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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01R
管理番号 1220748
審判番号 無効2009-800048  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-02-23 
確定日 2010-08-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第2769663号発明「工事用防水型ソケットの製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2769663号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2769663号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)についての出願は、平成4年11月18日に特許出願され、平成10年4月17日にその特許権の設定登録がなされたものである。
その後、平成21年2月23日に本件特許に対して特許無効審判が請求され、平成21年5月15日に答弁書が提出され、平成21年6月18日に請求人より陳述要領書が提出され、平成21年7月1日に被請求人より陳述要領書が提出され、平成21年7月8日に第1回口頭審理を行った。

2.本件発明
本件発明は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「電球の口金と係合する金属製のソケット本体に絶縁ケーブルの電線を接続するとともに、前記ソケット本体外周と絶縁ケーブルを耐熱合成樹脂材にて射出成形により一体的に隙間なく密着して被覆して外装体を形成し、前記ソケット本体と電線の接続個所を前記耐熱合成樹脂材にて成形固定したことを特徴とする工事用防水型ソケットの製造方法。」

3.請求人の主張
審判請求人は、本件請求項1に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする趣旨の特許無効審判を請求し、証拠方法として甲第1号証の1(米国特許第2265360号明細書)、甲第1号証の2(米国特許第2265360号明細書の翻訳文)、甲第2号証(特開昭63-211581号公報)、甲第3号証(特開平3-211020号公報)、甲第4号証(特開平2-291689号公報)及び甲第7号証(実願平2-15532号(実開平3-106687号)のマイクロフイルム)を提出し、本件発明は、甲第1号証の1及び甲第2号証に記載された発明並びに周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるという理由により、本件請求項1に係る特許は無効とすべきであると主張している。

4.被請求人の主張
被請求人は、本件発明は甲第1号証の1及び甲第2号証に記載された発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないと主張し、証拠方法として乙第1号証(「プラスチックのはなし」95頁大石不二夫 1997年7月20日発行 日本実業出版社)及び乙第2号証(「日本の高分子化学技術史 補訂版」2005年発行 社団法人高分子学会)を提出し、以下の理由を挙げている。

(1)甲第1号証の1の刺通端子15,23及び甲第2号証の導線27の接続個所には、「ソケット本体と電線の接続個所を前記耐熱合成樹脂材にて成形固定」するという本件発明の基本的構成要件は存在しない。
この相違は甲第1号証の1及び甲第2号証はクリスマスツリーや屋外で使用する装飾用の電球を点灯するための防水ソケットに関するもので、目的、用途を全く異にすることに起因し、本件発明は、「絶縁ケーブル及び接続された電線を、ソケット本体とともに密着して合成樹脂外装体により成形固定したことで、機械的強度が最も弱い接続個所の電線が補強されて電線の断線が完全に防止されるだけでなく、工事用防水型ソケット全体の強度も増大する」との効果を発揮する。
(2)甲第1号証の1は絶縁材料性のシェルは、フェルール、プロング及びケーブル周囲で形成され、上記鞘のすべての部品を安定し誘電アセンブリ中で保持することは明らかにされているが、各部材の周囲に絶縁材料性のシェルが形成されているというにすぎず、本件発明の「前記ソケット本体外周と絶縁ケーブルを耐熱合成樹脂材にて射出成形により一体的に隙間なく密着して被覆して外装体を形成し」なる構成は明らかにされていないから、甲第1号証の1及び甲第2号証に記載の発明では、本件発明の「使用する電球の熱によって工事用防水型ソケットが劣化することなく、また踏みつけられる等乱暴に取扱われても、外装体がソケット本体と分離したり、電線の接続部分が切断したりするという破損の虞れがなく且つ雨水等が浸入する虞れの全くない優れた防水性を維持できるとともに、電線を接続したソケット本体を一度で成形できることから、その製造に際しても多大な手間と時間とコストを要することなく製造効率良く大量生産可能であり、」「更に、絶縁ケーブル及び接続された電線を、ソケット本体とともに密着して合成樹脂外装体により成形固定したことで、機械的強度が最も弱い接続個所の電線が補強されて電線の断線が完全に防止されるだけでなく、工事用防水型ソケット全体の強度も増大する」という効果を発揮しない。
(3)本件発明のソケットは、電球の熱によって劣化することなく乱暴に取扱われても外装体がソケット本体と分離したり、電線の接続部分が切断したりするということのない、夜間工事あるいはトンネル内等の工事現場等において使用される工事用防水型ソケットを提供せんとするのに対して、甲第1号証の1の発明はクリスマスツリー等の装飾用に使用されるもので、その構成を異にする。
(4)甲第3及び4号証を挙げて、電気部品とそれぞれに接続された絶縁ケーブルを耐熱合成樹脂にて射出成形により一体的に隙間なく密着して被覆して外装体を形成することは周知技術であるとするが、工事用防水型ソケットである本件発明の基本的構成と異にする。
(5)射出成形について
甲第4号証の板ばね一体型電源用高圧コネクタ成形分野において、合成樹脂の射出成形は一体性の効果を発揮するものと考えられ、甲第3号証には「インサートの位置決め誤差によって成形樹脂が流入しにくい空隙(ボイド)が生じたり、或いは樹脂モールド層の厚みが局部的に薄い部分が生じると、この部分の耐湿性などが低下するなどの欠陥が生じやすくなる」旨が記載されるが、本件発明とは分野を異にし、本件発明を含むすべての分野においてインサート成形により密着・充填して耐湿性を向上することが周知とはいえない。
強固でかつ優れた防水性は工事用防水ソケットの生命線であり、本件発明の射出成形による構成は画期的な手段であって甲第3及び4号証の他分野の射出成形、インサート成形手段に基づき容易に案出できない。
(6)防水カバーについて
本件発明の従来技術の防水カバーは天然ゴム若しくは天然ゴムにネオプレーンゴムを入れた合成ゴムであり、甲第4号証のシリコン・ゴムとは異なる。
シリコン・ゴムは耐熱効果があるが、強度は極めて弱く本件特許出願時工事用防水ソケットの防水カバーに使用されていない。
そして、甲第4号証は本件発明とその前提となる分野を異にする。
(7)本件発明は、防水カバーを用いないことだけでなく、本件発明の構成により、明細書記載の効果を奏するものである。
甲第1号証の1の発明は安定した状況下で年に数週間程度ツリーに取り付けて用いるもので、本件発明と用途も構成も異なる。
甲第1号証の1の発明は1939年に米国特許庁に出願されたもので、熱硬化性樹脂の射出成形機はその20年後に案出されたので、甲第1号証の1から射出成形を導き出すことは出来ず、「mold」という用語から射出成形は導き出せない。
また、甲第1号証が接続個所を成形固定しているとの根拠はなく、工事用防水型ソケットを含んでいるとの根拠もない。

5.甲各号証
(1)甲第1号証
請求人の提示した、甲第1号証の1には第1?7図とともに以下の事項が記載されている。なお、和訳は甲第1号証の2を参照した。
ア.「This invention relates to lamp sockets or husks and more particularly to sockets or husks for miniature electric light bulbs for Christmas trees, and similar uses though it is noted that in most of the claims the invention is not limited to miniature lamp sockets, and in some claims not even to lamp sockets.
One object of the invention is to provide an improved socket or husk of this kind which can be easily and cheaply made and has no loose parts or exposed electrical connections.
・・・(中略)・・・
Additional objects of the invention are to effect simplicity and efficiency in such lamp sockets and to provide an extremely simple socket of this kind which is safe, ornamental and reliable in use, and economical to manufacture.」(第1頁左欄第1?20行、和訳:本発明は、ランプのソケットないし鞘に関するものであり、より詳細にはクリスマスツリ一等に使用されるソケットないし鞘に関するものであるが、ほとんどの請求項の発明は、小型のランプソケットに限定されるものではなく、いくつかの請求項の発明についてはランプソケットに限定されるものでもない。
本発明の目的の1つは、容易かつ安価に製造でき、ぐらぐらした部品や露出した電気接続部分のない、この種の改良されたソケット又は鞘を提供することである。
・・・(中略)・・・
加えて本発明の目的は、そのようなランプのソケット又は鞘を簡単かつ効率的にし、安全で、装飾的で、信頼して使用で、しかも経済的に製造可能なこの種の極めてシンプルなソケットを提供することにある。)
イ.「The inventive features for the accomplishment of these and other objects are shown herein in connection with miniature electric light bulb husk or socket which briefly stated. includes an inner, electrically conductive threaded metal ferrule, the material at the inner end thereof forming an inner flange and a narrow conductor wire penetrating contact prong preferably intesrally joining the ferrule flange. A dielectric disk seated in the ferrule flange carries through its center a metal rivet having a contact headwithin and out of contact with said ferrule, acontact prong being conductively secured to the other end of the rivet. A pair of insulated conducting cables are provided through the conductive wires of which said prongs are respectively and conductively passed and bent around the outer insulated walls of said cables adjacent to said disc and ferrule. A shell of insulating material is molded around the ferrule. prongs and cables and holds all parts of the husk in firm dielectric assembly.」(第1頁左欄第29?50行、和訳:これらや他の目的の達成のための独創的な特徴は、小型の電球ソケットないし鞘に関連するものとして開示されるものであって、内部の導電性を有する螺子が形成された金属製の環、内部端にあって、好ましくは環のフランジに完全に接合するように突き刺す刺通端子を構成する内部のフランジ及び細い導線を構成する部材である。環のフランジに固定された絶縁円板は、その中央に前記環との接触の範囲内及び外にある接触頭部を有する金属製のリベットを貫通させており、刺通端子は、リベットの他端に導電的に固定されている。
絶縁された1対の導電ケーブルには、前記刺通端子がそれぞれ導電的に貫通し、前記円板及び環に近接した前記ケーブルの外側の絶縁された壁の周りに曲げられた導線が通されている。
絶縁材料の被覆は、フランジ、刺通端子、及びケーブルの周囲に成形されており、堅固な絶縁部品として鞘のすべての部品を保持している。」
ウ.「My improved electric-light-bulb husk includes an internally threaded ferrule 10 having a flared open outer end 11 and adapted to receive the threaded end of an electric light bulb. The ferrule material at the inner end of the ferrule is inwardly turned to form a flange 12 (Fig.4), and is cut and turned to form a downwardly depending narrow contact prong 15 joining the edge of the flange and extended away from the flange in part substantially perpendicular to the plane thereof.
A disk 16 of dielectric material is seated in the ferrule on said flange 12, the adjacent inwardly pressed portion 17 0f the ferrule forming a seat for holding the disk in place. A metal rivet 20 in a central opening of the disk is provided with a lamp-contact-engaging head 21 within the ferrule, and a rivet flange 22 at the other end of the rivet under which is engaged a contact strip 23 having a perforate end portion 24 received on said rivet and held by the rivet flange 22 flat against said dielectric disk. said strip forming a contact prong extended in part substantially perpendicularly away from said disk.
A pair of insulated conducting cables 25 are disposed across the husk near said disk. Said prongs 15 and 23 (Fig.7) are respectively passed diametrically through the insulation 26 and cable strands 27 0f these cables, the end portions 29 0f the prongs being sharpened as at 30 for penetrating the cable, bent as at 29 around the insulation of the cables to hold the cables and prongs together, the cables being near but spaced from said disk 16 and flange 12 substantially parallel to a diameter of the disk.
A shell 33 for said ferrule comprises molded insulating plastic material, such as Bakelite or the like, molded around the ferrule, prongs and adjacent portion of the insulation of the cables, and forms a cylindrical body countersunk as at 34 at said flared end 11 , and provided with fixture-receiving threads 35 at its intermediate parts.
・・・(中略)・・・
From the above, it will be seen that I have provided a good looking, safe, reliable, very rugged and very inexpensive electric light socket particularly suitable for Christmas trees, but also suitable for other purposes and large bulbs.」(第1頁右欄第12行?第2頁左欄第7行、和訳:私の改良された電球用の鞘は、拡径した開口縁部11を有し、電球の螺子が形成された端部を受けるようにされた、内面に螺子が形成された環10を含む。環の内端における環部材は、内方に曲がってフランジ12を構成し(図4)、そして、切断され曲げられることにより、フランジの端に接合し、水平に対してほぼ垂直にフランジから離れて延びる、下向きの細い刺通端子15を構成する。
絶縁体からなる円板16は、近接する内側に押された環の部分17が、所定箇所に円板を保持するための台座を構成することにより、前記フランジ12上において環の中に固定される。円板の中央開口部における金属製のリベット20は、環の内側に、ランプ接触当接頭部21と、リベットの他端におけるリベットのフランジ22を備える。その下側には、前記リベットを受け入れ、かつ前記絶縁円板に平坦に接触するリベットのフランジ22により保持された、孔のあいた端部24を有する接触片23が当接し、前記片は前記円板からほぼ垂直に延びる接触刺通端子を構成する。
一対の絶縁された導電ケーブル25は、前記円板付近において鞘と交差するように配される。前記刺通端子15及び23(図7)は、それぞれこれらのケーブルの絶縁体26及びケーブルより線27を完全に貫通する。刺通端子の端部29はケーブルを突き刺すため30の位置で鋭利になっており、ケーブルと刺通端子をともに保持するために29の位置で絶縁体の周囲に沿って曲げられる。ケーブルは前記円板16付近に間隔を置いて位置し、フランジ12はほぼ円板の直径と平行である。
前記環のための鞘33は、ベークライト等のモールドされた絶縁樹脂材料からなるもので、環、刺通端子及びケーブルの絶縁体の近接部分の周りにモールドされており、前記拡径した端11における34で円錐形に広がった円筒体を構成し、その中間部において取付具を受けるための螺子山35を備えている。
・・・(中略)・・・
上記より、見栄えがよく、安全で、信頼でき、非常に丈夫で安価な、特にクリスマスツリーに好適で、他の目的及び大きな電球にも好適な、電球のソケットを私か提供したことが分かる。)
上記ア.?ウ.の事項及び図面を総合すると、甲第1号証の1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電球の螺子が形成された端部を受けるようにされた内面に螺子が形成された金属製の環10と、環10の内端における環部材は、内方に曲がってフランジ12を構成し、さらに、フランジ12の端から延びる、下向きの細い刺通端子15を構成しており、
上記刺通端子15は絶縁された導電ケーブル25の絶縁体26及びケーブルより線27を完全に貫通し、
環10、フランジ12、刺通端子15及び導電ケーブル25の絶縁体26の近接部分の周りに、ベークライト等の絶縁樹脂材料をモールドして、鞘33とすることで、
フランジ12、刺通端子15及び導電ケーブル25の周囲にモールドされて、堅固な絶縁部品として鞘33のすべての部品を保持し、容易かつ安価に製造でき、ぐらぐらした部品や露出した電気接続部分のない、安全で、信頼でき、非常に丈夫で安価な、特にクリスマスツリーに好適な、電球のソケットの製造方法。」

(2)甲第2号証
請求人の提示した、甲第2号証には第1?3図とともに以下の事項が記載されている。
ア.「屋外で点灯する電灯のためのソケット、例えば装飾用として使用される屋外電灯のためのソケットは、雨水に対する絶縁性と耐水性が要求され、従来よりソケットの受金を絶縁耐水性に優れた合成樹脂で覆うことが行なわれているが、ソケットと電気を流す導線との接続における絶縁耐水性が最も問題となる。」(第2頁左上欄第6?12行)
イ.「絶縁板6は、中央の上面に突起7aを形成し、該上面を貫通して下面に突出した刺通型の接触子7を有する円盤よりなり、ベークライトなどの耐熱性合成樹脂で作られている。」(第3頁右上欄第7?10行)

(3)甲第3号証
請求人の提示した、甲第3号証には第1?4図とともに以下の事項が記載されている。
ア.「この発明は低圧トランスファー成形や反応射出成形機によりインサートとしての電気部品を一体樹脂モールドする際使用する樹脂成形金型の構造に関する。
〔従来の技術〕
電気回路素子や電子回路素子等を含む電気部品は、これらを機械的に保護し、かつ外部環境による吸湿や汚損からも保護するために、電気部品をインサートとして全体を樹脂モールド層で封止する手段がとられる。」(第1頁右下欄第2?11行)
イ.「インサートの位置決め誤差によって成形樹脂が流入しにくい空隙(ボイド)が生じたり、あるいは樹脂モールド層の厚みが局部的に薄い部分が生ずると、この部分の耐湿性などが低下するなどの欠陥が生じやすくなる。」(第2頁左下欄第16行?末行)

(4)甲第4号証
請求人の提示した、甲第4号証には、第1?9図とともに以下の事項が記載されている。
ア.「『産業上の技術分野』
この発明は、板ばね一体型電源用高電圧コネクタの一体成型法、高電圧コネクタ並びにプラグ、更に詳しくはテレビジョン、複写機、ファクシミリ等の高電圧電源用高電圧コネクタの一体成型法、高電圧コネクタ並びにコネクタに関する。
『従来の技術』
従来例えばテレビジョン、複写機、ファクシミリ等の電源用高電圧コネクタに於いて第7?9図の通り、該コネクタ内に湾曲した導電性板ばね2を設ける場合は、一体成型が不可能であり、該コネクタを成型後、該導電性板ばね2を取付け、板ばね挿入取付孔1a内にシリコン・ゴム3を流し、硬化させて封入していた。
『発明が解決しようとする問題点』
前述の通り、コネクタ内に湾曲した導電性板ばねを設ける場合、一々手作業により組込まなければならず、極めて非能率的であり、製品にバラツキが生じ、更にシリコン・ゴムは、高価な上に、硬化するのに時間がかかり、強度が弱く、電線を被覆する力に欠け、気候、温度によっても変化する等の欠陥を有する。」(第1頁右下欄第14行?第2頁左上欄第16行)
イ.「該導電性スリーブ60の上端60bに、抵抗器、バリスタ等の所要電気部品70の一端70aを半田付け等により接続し、その他端に高電圧電線80の一端80aを半田付け等により接続して一体とする。
この様にして一体とした中子50、導電性スリーブ60並びに導電性板ばね40とを、第4,5図に示す通り下部金型10のキャビティ12に挿入し、該キャビテイ12に形成した円筒形サポート14の上端14aに、中子50の円形段部50aの小径円筒部50bを嵌合密着し、該キャビティ12内に溶融合成樹脂が流入しない様にする。
下部金型10の上面に突設した位置決め用ボルト16を、上部金型20の下面の対応箇所に形成したボルト嵌合穴24内に嵌合密着し、上下金型1020とを一体として固定する。
上部金型20のキャビティ22の対応箇所に形成した注入孔26から溶融絶縁性合成樹脂を射出注入する。この溶融絶縁性合成樹脂は、高温(約300℃)、高圧(70kg/1cm^(2))で射出注入する。
該溶融絶縁性合成樹脂が冷却、硬化後脱型すれば、第1、2図に示す板ばね一体型電源用高電圧コネクタ30が得られる。」(第2頁左下欄第12行?右下欄第14行)
ウ.「これ等部品を手でブロック内に一々組込む必要がなくなり、シリコン・ゴムを全く使用しないので、シリコン・ゴムを充填した場合の機械的強度が減じる事がなく、気候、温度、湿度等の影響を受けず、電線の引張り、その他各部の機械的強度が増加し、製造工程が改善、短縮され、板ばね一体型電源用高電圧コネクタが機械的、電気的に安定した製品となり、内部点検も容易となる。」(第3頁左上欄第6?14行)

(5)甲第7号証
請求人の提示した、甲第7号証には、第1?3図とともに以下の事項が記載されている。
ア.「外被が防水性絶縁材料でつくられ、2本の絶縁電線との接触部がそれぞれ防水性絶縁材料で被覆された防水構造のソケットを、前記絶縁電線と共に、防水性絶縁ゴム材で一体に被覆したことを特徴とするソケット防水構造。」(実用新案登録請求の範囲)
イ.「〔産業上の利用分野〕
本考案は、屋外工事現場等において使用される電灯照明用ソケット構造に関する。
〔従来の技術〕
雨水に曝されることの多い道路工事や建築工事等の作業現場または屋外催事場、あるいは多量の水を扱う工場や施設等、その電灯照明に防水対策を必要とする場所は多い。
従来、このような場所の電灯用のソケット構造としては、例えば第3図に示すように、ソケット12の外被13を防水性絶縁樹脂材で形成し、その頭部の突出部13a内で接続用端子に絶縁電線14を接続し、この接続部分及び周辺の金属露出部分を樹脂等防水性の絶縁塗料15で被覆して防水構造としたものが用いられており、このソケット12は、その絶縁電線14の他端を主導線16に接続し、その接続個所をモールド樹脂成型体17で被覆して配線に組み込んでいる。」(明細書第1頁第11行?第2頁第8行)

6.対比・判断
本件発明と引用発明とを対比すると、後者の「電球の螺子」は、その構成・機能からみて、前者の「電球の口金」に相当し、以下同様に、後者の「絶縁された導電ケーブル25」は前者の「絶縁ケーブル」に、後者の「ケーブルより線27」は「絶縁ケーブルの電線」に相当する。
後者の「電球の螺子が形成された端部を受けるようにされた内面に螺子が形成された金属製の環10」は、「環10の内端における環部材は、内方に曲がってフランジ12を構成し、さらに、フランジの端から延びる、下向きの細い刺通端子15を構成しており」、かつ、「上記刺通端子15は絶縁された導電ケーブル25の絶縁体26及びケーブルより線27を完全に貫通」するものであるから、その構成・機能からみて、「環10」、「フランジ12」及び「刺通端子15」は一体であって、前者の「金属製のソケット本体」に相当し、上記刺通端子15と導電ケーブル25の構成は、導電ケーブル25のケーブルより線27を刺通端子15に接続するものであるから、後者も、前者の「金属製のソケット本体に絶縁ケーブルの電線を接続する」と同様の接続態様である。
後者の「ベークライト等の絶縁樹脂材料」と前者の「耐熱合成樹脂材」とは、「合成樹脂材」である点で共通する。
後者の「環10、フランジ12、刺通端子15及び導電ケーブル25の絶縁体26の近接部分の周りに、ベークライト等の絶縁樹脂材料をモールドして、鞘33とすること」及び「フランジ12、刺通端子15及び導電ケーブル25の周囲にモールドされ」るものであることから、前者の「ソケット本体外周と絶縁ケーブルを」「合成樹脂材にて」「成形により」「被覆して外装体を形成」すること及び「前記ソケット本体と電線の接続個所を」「合成樹脂材にて」「成形」することに対応する。
したがって、本件発明と引用発明とは、
「電球の口金と係合する金属製のソケット本体に絶縁ケーブルの電線を接続するとともに、前記ソケット本体外周と絶縁ケーブルを合成樹脂材にて成形により被覆して外装体を形成し、前記ソケット本体と電線の接続個所を前記合成樹脂材にて成形したソケットの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点A:「合成樹脂材」に関して、本件発明が「耐熱合成樹脂材」であるのに対して引用発明は「ベークライト等の絶縁樹脂材料」である点。
相違点B:外装体の形成に関し、本件発明が「ソケット本体外周と絶縁ケーブルを」「合成樹脂材にて射出成形により一体的に隙間なく密着して被覆して外装体を形成し、前記ソケット本体と電線の接続個所を前記」「合成樹脂材にて成形固定した」ものであるのに対して、引用発明は、「環10、フランジ12、刺通端子15及びケーブル25の絶縁体26の近接部分の周りに、ベークライト等の絶縁樹脂材料をモールドして、鞘33とする」とともに「フランジ12、刺通端子15及び導電ケーブル25の周囲にモールドされ」るものの、射出成形ではなく、ソケット本体外周と絶縁ケーブルを一体的に隙間なく密着し、ソケット本体と電線の接続個所を成形固定したものか否か不明である点。
相違点C:ソケットに関し、本件発明が「工事用防水型ソケット」であるのに対して、引用発明は「特にクリスマスツリーに好適な、電球のソケット」である点。

そこで、上記相違点につき検討する。
(1)相違点Aについて
「ベークライト」は、甲第2号証にも示されるように(上記5.(2)イ.参照)、従来、電球のソケットに用いられる、熱硬化性樹脂であって、本件発明と同様の耐熱性を有するものといえる。
そうすると、引用発明の「ベークライト等の絶縁樹脂材料」を耐熱性樹脂材料とすることは、当業者が設計上適宜なし得たこととといわざるを得ない。そしてそのことによる格別の効果もない。
したがって、相違点Aに係る本件発明の構成とすることは、当業者にとって適宜なし得た設計的事項である。

(2)相違点Bについて
ア.射出成形により一体的に隙間なく密着して成形し、接続個所を成形固定して、機械的強度を向上し、容易に製造することについて
引用発明は、射出成形ではないものの、「環10、フランジ12、刺通端子15及びケーブル25の絶縁体26の近接部分の周りに、ベークライト等の絶縁樹脂材料をモールドして、鞘33とする」ものであって、そのことにより、「フランジ、刺通端子、及びケーブルの周囲にモールドされて、堅固な絶縁部品として鞘のすべての部品を保持し、」「容易かつ安価に製造でき、」「ぐらぐらした部品や露出した電気接続部分のない、」「安全で、信頼でき、非常に丈夫で安価な、」「電球のソケット」を製造するものである。
特に、「刺通端子、及びケーブルの周囲にモールドされて、堅固な絶縁部品として鞘のすべての部品を保持」すること、そのことで、「ぐらぐらした部品や露出した電気接続部分のない、」「非常に丈夫」なものとなることを参酌すると、環10の外側とともに、接続個所である刺通端子15及びケーブル25の絶縁体26の近接部分の周りにおいても、絶縁樹脂材料を隙間なく密着してモールドするものといえる。
そして、引用発明はモールドにより鞘33とするものであって、ぐらぐらした部品もないから、これらを一体的にモールドするものともいえる。
また、熱硬化樹脂を含め、射出成形によりモールドすることは、本件出願前、周知である。
さらに、甲第4号証には、高電圧コネクタではあるものの、同じコネクタにおいて、接続部分といえる板ばね挿入取付孔10内をシリコン・ゴム3を充填していたものを、全体を絶縁性合成樹脂を射出成形して、シリコン・ゴムがなく、気候、温度、湿度等の影響を受けない、またシリコン・ゴムの電線の引張りだけでなく、その他各部の機械的強度が増加し、製造工程が改善、短縮されることが示されている。
したがって、引用発明において、刺通端子とケーブルの周囲を含め絶縁樹脂材料をモールドして鞘33として、機械的強度を向上させ、容易かつ安価に製造することを実現するにあたり、本件出願前周知であった射出成形を用いることは、甲第4号証でも同様の目的で射出成形を用いることが示されているように、当業者が格別の困難性を要することなくなし得たことといえ、そうするとき、一体的に隙間なく密着して被覆させることも当業者が通常なす成形方法であるといえる。
イ.防水性を向上することについて
特にクリスマスツリーに用いられるようなの電球のソケットにおいて、その防水は、例えば実願平2-47495号(実開平4-8290号)のマイクロフイルムに示され、また甲第2号証にも装飾用として使用される屋外電灯のソケットは、雨水に対する絶縁性と耐水性が要求されと記載されるように、当業者が通常考慮する筈のことであって、引用発明において、防水性を考慮することは、当業者にとって格別ではない。
そして、高圧コネクタではあるものの、甲第4号証にも、射出成形によって、気候、温度、湿度等の影響を受けないようにするものであって、甲第3号証にも射出成形による防湿が示唆されている。
したがって、上記のように防水性を考慮しつつ引用発明の鞘33をモールドするとき、当業者であれば、当然、隙間なく密着させるものであるといえるから、防水の点から射出成形により一体的に隙間なく密着させて被覆することは、当業者にとって格別の困難性を要することなくなし得たことである。
なお、隙間なく密着させてモールドすることについて、射出成形以外の周知の他のモールドがなし得ないということでもなく、たとえ射出成形により、よりよく密着できるとしても、上記するように当業者が容易になし得たことである。
ウ.まとめ
以上のようであるから、相違点Bに係る本件発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことといえ、そのことによる格別の効果もない。

(3)相違点Cについて
ア.引用発明は「特にクリスマスツリーに好適な、電球のソケット」の製造方法であって、クリスマスツリーに用いられるような電球のソケットが屋外にも用いられ、防水性を考慮するものであることは、上記(2)のイ.で述べたとおりである。そして、クリスマスツリーに限定されるものでないことも、上記5.(1)でも摘示するように、当業者にとって明らかである。
一方、工事用防水型ソケットも、甲第7号証や実願昭60-54428号(実開昭61-171128号)のマイクロフイルム等にも示されるように、当該技術分野において従来周知であり、上記のように引用発明のソケットが防水性を求められていたことも当業者が通常想定し得るものであるから、引用発明の構造・製造方法を上記工事用防水型ソケットに適用しようとすることが、当業者に格別困難であったとはいえない。
そして、上記(2)イ.で述べたように、引用発明のようなモールドにより防水性を向上させることも当業者が容易に想到できたことである。
イ.また、強度の面からみても、上記(2)ア.でも述べたように、引用発明は、環10、フランジ12、刺通端子15及びケーブル25の絶縁体26の近接部分の周りをモールドすることにより、堅固な絶縁部品として鞘のすべての部品を保持し、ぐらぐらした部品や露出した電気接続部分のない、安全で、信頼でき、非常に丈夫なソケットを、容易かつ安価に製造するものであって、電気接続部分を含めて機械的強度を向上するものといえる。
さらに、ゴムを使用しないようにする点からみても、甲第4号証には、上記(2)ア.でも述べたように、耐熱性が優れているシリコン・ゴムを充填した場合に対しても、シリコン・ゴムを全く使用しないことで、気候、温度、湿度等の影響を受けないようにすることが記載されているのであって、上記5.(5)イ.で摘示したように、防水性絶縁樹脂材で形成した外被13のみの、ゴムを有さない、屋外工事現場用の電灯照明用ソケットも従来周知なのであるから、ゴムを用いないで、温度等の影響を防止するようなすことも、当業者が容易に想定できたものである。
そうすると、引用発明を周知の工事用防水型ソケットの製造方法とすることは、当業者が容易に想到し得たものといえ、その効果についても、本件発明の工事用防水型ソケットが、ゴムの防水カバーを用いず、接続個所の電線が補強され、かつソケット全体の強度が増大し、優れた防水性を維持できるとしても、上記したように当業者にとって想定し得た範囲といえ、格別であるとはいえない。
そして、被請求人は、甲第3及び4号証に記載のものは工事用防水型ソケットでなく、本件発明は工事用防水型ソケットにおいて格別の効果があると主張するが、強度、防水性等は工事用に限らず屋外で用いられるソケットにおける共通の課題といえ、本件発明の効果についても上記するように、引用発明や周知の事項から当業者が予測できたものといえるから、本件発明について当業者が容易に発明をすることができないとはいえない。
よって、本件発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

7.むすび
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証の1に記載の発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人がそれを負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-16 
結審通知日 2009-07-21 
審決日 2009-08-03 
出願番号 特願平4-332489
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深沢 正志  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 佐野 遵
清水 富夫
登録日 1998-04-17 
登録番号 特許第2769663号(P2769663)
発明の名称 工事用防水型ソケットの製造方法  
代理人 辻本 希世士  
代理人 辻本 一義  
代理人 田辺 恵  
代理人 森田 拓生  
代理人 田辺 敏郎  
代理人 窪田 雅也  
代理人 上野 康成  
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