味に於いて影響を与えないような値とする。即ち本発明に於いて好適に使用されるフィルタ手段は実質的なガスの流れをチョークして、燃焼内圧をコントロールする機能は有しないものである。
【0041】
本発明のエアバッグ用ガス発生器は、上記の構造によるガス発生器であれば、その衝撃の感知及び点火手段の作動形式に関しては、専ら機械的な機構により衝撃を感知する衝撃センサにより点火手段を作動させガスを発生させる機械着火式、又は衝撃を感知した衝撃センサから伝達される電気信号により点火手段が作動してガスを発生させる電気着火式の何れでも良い。
【0042】
機械着火式の点火手段を用いた機械着火式ガス発生器は、オモリの移動により撃針を発射する等、専ら機械的な機構により衝撃を感知する機械式センサをハウジング内に収容する。このハウジングには複数のガス排出口が形成されており、またその内には、前記機械式センサから発射される撃針に刺突され着火・燃焼する雷管と、該雷管の火炎で着火・燃焼する伝火薬とからなる点火手段と、伝火薬の火炎で着火・燃焼し、ガスを発生するガス発生手段と、発生したガスを冷却・浄化するフィルタ手段とを収容して構成される。一方、電気着火式の点火手段を用いた電気着火式ガス発生器は、ガス排出口を有するハウジング内に、衝撃を感知したセンサから伝達される電気信号で作動する点火器と、点火器の作動により着火・燃焼する伝火薬とからなる点火手段と、該伝火薬の火炎で着火・燃焼してガスを発生するガス発生手段と、発生したガスを冷却・浄化するフィルタ手段とを収容して構成される。これら機械着火式又は電気着火式のガス発生器は、その他にも作動性能上有利な構成を適宜選択採用することも当然可能である。
【0043】
なお、本発明のガス発生器に於いては、上記のように各ガス排出口の開口面積の総和Atに対する前記ハウジング内に収容されるガス発生剤の表面積の総和Aの値(A/At)を規制したものであれば、上記した以外の有利な構成、例えばフィルタ手段の変形を阻止するように該フィルタ手段の外周を包囲する多孔円筒板や、発生したガスがフィルタ手段とハウジング内面との隙間を通過する事態を阻止する為にフィルタ手段の内周の上端及び/又は下端を包囲するショートパス防止手段(プレート部材等)、及びガス発生手段とフィルタ手段との直接接触を防止するようにフィルタ手段の内周を包囲する多孔円筒状のパーフォレーテッドバスケットなどを採用することは任意である。
【0044】
上記のエアバッグ用ガス発生器は、該ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと共にモジュールケース内に収容され、エアバッグ装置となる。このエアバッグ装置には、更に衝撃を感知してガス発生器を作動させる衝撃センサも含まれる。ガス発生器が機械着火式ガス発生器の場合には、この衝撃センサは機械式センサが該当し、ハウジング内に点火手段と共に収容される。一方ガス発生器が電気着火式ガス発生器の場合には、該衝撃センサは、例えばコンソールボックス外に配設された半導体式加速度センサなどが該当する。この半導体式加速度センサは、加速度が加わるとたわむようにされたシリコン基板のビーム上に4個の半導体ひずみゲージが形成され、これら半導体ひずみゲージはブリッジ接続されている。加速度が加わるとビームがたわみ、表面にひずみが発生する。このひずみにより半導体ひずみゲージの抵抗が変化し、その抵抗変化を加速度に比例した電圧信号として検出するようになっている。特にガス発生器として電気着火式ガス発生器を使用する場合には、該エアバッグ装置には、更にモジュールケース外に配設されるコントロールユニットも含むことができる。このコントロールユニットは、点火判定回路を備えており、この点火判定回路に前記半導体式加速度センサからの信号が入力するようになっている。センサからの衝撃信号がある値を越えた時点でコントロールユニットは演算を開始し、演算した結果がある値を越えたときガス発生器に作動信号を出力する。
【0045】
このエアバッグ装置は、衝撃センサが衝撃を感知することに連動してガス発生器が作動し、そのガス排出口から燃焼ガスを排出する。この燃焼ガスはエアバッグ内に噴出し、これによりエアバッグはモジュールカバーを破って膨出し、車両中の硬い構造物と乗員との間に衝撃を吸収するクッションを形成する。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は運転席用のガス発生器を示す。図1は、本発明のエアバッグ用ガス発生器の断面図である。本ガス発生器は、デイフューザシェル1とクロージャシェル2からなるハウジング3と、このハウジング3内の収容空間に配設される点火手段、すなわち点火器4及び伝火薬5と、これらにより点火されて燃焼ガスを発生するガス発生剤6と、そしてこれらガス発生剤6を収容する燃焼室28を画成するフィルタ手段、すなわちクーラント・フィルタ7とを含んでいる。
【0047】
ディフューザシェル1は、ステンレス鋼板をプレスにより成形してなり、円形部12と、この円形部12の外周部に形成される周壁部10と、この周壁部10の先端部に半径方向外側に延在するフランジ部19を有している。周壁部10に本実施例では3mm径のガス排出口11が周方向に16個等間隔に配設されている(各ガス排出口の開口面積の総和At=113mm^(2))。このディフューザシェル1は、その円形部12の中央部に段部49により外側に突出した突出円形部13が形成され、段部49は、ハウジング、特にその天井部を形成するディフューザシェル円形部12に剛性を与えると共に、収容空間の容積増大を果たしている。突出円形部13と点火器4の間に伝火薬5を収容する伝火薬容器53が挟持されている。
【0048】
クロージャシェル2は、ステンレス鋼板をプレスにより成形してなり、円形部30と、その中央部に形成される中央孔15と、前記円形部30の外周部に形成される周壁部47と、この周壁部47の先端部に半径方向外側に延在するフランジ部20を有している。中央孔15はその孔縁部に軸方向曲折部14を有している。この曲折部14は、中央孔15の孔縁部に剛性を与えると共に、中央筒部材16との間に比較的大きな接合面を提供している。この中央孔15に嵌合して中央筒部材16が配置され、この中央筒部材16の一端側端面17は曲折部14の端面18と面一になっている。
【0049】
ディフューザシェル1とクロージャシェル2は、ハウジング3の軸方向中央位置近辺でディフューザシェルのフランジ部19とクロージャシェルのフランジ部20とがかさね合わされ、レーザ溶接21がされ、両者は接合されてハウジング3を形成している。これらフランジ部19、20は、ハウジング、特にその外周壁8に剛性を与え、ガス圧によるハウジングの変形を阻止している。
【0050】
中央筒部材16は両端が開放したステンレス鋼管よりなり、その他端側は電子ビーム溶接22によりディフューザシェルの突出円形部13に固定されている。この中央筒部材16の内側に点火手段収容室23が形成され、この点火手段収容室23内に、センサ(図示せず)からの信号により作動する点火器4と、この点火器4により着火される伝火薬5を充填した伝火薬容器53が配設されている。この中央筒部材16は点火器用保持部材24を有し、この保持部材24は、点火器4の軸方向移動を規制する内向きフランジ部25と、点火器が嵌合し中央筒部材16の内周面に固定される周壁部26と、かしめにより前記内向きフランジ部25との間に点火器を軸方向に固定するかしめ部27とからなっている。中央筒部材16はまた、その他端側に貫通孔54を有している。本実施例の場合、直径2.5mmの貫通孔が周方向に6個等間隔に配設されている。
【0051】
中央筒部材16は、ステンレス鋼板を管状に丸めて溶接した管よりなる。この中央筒部材は、電気着火式ガス発生器の場合には厚さ1.2?3.0mmのステンレス鋼板を管状に丸めて溶接し、17?22mmの外径の管とすることができ、また機械着火式ガス発生器の場合には厚さ1.5?7.0mmのステンレス鋼板を管状に丸めて溶接し、19?30mmの外径の管とすることができる。このような溶接管は、UOプレス方式(板をU形に成形した後、O形に成形し、継目を溶接するもの)、または電縫管方式(板を円形に成形し、継目に圧力を加えながら大電流を流して抵抗熱で溶接するもの)などにより形成することができる。
【0052】
クーラント・フィルタ7は、ガス発生剤6を取り囲んで配設され、中央筒部材16の周囲に環状の室、すなわち燃焼室28を画成している。このクーラント・フィルタ7は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮してなる。このクーラント・フィルタ7は、各層においてループ状の編目が押し潰されたような形をしており、それが半径方向に層をなしている。従って、クーラント・フィルタの空隙構造が複雑となり、このクーラント・フィルタは優れた捕集効果を有する。クーラント・フィルタ7の外側に積層金網体からなる外層29が形成されている。この外層29は、ガス発生器作動時にガス圧によりクーラント・フィルタ7が膨出して間隙9を塞ぐことのないように、クーラント・フィルタの膨出を抑止する抑止手段として機能すると共に、冷却機能も有している。このクーラント・フィルタ7により、燃焼室28が画成されると共に、燃焼室で発生した燃焼ガスが冷却され、そして燃焼残渣が捕集される。
【0053】
クロージャシェルの円形部30を取り囲んで周方向に傾斜部31が形成され、この傾斜部31は、クーラント・フィルタ7の移動を阻止する移動阻止手段として機能すると共に、ハウジングの外周壁8とクーラント・フィルタ7間に間隙を形成する手段としても機能している。
【0054】
燃焼室28にガス発生剤6が多数配設されている。ガス発生剤6は中空円柱体をなしており、この形状の故に、燃焼は外面及び内面で起こり、燃焼の進行につれてガス発生剤全体の表面積はあまり変わらないという利点を有している。この実施例に於いては、該ガス発生剤を、ニトログアニジン25?60重量%と、硝酸ストロンチウム40?65重量%と、酸性白土1?20重量%とを含んで形成し、外径2.4mm、内径0.8mm、長さ2mmの中空円柱体としたガス発生剤(70kg/cm^(2)の圧力下において、線燃焼速度11mm/sec)37g(ガス発生剤の表面積の総和A=56804mm^(2))を、ハウジング内に充填することができる。
【0055】
クーラント・フィルタ7の上側端部にプレート部材32が、また下側端部にプレート部材33がそれぞれ配設されている。プレート部材32は、クーラント・フィルタ7の上側端部開口40を塞ぐ円形部36と、この円形部36と一体に形成されクーラント・フィルタの内周面41に当接する周壁部34とからなっている。円形部36は、前記中央筒部材16の外周に嵌合する中央孔35を有している。また周壁部34は、点火手段の火炎用貫通孔54に対向して配置され、貫通孔54付近のクーラント・フィルタ内周面41をカバーしている。この周壁部34は、クーラント・フィルタ7に向け噴出される火炎に対しクーラント・フィルタを保護すると共に、噴炎の方向転換を図り火炎がガス発生剤6に十分に回るようにする機能を有する。このプレート部材32は、半径方向移動に関し中央筒部材16に固定されており、ガス発生器組立の際にクーラント・フィルタ7の位置決め手段として機能すると共に、ガス発生器作動時に燃焼ガスの圧力によりハウジングの内面37とクーラント・フィルタ端面38間で隙間が生じた場合、この隙間を通り燃焼ガスがクーラント・フィルタを通過しないで通り抜ける、いわゆる燃焼ガスのショートパスを防止するショートパス防止手段としても機能する。プレート部材33は、クーラント・フィルタ7の下側端部開口42を塞ぐ円形部50と、この円形部50と一体に形成されクーラント・フィルタの内周面41に当接する周壁部51とからなっている。円形部50は、中央筒部材16の外周に嵌合する中央孔39を有し、充填ガス発生剤に当接してガス発生剤の移動を抑止する。このプレート部材33は、弾性力により中央筒部材16とクーラント・フィルタ7間に挟持され、クーラント・フィルタの前記端面38と反対側の端面43における燃焼ガスのショートパスを防止すると共に、溶接の際に、溶接防護板としても機能している。
【0056】
ハウジングの外周壁8と、クーラント・フィルタの外層29間に間隙9が形成されている。この間隙9によりクーラント・フィルタ7の周囲に半径方向断面が環状のガス通路が形成される。ガス通路の半径方向断面における面積Stは、ディフューザシェルの各ガス排出口11の開口面積Sの総和Atよりも大きくされている。クーラント・フィルタ周囲のガス通路の存在により、燃焼ガスはクーラント・フィルタの全領域を通過しガス通路に向かって進み、これによりクーラント・フィルタの有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。冷却・浄化された燃焼ガスは、上記ガス通路を通ってディフューザシェルのガス排出口11に至る。
【0057】
ハウジング3内に外部より湿気が侵入するのを阻止するために、アルミニウムテープ52によりディフューザシェルのガス排出口11が塞がれている。
【0058】
本ガス発生器において、各ガス発生剤6の表面積の総和をA(56804mm^(2))、ディフューザシェルの各ガス排出口11の開口面積の総和をAt(113mm^(2))とするとき、AとAtとの比の値(A/At)は502となり、A/At=450?1000の範囲内とされている。これにより、ガス発生剤の燃焼速度が運転席用エアバッグに適した速度に調整され、本ガス発生器に備わるガス発生剤が所望の時間内で完全燃焼することができる。また外気の温度差によって影響を受けにくい安定した作動性能を示すガス発生器となる。
【0059】
本ガス発生器を組み立てるときは、中央筒部材16を接合したデイフューザシェル1をその突出円形部13を底にして置き、プレート部材32を中央筒部材16に通し、プレート部材32の周壁部外側にクーラント・フィルタ7を嵌合し、これによりクーラント・フィルタ7の位置決めを行い、その内側にガス発生剤6を充填し、更にその上にプレート部材33を配設する。その後、クロージャシェルの中央孔15を中央筒部材16に挿通してクロージャシェルのフランジ部20をディフューザシェルのフランジ部19にかさね、レーザ溶接21及び44を行い、ディフューザシェル1とクロージャシェル2、及びクロージャシェル2と中央筒部材16を接合する。最後に、中央筒部材16内に伝火薬容器53及び点火器4を挿入し、点火器用保持部材のかしめ部27をかしめてこれらを固定する。このように構成された本ガス発生器において、衝撃をセンサ(図示せず)が感知すると、その信号が点火器4に送られて点火器4が作動し、これによって伝火薬容器53内の伝火薬5が着火して高温の火炎を生成する。この火炎は貫通孔54より噴出し、貫通孔54付近のガス発生剤6に点火すると共に、周壁部34により進路が曲げられて燃焼室下部のガス発生剤に点火する。これによりガス発生剤が燃焼して高温・高圧のガスを生成し、この燃焼ガスは、クーラント・フィルタ7の全領域を通過し、その間に効果的に冷却されまた燃焼残渣が捕集され、冷却・浄化された燃焼ガスは、ガス通路(間隙9)を通り、アルミニウムテープ52の壁を破ってガス排出口11より噴出し、エアバッグ(図示せず)内に流入する。これによりエアバッグが膨張し、乗員と堅い構造物の間にクッションを形成して衝撃から乗員を保護する。
【0060】
図2は、本発明の別の実施例のエアバッグ用ガス発生器の断面図である。本ガス発生器は、ディフューザシェル61とクロージャシェル62からなるハウジング63と、このハウジング63内の収容空間に配設される点火器64と、この点火器64により点火されて燃焼ガスを発生するガス発生剤66と、そしてこれらガス発生剤66を収容する燃焼室84を画成するクーラント・フィルタ67とを含んでいる。
【0061】
ディフューザシェル61は、ステンレス鋼板をプレスにより成形してなり、円形部78と、その外周部に形成される周壁部76と、その先端部に半径方向外側に延在するフランジ部86を有している。周壁部76にはガス排出口77が周方向に等間隔に複数個配設されている。このディフューザシェル61は、その円形部78に放射状に配置された複数の半径方向リブ状補強体79を有している。これらリブ状補強体79は、ハウジング、特にその天井部を形成するディフューザシェル円形部78に剛性を与え、これによりハウジングがガス圧により変形するのを阻止している。
【0062】
クロージャシェル62は、ステンレス鋼板をプレスにより成形してなり、円形部71と、その外周部に形成される周壁部72と、その先端部に半径方向外側に延在するフランジ部87を有している。円形部71は中央部に段部48により凹部73が形成され、この凹部73の中央部に中央孔74が形成されている。この中央孔74は、その孔縁部に軸方向曲折部75を有し、この曲折部75は、点火器の胴部80が嵌合する内周面81と、点火器の鍔部82が係止する端面83を有している。軸方向曲折部75の内周面81の構成により、比較的大きなシール面が確保される。気密性確保のために、点火器の胴部80と内周面81間にシーリング材を充填することができ、また点火器の鍔部82と端面83間に溶接を行うことができる。点火器の鍔部82が係止する端面83は、燃焼室84内のガス圧により点火器64が抜け出るのを防止している。段部48は、ハウジング、特にその底部を形成するクロージャシェル円形部71に剛性を与え、また凹部73は、点火器のコネクタ底面85を円形部71の外面よりも内側の位置においている。また曲折部75は、中央孔74の孔縁部に剛性を与えている。
【0063】
ディフューザシェルのフランジ部86とクロージャシェルのフランジ部87とがハウジングの軸方向中央位置近辺でかさね合わされてレーザ溶接88がされ、ディフューザシェル61とクロージャシェル62は互いに接合されてハウジング63を形成している。これらフランジ部86、87は、ハウジングの外周壁68に剛性を与え、ガス圧によるハウジングの変形を阻止している。
【0064】
点火器64は、センサ(図示せず)からの信号により作動する慣用の電気式点火器からなっている。電気式点火器は、機械的な機構を含まず構造が簡単でかつ小型・軽量であるため、機械式の点火器よりも好ましい。この点火器64(出力:10cc密閉圧力容器内で300?1500psi)には、図1の伝火薬容器53に類するものが付随していない。これはガス発生剤66の着火性、及び燃焼性が良いことによる。ガス発生剤66は中空円柱体をなしており、この形状の故に、燃焼は外面及び内面で起こり、燃焼の進行につれてガス発生剤全体の表面積はあまり変わらないという利点を有している。
【0065】
クーラント・フィルタ67は、中央孔74と同心に配置され、ハウジング63と共に燃焼室84を画成している。このクーラント・フィルタ67は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮してなる。このクーラント・フィルタ67により、燃焼室84が画成されると共に、燃焼室で発生した燃焼ガスが冷却され、そして燃焼残渣が捕集される。このクーラント・フィルタ67の外側に積層金網体からなる外層89が形成されている。この外層89は、クーラント・フィルタの補強とガス冷却を兼ねている。
【0066】
かかるクーラント・フィルタの圧力損失値の測定方法を説明する。
【0067】
図8にクーラント・フィルタの圧力損失測定装置の概略図を示す。ここでは例えばステンレス製の線材を円筒状に成形したクーラント・フィルタ300の圧力損失の測定を例示する。測定対象となるクーラント300の内側から一定量の空気を流す。本図ではクーラント・フィルタ300の両端部のうち、片端部には空気を送り込む管をつけた支持板303を取り付け、もう一方の片端部は空気が漏れないように塞ぐ支持板303を付け、そこに圧力計304を取り付けている。即ち円筒状のクーラント・フィルタ300の片端部に固定した支持板303に取り付けた管302から内部に入った空気は、すべてクーラント・フィルタ300の円筒側面部から外部に流れ出るようにする。この時一定量の空気を送り込む管302は、正確な圧力損失測定のため、断面積は十分に大きく内面が平滑なものでなくてはならない。305は一定量の空気をクーラント・フィルタ内に送るための流量計である。このとき支持板とクーラント・フィルタの端部の接触面には、パッキン等のシール手段を施し、支持板でクーラント・フィルタを強く挟み込み、接触面から空気が漏れないようにする。この状態で所定量の空気を流すと、クーラント300内に流入した空気の一部は円筒クーラント・フィルタ300の側面部から流出し、圧力降下が見られる。これでクーラント・フィルタの通気抵抗が定義できる。つまり圧力計304が示した値をそのクーラント・フィルタ300の圧力損失値とする。
【0068】
ここに上記測定方法により外径60mm、内径47mm、高さ29.5mmに成形された線径0.5mmのステンレス製線材からなるクーラント・フィルタの通気抵抗を測定した結果を開示する(流す空気の量は1000リットル/min)。同一形状で同一の線径のとき、クーラント・フィルタの通気抵抗は、その見かけの密度(重量/体積)に依存する。例えば見かけの密度3g/cm^(3)では通気抵抗70mmH_(2)O(0.007kgf/cm^(2))、4g/cm^(3)では300mmH_(2)O(0.030kgf/cm^(2))、5g/cm^(3)では800mmH_(2)O(0.08kgf/cm^(2))となり、クーラント・フィルタの通気抵抗は相関よく密度に依存することがわかる。
【0069】
また同様にガス排出口(絞り部)の通気抵抗を測定することが可能である。ガス排出口の通気抵抗の測定装置の概略図を図9に示す。この測定方法は、前記図8に示したクーラント・フィルタの圧力損失測定方法と原理的には同じである。即ち、図9に於いては、ガス排出口301を有するディフューザシェル307に圧力計304を取り付けているが、これは図8でクーラント・フィルタの上部を押さえている圧力計304のついた上部支持板に対応している。ガス排出口の正確な通気抵抗の測定には、管302を通ってディフューザシェル307内に導入された空気が、ガス排出口以外から漏れないようにする必要があり、そのためO-リング306を介して支持板303にディフューザシェル307を押圧するように取り付ける。図9ではディフューザシェルのフランジ部にあるエアバッグモジュールへの取り付け孔を利用して、ネジで支持版303にディフューザシェル307に押圧固定している。このO-リング306はディフューザシェル307のフランジ部と支持板303との間からの空気の漏れを防止する。また、正確な圧力損失測定には、管302は、図8で述べたように流れるガスの量に対して断面積は十分に大きく、内面は平滑なものでなければならない。この状態で所定量の空気を管302から流すと、ディフューザシェル内に流入した空気の一部はガス排出口301から流出し、圧力降下が見られる。その結果、ガス排出口の通気抵抗は、圧力計304が示した値(圧力損失値)として得られる。この様な方法によって測定したガス排出口の通気抵抗が、クーラント・フィルタの通気抵抗と比較して十分大きければA/Atの関係を正確に定義できる。このガス排出口の通気抵抗は、例えばガス排出口の開口総面積が50mm^(2)の時12000mmH_(2)O(1.2kgf/cm^(2))、100mm^(2)の時2500mmH_(2)O(0.25kgf/cm^(2))、200mm^(2)の時1000mmH_(2)O(0.1kgf/cm^(2))となり相関よく開口総面積に依存する。
【0070】
実際に組み合わされるガス排出口の開口部総面積とその通気抵抗、及びクーラント・フィルタの密度とその通気抵抗は、ガス排出口面積91mm^(2)で4000mmH_(2)O(0.4kgf/cm^(2))、クーラント・フィルタ密度は4g/cm^(3)で300mmH_(2)O(0.03kgf/cm^(2))である。
【0071】
クロージャシェルはプレス成形されているので、その円形部71を取り囲んで周方向に傾斜部90が必然的に形成され、この傾斜部90は、クーラント・フィルタ67の位置決め乃至は移動を阻止する手段として機能すると共に、ハウジングの外周壁68と、クーラント・フィルタの外層89間に間隙69を形成する手段としても機能している。
【0072】
燃焼室84に中空円柱体のガス発生剤66が多数配設されている。ガス発生剤66は、直接、燃焼室内の空間に充填され点火器64に隣接して配設され、クーラント・フィルタ67の一側端部開口45を塞ぐプレート部材の円形部92によりその移動が規制されている。プレート部材91は、前記円形部92と、クーラント・フィルタ67の一側端部の内周面に当接して該内周面をカバーする、前記円形部92と一体の周壁部93を有している。このプレート部材91により、クーラント・フィルタの一側端面94とディフューザシェル円形部78の内面間の燃焼ガスのショートパスが防止される。プレート部材91が配設されないクーラント・フィルタ他側端部における端面95は、溶接によりハウジング内面46に固定されている。これにより端面95におけるショートパスが防止される。溶接を行うことにより、通常、クーラント・フィルタ端面とハウジング内面間に配設される、例えばシリコンゴムからなる難燃性で弾力性を有するパッキンが不要となる。
【0073】
ハウジングの外周壁68と、クーラント・フィルタの外層89間に間隙69が形成されており、この間隙69によりクーラント・フィルタ67の周囲に半径方向断面が環状のガス通路が形成されている。図1に示すガス発生器と同様に、ガス通路の半径方向断面における面積は、ディフューザシェルの各ガス排出口77の開口面積の総和よりも大きくされている。クーラント・フィルタ周囲のガス通路の存在により、燃焼ガスはクーラント・フィルタの全領域を通過しガス通路に向かって進み、これによりクーラント・フィルタの有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。冷却・浄化された燃焼ガスは、上記ガス通路を通ってディフューザシェルのガス排出口77に至る。ハウジング63内に外部より湿気が侵入するのを阻止するために、アルミニウムテープ96によりディフューザシェルのガス排出口77がハウジング内側より塞がれている。
【0074】
本ガス発生器において、各ガス発生剤66の表面積の総和をA、ディフューザシェルの各ガス排出口77の開口面積の総和をAtとするとき、AとAtとの比の値 A/Atは、上記図1に示すガス発生器同様、A/At=450?1000とされている。これにより、ガス発生剤の燃焼速度が運転席用エアバッグに適した速度に調整され、本ガス発生器に備わるガス発生剤が所望の時間内で完全燃焼することができる。また外気の温度差によって影響を受けにくい安定した作動性能を示すガス発生器となる。
【0075】
本ガス発生器を組み立てるときは、クロージャシェルの円形部71を底にしてクロージャシェル62を置き、その中央孔74に点火器64を配設する。次に、クーラント・フィルタ67を配設し、その内側にガス発生剤66を充填し、更にその上にプレート部材91を配設する。最後に、ディフューザシェルのフランジ部86をクロージャシェルのフランジ部87にかさね、レーザ溶接88を行い、ディフューザシェル61とクロージャシェル62を接合する。
【0076】
このように構成された本ガス発生器において、衝撃をセンサ(図示せず)が感知すると、その信号が点火器64に送られて点火器64が作動し、これによって燃焼室84内のガス発生剤66に点火する。これによりガス発生剤が燃焼して高温・高圧のガスを生成し、この燃焼ガスはクーラント・フィルタ67の全領域よりクーラント・フィルタ67に入り、クーラント・フィルタ67を通過する間に冷却されまた燃焼残渣が捕集される。冷却・浄化された燃焼ガスは、間隙69により形成されるガス通路を通り、アルミニウムテープ96の壁を破ってガス排出口77より噴出し、エアバッグ(図示せず)内に流入する。これによりエアバッグは膨張して乗員と堅い構造物の間にクッションを形成し、衝撃から乗員を保護する。
【0077】
図3は、図1のガス発生器と類似しており、ディフューザシェル1′とクロージャシェル2′をアルミニウム合金を使用して鋳造により成形した例を示す。ディフューザシェル1′は、円形部12′と、これと一体に形成される中央筒部16′と、円形部12′の外周部に形成される周壁部10′と、その先端部に半径方向外側に延在するフランジ部19′を有している。また、クロージャシェル2′は、円形部30′と、その中央部に形成される中央孔15′と、前記円形部30′の外周部に形成される周壁部47′と、この周壁部47′の先端部に半径方向外側に延在するフランジ部20′を有している。中央孔15′は前記中央筒部16′の外周に嵌合し、ディフューザシェルのフランジ部19′とクロージャシェルのフランジ部20′とがかさね合わされ、レーザ溶接21′がされ、ディフューザシェルとクロージャシェルは接合されてハウジング3′を形成している。なお、図1と同一の部材は、同一の符号を付けて説明を省略する。
【0078】
図4は、図2のガス発生器と類似しており、ディフューザシェル61′とクロージャシェル62′をアルミニウム合金を使用して鋳造により成形した例を示す。ディフューザシェル61′は、円形部78′と、その外周部に形成される周壁部76′と、その先端部に半径方向外側に延在するフランジ部86′を有している。クロージャシェル62′は、円形部71′と、その外周部に形成される周壁部72′と、その先端部に半径方向外側に延在するフランジ部87′を有している。円形部71′の中央部に中央孔74′が形成されている。この中央孔74′に点火器64の胴部80が嵌合し、また点火器64の鍔部82はクロージャシェル円形部71′の内面129に係止している。ディフューザシェルのフランジ部86′とクロージャシェルのフランジ部87′とがかさね合わされてレーザ溶接88′がされ、ディフューザシェル61′とクロージャシェル62′は互いに接合されてハウジング63′を形成している。なお、図2と同一の部材は、同一の符号をつけて説明を省略する。
【0079】
図5は助手席用のガス発生器を示す。このガス発生器は、周方向及び軸方向に配列された複数個のガス排出口100を有する円筒状部101と、この円筒状部101の両端部に配設される側壁部102及び103からなるハウジング104を有している。このハウジング104内の中心部に伝火チューブ105が配設され、この伝火チューブ105の外面に嵌合してディスク状のガス発生剤106が多数並置され、更にこれらを囲繞してクーラント・フィルタ107が配設されている。一方の側壁部102に伝火薬108と点火器109からなる点火手段が配設され、この点火手段は伝火チューブ105内に収容されている。他方の側壁部103には固定用のねじボルト110が固着されている。伝火チューブ105は伝火薬108の火炎が噴出する開口111を多数備え、これら開口111は伝火チューブの管壁に均一に分散して穿設されている。ハウジング104の内面には、少なくとも排出口100が穿設される領域に、アルミニウムテープ124が固着されている。このアルミニウムテープ124は、排出口100より外部の湿気がハウジング内に侵入しないように、排出口100を気密に閉鎖している。
【0080】
クーラント・フィルタ107の図面右側端部にプレート部材112が、また左側端部にプレート部材113がそれぞれ配設されている。プレート部材112は、クーラント・フィルタ107の右側端部開口114を塞ぐ円形部115と、この円形部115と一体に形成されクーラント・フィルタの内周面116に当接する周壁部117とからなっている。円形部115は、前記伝火チューブ105の外周面に嵌合する中央孔118を有している。また、プレート部材113もプレート部材112と同様に構成された円形部121、周壁部122、及び中央孔123を有している。これらプレート部材112、113は、半径方向移動に関し伝火チューブ105に固定されており、ガス発生器組立の際にクーラント・フィルタ107の位置決め手段として機能し、また車両振動などによりクーラント・フィルタ107が移動するのを阻止する移動阻止手段として機能すると共に、ガス発生器作動時にハウジングの内面119とクーラント・フィルタ端面120間の燃焼ガスのショートパスを防止するショートパス防止手段としても機能する。ハウジングの円筒状部101と、クーラント・フィルタ107間に間隙125が形成されている。この間隙125によりクーラント・フィルタ107の周囲に半径方向断面が環状のガス通路が形成される。このガス通路の半径方向断面における面積Stは、円筒状部の各ガス排出口100の開口面積Sの総和Atよりも大きくされている。このガス通路の存在により、燃焼ガスはクーラント・フィルタの全領域を通過しガス通路に向かって進み、これによりクーラント・フィルタの有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。冷却・浄化された燃焼ガスは、上記ガス通路を通って円筒状部のガス排出口100に至る。
【0081】
本ガス発生器において、各ガス発生剤106の表面積の総和をA、円筒状部の各ガス排出口100の開口面積の総和をAtとするとき、AとAtとの比の値A/Atが、A/At=450?1000とされている。この実施例に於いて、例えば内径3mmのガス排出口を32個形成した場合にはその開口面積の総和Atは226mm^(2)であり、図1に示すガス発生剤100gをハウジング内に充填した場合にはその表面積の総和Aは153524mm^(2)であることから、A/Atは679となる。これにより、ガス発生剤の燃焼速度が助手席用エアバッグに適した速度に調整され、本ガス発生器に備わるガス発生剤が所望の時間内で完全燃焼することができる。また外気の温度差によって影響を受けにくい、安定した作動性能を示すガス発生器となる。
【0082】
衝撃をセンサが感知するとその信号が点火器109に送られて点火器109が作動し、これによって伝火薬108が着火して高温の火炎を生成する。この火炎は、伝火チューブ105の開口111より噴出する。噴出した火炎は、開口領域のガス発生剤106に点火する。これによりガス発生剤106は燃焼して高温・高圧の燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスは、クーラント・フィルタ107の全領域を通過し、その間に効果的に冷却されまた燃焼残渣が捕集され、冷却・浄化された燃焼ガスは、ガス通路(間隙125)を通り、アルミニウムテープ124の壁を破ってガス排出口100より噴出し、エアバッグ(図示せず)内に流入する。これによりエアバッグが膨張し、乗員と堅い構造物の間にクッションを形成して衝撃から乗員を保護する。
【0083】
図6に、本発明のガス発生器を有するエアバッグ装置の例を示す。このエアバッグ装置は、ガス発生器200と、衝撃センサ201と、コントロールユニット202と、モジュールケース203と、そしてエアバッグ204とからなっている。
【0084】
ガス発生器200は、図1に基づいて説明したガス発生器が使用されている。衝撃センサ201は、例えば半導体式加速度センサからなることができる。この半導体式加速度センサは、加速度が加わるとたわむようにされたシリコン基板のビーム上に4個の半導体ひずみゲージが形成され、これら半導体ひずみゲージはブリッジ接続されている。加速度が加わるとビームがたわみ、表面にひずみが発生する。このひずみにより半導体ひずみゲージの抵抗が変化し、その抵抗変化を加速度に比例した電圧信号として検出するようになっている。
【0085】
コントロールユニット202は、点火判定回路を備えており、この点火判定回路に前記半導体式加速度センサからの信号が入力するようになっている。センサからの衝撃信号がある値を越えた時点でコントロールユニット202は演算を開始し、演算した結果がある値を越えたときガス発生器200の点火器4に作動信号を出力する。
【0086】
モジュールケース203は、例えばポリウレタンから形成され、モジュールカバー205を含んでいる。このモジュールケース203内にエアバッグ204及びガス発生器200が収容されてパッドモジュールとして構成され、このパッドモジュールは自動車のステアリングホイール207に取り付けられている。
【0087】
エアバッグ204は、ナイロン(例えばナイロン66)、またはポリエステルなどから形成され、その袋口206がガス発生器のガス排出口を取り囲み、折り畳まれた状態でガス発生器のフランジ部に固定されている。
【0088】
自動車の衝突時に衝撃を半導体式加速度センサ201が感知すると、その信号がコントロールユニット202に送られ、センサからの衝撃信号がある値を越えた時点でコントロールユニット202は演算を開始し、演算した結果がある値を越えたときガス発生器200の点火器4に作動信号を出力する。これにより点火器4が作動してガス発生剤に点火しガス発生剤は燃焼してガスを生成する。このガスはエアバッグ204内に噴出し、これによりエアバッグはモジュールカバー205を破って膨出し、ステアリングホイール207と乗員の間に衝撃を吸収するクッションを形成する。
【0089】
【実施例】
『タンク内圧力試験』
ガス発生剤の表面積の総和A、各ガス排出口の開口面積の総和Atが以下のようなガス発生器を用いて、85℃と20℃と-40℃とにおいて、内容量60リットルタンクを用いたタンク内圧力試験を行った。その結果を図7に示す。
【0090】
「ガス発生器」
各ガス排出口の開口面積の総和At:113mm^(2)(内径3.0mmのガス排出口を16個)クーラント・フィルタのかさ密度:4.03g/cm^(3)
クーラント・フィルタの圧力損失:20℃の雰囲気下で1000リットル/minの空気流量に対して、300mmH_(2)O(0.03kgf/cm^(2))
「ガス発生剤」
組成(重量比):ニトログアニジン/Sr(NO_(3))_(2)/カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩/酸性白土=31.0/54.0/10.0/5.0形状:外径2.35mm、内径0.69mm、長さ3.0mmの中空円柱体
70kg/cm^(2)の圧力下に於ける線燃焼速度:11mm/sec
ガス発生剤の表面積の総和A:56804mm^(2)(37g)
「ガス排出口の開口面積の総和Atに対するガス発生剤の表面積総和Aの値(A/At)」
A/At=502
『評価』
図7に示すタンク内圧力試験の結果を評価すると、実施例に示すようにA/At=502とした場合には85℃と20℃とにおけるタンク内最大圧力同士の差が約30kPaとなり、20℃と-40℃とにおけるタンク内最大圧力同士の差が約20kPaとなる。従って、85℃と20℃、また20℃と-40℃とでのタンク内圧力試験におけるそれぞれの最大圧力同士の差が40kPa以下となり、該ガス発生器の作動性能は外気の温度差の影響を受けにくいものとなる。
【0091】
また85℃と20℃、また20℃と-40℃とでのタンク内圧力試験におけるそれぞれの最大内圧力同士の差は、20℃でのタンク内圧力試験におけるタンク内最大圧力(約160kPa)の25%以内となる。
【0092】
【発明の効果】
本発明のガス発生器は、以上述べた通りに構成されているので、本ガス発生器に備わるガス発生剤を所望の時間内に完全燃焼させることができ、更にガス発生器の作動時に於けるハウジング内最大圧力が、外気の温度差によって影響を受けることなく、安定した作動性能を示すことのできるガス発生器となる
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例のガス発生器の断面図。
【図2】
本発明の別の実施例のガス発生器の断面図。
【図3】
本発明の更に別の実施例のガス発生器の半断面図。
【図4】
本発明の更にまた別の実施例のガス発生器の半断面図。
【図5】
助手席用アバッグ装置に好適の本発明のガス発生器の断面図。
【図6】
本発明のエアバッグ装置の構成図。
【図7】
実施例のタンク内圧力試験の結果を示すグラフ。
【図8】
クーラント・フィルタの圧力損失測定装置の斜視図である。
【図9】
ガス排出口の通気抵抗の測定装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 ディフューザシェル
2 クロージャシェル
3 ハウジング
4 点火器
6 ガス発生剤
7 クーラント・フィルタ
11 ガス排出口
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-09-25 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願平10-106286
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B60R)
P 1 113・ 537- ZA (B60R)
P 1 113・ 536- ZA (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川向 和実  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 柴沼 雅樹
柿崎 拓
登録日 1999-05-07 
登録番号 特許第2926040号(P2926040)
発明の名称 エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置  
代理人 川口 義雄  
代理人 岩永 勇二  
代理人 大崎 勝真  
代理人 坪倉 道明  
代理人 金山 賢教  
代理人 平田 忠雄  
代理人 小野 誠  
代理人 岩永 勇二  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 平田 忠雄  

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