ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A63H 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A63H 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A63H 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A63H 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A63H 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する A63H |
---|---|
管理番号 | 1220073 |
審判番号 | 訂正2010-390049 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2010-05-21 |
確定日 | 2010-07-01 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3926821号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3926821号に係る特許請求の範囲及び明細書を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1 本件特許の登録までの経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第3926821号(以下、「本件特許」という。)についての特許出願は、平成14年4月23日に出願された特願2002-121326号の一部を平成17年2月1日に特許法第44条1項の規定により新たな特許出願とした特願2005-25336号であり、その請求項1及び請求項2に係る発明についての特許は、平成19年3月9日にその特許権の設定登録がなされた。 2 関連無効審判事件の手続の経緯 平成20年10月21日に、本件特許に対して特許無効審判が請求され(無効2008-800213号、「以下、関連無効審判事件」という。)、平成22年3月19日に、訂正を認めず、請求項1及び請求項2に係る発明についての特許を無効とする旨の審決がなされ(以下、「無効審決」という。)、無効審決は平成22年3月31日に送達された。これに対して、平成22年4月30日に、関連無効審判事件の被請求人である、本件訂正審判の請求人により、無効審決の取消を求める訴えが知的財産高等裁判所に提起された(平成22年(行ケ)第10136号)。 3 本件訂正審判事件の手続の経緯 上記訴えの提起の日から起算して90日の期間内である平成22年5月21日に、本件訂正審判の請求がなされた。 第2 請求の趣旨及び訂正内容の詳細 1 請求の趣旨 本件の訂正審判の請求の趣旨は、本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書(以下、それぞれ、「現特許請求の範囲」及び「現明細書」という。)を審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 2 訂正内容の詳細 訂正明細書及び訂正特許請求の範囲による訂正内容は、下記の訂正事項1ないし訂正事項3からなっている。 (1)訂正事項1 現特許請求の範囲の請求項1(以下、「現請求項1」という。)の下記の記載を、訂正特許請求の範囲の請求項1(以下、「訂正請求項1」という。)に記載されたとおりの下記のように訂正する。 <現請求項1> 少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結されてなる可動人形用胴体であって、 上半身部品はスラッシュ成形により成形された塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と、 該本体内に嵌入して内装され、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を有し、硬質合成樹脂材からなる芯材とで構成され、 下半身部品は、前記芯材の下半身連結部材を連結可能な上半身部品連結構造を備えて構成されていることを特徴とする可動人形用胴体。 <訂正請求項1> 少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に、 前記上半身部品と下半身部品とが、揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結される可動人形用胴体であって、 前記上半身部品は、スラッシュ成形により接合線なく一体成形され、かつ下端に開口を設けた塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と、 該軟質製本体内に嵌入して内装される硬質合成樹脂製の芯材とで構成され、 前記芯材は、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を備え、 前記下半身連結部材は、下半身部品の上端と対向し、前記軟質製本体下端の開口に位置して備えられ、 前記下半身部品は、前記軟質製本体下端の開口と対向する上端を開放し、外表面にネジ穴や接合線を有しない一体成形された腰部本体と、 前記腰部本体内に備えられ、前記下半身連結部材を差し込み連結可能な上半身部品連結構造とを備え、 前記上半身部品連結構造は、前記下半身連結部材と対向し、前記腰部本体の開放部位に位置して備えられ、 前記下半身連結部材と前記上半身部品連結構造は、 円柱状の棹部と、該棹部を嵌合し、かつ上下方向で差込み連結かつ引き抜き分離可能な円筒状の差込み穴とによって構成され、 前記上半身部品と前記下半身部品は、 軟質製本体下端の開ロと腰部本体の開放部位にそれぞれ位置している前記棹部と前記差込み穴との上下方向の差込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結されていることを特徴とする可動人形用胴体。 (当審注:下線は訂正箇所を示す。以下同じ。) (2)訂正事項2 現特許請求の範囲の請求項2(以下、「現請求項2」という。)の下記の記載を、訂正特許請求の範囲の請求項2(以下、「訂正請求項2」という。)に記載されたとおりの下記のように訂正する。 <現請求項2> 上半身部品は、アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品であることを特徴とする請求項1に記載の可動人形用胴体。 <訂正請求項2> 軟質製本体は、アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品であることを特徴とする請求項1に記載の可動人形用胴体。 (3)訂正事項3 現明細書の段落【0006】の下記の記載を、訂正明細書の段落【0006】に記載されたとおりの下記のように訂正する。 <現明細書の段落【0006】の記載> 上記目的を達成するために本発明の第1の発明は、少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結されてなる可動人形用胴体であって、 上半身部品はスラッシュ成形により成形された塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と、 該本体内に嵌入して内装され、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を有し、硬質合成樹脂材からなる芯材とで構成され、 下半身部品は、前記芯材の下半身連結部材を連結可能な上半身部品連結構造を備えて構成されていることを特徴とする可動人形用胴体としたことである。 また、第2の発明は、第1の発明において、上半身部品は、アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品であることを特徴とする可動人形用胴体としたことである。 <訂正明細書の段落【0006】の記載> 上記目的を達成するために本発明の第1の発明は、少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に、 前記上半身部品と下半身部品とが、揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結される可動人形用胴体であって、 前記上半身部品は、スラッシュ成形により接合線なく一体成形され、かつ下端に開口を設けた塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と、 該軟質製本体内に嵌入して内装される硬質合成樹脂製の芯材とで構成され、 前記芯材は、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を備え、 前記下半身連結部材は、下半身部品の上端と対向し、前記軟質製本体下端の開口に位置して備えられ、 前記下半身部品は、前記軟質製本体下端の開口と対向する上端を開放し、外表面にネジ穴や接合線を有しない一体成形された腰部本体と、 前記腰部本体内に備えられ、前記下半身連結部材を差し込み連結可能な上半身部品連結構造とを備え、 前記上半身部品連結構造は、前記下半身連結部材と対向し、前記腰部本体の開放部位に位置して備えられ、 前記下半身連結部材と前記上半身部品連結構造は、 円柱状の棹部と、該棹部を嵌合し、かつ上下方向で差込み連結かつ引き抜き分離可能な円筒状の差込み穴とによって構成され、 前記上半身部品と前記下半身部品は、 軟質製本体下端の開口と腰部本体の開放部位にそれぞれ位置している前記棹部と前記差込み穴との上下方向の差込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結されていることを特徴とする可動人形用胴体としたことである。 また、第2の発明は、第1の発明において、軟質製本体は、アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品であることを特徴とする可動人形用胴体としたことである。 第3 当審の判断 1 訂正の目的及び新規事項の有無について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、現請求項1の記載を訂正するものであるところ、次の訂正事項1-(1)から訂正事項1-(6)の事項を内容としている。 (ア)訂正事項1-(1) 「少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結されてなる可動人形用胴体であって、」 を 「少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に、 前記上半身部品と下半身部品とが、揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結される可動人形用胴体であって、」 と訂正することにより、「揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結される」の主語を明示し、当該部分の記載の意味を明りょうにすること。 (イ)訂正事項1-(2) 「上半身部品はスラッシュ成形により成形された塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と」 を 「前記上半身部品は、スラッシュ成形により接合線なく一体成形され、かつ下端に開口を設けた塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と」 と訂正することにより、当該部分の記載における「上半身部品」が前出の「上半身部品」であることを明りょうにするとともに、「塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体」が「接合線なく一体成形され、かつ下端に開口を設けた」点の限定をすること。 (ウ)訂正事項1-(3) 「該本体内に嵌入して内装され、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を有し、硬質合成樹脂材からなる芯材とで構成され、」 を 「該軟質製本体内に嵌入して内装される硬質合成樹脂製の芯材とで構成され、 前記芯材は、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を備え、」 と訂正することにより、当該部分の記載における「本体」が前出の「軟質製本体」であること、「該本体内に嵌入して内装され」が「芯材」を限定するものであること、及び、「下半身連結部材を有し」の主語が「上半身部品」ではなく「芯材」であることを明りょうにすること。 (エ)訂正事項1-(4) 「前記上半身部品連結構造は、前記下半身連結部材と対向し、前記腰部本体の開放部位に位置して備えられ、」という事項を付加することにより、「上半身部品連結構造」の配置の向き及び備えられている位置の限定をすること。 (オ)訂正事項1-(5) 「下半身部品は、前記芯材の下半身連結部材を連結可能な上半身部品連結構造を備えて構成されている」 を 「前記下半身部品は、前記軟質製本体下端の開口と対向する上端を開放し、外表面にネジ穴や接合線を有しない一体成形された腰部本体と、 前記腰部本体内に備えられ、前記下半身連結部材を差し込み連結可能な上半身部品連結構造とを備え、 前記上半身部品連結構造は、前記下半身連結部材と対向し、前記腰部本体の開放部位に位置して備えられ、 前記下半身連結部材と前記上半身部品連結構造は、 円柱状の棹部と、該棹部を嵌合し、かつ上下方向で差込み連結かつ引き抜き分離可能な円筒状の差込み穴とによって構成され、」 と訂正することにより、前出の「下半身部品」が所定の「腰部本体」を有するものであることの限定をするとともに、「上半身部品連結構造」について、「腰部本体」との関係、その配置の向き、及び、その備えられている位置についての限定をし、更に「下半身連結部材」と「上半身部品連結構造」の連結の構成についての限定をすること。 (カ)訂正事項1-(6) 「前記上半身部品と前記下半身部品は、 軟質製本体下端の開ロと腰部本体の開放部位にそれぞれ位置している前記棹部と前記差込み穴との上下方向の差込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結されている」 という事項を付加することにより、「上半身部品」と「下半身部品」の連結の構成についての限定をすること。 以上を総合すると、訂正事項1-(1)ないし訂正事項1-(6)は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明又はその両方のいずれかを目的とするものであるから、訂正事項1による現請求項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当すると認められる。 イ 新規事項の有無について 次に、訂正事項1による訂正が、本件特許の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであるかの点について検討する。 (ア)訂正事項1-(1)について 現明細書の段落【0001】の「本発明は、上半身部品と下半身部品とが揺動可能に連結され、かつ分離・組み立て可能な可動人形用胴体の新規構造に関する。」との記載、段落【0013】の「上記下半身連結部材53は、棹部53aの一端に摺動ボール53bを一体形成し、その摺動ボール53bを前後片50,51の下端内面に形成した凹部50b,51bで摺動自在に保持すると共に、下半身部品1の腰部2に備えられる上半身部品連結構造19の連結部20に、前記棹部53aを差込嵌合して揺動可能、かつ着脱可能に連結される。」との記載及び段落【0025】の「また、分解する場合には、まず、腰部2の連結部20の差込み穴21から、上半身部品40の棹部53aを単に引き抜くだけで良い。これにより、上半身部品40が腰部2から簡単に分離される。」との記載並びに本件特許の願書に添付した図面(以下、単に「図面」という。)の【図1】ないし【図14】から、訂正事項1-(1)に係る技術事項が現明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることは、当業者には明らかである。 (イ)訂正事項1-(2)について 現明細書の段落【0006】の「また、第2の発明は、第1の発明において、上半身部品は、アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品であることを特徴とする可動人形用胴体としたことである。」との記載、段落【0010】の「上半身部品40は、上端と下端そして左右の腕部連結部位に夫々開口42,43,44を有してなる中空状の上半身部品本体41と、該本体41内に嵌め込み状に内装される芯材48と、上記開口44を介して芯材48と連結される左右の腕部36と、開口42を介して芯材48と連結される首部38を備えて構成されている。…(中略)…上記上半身部品本体41を構成する軟質材は、芯材48の揺動作動によって変形可能な程度に軟質であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂などの軟質合成樹脂材でスラッシュ成形等したものが代表例として挙げられる。なお、上記本体41の軟質材は、塩化ビニル樹脂などの軟質合成樹脂材に限定されず、他の軟質合成樹脂材であってもよく、また軟質ゴム材などから一体成形されるものであってもよい。…(中略)…本実施形態では本体41の前面(胸部45)位置には極端に大きい乳房部47を一体成形している。なお、本実施形態では、上半身本体41は、胸部45と腹部46とが一体成形された一体物である。」との記載及び段落【0011】の「上半身部品本体41の下端に設けた開口43は、」との記載から、訂正事項1-(2)に係る技術事項が現明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることは、当業者には明らかである。 (ウ)訂正事項1-(3)について、 現明細書の段落【0010】の「該本体41内に嵌め込み状に内装される芯材48」との記載、段落【0012】の「芯材48は、少なくとも上下方向で分割されると共に揺動可能に連結された硬質材からなる第一芯材49と第二芯材54からなる。芯材48は、夫々の構成部品が、ABS樹脂などの硬質合成樹脂材からなるものとするが、特に限定解釈はされない。なお、後述する芯材間連結部材52・下半身連結部材53・腕部連結部材57あるいは首部38の連結用摺動ボール38aにあっては、摺動頻度が高いことから磨耗し難い材質を採用することも良い。本実施形態では、芯材48の一例を示しているにすぎず、これに何等限定解釈されるものではない。」との記載及び段落【0013】の「第一芯材49は、上半身部品本体41の腹部46と同程度の長さで、かつ腹部46よりも僅かに小形(薄幅・薄肉)に形成され、二枚の前後片50,51と該前後片50,51間に一端を摺動自在に連結した芯材間連結部材52と、下半身連結部材53を備える。…(中略)…上記下半身連結部材53は、棹部53aの一端に摺動ボール53bを一体形成し、その摺動ボール53bを前後片50,51の下端内面に形成した凹部50b,51bで摺動自在に保持すると共に、下半身部品1の腰部2に備えられる上半身部品連結構造19の連結部20に、前記棹部53aを差込嵌合して揺動可能、かつ着脱可能に連結される。」との記載並びに図面の【図4】から、訂正事項1-(3)に係る技術事項が現明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることは、当業者には明らかである。 (エ)訂正事項1-(4)について 上半身部品連結構造が、下半身連結部材と対向し、腰部本体の開放部位に位置して備えられていることは、図面の【図2】ないし【図7】から当業者に自明な事項であるから、訂正事項1-(4)に係る技術事項が現明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることは、当業者には明らかである。 (オ)訂正事項1-(5)について 現明細書の段落【0017】の「次に、上記上半身部品40を連結する下半身部品1について図面を参照して説明する。下半身部品1は、腰部2と左右の脚部24から構成されている。」、「 腰部2は、上半身部品連結空間3と左右の脚部連結空間4,4とを備えて人間の腰部外表面を忠実に表現すべく、従来のような二つ割構成ではなく一体成形され、左右の脚部24,24の付け根位置における股間連結部材32の係止片32a,32aを着脱・回動可能に連結する脚部連結構造5と、上半身部品40を着脱可能に連結する上半身部品連結構造19を有している。」及び「 このように一体成形されるため、腰部2には従来のような合わせ面に生じていた線(図20に示すような接合線800)がなく、また臀部2bにはネジ穴(図21に示すようなネジ穴900,ネジ901)などもなく、外観上の美観向上・リアルさ向上を図り、より人間の腰部外表面(肌面)を忠実に表現し得る。これによれば、上述した上半身部品40の構造と相俟って、特に女性を模写した可動人形用胴体における人間的肌感のリアルさが極めて向上する。」との記載、段落【0023】の「 上半身部品連結構造19は、上述した押え部材10の上面が兼ねている。すなわち、押え部材本体11の上面略中心に立設した連結部20を介して上半身部品40を連結している。」、「連結部20は、例えば本実施形態の如く、上面を開放し、差込み穴21を備えた円筒状に構成され、例えば上半身部品40の下部から突出している下半身連結部材53の棹部53aを、上記差込み穴21に着脱自在に差込み連結する。」及び「なお、本実施形態では、上半身部品40と腰部2との継手部分にボールジョイント構成とした下半身連結部材53を使用しているため、上記連結部20の差込み穴21を断面角穴状とした場合には、この棹部53a外形も角柱状にすることが可能で、上半身部品40と腰部分2とが着脱自在な継手構造を有していれば、棹部53aと差込み穴21との関係は任意に設計変更可能である。但し、容易に抜け落ちないように嵌合されているものとする。」との記載、段落【0024】の「そして次に、上述の通り固着された押え部材10の連結部20の差込み穴21に、上半身部品40の下半身連結部材53の棹部53aを差込み連結する。これにより、上半身部品40の下側は、腰部2の内方に挿入された状態で腰部2に連結されるため、外観上で上半身部品40と腰部2とが分離せず一体感を醸し出す。」との記載、段落【0025】の「また、分解する場合には、まず、腰部2の連結部20の差込み穴21から、上半身部品40の棹部53aを単に引き抜くだけで良い。これにより、上半身部品40が腰部2から簡単に分離される。」及び「次に、上半身部品40を分離した腰部2の上半身部品連結空間3には、押え部材10が現れ、」との記載並びに段落【0026】の「このように、本実施形態によれば、腰部本体2aを一体成形し、従来のような上半身部品連結空間内に位置していたネジ止め構成部分(図21に示す符号902部分)が存在しないため、そして、押え部材10の上面に立設した連結部20を介して上半身部品40の下半身連結部材53の棹部53aを、着脱自在に差込み連結する構成としたため、上半身部品連結空間3が広く確保できる。」との記載並びに図面の【図1】、【図2】及び【図7】ないし【図14】から、訂正事項1-(5)に係る技術事項が現明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることは、当業者には明らかである。 (カ)訂正事項1-(6)について 現明細書の段落【0024】の「そして次に、上述の通り固着された押え部材10の連結部20の差込み穴21に、上半身部品40の下半身連結部材53の棹部53aを差込み連結する。これにより、上半身部品40の下側は、腰部2の内方に挿入された状態で腰部2に連結されるため、外観上で上半身部品40と腰部2とが分離せず一体感を醸し出す。」との記載及び段落【0025】の「また、分解する場合には、まず、腰部2の連結部20の差込み穴21から、上半身部品40の棹部53aを単に引き抜くだけで良い。これにより、上半身部品40が腰部2から簡単に分離される。」との記載並びに図面の【図1】ないし【図14】から、訂正事項1-(6)に係る技術事項が現明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることは、当業者には明らかである。 (キ)新規事項の有無についての小括 以上検討のとおり、訂正事項1を構成する上記訂正事項1-(1)ないし訂正事項1-(6)の技術事項は、それぞれ現明細書又は図面の記載に基づいて当業者に明らかな事項の範囲内で行ったものと認められることから、訂正事項1による現特許請求の範囲の訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであると認められる。 ウ 訂正事項1についての小括 以上検討のとおり、訂正事項1による現特許請求の範囲の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項の規定に適合すると認められる。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、現請求項2における「上半身部品は、」を「軟質製本体は、」と訂正することにより、「上半身部品」のうちの「軟質製本体」以外の部材(例えば、「芯材」)が「アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品である」ものを除外するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、現明細書の段落【0010】の「上半身部品40は、上端と下端そして左右の腕部連結部位に夫々開口42,43,44を有してなる中空状の上半身部品本体41と、該本体41内に嵌め込み状に内装される芯材48と、上記開口44を介して芯材48と連結される左右の腕部36と、開口42を介して芯材48と連結される首部38を備えて構成されている。…(中略)…上記上半身部品本体41を構成する軟質材は、芯材48の揺動作動によって変形可能な程度に軟質であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂などの軟質合成樹脂材でスラッシュ成形等したものが代表例として挙げられる。なお、上記本体41の軟質材は、塩化ビニル樹脂などの軟質合成樹脂材に限定されず、他の軟質合成樹脂材であってもよく、また軟質ゴム材などから一体成形されるものであってもよい。…(中略)…本実施形態では本体41の前面(胸部45)位置には極端に大きい乳房部47を一体成形している。なお、本実施形態では、上半身本体41は、胸部45と腹部46とが一体成形された一体物である。」との記載を参酌することにより、訂正事項2に係る技術事項が、本件特許の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることは、当業者には明らかである。 したがって、訂正事項2による現特許請求の範囲の訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項の規定に適合すると認められる。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1及び訂正事項2によって現請求項1及び現請求項2の記載をそれぞれ訂正請求項1及び訂正請求項2と訂正することと整合するように現明細書の段落【0006】の記載を訂正することを目的とするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当すると認められる。また、訂正事項1及び訂正事項2と同様に、訂正事項3による現明細書の訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであると認められる。 したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項の規定に適合すると認められる。 2 特許請求の範囲の拡張・変更について 上記「1 訂正の目的及び新規事項の有無について」において検討したとおり、訂正事項1及び訂正事項2による現特許請求の範囲の訂正は、特許請求の範囲の記載を明りょうとし、また、発明特定事項を限定して特許請求の範囲を減縮するものであって、本件特許の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項から自明の範囲内においてしたものであることから、これらの訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。そして、訂正事項3による現明細書の訂正は、訂正事項1及び訂正事項2による現特許請求の範囲の訂正と整合するためのものである。そうすると、訂正事項1ないし訂正事項3による訂正はいずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第4項の規定に適合すると認められる。 3 独立特許要件について 訂正事項1による訂正により、現請求項1及び現請求項1を引用する現請求項2に係る発明は特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされているから、訂正請求項1及び訂正請求項2に記載されている事項により特定される発明(以下、それぞれ「訂正発明1」及び「訂正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかの点について検討する。 関連無効審判においては、現請求項1及び現請求項2に係る発明は、関連無効審判事件において検証された検甲第1号証の2の人形に係る発明(以下、「無効審決引用発明」という。)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると認定されている。そこで、関連無効審判事件の「第1回口頭審理及び証拠調べ調書」を参酌すると、訂正発明1及び訂正発明2の備える発明特定事項、すなわち、少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に、前記上半身部品と下半身部品とが、揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結される可動人形用胴体において、とりわけ「前記下半身部品は、軟質製本体下端の開口と対向する上端を開放し、外表面にネジ穴や接合線を有しない一体成形された腰部本体と、前記腰部本体内に備えられ、下半身連結部材を差し込み連結可能な上半身部品連結構造とを備え」、「前記下半身連結部材と前記上半身部品連結構造は、円柱状の棹部と、該棹部を嵌合し、かつ上下方向で差込み連結かつ引き抜き分離可能な円筒状の差込み穴とによって構成され、前記上半身部品と前記下半身部品は、軟質製本体下端の開ロと腰部本体の開放部位にそれぞれ位置している前記棹部と前記差込み穴との上下方向の差込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結されている」という技術事項は、無効審決引用発明が備えているとは認められない。また、関連無効審判事件におけるその他の資料(無効審決引用発明に関する資料以外の資料)を参酌しても、当該技術事項は、周知技術又は技術常識であると認めることができないばかりでなく、いわゆる公知公用発明であるとも、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明となっているとも認めることができない。したがって、訂正発明1及び訂正発明2が無効審決引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認めることはできない。そして、訂正発明1及び訂正発明2について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見することはできない。 以上検討のとおりであるから、訂正請求項1及び訂正請求項2に係る各発明は、特許法第126条第5項に規定する独立特許要件を満たすものであると認められる。 第4 結び 以上検討のとおり、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し同項の規定に適合するものであり、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 可動人形用胴体 【技術分野】 【0001】 本発明は、上半身部品と下半身部品とが揺動可能に連結され、かつ分離・組み立て可能な可動人形用胴体の新規構造に関する。 なお、本明細書において、「上半身部品」とは、腰より上の部分をいい、「下半身部品」とは腰から下の部分(腰部含む)をいうものとする。 【背景技術】 【0002】 昨今の人形業界において、特にフィギュアと称される人間の身体(裸体)形態を忠実に模写した構成を有する人形にあっては、脚部や腰部などの各部位の人間的な動きが表現できる構成とすることは勿論のこと、外表面(肌面)の身体的リアルさも要求されているのが現実である。 すなわち、より人間の身体的な特徴、例えば胸部又は臀部分の肌感なども人間の胸部や臀部分と変わらないものとしたいと欲しているものである。これは、例えば、特に水着を着用させたり、あるいは衣裳などを着替えさせたりする度に、胸部や臀部分などの肌を露出させる度合いの高い女性を模写したフィギュアにあっては極めて重要であり、需要者の要求が高く、かつ当業者の追求する要素でもある。 【0003】 従来の可動人形用胴体は、前後に二つ割された腰部分片201,202が採用され、該二つ割された前後の腰部分片201,202を合わせてネジ止め固着する際に、上半身部品100側の係止片(図示省略)と左右の脚部分側の係止片(図示省略)を、両腰部分片201,202の合わせ面における係止箇所にて回動可能に連結しているものが知られていた(図20、図21)。 従って、このように二つ割された腰部分片201,202をネジ止めして上半身部品100、下半身部品200、左右の脚部分を分解可能に固着するものであったため、固着した際に必然的に生じる合わせ目の線(接合線ともいう)800(図20、図21)が下半身部品200の肌外表面に露呈しており、外観上の美観・リアルさに欠けていた。さらに、ネジ穴900およびネジ901(図21)が需要者の視覚に入るため、フィギュア全体としての外観上の美観を損ね、リアルさは到底得られていなかった。 そこで本発明者は、このような上半身部品と下半身部品が分離組み立て可能な可動人形において、下半身部品の肌表面から接合線800、ネジ穴900、ネジ901などを無くし、この種の人形の外観的リアルさを追求・提案するため先に出願している(例えば特許文献1を参照。)。 【特許文献1】特願2001-106020号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 次に本発明者は、未だに残る下記課題を達成するため本願新規発明に至ったものである。 すなわち、人間の身体が各人によって様々であるように、このような可動人形用胴体を使用したフィギュアにあっても、様々な身体形状、特に女性を模写したフィギュアにあっては胸の形状・大きさが様々である。特に、胸(乳房部)が極端に大きい形態が昨今需要者から要求されている。 また、これはフィギュアに限らず、美術デッサン用のモデルとして利用される可動人形用胴体であっても同様である。 従来、この種の可動人形用胴体は、図19に示すように、ABS樹脂などの硬質合成樹脂から上半身部品100と下半身部品200が別体若しくは一体成形されているものが一般的である。 しかし、図19に示すように乳房部300が極端に大きい構成とした可動人形用胴体の場合、乳房部300のアンダーバスト301位置と腹部400との接点(図19に示すX部分)が鋭角になるため、このような硬質材で成形する場合、型抜きが不可能であった。そこで従来は、ゴム型に樹脂を流し込んで成形し、成型後ゴム型を伸張せしめて離型する、いわゆる流し込み成形を採用することによりこの種の形態を得ていたが、この製法によることは、原料の注入から離型までの時間が長く掛かりコストが高くなるという課題を抱えていた。 また、フィギュア用若しくは美術デッサン用の可動人形用胴体では、上半身を右方向や左方向などに捩じったポーズをとることが多々在る。 従来のようにABS樹脂などの硬質材から上半身部品100を成形する場合では、胸部分500と腹部分400(若しくは腰部分600)を別体として分割成形したものでないと上述のように上半身を捩じった形態を表現することはできない。 しかし、このように上半身を複数の部分に分割してなるものでは、各連結部位700が外観から目視され、外観的リアルさが低く、外表面(肌面)の身体的リアルさに欠けていた。 また、このように硬質材からなるものでは、上半身を捩じった表現を採ったとしても、単に分割部位(連結部位)700で捩じり表現をしているにすぎず、実際の人間が上半身を捩じった時の肌表情は再現し得なかった。すなわち、実際の人間が上半身を捩じった場合、皮膚のしわ、たるみ、筋肉などの移動が肌表面に現れるものであるが、従来技術では到底成し得るものではない。 このような肌の細かい動き・表現は、人間により近い肌表面を求めるフィギュア需要者からの要望も高く、また特に美術用デッサンで使用される可動人形用胴体で望まれている現状がある。すなわち、実物の裸体女性を描こうとする場合、そのためのモデルとなる女性を探さなければならず、モデル探しが簡単にいかないばかりか面倒であると共に、モデルに支払うコストも掛かるため、上述のような可動人形用胴体の提供が望まれていたものである。 【0005】 本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結されてなる可動人形用胴体において、可能な限り肌表面のリアルさを表現しつつ、人間的なリアルな動き・肌表情が表現でき、かつ成形容易でコストが安価である一体成形された上半身部品を有する分解組み立て可能な可動人形用胴体を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記目的を達成するために本発明の第1の発明は、少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に、 前記上半身部品と下半身部品とが、揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結される可動人形用胴体であって、 前記上半身部品は、スラッシュ成形により接合線なく一体成形され、かつ下端に開口を設けた塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と、 該軟質製本体内に嵌入して内装される硬質合成樹脂製の芯材とで構成され、 前記芯材は、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を備え、 前記下半身連結部材は、下半身部品の上端と対向し、前記軟質製本体下端の開口に位置して備えられ、 前記下半身部品は、前記軟質製本体下端の開口と対向する上端を開放し、外表面にネジ穴や接合線を有しない一体成形された腰部本体と、 前記腰部本体内に備えられ、前記下半身連結部材を差し込み連結可能な上半身部品連結構造とを備え、 前記上半身部品連結構造は、前記下半身連結部材と対向し、前記腰部本体の開放部位に位置して備えられ、 前記下半身連結部材と前記上半身部品連結構造は、 円柱状の棹部と、該棹部を嵌合し、かつ上下方向で差込み連結かつ引き抜き分離可能な円筒状の差込み穴とによって構成され、 前記上半身部品と前記下半身部品は、 軟質製本体下端の開口と腰部本体の開放部位にそれぞれ位置している前記棹部と前記差込み穴との上下方向の差込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結されていることを特徴とする可動人形用胴体としたことである。 また、第2の発明は、第1の発明において、軟質製本体は、アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品であることを特徴とする可動人形用胴体としたことである。 【発明の効果】 【0007】 本発明は、上述の通り構成したことにより、少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結されてなる可動人形用胴体において、可能な限り肌表面のリアルさを表現しつつ、人間的なリアルな動き・肌表情が表現でき、かつ成形容易でコストが安価である一体成形された上半身部品を有する分解組み立て可能な可動人形用胴体を提供し得た。 【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 以下、本発明の一実施形態を図に基いて説明する。 なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態にすぎず、何等これに限定解釈されるものではない。 【0009】 図1は本発明可動人形用胴体の一実施形態を示す全体正面図、図2は分解正面図、図3は上半身部品を表し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図、図4は上半身部品に組み込まれる芯材を表し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は一部切り欠いて示す正面図、図5は上半身部品を捩じった状態を表し、(a)は右方向に上半身部品を捩じった状態の正面図、(b)は背面図、(c)は該捩じれ状態の時の芯材の状態を示す正面図、図6は、芯材の他の形態を一部省略して示す概略図、図7は、本発明人形用胴体の上半身部品と下半身部品との連結構造の一実施形態を示す分解斜視図、図8乃至図14は腰部の図で、図8は腰部の正面図、図9は腰部の背面図、図10は腰部の平面図、図11は腰部の底面図、図12は腰部の左側面図(右側面図は同一のため省略)、図13は図8のC-C線断面図、図14は図10のD-D線断面図、図15は、本発明において採用する脚構造で、図面は一方の上脚本体を外すと共に、他方の上脚本体の一部を切り欠いた上脚の一実施形態を示す斜視図、図16は一方の上脚本体を外した状態の平面図、図17の(a)は、図16のA-A線断面図、(b)は図16のB-B線断面図、図18は嵌合連結部材の一実施形態を示す斜視図を示す。 図中、40は上半身部品、1は下半身部品の一実施形態を夫々示す。 なお、言うまでもないが、本実施形態では特に極端に大きい胸(乳房部)を持つ人間の女性裸体を模写した上半身部品を示すが、人間の男性裸体を模写した構成であってもよいことは勿論である。 【0010】 上半身部品40は、上端と下端そして左右の腕部連結部位に夫々開口42,43,44を有してなる中空状の上半身部品本体41と、該本体41内に嵌め込み状に内装される芯材48と、上記開口44を介して芯材48と連結される左右の腕部36と、開口42を介して芯材48と連結される首部38を備えて構成されている。なお、左右の腕部36は、手部37を有している。また、顔部(頭部)は本実施形態では省略している。 上記上半身部品本体41を構成する軟質材は、芯材48の揺動作動によって変形可能な程度に軟質であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂などの軟質合成樹脂材でスラッシュ成形等したものが代表例として挙げられる。なお、上記本体41の軟質材は、塩化ビニル樹脂などの軟質合成樹脂材に限定されず、他の軟質合成樹脂材であってもよく、また軟質ゴム材などから一体成形されるものであってもよい。 上半身部品本体41は、特にその全体的なスタイル、すなわち、痩せ型、中肉型、太り型、あるいはウエストのくびれ程度、背中のラインなど種々選択して適用可能であり限定されないが、本実施形態では本体41の前面(胸部45)位置には極端に大きい乳房部47を一体成形している。なお、本実施形態では、上半身本体41は、胸部45と腹部46とが一体成形された一体物である。 【0011】 乳房部47は、そのアンダーバスト47aの位置と腹部46との接点角(図3(b)にてXで示す位置の角度)が鋭角であるものとする。特に接触角の角度は限定されないが、上述の通りアンダーバスト47aの位置と腹部46との接点角Xが鋭角である乳房部47を有する場合、このようにスラッシュ成形できれば成形容易であると共にコストが安価であり特に有効である。 上半身部品本体41の下端に設けた開口43は、後述する芯材48の第一芯材49の外周よりも小径状とする。 なお、首部38は、芯材48と連結される構成でなくともよい。 【0012】 芯材48は、少なくとも上下方向で分割されると共に揺動可能に連結された硬質材からなる第一芯材49と第二芯材54からなる。芯材48は、夫々の構成部品が、ABS樹脂などの硬質合成樹脂材からなるものとするが、特に限定解釈はされない。なお、後述する芯材間連結部材52・下半身連結部材53・腕部連結部材57あるいは首部38の連結用摺動ボール38aにあっては、摺動頻度が高いことから磨耗し難い材質を採用することも良い。本実施形態では、芯材48の一例を示しているにすぎず、これに何等限定解釈されるものではない。 【0013】 第一芯材49は、上半身部品本体41の腹部46と同程度の長さで、かつ腹部46よりも僅かに小形(薄幅・薄肉)に形成され、二枚の前後片50,51と該前後片50,51間に一端を摺動自在に連結した芯材間連結部材52と、下半身連結部材53を備える。この前後片50,51のうち、例えば、前方側の一片50の表面には、腹筋などの形状を形成しておくこととするのもよい。また、前後片50,51は、夫々の合わせ面に嵌合可能な凹凸部を夫々設けた嵌着タイプとしたり、前後片50,51をネジ止したりして着脱可能に構成する。 芯材間連結部材52は、棹部52aの両端に摺動ボール52b,52cを一体形成してなり、一端側の摺動ボール52bを前後片50,51の上端内面に形成した凹部50a,51aで摺動自在に保持すると共に、他端側の摺動ボール52cを、第二芯材54を構成する前後片55,56の下端内面に形成した凹部55a,56aで摺動自在に保持することにより第一芯材49と第二芯材54が夫々揺動可能、かつ着脱可能に連結される。 また、人形を大型にし、上半身部品本体41を長くする必要性が出た場合、第一芯材49と第二芯材54を夫々に合うように大型にしてもよいが、上記芯材間連結部材52の棹部52aの長さを長尺状にすれば適宜適合可能でもある。上記下半身連結部材53は、棹部53aの一端に摺動ボール53bを一体形成し、その摺動ボール53bを前後片50,51の下端内面に形成した凹部50b,51bで摺動自在に保持すると共に、下半身部品1の腰部2に備えられる上半身部品連結構造19の連結部20に、前記棹部53aを差込嵌合して揺動可能、かつ着脱可能に連結される。 【0014】 第二芯材54は、上半身部品本体41の胸部45と同程度の長さで、かつ胸部45よりも僅かに小形(薄幅・薄肉)に形成され、二枚の前後片55,56と該前後片55,56間に一端を摺動自在に連結した腕部連結部材57を備える。この前後片55,56は、夫々の合わせ面に嵌合可能な凹凸部を夫々設けた嵌着タイプとしたり、前後片55,56をネジ止したりして着脱可能に構成する。また、前後片55,56の下端内面には凹部55a,56aを形成し、上述した芯材間連結部材52の一端の摺動ボール52cを摺動自在に保持する。腕部連結部材57は、円板状に形成した腕部連結片57aと、該連結片57aと一体形成されている摺動ボール57bとで構成されている。そして、この摺動ボール57bは、前後片55,56の側面上端寄り内面に備えた凹部55b,56bにより摺動自在に保持する。ちなみに腕部連結片57aは、腕部上端36aと摺動自在に軸着する。この場合の軸着ピン36bとしては、特に限定されないが、合成樹脂材からなり、かつ腕部上端36aと腕部連結片57aの双方に穿設した挿通孔に嵌合する程度の径太さとすることで、摩擦抵抗を高め、腕部36の動きに渋み(適度な抵抗)を付けるものとすると良い。 また、本実施形態では、第二芯材54の上端内面に、首部38の下端に突出した連結用摺動ボール38aを摺動自在かつ揺動可能に保持する凹部55c,56cを備えている。 なお、第一芯材49・第二芯材54共に、前後片に分割形成せずに夫々摺動ボール保持用の凹部を備えて一体的に立体形成したものとし、芯材間連結部材52の両端ボール52b,52cや下半身連結部材53のボール53b、腕部連結部材57のボール57b、あるいは首部38の下端に突出するボール38bを、外方から強制的に押し込み嵌合させる構成としても良い。 また、本実施形態では、上述した通り左右の腕部36が第二芯材54と軸着して一体的に連結されているが、左右の腕部36と第二芯材54とは、後述する他の実施形態のように分離・組み立て可能な構造としてもよい。 なお、芯材48は、第一芯材49と第二芯材54の二分割構成が最も人間的な動きを表現でき好ましいが、その分割構成に限定はされない。多分割すればするほど複雑な動きが得られるが、人間的な動きからは掛け離れていってしまう虞があるためその点を考慮して種々選択するのがよい。 【0015】 そして、第一芯材49と第二芯材54とを連結した状態で上半身部品本体41内に嵌入する。すなわち、軟質材からなる上半身部品本体41の下端開口43を押し広げて第二芯材54・第一芯材49を順に本体41内に嵌入する。この時、第一芯材49・第二芯材54共に、上半身部品本体41の夫々対応する腹部46と胸部45よりも僅かに小形としているため、嵌入時には芯材48の外面と上半身部品本体41の内面とが接触し、あたかも上半身部品本体41が人間で言うところの皮膚を疑似表現することとなる。 上半身部品40の作動を図5を参照して説明する。 従って、上半身部品40を右方向あるいは左方向に捩じった場合、図5(c)のように第一芯材49・第二芯材54が揺動し、その動きに従って疑似皮膚となる上半身部品本体41の第二芯材作動対応箇所周辺・第一芯材49との連結箇所周辺が追随して変形するため、あたかも人間が体を捩じった時に生じる皮膚のしわ・たるみ・筋肉の移動(図中Yで示す)などが上半身部品本体41表面に表現される(図5(a)(b))。このような表現方法は全く新規なものでこの種の可動人形用胴体において極めて人間の肌表面の表現に近いリアルさを表現できた。 【0016】 図6では、芯材48の他の実施形態を示す。 図6は、第一芯材49と連結されている第二芯材54の変更例を示し、本体54aの両側面に同軸上に差込連結部58,58を凹設すると共に、該連結部58はその軸中心に嵌合穴58aを有し、そしてこれに対応する腕部36は、上端36a側に円板状の連結片36dを軸着した揺動自在な連結部36cを備えており、該連結部36cは嵌合棹36eを突設し、この嵌合棹36eを上記第二芯材54の差込連結部58の嵌合穴58aに嵌合する構成とした。 これにより、左右の腕部36と第二芯材54とは、分離・組み立て可能となる。また、差込連結部58は、第二芯材本体54aの両側面から同軸上に突設する構成を採用しても良い。本実施形態では、上述した実施形態のように本体54aを形成しているが、本体54aの形状は何等限定されるものはなく適宜任意の形状を採ることができる。 【0017】 次に、上記上半身部品40を連結する下半身部品1について図面を参照して説明する。下半身部品1は、腰部2と左右の脚部24から構成されている。 図に示す左右の脚部24、左右の腕部36、左右の手部37、首部38は、夫々分解・組み立て可能(図2参照)で、その接合部位にて任意に回動作動と屈曲作動のいずれか若しくは双方が可能である。また、これら各部の材質は特に限定解釈されず任意に選択可能である。なお、本発明において、例えば左右の腕部(手部37を含む)36、首部38などの構造は、特に図示形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜必要に応じて他の形態・構成を採用することが可能である。また、本実施形態では、左右の足部31、首部38などがすべて分解・組み立て可能な構成(図2参照)としているが、これには特に限定されず本発明の範囲内で変更可能である。 腰部2は、上半身部品連結空間3と左右の脚部連結空間4,4とを備えて人間の腰部外表面を忠実に表現すべく、従来のような二つ割構成ではなく一体成形され、左右の脚部24,24の付け根位置における股間連結部材32の係止片32a,32aを着脱・回動可能に連結する脚部連結構造5と、上半身部品40を着脱可能に連結する上半身部品連結構造19を有している。 このように一体成形されるため、腰部2には従来のような合わせ面に生じていた線(図20に示すような接合線800)がなく、また臀部2bにはネジ穴(図21に示すようなネジ穴900,ネジ901)などもなく、外観上の美観向上・リアルさ向上を図り、より人間の腰部外表面(肌面)を忠実に表現し得る。これによれば、上述した上半身部品40の構造と相俟って、特に女性を模写した可動人形用胴体における人間的肌感のリアルさが極めて向上する。 上記上半身部品連結空間3と左右の脚部連結空間4,4とは夫々連通状に形成されている。 腰部2全体の大きさ、形状など任意で、また外表面の形状、例えば臀部2b・下腹部2cの膨らみ等、股2dの切れ込み程度等も任意で、特に図示形状に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で任意に設計変更可能である。 【0018】 脚部連結構造5は、一体成形された腰部本体2aの股間部6内面に設けた下側係止部7と、該下側係止部7と合致して左右の脚部24,24の各係止片32a,32aを回動可能に係止保持する上側係止部12を有する着脱可能な押え部材10とからなり、該下側係止部7と上側係止部12とによって、左右の脚部24,24の付け根位置を着脱可能、かつ回動可能に連結保持する構造である。 【0019】 腰部本体2aに設けられる下側係止部7は、左右の脚部連結空間4,4の間に位置している股間部6の内面に、左右脚部24,24の両係止片32a,32aを相対向して内装可能な単一の凹部8を設けると共に、該凹部8と連通状に股間部6の内面両端縁に設けた半円状の左右係止溝9,9にて構成されている。 【0020】 押え部材10は、押え部材本体11の下面に上側係止部12を備えると共に、該本体11の上面に上半身部品連結構造19を備えている。 押え部材本体11は、例えば腰部本体2aの股間部6内面幅と同幅の略直方体状に形成され、その下面略中央に上側係止部12を設けると共に、該上側係止部12の同一軸上の上面略中央に上半身部品連結構造19を立設する。 押え部材10に設けられる上側係止部12は、腰部本体2aに設けた下側係止部7の凹部8と同一形状の凹部13を有し、該凹部13は下側係止部7上に合わせた際に、下側係止部7の凹部8と共に短尺筒状の係止片内装空間15を形成する。そして上側係止部12は、下側係止部7の左右係止溝9,9と同一形状の半円状の左右係止溝14,14を、該凹部13と連通状に本体11の下面両端縁に設けて構成されている。 【0021】 そして、上述のように構成された押え部材10は、腰部本体2aの股間部6内面上に上方から被せて、該股間部6内面上にネジ止め固着する。図中16はネジ、17は押え部材本体側のネジ穴、18は股間部6内面側のネジ穴を夫々示す。なお、固着構成は一例として上述したネジ止め構成に限らず、着脱可能な周知固着構成が適宜採用可能である。 【0022】 上記下側係止部7と上側係止部12は、本実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。すなわち、係止片内装空間15・係止溝9,14などの構成は本発明の範囲内で他の構成に変更可能である。 また、下側係止部7の凹部8と上側係止部12の凹部13は、夫々左脚部係止片用凹部と右脚部係止片用凹部とを別個独立して凹設するものとしてもよい。また、押え部材10の全体形状も特に限定されず設計変更可能である。 【0023】 上半身部品連結構造19は、上述した押え部材10の上面が兼ねている。すなわち、押え部材本体11の上面略中心に立設した連結部20を介して上半身部品40を連結している。 連結部20は、例えば本実施形態の如く、上面を開放し、差込み穴21を備えた円筒状に構成され、例えば上半身部品40の下部から突出している下半身連結部材53の棹部53aを、上記差込み穴21に着脱自在に差込み連結する。なお、本実施形態では、上半身部品40と腰部2との継手部分にボールジョイント構成とした下半身連結部材53を使用しているため、上記連結部20の差込み穴21を断面角穴状とした場合には、この棹部53a外形も角柱状にすることが可能で、上半身部品40と腰部分2とが着脱自在な継手構造を有していれば、棹部53aと差込み穴21との関係は任意に設計変更可能である。但し、容易に抜け落ちないように嵌合されているものとする。 【0024】 従って、本実施形態における腰部2に左右の脚部24,24と上半身部品40を組み立て一体化する場合、まず、左右の脚部24,24は、各付け根部の股間連結部材32,32に備えられている各係止片32a,32aを、夫々腰部本体2の股間部6内面に設けられた係止溝9,9を介して下側凹部8内に各係止片32a,32aの下側半分を係止保持させる。 そして次に、押え部材10を、上半身部品連結空間19の方向(上方向)から股間部6内面上に被せて上側凹部13内に上記係止片32a,32aの上側半分を内装すると共に、係止溝14,14を上記係止溝9,9と合致させる。 次に、ネジ16を押え部材10の上方から締め付けて、該押え部材10を股間部6内面上に固着する。これにより、左右の脚部24,24は、係止片32a,32aが係止片内装空間15で回動可能に連結保持される。 そして次に、上述の通り固着された押え部材10の連結部20の差込み穴21に、上半身部品40の下半身連結部材53の棹部53aを差込み連結する。これにより、上半身部品40の下側は、腰部2の内方に挿入された状態で腰部2に連結されるため、外観上で上半身部品40と腰部2とが分離せず一体感を醸し出す。 【0025】 また、分解する場合には、まず、腰部2の連結部20の差込み穴21から、上半身部品40の棹部53aを単に引き抜くだけで良い。これにより、上半身部品40が腰部2から簡単に分離される。 次に、上半身部品40を分離した腰部2の上半身部品連結空間3には、押え部材10が現れ、そのネジ16が直視できるため、該押え部材10を腰部2の股間部6内面に固着している該ネジ16を外すことができる。このネジ16を外すことにより、押え部材10は上方に外すことができる。これにより、股間部6の内面にある下側係止部7に内装係止されていた左右脚部24,24の係止片32a,32aを外すことができる。 従って、このように簡単に分解組み立てができるため、他のパーツ(他の上胴部や他の脚部)への組み替え、あるいは洋服などの着せ替え・装備などの取付けなども容易に可能である。 【0026】 このように、本実施形態によれば、腰部本体2aを一体成形し、従来のような上半身部品連結空間内に位置していたネジ止め構成部分(図21に示す符号902部分)が存在しないため、そして、押え部材10の上面に立設した連結部20を介して上半身部品40の下半身連結部材53の棹部53aを、着脱自在に差込み連結する構成としたため、上半身部品連結空間3が広く確保できる。すなわち、上半身部品連結空間3が広く確保できるということは、腰部2の上半身部品連結空間3内に上半身部品40下側が挿入された状態で連結される人形において、該上半身部品40がその空間3内で自由に動き得るスペースが広く取れ、上半身部品40と腰部2との境目の折曲・回動作動がスムーズかつ自由度が広がる。 【0027】 次に、左右の脚部24,24の構造について図面を参照して説明する。 脚部24は、上脚25と下脚30と足部31とから構成され、上脚25の付け根位置が腰部2の股間位置にて任意方向に開脚作動可能、かつ着脱可能に連結されている。脚部24を構成する上脚25、下脚30、足部31の外観形状、すなわち肌感等(例えば筋肉の盛り上がり、女性的なライン、肌表面の色合いなど)は特に限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。本実施形態の脚部構造によれば、上述した上半身部品40の構造および腰部2の構造と相俟って、さらに外観的美観・人間的肌感のリアルさがさらに向上する。 【0028】 上脚25は、脚長さ方向で前後に二分割した2つの上脚本体25a,25bを組合わせて使用し、上脚25内には、嵌合連結部材33を内装すると共に、股間連結部材32を上端側に備えてなり、この上脚構造によれば、人形の上脚外表面、すなわち肌表面にネジおよびネジ穴を露出することなく前後の上脚本体25a,25b同士を分解・組み立て自在に連結し、肌表面のリアルさをできる限り人間に近づけることができる。具体的な構成は次の通りである。 【0029】 一方の上脚本体25aは、その内面長さ方向に並設させて第一の板状部固定用ネジ止め部26、第二の板状部固定用ネジ止め部27を設け、そして上端側(付け根位置側)内面にも同様の構成の股間連結部材用ネジ止め部28を設けている。 第一の板状部固定用ネジ止め部26、第二の板状部固定用ネジ止め部27、および股間連結部材用ネジ止め部28は、上端にネジ挿入口26a,27a,28aを有すると共に、外面に非貫通状なネジ穴26b,27b,28bを設けた所望高さ・所望径の短筒状に突設されている。 なお、この股間連結部材用ネジ止め部28は、第一・第二の板状部固定用ネジ止め部26,27よりも、その上端を高い位置となるように構成されている。詳しくは、後述する股間連結部材32の上脚側連結片32cと、嵌合連結部材33の第二連結部33eを嵌挿した時に、上記ネジ止め部28の上端28cが上記第二連結部33eの上面33e′と面一若しくは第二連結部33eの上面33e′よりも低く位置する程度の高さ寸法で形成されている(図17(a)参照)。 また、第一・第二の板状部固定用ネジ止め部26,27は、嵌合連結部材33の板状部33aができる限り上脚の幅方向中心に配置されるよう第二連結片33eの基端33gから段差をもって形成されるため、その上端26c,27cが板状部33aの裏面33a″を接触支持する高さをもって形成される。なお、本実施形態では、第一・第二の板状部固定用ネジ止め部26,27の位置決め用の溝33hを裏面33a″に設けている。 他方の上脚本体25bは、一方の上脚本体25aと組合わせた時に、上記第一の板状部固定用ネジ止め部26と第二の板状部固定用ネジ止め部27と同軸上に位置する嵌合凹部29,29をその内面に突設してなる。 この嵌合凹部29は、嵌合連結部材33の板状部33aの一面(上脚本体25b対向面)33a′に突設される嵌合突起33cを筒部内径29aに嵌合せしめることで、前後の上脚本体25a,25b同士を着脱可能に連結固定する役目を有している。 なお、本実施形態では、板状部33aの嵌合突起33cを、嵌合凹部29の筒部内径29aに嵌め込む構成としているが、板状部33aの嵌合突起33cの貫通穴33c′に嵌まり込むような突起を他方の上脚本体25b内面に突設する構成としてもよい。 【0030】 股間連結部材32は、腰部2の股間部位に回動可能かつ着脱可能に連結される係止片32aと、上脚本体25aの上端側に連結される上脚側連結片32cとからなり、上脚側連結片32cは、挿通穴32dを設けたフランジ板状に形成されると共に、係止片32aと一体的に備えられている。 本実施形態では、薄肉円板状に形成されると共に、その円板中心位置に挿通穴32dを設けた上脚側連結片32cと、該上脚側連結片32cの外周から、該連結片32cの径方向外方に突設される棹部32bと、該棹部32b先端を軸中心に連結し一体成形されている小径円板状の係止片32aとから構成されている。 そして、この股間連結部材32における上脚側連結片32cの挿通穴32dは、上脚本体25aの股間連結部材用ネジ止め部28の外径を摺接状に嵌め込むことのできる穴径とする。 また、本実施形態では、各上脚本体25a,25bの上端側は、上記上脚側連結片32cの円板形状と同一円弧状に形成すると共に、上脚本体25a,25bを一体的に組み合わせた時に、該上脚側連結片32cの円板形状に合致する切り欠き25c,25cを夫々設けている。上脚側連結片32cは、上脚本体25a,25bの切り欠き25c,25c間に挟まれた時に、該切り欠き25c,25c間で上脚上端中心に位置する。 【0031】 嵌合連結部材33は、一方の上脚本体25a内に一体的に取付けて内装されると共に、他方の上脚本体25bを着脱可能に嵌合連結する。 嵌合連結部材33は、上脚本体25a内に内装固定される板状部33aの一端に下脚30と連結される第一連結部33dを備えると共に、他端には上記股間連結部材32の上脚側連結片32cとネジ止め連結される第二連結部33eを備えてなる。 上記板状部33aは、上脚本体25a内に内装可能な幅・長さの所望板形状に形成し、板長さ方向に複数個のネジ穴33b,33bを設けると共に、該夫々のネジ穴33b上端には、該ネジ穴33bと穴中心軸方向に連通する貫通穴33c′を有した嵌合突起33cを設けている。 第一連結部33dは、下脚30の上端に備えた連結部30aを、任意方向に回動作動可能かつ着脱可能に嵌合する嵌合部33d′を備えてなり、本実施形態によれば嵌合部33d′は、下脚30上端の連結部30aをきつく嵌合可能な内径とした嵌合穴とする。 なお、下脚30は、上述したように第一連結部33dに嵌合可能な連結部を有しているものであれば特にその構造に限定されるものではなく本発明の範囲内で任意形状が選択可能である。 第二連結部33eは、上記板状部33aの上端からフランジ板状に延設されると共に、その先端側に挿通穴33fを設けてなる。フランジ板状の形状は特に限定されず任意であり、挿通穴33fは、上脚本体25aの股間連結部材用ネジ止め部28の外径を摺接状に嵌め込むことのできる穴径とする。すなわち、第二連結部33eは、本実施形態では、股間連結部材32の上脚側連結片32cの摺接面(上面)32c′よりも小さく形成されているが、該摺接面(上面)32c′と同等の大きさとしてもよい。 そして、この第二連結部33eは、上記股間連結部材32の上脚側連結片32cと共に一方の上脚本体25a内面に備えた股間連結部材用ネジ止め部28を介してネジ止め連結されることで肌表面に露出しない渋み調整部39を構成している。 【0032】 また、本実施形態では、嵌合連結部材33に次のような特有構成を採用している。すなわち、この嵌合連結部材33は、板状部33aと、第一連結部33dと、第二連結部33eを一体成形してなる。 そして、第二連結部33eの基端33gから、段差を設けて一段下がった位置に板状部33aを一体的に延設すると共に、該板状部33aの他端が、第一連結部33dの筒円中心33d″若しくはその近傍に連結した構成としている。詳しくは、股間連結部材32の上脚側連結片32c上に第二連結部33eを重ねて配置した時に、板状部33aが、上脚側連結片32cと同一レベル位置に来るように設定される。 【0033】 この技術的構成を採用する背景を説明する。 第二連結部33eは、股間連結部材32における上脚側連結片32cの上面32c′上に摺接状に置かれる。この時、上述した通り上脚側連結片32cは、その組み込み時には上脚本体25a,25b間の中心に配されるため、第二連結部33eは必然的に上脚本体25a,25b間中心よりも、上脚本体25b寄りに位置する。ここで、第二連結部33eの基端33gから同一延長線上に板状部33aを一体的に延設することも可能である。 しかし、このように構成すると、板状部33aが、上脚本体25b寄りに位置することとなる。このような構成となると、板状部33aと上脚本体25bとの間のすきまが狭くなり、嵌合凹部29と嵌合突起33cとの嵌合深さが不十分となる。これでは、嵌合が弱くなる虞があり、この点を解消するには上記すきまを広くして嵌合突起高さと嵌合凹部深さを十分にする必要があるが、このようにすきまを広くするということは上脚そのものを太くしなければならない。上脚を太くするということは、女性の美しい脚線美を求める需要者にとっては大きな問題で、商品価値の低下となる。 また、第二連結部33eと板状部33aを上述通り面一に延設したとすると、該板状部33aの他端側と、第一連結部33dとの連結部位が、筒状に形成されている第一連結部33dの筒円中心33d″より上方となる。第一連結部33dは、上脚の下端開口部25dと同心円状に嵌合部33d′が位置(図16において中心軸を符号Lで示す。)していなければならないため、その配設位置は常に一定である。そのため、板状部33aが上脚本体25b寄りに配されると、必然的に第一連結部33dと板状部33aとの連結部位は、筒円中心33d″より上方となる。この第一連結部33dは、下脚屈曲・回転作動時にかなりの力が掛かる。よって、板状部33aとの連結部位が筒円中心33d″より上方では、このような力に耐え得るのが難しい。 そこで、上述した通り、第二連結部33eの基端33gから、段差を設けて一段下がった位置に板状部33aを一体的に延設した構成とすることで、板状部33aを上脚幅方向中心に位置させることができるため、上脚そのものを太くすることなく嵌合突起高さ・嵌合凹部深さを十分に確保することができる。 また、板状部33aを上脚幅方向中心に位置させることができるため、第一連結部33dの筒円中心33d″又はその近傍に板状部33aを連結することができる。 【0034】 渋み調整部39は、このように上脚本体25a内面の股間連結部材用ネジ止め部28と、股間連結部材32の上脚側連結片32cと、嵌合連結部材33の第二連結部33eと、ネジ35によって構成されている。 すなわち、股間連結部材用ネジ止め部28の外径に、夫々の挿通穴32d,33fを介して上脚側連結片32c、続いて第二連結部33eを順次嵌め込み連結すると共に、その上方から固着部材、本実施形態ではネジ35を締め込んでいく。このネジ35の締込み具合によって、上脚側連結片32cの両摺接面(上面32c′,下面32c″)が、下位の上脚本体25aの切り欠き25cの周縁面25c′と、上位の第二連結部33eの摺接面(下面)33e″により密着度合いが調整される。これにより、上脚側連結片32cが回動する時、その各摺接箇所に摩擦が生じ、この摩擦を調整することで渋みが調整可能となる。また、この渋み調整部39は、上述の構成を採用したことにより、脚部24の外表面(肌表面)24aに露出することがなく、本発明の目的とするところの肌表面のリアルさを追求し得る。 また、足部31は、下脚30と着脱可能であっても一体的に備えられているもので有ってもよく、いずれも本発明の範囲内で任意にその形状・構造が選択できる。 【0035】 ここで上脚構造の組み立て工程の一例を説明する。 まず、股間連結部材32の上脚側連結片32cの挿通穴32dに、一方の上脚本体25aの上端側に突設されている股間連結部材用ネジ止め部28の外径を嵌挿して、係止片32aが上脚本体25aの上端に突状に位置するように股間連結部材32を回動可能に備える。 この時、股間連結部材32の上脚側連結片32cの摺接面(下面)32c″は、上脚本体25aの切り欠き周縁面25c′に接している。 そして、次に、第一の板状部固定用ネジ止め部26と第二の板状部固定用ネジ止め部27に、嵌合連結部材33の各ネジ穴33b,33bを合わせると共に、ネジ穴上方の嵌合突起33c,33cの貫通穴33c′,33c′を介してネジ34,34を締め付ける。 この時、嵌合連結部材33の第二連結部33eは、その挿通穴33fに、上記上脚側連結片32c上に突出している股間連結部材用ネジ止め部28の外径を嵌挿させると共に、摺接面(下面)33e″が上脚側連結片32cの摺接面(上面)32c′に接している。 そして、股間連結部材用ネジ止め部28にネジ35を締め付けて股間連結部材32を上脚本体25aの切り欠き周縁面25c′と第二連結部33eの摺接面33e′によって挟み込むように密着させて連結する。 このネジ35の締め付け程度によって、股間連結部材32の渋みを強弱調整する。 そして、次に他方の上脚本体25bの嵌合凹部29と、嵌合連結部材33の嵌合突起33cとを嵌め合わせることにより、一方の上脚本体25aと他方の上脚本体25bが一体化されて上脚25が形成される。 そして、その後、上脚25の下端側に位置する第一連結部33dに、下脚30を連結する。 このように上脚25が形成されることにより、脚部24の外表面(肌表面)24aには、従来のようなネジやネジ穴がなく、人間のような肌感のリアルさが得られる。また、上脚本体25a,25b同士も自由に分離可能で、従来のように接着や溶着により分離不能となっているものではないため、必要に応じて分解できる。 【図面の簡単な説明】 【0036】 【図1】本発明人形(頭部は省略した)の一実施形態を示す全体正面図。 【図2】分解正面図。 【図3】上半身部品を表し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は平面図を示す。 【図4】上半身部品に組み込まれる芯材を表し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は一部切り欠いて示す正面図を示す。 【図5】上半身部品を捩じった状態を表し、(a)は右方向に上半身部品を捩じった状態の正面図、(b)は背面図、(c)は該捩じれ状態の時の芯材の状態を示す正面図を示す。 【図6】芯材の他の形態を一部切り欠いて示す概略図。 【図7】本発明人形の上半身部品と下半身部品との連結構造の一実施形態を示す分解斜視図。 【図8】腰部の正面図。 【図9】腰部の背面図。 【図10】腰部の平面図。 【図11】腰部の底面図。 【図12】腰部の左側面図。 【図13】図8のC-C線断面図。 【図14】図10のD-D線断面図。 【図15】一方の上脚本体を外すと共に、他方の上脚本体の一部を切り欠いた上脚の一実施形態を示す斜視図。 【図16】一方の上脚本体を外した状態の平面図。 【図17】(a)は図16のA-A線断面図、(b)は図16のB-B線断面図。 【図18】嵌合連結部材の一実施形態を示す斜視図。 【図19】従来技術の一実施形態を部分的に示した斜視図。 【図20】従来技術の一実施形態を示す腰部分側面図。 【図21】従来技術の一実施形態を示す腰部分の横断平面図。 【符号の説明】 【0037】 1:下半身部品 2:腰部 40:上半身部品 45:胸部 46:腹部 47:乳房部 47a:アンダーバスト 48:芯材 49:第一芯材 54:第二芯材 X:アンダーバストと腹部との接触角 Y:皮膚のしわ・たるみ・筋肉の移動 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも上半身部品と下半身部品が別成形されると共に、 前記上半身部品と下半身部品とが、揺動可能、かつ分離・組み立て可能に連結される可動人形用胴体であって、 前記上半身部品は、スラッシュ成形により接合線なく一体成形され、かつ下端に開口を設けた塩化ビニル樹脂製の中空の軟質製本体と、 該軟質製本体内に嵌入して内装される硬質合成樹脂製の芯材とで構成され、 前記芯材は、下半身部品と揺動可能かつ分離・組み立て可能に連結する下半身連結部材を備え、 前記下半身連結部材は、下半身部品の上端と対向し、前記軟質製本体下端の開口に位置して備えられ、 前記下半身部品は、前記軟質製本体下端の開口と対向する上端を開放し、外表面にネジ穴や接合線を有しない一体成形された腰部本体と、 前記腰部本体内に備えられ、前記下半身連結部材を差し込み連結可能な上半身部品連結構造とを備え、 前記上半身部品連結構造は、前記下半身連結部材と対向し、前記腰部本体の開放部位に位置して備えられ、 前記下半身連結部材と前記上半身部品連結構造は、 円柱状の棹部と、該棹部を嵌合し、かつ上下方向で差込み連結かつ引き抜き分離可能な円筒状の差込み穴とによって構成され、 前記上半身部品と前記下半身部品は、 軟質製本体下端の開口と腰部本体の開放部立にそれぞれ位置している前記棹部と前記差込み穴との上下方向の差込み又は引き抜きのみによって着脱自在に連結されていることを特徴とする可動人形用胴体。 【請求項2】 軟質製本体は、アンダーバストの位置と腹部との接触角が鋭角である乳房部を備え、接合線の無い一体成形品であることを特徴とする請求項1に記載の可動人形用胴体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2010-06-21 |
出願番号 | 特願2005-25336(P2005-25336) |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Y
(A63H)
P 1 41・ 854- Y (A63H) P 1 41・ 855- Y (A63H) P 1 41・ 851- Y (A63H) P 1 41・ 856- Y (A63H) P 1 41・ 853- Y (A63H) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 植野 孝郎、松川 直樹 |
特許庁審判長 |
村田 尚英 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 岡田 吉美 今関 雅子 北川 清伸 |
登録日 | 2007-03-09 |
登録番号 | 特許第3926821号(P3926821) |
発明の名称 | 可動人形用胴体 |
代理人 | 久保田 達也 |
代理人 | 岩木 謙二 |
代理人 | 久保田 達也 |
代理人 | 岩木 謙二 |