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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  C04B
管理番号 1221645
審判番号 無効2008-800198  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-10-07 
確定日 2010-06-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3597490号発明「軽量粘土およびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3597490号の訂正後の請求項1、2及び6に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3597490号の請求項1?7に係る発明は、平成13年5月31日に特許出願され、平成16年9月17日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、株式会社デビカから平成20年10月7日付けで請求項1、2及び7に係る発明の特許について無効審判の請求がなされたところ、その後の手続の経緯は、次のとおりである。

上申書(請求人): 平成20年10月29日
手続補正書(請求人): 平成20年10月29日
訂正請求: 平成20年12月 5日
手続補正書(請求人): 平成20年12月19日
上申書(請求人): 平成20年12月19日
答弁書: 平成20年12月24日
口頭審尋: 平成21年 2月16日
審尋: 平成21年 3月18日
上申書(請求人): 平成21年 4月 8日
回答書(請求人): 平成21年 4月 8日
回答書(被請求人): 平成21年 4月15日
上申書(請求人): 平成21年 6月24日
無効理由通知: 平成21年 7月 7日
上申書(請求人): 平成21年 7月17日
意見書(請求人): 平成21年 8月 4日
意見書(被請求人): 平成21年 8月12日
訂正請求: 平成21年 8月12日
上申書(請求人): 平成21年 9月15日
手続補正書(被請求人): 平成21年10月19日
口頭審理陳述要領書(請求人): 平成21年11月19日
口頭審理陳述要領書(2)(請求人): 平成21年11月19日
口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成21年11月19日
口頭審理: 平成21年11月19日
上申書(被請求人): 平成21年11月19日
上申書(2)(被請求人): 平成21年11月19日
上申書(3)(被請求人): 平成21年12月 7日
上申書(1)(請求人): 平成21年12月24日
上申書(2)(請求人): 平成21年12月24日

II.訂正の適否
訂正については、平成20年12月5日及び平成21年8月12日の2回訂正請求がなされているところ、特許法第134条の2第4項に基づいて先の請求である平成20年12月5日の訂正請求は取り下げられたものとみなされる。また、後の請求である平成21年8月12日付け訂正請求書については、平成21年10月19日付けで手続補正書が提出されている。この手続補正書による補正は、訂正事項及び訂正の原因と添付した訂正明細書が不一致であることを補正しようとするものであって、訂正請求の要旨を変更するものではないことから、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第131条の2第1項により、かかる補正は容認することができる。
以上のことから、被請求人は、平成21年8月12日付け訂正請求書を提出して訂正を求め、当該訂正の内容は、次のとおり、平成21年10月19日付け手続補正書により補正された訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
以下、上記訂正の適否を検討する。

1.訂正の内容
訂正事項a
特許明細書の【特許請求の範囲】を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】 有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、
前記有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、
前記極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、
かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土。
【請求項2】 前記有機中空微小球が白色であって、前記有機中空微小球の反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の軽量粘土。
【請求項3】 前記軽量粘土が、繊維をさらに含有するとともに、当該繊維の添加量を、全体量に対して、1?10重量%未満の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量粘土。
【請求項4】 前記軽量粘土が、色素をさらに含有するとともに、当該色素の添加量を、全体量に対して、0.1?10重量%未満の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の軽量粘土。
【請求項5】 前記軽量粘土が、無機中空微小球をさらに含有するとともに、当該無機中空微小球の添加量を、全体量に対して、0.01?10重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の軽量粘土。
【請求項6】 有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土の製造方法において、
平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、
有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、
前記極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、
かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土の製造方法。」

訂正事項b-1
特許明細書の段落【0007】を次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段】
本発明によれば、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、このように有機中空微小球の平均粒径および添加量の双方を考慮して構成することにより、従来問題が起こるとされてきた有機中空微小球の添加量であっても、十分かつ適度な軽量化が図られるとともに、造形性に優れた軽量粘土を得ることができる。
また、有機中空微小球の添加量を少なくすることができるため、軽量粘土の混合分散が容易となるばかりか、未発泡有機中空微小球の存在量を低下させ、しかも高価な有機中空微小球の使用量を低下できるため、優れた保管性(膨張性)が得られるとともに、製造コストを低く抑えることができる。
さらには、有機中空微小球の添加量が少ないために、カラー化のために色素を添加した場合であっても、色素の分散性を阻害することがなく、優れた発色性を得ることができる。
また、このような極性化合物を使用することにより、造形性や発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができる。
一方、このように所定量の水を含有することにより、造形性や発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができる。
なお、上述したように、従来は、水の添加量が、全体量に対して、60重量%を超えると、軟化して造形性が乏しくなり、さらには軽量化が損なわれると言われていたが、有機中空微小球の平均粒径および添加量の双方を考慮することにより、かかる水の添加量に関する制限を大幅に緩和することができる。」

訂正事項b-2
特許明細書の段落【0008】を次のとおりに訂正する。
「また、本発明の軽量粘土を構成するにあたり、有機中空微小球が白色であって、有機中空微小球の反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とすることが好ましい。
特開平2-123390号公報等に開示された塩化ビニリデン-アクリルニトリル共重合体等からなる外殻を有する有機中空微小球は、黄土色?茶色であるが、このように白色性に富んだ有機中空微小球を使用することにより、発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができる。」

訂正事項b-3
特許明細書の段落【0009】の記載を削除する。

訂正事項b-4
特許明細書の段落【0014】を次のとおりに訂正する。
「また、本発明の別の態様によれば、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土の製造方法において、平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土の製造方法が提供される。
このように実施すると、造形性や軽量性に優れるとともに、安価な軽量粘土を効率的に得ることができる。」

訂正事項b-5
特許明細書の段落【0015】を次のとおりに訂正する。
「【発明の実施の形態】
本発明の実施形態は、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土である。
また、別の態様は、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土の製造方法において、平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土の製造方法である。
以下、有機中空微小球および極性化合物等の構成要素に分けて説明する。」

訂正事項b-6
特許明細書の段落【0019】を次のとおりに訂正する。
「(3)白色性
また、有機中空微小球の色が白色またはそれに近似した色であることが好ましい。
上述したように、特開平2-123390号公報等に開示された塩化ビニリデン-アクリルニトリル共重合体等からなる外殻を有する有機中空微小球の色は、通常、黄土色?茶色であるが、このように白色性に富んだ有機中空微小球を使用することにより、発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができるためである。
なお、有機中空微小球の色は、色見本と比較し、目視や顕微鏡を用いて判断することができるが、反射率計で測定される視感明度(L値)を相対基準とすることも可能である。すなわち、有機中空微小球の色に関して、反射率計(例えば、東京電色社製、TR-1000D型)で測定される視感明度を、70?99の範囲内の値とする。
この理由は、かかる視感明度が70未満の値となると、有機中空微小球が茶色がかった色となり、軽量粘土に色素、特に白色系色素や黄色系色素とともに添加した場合に、混濁して、発色性が著しく低下する場合があるためである。
ただし、視感明度の値が高くなりすぎると、有機中空微小球の構成材料が過度に制限される場合がある。
したがって、かかる視感明度を70?99の範囲内の値とすることが好ましく、80?95の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる視感明度の調整には、有機中空微小球の外殻中に酸化チタンやシリカ等の白色粒子を添加したり、あるいはこれらの白色粒子で周囲を被覆することにより容易に達成することができる。また、有機中空微小球の外殻に塩化ビニル樹脂や塩化ビニリデン樹脂、あるいはホルムアルデヒド系樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂)等の使用量を低下させること、具体的には、10重量%以下の値とすることによっても容易に達成することができる。」

訂正事項b-7
特許明細書の段落【0022】を次のとおりに訂正する。
「(6)添加量
また、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とすることが必要である。
この理由は、かかる有機中空微小球の添加量が1重量%未満の値となると、軽量粘土の軽量化が困難となるためである。
一方、かかる有機中空微小球の添加量が3重量%以上になると、軽量粘土の造形性や取り扱いが著しく低下するとともに、残留する未発泡の有機中空微小球が多くなり、包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇した場合に、包装材が膨張し、保管性が著しく低下するためである。また、有機中空微小球は、著しく高価であるため、その添加量が3重量%以上になると、得られる軽量粘土のコストも著しく高価になるためである。
したがって、軽量粘土の造形性や膨張性と、軽量性等とのバランスがより良好となるため、有機中空微小球の添加量を1?2.9重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1?2.5重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。」

訂正事項b-8
特許明細書の段落【0023】を次のとおりに訂正する。
「ここで、図1および図2を参照して、有機中空微小球の添加量と、軽量粘土における軽量性や造形性との関係、および膨張性との関係をそれぞれ詳細に説明する。
図1は、表1の軽量性および造形性のデータを数値化したものであって、◎の評価を5点、○の評価を3点、△の評価を1点、×の評価を0点として数値を算出した。
そして、図1の横軸に、有機中空微小球の添加量(重量%)を採って示してあり、左縦軸に、軽量性(相対値)が採って示してあり、曲線Aがその関係を示している。一方、図1の右縦軸には、造形性(相対値)が、それぞれ採って示してあり、有機中空微小球の添加量(重量%)との関係を、曲線Bが示している。
この図1から理解されるように、有機中空微小球の添加量が多くなる程、軽量粘土における軽量性の評価が向上するものの、造形性の評価については、3重量%を境にして、極端に低下している。
したがって、有機中空微小球の添加量を1?3重量%未満の範囲内の値にすることにより、軽量粘土における軽量性と、造形性との優れたバランスを取ることができ、また、有機中空微小球の添加量を1?2.5重量の範囲内の値にすることにより、これらの特性について、さらに優れたバランスが取れることが理解できる。
また、図2は、表1の膨張性のデータを数値化したものであって、◎の評価を5点、○の評価を3点、△の評価を1点、×の評価を0点として数値を算出した。
そして、図2の横軸に、有機中空微小球の添加量(重量%)を採って示してあり、左縦軸に、膨張性(相対値)が採って示してある。
この図2から理解されるように、有機中空微小球の添加量が多くなる程、膨張性の評価結果が低下しており、すなわち、保管性が低下することが理解される。
したがって、有機中空微小球の添加量を1?3重量%未満の範囲内の値にすることにより、軽量粘土における軽量性や造形性のみならず、保管時の膨張問題についても、効果的に低減して、特性改善することができることが理解できる。」

訂正事項b-9
特許明細書の段落【0029】を次のとおりに訂正する。
「(2)添加量
また、極性化合物の添加量を、軽量粘土の全体量(100重量%)に対して、1?30重量%の範囲内の値とする。
この理由は、かかる極性化合物の添加量が1重量%未満の値となると、軽量粘土の取り扱い性や成型性が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる極性化合物の添加量が30重量%を超えると、軽量粘土の展性が低下したり、混合分散が困難となったりする場合があるためである。
したがって、軽量粘土の取り扱い性や成型性と、軽量粘土の展性とのバランスがより良好となるため、極性化合物の添加量を、軽量粘土の全体量(100重量%)に対して、1?20重量%の範囲内の値とすることが好ましく、1?15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、2?10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。」

訂正事項b-10
特許明細書の段落【0062】を次のとおりに訂正する。
「【発明の効果】
本発明の軽量粘土によれば、有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、かかる有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、かつ、水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることにより、造形性や軽量性に優れ、包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇して、高温状態になった場合であっても膨張問題を解消して優れた保管性が得られるとともに、製造コストが安価である軽量粘土を提供することが可能になった。
さらには、本発明の軽量粘土によれば、有機中空微小球の添加量が少ないために、カラー化のための色素を添加した場合であっても、かかる色素の分散性を阻害することがなく、優れた発色性を得ることができるようになった。
また、本発明の軽量粘土の製造方法によれば、平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とすることにより、造形性や軽量性に優れるとともに、保管性(膨張性)にも優れた軽量粘土を安価に提供することが可能になった。」

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1において、軽量粘土が訂正前の請求項3の「極性化合物」を含有し、この「極性化合物」が、「水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値と」することを特定し、「有機中空微小球」の「添加量」を、「全体量に対して、0.1?3重量%未満の範囲内の値」を「全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値」に限定し、請求項2の「有機中空微小球が白色」について、「有機中空微小球の反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とする」ことを限定し、訂正前の請求項3を削除し、請求項4?7を順次繰り上げ、訂正後の請求項3?6とするとともに、訂正後の請求項6において請求項1と同様の訂正をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項b-1?b-10は、上記訂正事項aと整合を図るとともに特許請求の範囲の記載と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、訂正事項a?b-10は、特許明細書の【特許請求の範囲】の【請求項3】、段落【0019】、【0022】及び【0029】に基づくものであるから、訂正事項a?b-10は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法134条の2ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

III.本件訂正後の特許発明
本件無効審判請求の対象となった請求項1、2及び7に係る発明については、上記訂正を認容することができ、訂正前の請求項7が、上記したとおり、訂正前の請求項3が削除されて訂正後に請求項6となっていることから、訂正後においては、訂正後の請求項1、2及び6に係る発明が本件無効審判請求の対象となる。
訂正後の請求項1、2及び6に係る発明は、訂正明細書の請求項1、2及び6に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」及び「本件訂正発明6」という。)である。

【請求項1】 有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、
前記有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、
前記極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、
かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土。
【請求項2】 前記有機中空微小球が白色であって、前記有機中空微小球の反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の軽量粘土。
【請求項6】 有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土の製造方法において、
平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、
有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、
前記極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、
かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土の製造方法。

IV.請求人の主張と証拠方法
1.請求人の主張
請求人は、証拠方法として甲第1号証?甲第46号証の8、検甲第1号証?検甲第3号証を提出して、審判請求書、上申書、及び口頭審理(口頭審理陳述要領書、同(2)、第1回口頭審理調書を含む)において、これまで主張したことを整理すると、概ね次のとおり主張している。
(1)無効理由1:請求項1、2及び7に係る発明は、出願前に日本国内において販売された軽量粘土と同一であり(甲第1号証乃至甲第3号証、検甲第1号証)、公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当し、特許を受けることができないものであるから、これら発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
(2)無効理由2:請求項1、2及び7に係る発明(訂正後の本件訂正発明1、2及び6)は、甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これら発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。

2.無効理由について
無効理由1については、平成21年2月16日の口頭審尋を踏まえ、当審より平成21年3月18日付けで、
「現状においては、請求人が主張する『無効理由1:本件出願前公然実施された「ふわふわかる?ん」との実質同一』について、提出された証拠から公然実施といえるのか否か、及び本件特許発明と対比し得る内容が如何なるものかが不明です。
他方、被請求人は請求人主張の無効理由がないと反論する趣旨は理解できるものの、本件特許発明との実質同一であるか否かはひとまず置くとして、「ふわふわかる?ん」自体が公然実施された存在であるか否かが反論に際して前提となると推察されるのに、当該存在を認めるか否かについて明確な立場が表明されていません。
そこで、双方共に、以下の点について回答して下さい。
《請求人》当該無効理由1について主張を維持するか否か。
《被請求人》請求人が無効理由1についての主張を撤回する場合、どのように対応するか。」
という審尋が当事者に送付された。
かかる審尋に対し、請求人は、平成21年4月8日付け回答書で「請求理由中『理由1』(新規性違反)の主張を撤回します。」との回答があり、また、被請求人は、平成21年4月15日付けの回答書で「請求人が無効理由1についての主張を撤回するのであれば、被請求人として、それに同意する。」旨回答があった。
以上のとおり、請求人は、無効理由1についての主張を撤回し、被請求人もこれに同意していることから、無効理由1は取り下げられたものとし、以下、無効理由2について検討する。

3.甲号証の記載事項
(1)甲第1号証:納品書
(2)甲第2号証の1?3:売上伝票
(3)甲第3号証:試験報告書
甲第1号証?甲第3号証は無効理由1についての証拠である。

(4)甲第4号証:特公平6-70734号公報
(ア)「【請求項1】粒子中に気体を内包する軽量微小素材を主素材とし、これに合成粘結剤と、馴合液材と、添加物とを加えて構成される軽量粘土において、上記軽量微小素材が粒径1?200ミクロンの微小中空球であり、その外殻が単一の空間を内包し、該外殻がアクリロニトリルないし塩化ビニリデンを少なくとも一成分とする共重合樹脂から形成されることを特徴とする軽量粘土。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「本発明はこれらの課題にかんがみ、馴合液材の必要料が少量でありながらも塑結がよく、また滑らかできめが細かく鮮明な色付けが可能であるとともに、廃棄処理も容易な軽量粘土を提供することを目的とする。」(第2頁第3欄29?32行)
(ウ)「本発明において使用される軽量微小素材は光を乱反射する性質があるので、白色度の高い繊維粉と混合することにより、白色度92度(KETT光電白度計で測定)の極めて白色度の高い粘土が得られる。従って添加物として色素を加えた場合、鮮明な色付けが可能である。
さらに上記軽量微小素材粒子は気体を内包し、その結果粘土の内部には多くの気体が分散されているため、大量処分の必要が生じた場合でも、特別な焼却システムを必要とせず、学校その他の施設に備設されている通常の焼却炉で簡便に焼却処理できる。」(第2頁第4欄22?31行)
(エ)「<実施例>
以下、本発明の軽量粘土の実施例を説明する。本発明の軽量粘土中に含まれる軽量微小素材粒子は、外殻は塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリロニトリル共重合樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル共重合樹脂アクリロニトリル等を成分とし、気体を内包している。
そしてこの軽量微小素材粒子の粒径は1?200ミクロン、嵩比重は0.01?0.05に形成され、極めて軽量の微小中空球である。」(第2頁第4欄32?41行)
(オ)「本発明の軽量粘土においては、軽量微小素材粉末を3?20部(重量部)、添加物としての繊維粉を10?3部、合成粘結剤であるカルボキシメチルセルロースを10?20部、それぞれ粉末にして混合撹拌し、均一な粉末混合物とする。一方、馴合液材として水50?60部にポリオールエーテル粉を3?8部添加し、撹拌分散させた水溶液を作り、前記粉末混合物に添加して混練する。ところで、軽量微小素材粉末の添加量が3部未満では、所定の目的重量に達することができず、20部を越えても軽量化は達成できるが、粘土としての性質が損なわれる。」(第2頁第4欄42行?第3頁第5欄1行)
(カ)「馴合液材である水の添加量は50部未満では粘土が硬すぎて造形作業がしにくく、60部を越えると軟化して造形性が乏しく、さらなる軽量化を達成できない。」(第3頁第5欄13?15行)
(キ)「以上のことから本発明の実施例では軽量微小素材粉末12部、パルプ繊維粉18部、カルボキシメチルセルロース粉12部の粉末を撹拌混合し、均一な粉末混合物を製成し、別にポリオールエーテル粉5部を常温水53部に分散し、水溶液を調節して上記粉末混合物に添加し混練して製造する。」(第3頁第5欄16?21行)
(ク)「本実施例に使用される軽量微小素材は、光を乱反射する性質があるので、白色度の高い繊維粉と混合することにより得られる粘土は、白色度92度(KETT光電白度計で測定)の極めて白色度が高いものであり、鮮明な色付けが可能である。また滑らかできめも細かく、塑結度もよい。」(第3頁第6欄2?7行)
(ケ)「<発明の効果>
以上詳述したように、本発明軽量粘土によれば、水等の馴合液材の必要量が少量でありながらも塑結がよく、また滑らかできめが細かく鮮明な色付けが可能であるとともに、廃棄処理も容易な軽量粘土が提供される。軽量化の度合いが顕著であるため、運搬時の負担は大幅に軽減される。」(第3頁第6欄13?19行)
(コ)【第1図】には、本発明の軽量粘土構成部材である軽量微小素材の断面図が図示され、そこには「断面が二重円状の構造」が見て取れる。

(5)甲第5号証:警告書
(6)甲第6号証:再警告書
(7)甲第7号証:内容証明郵便付回答書
(8)甲第8号証:回答書
(9)甲第9号証:回答書
(10)甲第10号証:内容証明郵便付回答書
(11)甲第11号証:取引登録証
(12)甲第12号証:「平成20年(ワ)第25354号」(特許権侵害差止等請求事件)訴状
(13)甲第13号証:履歴事項全部証明書
(14)甲第14号証:履歴事項全部証明書
甲第5号証?甲第14号証は、甲第12号証の特許権侵害差止等請求事件に纏わる事情を説明するためのものである。

(15)甲第15号証:粘土製造試験1
(ア)「製造日:平成20年10月21日
製造方法:・・・特願昭63-278133の実施例から当時と一緒の軽量粘土を製造する。
配合表
1.軽量微小素材(エクスパンセル551WE) 12部 3kg
2.カルボキシメチルセルロース(セロゲンEP)12部 3kg
3.パルプ 18部 4.5kg
4.ポリオールエーテル粉(ユニオックス) 5部 1.25kg
5.常温水 53部 13.25kg
合計 100部 25kg
・・・
軽量微小素材エクスパンセル551WEは固形分/水分は15/85である。」(表頁)
(イ)第1?2頁には「原料」を計測し、混合物を混練して粘土を製造する工程のカラー写真(2008/10/22日付)が載せられている。

(16)甲第16号証:粘土製造試験2(平成20年11月4日製造)
特願昭63-278133の実施例から当時と一緒の軽量粘土を製造し、平成12年当時に販売された固形分/水分が10/90のエスパンセル053WEに変え5%の水分量の差で粘土にどのくらい変化がおこるか試験したもの。結果として「5%程度の水分量の差では粘土にした場合さほど影響が無い」(第3頁末行)と記載されている。

(17)甲第17号証:粘土製造試験3(平成20年11月4日製造)
特願昭63-278133の実施例より軽量粘土を製造し比較し、結果として「見た目も粘土自身も5%の水分の差では見分けが付かない」(第3頁末行)と記載されている。

(18)甲第18号証:軽量粘土試験報告書(平成21年3月4日)
(ア)「軽量微小素材の添加量を基準3部とし、その前後の0.2部の添加量の増減によって最終の製品にどの様に影響が起こるか確認為試験する。」(表頁)
(イ)「結論
上記試験結果から判る通り、主原料・軽量微小素材の添加量が3部を基準にして前後0.2部程度の差異では、試験1の結果(体積・硬度・色・手触り)と試験2・同3の結果とはほぼ同等であり、軽量微小素材の前後0.2部程度の差異により影響は無いと言える。」(試験結果第2頁)

(19)甲第19号証:日本フィライト株式会社の「EXPANCEL」パンフレット(2008年6月制作)
(ア)「EXPANCELマイクロスフェアーは小さなプラスチック球体です。
マイクロスフェアーは液状ガスを内包したポリマー殻で生成されています。
これらの球体の平均粒径は通常のグレードの場合約10-17ミクロンで、真比重は1000-1300kg/m^(3)です。
加熱された際、殻の内部のガス圧が増し、熱可塑性プラスチックの殻が軟化することでマイクロスフェアーの体積が劇的に増え、中空球状粒子になります。
完全に膨張した時、マイクロスフェアーの体積は40倍以上になります。
(真比重は0.03-0.07)一般的な膨張温度の範囲は80-190℃です。
・・・
エクスパンセルの製品には未膨張品と膨張品があります。
膨張済みマイクロスフェアーは軽量材として多方面に使われています。
・・・
特性
・・・
弾性
・・・」(第1頁)
(イ)第2頁上段に「未膨張マイクロスフェア」として「EXPANCEL WU」(Wet,Unexpanded microspheres)と「EXPANCEL DU」(Dry,Unexpanded microspheres)について、
「Solid content(%)」がそれぞれ、「60-80」、「>99」、
「Density of EXPANCEL(kg/m^(3))」がそれぞれ「1000-1300」、「?1000」と記載され、
また、「膨張マイクロスフェア」として「EXPANCEL WE」(Wet,Expanded microspheres)と「EXPANCEL DE」(Dry,Expanded microspheres)について、
「Solid content(%)」がそれぞれ、「?15」、「>99」、
「Density of EXPANCEL(kg/m^(3))」がそれぞれ「?30」、「30-70」と記載されている。
(ウ)第4頁上段には「エクスパンセル膨張品のグレード」として
「551 DE 40 d42」の「Particle Size μm(2)D(0.5):30-50」、「True Density kg/m^(3)(3):42±4」、
「551 WE 40 d36」の「Particle Size μm(2)D(0.5):30-50」、「True Density kg/m^(3)(3):36±4」、[Solid Content(1):15±2%」と記載され、「注意」として「(1)Particl Sizeは、平均粒子径を表すもので粒径範囲を示すものではありません。」と記載されている。

(20)甲第20号証:特開平11-156725号公報
(ア)「有機質中空体は、低沸点炭化水素をインサイト重合法により、塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合物の殻壁でマイクロカプセル化した熱膨張性微小球(例えば、粒径10?30μmのカプセルの内部に液体のイソブタンあるいはイソペンタン等の膨張剤(カプセル重量に対して10?15重量%)を含有する熱膨張性微小球)を加熱してカプセル内部の液体のイソブタンあるいはイソペンタン等の膨張剤を膨張させて得ることができる。」(段落【0035】)
(イ)「有機質中空体は、市販のものを用いることができる。例えば、エクスパンセル(Expancel)社製のエクスパンセル(EXPANCEL)DEシリーズ(より詳細には、551DE、551DE20、551DE80、461DE、461DE20、091DE、091DE80等の乾燥した膨張済みのもの)、エクスパンセル(EXPANCEL)WEシリーズ(より詳細には、551WE、551WE20、551WE80等の湿潤した膨張済みのもの)、松本油脂製薬株式会社製のマツモトマイクロスフェアーFシリーズ(F-20、F-30、F-40、F-50、F-80ED、F-80S、F-82、F-85、F-100)等がある。」(段落【0036】)

(21)甲第21号証:日本フィライト株式会社中島隆行から紫香楽教材粘土(株)青木社長宛の書簡
(ア)「軽量微小素材粉末は日本フィライト(株)が販売しているエクスパンセル551WEを使用したものである。
・・・
この会社が発明者の所に商品を持ち込んだ時に、その担当者は当方の目的が粘土の軽量化に使用することを知っていたために、飛散がひどく粘土製造の困難な乾燥品のDEではなく、水で湿性化したWEのみを持参し、説明したため、発明者が、551WE という製品を基準にして、発明のレシピを組み立ててきたことは無理のないことである。」(第2枚目1?9行)
(イ)「ところでそもそも水を含まない乾燥したマイクロバルーンを12部も添加した粘土の製造は可能であろうか。
発明者は特許明細書のとおり
軽量微小素材粉末 12部
パルプ繊維粉 18部
カルボキシメチルセルロース 12部
ポリオールエーテル 5部
常温水 53部
これにより嵩比重0.28の粘土を製造したものである。
粘土はサイズ及び体積がおよそ15cm×9.5cm×2.5cm=356.25cc これで重量は100g。此のうちもし12部がエクスパンセルの乾燥品とすれば12gである。
カタログの中の数値を見るとエクスパンセル膨張品の真比重は0.025?0.05であるが、実質的な体積に関する嵩比重は“0.02以下”となっている。
これは1000cc=20g すなわち1g=50cc
12gは50cc×12=600ccの体積になる。
わずか356.25ccの体積の粘土のなかに600ccの体積の材料を入れる事が不可能なことは自明である。
さらにこの粘土には軽量で嵩の高いパルプ繊維粉が18部も含まれているのである。
この粘土には12部の湿性のエクスパンセル551WEが含まれていたものであり、その固形分を計算するならばカタログにあるとおり、12×15%=1.8%のエクスパンセルが含まれていたのである。」(第2枚目10?末行)

(22)甲第22号証:大和教材製造所株式会社小野木泰志の宣誓書(平成20年12月5日)
(ア)「私は、大和教材製造所株式会社(・・・)に勤務し、軽量粘土の製造に43年間、従事しています。
当社では、紙粘土の軽量化の為に用いる有機中空微小空としては、松本油脂製薬株式会社製の「マツモトマイクロスフェアーF-E(膨張後ウエットタイプ)」を用いており、同社製の「マツモトマイクロスフェアーF-DE(膨張後ドライタイプ)」を用いることはありません。
同業者で、紙粘土の製造に、膨張後ドライタイプを用いているところは、聞いたことがありません。膨張後ドライタイプは、製造工程にて、袋から出したとたんに舞い散ってしまい、取り扱いが非常に困難だからです。このため、紙粘土製造では、有機中空微小空を用いるといえば、ウエットタイプを用いるのが、技術常識です。」(書面)

(23)甲第23号証:アイボン産業有限会社柘植泰夫の宣誓書(平成20年12月4日)
(ア)「私は、アイボン産業有限会社(・・・)にて、軽量粘土の製造に30年間、従事しています。
当社では、軽量粘土に用いる有機中空微小空としては、日本フィライト株式会社販売の「エクスパンセルWE」を用いています。・・・
同業者で、軽量粘土の製造に、膨張後ドライタイプを用いているところは、聞いたことがありません。粘土製造では、有機中空微小空を用いるといえば、ウエットタイプを用いるのが、技術常識です。
もし、上記膨張後ドライタイプを用いて粘土を製造するとしたら、袋から出したとたんに舞い散ってしまうことが予想されます。この場合、添加量を正確にコントロールすることが困難となり、目的とする粘土が製造できません。」(書面)

(24)甲第24号証:特開平11-209156号公報
(ア)「【請求項1】 合成樹脂粉末、粒径20?120μmの合成樹脂微小中空球体、・・・水とからなることを特徴とする耐水性軽量粘土」(【特許請求の範囲】)
(イ)「本発明に使用する合成樹脂微小中空球体は、低沸点の炭化水素等の液体を内包した合成樹脂製熱膨張性微小球体を加熱することなどによって形成した中空状の微小球体であって、その合成樹脂としては塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステルなどの各種の組合せの共重合体であることが望ましいが、これに限らない。合成樹脂微小中空球体の粒径は20?120μmであることが望ましい。合成樹脂微小中空球体の配合量としては、粘土全重量に対して1?7重量%が好ましく、1重量%未満では、粘土の軽量化が顕著でないおそれがあり、7重量%を越えると、粘土の手触りがふわふわしたものとなり、造形性が損なわれるおそれがある。」(段落【0009】)
(ウ)「実施例1
まず、エマルジョン形成用酢酸ビニル・ビニルエステル共重合樹脂粉末(ヘキスト合成株式会社製モビニールパウダーW380)44gと、アクリロニトリル・塩化ビニリデン共重合樹脂製微小中空粒子(松本油脂株式会社製マツモトマイクロスフェアーFー30E,平均粒径20?120μm,固形分10?15重量%、水85?90重量%)20gと、とうもろこし粉25g、界面活性剤3g、流動パラフィン3gと、水5gを容器に投入し、攪拌機で約30分混練して耐水性軽量粘土100gを作成した。」(段落【0017】)

(25)甲第25号証:特開2001-131329号公報
(ア)「【発明の実施の形態】本発明に使用する合成樹脂微小中空球体は、低沸点の炭化水素等の液体を内包した合成樹脂製熱膨張性微小球体を加熱、発泡することなどによって形成した中空状の微小球体であって、その合成樹脂としては塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステルなどの各種の組合せの共重合体であることが望ましいが、これに限らない。合成樹脂微小中空球体の粒径は20?150μmであることが望ましい。合成樹脂微小中空球体の嵩比重は0.01?0.04程度であることが望ましい。通常、この合成樹脂微小中空球体は、含水状態(水が70?90重量%)で市販されているものを使用することができる。」(段落【0007】)

(26)甲第26号証:株式会社ケット科学研究所HP(抄)
(ア)「Kett-製品紹介」の「物性測定器および関連機器」に「玄米・精米白度計C-300」が掲載され、その説明に「日本工業規格(JIS)Z8722に準じた測定方法で、お米の白さの程度(白度)を測る玄米・精米用の白度計です。」と記載されている。

(27)甲第27号証:審判請求書(紫香楽教材粘土株式会社の請求にかかる)
(28)甲第28号証:粘土製造試験
(ア)「製造日:平成21年1月26日
製造方法:本件特許第3597490号の配合量で実施「下記のマニュアル」
・・・
<1>白色有機中空微小球 0.35kg
(平均粒径100μm、L値50以上、弱アルカリ性)
<2>イエロー顔料色素(固形分) 0.19kg
(・・・・)
<3>カルボキシメチルセルロース 0.20kg
(エーテル化度:0.6)
<4>PVA 1.20kg
(重合度1,800、鹸化度95mol%、)
<5>広葉樹パルプ 0.98kg
(平均繊維長1mm)
<6>水 11.05kg
<7>フェノール系防腐剤 0.03kg
・・・
<1>の白色有機中空微小球をエクスパンセル551WE(ウエットタイプ 固形分15% 水分85%含有)のものとエクスパンセル551DE(ドライタイプ99%以上固形分のもの)の2タイプを使用して試験する。」(表頁、なお、○数字は<>数字と記載し、以下も同様。)
(イ)「結果」として第4頁(製造過程を第1頁とする。)に「551WE」では「ほぼ液体化してしまい粘土にはならない」ことが記載され、同頁の写真でも窺うことができる。
(ウ)「551DE」について「真空土機練機に入れさらに混練した後に包装機にかける」(製造過程を第1頁とする第2頁)、「<4>真空土練機にかけよく混ぜる」(同第3頁)

(29)甲第29号証:日本フィライト株式会社HP(2009/02/01)
(ア)「私共は多年化学品業界にあって、・・・昭和45年頃マイクロバルーンの将来性に着目し、本品の研究及び市場開発に取り組み・・・昭和49年6月英国フィライト社の日本国内総販売の指定を受け・・・日本フィライト株式会社を設立致しました。
また、昭和57年にはスウェーデン国の・・・エクスパンセル社製品、プラスチックバルーン「エクスパンセル」の国内一手販売権も得て、無機・有機マイクロスフィアビジネスを充実するに至りました。」(第1頁「御挨拶」本文1?10行)

(30)甲第30号証の1:「平成20年(ワ)第25354号判決」(平成21年9月11日判決言渡、東京地裁)
(31)甲第30号証の2:「判決確定証明申請書」(平成21年10月1日)
この申請書には、「平成20年(ワ)第25354号」事件について、平成21年9月25日の経過により確定したことが証明されている。

(32)甲第31号証:松本油脂製薬株式会社「マツモトマイクロスフェアーF-30・F-50」技術資料
(ア)「マツモトマイクロスフェアーF-30は塩化ビニリデン共重合物を殻壁として低沸点、炭化水素を内包する熱膨張性のマイクロカプセルです。粒径が10?20ミクロンの微小球ですので、種々の樹脂との組合せで塗工、含浸、混練などの工程を通じて独立多孔層を低温短時間に形成することができます。」(第1頁上段)
(イ)「1.未膨張粒子の性質
1)一般的性質
・・・
水分 約30%
比重 1.13(乾燥物の真比重)
最高膨張倍率(体積) 約70倍」(第1頁中段)

(33)甲第32号証:特開平2-123390号公報(甲第4号証の公開公報)
(ア)「本発明に使用する熱膨張性粒子は、外殻が塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリロニトリル共重合樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル共重合樹脂を主成分とし、内部に揮発性流体膨張剤としてプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素を内包製造方法等は、特公昭42-26524号公報に記載されたものである。本用途の場合は上記の粒子を加熱処理して膨張させた微小中球体を使用する。」(第2頁右上欄9?18行)
(イ)「本発明の実施例では具体的に、熱膨張性微小中空球12部、パルプ繊維粉18部、カルボキシメチルセルロース粉12部の粉末を撹拌混合し、均一な粉末混合物を製成し、別にポリオールエーテル粉5部を常温水53部に分散し、水溶液を調節して上記粉末混合物に添加し混練して製造した。
粘土の製造工程中、熱膨張性微小中空球が特有の弾力性を有するため熱膨張性微小中空球が破砕されることもほとんどなかった。
このようにして製造したの粘土の性状を次に述べる。
すなわち、固体比重測定方法(JIS-Z8807号に準拠)で本発明の粘土の比重を測定した結果、従来のシラスバルーンを主成分とした粘土のかさ比重が1.52であるのに対し、本発明の粘土のかさ比重は0.28となり、シラスバルーンを主成分とした従来に比して82パーセントの軽量化が達成できた。」(第2頁右下欄6行?第3頁左上欄3行)

(34)甲第33号証:白色度測定試験報告書(平成21年2月12日紫香楽教材粘土株式会社)
この報告書には、測定機材としてミノルタ株式会社のCM-3500dが分光測色計として使用され、ふわふわかるーん(製品)、かるーい紙ねんど(製品)などの測定が行われ、測定結果としてWI(白色度)、L*(明度)、L(明度)が記載されている。

(35)甲第34号証の1:JISハンドブック<31>「繊維」(2006)
(ア)「繊維製品の白色度測定方法 L1916
・・・
2.引用規格 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規定の一部を構成する。これらの引用規格は、その最新版(追補を含む。)を適用する。
・・・
JIS Z 8722 色の測定方法-反射及び透過物体色」(第934頁)

(36)甲第34号証の2:JIS「色の測定方法-反射及び透過物体色」(JIS Z8722^(:2009))
(37)甲第35号証:「平成20年(ワ)第25354号」原告第3準備書面第18、19頁
(38)甲第36号証:パトリス検索
(39)甲第37号証:特開2001-31829号公報

(40)甲第38号証:軽量微小素材タイプ別確認試験報告書(平成21年12月2日)
(ア)「1.試験試料
・・・
<1>エクスパンセル551WE <2>エクスパンセル551DE
・・・
2.各成分の配合
<2>-1エクスパンセル551WE使用 <2>-2エクスパンセル551DE使用
・・・
配合内容 <2>-1 <2>-2
1.軽量微小素材 12部 1.8部
2.カルボキシメチルセルロース 12部 12部
3.パルプ繊維粉 18部 18部
4.ポリオールエーテル粉 5部 5部
5.常温水 53部 63.2部
(53部+10.2部)
合計 100部 100部
ウエットタイプは15%が固形分で85%が水分の為ドライタイプを使用する場合、12部×15%=1.8で残りの10.2部は水を足さなければ同一とは言えない
・・・
<3>-1エクスパンセル551WE使用 <3>-2エクスパンセル551DE使用
・・・
配合内容 <3>-1 <3>-2
1.軽量微小素材 12部 12部
2.カルボキシメチルセルロース 12部 12部
3.パルプ繊維粉 18部 18部
4.ポリオールエーテル粉 5部 5部
5.常温水 53部 53部
合計 100部 100部
甲第4号証の実施例で軽量粘土を製造すると<2>-1と<2>-2は同じ粘土になる筈であるが、ウエットタイプで製造すると粘土になるが、同量をドライタイプで製造すると粘土にならなかった。
<4>-1
平成21年1月26日試験粘土
訴訟乙26号証WE使用粘土
1.白色有機中空微小球 0.35kg
2.イエロー顔料色素 0.19kg
3.カルボキしメチルセルロース 0.2kg
(なお、「し」は「シ」の誤記と認める。)
4.PVA 1.2kg
5.パルプ 0.98kg
6.防腐剤 0.03kg
7.常温水 11.05kg
合計 14kg」(第2?3頁)
(イ)「<4>エクスパンセル551WE使用粘土<4>は、本件特許発明の明細書の明細書記載の実施例の配合に基づき、含水タイプの(551WE)<1>を用いて作製した例である。<3>-2とは反対に水分過多となりべちゃべちゃの粘土にしかならず商品としては不適である。・・・(WE)を原料とする場合、軽量粘土の水分は(WE)に含まれる水分を考慮すると増加的に換算可能な事を意味する。」(第11頁)

(41)甲第39号証:試験報告書(平成21年1月28日財団法人化学物質評価研究機構)
この報告書は、紫香楽教材粘土株式会社が依頼し、軽量粘土中の有機中空微小球の分離操作及び添加量測定と水分量測定についての補足資料である。

(42)甲第40号証:粘土製造試験
白色有機中空微小球として「エクスパンセル551DE」を用いた試験では、「計測するも比重が軽すぎて飛散量が多い」ことが記載され、その様子が写真に掲載されている。

(43)甲第41号証:白色度測定試験報告書(平成21年11月18日紫香楽教材粘土株式会社)
株式会社ケツト科学社製のC-100を用いて、ふわふわかるーん(製品)、かるーい紙ねんど(製品)などの測定が行われ、白度の測定結果が載せられている。

(44)甲第42号証:コニカミノルタのHP(2009/12/21)
「CM-3500d分光測色計(分光タイプ、トップポート)」の仕様が掲載されている。

(45)甲第43号証:「HP-10試験成績表」(平成21年11月27日株式会社山田洋治商店)
(ア)「HP-10の試験成績」として「嵩比重(g/cc)・・・0.10以下」(表)

(46)甲第44号証:「第一工業製薬株式会社 製品安全データシート」(2008年11月28日)
製品:セロゲンEPの比重が約0.51(嵩比重)であることが記載(4/6頁「9.」中)されている。

(47)甲第45号証:日油株式会社(中島弘充)から紫香楽教材粘土(株)(青木雅幸)宛の「ユニオックス20000のかさ比重について」の電子メール(2009年12月9日)
(ア)「【測定結果】
ロット かさ比重
802161 0.28」(第1頁)

(48)甲第46号証の1:「美術教材」(2007美術教材・素材カタログ)株式会社クラフテリオ
(49)甲第46号証の2:「ザ・教材」(図工・美術教材・教具・備品カタログ)2007(株)美術工芸センター
(50)甲第46号証の3:「児童用学習材料2007カタログ」株式会社誠文社
(51)甲第46号証の4:「スクールページ平成19年度版」株式会社東栄社
(52)甲第46号証の5:「ぶんけい 教材教具カタログ」2007年度、株式会社文溪堂
(53)甲第46号証の6:「2007 教材総合カタログ」青葉出版
(54)甲第46号証の7:「2007小学校総合教材カタログ アーテック」株式会社アーテック
(55)甲第46号証の8:「総合カタログ ’90」新日本造形株式会社
甲46号証の1?8には、粘土のサイズ(体積)と重さが明記されている。
(56)検甲第1号証:商品ふわふわかる?ん
検甲第1号証は無効理由1についての証拠である。
(57)検甲第2号証:「エクスパンセル551WE」標本
(58)検甲第3号証:「エクスパンセル551DE」標本

V.被請求人の反論
1.被請求人は、請求人の上記無効理由2の主張に対して乙第1?35号証を提示して、答弁書及び口頭審理(口頭審理陳述要領書、第1回口頭審理調書を含む)、上申書において、これまで主張したことを整理すると、次のとおり反論している。
無効理由2については、本件訂正発明1、2及び6は、甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.乙号証の記載事項
(1)乙第1号証:「平成20年(ワ)第25354号」被告第一準備書面第1?10頁、表1
(2)乙第2号証:分析結果報告書(2008年7月16日)
(3)乙第3号証:軽量粘土の有機中空微小球の含有率測定(2008.7.18実験)
(4)乙第4号証:分析、試験等成績書(産セ第104-11044号、平成20年7月4日)
上記乙第1号証?乙第4号証は、殆ど請求人の無効理由1についての反証として提出されたものである。

以下の無効理由2に対する乙号証の記載事項は、次のとおりである。
(5)乙第5号証:粘土製造試験1(平成20年10月21日製造)
これは甲第15号証を乙号証として提示したもので、同じ内容である。
(6)乙第6号証:粘土製造試験2(平成20年11月4日製造)
これは甲第16号証を乙号証として提示したもので、同じ内容である。
(7)乙第7号証:粘土製造試験3(平成20年11月4日製造)
これは甲第17号証を乙号証として提示したもので、同じ内容である。
(8)乙第8号証:日本フィライト株式会社の「EXPANCEL」パンフレット(2008年6月制作)
これは甲第19号証と同じ証拠である。

(9)乙第9号証の1:日本フィライト株式会社の「EXPANCEL DE Expancel」パンフレット
(ア)「平均粒度 40?60ミクロン
粒径範囲 10ミクロン?100ミクロン
嵩比重 0.02以下
真比重 0.025?0.05
色 白色
水分 1%以下
DE=Dry、Expanded microspheres
(solid content>99%)
551DE
・・・
・・・
WE=Wet、Expanded microspheres
(solid content15±2%)
551WE」(第2頁)
(イ)「DEには毒性はありませんが非常に軽いので埃のように飛び散ります。」(末頁「取扱い」)
(ウ)「膨張済みエクスパンセルDE(・・・・・・)
・・・・・・
粒子径 真密度(kg/m^(3))
551DE 30?50μm 42±4
・・・・・・
エクスパンセルDEの特徴は、何と云ってもその軽量性で551DEの場合、その嵩密度は、0.02(g/cc)=1l=20gです。」(3頁)

(10)乙第9号証の2:日本フィライト株式会社の「EXPANCEL」パンフレット(1999年8月制作)
(ア)「EXPANCELマイクロスフェアーは小さなプラスチック球体です。
マイクロスフェアーは液状ガスを内包したポリマー殻で生成されています。
これらの球体の平均粒径は通常のグレードの場合約10-17ミクロンで、真比重は1000-1300kg/m^(3)です。
加熱された際、殻の内部のガス圧が増し、熱可塑性プラスチックの殻が軟化することでマイクロスフェアーの体積が劇的に増え、中空球状粒子になります。
完全に膨張した時、マイクロスフェアーの体積は40倍以上になります。
(真比重は0.03-0.07)一般的な膨張温度の範囲は80-190℃です。
・・・
エクスパンセルの製品には未膨張品と膨張品があります。
膨張済みマイクロスフェアーは軽量材として多方面に使われています。
・・・
特性
・・・
弾性
・・・」(第1頁)
(イ)第2頁上段に「未膨張マイクロスフェア」として「EXPANCEL WU」(Wet,Unexpanded microspheres)と「EXPANCEL DU」(Dry,Unexpanded microspheres)について、
「Solid content(%)」がそれぞれ、「60-80」、「>99」、
「Density of EXPANCEL(kg/m^(3))」がそれぞれ「1000-1300」、「?1000」と記載され、
また、「膨張マイクロスフェア」として「EXPANCEL WE」(Wet,Expanded microspheres)と「EXPANCEL DE」(Dry,Expanded microspheres)について、
「Solid content(%)」がそれぞれ、「?15」、「>99」、
「Density of EXPANCEL(kg/m^(3))」がそれぞれ「?30」、「30-70」と記載されている。
(ウ)第4頁上段には「エクスパンセル膨張品のグレード」として
「551DE」の「Particle Size」が「30-50μm」、「True Density」が「42±4kg/m^(3)」、
「551WE」の「Particle Size」が「30-50μm」、「True Density」が「36±3kg/m^(3)」と記載されている。

(11)乙第10号証:平成5年11月25日付け意見書(昭和63年第278133号の特許出願に関し、拒絶理由通知に対して出願人の紫香楽教材粘土株式会社ほか1名から提出)
(ア)「このため特公昭51-893の彫塑材は実施例にあるとおり水分の比率が77%と非常に多い。(ちなみに本発明の水分は53%に留まる。)材料全体の中で、一番比重の大きなものは水であるため、特公昭51-893の彫塑材を実施例どおりに作れば比重が大きくなることは避けられない。」(第2頁下から3行?第3頁1行)

(12)乙第11号証:特開2001-131329号公報(甲第25号証)
(ア)「【発明の実施の形態】本発明に使用する合成樹脂微小中空球体は、低沸点の炭化水素等の液体を内包した合成樹脂製熱膨張性微小球体を加熱、発泡することなどによって形成した中空状の微小球体であって、その合成樹脂としては塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステルなどの各種の組合せの共重合体であることが望ましいが、これに限らない。合成樹脂微小中空球体の粒径は20?150μmであることが望ましい。合成樹脂微小中空球体の嵩比重は0.01?0.04程度であることが望ましい。通常、この合成樹脂微小中空球体は、含水状態(水が70?90重量%)で市販されているものを使用することができる。」(段落【0007】)
(イ)「実施例1
メチルメタクリレートーアクリロニトリル共重合系樹脂製微小中空粒子分散液(松本油脂株式会社製マツモトマイクロスフェアーFー50E、平均粒径20?80μm、固形分15?20重量%、水80?85重量%)70gと、ポリビニルアルコール10gと、ポリエチレンオキサイド1gと、繊維粉末4gとを混練機に入れてよく混練した。これに酢酸ビニル樹脂エマルジョン(昭和高分子株式会社製ポリゾールS-6,固形分59±2重量%、可塑剤4?10重量%)10gと、モノゲン170(第一工業製薬株式会社製の高級アルコール硫酸エステル)3g、水2gを加え、さらに混練して軽量粘土100gを製造した。得られた粘土の折れ曲げ耐久性試験の結果は、表1に示すように、屈曲角度180度でも折れず、ひびもはいらなかった。」(段落【0026】)

(13)乙第12号証:特開2001-234081号公報
(ア)「【発明の実施の形態】本発明に使用する合成樹脂微小中空球体は、低沸点の炭化水素等の液体を内包した合成樹脂製熱膨張性微小球体を加熱、発泡することなどによって形成した中空状の微小球体であって、その合成樹脂としては塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステルなどの各種の組合せの共重合体であることが望ましいが、これに限らない。合成樹脂微小中空球体の粒径は20?150μmであることが望ましい。合成樹脂微小中空球体の嵩比重は0.01?0.04程度であることが望ましい。通常、この合成樹脂微小中空球体は、含水状態(水が70?90重量%)で市販されているものを使用することができる。」(段落【0007】)
(イ)「合成樹脂微小中空球体の配合量としては、粘土全重量に対して5?15重量%(乾燥重量で)が好ましく、5重量%未満では、他成分が多くなり、べとつき、造形性が損なわれるおそれがあり、しかも粘土の軽量化が顕著でないおそれがあり、15重量%を越えると、乾燥後の造形物が外的圧力に対して破損しやすくなる傾向がある。」(段落【0008】)
(ウ)「実施例1
メチルメタクリレートーアクリロニトリル共重合系樹脂製微小中空粒子分散液(松本油脂株式会社製マツモトマイクロスフェアーFー50E、平均粒径20?80μm、固形分15?20重量%、水80?85重量%)70gと、ポリビニルアルコール10gと、ポリエチレンオキサイド1gと、繊維粉末4gとを混練機に入れてよく混練した。これに酢酸ビニル樹脂エマルジョン(昭和高分子株式会社製ポリゾールS-6,固形分59±2重量%、可塑剤4?10重量%)10gと、モノゲン170T(第一工業製薬株式会社製の高級アルコール硫酸エステル)3g、水2gを加え、さらに混練して造形用軽量粘土100gを製造した。得られた粘土は手への付着がなく、しかもべたつきがなく、伸展性、表面平滑性、粘土の硬さもいずれも、すなわち手触り、作業性において優れており、表1に示すように10人中8?10人が良いという評価が得られた。折れ曲げ耐久性試験の結果は、表1に示すように、屈曲角度180度でも折れず、ひびもはいらなかった。」(段落【0027】)

(14)乙第13号証:「セルロースの構造からみた生物の多様性」(杉山淳司、木材研究・資料 第32号(1996)16?22頁)
(ア)「セルロースの密度(1.59g/cm^(3))」(第17頁下から10行)

(15)乙第14号証:ケミカルブック カルボキシメチルセルロースナトリウムn≒500製品概要
(ア)「カルボキシメチルセルロースナトリウムn≒500物理性質
・・・
比重(密度)1.6g/cm^(3)」(第1頁)

(16)乙第15号証:特開2001-131256号公報
(ア)「・・・ポリオールの密度は、0.5?1.5(g/ml)、・・・」(段落【0021】)

(17)乙第16号証:「有機微小中空球の配合量と粘土の比重の関係」の図
有機微小中空球の配合量[重量部]と粘土の比重[-]の関係を図示している。

(18)乙第17号証:「真比重とかさ比重について」の図(添付図1)
(a)非水タイプや(b)含水タイプの微小中空球にパルプ繊維、CMC、ポリエーテルポリオール及び水を加えて所定容器に充填した(c)粘土の様子が窺える。

(19)乙第18号証:JIS Z8807^(-1976)「固体比重測定方法」
(20)乙第19号証:粘土製造試験(平成21年1月26日製造)
これは甲第28号証を乙号証として提示したもので、同じ内容である。

(21)乙第20号証:「有機微小中空球の比重と粘土の比重との関係」の図(添付図2)
有機微小中空球の比重が0.02をラインA、0.042をラインB、0.05をラインCとして有機微小中空球の配合量と粘土の比重との関係を図示したもの。一定の粘土の比重でみれば、有機微小中空球の比重によって有機微小中空球の配合量が変化することが分かる。

(22)乙第21号証:「パルプ繊維の比重と粘土の比重との関係」の図(添付図3)
パルプ繊維の比重が1をラインA、1.59をラインB、2をラインCとして、有機微小中空球の配合量と粘土の比重との関係を図示したもの。A、B、Cの有機微小中空球の配合量と粘土の比重の関係はパルプ繊維の比重に無関係にほぼ同じである。

(23)乙第22号証:「CMCの比重と粘土の比重との関係」の図(添付図4)
CMCの比重が1をラインA、1.6をラインB、2.1をラインCとして、有機微小中空球の配合量と粘土の比重との関係を図示したもの。A、B、Cの有機微小中空球の配合量と粘土の比重の関係はCMCの比重に無関係にほぼ同じである。

(24)乙第23号証:「ポリエーテルポリオールの比重と粘土の比重との関係」の図(添付図5)
ポリエーテルポリオールの比重が0.5をラインA、1をラインB、1.5をラインCとして、有機微小中空球の配合量と粘土の比重との関係を図示したもの。A、B、Cの有機微小中空球の配合量と粘土の比重の関係はポリエーテルポリオールの比重に無関係にほぼ同じである。

(25)乙第24号証:「PYCNOMETERによるEXPANCELの密度測定」(Technical Bulletin No.26 和訳)
ピクノメーターを使用して、P_(1)(V_(cell)-V_(sample))=N_(cell)×R×T(n_(cell)=cell chamber内のmol gasの量、R=一定量のガス、T=温度の関係からV_(sample)を求め、密度を測定することが記載されている。

(26)乙第25号証:「DENSITY MEASUREMENT OF EXPANCEL WITH PYCNOMETER」(Technical Bulletin no26)
乙第24号証の英文資料

(27)乙第26号証:紙の基礎講座HP抜粋「紙の品質とトラブル対応あれこれ(その5)」(2009/11/26)
「紙を構成しているパルプ繊維の比重が、1.5くらい」であることが記載されている。

(28)乙第27号証:「粉末セルロース KCフロック」日本製紙ケミカル株式会社(’06.05-03<S>)
「KCフロック」は木材繊維であること(第1頁上段)、その真比重が1.55g/cm^(3)であること(第2頁第1行)が記載されている。

(29)乙第28号証:日本フィライト株式会社(中島隆行)から紫香楽教材粘土(株)(青木社長)宛の書簡
これは甲第21号証を乙号証として提示したもので、同じ内容である。
(30)乙第29号証:大和教材製造所株式会社小野木泰志の宣誓書
これは甲第22号証を乙号証として提示したもので、同じ内容である。
(31)乙第30号証:アイボン産業有限会社柘植泰夫の宣誓書
これは甲第23号証を乙号証として提示したもので、同じ内容である。
(32)乙第31号証:粉末状パルプ繊維及び飛散状態の写真

(33)乙第32号証:特開2005-281643号公報
(ア)「充填材は、・・・超微粒子状無水シリカ粉末などの合成シリカを使用することが好ましい。」(段落【0020】)

(34)乙第33号証:特開2006-330412号公報
(ア)「充填材は、・・・超微粒子状無水シリカ粉末などの合成シリカを使用することが好ましい。・・・」(段落【0022】)

(35)乙第34号証:特開平9-202659号公報
(ア)「【請求項1】 繊維素材1?20重量%、澱粉4?60重量%を含み、残部は糊剤、水及び充填材からなる粘土であって、上記糊剤は疎水性樹脂とポバールの共重合体1?20重量%を含むことを特徴とする工芸用粘土
・・・
【請求項9】 上記多孔質材がシラスバルーンであることを特徴とする請求項8の工芸用粘土
【請求項10】 上記多孔質材が発泡樹脂であることを特徴とする請求項8の工芸用粘土」(【特許請求の範囲】)
(イ)「【作用】本発明の工芸用粘土は、・・・充填剤は、シラスバルーンのような多孔質材の微粉末、タルク等、従来用いられているものの中から目的に応じて適宜に選ぶことが出来るが、多孔質材を用いれば軽量となり、この観点からは特に発泡樹脂を用いることが好ましい。」(段落【0006】)

(36)乙第35号証:「マツモトマイクロスフェアーF-30E配合粘土の低比重化の件」についての松本油脂製薬株式会社(武田)から株式会社ケイ・プロダクツ(山室社長)宛の書簡
製造後分析値の確認、及びキープサンプルの再分析(静岡・八尾相互分析値確認)を実施し、それぞれの真比重:0.022?0.026、固形分(%):9.0?13.0の分析値を表にして記載してある。

VI.当審の判断
1.本件訂正発明1について
甲第4号証には、記載事項(ア)に「粒子中に気体を内包する軽量微小素材を主素材とし、これに合成粘結剤と、馴合液材と、添加物とを加えて構成される軽量粘土において、上記軽量微小素材が粒径1?200ミクロンの微小中空球であり、その外殻が単一の空間を内包し、該外殻がアクリロニトリルないし塩化ビニリデンを少なくとも一成分とする共重合樹脂から形成される軽量粘土」が記載されている。この記載中の「軽量微小素材」について、記載事項(エ)に「外殻は・・・気体を内包し」、「嵩比重は0.01?0.05に形成され、極めて軽量」であることが記載されている。また、「軽量微小素材」、「合成粘結剤」、「馴合液材」及び「添加物」の添加量について、記載事項(オ)に「本発明の軽量粘土においては、軽量微小素材粉末を3?20部(重量部)、添加物としての繊維粉を10?3部、合成粘結剤であるカルボキシメチルセルロースを10?20部、それぞれ粉末にして混合撹拌し」、「馴合液材として水50?60部にポリオールエーテル粉を3?8部添加」することが記載されている。なお、この記載事項(オ)の「繊維粉を10?3部」は、後段で「添加物である繊維粉の添加量は、10部未満では結合材としての働きが不十分で、30部を超えると水を多量に保存するので軽量化が損なわれる。」(第5欄2?4行)及び「本発明の実施例では・・・パルプ繊維粉18部」(記載事項(キ))と記載されていることからみると、「繊維粉を10?30部」の誤記であると認められる。また、この記載事項(オ)の「軽量微小素材粉末」については、「軽量微小素材」が「粒子中に気体を内包する」ものであることから「軽量微小素材粒子」であるといえるところ、甲第4号証では、実施例において「軽量微小素材粒子」(記載事項(エ))、「軽量微小素材粉末」(記載事項(オ))と記載し、「粒子」と「粉末」を区別なく使用しており、「軽量微小素材粒子」、「軽量微小素材粉末」は、要素に着目するか、集合でみるか、といった形態の呼称上の違いがあるにせよ、共に「軽量微小素材」を意味することは明らかである。
これらの記載を本件訂正発明1の記載振りに則して整理すると、
甲第4号証には「粒子中に気体を内包する軽量微小素材を主素材とし、これに合成粘結剤と、馴合液材と、添加物とを加えて構成される軽量粘土において、上記軽量微小素材は、外殻がアクリロニトリルないし塩化ビニリデンを少なくとも一成分とする共重合樹脂から形成され、粒径が1?200ミクロン、嵩比重が0.01?0.05に形成され、極めて軽量の微小中空球であり、軽量微小素材を3?20部(重量部)、添加物としての繊維粉を10?30部、合成粘結剤であるカルボキシメチルセルロースを10?20部、馴合液材として水50?60部、ポリオールエーテル粉を3?8部添加した軽量粘土。」の発明(以下、「甲第4発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件訂正発明1と甲第4発明を対比すると、
甲第4発明の「粒子中に気体を内包する軽量微小素材」が、「微小中空球」であって「断面が二重円状の構造」(記載事項(コ)、【第1図】)であり、外殻がアクリロニトリルないし塩化ビニリデンを少なくとも一成分とする共重合樹脂から形成され」ていることから、本件訂正発明1の「有機中空微小球」に相当し、甲第4発明の「合成粘結剤」及びその「カルボキシメチルセルロース」は、本件訂正発明1の「極性化合物」及びその「カルボキシル基含有化合物」に相当する。また、甲第4発明の軽量微小素材の「粒径が1?200ミクロン」については、それが粒径範囲を示しているとみることができるところ、その平均粒径が「1?200ミクロン」の範囲内にあることは明らかであって、一般的に工業製品における粒径分布のピ-クは大凡粒径範囲の中心に近いところにあること、また、甲第24号証の記載事項(ア)及び(ウ)に記載されるとおり、「軽量粘土」の「合成樹脂微小中空球体」について「粒径20?120μm」が実施例において「平均粒径20?120μm」とされているなど(この他、乙第11号証の記載事項(ア)及び(イ)、乙第12号証の記載事項(ア)及び(ウ)参照)、「粒径」の範囲と「平均粒径」がほぼ重なるものと認識されていることを勘案すれば、甲第4発明の軽量微小素材の「粒径が1?200ミクロン」は、本件訂正発明1の有機中空微小球の平均粒径の「30?150μm」の範囲と重複するものとみることができる。また、「合成粘結剤であるカルボキシメチルセルロースを10?20部」(重量部)は、本件訂正発明1の極性化合物のカルボキシル基含有化合物の添加量を「全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値」とすることと「10?20重量%」で重複・一致している。なお、「重量部」と「重量%」は必ずしも同じ概念ではないが、甲第4号証の実施例では「軽量微小素材粉末12部、パルプ繊維粉18部、カルボキシメチルセルロース粉12部、ポリオールエーテル粉5部、常温水53部」(記載事項(キ))の添加量がトータル100部であることから、甲第4号証においては「重量部」は「重量%」とみなすことができる。
してみると、両者は、「有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、前記有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、前記極性化合物が、カルボキシル基含有化合物であるとともに、添加量を、全体量に対して、10?20重量%の範囲内の値とし、かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有する軽量粘土」で一致し、以下の点で相違する。

相違点a:本件訂正発明1が「有機中空微小球」の「添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値と」しているのに対し、甲第4発明では、「軽量微小素材を3?20部(重量部)」添加している点
相違点b:本件訂正発明1が、「水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とする」のに対し、甲第4発明では、「水50?60部」添加している点

そこで、これらの相違点について検討する。

(A)相違点aについて
(一)相違点の検討に先だって、本件出願当時、有機中空微小球には、膨張品、未膨張品があり、また、各々、含水(Wet)タイプと非水(Dry)タイプの両タイプが知られており(甲第20号証の記載事項(イ)、乙第9号証の1の記載事項(ア)、乙第9号証の2の記載事項(ア)、(イ)。なお、乙第9号証の1には発行日の記載がないが、被請求人は、口頭審理陳述要領書(第4頁(4))において「ちなみに、乙第9号証の1に、甲第4号証の出願当時の軽量化材の商品カタログを示します」とし、「乙第9号証の1」を「乙第9号証の2に示されるカタログ(1999年8月発行)以前の商品カタログである」との説明を受けて日本フィライト株式会社中島隆行社長から入手している。)、そのタイプによって、固形分・水分比率に大きな差があり、有機中空微小球がどのタイプのものであるかが、軽量粘土の配合における有機中空微小球自体(固形分)や水の添加量に少なからず影響を及ぼすと考えられることから、相違点aに係る本件訂正発明1の「添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値と」した「有機中空微小球」と甲第4発明の「3?20部(重量部)」添加した「軽量微小素材」が同じタイプであるか否か、について検討する。
そこでまず、本件訂正発明1の「有機中空微小球」についてみてみると、
本件訂正発明1には「有機中空微小球」のタイプについて何ら特定はない。しかしながら、本件明細書には、従来の技術について、「有機中空微小球の添加量が多いために、それにつれて、発泡ガス(発泡液体)が残留した状態の、いわゆる未発泡の有機中空微小球が多く存在しているという問題が見られ・・・軽量粘土を、ポリエチレンフィルム等の包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇して、高温状態になった場合に、残留した発泡ガスによって、包装材で被覆された軽量粘土が、当初の1.2?3倍程度の容積に膨張するという問題(以下、膨張問題)が見られた。」(段落【0004】)、「本発明は、・・・包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇して、高温状態になった場合であっても膨張問題を解消して優れた保管性が得られる・・・軽量粘土およびその製造方法を提供することを目的とする」(段落【0006】)、「これらの有機中空微小球のうち、特に、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂からなる外殻を有する有機中空微小球は、製造が容易な反面、加熱時に所望の大きさに膨張させることができることからより好ましい。」(段落【0016】)と記載され、さらに、「有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%の範囲内の値とする・・・添加量が3重量%以上になると、軽量粘土の造形性や取り扱いが著しく低下するとともに、残留する未発泡の有機中空微小球が多くなり、包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇した場合に、包装材が膨張し、保管性が著しく低下するためである。」(段落【0022】)と記載されている。
これらの記載から、本件訂正発明1は、有機中空微小球について、従来、発泡済のものを用いたとしても添加量が多いと、未発泡のものが多く膨張するという膨張問題を、添加量の上限値を3重量%として解消したものといえるから、本件訂正発明1の有機中空微小球が「膨張品」であることは明らかである。このことは、本件出願前に軽量粘土に添加する有機中空微小球として、膨張品が普通に用いられていたこと(甲第24号証の記載事項(イ)、甲第25号証(乙第11号証)の記載事項(ア)、甲第22号証、甲第23号証)とも矛盾しない。
次に、本件訂正発明1の「有機中空微小球」が含水(Wet)タイプと非水(Dry)タイプのいずれのタイプかについてみてみると、本件訂正明細書をみてもこれが如何なるタイプのものであるか明確な記載はない。
しかしながら、本件訂正発明1には、「前記有機中空微小球の・・・添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、・・・かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とする」と記載され、軽量粘土全体量に対する有機中空微小球の添加量と水の添加量を各別に数値(重量%)をもって特定していることから、本件訂正発明1に係る「有機中空微小球の・・・・添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満」とする事項の、「有機中空微小球」が、配合される「水」とは区分され、最終調整された「水を含まない」ものであることを意味する、すなわち、「有機中空微小球」が非水タイプのものか、或いは、水を含まない有機中空微小球それ自体(固形分に相当)であるとみることが自然である。
また、本件明細書には、段落【0047】に、実施例の軽量粘土の配合材料として、
「<1>白色有機中空微小球 0.35kg
(平均粒径100μm、L値50以上、弱アルカリ性)
<2>イエロー顔料色素(固形分) 0.19kg
(・・・・)
<3>カルボキシメチルセルロース 0.20kg
(エーテル化度:0.6)
<4>PVA 1.20kg
(重合度1,800、鹸化度95mol%、)
<5>広葉樹パルプ 0.98kg
(平均繊維長1mm)
<6>水 11.05kg
<7>フェノール系防腐剤 0.03kg」
と記載されている。この「白色有機中空微小球」の「0.35kg」は重量%換算で「2.5%」であり、本件訂正発明1の数値範囲内の値となっている。
この実施例に関し、請求人が提出した甲第28号証によれば、上記実施例の軽量粘土と同じ配合割合で、白色有機中空微小球をエクスパンセル551WE(ウエットタイプ 固形分15% 水分85%含有)のものとエクスパンセル551DE(ドライタイプ99%以上固形分のもの)の2タイプを使用して粘土製造試験が行われ、結果として「551WE」(含水タイプ)では「ほぼ液体化してしまい粘土にはならない」ことが開示されている(記載事項(ア)?(イ))。また、甲第38号証をみると、「本件特許発明の明細書記載の実施例の配合に基づき、含水タイプの(551WE)を用いて粘土を作製した場合、水分過多となりべちゃべちゃの粘土にしかならず商品としては不適である」(記載事項(ア)、(イ))ことが報告されている。これらの結果や報告によれば、上記実施例の「白色有機中空微小球」は「エクスパンセル」を上記実施例と同じ配合割合で使用したものでは「含水タイプ」ではないと推認することができる。現に、被請求人は、「上記実施例の有機中空微小球は、非水タイプのものである」と陳述(第1回口頭審理調書)している。
そして、有機中空微小球に関し、被請求人は、平成21年8月12日付け意見書においては「請求項1」等における「水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値にする」ことについて「軽量粘土を配合するに際して、最終的に調整された水の配合量を規定したもの」であると主張(第4頁(3)-2)しており、これは、取りも直さず「有機中空微小球」が「配合される水」とは区分され、最終調整された「水を含まない」ものであることを意味している。
さらに、被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「本件特許発明は,軽量粘土全体量に対する有機中空微小球の添加量と水の添加量を各別に数値(重量%)をもって特定しているのであるから「有機中空微小球の・・・添加量を,全体量に対して,0.1重量%?3重量%未満」とする構成の,有機中空微小球の重量%は,有機中空微小球それ自体のもの,すなわち,水を含まないものを意味することは,特許請求の範囲の記載から明らかというべきである。」との判決(「平成20年(ワ)第25354号」)を踏まえ、「本件特許発明の請求項1等において、軽量化材と、水と、を別物として、配合量を記載していることは明白であって、発明の構成として、疑義がない」旨を述べている(第3頁(2))。
以上のことに照らせば、本件訂正発明1の「添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値と」した「有機中空微小球」は、「配合される水」とは区分され、最終調整された「水を含まない」ものであり、非水タイプのものか、或いは、水を含まない有機中空球それ自体(固形分に相当)であると解するのが相当であるといえる。

(二)一方、甲第4発明の「軽量微小素材」についてみてみると、
甲第4発明の「軽量微小素材」は「外殻がアクリロニトリルないし塩化ビニリデンを少なくとも一成分とする共重合樹脂から形成され、粒径が1?200ミクロン、嵩比重が0.01?0.05に形成され、極めて軽量の微小中空球」というものである。これが具体的に如何なるものであるのか甲第4号証をみても明確な記載はないが、この「軽量微小素材」は「嵩比重が0.01?0.05」に形成された「極めて軽量の微小中空球」であり、甲第4号証の出願当時の軽量化材の商品カタログを示すとして提示された乙第9号証の1に、「嵩比重 0.02以下、真比重 0.025?0.05」、「DE=Dry、Expanded microspheres(solid content>99%)551DE」、「WE=Wet、Expanded microspheres(solid content15±2%)551WE」と記載され、また、乙第9号証の2の記載事項(イ)に「未膨張マイクロスフェア」の「EXPANCEL WU」(Wet,Unexpanded microspheres)と「EXPANCEL DU」(Dry,Unexpanded microspheres)の「Density of EXPANCEL(kg/m^(3))」がそれぞれ「1000-1300」(換算値1.0?1.3)、「?1000」(?1.0)と記載され、「膨張マイクロスフェア」の「EXPANCEL WE」(Wet,Expanded microspheres)と「EXPANCEL DE」(Dry,Expanded microspheres)の「Density of EXPANCEL(kg/m^(3))」がそれぞれ「?30」(換算値?0.03)、「30-70」(換算値0.03?0.07)と記載されていることからみれば、甲第4号証の「軽量微小素材」は、「Expanded microspheres」(膨張品)と同じオーダーであり、「Unexpanded microspheres」(未膨張品)とは2桁も異なるものといえる。そして、甲第4号証の公開公報である甲第32号証をみてみると、記載事項(ア)には「本発明に使用する熱膨張性粒子は、外殻が塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリロニトリル共重合樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル共重合樹脂を主成分とし、内部に揮発性流体膨張剤としてプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素を内包製造方法等は、特公昭42-26524号公報に記載されたものである。本用途の場合は上記の粒子を加熱処理して膨張させた微小中球体を使用する。」と記載されていることから、甲第4号証の「軽量微小素材」は膨張品であることは明らかである。
しかしながら、この「軽量微小素材」が、含水タイプであるのか非水タイプであるのか判然としない。
そこで、、甲第4発明の「軽量微小素材」の上記「嵩比重」から、含水タイプと非水タイプについて検討してみると、
含水タイプと非水タイプの「軽量微小素材」として請求人が用いた「EXPANCEL(エクスパンセル)」について、上述したとおり、甲第4号証の出願当時の軽量化材の商品カタログと考えられる乙第9号証の1には、「嵩比重 0.02以下」、「真比重 0.025?0.05」、「551DE」および「551WE」が記載されている(記載事項(ア))。また、同号証には、「551DE」の「真密度」が「42±4kg/m^(3)」(換算値0.042±0.004)であり、「嵩密度」が「0.02g/cc」(換算値0.02)であることが記載されている(記載事項(ウ))。この記載によれば、エクスパンセル膨張品では、嵩比重と真比重が同じではなく、「551DE」では、嵩比重が0.02、真比重が大凡0.042であることが分かる。しかしながら、「551WE」の「嵩比重」と「真比重」との関係は必ずしも明らかではなく、仮に、「551WE」が上記「嵩比重 0.02以下」の数値範囲にあるとしても、「551DE」と「551WE」の「嵩比重」の数値範囲は、何れも「軽量微小素材」の「嵩比重」が「0.01?0.05」の範囲にあることから、「軽量微小素材」が含水タイプであるのか非水タイプであるのか明らかとはいえない。
また、念のため、乙第9号証の1以後の商品カタログである乙第9号証の2をみておくと、その「EXPANCEL」パンフレットには膨張品である「551DE」の「True Density」が「42±4kg/m^(3)」、「551WE」の「True Density」が「36±3kg/m^(3)」と記載(記載事項(ウ))されている。この記載によれば「EXPANCEL 551DE」(膨張・非水タイプ)は、「真比重」が「42±4kg/m^(3)」(換算値0.042±0.004)、「EXPANCEL 551WE」(膨張・含水タイプ)は「真比重」が「36±3kg/m^(3)」(換算値0.036±0.003)とみることができる。してみると、甲第4発明の「軽量微小素材」の「嵩比重」の「0.01?0.05」と、エクスパンセル膨張品の非水タイプの真比重の0.042±0.004および含水タイプの真比重の0.036±0.003とを対比しても、上記したとおり、エクスパンセル膨張品では「真比重」と「嵩比重」とが同じでない上、仮に粒径がミクロンオーダーの「軽量微小素材」において真比重と嵩比重に大差はなく、甲第16発明の嵩比重を実質的に真比重と同様に取り扱うことができたとしても、甲第16発明の「軽量微小素材」の「嵩比重」が「0.01?0.05」の範囲にあることから、「軽量微小素材」が含水タイプであるのか非水タイプであるのか明らかであるとはいえない。
ところで、上記甲第32号証には、記載事項(イ)に「固体比重測定方法(JIS-Z8807号に準拠)で本発明の粘土の比重を測定した結果、従来のシラスバルーンを主成分とした粘土のかさ比重が1.52であるのに対し、本発明の粘土のかさ比重は0.28とな」ることが記載され、この「粘土のかさ比重が0.28」と「軽量微小素材の嵩比重が0.01?0.05」とから、被請求人は、平成21年11月19日付け上申書(第2頁?第5頁)において、「甲第4号証の粘土の比重推定」を非水タイプの熱膨張性微小中空球(551DE:42±4kg/m^(3))と含水タイプ(551WE:36±4kg/m^(3))で行い、結論として「甲第4号証の粘土の配合例において非水タイプを用いていることは明白である」旨主張している。しかしながら、この推定は、全て真比重を用いたものであって、この推定した値が粘土の各成分の真比重を用いて算出したものであるから、粘土の真比重とみることができるのに対し、粘土製造において脱気工程があることは甲第28号証(乙第19号証)の記載事項(ウ)で示されるとおりであるが、有機中空微小球、パルプ繊維粉の混入された粘土において完全に脱気がなされているか不明であり、粘土中に気泡が混入されていれば、粘土の嵩比重は真比重より小さくなることから、粘土の真比重の推定値を甲第4号証の粘土の嵩比重と直接対比することはできない。この点に関し、被請求人は、平成21年12月7日の上申書(3)において、乙第16号証?乙第23号証により「パルプ繊維粉の真比重、カルボキシメチルセルロースの真比重、およびポリオールエーテルの真比重が多少変動したとしても・・・真比重で計算することが妥当である」(第4頁26?28行)旨主張するが、上記した気泡がある程度混入されたときに、この主張が妥当なものであるのか判然としない。また一方で、請求人は、甲第32号証における「粘土のかさ比重が0.28」との記載について、「必ずしも正確ではない値を残存させておくのは適当でないので、甲第32号証に記載した軽量粘土のかさ比重の値『0.28』を後に削除したのである。」(平成21年12月24日付け上申書(1)第5頁4?6行)と述べており、甲第32号証の「粘土のかさ比重が0.28」自体の根拠も不透明である。
以上のことからすれば、甲第4号証の「軽量微小素材」が含水タイプであるのか、非水タイプであるのか比重の観点から断定することはできない。

しかしながら、甲第4号証の記載事項(キ)に、製造に関し「軽量微小素材粉末12部、パルプ繊維粉18部、カルボキシメチルセルロース粉12部の粉末を撹拌混合し、均一な粉末混合物を製成し、別にポリオールエーテル粉5部を常温水53部に分散し、水溶液を調節して上記粉末混合物に添加し混練して製造する」ことが記載されている。この実施例の製造について、「軽量微小素材タイプ別確認試験報告書」として、甲第38号証に上記甲第4号証の実施例と同じ配合で、「軽量微小素材粉末」として「<3>-1エクスパンセル551WE」と「<3>-2エクスパンセル551DE」を用いて試験を行い、「ウエットタイプで製造すると粘土になるが、同量をドライタイプで製造すると粘土にならなかった」と報告(記載事項(ア))されている。

ここで、甲第4発明の「軽量微小素材」と「エクスパンセル551WE、DE」との関係をみておくと、上述した乙第9号証の1には、「DE=Dry、Expanded microspheres(solid content>99%)551DE」及び「WE=Wet、Expanded microspheres(solid content15±2%)551WE」(記載事項(ア))が記載され、甲第29号証の記載事項(ア)によれば、昭和57年頃から、エクスパンセル社製品、プラスチックバルーン「エクスパンセル」のビジネス展開がなされていたことが窺える。
そして、甲第20号証は、本件訂正発明1の出願当時の文献ではあるが、そこには、「有機質中空体」として、甲第4発明の軽量微小素材の樹脂と同じ「塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合物の殻壁でマイクロカプセル化した熱膨張性微小球」が記載され(記載事項(ア))、有機質中空体の具体例として「エクスパンセル(Expancel)社製のエクスパンセル(EXPANCEL)DEシリーズ(より詳細には、551DE、551DE20、551DE80、461DE、461DE20、091DE、091DE80等の乾燥した膨張済みのもの)、エクスパンセル(EXPANCEL)WEシリーズ(より詳細には、551WE、551WE20、551WE80等の湿潤した膨張済みのもの)」が挙げられている(記載事項(イ))。
これらのことから、甲第4号証の当時、「軽量微小素材」として「エクスパンセル551WE」あるいは「エクスパンセル551DE」は一般的に使用されていることから、甲第4発明の「軽量微小素材」は「エクスパンセル」、またはこれと類似したものと推認することができる。このことは、甲第21号証の書簡及び甲第23号証の宣誓書とも矛盾しない。

以上のことに照らせば、甲第38号証の試験結果から、甲第4発明の「軽量微小素材」は「エクスパンセルDE」のような非水タイプでは粘土にならないことが窺える。また、非水タイプが非常に軽く飛散することは、乙第9号証の1の記載事項(イ)や甲第28号証の試験からも普通に知られていたことが分かる。ただ、非水タイプの飛散については、非水タイプでも事前に水を加えるなどすれば飛散に対する実用上の対策を講じることが可能であることから、このことを以て含水タイプのみを用いることが常識であるとまではいえないが、飛散などの製造過程の不都合をできる限り回避するために含水タイプを用いることは製造工程における一般的な対応であると考えられ、甲第4号証の実施例(記載事項(キ))では、「軽量微小素材粉末12部、パルプ繊維粉18部、カルボキシメチルセルロース粉12部の粉末を撹拌混合し」、「別にポリオールエーテル粉5部を常温水53部に分散し、水溶液を調節して上記粉末混合物に添加し」ていることからみれば、事前に水を加えるなどの飛散に対する実用上の対策を講じているとは認められない。
これらのことから、有機中空微小球を用いた粘土製造において非水タイプを用いることが技術常識であった根拠もないことを勘案すれば、甲第4号証の「軽量微小素材」は「エクスパンセルWE」のような膨張品の含水タイプであると認められる。
なお、上記上申書(3)において、被請求人は「乙第34号証によれば、実施例において非水タイプを用いていることが明らかである以上、甲第4号証の出願当時、このような非水タイプが軽量粘土において普通に用いられていた根拠になる」旨(第10頁2?4行)主張しているが、乙第34号証の記載事項(ア)、(イ)によれば、乙第34号証の軽量化材として用いられる「充填剤」は「シラスバルーンのような多孔質材の微粉末」であることから、ここで主張する非水タイプの発泡樹脂の「多孔質材」は、甲第4号証の気体を内包する微小中空球からなる「軽量微小素材」を指すものとはいえないとともに、非水タイプが軽量粘土において普通に用いられたものともいえない。したがって、この主張は妥当なものではない。
また、被請求人は、口頭審理陳述要領書(第5頁下から12?8行)において「甲第4号証の特許請求の範囲においては、『軽量微小素材』と記載されているのに対し、実施例においては、『軽量微小素材粉末』や、それを含む『粉末混合物』と記載され・・・少なくとも配合例が記載された実施例の『軽量微小素材』は、水分を含んでいない非水タイプと考えるのは必定であります。」と主張している。しかしながら、甲第4発明の認定において述べたとおり、甲第4号証の「軽量微小素材」については、「軽量微小素材粒子」、「軽量微小素材粉末」が共に「軽量微小素材」を意味するものであり、しかも、検甲第2号証の「エクスパンセル551WE」(含水タイプ)の標本を実際に触れても、これが十分に粉末状のものであることから、この主張を採用することもできない。

(三)上記(一)、(二)を踏まえ、相違点aについて検討すると、
本件訂正発明1の「添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値と」している「有機中空微小球」は、水を含まない有機中空微小球それ自体(固形分)であるのに対し、甲第4発明の「3?20部(重量部)」添加している「軽量微小素材」は「エクスパンセルWE」のような含水タイプであることから、添加量について本件訂正発明1の「1?3重量%未満の範囲内」と甲第4発明の「3?20部(重量部)」を直接対比することはできない。
甲第4発明の「エクスパンセルWE」のような含水タイプである「軽量微小素材」の固形分:水分比率について検討すると、甲第4号証当時の乙第9号証の1には「WE=Wet、Expanded microspheres(solid content15±2%)551WE」とあり、その後の有機中空微小球も固形分は凡そ10?30重量%(甲第24号証の記載事項(ウ)、甲第25号証の記載事項(ア)、乙第11号証の記載事項(ア)、乙第12号証の記載事項(ア)参照)であることから、含水タイプの「有機中空微小球」は、固形分として10?30重量%の範囲の値を含有するものといえる。
してみると、甲第4発明の「軽量微小素材」の「3?20部(重量部)」は、固形分として、「0.3?6重量%」(「重量部」は、上記したとおり甲第4号証においては「重量%」とみなすことができる。)となり、この甲第4発明の「軽量微小素材」の固形分の「0.3?6重量%」は、本件訂正発明1の「有機中空微小球」の「1?3重量%未満の範囲内の値」と重複するものである。
また、本件訂正発明1が「有機中空微小球」の「添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値と」する「数値限定」の技術的意義(臨界的意義)をみておくと、本件明細書の段落【0022】には、
「(6)添加量
また、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とすることが必要である。
この理由は、・・・添加量が1重量%未満の値となると、軽量粘土の軽量化が困難となるためである。
一方、・・・3重量%以上になると、軽量粘土の造形性や取り扱いが著しく低下するとともに、残留する未発泡の有機中空微小球が多くなり、包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇した場合に、包装材が膨張し、保管性が著しく低下するためである。また、有機中空微小球は、著しく高価であるため、その添加量が3重量%以上になると、得られる軽量粘土のコストも著しく高価になるためである。・・・」と記載されており、この記載から、上記「数値限定」の技術的意義が、軽量粘土の軽量化、造形性や取り扱い、保管性、コストにあるといえる。
しかしながら、本件明細書の実施例をみても、実施例1?3では平均粒径を100、90、110μmでそれらの添加量を2.5、2.9、2.0wt%とし、比較例1?3では、平均粒径を40μmとし、添加量を5、10、15wt%として対比するものの、両者は平均粒径が異なる上、この対比から有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内での「有機中空微小球」の添加量と技術的意義(臨界的意義)まで云々することはできない。また、他の実施例・比較例からも同様に、「有機中空微小球」の添加量の数値範囲の技術的意義は明らかでない。

(四)以上のことから、当該技術分野において固形分を表記することが一般的(乙第9号証の1、甲第24号証、甲第25号証参照)であることを勘案すると、甲第4発明の「軽量微小素材を3?20部(重量部)」を最終的な配合量として固形分で特定することは当業者が容易に行うことであり、その配合量として本件訂正発明1の「全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値と」することも、甲第4発明の「軽量微小素材」の固形分の換算した「0.3?6重量%」の範囲内であり、粘土の軽量微小素材の添加量は、その粒径、あるいは水や他の成分の添加量をみて種々の調整がなされるものであり、また、本件訂正発明1の上記数値限定に格別の技術的意義(臨界的意義)も見出せないことから、甲第4発明の上記換算した範囲で軽量化、造形性などを考慮して適宜選択し得るものといえる。

(B)相違点bについて
本件訂正発明1の「水の添加量」については、上記「(A)(一)」で述べたとおり、被請求人は、平成21年8月12日付け意見書においては「軽量粘土を配合するに際して、最終的に調整された水の配合量を規定したもの」であると主張(第4頁(3)-2)し、また、口頭陳述要領書において「本件特許発明の請求項1等において、軽量化材と、水と、を別物として、配合量を記載していることは明白であ」ると主張している(第3頁(2))ところ、「水の添加量」は最終的に調整された水の配合量といえる。
そして、上記「(A)(三)」で記載したとおり、甲第4発明の「軽量微小素材」の固形分が「0.3?6重量%」であるとみることができるので、その水分量は「2.1?18重量%」となる。これは甲第4発明の「軽量微小素材」の「3?20部(重量部)」うち固形分10?30重量%に対する水分70?90重量%に基づく(乙第9号証の1、甲第24号証、甲第25号証、乙第11号証、乙第12号証参照)。
してみると、甲第4発明における水の配合量は「水52.1?78部」となり、この配合量は、本件訂正発明1の「全体量に対して、65?85重量%」の範囲内の値と「65?78重量%」で重複するものである。
そして、本件訂正発明1の「水の添加量」の技術的意義(臨界的意義)についても、本件明細書の段落【0033】に
「4.水
水は、軽量粘土の取り扱い性や成型性、あるいは軽量粘土の製造の容易さを考慮して定められる。本発明の軽量粘土においては、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる水の添加量が65重量%未満の値となると、添加効果が発現せず、軽量粘土調整が困難となる場合があるためである。一方、・・・85重量%を超えると、軽量粘土の展性や耐クリープ性の制御が困難となる場合があるためである。・・・」と記載されている。この記載によれば、「水の添加量」の技術的意義は、軽量粘土調整、軽量粘土の展性や耐クリープ性にあるといえる。
しかしながら、本件明細書の実施例7?9、比較例7?9(表3)をみても、実施例7?9は、「有機中空微小球」の「平均粒径を100μm」、その「添加量を2.5wt%」とし、「水の添加量を70、75、80wt%」に変えているのみであり、比較例7?9では有機中空微小球の添加量も異なることから、他の成分の影響を考えると有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内での「水の添加量」と上記技術的意義(臨界的意義)まで云々することはできない。また、他の実施例・比較例からみても「水の添加量」の数値範囲の技術的意義(臨界的意義)は明らかでない。
以上のことから、甲第4発明では、「水50?60部」を最終的な配合量として有機中空微小球の水分量を加えて特定することは当業者が容易に行うことであり、その配合量として本件訂正発明1の「全体量に対して、65?85重量%」とすることも、甲第4発明の水の配合量と「65?78重量%」で重複するものであり、粘土の水の添加量は、有機中空微小球や他の成分の添加量をみて種々調整がなされるものであり、また、本件訂正発明1の上記数値限定に格別の技術的意義(臨界的意義)も見出せないことから、軽量粘土の軽量化や造形性の調整等を考慮して適宜選択し得るものといえる。

なお、被請求人は、上記相違点a、bの「有機中空微小球」及び「水」の含有量に関し、口頭陳述要領書(第3頁?第12頁)において、「重量部」と「重量%」の重量単位の違い、乙第9号証の1からDEタイプが市場において主流であった、甲第4号証の記載や乙第10号証から甲第4号証の「軽量微小素材」は非水タイプである、乙第11号証や乙第12号証を参考に軽量化材の配合量の適正範囲に関して整合がとれないなど主張しているが、これらの主張は、上記で検討したとおりであり、加えて、甲第4号証の作用についての記載は、従来技術の発泡スチロール粉と対比して軽量微小素材(有機中空微小球)への水の浸透付着について説明したものであり、乙第10号証の記載は甲第4号証の「常温水53部」を単に記載しているにすぎないともみることができるから、甲第4号証の軽量微小素材と水が別物である根拠とはならなく、また、乙第11号証や乙第12号証における軽量化剤の配合量に基づいた主張も、軽量微小素材の配合量は甲第4号証の記載に基づくものであるから、何れの主張も妥当なものといえない。
この他にも、被請求人は縷々述べているが、いずれも上記した相違点a、bについての判断を覆すものではない。

そして、本件訂正発明1が相違点a、bに係る特定事項を採ることによって奏する本件明細書に記載の効果についても格別顕著なものと認めることはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、本件訂正発明1の構成に加え、更に「前記有機中空微小球が白色であって、前記有機中空微小球の反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とする」特定事項を付加するものである。
そこで、この付加した特定事項について検討すると、
甲第4号証には、記載事項(ウ)及び(ク)によれば「軽量微小素材は光を乱反射する性質があるので、白色度の高い繊維粉と混合することにより、白色度92度(KETT光電白度計で測定)の極めて白色度の高い粘土が得られ、添加物として色素を加えた場合、鮮明な色付けが可能である」ことが記載されている。この記載中の「白色度92度(KETT光電白度計で測定)の極めて白色度の高い粘土」は、「軽量微小素材」の白色度ではないが、この記載からみれば「軽量微小素材」は「光を乱反射する性質がある」ものであり、「色素を加えた場合、鮮明な色付け」ができるものである。
「軽量微小素材」の色については、一般に可視光線を100%乱反射するものは白いことは知られているところであり、鮮明な色付けのためには普通に白色が好ましいことは自明のことであり、粘土の白色度として極めて高いものからすれば、「軽量微小素材」は白色度がある程度高いものであると推認できる。
そして、上記付加した特定事項の白色度として「反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とする」ことも、白色度の計測方法として、反射率計で測定される視感明度(L値)はごく普通のものであり、本件明細書の実施例をみても「白色」「茶色」程度の比較ではとても上記付加事項の数値限定に臨界的意義があるともいえないことから、白色の度合いがある程度高い範囲の、例えば70以上の値を選択することは当業者が適宜選択し得るものといえる。
また、被請求人は、口頭陳述要領書において「甲第4号証の関連記載は、感覚的に白色度の高い繊維粉の色の効果を述べたものであって、請求項2が問題とする有機中空微小球の視感明度(L値)とは全く関係がない」旨(第13頁1?3行)を主張しているが、甲第4号証の「白色度の高い繊維粉と混合することにより、白色度92度(KETT光電白度計で測定)の極めて白色度の高い粘土が得られる」との記載からみれば、「軽量微小素材」を有する粘土に「白色度の高い繊維粉」を混合すれば、「極めて白色度が高い粘土」になるとも解されることから、単に「白色度の高い繊維粉の色の効果を述べた」ものとはいえない。
そして、本件訂正発明2が上記特定事項を採ることによって奏する効果も予測し得るものであり、格別顕著な効果とはいえない。

なお、請求人の口頭陳述要領書(2)の白色度に関する、「本件特許発明の視感明度(L値)」と「甲第4号証のKETT値」は、「JIS Z 8722に準拠する点で共通し、求められる白色度は実質同一程度の数値となる」(第2頁「(4)」)との主張は、これらの測定方法が「JIS Z 8722に準拠」して「反射率」をみるものであるとしても、計測値が実質同一程度あるとか、上記主張の後で主張している「相互に換算できる」とも根拠が明らかではなく、直ちにこの主張を認めることはできない。
そして、本件訂正発明2の上記付加された特定事項を採ることによって奏する効果も予測し得るものであり、格別顕著な効果とはいえない。
以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、上記した理由及び本件訂正発明1について述べた理由により、甲第4号証に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、「軽量粘土の製造方法」に関するものであるが、「有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土・・・において、
平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに・・・
有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、
前記極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、
かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とする」点は、本件訂正発明1の「軽量粘土」の発明とカテゴリーによる表現上の違いがあるにせよ、実質的に同じであり、両者は、前者が「ニーダーを用いて混練」する特定事項を有する点で更に相違している。
この本件訂正発明6の「ニーダーを用いて混練」なる、製造方法における特定事項を検討すると、
甲第4号証には、記載事項(キ)に「本発明の実施例では軽量微小素材粉末12部、パルプ繊維粉18部、カルボキシメチルセルロース粉12部の粉末を撹拌混合し、均一な粉末混合物を製成し、別にポリオールエーテル粉5部を常温水53部に分散し、水溶液を調節して上記粉末混合物に添加し混練して製造する」ことが記載されている。つまり、甲第4号証には「混練して」粘土を「製造する」ことが開示されている。そして、混練にニーダーを使用することは、極めて周知のことであることから、上記構成事項を採ることも格別困難なこととはいえない。
また、本件訂正発明6が上記特定事項を備えることによって奏する格別顕著な効果も認められない。
してみると、本件訂正発明6は、上記した理由及び本件訂正発明1について述べた理由により、甲第4号証に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、当審より被請求人に対し、平成21年7月7日付けで無効理由通知を通知している。この理由は、特許法第36条第4項、同条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件(記載要件)を満たしていないというものであるが、平成21年8月12日付けの訂正請求により解消されたものと認められる。

VII.結び
以上のとおりであるから、本件訂正発明1、2、6は、その出願前に頒布された刊行物である甲第4号証に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件訂正発明1、2、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
軽量粘土およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、
前記有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、
前記極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、
かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土。
【請求項2】前記有機中空微小球が白色であって、前記有機中空微小球の反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の軽量粘土。
【請求項3】前記軽量粘土が、繊維をさらに含有するとともに、当該繊維の添加量を、全体量に対して、1?10重量%未満の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量粘土。
【請求項4】前記軽量粘土が、色素をさらに含有するとともに、当該色素の添加量を、全体量に対して、0.1?10重量%未満の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の軽量粘土。
【請求項5】前記軽量粘土が、無機中空微小球をさらに含有するとともに、当該無機中空微小球の添加量を、全体量に対して、0.01?10重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の軽量粘土。
【請求項6】有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土の製造方法において、
平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、
有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、
前記極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、
かつ、前記軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量粘土およびその製造方法であって、特に、適度な軽量性や造形性を有するとともに、保管性(膨張性)に優れ、しかも製造コストが安い軽量粘土およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の美術工芸や学校教材等に使用される粘土は、粒状素材ないし植物遺体離解物を主材とし、この主材に粒状素材を粘結するための粘結剤、香料、色素、水分、油分などの添加物を加えて構成されるものが多い。したがって、従来の粘土は重量が重く、使い勝手が悪いという問題が見られた。
そのため、特公昭51-893号公報には、粉末化された発泡スチロールを主材とし、これにパルプ材や水等を加えて構成された、軽量粘土が開示されている。
しかしながら、粉末化された発泡スチロールは、その構造上、表面に多数の空隙が生じており、この空隙に水等が浸透することにより、含水性ないし含液性に富むものとなる。このため、軽量粘土全体の重量は、あまり軽減されないという軽量化上の課題が残存する。また、発泡スチロールの微小化は容易でなく、配合材料と均一に混合することが困難であるという製造上の問題も見られた。
【0003】
また、特公昭59-50615号公報には、粒度が150μm未満で、嵩比重が0.6以下である発泡無機質材料からなる微小中空粉粒体を30?40重量%と、繊維長が10mm以下である繊維粉を3?13重量%と、粒度が150μm以下のタルク粉を31?60重量%と、水溶性合成糊剤の単独または併用したものを3?8重量%と、水とが混練され、針入度が100?350に調整されている艶出し可能な成形用粘土が開示されており、さらに、類似の構成の彫塑材が特公昭57-16356号公報に開示されている。
しかしながら、かかる成形用粘土や彫塑材は、発泡無機質材料からなる微小中空粉粒体や岩石粉の添加量が多いために、混合分散が容易でなく、しかも得られた成形用粘土や彫塑材は、取り扱いや造形性に乏しく、さらには、製造コストが高いという問題が見られた。
【0004】
また、特開平2-123390号公報には、全体量に対して、外殻がアクリロニトリルないし塩化ビニリデンを含む共重合体からなる有機中空微小球を3?20重量%、合成粘結剤(カルボキシメチルセルロース)を5?20重量%、繊維粉を10?30重量%、水を50?60重量%の割合で配合することにより、軽量で、白色度が高く、しかも焼却処理が容易にできるという軽量粘土が提案されている。
すなわち、例えば、有機中空微小球の配合割合が3重量%未満となると、所定の目的重量を達成できないためであり、一方、かかる有機中空微小球の配合割合が20重量%を超えると、軽量粘土としての性質が損なわれるためである。
また、繊維粉の配合割合が10重量%未満となると、結合材としての働きが不十分となるためであり、一方、かかる繊維粉の配合割合が30重量%を超えると、水を多量に保存するので軽量化が損なわれるためである。
さらに、水の配合割合が50重量%未満となると、造形作業が困難となるためであり、一方、かかる水の配合割合が60重量%を超えると、軟化して造形性が乏しくなり、さらには軽量化が損なわれるためである。
しかしながら、かかる軽量粘土は、有機中空微小球の添加量が多いために、有機中空微小球の混合分散が容易でなく、しかも得られた軽量粘土は過度に軽量であって、取り扱いや造形性に乏しく、さらには、製造コストが高いという問題が見られた。
また、かかる軽量粘土は、有機中空微小球の添加量が多いために、それにつれて、発泡ガス(発泡液体)が残留した状態の、いわゆる未発泡の有機中空微小球が多く存在しているという問題が見られた。したがって、軽量粘土を、ポリエチレンフィルム等の包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇して、高温状態になった場合に、残留した発泡ガスによって、包装材で被覆された軽量粘土が、当初の1.2?3倍程度の容積に膨張するという問題(以下、膨張問題)が見られた。
さらにまた、かかる軽量粘土は、有機中空微小球の添加量が多いために、色素を添加した場合に、色素の分散性を阻害して、優れた発色性が得られないという問題も見られた。
【0005】
また、特開平10-268755号公報には、粒径1?200μmのガラス微小中空球30?70重量部と、繊維粉30?60重量部と、カルボキシメチルセルロース10?50重量部と、水200?400重量部(ガラス微小中空球と、繊維粉と、カルボキシメチルセルロースの合計量基準)の割合で配合することにより、軽量で、乾燥日数が短く、しかも収縮率の小さい軽量粘土が開示されている。
すなわち、例えば、ガラス微小中空球の配合割合が30重量部未満となると、所定の軽量化を図ることができないためであり、一方、かかるガラス微小中空球の配合割合が70重量部を超えると、軽量粘土における収縮やひび割れが大きくなるためである。
また、繊維粉の配合割合が30重量部未満となると、軽量粘土における収縮やひび割れが大きくなるためであり、一方、かかる繊維粉の配合割合が60重量部を超えると、水を多量に保存するので軽量化が損なわれるためである。
さらに、かかる水の配合割合が200重量部未満となると、軽量粘土における造形作業が困難となるためであり、一方、かかる水の配合割合が400重量部を超えると、軟化して造形性が乏しくなり、さらには手に付着しやすくなるためである。
しかしながら、かかる軽量粘土は、ガラス微小中空球や繊維粉の添加割合が多すぎるため、造形性に乏しく、しかも製造コストが高いという問題が見られた。
また、かかる軽量粘土は、ガラス有機中空微小球の添加量が多いために、色素を添加した場合に、色素の分散性を阻害して、優れた発色性が得られないという問題も見られた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の発明者らは、軽量粘土における有機中空微小球の平均粒径や添加量を、従来問題が生じるとされていた範囲まで検討し、それらが相互作用を及ぼし、軽量粘土の造形性や軽量性、あるいは膨張問題に影響を与えていることを見出した。
すなわち、本発明は、造形性や軽量性に優れ、しかも包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇して、高温状態になった場合であっても膨張問題を解消して優れた保管性が得られるとともに、製造コストが安い軽量粘土およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、このように有機中空微小球の平均粒径および添加量の双方を考慮して構成することにより、従来問題が起こるとされてきた有機中空微小球の添加量であっても、十分かつ適度な軽量化が図られるとともに、造形性に優れた軽量粘土を得ることができる。
また、有機中空微小球の添加量を少なくすることができるため、軽量粘土の混合分散が容易となるばかりか、未発泡有機中空微小球の存在量を低下させ、しかも高価な有機中空微小球の使用量を低下できるため、優れた保管性(膨張性)が得られるとともに、製造コストを低く抑えることができる。
さらには、有機中空微小球の添加量が少ないために、カラー化のために色素を添加した場合であっても、色素の分散性を阻害することがなく、優れた発色性を得ることができる。
また、このような極性化合物を使用することにより、造形性や発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができる。
一方、このように所定量の水を含有することにより、造形性や発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができる。
なお、上述したように、従来は、水の添加量が、全体量に対して、60重量%を超えると、軟化して造形性が乏しくなり、さらには軽量化が損なわれると言われていたが、有機中空微小球の平均粒径および添加量の双方を考慮することにより、かかる水の添加量に関する制限を大幅に緩和することができる。
【0008】
また、本発明の軽量粘土を構成するにあたり、有機中空微小球が白色であって、有機中空微小球の反射率計で測定される視感明度(L値)を70?99の範囲内の値とすることが好ましい。
特開平2-123390号公報等に開示された塩化ビニリデン-アクリルニトリル共重合体等からなる外殻を有する有機中空微小球は、黄土色?茶色であるが、このように白色性に富んだ有機中空微小球を使用することにより、発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができる。
【0009】
(削除)
【0010】
また、本発明の軽量粘土を構成するにあたり、繊維をさらに含有するとともに、当該繊維の添加量を、全体量に対して、1?10重量%未満の範囲内の値とすることが好ましい。
このように繊維を使用することにより、造形性や軽量性にさらに優れた軽量粘土を得ることができる。
なお、上述したように、従来は、繊維の添加量が、全体量に対して、10重量%未満となると、結合材としての働きが不十分となると言われていたが、有機中空微小球の平均粒径および添加量の双方を考慮することにより、かかる繊維の添加量に関する制限を大幅に緩和することができる。
【0011】
(削除)
【0012】
また、本発明の軽量粘土を構成するにあたり、色素をさらに含有するとともに、当該色素の添加量を、全体量に対して、0.1?10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように色素を添加して構成すると、容易にカラー化することができるとともに、発色性に優れた軽量粘土を得ることができる。
【0013】
また、本発明の軽量粘土を構成するにあたり、無機中空微小球をさらに含有するとともに、当該無機中空微小球の添加量を、全体量に対して、0.01?10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように有機中空微小球のほかに、さらに無機中空微小球を添加することにより、造形性や軽量性にさらに優れた軽量粘土が得られるとともに、未発泡の有機中空微小球に起因した膨張問題や発色性低下の問題を効果的に低減することができる。
【0014】
また、本発明の別の態様によれば、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土の製造方法において、平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土の製造方法が提供される。
このように実施すると、造形性や軽量性に優れるとともに、安価な軽量粘土を効率的に得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態は、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土において、有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土である。
また、別の態様は、有機中空微小球と、極性化合物と、を含有する軽量粘土の製造方法において、平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、極性化合物が、水酸基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、あるいはいずれか一方であるとともに、添加量を、全体量に対して、1?30重量%の範囲内の値とし、かつ、軽量粘土が、水をさらに含有するとともに、当該水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする軽量粘土の製造方法である
以下、有機中空微小球および極性化合物等の構成要素に分けて説明する。
【0016】
1.有機中空微小球
(1)種類1
有機中空微小球は、有機材料からなる外殻(殻壁)を有し、その内部に空隙を有する微小球であれば好適に使用することができる。
このような有機中空微小球としては、例えば、外殻が塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリロニトリル共重合樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂等から構成されており、内部に、気体や液体を内包しているものが好ましい。
これらの有機中空微小球のうち、特に、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂からなる外殻を有する有機中空微小球は、製造が容易な反面、加熱時に所望の大きさに膨張させることができることからより好ましい。
また、酢酸ビニル-アクリロニトリル共重合樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル共重合樹脂、およびアクリロニトリル樹脂等からなる外殻を有する有機中空微小球は、白色性が高いことからより好ましい。
【0017】
(2)種類2
また、有機中空微小球のほかに、外殻が無機材料、例えば、ガラス材からなる無機中空微小球を併用することも好ましい。
このような無機中空微小球は、無色透明であって、耐圧強度が高く、例えば、750psi(1psi=6.90x10^(3)N、1kgf=9.807N/cm^(2))の測定圧力で加圧した際の残存率が、90?92(VOL%)であって、しかも軽いという特徴がある。
したがって、有機中空微小球と、無機中空微小球とを併用することにより、軽量粘土の単位体積あたりの重量を著しく軽減させることができるとともに、有機中空微小球が、無機中空微小球の周囲に存在することにより、クッション材の役目を果たして、無機中空微小球が破壊されることを有効に防止したり、無機中空微小球の分散性をより向上させたりすることができる。
また、このように有機中空微小球と、無機中空微小球とを併用することにより、色素との関係で、発色性を高めたり、軽量粘土の形状保持性を高めたり、収縮率を低下させたりすることができる。
さらに、このように有機中空微小球と、無機中空微小球とを併用することにより、有機中空微小球の使用量を相対的に低下させることができるため、未発泡の有機中空微小球に起因した膨張問題を有効に防止して、より優れた保管性を得ることができる。
【0018】
ただし、有機中空微小球と、無機中空微小球とを併用する場合であっても、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、3重量%未満の範囲内の値とする必要がある。
すなわち、有機中空微小球の添加量が3重量%を超えると、未発泡の有機中空微小球の存在量が急激に増えるため、未発泡の有機中空微小球に起因した膨張問題を防止することが困難となったり、色素との関係で、発色性を低下させたりするためである。
【0019】
(3)白色性
また、有機中空微小球の色が白色またはそれに近似した色であることが好ましい。
上述したように、特開平2-123390号公報等に開示された塩化ビニリデン-アクリルニトリル共重合体等からなる外殻を有する有機中空微小球の色は、通常、黄土色?茶色であるが、このように白色性に富んだ有機中空微小球を使用することにより、発色性にさらに優れた軽量粘土を得ることができるためである。
なお、有機中空微小球の色は、色見本と比較し、目視や顕微鏡を用いて判断することができるが、反射率計で測定される視感明度(L値)を相対基準とすることも可能である。すなわち、有機中空微小球の色に関して、反射率計(例えば、東京電色社製、TR-1000D型)で測定される視感明度を、70?99の範囲内の値とする。
この理由は、かかる視感明度が70未満の値となると、有機中空微小球が茶色がかった色となり、軽量粘土に色素、特に白色系色素や黄色系色素とともに添加した場合に、混濁して、発色性が著しく低下する場合があるためである。
ただし、視感明度の値が高くなりすぎると、有機中空微小球の構成材料が過度に制限される場合がある。
したがって、かかる視感明度を70?99の範囲内の値とすることが好ましく、80?95の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる視感明度の調整には、有機中空微小球の外殻中に酸化チタンやシリカ等の白色粒子を添加したり、あるいはこれらの白色粒子で周囲を被覆することにより容易に達成することができる。また、有機中空微小球の外殻に塩化ビニル樹脂や塩化ビニリデン樹脂、あるいはホルムアルデヒド系樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂)等の使用量を低下させること、具体的には、10重量%以下の値とすることによっても容易に達成することができる。
【0020】
(4)平均粒径1
また、有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とする。
この理由は、かかる有機中空微小球の平均粒径が30μm未満の値となると、軽量粘土の造形性が低下したり、所定量添加した場合の軽量化が困難となったりする場合があるためである。一方、かかる有機中空微小球の平均粒径が150μmを超えると、混合分散が困難となったり、あるいは、軽量粘土の造形性が低下したりする場合があるためである。
したがって、有機中空微小球の平均粒径を50?130μmの範囲内の値とすることがより好ましく、70?120μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる有機中空微小球の平均粒径は、光学顕微鏡で有機中空微小球の画像を取り込み、次いで、当該画像から画像処理装置を用いて算出することができる。
【0021】
(5)平均粒径2
また、有機中空微小球の平均粒径を決定するにあたり、後述する色素の平均粒径を考慮することが好ましい。
すなわち、色素の平均粒径をD1とし、有機中空微小球の平均粒径をD2としたときに、D2/D1の比率を10?50,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるD2/D1の比率が10未満の値になると、色素が均一に分散されず、有機中空微小球に発色が阻害される場合があるためである。一方、かかるD2/D1の比率が50,000を超えた値になると、色素が凝集しやすくなるとともに、均一に分散されずに、発色性が低下する場合があるためである。
したがって、色素による発色性を向上させるために、かかるD2/D1の比率を50?10,000の範囲内の値とすることがより好ましく、100?1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0022】
(6)添加量
また、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とすることが必要である。
この理由は、かかる有機中空微小球の添加量が1重量%未満の値となると、軽量粘土の軽量化が困難となるためである。
一方、かかる有機中空微小球の添加量が3重量%以上になると、軽量粘土の造形性や取り扱いが著しく低下するとともに、残留する未発泡の有機中空微小球が多くなり、包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇した場合に、包装材が膨張し、保管性が著しく低下するためである。また、有機中空微小球は、著しく高価であるため、その添加量が3重量%以上になると、得られる軽量粘土のコストも著しく高価になるためである。
したがって、軽量粘土の造形性や膨張性と、軽量性等とのバランスがより良好となるため、有機中空微小球の添加量を1?2.9重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1?2.5重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0023】
ここで、図1および図2を参照して、有機中空微小球の添加量と、軽量粘土における軽量性や造形性との関係、および膨張性との関係をそれぞれ詳細に説明する。
図1は、表1の軽量性および造形性のデータを数値化したものであって、◎の評価を5点、○の評価を3点、△の評価を1点、×の評価を0点として数値を算出した。
そして、図1の横軸に、有機中空微小球の添加量(重量%)を採って示してあり、左縦軸に、軽量性(相対値)が採って示してあり、曲線Aがその関係を示している。一方、図1の右縦軸には、造形性(相対値)が、それぞれ採って示してあり、有機中空微小球の添加量(重量%)との関係を、曲線Bが示している。
この図1から理解されるように、有機中空微小球の添加量が多くなる程、軽量粘土における軽量性の評価が向上するものの、造形性の評価については、3重量%を境にして、極端に低下している。
したがって、有機中空微小球の添加量を1?3重量%未満の範囲内の値にすることにより、軽量粘土における軽量性と、造形性との優れたバランスを取ることができ、また、有機中空微小球の添加量を1?2.5重量の範囲内の値にすることにより、これらの特性について、さらに優れたバランスが取れることが理解できる。
また、図2は、表1の膨張性のデータを数値化したものであって、◎の評価を5点、○の評価を3点、△の評価を1点、×の評価を0点として数値を算出した。
そして、図2の横軸に、有機中空微小球の添加量(重量%)を採って示してあり、左縦軸に、膨張性(相対値)が採って示してある。
この図2から理解されるように、有機中空微小球の添加量が多くなる程、膨張性の評価結果が低下しており、すなわち、保管性が低下することが理解される。
したがって、有機中空微小球の添加量を1?3重量%未満の範囲内の値にすることにより、軽量粘土における軽量性や造形性のみならず、保管時の膨張問題についても、効果的に低減して、特性改善することができることが理解できる。
【0024】
(7)嵩密度
また、有機中空微小球の嵩密度を0.001?0.5g/cm^(3)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる有機中空微小球の嵩密度が0.001g/cm^(3)未満の値となると、軽量粘土中への均一に混合分散することが困難となる場合があるためである。一方、かかる有機中空微小球の嵩密度が0.5g/cm^(3)を超えると、軽量粘土の展性が低下したり、軽量化が困難となったりする場合があるためである。
したがって、有機中空微小球の嵩密度を0.005?0.2g/cm^(3)の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01?0.1g/cm^(3)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる有機中空微小球の嵩密度は、JIS K 5101(顔料試験法)に準拠して測定することができる。
【0025】
(8)pH値
また、有機中空微小球のpH値を3?11の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる有機中空微小球のpH値が3未満の値となると、水酸基含有化合物や、カルボキシル基含有化合物を添加するとともに、長期保管した場合に、ゲル化するおそれがあるためである。
一方、かかる有機中空微小球のpH値が11を超えると、混合分散や取り扱いが困難となる場合があるためである。
したがって、有機中空微小球のpH値を6?10.5の範囲内の値とすることが好ましく、pH値を7?10.5の中性から弱アルカリ性の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
2.極性化合物
(1)種類
極性化合物としては、水酸基含有化合物やカルボキシル基含有化合物であることが好ましい。
なお、ポリアクリル酸やポリビニルアルコールのように、分子内に、水酸基およびカルボキシル基の両方を含む化合物もあるが、便宜的にいずれかに区分して説明する。
【0027】
▲1▼水酸基含有化合物
水酸基含有化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレン酢酸ビニル、尿素樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
このような水酸基含有化合物を添加することにより、軽量粘土の展性や耐クリープ性等の調節が容易になるためである。また、これらの水酸基含有化合物は、通常、水溶性であるため、軽量粘土に水を添加した場合であっても、優れた相溶性が得られるためである。
特に、ポリビニルアルコールは、単位重量当たりに含まれる水酸基量が多く、そのため、比較的少量の添加によって、軽量粘土の展性や取り扱い性を効果的に向上させることができることから、より好ましい水酸基含有化合物である。
また、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールをホルムアルデヒドおよびブチルアルデヒドでそれぞれアセタール化した樹脂であるが、軽量粘土において、より優れた耐クリープ性や、耐熱性を得る場合に使用すると効果的である。
さらに、ポリ酢酸ビニルは、ポリビニルアルコールを鹸化する前の原材料であるが、より展性に優れた軽量粘土を得たい場合には効果的な水酸基含有化合物である。
【0028】
▲2▼カルボキシル基含有化合物
また、カルボキシル基含有化合物としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
ここで、カルボキシメチルセルロースを使用する場合、エーテル化度が0.1?2の範囲内の値であるカルボキシメチルセルロースが好ましい。
この理由は、カルボキシメチルセルロースのエーテル化度が0.1未満となると、軽量粘土がべたつき、取り扱いが困難となる場合があるためである。一方、カルボキシメチルセルロースのエーテル化度が2を超えると、軽量粘土の展性が低下して、薄膜化が困難となる場合があるためである。
【0029】
(2)添加量
また、極性化合物の添加量を、軽量粘土の全体量(100重量%)に対して、1?30重量%の範囲内の値とする。
この理由は、かかる極性化合物の添加量が1重量%未満の値となると、軽量粘土の取り扱い性や成型性が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる極性化合物の添加量が30重量%を超えると、軽量粘土の展性が低下したり、混合分散が困難となったりする場合があるためである。
したがって、軽量粘土の取り扱い性や成型性と、軽量粘土の展性とのバランスがより良好となるため、極性化合物の添加量を、軽量粘土の全体量(100重量%)に対して、1?20重量%の範囲内の値とすることが好ましく、1?15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、2?10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
3.繊維
(1)種類
また、添加剤としての繊維(パルプ)の種類は特に制限されるものでなく、例えば、広葉樹および針葉樹をそれぞれ原料としたものであることが好ましい。
ただし、広葉樹を原料とした繊維を使用することがより好ましいと言える。この理由は、広葉樹を原料とした繊維は、針葉樹を原料とした繊維よりも、通常、繊維長が短く平均化しており、軽量粘土を作成する際に、容易に分散することができるためである。
【0031】
(2)平均繊維長
また、繊維の平均繊維長を0.01?20mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる繊維の平均繊維長が0.01mm未満の値となると、軽量粘土の展性が低下したり、軽量化が困難となったりする場合があるためである。一方、かかる繊維の平均繊維長が20mmを超えると、軽量粘土中への均一に混合分散することが困難となる場合があるためである。
したがって、軽量粘土の展性等と、混合分散性とのバランスがより良好となることから、繊維の平均繊維長を0.1?10mmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.5?5mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0032】
(3)添加量
また、繊維の添加量は、軽量粘土の取り扱い性や成型性、あるいは軽量粘土の製造の容易さを考慮して定めることが好ましい。例えば、全体量に対して、1?10重量%未満の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる繊維の添加量が1重量%未満の値となると、添加効果が発現しない場合があるためである。一方、かかる繊維の添加量が10重量%以上の値となると、軽量粘土の展性の制御や製造が困難となる場合があるためである。
したがって、かかる繊維の添加量を、全体量に対して、2?9量%の範囲内の値とすることがより好ましく、3?8重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0033】
4.水
水は、軽量粘土の取り扱い性や成型性、あるいは軽量粘土の製造の容易さを考慮して定められる。本発明の軽量粘土においては、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる水の添加量が65重量%未満の値となると、添加効果が発現せず、軽量粘土調整が困難となる場合があるためである。一方、かかる水の添加量が85重量%を超えると、軽量粘土の展性や耐クリープ性の制御が困難となる場合があるためである。
したがって、かかる水の添加量を、全体量に対して、66?83重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、67?80重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
5.色素
(1)種類
色素の種類としては、特に制限されるものではないが、従来からインキ、塗料などの分野で用いられているものであればよく、例えば、有機顔料や無機顔料、あるいは染料が挙げられる。
このような有機顔料としては、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料類、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料類、染料レーキ等が挙げられる。
また、無機顔料としては、たとえば酸化チタン、ベンガラ、酸化クロム、鉄黒などの酸化物やカドミウムイエロー、クロムバーミリオン、紺青、群青、カーボンブラック、黄色酸化鉄、パール顔料等が挙げられる。
さらに、より鮮やかな色調が要求される場合には、ホルマリン縮合樹脂、アクリル樹脂、グアナミン樹脂などを基体としたプラスチックタイプの有機顔料や、硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウムなどを焼結した無機顔料等を用いることも好ましい。
【0035】
(2)平均粒径
また、色素の平均粒径を0.01?0.2μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる色素の平均粒径が0.01μm未満の値となると、著しく凝集しやすくなり、軽量粘土中への均一に混合分散することが困難となり、発色性が低下する場合があるためである。一方、かかる色素の平均粒径が0.2μmを超えると、有機中空微小球との相乗効果が発揮されずに、軽量粘土の発色性が低下するためである。
したがって、色素の凝集性と、発色性とのバランスがより良好となるため、色素の平均粒径を0.06?0.18μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.07?0.12μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0036】
(3)粒度分布1
また、色素の粒度分布に関し、標準偏差を0.05μm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる色素の標準偏差が0.05μmを超えると、光散乱が大きくなったり、あるいは著しく凝集しやすくなったりするため、色素による発色性が低下する場合があるためである。
ただし、かかる色素の標準偏差が過度に小さくなると、制御するために製造コストが高くなる場合がある。
したがって、色素による発色性と、製造コストとのバランスがより良好となるため、色素の粒度分布における標準偏差を0.04?0.01μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.03?0.01μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる色素の粒度分布における標準偏差は、例えば、レーザー方式のパーティクルカウンターを用いて測定することができる。
【0037】
(4)粒度分布2
また、色素の粒径の95%が、平均粒径の±10%の範囲内に存在していることが好ましい。
この理由は、このような狭い粒度分布を有する色素を使用することにより、発色性や造形性にそれぞれ優れた軽量粘土を得ることができるためである。逆に言うと、色素の粒径の95%が、平均粒径の±10%を超えている場合には、色素が凝集しやすくなり、有機中空微小球との相乗関係を発揮することが困難となる場合があるためである。したがって、色素の粒度分布が広くなると、色素による発色性が低下する場合があるためである。
そこで、より優れた色素による発色性を得るためには、色素の粒径の95%が、平均粒径の±8%の範囲内に存在していることがより好ましく、平均粒径の±5%の範囲内に存在していることがさらに好ましい。
なお、かかる色素の平均粒径における95%の粒径分布は、例えば、レーザー方式のパーティクルカウンターを用いて測定することができる。
【0038】
(5)添加量
また、色素の添加量を、全体量に対して、0.1?10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる色素の添加量が0.1重量%未満となると、添加効果や、有機中空微小球と相乗効果が発揮されずに、色素による発色性が低下する場合があるためである。一方、かかる色素の添加量が10重量%を超えると、光散乱が大きくなったり、あるいは著しく凝集しやすくなったりするため、逆に発色性が低下する場合があるためである。
したがって、色素による発色性がより良好となるため、色素の添加量を0.2?8重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.3?7重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
(6)水分散性
また、色素は、水分散性(アルコール分散性を含む。)、すなわち親水性であることが好ましい。
この理由は、このような特性の色素を使用することにより、軽量粘土が水やアルコールを含む場合であっても、色素が凝集することなく、優れた発色性や造形性を得ることができる。また、色素が水分散性であれば、色素が微粒子であっても、水中に保存することができるためであり、さらには、その溶液の保存状態のまま、配合することができるためである。
【0040】
また、このように色素を水分散性とするために、色素を構成する樹脂の酸価を50?300の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる樹脂の酸価が50未満の値となると、得られる色素の水分散性が著しく低下する場合があるためであり、一方、かかる樹脂の酸価が300を超えると、得られる色素が凝集しやすくなる場合があるためである。したがって、得られる色素の水分散性と、凝集性とのバランスがより良好となるため、色素を構成する樹脂の酸価を70?250の範囲内の値とすることがより好ましく、90?200の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、色素を構成する樹脂は、その酸価量を上述範囲に制御するために、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基などの親水性基を分子中に有していることが好ましい。すなわち、スチレン-マレイン酸共重合体樹脂、スチレン-スルホン酸共重合体樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体樹脂等を使用することが好ましい。
【0041】
さらに、色素を水分散性とするために、その形態として、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を含むエマルションとすることが好ましい。
このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、これらのアセチル化物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0042】
6.他の添加物
軽量粘土中に、添加剤として、上述した添加物以外に、防カビ剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、油類、ワックス類、グリセリン、増粘剤、可塑剤、界面活性剤、有機溶剤等の一種単独、または二種以上の組み合わせを添加することも好ましい。
【0043】
7.製造方法
(1)混合工程
有機中空微小球、色素、極性化合物、繊維、および水等の配合原料を均一に混合する工程である。例えば、これらの配合原料を均一に混合分散できるように、プロペラミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、三本ロール、ボールミル等を使用することが好ましい。
特に、有機中空微小球は軽くて、混練している間に破壊されやすい一方、分散にばらつきが生じやすいために、ニーダーを使用して、回転数10?1,000rpm、時間1?60分の条件で、押し出し混練することが好ましく、ニーダーを使用して、回転数30?300rpm、時間10?30分の条件で、押し出し混練することがより好ましい。
【0044】
また、色素についても、均一に混合分散できるように、予め、水やアルコールに分散させて溶液状に調整するとともに、その溶液が凝集しないように、アルカリ剤等を添加して、pHを7以上の値に調整しておくことが好ましく、8?10の範囲内の値に調整しておくことがより好ましく、8.5?10の範囲内の値に調整しておくことがさらに好ましい。
また、配合原料を混合する際には、例えば、30?70℃の範囲内の温度に維持することが好ましい。
この理由は、かかる混合温度が30℃未満となると、配合原料が均一に混合しない場合があるためであり、一方、混合温度が70℃を超えると、得られる軽量粘土の伸びがなくなり、もろくなる場合があるためである。
したがって、配合原料を混合する際の混合温度を35?60℃の範囲内の温度に維持することがより好ましく、40?55℃の範囲内の温度に維持することがさらに好ましい。
【0045】
(2)粘度調整工程
また、軽量粘土の粘度を調整する工程である。水やアルコール、あるいは有機溶剤を添加して、軽量粘土の粘度を、例えば、1×10^(3)?1×10^(9)mPa・s(25℃)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる軽量粘土の粘度が1×10^(3)mPa・s(25℃)未満の値となると、表面のべたつきが多くなり、取り扱い性が低下する場合があるためであり、一方、軽量粘土の粘度が1×10^(9)mPa・s(25℃)を超えると、得られる軽量粘土の伸びがなくなり、もろくなり、逆に取り扱い性が低下する場合があるためである。
したがって、かかる軽量粘土の粘度を1×10^(4)?1×10^(8)mPa・s(25℃)の範囲内の値とすることがより好ましく、1×10^(5)?1×10^(7)mPa・s(25℃)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(3)パッケージング工程
作成した軽量粘土を小分けして、パッケージングする工程を設けることが好ましい。すなわち、通常、軽量粘土は、水やアルコール等を比較的多量に含んでいるため、軽量粘土における含水量を維持して、取り扱い性を維持するために、防湿性材料、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチック材料で包装することが好ましい。
ただし、未発泡の有機中空微小球における脱ガスによる膨張問題を低下させるために、包装材料に通気孔を設けておくか、あるいはガス透過性材料から包装材料を構成することが好ましい。
この場合、軽量粘土における含水量の維持と、膨張問題の低下とのバランスを採るため、通気孔の大きさを0.01?100μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.05?50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1?20μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0047】
【実施例】
[実施例1]
(1)軽量粘土の作成
容量100リットルのニーダー内に、以下の配合材料を収容した後、回転数40rpmで、ニーダーを回転させて、軽量粘土を作成した。
▲1▼白色有機中空微小球 0.35kg
(平均粒径100μm、L値50以上、弱アルカリ性)
▲2▼イエロー顔料色素(固形分) 0.19kg
(平均粒径0.086um、標準偏差0.026um、95%範囲83-90um)
▲3▼カルボキシメチルセルロース 0.20kg
(エーテル化度:0.6)
▲4▼PVA 1.20kg
(重合度1,800、鹸化度95mol%、)
▲5▼広葉樹パルプ 0.98kg
(平均繊維長1mm)
▲6▼水 11.05kg
▲7▼フェノール系防腐剤 0.03kg
【0048】
(2)軽量粘土の評価
得られた軽量粘土につき、以下のような造形性(成膜性)、軽量性、発色性、べたつき性および膨張性(保管性)の評価をそれぞれ行った。得られた結果(n数=5の平均評価)を表1に示す。
【0049】
▲1▼造形性
軽量粘土の造形性(成膜性)を、以下の基準で評価した。なお、○以上の評価が得られれば、軽量粘土に適した造形性を有していると言える。
◎:ロールを用いて厚さ0.2mm以下のフィルムを成膜することができる。
○:ロールを用いて厚さ1mm以下のフィルムを成膜することができる。
△:ロールを用いて厚さ5mm以下のフィルムを成膜することができる。
×:ロールを用いても、厚さ5mm以下のフィルムを成膜することができない。
【0050】
▲2▼軽量性
軽量粘土の軽量性を、以下の基準で評価した。なお、○以上の評価が得られれば、軽量粘土として十分な軽量性を有していると言うことができる。
◎:密度が0.3g/cm^(3)以下の値である。
○:密度が0.5g/cm^(3)以下の値である。
△:密度が0.7g/cm^(3)以下の値である。
×:密度が0.7g/cm^(3)を超える値である。
【0051】
▲3▼発色性
軽量粘土の発色性を、以下の基準で評価した。なお、○以上の評価が得られれば、軽量粘土の発色性が良好であると言うことができる。
◎:透明感のある鮮明な色である。
○:鮮明な色である。
△:少々鮮明な色である。
×:不鮮明な色である。
【0052】
▲4▼べたつき性
軽量粘土のべたつき性を、指触して、以下の基準で評価した。なお、○以上の評価が得られれば、軽量粘土のべたつき性が良好であると言うことができる。
◎:べたつきがほとんど無い。
○:少々のべたつきがある。
△:顕著なべたつきがあるが、軽量粘土が指に転写はしない。
×:顕著なべたつきがあり、軽量粘土が指に転写する。
【0053】
▲5▼膨張性
100gの軽量粘土を長方形に成形し、その周囲を厚さ100μmのポリエチレンフィルムで包装した。この状態で、40℃のオーブンに1週間放置した後、容積を測定し、初期容積との関係から以下の基準で膨張性(保管性)を評価した。なお、○以上の評価が得られれば、軽量粘土に適した膨張性(保管性)を有していると言える。
◎:容積変化率が3%未満である。
○:容積変化率が10%未満である。
△:容積変化率が30%未満である。
×:容積変化率が30%以上である。
【0054】
[実施例2?3、比較例1?3]
表1に示す配合で、有機中空微小球の平均粒径を変えるとともに、添加量を変えて、実施例1と同様に軽量粘土を作成した。次いで、得られた軽量粘土につき、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
結果から容易に理解されるように、有機中空微小球の添加量が3重量%を超えると、軽量粘土における造形性や発色性、あるいは膨張性の評価が著しく低下することが判明した。一方、有機中空微小球の添加量が3重量%未満であっても、軽量粘土における軽量化を十分図れることが判明した。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例4?6、比較例4?6]
(1)軽量粘土の作成
表1に示す配合で、繊維材の添加量を変えて、実施例1と同様に軽量粘土を作成した。次いで、得られた軽量粘土につき、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、実施例6は、実施例1の再現性試験であって、比較例4は、比較例1の再現性試験である。
結果から容易に理解されるように、繊維材の添加量が10重量%を超えると、軽量粘土における造形性や膨張性が著しく低下することが判明した。一方、繊維材の添加量が10重量%未満であっても、軽量粘土における軽量化を十分図れることが判明した。
【0057】
【表2】

【0058】
[実施例7?9、比較例7?9]
表1に示す配合になるように水の添加量を変えるとともに、実施例7?9では有機中空微小球の添加量を2.5重量%、比較例7?9では、有機中空微小球の添加量を5重量%にしたまま、それぞれガラス製の無機中空微小球を添加した以外は、実施例1と同様に軽量粘土を作成した。次いで、得られた軽量粘土につき、実施例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
結果から容易に理解されるように、水の添加量が65重量%未満になると、軽量粘土における造形性や発色性が著しく低下することが判明した。また、水の添加量が65重量%を超えても、軽量粘土におけるベタツキ性についても、適当な値に十分調節できることも判明した。
一方、所定量の無機中空微小球を添加することにより、軽量粘土における造形性や発色性がさらに向上することが判明した。
【0059】
【表3】

【0060】
[実施例10]
実施例1で使用した白色有機中空微小球(平均粒径100μm、L値50以上、弱アルカリ性)の代わりに、茶色有機中空微小球(平均粒径100μm、L値50未満、酸性)を使用したほかは、実施例1と同様に、軽量粘土を作成して評価した。得られた結果を、実施例1および比較例1の結果とともに、表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
【発明の効果】
本発明の軽量粘土によれば、有機中空微小球の平均粒径を30?150μmの範囲内の値とするとともに、かかる有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とし、かつ、水の添加量を、全体量に対して、65?85重量%の範囲内の値とすることにより、造形性や軽量性に優れ、包装材で被覆して長期間保管した場合や、夏季等に周囲温度が上昇して、高温状態になった場合であっても膨張問題を解消して優れた保管性が得られるとともに、製造コストが安価である軽量粘土を提供することが可能になった。
さらには、本発明の軽量粘土によれば、有機中空微小球の添加量が少ないために、カラー化のための色素を添加した場合であっても、かかる色素の分散性を阻害することがなく、優れた発色性を得ることができる可能になった。
また、本発明の軽量粘土の製造方法によれば、平均粒径が30?150μmの範囲内の値である有機中空微小球を使用するとともに、ニーダーを用いて混練し、有機中空微小球の添加量を、全体量に対して、1?3重量%未満の範囲内の値とすることにより、造形性や軽量性に優れるとともに、保管性(膨張性)にも優れた軽量粘土を安価に提供することが可能になった。
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】軽量粘土における有機中空微小球の添加量と、軽量粘土の軽量性および造形性との関係を示す図である。
【図2】軽量粘土における有機中空微小球の添加量と、膨張性評価結果との関係を示す図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-03-15 
結審通知日 2010-03-17 
審決日 2010-05-20 
出願番号 特願2001-165214(P2001-165214)
審決分類 P 1 123・ 121- ZA (C04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中川 淳子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 木村 孔一
安齋 美佐子
登録日 2004-09-17 
登録番号 特許第3597490号(P3597490)
発明の名称 軽量粘土およびその製造方法  
代理人 浅野 勝美  
代理人 本山 敢  
代理人 江森 健二  
代理人 江森 健二  
代理人 本山 敢  
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