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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1221206
審判番号 不服2007-29201  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-26 
確定日 2010-08-05 
事件の表示 特願2002-209343「映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 96136〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯

[1]手続

本願は、平成14年7月18日(優先権主張平成14年7月8日)の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成19年 7月 6日(起案日)
意見書 :平成19年 8月30日
手続補正(明細書の補正) :平成19年 8月30日
拒絶査定 :平成19年 9月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成19年10月26日
手続補正(明細書の補正) :平成19年10月26日
前置審査報告 :平成20年 1月 8日
審尋 :平成22年 1月 6日(起案日)
回答書 :平成22年 3月 2日

[2]査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願の請求項1から請求項12までに係る各発明は、下記の引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
記(引用例)
引用例1:特開昭58-182970号公報
引用例2:実願昭63-65160号(実開平1-169878号)のマイクロフィルム
引用例3:特開平2-305188号公報
引用例4:特開平7-255018号公報
引用例5:特開平9-61562号公報
引用例6:特開平9-23392号公報

なお、平成19年7月6日付け拒絶理由通知書の理由2.において、平成19年8月30日補正前、表示形態を可変制御する対象が「映像信号」であって「入力映像信号」と特定していない請求項1に係る発明については、上記刊行物1?刊行物4が引用され、表示形態を可変制御する対象が「入力映像信号」であることを特定している請求項2ないし請求項5に係る発明については、上記刊行物1?刊行物6が引用されているところ、
平成19年8月30日補正によって、同補正前の請求項1?12は、いずれも、表示形態を可変制御する対象が「入力映像信号」であることを特定するものとなり、実質的に平成19年8月30日補正前の請求項2?5のいずれかに対応するように補正されている。
したがって、拒絶査定は、上記のとおり、同補正後の請求項1?12までに係る各発明は、上記引用例1?引用例6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるという理由でなされたものと認められる。

【第2】補正の却下の決定

平成19年10月26日付けの補正(以下「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成19年10月26日付けの補正を却下する。

《理由》

【第2-1】本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする以下の補正事項をその内容とするものである(下線部は補正箇所)。
請求項1の記載についてのみ補正し、請求項2?12の記載についての補正はない。

請求項1について、
「電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことを特徴とする映像表示装置。」(補正前)を、

「電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことを特徴とする映像表示装置。」(補正後)とする補正。

【第2-2】本件補正の適合性1 補正の範囲(第17条の2第3項)
本件補正は、願書に最初に添付した明細書(段落0027,0028,0034,0039)に記載した事項の範囲内においてする補正である。

【第2-3】本件補正の適合性2 補正の目的(第17条の2第4項)
請求項1についての上記補正事項は、補正前の請求項1に記載のあった特定事項である「制御手段」の制御内容を限定し減縮するものとみることができ、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そして、請求項2?請求項12の記載については補正されておらず、補正の前後を通じて全く同一記載ではあるが、いずれも、直接又は間接に請求項1を引用するものであるから、請求項2?12が特定する事項も、その内容は請求項1についてする上記補正事項により、同じ限定減縮されたものとなる。そして、これら請求項2?12についても、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

【第2-4】本件補正の適合性3 独立特許要件(第17条の2第5項)
そこで、独立特許要件について検討するに、補正後の請求項1及び請求項4に記載される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。
本件補正は、平成18年年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

本件補正後の請求項1及び請求項4に記載される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由の詳細は、以下のとおりである。

《理由:独立特許要件に適合しない理由の詳細》

[1]補正後発明

本件補正後の請求項1から請求項12までに係る発明のうち請求項1に記載された発明(以下「補正後発明1」という。)は、下記のとおりであると認められる。

記(補正後発明1)
電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことを特徴とする映像表示装置。

同じく、本件補正後の請求項1から請求項12までに係る発明のうち請求項4に記載された発明(以下「補正後発明4」という。)は、下記のとおりであると認められる。

記(補正後発明4)
前記制御手段は、入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御することを特徴とする前記請求項1乃至3のいずれかに記載の映像表示装置。

補正後請求項4記載の発明(補正後発明4)は、請求項1?3のいずれかを引用するものであるところ、このうち、請求項1を引用する発明(以下、特に「補正後発明4’」という。)を独立形式で記載すれば、下記のとおりである。補正後発明4(補正後請求項4記載の発明)は、補正後発明4’を含む発明である。

記(補正後発明4’(独立形式))
電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い可変制御する制御手段であって、
入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことを特徴とする映像表示装置。

[2]引用刊行物の記載

(1)特開平2-305188号公報(刊行物1)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平2-305188号公報(上記引用例3に同じ。以下、「刊行物1」という。)には、次に掲げる事項が記載されている。

《特許請求の範囲》
(K1.1)「(1)a)設定時間に達すると自動的に電源がオフする映像機器のタイマー回路において、
b)特定の画像を記憶する画像記憶回路と、
c)電源オフ直前に該特定の画像を読出し、一定時間特定画像信号を出力する画像表示制御回路とを備え、
d)該特定画像信号を通常の映像信号に重畳するか、または特定画像出力時のみ映像信号から該特定画像信号へ切換えて、画像表示器上へ表示する事を特徴とする映像機器のオフタイマー回路。
(2)前記特定の画像は時間経過に伴ない、形、色、大きさあるいは表示位置等の表示内容が変化する事を特徴とする請求項1記載の映像機器のオフタイマー回路。」(特許請求の範囲)

《産業上の利用分野、従来の技術》
(K1.2)「「産業上の利用分野]
本発明は、映像機器のオフタイマー回路に関する。
[従来の技術」
テレビをはじめとする映像機器のオフタイマーは、設定時間に達すると自動的に電源が切れるものである。」(公報1頁右下欄2?8行)

《発明が解決しようとする課題》
(K1.3)「しかし、視聴者が設定時間に達しても視聴を続けている場合、前触れもなく突然電源が切れていたため、不快感を伴っていた。
そこで、本発明はこの様な問題点を解決するもので、その目的とするところは、電源オフ直前に特定の画像を表示させ、予告する事により、おもしろみのあるオフタイマーを提供する事にある。」(公報1頁右下欄10?16行)

《実施例》
(K1.4)「以下、本発明について実施例に基づき詳細に説明する。
第1図は本発明の映像機器のオフタイマー回路のブロック図であり、第2図は第1図の画像表示部6に表示される特定画像の動きを示す表示画像図の一例である。
オフタイマー設定時間直前にタイマー回路1から出力されるスタート信号9がLレベルからHレベルに切換わる。この時、画像表示制御回路4が起動し、画像記憶回路3に記憶された特定の画像を読出し、特定画像信号10を出力する。ここで、映像信号切替回路5はこの特定映像信号10を選択し、画像表示部6へ入力する。従って、電源オフ直前に特定の画像が表示される事になる。この画像は静止画でも良いが、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画にすれば、より演出効果が増大する。
次に、特定画像の表示が終了すると、パワー制御信号7がHレベルからLレベルに切換わり、電源回路2から回路全体に供給されている電源電圧8が0Vとなり、動作停止する。
なお、本発明の実現に際しては、ハードロジック回路で構成しても良いが、キャラクタ表示機能を内蔵したマイクロコンピュータを利用すれば、構成が簡単である。このキャラクタ表示機能は一般的に、形、色、大きさあるいは表示位置の変更が可能であり、動きのある画像が作れる。」(公報2頁左上欄14?右上欄20行)

《発明の効果》
(K1.5)「本発明は以上説明したとおり、オフタイマー動作直前に特定の画像が表示される。従って、オフタイマー動作まで視聴を続けても、突然電源が切れず、予告の画像表示が行われるため、不快感がなく、むしろ演出効果による楽しさが加わった。
また、最近のテレビ等の映像機器はマイクロコンピュータを搭載し、画面上に文字表示を行うものがほとんどであり、ソフトウェアの一部変更のみで何らコストアップする事なく実現出来る。」(公報2頁左下欄2?10行)

(2)特開平9-23392号公報(刊行物2)
同じく原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-23392号公報(上記引用例6に同じ。以下、「刊行物2」という。)には、次に掲げる事項が記載されている。

《発明の属する技術分野、従来の技術、課題》
(K2.1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テレビジョン受像機に係り、特には、電源オン時あるいは電源オフ時においてテレビと視聴者との間に一体感をかもし出すような映像演出を行う技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のテレビジョン受像機においては、電源オン操作を行うと、電源オフ時の受信チャンネルと同じチャンネルの番組が直ちに画面全面(フル画面)に映し出され、また、電源オフ操作を行うと、それまで映し出されていた番組がほぼ瞬間的に消えるというだけのものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来のテレビジョン受像機では、これからテレビを見ようとするときには電源オン操作により放送中の番組が直ちにフル画面に映出されるだけであり、画面が情報の窓口となっているのに、いわゆる挨拶的なものが何ら示されない味気ないものとなっていた。また、番組を見終わって電源オフ操作をしたときは、そのときまで意識を集中させていた画面から離れて次に何らかの用事をしたりあるいは床に就くといったことをするわけであるが、その動作へのとっかかり、勢いづけといったものを何らテレビ側から与えるというようなことはできなかった。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みて創案されたものであって、テレビと視聴者との間にある種の一体感のようなものをもたせるようにして、テレビに対する親しみ感を増すことを目的とする。」

《課題を解決するための手段》
(K2.2)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る請求項1のテレビジョン受像機は、電源オン操作に伴って受信映像を子画面に表示する手段と、電源オン操作に伴う受信映像映出の開始を知らせるメッセージ画面を親画面に表示する手段と、前記子画面表示と親画面表示とを電源オンの初期において所定の短時間実行する手段と、前記メッセージ画面の消去に引き続いて前記子画面をズームアップする手段とを備えたことを特徴としている。
【0006】電源オン操作に伴って、子画面に受信映像が表示されると同時に、これから受信番組の視聴が始まることを示すメッセージ画面が親画面に表示され、かつ、そのような表示状態が短時間続いた後に、メッセージ画面を消去し、受信映像を映出している子画面をズームアップして、通常の受信映像の表示画面(フル画面)とする。視聴開始に当たって、テレビの側から視聴者に、「ようこそ」といったたぐいのメッセージ(語りかけ)があり、続いて受信映像がズームアップして身近に迫ってくる感じがあり、それを視聴者が電源オンとともに視聴するから、従来のテレビジョン受像機では表現されることのなかった、楽しみ・面白みのある映像の演出が行われる。その結果、視聴者はこれからテレビを見ようとしているときにテレビとの間にある種の心理的一体感や期待感のようなものを感じ、テレビに対する親しみが生じる。」

(K2.3)「【0007】本発明に係る請求項2のテレビジョン受像機は、電源オフ操作に伴って受信映像を映出しているフル画面から子画面にズームダウンする手段と、前記ズームダウン後に電源オフ操作に伴う受信映像消去を知らせるメッセージ画面を親画面に所定の短時間表示する手段と、そのメッセージ画面の表示終了後に電源をオフする手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】電源オフ操作に伴って、受信映像をフル画面から子画面にズームダウンすることで視聴者から受信映像が遠ざかっていくという感じがあり、続いて、これで番組視聴を終了しますよといったメッセージ画面が現れるので、実際に視聴が終わるのだという実感を視聴者に与える。これも面白みのある映像演出であり、視聴者は「さあ見終わった」という一種の満足感を覚える。これも従来のテレビジョン受像機ではなかったことであり、テレビとの間で一体感を覚え、テレビがより身近なものに感じられる。」

《発明の実施の形態》
《電源オン時の動作》
(K2.4)「【0019】次に、上記のように構成されたテレビジョン受像機の動作を説明する。
【0020】まず、電源オン時の動作を図2に示す概略的なタイミングチャートに従って説明する。赤外線リモコン装置から送信された電源オン操作信号がリモコン受信部1に受信されると、あるいは操作パネル部2において電源オン操作がなされると、電源オン信号cが出力されて電源制御部3を介して直ちに電源回路4が立ち上げられ、各部が動作可能な状態となる。
・・・(中略)・・・
【0021】・・・(前略)すると、図4(a)に示すように、ピクチャ・イン・ピクチャの状態で表示部19の画面の右上隅に電源オン時の受信映像が初期映像として面積比1/9の子画面31で表示される。これと同時に、オン/オフ制御部5からのオン信号jにより読出制御部17がキャラクタ記憶部14から読み出し動作を開始する。時刻判定部16は時計15から現在時刻を読み込み、朝時間帯か昼時間帯か夜時間帯を判別する。読出制御部17は、まず、時刻判定部16から判別結果の時間帯を読み込み、判別した時間帯に応じてキャラクタ記憶部14からキャラクタの1パターン描画データの読み出しを開始する。これとともに、録音再生部20を制御して、判別した時間帯に応じて録音再生部20から1つの音声メッセージの読み出しを開始する。
【0022】例えば、朝時間帯であれば、描画データとして、図4(a)に示すように、キャラクタ41と文字メッセージ42(「Good Morning Welcome to Amusement TV」)とを親画面30に表示し、同時に、音声メッセージ(「おはよう! やまもとさん」)とスピーカ24から出力する。また、昼時間帯であれば、描画データとして別の動作をするキャラクタと文字メッセージ(「Good Afternoon Welcometo Amusement TV」)とを親画面30に表示し、同時に、音声メッセージ(「こんにちは! やまもとさん」)をスピーカ24から出力する。また、夜時間帯であれば、描画データとしてさらに別の動作をするキャラクタと文字メッセージ(「Good Evening Welcome to Amusement TV」)とを親画面30に表示し、同時に、音声メッセージ(「こんばんは! やまもとさん」)をスピーカ24から出力する。このように、読出制御部17は、クロック制御部12から送られてくるクロックと時刻判定部16からの判定結果に従ってキャラクタ記憶部14と録音再生部20とから順次にデータを読み出し、親画面30でのキャラクタや文字メッセージを変化させ、かつ、音声メッセージを出力していく。図4(b)ではキャラクタ41が親画面30から退場しつつあり、また、文字メッセージ42が消えている。この間、子画面31での受信映像はリアルタイムに変化している。
【0023】電源オン操作に伴うキャラクタおよび文字メッセージの表示と音声メッセージの出力とが終了すると、読出制御部17からクロック制御部12に対して読出終了信号mが出力される。これにより、図4(c)に示すように、子画面31が次第にズームアップしていき(二重線の矢印参照)、フル画面となる。・・・(中略)・・・以上により、受信映像を表示している子画面31の大きさが滑らかにズームアップされ、最終的にフル画面となる。子画面31がフル画面となった時点でクロック制御部12からスイッチ切換部13にズーム終了信号nが出力され、切換スイッチ7が接点a側に切り換えられて、テレビジョン受信回路6からの受信映像信号がダイレクトにミキシング部18から表示部19へと送られる。したがって、図4(d)に示すように受信映像のみのフル画面となり、本格的な視聴状態へと移行する。」

《電源オフ時の動作》
(K2.5)「【0024】次に、電源オフ時の動作を図3に示す概略的なタイミングチャートに従って説明する。図5(a)のように表示部19に受信映像がフル画面の状態で表示されているときに、赤外線リモコン装置から送信された電源オフ操作信号がリモコン受信部1に受信されると、あるいは操作パネル部2において電源オフ操作がなされると、その電源オフ信号dは電源制御部3に入力されるが、直ちに電源回路4がオフにされることはなく、後述するように一定の処理が行われて読出制御部17から読出終了信号eが電源制御部3に入力されるまでは電源回路4はオン状態に保たれる。
【0025】前記の電源オフ信号dはオン/オフ制御部5にも入力され、このオン/オフ制御部5を電源オフ検出状態にする。オン/オフ制御部5からスイッチ切換部13にオフ信号kが出力されると、スイッチ切換部13はこんどは直ちに切換スイッチ7を接点b側へ切り換え、テレビジョン受信回路6を画像記憶部8に接続する。オン/オフ制御部5からのオフ信号kはクロック制御部12および読出制御部17にも入力され、それぞれをアクティブにする。
【0026】クロック制御部12はアクティブにされると、図5(b)に示すように、表示部19の画面状態をフル画面の状態から最大面積の子画面31の状態に切り換えた後、周波数可変発振器11に与えるクロックの周波数を次第に減少させていくことにより、その子画面31を次第にズームダウン(画面縮小)していく(二重線の矢印参照)。・・・(中略)・・・以上により、受信映像を表示している子画面31の大きさが滑らかにズームダウンされ、子画面31が面積でフル画面の1/9にまで縮小された時点でクロック制御部12から読出制御部17にズーム終了信号pが出力され、読出制御部17が動作を開始する。
【0027】読出制御部17は、まず、時刻判定部16から現在時刻がどの時間帯にあるのかの判別結果を読み込み、判別した時間帯に応じてキャラクタ記憶部14からキャラクタの1パターン描画データの読み出しを開始する。これとともに、録音再生部20を制御して、判別した時間帯に応じて録音再生部20から1つの音声メッセージの読み出しを開始する。
【0028】例えば、昼時間帯であれば、描画データとして、図5(c),(d)に示すように、入場してきてから手を振るよう動作するキャラクタ41と文字メッセージ42(「THANK YOU! by Amusement TV」)とを親画面30に表示し、同時に、音声メッセージ(「さようなら」)をスピーカ24から出力する。また、朝時間帯であれば、描画データとして朝の動作にふさわしい別の動作をするキャラクタと文字メッセージ(「GOOD LUCK! by Amusement TV」)とを親画面30に表示し、同時に、音声メッセージ(「では またね!」)をスピーカ24から出力する。
【0029】また、夜時間帯であれば、描画データとして夜の動作にふさわしい別の動作をするキャラクタと文字メッセージ(「GOOD NIGHT! by Amusement TV 」)とを親画面30に表示し、同時に、音声メッセージ(「おやすみなさい」)をスピーカ24から出力する。このように、読出制御部17は、クロック制御部12から送られてくるクロックと時刻判定部16からの判定結果に従ってキャラクタ記憶部14と録音再生部20とから順次にデータを読み出し、親画面30でのキャラクタや文字メッセージを変化させ、かつ、音声メッセージを出力していく。この間において、クロック制御部12からの指令信号qによりスイッチ25をオフにして子画面31を消去し、キャラクタ41と文字メッセージ42だけの表示状態とする(図5(d))。
【0030】電源オフ操作に伴うキャラクタおよび文字メッセージの表示と音声メッセージの出力とが終了すると、読出制御部17から電源制御部3に対して読出終了信号eが出力される。電源制御部3にはすでに電源オフ信号dが入力されているので、読出終了信号eの入力により、こんどは実際に電源回路4をオフにする。したがって、表示部19での画面表示も消去される。」

(K2.6)「【0031】以上のように、電源オン時に、子画面に受信番組が表示されると同時に、これから番組の視聴が始まる旨を示すある一定の動きをするキャラクタと文字メッセージとが表示されるとともに音声メッセージが出力され、さらにキャラクタと文字メッセージとが消えると子画面が滑らかにズームアップしながら通常の受信番組へと切り換わっていく。また、電源オフ時に、受信番組をフル画面から子画面へと滑らかにズームダウンした後に、これで番組の視聴を終える旨を示すある一定の動きをするキャラクタと文字メッセージとが表示されるとともに音声メッセージが出力され、その直後に画面表示が消える。したがって、テレビと視聴者との間にある種の心理的一体感のようなもの(テレビが一緒にいる仲間であるような感じ)をかもしだすことができる。電源オン時には、例えば〔さあ、これから始まるぞ〕、〔さあ、これから見るぞ〕といった印象を強く与え、電源オフ時には、例えば〔ああ、見終わった。面白かった〕、〔さて、次の仕事にとりかかるか〕といった感じを与える。このように、視聴者の感性に対してある種独特の興味や気持ち、雰囲気を与えることが可能となっており、従来のテレビに比べて親しみやすさの点で非常にすぐれたものとなっている。」

《効果》
(K2.7)「【0033】
【発明の効果】本発明に係る請求項1のテレビジョン受像機によれば、視聴開始に当たっての電源オン操作に伴って、テレビの側から視聴者に、例えば「ようこそ」といったたぐいのメッセージ(語りかけ)があり、続いて受信映像がズームアップして身近に迫ってくる感じがあり、それを視聴者が電源オンとともに視聴するから、従来のテレビジョン受像機では表現されることのなかった、楽しみ・面白みのある映像の演出が行われる。その結果、視聴者はこれからテレビを見ようとしているときにテレビとの間にある種の心理的一体感や期待感のようなものを感じ、テレビに対する親しみ感が増す。
【0034】本発明に係る請求項2のテレビジョン受像機によれば、視聴終了に当たっての電源オフ操作に伴って、受信映像をフル画面から子画面にズームダウンすることで視聴者から受信映像が遠ざかっていくという感じがあり、続いて、これで番組視聴を終了しますよといったメッセージ画面が現れるので、実際に視聴が終わるのだという実感を視聴者に与える。これも面白みのある映像演出であり、視聴者は「さあ見終わった」という一種の満足感を覚える。これも従来のテレビジョン受像機ではなかったことであり、テレビとの間で一体感を覚え、テレビがより身近なものに感じられる。」


[3]補正後発明4’について

補正後発明4’と刊行物1に記載された発明とを対比する。

(1)刊行物1に記載された発明(以下「引用発明」という。)
前掲(K1.1)?(K1.5)には、テレビをはじめとする映像機器のオフタイマー回路に関する発明が記載されている。

ア 《課題・目的》
刊行物1は、「テレビをはじめとする映像機器のオフタイマーは、設定時間に達すると自動的に電源が切れるものである」が、「視聴者が設定時間に達しても視聴を続けている場合、前触れもなく突然電源が切れていたため、不快感を伴っていた」「様な問題点を解決するもので、」「電源オフ直前に特定の画像を表示させ、予告する事により、おもしろみのあるオフタイマーを提供」し「突然電源が切れず、予告の画像表示」を行い、「不快感がなく、むしろ演出効果による楽しさ」を加えることができ{(K1.3)(K1.5)}、「第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画にすれば、より演出効果が増大する。」(K1.4)ということを、課題・目的とするとしている。
すなわち、引用発明として、
視聴者が設定時間に達しても視聴を続けている場合における、前触れもなく突然電源が切れる不快感をなくし、電源オフ直前に演出効果のある画像を表示させて予告する事によりその不快感をなくし、おもしろみのあるオフタイマーを提供することを、課題・目的とするものを認めることができる。
そして、このような課題・目的のため、以下の構成とすることが記載されている。

イ 《構成》
イ-1 「設定時間に達すると自動的に電源がオフする映像機器」(K1.1)、「テレビをはじめとする映像機器のオフタイマーは、設定時間に達すると自動的に電源が切れるものである。」(K1.2)によれば、「オフタイマー設定時間に達すると自動的に電源がオフするテレビ」を認めることができる。

イ-2 該テレビは、「特定の画像を記憶する画像記憶回路」と、「電源オフ直前に該特定の画像を読出し、一定時間特定画像信号を出力する画像表示制御回路」を備えていて(K1.1)、
「オフタイマー設定時間直前にタイマー回路1から出力されるスタート信号9がLレベルからHレベルに切換わる。この時、画像表示制御回路4が起動し、画像記憶回路3に記憶された特定の画像を読出し、特定画像信号10を出力する。ここで、映像信号切替回路5はこの特定映像信号10を選択し、画像表示部6へ入力する。従って、電源オフ直前に特定の画像が表示される事になる。」(K1.4)ところ、
「d)該特定画像信号を通常の映像信号に重畳するか、または特定画像出力時のみ映像信号から該特定画像信号へ切換えて、画像表示器上へ表示する」(K1.1)であるから、
第1図を参照すれば、
通常の映像信号から特定画像信号へ切換えるのではなく、通常の映像信号に特定画像信号を重畳するようにするものも認めることができ、
したがって、
該テレビは、「タイマー回路」を備えていて、
タイマー回路は、オフタイマー設定時間直前になるとスタート信号をLレベルからHレベルに切換え、これにより、
・画像表示制御回路が起動して、画像記憶回路に記憶された特定の画像を読出して特定画像信号を出力し、
・この特定画像信号を、画像表示部へ入力して通常の映像信号に重畳し、電源オフ直前に特定画像を通常の映像信号に重畳して表示する。
以上によれば、
オフタイマー設定時間直前になると、タイマー回路はスタート信号をLレベルからHレベルに切換え、
これにより、特定画像信号を画像記憶回路から読み出して通常の映像信号に重畳し、電源オフ直前に該特定画像を通常の映像信号に重畳して表示する。

イ-3 「この画像は静止画でも良いが、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画にすれば、より演出効果が増大する。」(K1.4)によれば、特定画像が、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画であるものを認めることができる。

イ-4 「次に、特定画像の表示が終了すると、パワー制御信号7がHレベルからLレベルに切換わり、電源回路2から回路全体に供給されている電源電圧8が0Vとなり、動作停止する。」(K1.4)、「テレビをはじめとする映像機器のオフタイマーは、設定時間に達すると自動的に電源が切れるものである。」(K1.2)、第1図によれば、「タイマー回路」は、オフタイマー設定時間に達すると該テレビの電源を自動的にオフにするものである。

ウ 引用発明
以上によれば、補正後発明4’と対比する引用発明として、下記の発明を認定することができる。

記(引用発明)
〔課題・目的(引用発明)〕
視聴者が設定時間に達しても視聴を続けている場合における、前触れもなく突然電源が切れる不快感をなくし、電源オフ直前に演出効果のある画像の画像を表示させて予告する事によりその不快感をなくし、おもしろみのあるオフタイマーを提供すること
〔構成(引用発明)〕
オフタイマー設定時間になると電源をオフするタイマー回路を備えたテレビであって、
オフタイマー設定時間直前になると、タイマー回路はスタート信号をLレベルからHレベルに切換え、
これにより、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を、画像記憶回路から読み出して通常の映像信号に重畳し、電源オフ直前に該動画を通常の映像信号に重畳して表示し、
オフタイマー設定時間に達すると自動的に電源がオフするテレビ。

(2)補正後発明4’と引用発明との対応

ア 「電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置」について

補正後発明4’でいう「映像表示装置」は、発明の詳細な説明の「【発明の実施の形態】以下、本発明の映像表示装置の第1実施形態を、例えば液晶表示パネルを用いたテレビジョン受像機について、図1乃至図3とともに詳細に説明する。」に照らせば、「テレビジョン受像機」を含んで言うものであることは明らかであり、引用発明の「テレビ」と相違しない。
引用発明のテレビも「オフタイマー設定時間になると電源をオフするタイマー回路」を備えているところ、同「タイマー回路」は、通常「電源オフ時刻を」「タイマー設定する」と想定されるものであり、したがって、「電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段」ということができる。
よって、引用発明も、「電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置」といえ、この点において補正後発明4’と相違しない。

イ 「前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い可変制御する制御手段」について

イ-1 「前記電源オフ時刻から遡った所定期間内」
引用発明の「オフタイマー設定時間直前」とは、「オフタイマー設定時間」すなわち「前記電源オフ時刻」から『所定期間遡った時刻』であることは明らかであり、したがって、引用発明の「オフタイマー設定時間直前」と「オフタイマー設定時間」との間の期間は、「前記電源オフ時刻から遡った所定期間」ということができる。

イ-2 「前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い可変制御する制御手段」
引用発明は、「第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を、画像記憶回路から読み出して通常の映像信号に重畳し、電源オフ直前に該動画を通常の映像信号に重畳して表示」するところ、
この重畳表示は、「オフタイマー設定時間直前になると、タイマー回路はスタート信号をLレベルからHレベルに切換え」ることにより開始されること、「電源オフ直前に該動画を通常の映像信号に重畳して表示し、オフタイマー設定時間に達すると自動的に電源がオフする」のであるから、「オフタイマー設定時間」になると終了すること、は明らかである。
したがって、引用発明は、「前記電源オフ時刻から遡った所定期間内」において、「第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像」を画像記憶回路から読み出して通常の映像信号(この「通常の映像信号」は補正後発明4’でいう「入力映像信号」に相当することは明らかである。)に重畳し表示する。
この期間内において、そのような動画が通常の映像信号に重畳表示するのであるから、そのような動画を重畳表示するように制御する制御手段の存在も明らかである。
すなわち、引用発明には、『前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して通常の映像信号(入力映像信号)に重畳表示するように制御する制御手段』が存在しているといえる。
そして、動画である以上、その表示形態は時間経過に伴い可変するものであるから、前記電源オフ時刻に近づくに従って時間経過に伴い可変するものといえ、そのような動画が通常の映像信号(入力映像信号)に重畳表示されて表示される『表示映像の表示形態』も、「前記電源オフ時刻に近づくに従って時間経過に伴い可変」するものとなる。
したがって、上記『前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、・・・動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して通常の映像信号(入力映像信号)に重畳表示するように制御する制御手段』は、
「前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、」『表示映像の表示形態』を、「前記電源オフ時刻に近づくに従って、」「時間経過に伴い可変制御する」「制御手段」ということができるものである。
そして、補正後発明4’の「入力映像信号の表示形態」も、『表示映像の表示形態』といい得るから、
補正後発明4’と引用発明は、
「前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、表示映像の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い可変制御する制御手段」を設けた点においては相違しないものと言うことができる。
もっとも、表示映像の表示形態を可変制御する制御手段が、
補正後発明4’では、
「入力映像信号の表示形態を可変制御する制御手段」であるのに対して、
引用発明では、
第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して入力映像信号に重畳表示するように制御する制御手段である点
で相違する。

ウ 「入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段」について
引用発明の上記『前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して通常の映像信号(入力映像信号)に重畳表示するように制御する制御手段』は、「入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段」ではなく、この点、補正後発明4’と相違する

(3)一致点、相違点
以上の対比結果によれば、補正後発明4’と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであることが認められる。

[一致点]
電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、表示映像の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことを特徴とする映像表示装置。

[相違点]
表示映像の表示形態を可変制御する制御手段が、
補正後発明4’では、
「入力映像信号の表示形態を可変制御する制御手段であって、入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段」であるのに対して、
引用発明では、
第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して入力映像信号に重畳表示するように制御する制御手段であって、
入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段ではない点。

(4)相違点等の判断(容易想到性の判断)

(4.1)[相違点の克服]
引用発明の、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して入力映像信号に重畳表示するように制御する制御手段を、
「入力映像信号の表示形態を可変制御する制御手段であって、入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段」
とすることで、上記相違点は克服されて、補正後発明4’に達する。

(4.2)[相違点の克服]の容易想到性

ア 刊行物2(特開平9-23392号公報)

《刊行物2発明》
前掲(K2.1)?(K2.7)には、
テレビジョン受像機に係り、電源オン時あるいは電源オフ時において、テレビと視聴者との間に一体感をかもし出すような映像演出を行う発明であって、
〔課題・目的(刊行物2)〕
前掲(K2.1)、(K2.2)、(K2.6.)、(K2.7)によれば、
《課題》従来、電源オン操作を行うと、番組が直ちに画面全面(フル画面)に映し出され、電源オフ操作を行うと、それまで映し出されていた番組がほぼ瞬間的に消えるというだけのものであって、
これでは、味気なく面白みに欠ける等、視聴者に与える心理・感性上好ましいものではないという課題があり(段落0003、0006、0008、0031、0033,0034)、
《目的》そのような課題を解決するために、
電源オン操作時あるいは電源オフ操作時に、テレビと視聴者との間に一体感をかもし出すようなおもしろみのある映像演出を行い(段落0001)、
電源オン操作時には、受信映像がズームアップして身近に迫ってくる感じを出し、〔さあ、これから始まるぞ〕、〔さあ、これから見るぞ〕といった印象を強く与え(段落0006、0031、0033)、
電源オフ操作時には、受信映像をフル画面から子画面にズームダウンすることで視聴者から受信映像が遠ざかっていくという感じを与え、実際に視聴が終わるのだという実感を視聴者に与え(段落0007、0031、0034)、
テレビと視聴者との間にある種の一体感のようなものをもたせるようにして、テレビに対する親しみ感を増すようにする(段落0003)ために、
〔構成(刊行物2)〕
テレビジョン受像機を電源オンする操作に伴って、子画面に受信映像が表示すると同時に、これから受信番組の視聴が始まることを示すメッセージ画面が親画面に表示し、かつ、そのような表示状態が短時間続いた後に、メッセージ画面を消去し、受信映像を映出している子画面をズームアップして、通常の受信映像の表示画面(フル画面)とし(段落0006)、
テレビジョン受像機を電源オフする操作に伴って受信映像を映出しているフル画面から子画面にズームダウンし、ズームダウン後に電源オフ操作に伴う受信映像消去を知らせるメッセージ画面を親画面に所定の短時間表示し、そのメッセージ画面の表示終了後に電源をオフする(段落0006)
ような構成とする発明(「刊行物2発明」という)が記載されている。

刊行物2発明の電源オフ操作時の技術は、補正後発明4’との対応でみれば、
上記「受信映像」は、補正後発明4’でいう「入力映像信号」に相当することは明らかであり、「テレビジョン受像機の電源をオフ操作に伴って、受信映像を映出しているフル画面から子画面にズームダウン」するのであるから、
入力映像信号の表示形態を、電源オフ時刻に近づくに従って、入力映像信号の表示面積が時間経過に伴い小さくなるように可変する技術と言うことができる。
すなわち、刊行物2は、上記の〔課題・目的(刊行物2)〕のため、『テレビジョン受像機を電源オフする操作に伴って、入力映像信号の表示形態を、電源オフ時刻に近づくに従って、入力映像信号の表示面積が時間経過に伴い小さくなるように可変する技術』(以下、『刊行物2発明の電源オフ操作時の表示技術』という)を示している。

イ 引用発明は、上記([3](1)ウ)の〔課題・目的(引用発明)〕のため、
すなわち、-視聴者が設定時間に達しても視聴を続けている場合における、前触れもなく突然電源が切れる不快感をなくし、電源オフ直前に演出効果のある画像の画像を表示させて予告する事によりその不快感をなくし、おもしろみのあるオフタイマーを提供するため-
に上記〔構成(引用発明)〕の構成を採るものであり、
その可変する表示映像として、動画第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を入力映像信号に重畳表示する映像としているのであり、この動画による表示映像は、もうすぐ電源オフになること、電源オフに近づきつつあることを演出する映像としてふさわしい変化する映像であることは明らかである。

一方、上記『刊行物2発明の電源オフ操作時の表示技術』は、上記〔課題・目的(刊行物2)〕のため、すなわち、
-電源オフ操作を行うと、それまで映し出されていた番組がほぼ瞬間的に消えるというだけのもので、味気なく面白みに欠ける等、視聴者に与える心理・感性上好ましいものではなかったところを、テレビと視聴者との間に一体感をかもし出すようなおもしろみのある映像演出を行い、受信映像をフル画面から子画面にズームダウンすることで視聴者から受信映像が遠ざかっていくという感じを与え、実際に視聴が終わるのだという実感を視聴者に与えテレビに対する親しみ感を増すようにするため-
に上記〔構成(刊行物2)〕を採るものであり、
この受信映像をフル画面から子画面にズームダウンする映像(入力映像信号の表示面積が時間経過に伴い小さくなる映像)も、もうすぐ電源オフになること、電源オフに近づきつつあることを演出する映像としてふさわしい変化する映像であることは明らかである(逆に、受信映像を映出している子画面をズームアップして、通常の受信映像の表示画面(フル画面)とする映像は、電源オン直後であることを演出する映像としてふさわしい映像である)。

すなわち、上記『刊行物2発明の電源オフ操作時の表示技術』は、
視聴者が自らテレビジョン受像機を電源オフする操作をした時の表示技術である点で、オフタイマー時の表示技術である引用発明とは異なるものの、
テレビの電源がオフして映像が消失する際における、実際に電源がオフする過程での表示映像の表示形態を対象にこれを扱う技術である点では、もともと、引用発明と共通する技術であり、
課題認識・目的とその解決手法においても、
突然電源が切れることは視聴者の心理上好ましくないという欠点{(不快感(引用発明)、味気なく面白みに欠ける等、視聴者に与える心理・感性上好ましいものではないという課題(刊行物2)}がありこれをなくすという点では同じ課題認識の下、
この欠点をなくすために、電源オフ直前に、演出効果のある画像を表示させておもしろみのある映像演出であって、もうすぐ電源オフになること、電源オフに近づきつつあることを演出する映像としてふさわしい変化する映像とする演出を行う、という点で同じ目的・解決手法を採るもので、引用発明と共通するものであり、
いずれも、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、表示映像の表示形態を、前記電源オフ時刻に近づくに従って、時間経過に伴い、おもしろみがある変化する映像であって、もうすぐ電源オフになること、電源オフに近づきつつあることを演出する映像としてふさわしい変化映像とする技術であると普通に認識されるものである。

そうすると、刊行物2に接した当業者であれば、引用発明の、可変する表示映像として、動画第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を入力映像信号に重畳表示する映像とする代わりに、
『刊行物2発明の電源オフ操作時の表示技術』が採用した、受信映像をフル画面から子画面にズームダウンする映像とすること、すなわち、入力映像信号の表示形態を、電源オフ時刻に近づくに従って、入力映像信号の表示面積が時間経過に伴い小さくなるように可変する映像とすることに、困難なく思い至ると言うべきである。

また、刊行物2に接した当業者は、引用発明のテレビにおいて、オフタイマー時だけでなく、視聴者による電源オフ操作時にも演出表示をする刊行物2発明を採用しようとすることを困難なく容易に想起するといえ、
その際、引用発明のオフタイマーによる電源オフの際に表示する表示映像(太陽が沈んで行く様な動画の重畳表示)も、視聴者による電源オフ操作時に採用したのと同様の刊行物2発明の「受信映像をフル画面から子画面にズームダウンする映像」とすれば、回路構成も共通化できるというメリットがあることが明らかであることからも、
引用発明の、可変する表示映像として、動画第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を入力映像信号に重畳表示する映像とする代わりに、
『刊行物2発明の電源オフ操作時の表示技術』が採用した、受信映像をフル画面から子画面にズームダウンする映像とすること(入力映像信号の表示形態を、電源オフ時刻に近づくに従って、入力映像信号の表示面積が時間経過に伴い小さくなるように可変する映像とすること)は、当業者が容易になし得ると言うことができる。

以上によれば、上記[相違点の克服]すなわち、
引用発明の、第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して入力映像信号に重畳表示するように制御する制御手段を、
「入力映像信号の表示形態を可変制御する制御手段であって、入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段」
とすることは、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易になし得ることである。

(4.3)請求人の主張について

請求人は、 補正後発明1が、査定の理由に引用された引用例1?6に基づいて当業者が容易になし得ることとはいえない根拠として、以下の点を主張している。
(i)補正後発明1は、OSD表示を用いた場合に生じる問題、すなわち、画面端に小さくOSD表示を行うと視聴者が報知に気付き難くなり、また、画面中央に大きくOSD表示を行うと入力映像が隠されてしまうという問題が解決されるという特有の効果を奏するものである。
(ii)引用例6(刊行物2に同じ)に記載の表示方法が、視聴者の「テレビに関する親しみ感を増す」ことを目的として考案され、ズームダウンを視聴者の電源オフ操作に即応して行うことが必須である以上、これを引用例1-4に記載の技術と組み合わせることは、当業者といえども容易ではない。

しかしながら、以下の理由で、上記請求人の主張は採用できない。

《理由》
上記(i)について
請求人の上記主張(i)は、発明が刊行物の記載に基いて容易想到といえるためには、その刊行物に当該発明と同じ課題認識がなければならないことが必須であることを前提とする主張であるが、
当該発明と同じ課題認識がない刊行物に基づいても当該発明が当業者容易想到といえる場合もあるのであり、容易想到の基礎とする刊行物に当該発明と同じ課題認識が存在することが必須であるわけではなく、上記前提は妥当ではない。
確かに、刊行物1(引用例3)、刊行物2(引用例6)には、請求人が主張する上記の課題認識そのものは認められないが、
引用発明(刊行物1記載の発明)を出発点として、引用発明に、引用発明と課題・目的等に共通性がある刊行物2発明を適用して補正後発明4’に容易に到達するといい得ることは、論理付けをもって上記(4.2)で示したとおりである。
そして、補正後発明4’(補正後発明1に含まれる)が奏すると請求人が主張する上記効果、すなわち、画面端に小さくOSD表示を行うと視聴者が報知に気付き難くなり、また、画面中央に大きくOSD表示を行うと入力映像が隠されてしまうという問題を解決できるという効果は、その容易に到達した構成から当業者が予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものでもない。

上記(ii)について
刊行物2発明は、視聴者が自らテレビジョン受像機を電源オフする操作をした時の技術であるから、「予告」の必要性は重要ではないかもしれないが、このような場合であっても、引用発明(刊行物1発明)のオフタイマー時の電源オフ時と同様、もうすぐ電源オフになること、電源オフに近づきつつあることを演出する表示映像を表出することに技術的意義があることを示している以上、
単に、刊行物2が視聴者の電源オフ操作に即応する技術であるから、引用発明に適用できない、とはいえない。
したがって、上記請求人の主張(ii)も採用できない。

(4.4)まとめ{相違点等の判断(容易想到性の判断)}
以上のとおりであるから、補正後発明4’は、引用発明を出発点として、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)まとめ(補正後発明4’)
以上のとおり、補正後発明4’は、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]補正後発明4(補正後請求項4記載の発明)について
前記のとおり、補正後発明4(補正後請求項4記載の発明)は、補正後発明4’を含む発明であるから、
補正後発明4も、同様に、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[5]補正後発明1(補正後請求項1記載の発明)について
前記のとおり、補正後発明1は、補正後請求項4が引用する発明であって、補正後発明4を含む発明であるから、
補正後請求項4記載の発明(補正後発明4)が、上記のとおり、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
補正後発明1も、同様に、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]まとめ(理由:独立特許要件不適合)
以上によれば、補正後の請求項1及び請求項4に記載される発明は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、上記刊行物1に記載された発明及び上記刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

【第3】当審の判断

[1]本願発明

平成19年10月26日付けの補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1から請求項12までに係る発明は、本願明細書及び図面(平成19年8月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項12までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1及び請求項4に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明4」ともいう。)は、それぞれ下記のとおりであると認められる。

記(本願発明1)
電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことを特徴とする映像表示装置。

記(本願発明4)
前記制御手段は、入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御することを特徴とする前記請求項1乃至3のいずれかに記載の映像表示装置。

請求項4記載の発明(本願発明4)は、請求項1?3のいずれかを引用するものであるところ、このうち、請求項1を引用する発明(以下、特に「本願発明4’」という。)を独立形式で記載すれば、下記のとおりである。
本願発明4(請求項4記載の発明)は、本願発明4’を含む発明である。

記(本願発明4’(独立形式))
電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、入力映像信号の表示形態を時間経過に伴い可変制御する制御手段であって、
入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことをを特徴とする映像表示装置。


[2]引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平2-305188号公報(上記刊行物1に同じ。)および特開平9-23392号公報(上記刊行物2に同じ。)には、前記「【第2-4】[2]」のとおりの事項が記載されている。

[3]本願発明4’について

本願発明4’と刊行物1に記載された発明とを対比する。

(1)対比(対応関係)
刊行物1には、前記【第2-4】[3](1)で認定したとおりの引用発明が認められ、
本願発明4’と引用発明との対応については、前記【第2-4】[3](2)「補正後発明4’と引用発明との対応」を援用する。

(2)一致点、相違点
本願発明4’と引用発明との [一致点][相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
電源オフ時刻をタイマー設定するためのオフタイマー手段を備えた映像表示装置であって、前記電源オフ時刻から遡った所定期間内において、表示映像の表示形態を時間経過に伴い可変制御する制御手段を設けたことを特徴とする映像表示装置。

[相違点]
表示映像の表示形態を可変制御する制御手段が、
本願発明4’では、
「入力映像信号の表示形態を可変制御する制御手段であって、入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段」であるのに対して、
引用発明では、
第2図(a)?(c)に示す様に太陽が沈んで行く様な動画の特定画像を画像記憶回路から読み出して入力映像信号に重畳表示するように制御する制御手段であって、
入力映像信号の表示面積を時間経過に伴い可変制御する制御手段ではない点。

(3)相違点等の判断(容易想到性の判断)
前記【第2-4】[3](4)でした、補正後発明4’についての相違点等の判断と同じである。

(4)まとめ(本願発明4’)
本願発明4’は、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]本願発明4(請求項4記載の発明)について
前記のとおり、本願発明4(請求項4記載の発明)は、本願発明4’を含む発明であるから、
本願発明4も、同様に、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[5]本願発明1(請求項1記載の発明)について
前記のとおり、本願発明1は、請求項4が引用する発明であって、本願発明4を含む発明であるから、
請求項4記載の発明(本願発明4)が、上記のとおり、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
本願発明1も、同様に、刊行物1記載の発明、及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第4】むすび
以上、本願の請求項1及び請求項4に係る発明は、いずれも、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-04 
結審通知日 2010-06-08 
審決日 2010-06-21 
出願番号 特願2002-209343(P2002-209343)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 道晴  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 小池 正彦
佐藤 直樹
発明の名称 映像表示装置  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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