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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B |
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管理番号 | 1220580 |
審判番号 | 不服2007-22515 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-15 |
確定日 | 2010-07-22 |
事件の表示 | 特願2002- 28528「人工骨材及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月12日出願公開、特開2003-226563〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年2月5日の出願であって、平成18年12月21日付けで拒絶理由が起案され、平成19年3月5日に意見書及び明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、同年7月10日付けで拒絶査定が起案され、同年8月15日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、同年9月13日に明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成22年2月2日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が起案され、回答書の提出がなされなかったものである。 2.平成19年9月13日付けの手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成19年9月13日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正により、平成19年3月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲 「 【請求項1】 ごみ焼却灰と、SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材と、必要に応じて配合されるCaOを含有するカルシウム分調整材とを含む混合物を焼成して得られる人工骨材であって、 該人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、 該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中のCaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満であることを特徴とする人工骨材。 【請求項2】 24時間吸水率が3.5%以下であり、かつ、破砕荷重(BS10%)が10tf以上である請求項1に記載の人工骨材。 【請求項3】 ごみ焼却灰と、SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材と、必要に応じて配合されるCaOを含有するカルシウム分調整材とを混合しかつ粉砕してなる混合物に水を添加して混練し、混練物を得る材料調製工程と、該混練物を骨材に適する形状及び寸法となるように成形して、成形物を得る成形工程と、該成形物を焼成し、人工骨材を得る焼成工程とを含む人工骨材の製造方法であって、 該人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、 該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中、CaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満であるように、該人工骨材を構成する各材料の配合割合を定めることを特徴とする人工骨材の製造方法。 【請求項4】 上記焼成工程における焼成が、1000?1400℃の温度で行なわれる請求項3に記載の人工骨材の製造方法。」が、次のように補正された。 「 【請求項1】 (A)(a)ごみ焼却灰と、(b)石炭灰、下水汚泥、浄水場発生汚泥、建設汚泥、及び廃ガラスからなる群より選ばれる一種以上からなる、SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材と、(c)必要に応じて配合されるCaOを含有するカルシウム分調整材(ただし、該(c)成分は配合してもよいし、配合しなくてもよい。)とを混合しかつ粉砕してなる混合物に水を添加して混練し、混練物を得る材料調製工程と、(B)該混練物を骨材に適する形状及び寸法となるように成形して、成形物を得る成形工程と、(C)該成形物を1150?1300℃の温度で焼成し、24時間吸水率が2.0%以下であり、かつ、破砕荷重(BS10%)が14tf以上である人工骨材を得る焼成工程とを含む人工骨材の製造方法であって、 上記(A)工程において、該人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、かつ、該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中、CaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満であるように、該人工骨材を構成する各材料の配合割合を定めることを特徴とする人工骨材の製造方法。」 (2)そして、本件補正は、平成19年3月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項4において引用する同請求項3における「人工骨材を得る」を「24時間吸水率が2.0%以下であり、かつ、破砕荷重(BS10%)が14tf以上である人工骨材を得る」とする補正事項を含むものである。しかし、前記補正事項が、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当するとするためには、特許請求の範囲を減縮するだけでなく、発明を特定するために必要な事項を限定するものでなければならない[必要ならば、知財高裁 平成19年(行ケ)10055号 審決取消請求事件 平成20年2月27日判決参照]ところ、本件補正前の請求項3には、人工骨材に対して24時間吸水率もしくは破砕荷重(BS10%)の数値範囲を定めるという発明特定事項が記載されておらず、前記補正事項は、発明特定事項を限定するものとすることができないので、同法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当するものではなく、当該補正事項が請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明にも該当せず、同法第17条の2第4項第1号、第3号、および第4号のいずれにも該当しない。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 『知財高裁 平成19年(行ケ)10055号 審決取消請求事件 平成20年2月27日判決 特許法17条の2第4項2号は,「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と定めているから,同号の事項を目的とする補正とは、特許請求の範囲を減縮するだけでなく、発明を特定するために必要な事項を限定するものでなければならないと解される。また、「発明を特定するために必要な事項」とは、特許法「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」とあることから、特許請求の範囲中の事項であって特許を受けようとする発明を特定している事項であると解される。』 そして、仮に、本件補正が平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第17条の2第4項に規定する補正の要件を満たしているとしても、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、6.に後記するとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく、本件補正は、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成19年9月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成19年3月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載されるところのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「ごみ焼却灰と、SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材と、必要に応じて配合されるCaOを含有するカルシウム分調整材とを含む混合物を焼成して得られる人工骨材であって、 該人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、 該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中のCaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満であることを特徴とする人工骨材。」 4.引用発明の認定 (i)拒絶の理由において引用文献1として引用された本願出願前日本国内において頒布された刊行物である特開平8-301641号公報(以下、「引用文献」という。)には次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 都市ごみの焼却主灰または飛灰に、粘結材としてのベントナイトと、組成調合材とを、得られた混合物の焼成後の化学組成がシリカが20?80重量%でアルミナの含有率を15?1重量%となるように混合し、得られた混合物を平均粒径が15μm以下になるように粉砕し、次いで、得られた粉砕物に水を加えて成形して成形体を得、その後、要すれば乾燥した後、この成形体を1050?1250℃で焼成することを特徴とする人工軽量骨材の製造方法。 【請求項2】 組成調合材として珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘土、焼却主灰の内の少なくとも一種を用いることを特徴とする請求項1記載の人工軽量骨材の製造方法。」(【特許請求の範囲】) (イ)「本発明者らは都市ごみ焼却主灰または飛灰の化学組成と組成調合材とを用いて焼成後のシリカとアルミナとの含有率を所定の範囲内となるように調合し、焼成すれば鉛や亜鉛等の重金属類の溶出を極めて少なくできると共に土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った人工軽量骨材が得られることを見い出し、本発明に至ったものである。」(段落【0012】) (ウ)「ところで、表1に主灰と飛灰の組成を示したが、主灰はシリカ、アルミナ共に適正組成内にある場合が多く、主灰のみを原料とする場合には必ずしも組成調合材を必要としない。しかし、飛灰中のシリカ含有量は適正組成以下である場合が多い。この場合は組成調合材を用いることが必要であるが、組成調合材として珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘度等のシリカまたはシリカとアルミナを含む鉱物を用いることが可能であり、主灰を用いることも可能である。」(段落【0019】) (エ)「なお、飛灰を主原料として焼成した骨材は焼成しても加熱中に発泡膨張しないが、これに組成調合材と粘結材とを添加して粉砕し、混合した後造粒して得た乾燥嵩比重1.2?1.9のペレットを加熱焼成すると、塩素化合物や硫黄化合物などが揮散して絶乾比重が1.0?1.9程度の人工軽量骨材となる。」(段落【0026】) (オ)「実験に使用した焼却主灰、焼却飛灰、珪砂、長石、ボーキサイト、ベントナイトの化学組成を表1に示した。これらの原料を表2に示す配合で計量採取してボールミルで粉砕混合した(実施例1?20)。粉砕した原料の粒度分布はレーザー回折式粒度分布計で測定した。得られた粉砕原料に水を加えながらパンペレタイザーで直径5?15mm程度の球状に造粒し乾燥した後、ロータリーキルン(煉瓦内径500mm×長さ4800mm)に供給して焼成した。得られた原料の化学組成と原料の平均粒径と焼成温度とを表3に示した。 焼成した骨材の比重はJIS A 1110に基づいて測定し、圧壊強度は直径約10mmの骨材について測定した。得られた結果を表3に合わせて示した。 比重については約1.0から1.9まで製造条件により異なっているが、何れも天然の骨材の比重約2.2から2.4より軽くコンクリートを軽量化する上で好ましい。市販の人工軽量骨材の圧壊強度が約50kgfに対して実施例7.以外は総てこれと同等かそれ以上となり、構造用コンクリートの骨材として使用しうる強度を有している。」(段落【0028】?【0030】) (カ)「表1、表2」(段落【0032】) (ii)引用発明について 引用文献1の記載事項(イ)には「都市ごみ焼却主灰または飛灰の化学組成と組成調合材とを用いて焼成後のシリカとアルミナとの含有率を所定の範囲内となるように調合し、焼成すれば鉛や亜鉛等の重金属類の溶出を極めて少なくできると共に土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った人工軽量骨材」が記載され、記載事項(ウ)には「主灰はシリカ、アルミナ共に適正組成内にある場合が多く、主灰のみを原料とする場合には必ずしも組成調合材を必要としない。しかし、飛灰中のシリカ含有量は適正組成以下である場合が多い。この場合は組成調合材を用いることが必要であるが、組成調合材として珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘度等のシリカまたはシリカとアルミナを含む鉱物を用いることが可能である」ことが記載され、記載事項(オ)には「実験に使用した焼却主灰、焼却飛灰、珪砂、長石、ボーキサイト、ベントナイトの化学組成を表1に示した。これらの原料を表2に示す配合で計量採取してボールミルで粉砕混合した(実施例1?20)。」と記載され、記載事項(カ)の「表1」は、例えば「飛灰A」は「SiO_(2)10.5重量%」と「Al_(2)O_(3)36.06重量%」と「Fe_(2)O_(3)1.13重量%」と・・・を含むことを示すものであり、「表2」は、例えば実施例13では、「表1」の「飛灰B」70重量%、と「表1」の「珪砂」20重量%と「表1」の「ベントナイト」10重量%とで100重量%となる配合の原料を意味し、当該原料中の化学組成の内、SiO_(2)が32.5%、Al_(2)O_(3)35.4%であることを示す。 そこで、当該原料中のCaOの割合を計算すると、「表1」で、CaOは「飛灰B」に48.8重量%、「珪砂」に2.47重量%、「ベントナイト」に0.55重量%含まれるので、CaOの化学組成を表1の数値でそれぞれの原料配合で計算すると、CaO=飛灰B中のCaO×70%+珪砂中のCaO×20%+ベントナイト中のCaO×10%=48.8/100×0.7+2.47/100×0.2+0.55/100×0.1=34.7%となる。これらを本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると「都市ごみ焼却飛灰とシリカまたはシリカとアルミナを含む鉱物の組成調合材とを用いて調合し、重量%でCaO34.7、SiO_(2)32.5、Al_(2)O_(3)5.4の化学組成で焼成し、土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った人工軽量骨材」の発明(以下、「引用1発明」という。)が引用文献1には記載されていると認められる。 5.対比・判断 本願発明と引用1発明を対比すると、引用1発明の「都市ごみ焼却飛灰」は、本願発明の「ごみ焼却灰」に相当することは明らかであり、引用1発明の「組成調合材」は、機能からみて本願発明の「組成制御材」にほかならない。そして、引用1発明の「シリカまたはシリカとアルミナを含む鉱物」は、本願発明の「SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材」の内で「SiO_(2)又はSiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材」を意味することは明らかである。したがって、引用1発明の「シリカまたはシリカとアルミナを含む鉱物の組成調合材」は、本願発明の「SiO_(2)又はSiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材」に相当する。また、本願発明の「必要に応じて配合されるCaOを含有するカルシウム分調整材」は、引用1発明の「飛灰B」が48.3重量%のCaOを含有するので、必要でない場合に該当し、特定事項としない点が相違点とはならず、引用1発明の「調合し、・・・焼成」することは、当然混合も含むのであるから、引用1発明の「混合物を焼成」することが記載されていると認められる。さらに、引用1発明の「土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った人工軽量骨材」は、「骨材として十分使用できる」のであるから、本願発明の「人工骨材」とみることができる。 してみると、本願発明と引用1発明とは、「ごみ焼却灰と、SiO_(2)又はSiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材とを含む混合物を焼成して得られる人工骨材。」である点で一致し、以下の点で相違する。 本願発明では、「人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、 該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中のCaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満である」のに対して、引用1発明では「重量%でCaO34.7、SiO_(2)32.5、Al_(2)O_(3)5.4の化学組成で焼成」する点(以下、「相違点(a)」という。)。 そこで、上記相違点(a)について検討する。 引用1発明の「重量%でCaO34.7、SiO_(2)32.5、Al_(2)O_(3)5.4の化学組成」については、調合後焼成されることからみて、原料の組成であることは明らかであり、引用文献の記載事項(エ)の「加熱焼成すると、塩素化合物や硫黄化合物などが揮散して絶乾比重が1.0?1.9程度の人工軽量骨材となる。」を参照すれば、原料中の特に飛灰Bに20.86%存在するClは焼成によって揮散を免れ得ないのであって、飛灰Bの減量はClだけでも骨材全体として70×0.2086=0.146に及び、焼成後の化学成分は、Clの揮散分を差し引いた骨材全体分(1-0.146)で除すことにより、それぞれ、重量%でCaO40.6(34.7/0.854)、SiO_(2)38.1(32.5/0.854)、Al_(2)O_(3)6.3(5.4/0.854)となり、これら三成分の人工骨材全体での割合も85.0%となるから、本願発明の上記相違点aについての「人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、」に含まれるということができ、引用発明における人工骨材中の三成分の合計量のそれぞれの含有率については、人工骨材のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中のCaOの含有率を算出すると、CaO/(CaO+SiO_(2)+Al_(2)O_(3))=34.7/(34.7+32.5+5.4)=47.8%で、同様にして、SiO_(2)44.8%、Al_(2)O_(3)7.4%となり「該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中のCaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満である」点も本願発明に含まれるということができ、結局、相違点(a)は、実質的な相違点とはいえないものである。 したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない。 6.本願補正発明の独立特許要件の検討 (i)本件補正により補正された請求項1は、2.(1)に記載されたとおりの「(A)(a)ごみ焼却灰と、(b)石炭灰、下水汚泥、浄水場発生汚泥、建設汚泥、及び廃ガラスからなる群より選ばれる一種以上からなる、SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材と、(c)必要に応じて配合されるCaOを含有するカルシウム分調整材(ただし、該(c)成分は配合してもよいし、配合しなくてもよい。)とを混合しかつ粉砕してなる混合物に水を添加して混練し、混練物を得る材料調製工程と、(B)該混練物を骨材に適する形状及び寸法となるように成形して、成形物を得る成形工程と、(C)該成形物を1150?1300℃の温度で焼成し、24時間吸水率が2.0%以下であり、かつ、破砕荷重(BS10%)が14tf以上である人工骨材を得る焼成工程とを含む人工骨材の製造方法であって、 上記(A)工程において、該人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、かつ、該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中、CaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満であるように、該人工骨材を構成する各材料の配合割合を定めることを特徴とする人工骨材の製造方法。」(以下、「本願補正発明」という。)である。 (ii)引用発明の認定 引用文献1及びその記載事項は4.(i)に記載のとおりである。 引用文献1の記載事項(ア)における請求項2の組成調合材を請求項1に取り込むと「都市ごみの焼却主灰または飛灰に、粘結材としてのベントナイトと、珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘土、焼却主灰の内の少なくとも一種を用いる組成調合材とを、得られた混合物の焼成後の化学組成がシリカが20?80重量%でアルミナの含有率を15?1重量%となるように混合し、得られた混合物を平均粒径が15μm以下になるように粉砕し、次いで、得られた粉砕物に水を加えて成形して成形体を得、その後、要すれば乾燥した後、この成形体を1050?1250℃で焼成することを特徴とする人工軽量骨材の製造方法。」となるので、これを引用1発明に加え、4.(i)と同様に整理することにより「都市ごみの焼却飛灰に、珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘土、焼却主灰の内の少なくとも一種を用いるシリカまたはシリカとアルミナを含む組成調合材とを、混合し、得られた混合物を平均粒径が15μm以下になるように粉砕し、次いで、得られた粉砕物に水を加えて成形して成形体を得、この成形体を1050?1250℃で、重量%でCaO34.7、SiO_(2)32.5、Al_(2)O_(3)5.4の化学組成で焼成する、土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った人工軽量骨材の製造方法。」の発明(以下、「引用1方法発明」という。)が引用文献1には記載されていると認められる。 (iii)対比・判断 本願補正発明と引用1方法発明を対比すると、引用1方法発明の「都市ごみ焼却飛灰」は、本願補正発明の「ごみ焼却灰」に相当することは明らかであり、引用1方法発明の「組成調合材」は、機能からみて本願補正発明の「組成制御材」にほかならない。そして、引用1方法発明の「シリカまたはシリカとアルミナを含む鉱物」は、本願補正発明の「SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材」の内で「SiO_(2)又はSiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材」を意味することは明らかである。したがって、引用1方法発明の「シリカまたはシリカとアルミナを含む鉱物の組成調合材」は、本願補正発明の「SiO_(2)又はSiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材」に相当する。また、本願補正発明の「必要に応じて配合されるCaOを含有するカルシウム分調整材」は、引用1方法発明の「飛灰B」が48.8重量%のCaOを含有するので、必要でない場合に該当し、特定事項としない点が相違点とはならず、引用1方法発明の「得られた混合物を平均粒径が15μm以下になるように粉砕し、次いで、得られた粉砕物に水を加えて成形して成形体を得」ることは、本願補正発明の「混合しかつ粉砕してなる混合物に水を添加して混練し、混練物を得る材料調製工程と、(B)該混練物を骨材に適する形状及び寸法となるように成形して、成形物を得る成形工程」に相当する。引用1方法発明の「この成形体を1050?1250℃で、・・・焼成する」ことは、本願補正発明の「(C)該成形物を1150?1300℃の温度で焼成し」と「成形物を1150?1250℃の温度で焼成」する点で一致する。その上で、5.の対比・判断の相違点aについての検討を踏まえると、引用1方法発明において「重量%でCaO34.7、SiO_(2)32.5、Al_(2)O_(3)5.4の化学組成で焼成する」ことは、本願補正発明において「人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、 該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中のCaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満である」に相当すると認められ、「上記(A)工程において、該人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、かつ、該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中、CaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満であるように、該人工骨材を構成する各材料の配合割合を定めること」は、記載されているに等しい事項と認められる。さらに、引用1発明の「土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った人工軽量骨材」は、「骨材として十分使用できる」のであるから、本願発明の「人工骨材」とみることができる。 してみると、本願補正発明と引用1方法発明とは、「(A)(a)ごみ焼却灰と、(b)SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材とを混合しかつ粉砕してなる混合物に水を添加して混練し、混練物を得る材料調製工程と、(B)該混練物を骨材に適する形状及び寸法となるように成形して、成形物を得る成形工程と、(C)該成形物を1150?1250℃の温度で焼成し、人工骨材を得る焼成工程とを含む人工骨材の製造方法であって、 上記(A)工程において、該人工骨材中のCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量の含有率が80重量%以上であり、かつ、該人工骨材に含まれるCaOとSiO_(2)とAl_(2)O_(3)の合計量中、CaOの含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、SiO_(2)の含有率が38重量%を超え、57重量%未満であり、Al_(2)O_(3)の含有率が5重量%を超え、24重量%未満であるように、該人工骨材を構成する各材料の配合割合を定める人工骨材の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 本願補正発明では、組成制御材について「石炭灰、下水汚泥、浄水場発生汚泥、建設汚泥、及び廃ガラスからなる群より選ばれる一種以上からなる」のに対して、引用1方法発明では、「珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘土、焼却主灰の内の少なくとも一種を用いる」点(以下、「相違点(b)」という。)。 本願補正発明では、人工骨材が「24時間吸水率が2.0%以下であり、かつ、破砕荷重(BS10%)が14tf以上である」のに対して、引用1発明では、「土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った」人工軽量骨材である点(以下、「相違点(c)」という。)。 そこで、上記相違点(b)について検討すると、本願の明細書においても「【0013】SiO_(2)及び/又はAl_(2)O_(3)を含有する組成制御材としては、例えば、珪砂、石英等のSiO_(2)含有する鉱物や、陶石、長石、カオリン、木節粘土等のSiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含有する鉱物や、玄武岩等のAl_(2)O_(3)を含有する鉱物や、石炭灰、下水汚泥、浄水場発生汚泥、建設汚泥等のSiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含有する粉状または泥土状の廃棄物や、石英ガラス等のSiO_(2)含有する廃ガラス等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。中でも、石炭灰、下水汚泥、廃ガラス(石英ガラス)等の廃棄物は、廃棄物の再資源化の促進の観点から、本発明において好ましく用いられる。」と記載されるように、ごみ焼却灰を用いた人工骨材の組成制御材として、本願補正発明、引用1方法発明に記載された材料のいずれもが並記され、僅かに再資源化の促進の観点から「石炭灰、下水汚泥、廃ガラス(石英ガラス)等の廃棄物」を選択したものである。しかしながら、例えば、本願明細書段落【0003】において先行技術として提示され、平成22年2月2日付けで起案された特許法第164条第3項に基づく報告を用いた審尋において引用された特開2001-163648号公報の段落【0014】に「組成制御剤としてはSiO_(2)および/またはAl_(2)O_(3)を含有するものであれば特に限定されず、例えば珪砂、陶石、長石、カオリナイト、木節粘土、工業薬品、廃ガラス、シリカやアルミナを含む鉱物、石炭灰、下水汚泥、建設汚泥などの産業廃棄物などが挙げられる。」と記載されるように、前記の何れもが周知であって、引用1方法発明において焼却主灰を採用しているように、再資源化の促進を指向することは明らかであるから、引用1方法発明における組成制御材として先行技術文献における「石炭灰、下水汚泥、建設汚泥などの産業廃棄物」を選択することは当業者であれば容易に想到しうるというべきであって、それを妨げる事情も存在しない。 また、相違点(c)については、引用1方法発明は、「土木・建築用骨材として十分使用できる強度と化学的品質を持った」人工軽量骨材であることから、高強度と凍結融解抵抗性を有するものと認められる。一方、上記審尋において引用された特開2001-19505号公報(特に段落【0030】及び【0031】には、土木・建築分野に用いられる人工軽量骨材においても24時間吸水率が2.0%以下で、圧壊強度が1000N以上であることが好ましいと記載されているように、これら24時間吸水率及び圧壊強度にそれぞれ、上限及び下限を付すことは、当業者であれば容易に想到し得る事項にすぎないものといえる。また、その際に圧壊強度に換えて他の指標である破砕荷重用いることも当業者であれば任意になし得ることである。 そして、本願明細書の記載を検討しても、本願補正発明により、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとは認められない。 したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (iv)まとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。そうすると、平成19年9月13日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものである。 (3)むすび したがって、平成19年9月13日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 7.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-19 |
結審通知日 | 2010-05-25 |
審決日 | 2010-06-09 |
出願番号 | 特願2002-28528(P2002-28528) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C04B)
P 1 8・ 575- Z (C04B) P 1 8・ 113- Z (C04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永田 史泰 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
中澤 登 吉川 潤 |
発明の名称 | 人工骨材及びその製造方法 |
代理人 | 衡田 直行 |