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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800265 審決 特許
無効2009800033 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B05D
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B05D
審判 全部無効 2項進歩性  B05D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B05D
管理番号 1221653
審判番号 無効2008-800076  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-04-28 
確定日 2010-08-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4094016号発明「ワンコーティングまたはスリーコーティング層にインク顔料を塗布してコーティング層を形成した器具およびその形成方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4094016号の請求項1ないし6、8ないし10に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4094016号の請求項7に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その10分の1を請求人の負担とし、10分の9を被請求人の負担とする。 
理由 第1 請求の趣旨・手続の経緯
1 本件特許
本件特許第4094016号の特許請求の範囲の請求項1?10に係る発明は、その出願が平成17年7月8日にされ、平成20年3月14日に特許権の設定登録がされた。

2 本件審判請求時の請求の趣旨及びその理由の概要
請求人は、平成20年4月28日に、本件特許第4094016号の特許請求の範囲の請求項1?10に係る発明についての特許が、下記(1)?(4)の理由により特許法第123条第1項第2号及び同法同項第4号に該当し、無効であるとの審決を求めて、本件審判を請求した。
(1)本件特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項の規定に適合しない特許出願に対してなされたものである。
(2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない特許出願に対してなされたものである。
(3)本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない特許出願に対してなされたものである。
(4)本件特許は、請求項1?10に係る発明が本件特許の出願より前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 以降の手続の経緯
本件審判は、上記「2」の請求の趣旨及び理由により、平成20年4月28日に請求されたものであり、以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
・平成20年 5月28日付け 答弁指令・請求書副本の送付
・平成20年 6月 3日付け 手続補正書(自発)副本の送付
・平成20年 9月 3日 答弁書及び訂正請求書(被請求人)
・平成20年 9月11日付け 弁駁指令・答弁書副本及び訂正請求書副本の送付
・平成20年10月 9日 弁駁書(請求人)
・平成20年11月11日付け 弁駁書副本の送付
・平成21年 1月13日 口頭審理陳述要領書(請求人)
・平成21年 1月13日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
・平成21年 1月13日 口頭審理
・平成21年 1月27日 上申書(被請求人)
・平成21年 2月10日 上申書(請求人)
・平成21年 2月24日 上申書(被請求人)
(以下、両当事者が提出した各手続書類につき、書類名に提出者を括弧書きで付加し、「口頭審理陳述要領書(請求人)」のようにいうことがある。)

4 平成21年3月31日付け補正許否の決定について
請求人は、上記平成21年1月13日の口頭審理陳述要領書において、請求の趣旨及び理由につき、概略以下(1)?(3)のように主張している。
(1)平成20年9月3日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の結果、訂正後の本件特許は、訂正後の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、訂正後の本件特許は、同法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきである。
(2)本件訂正請求による訂正後の請求項1,7,8に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。よって、訂正後の本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。
(3)本件訂正請求による訂正後の請求項1?10に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、訂正後の本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

そこで、上記請求の趣旨及び理由に係る補正につき検討すると、この補正は、請求書における請求の趣旨及び理由の要旨を変更するものであることが明らかであるものの、審理を不当に遅延させるおそれがないことも明らかなものであり、また、特許法第134条の2第1項の訂正請求である平成20年9月9月3日の訂正請求により請求の理由を補正する必要が生じたものと認められるから、当審は、同法第131条の2第2項第1号に該当するものとし、同法同条同項の規定により、平成21年3月31日付けで当該補正を許可する決定を行った。

5 請求の趣旨及びその理由の概要
したがって、本件審判請求の趣旨及びその理由の概要は、上記4(1)?(3)のとおりのものである。

第2 訂正の適否についての判断
本件訂正請求における、訂正請求の趣旨、訂正の目的及び訂正の内容は、平成20年9月3日付け訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)及び本件訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「本件訂正明細書等」という。)の記載によると、それぞれ以下のとおりのものと認められる。

1 訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件訂正請求書の「6.請求の趣旨」における、「特許第4094016号の特許請求の範囲及び明細書を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正するとの決定を求める。」との記載及び本件訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、「特許第4094016号の特許請求の範囲及び明細書を、本件訂正請求書に添付した特許請求の範囲及び明細書のとおり訂正することを求める。」というものと認められる。

2 訂正の内容
平成20年9月3日の訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「本件特許明細書等」という。)を、本件訂正明細書等のとおりに訂正すること、すなわち、以下の訂正事項A?Kのとおりである。

訂正事項A
本件特許明細書等における特許請求の範囲の請求項1に係る
「【請求項1】
耐熱塗料が塗付されて形成されたワンコーティング層(100)が形成された器具において、
前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記ワンコーティング層(100)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」を、
「【請求項1】
耐熱塗料が塗付されて形成されたワンコーティング層(100)が形成された器具において、
前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記ワンコーティング層(100)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」と訂正する。

訂正事項B
本件特許明細書等における特許請求の範囲の請求項4に係る
「【請求項4】
前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」を、
「【請求項4】
前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」と訂正する。

訂正事項C
本件特許明細書等における特許請求の範囲の請求項5に係る
「【請求項5】
前記インク顔料のコーティング液を構成している各組成の比率は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%であることを特徴とする請求項4に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」を、
「【請求項5】
前記インク顔料を含むコーティング液を構成している各組成の比率は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%であることを特徴とする請求項4に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」と訂正する。

訂正事項D
本件特許明細書等における特許請求の範囲の請求項7に係る
「【請求項7】
コーティング対象器具の表面の表面積をサンドブラスティングで増大させる段階、
前記器具の表面を洗浄する段階、
プライマー塗布液を10?12μm厚さに前記器具の表面に塗布してプライマーコート(201)を形成した後、200℃で15分間乾燥する段階、
ミッド塗布液を10?12μm厚さに前記プライマーコート(201)上に塗布して、湿った状態のミッドコート(202)を形成した後、前記ミッドコート(202)上にトップ塗布液を8?12μm厚さに塗布してトップコート(203)を形成し、300?350℃で15分間乾燥する段階及び、
乾燥した前記トップコート(203)上にインク顔料を噴射して不規則な凹凸状の不連続コーティング(6)層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。」を、
「【請求項7】
コーティング対象器具の表面の表面積をサンドブラスティングで増大させる段階、
前記器具の表面を洗浄する段階、
プライマー塗布液を10?12μm厚さに前記器具の表面に塗布してプライマーコート(201)を形成した後、200℃で15分間乾燥する段階、
ミッド塗布液を10?12μm厚さに前記プライマーコート(201)上に塗布して、湿った状態のミッドコート(202)を形成した後、前記ミッドコート(202)上にトップ塗布液を8?12μm厚さに塗布してトップコート(203)を形成し、300?350℃で15分間乾燥する段階及び、
乾燥した前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射して不規則な凹凸状の不連続コーティング(6)層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。」と訂正する。

訂正事項E
本件特許明細書等における特許請求の範囲の請求項8に係る
「【請求項8】
プライマーコート(201)、ミッドコート(202)及びトップコート(203)の順に表面に積層されてスリーコーティング層(200)が形成された器具において、
前記トップコート(203)上にインク顔料を一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記トップコート(203)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」を、
「【請求項8】
プライマーコート(201)、ミッドコート(202)及びトップコート(203)の順に表面に積層されてスリーコーティング層(200)が形成された器具において、
前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記トップコート(203)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」

訂正事項F
本件特許明細書等における特許請求の範囲の請求項9に係る
「【請求項9】
前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項8に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」を、
「【請求項9】
前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項8に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」

訂正事項G
本件特許明細書等における特許請求の範囲の請求項10に係る
「【請求項10】
前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%及び無機分散液8.8重量%の組成でなることを特徴とする請求項9に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」を、
「【請求項10】
前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%及び無機分散液8.8重量%の組成でなることを特徴とする請求項9に記載の表面層にインクが塗布されてなる器具。」

訂正事項H
本件特許明細書等の発明の詳細な説明における段落【0007】の
「すなわち、本発明の技術内容は以下の構成を備えることにより前記課題を解決できた。
(1)耐熱塗料が塗付されて形成されたワンコーティング層が形成された器具において、前記ワンコーティング層上にインク顔料を噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記ワンコーティング層と前記インク顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(2)前記耐熱塗料は、シリコン複合樹脂、複合有機溶剤、カーボンまたは無機顔料分散液、および複合充填材の組成でなることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(3)前記耐熱塗料を構成している各組成の比率は、シリコン複合樹脂35重量%、複合有機溶剤40重量%、カーボンまたは無機顔料分散液5重量%、および複合充填材20重量%であることを特徴とする前記(2)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(4)前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成でなることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(5)前記インク顔料のコーティング液を構成している各組成の比率は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%であることを特徴とする前記(4)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(6)前記ワンコーティング層(100)上に一回以上塗布される前記インク顔料は相異なる色相のインク顔料であることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(7)コーティング対象器具の表面の表面積をサンドブラスティングで増大させる段階、前記器具の表面を洗浄する段階、プライマー塗布液を10?12μm厚さに前記器具の表面に塗布してプライマーコートを形成した後、200℃で15分間乾燥する段階、ミッド塗布液を10?12μm厚さに前記プライマーコート上に塗布して、湿った状態のミッドコートを形成した後、前記ミッドコート上にトップ塗布液を8?12μm厚さに塗布してトップコートを形成し、300?350℃で15分間乾燥する段階及び、乾燥した前記トップコート上にインク顔料を噴射して不規則な凹凸状の不連続コーティング層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。
(8)プライマーコート、ミッドコート及びトップコートの順に表面に積層されてスリーコーティング層が形成された器具において、前記トップコート上にインク顔料を一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記トップコートと前記インク顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(9)前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機分散液の組成でなることを特徴とする前記(8)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(10)前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%及び無機分散液8.8重量%の組成でなることを特徴とする前記(9)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」を、
「すなわち、本発明の技術内容は以下の構成を備えることにより前記課題を解決できた。
(1)耐熱塗料が塗付されて形成されたワンコーティング層が形成された器具において、前記ワンコーティング層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記ワンコーティング層と前記インク顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(2)前記耐熱塗料は、シリコン複合樹脂、複合有機溶剤、カーボンまたは無機顔料分散液、および複合充填材の組成でなることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(3)前記耐熱塗料を構成している各組成の比率は、シリコン複合樹脂35重量%、複合有機溶剤40重量%、カーボンまたは無機顔料分散液5重量%、および複合充填材20重量%であることを特徴とする前記(2)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(4)前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成でなることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(5)前記インク顔料を含むコーティング液を構成している各組成の比率は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%であることを特徴とする前記(4)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(6)前記ワンコーティング層(100)上に一回以上塗布される前記インク顔料は相異なる色相のインク顔料であることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(7)コーティング対象器具の表面の表面積をサンドブラスティングで増大させる段階、前記器具の表面を洗浄する段階、プライマー塗布液を10?12μm厚さに前記器具の表面に塗布してプライマーコートを形成した後、200℃で15分間乾燥する段階、ミッド塗布液を10?12μm厚さに前記プライマーコート上に塗布して、湿った状態のミッドコートを形成した後、前記ミッドコート上にトップ塗布液を8?12μm厚さに塗布してトップコートを形成し、300?350℃で15分間乾燥する段階及び、乾燥した前記トップコート上にインク顔料を含むコーティング液を噴射して不規則な凹凸状の不連続コーティング層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。
(8)プライマーコート、ミッドコート及びトップコートの順に表面に積層されてスリーコーティング層が形成された器具において、前記トップコート上にインク顔料を一回以上噴射して前記インク顔料を含むコーティング液を斑点状に塗布し、前記トップコートと前記インク顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(9)前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機分散液の組成でなることを特徴とする前記(8)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(10)前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%及び無機分散液8.8重量%の組成でなることを特徴とする前記(9)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」

訂正事項I
本件特許明細書等の発明の詳細な説明における段落【0033】の
「図1に示すように、セラミック塗料を器具1の表面に塗布してセラミックコーティング層のワンコーティング層100を形成し、前記セラミックコーティング層のワンコーティング層100上に、セラミック塗料などの、前記ワンコーティング層と同種または異種のインク顔料を噴射器で斑点状に塗布して、前記インク顔料によって不規則な模様の凹凸状の不連続コーティング層6をセラミックコーティング層のワンコーティング層とともに形成する。」を、
「図1に示すように、セラミック塗料を器具1の表面に塗布してセラミックコーティング層のワンコーティング層100を形成し、前記セラミックコーティング層のワンコーティング層100上に、セラミック塗料などの、前記ワンコーティング層と同種または異種のインク顔料を含むコーティング液を噴射器で斑点状に塗布して、前記インク顔料によって不規則な模様の凹凸状の不連続コーティング層6をセラミックコーティング層のワンコーティング層とともに形成する。」と訂正する。

訂正事項J
本件特許明細書等の発明の詳細な説明における段落【0042】の
「また、前記スリーコーティング層のトップコート上に分散されて斑点状に塗布されるインク顔料は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%の組成および組成比率を有する。」を、
「また、前記スリーコーティング層のトップコート上に分散されて斑点状に塗布されるインク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%の組成および組成比率を有する。」と訂正する。

訂正事項K
本件特許明細書等の発明の詳細な説明における段落【0044】の
「まず、第1段階で、コーティング対象器具の表面に、微細なエンボスを無数に形成するサンドブラスティング(sand blasting)処理を行うことでその表面積を増大させ、第2段階で、前記サンドブラスティング処理された器具の表面をきれいに洗浄し、第3段階で、サンドブラスティング処理されて洗浄された器具の表面にワンコーティング層、またはスリーコーティング層を形成する。すなわち、セラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料の内から選択した一つの塗料を15?25μm厚さに塗布してセラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層の一つであるワンコーティング層を形成した後、100?150℃で10?15分間熱処理するか、あるいはプライマーコーティング液を10?12μm厚さに塗布してプライマーコートを形成した後、200℃で15分間乾燥し、第4段階で、器具の表面に塗布されたプライマーコート上にミッドコーティング液を10?12μm厚さに塗布してミッドコートを形成し、第5段階で、前記ミッドコートが全く乾燥する前にトップコーティング液を8?12μm厚さに塗布してトップコートを形成した後、300?350℃で15分間乾燥することにより、スリーコーティング層を完成することになる。その次の段階で、ワンコーティング層またはスリーコーティング層の乾燥したトップコート上にインク顔料を噴射して斑点状の不規則模様の凹凸状不連続コーティング層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理することになる。」を、
「まず、第1段階で、コーティング対象器具の表面に、微細なエンボスを無数に形成するサンドブラスティング(sand blasting)処理を行うことでその表面積を増大させ、第2段階で、前記サンドブラスティング処理された器具の表面をきれいに洗浄し、第3段階で、サンドブラスティング処理されて洗浄された器具の表面にワンコーティング層、またはスリーコーティング層を形成する。すなわち、セラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料の内から選択した一つの塗料を15?25μm厚さに塗布してセラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層の一つであるワンコーティング層を形成した後、100?150℃で10?15分間熱処理するか、あるいはプライマーコーティング液を10?12μm厚さに塗布してプライマーコートを形成した後、200℃で15分間乾燥し、第4段階で、器具の表面に塗布されたプライマーコート上にミッドコーティング液を10?12μm厚さに塗布してミッドコートを形成し、第5段階で、前記ミッドコートが全く乾燥する前にトップコーティング液を8?12μm厚さに塗布してトップコートを形成した後、300?350℃で15分間乾燥することにより、スリーコーティング層を完成することになる。その次の段階で、ワンコーティング層またはスリーコーティング層の乾燥したトップコート上にインク顔料を含むコーティング液を噴射して斑点状の不規則模様の凹凸状不連続コーティング層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理することになる。」

3 訂正の目的
本件訂正の目的は、本件訂正請求書の「6.」の「(2)訂正の理由」の記載によれば、訂正事項A?Kはいずれも「特許請求の範囲及び明細書の誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明」とされている。

4 訂正の適否の判断
(1)特許請求の範囲についてする訂正の適否
ア 請求項1についてする訂正(訂正事項Aに係る訂正)
請求項1についてする訂正(訂正事項Aに係る訂正)は、「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を噴霧器で一回以上噴射」を「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射」と訂正するものである。
ここで、本件特許明細書等を検討すると、【0019】には、「前記コーティング層に塗布される前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成を含む」と記載されており、その前の【0018】には、「前記ワンコーティング層または前記スリーコーティング層の表面に塗布されるインク顔料は…」と記載されていることから、「コーティング層」とは、「ワンコーティング層またはスリーコーティング層」を意味していると解され、ワンコーティング層に噴射するのは、インク顔料のコーティング液であるといえる。
してみると、請求項1のワンコーティング層上に噴霧器で噴射する「インク顔料」は、液体であると解するのが自然であるから、「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射」と訂正することは、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものといえる。
さらに、「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を噴霧器で一回以上噴射」を「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射」と訂正することは、単に誤記を正したものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件当初明細書等」という。)に記載した事項に、何ら新規な技術的事項を追加するものではないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合する。
加えて、「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を噴霧器で一回以上噴射」を「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射」と訂正することは、単に誤記を正しただけのものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
したがって、「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を噴霧器で一回以上噴射」を「前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の規定に適合するものであり、さらに、同法同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

イ 請求項4?5,9?10についてする訂正(訂正事項B,C,F及びGに係る訂正)
請求項4?5,9?10についてする訂正(訂正事項B,C,F及びGに係る訂正)は、「インク顔料のコーティング液」を「インク顔料を含むコーティング液」と訂正するものである。
ここで、本件特許明細書等を検討すると、【0019】には、「前記コーティング層に塗布される前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成を含む」と記載されており、インク顔料を含むことは明らかである。
してみると、請求項4?5,9?10の「インク顔料のコーティング液」を「インク顔料を含むコーティング液」と訂正することは、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものといえる。
さらに、「インク顔料のコーティング液」を「インク顔料を含むコーティング液」と訂正することは、単に誤記を正したものであり、本件当初明細書等に記載した事項に、何ら新規な技術的事項を追加するものではないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合する。
加えて、「インク顔料のコーティング液」を「インク顔料を含むコーティング液」と訂正することは、単に誤記を正しただけのものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
したがって、「インク顔料のコーティング液」を「インク顔料を含むコーティング液」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の規定に適合するものであり、さらに、同法同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

ウ 請求項7についてする訂正(訂正事項Dに係る訂正)
請求項7についてする訂正(訂正事項Dに係る訂正)は、「前記トップコート(203)上にインク顔料を噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射」と訂正するものである。
ここで、本件特許明細書等を検討すると、【0019】には、「前記コーティング層に塗布される前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成を含む」と記載されており、その前の【0018】には、「前記ワンコーティング層または前記スリーコーティング層の表面に塗布されるインク顔料は…」と記載されていることから、「コーティング層」とは、「ワンコーティング層またはスリーコーティング層」を意味していると解され、スリーコーティング層に噴射するのは、インク顔料のコーティング液であるといえる。
してみると、請求項7のトップコート上に噴射する「インク顔料」は、液体であると解するのが自然であるから、「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射」と訂正することは、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものといえる。
さらに、「前記トップコート(203)上にインク顔料を噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射」と訂正することは、単に誤記を正したものであり、本件当初明細書等に記載した事項に、何ら新規な技術的事項を追加するものではないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合する。
加えて、「前記トップコート(203)上にインク顔料を噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射」と訂正することは、単に誤記を正しただけのものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
したがって、「前記トップコート(203)上にインク顔料を噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の規定に適合するものであり、さらに、同法同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

エ 請求項8についてする訂正(訂正事項Eに係る訂正)
請求項8についてする訂正(訂正事項Dに係る訂正)は、「前記トップコート(203)上にインク顔料を一回以上噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射」と訂正するものである。
ここで、本件特許明細書等を検討すると、【0019】には、「前記コーティング層に塗布される前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成を含む」と記載されており、その前の【0018】には、「前記ワンコーティング層または前記スリーコーティング層の表面に塗布されるインク顔料は…」と記載されていることから、「コーティング層」とは、「ワンコーティング層またはスリーコーティング層」を意味していると解され、スリーコーティング層に噴射するのは、インク顔料のコーティング液であるといえる。
してみると、請求項8のトップコート上に噴射する「インク顔料」は、液体であると解するのが自然であるから、「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射」と訂正することは、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものといえる。
さらに、「前記トップコート(203)上にインク顔料を一回以上噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射」と訂正することは、単に誤記を正したものであり、本件当初明細書等に記載した事項に、何ら新規な技術的事項を追加するものではないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合する。
加えて、「前記トップコート(203)上にインク顔料を一回以上噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射」と訂正することは、単に誤記を正しただけのものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
したがって、「前記トップコート(203)上にインク顔料を一回以上噴射」を「前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の規定に適合するものであり、さらに、同法同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

オ まとめ
訂正事項A?Gは、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。
そして、これらの訂正事項は、いずれも、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

(2)発明の詳細な説明についてする訂正の適否
訂正事項H?Kは、訂正事項A?Gの訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当する。
そして、これらの訂正事項は、いずれも、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

(3)むすび
以上のとおり、訂正事項A?Kは、特許法第134条の2第1項、及び同条第5項の規定により準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

第3 本件発明について
上記のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許第4094016号の請求項1?10に係る発明(以下、順に、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明10」といい、併せて「本件訂正発明」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
「耐熱塗料が塗付されて形成されたワンコーティング層(100)が形成された器具において、
前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記ワンコーティング層(100)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項2】
「前記耐熱塗料は、シリコン複合樹脂、複合有機溶剤、カーボンまたは無機顔料分散液、および複合充填材の組成でなることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項3】
「前記耐熱塗料を構成している各組成の比率は、シリコン複合樹脂35重量%、複合有機溶剤40重量%、カーボンまたは無機顔料分散液5重量%、および複合充填材20重量%であることを特徴とする請求項2に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項4】
「前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項5】
「前記インク顔料を含むコーティング液を構成している各組成の比率は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%であることを特徴とする請求項4に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項6】
「前記ワンコーティング層(100)上に一回以上塗布される前記インク顔料は相異なる色相のインク顔料であることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項7】
「コーティング対象器具の表面の表面積をサンドブラスティングで増大させる段階、
前記器具の表面を洗浄する段階、
プライマー塗布液を10?12μm厚さに前記器具の表面に塗布してプライマーコート(201)を形成した後、200℃で15分間乾燥する段階、
ミッド塗布液を10?12μm厚さに前記プライマーコート(201)上に塗布して、湿った状態のミッドコート(202)を形成した後、前記ミッドコート(202)上にトップ塗布液を8?12μm厚さに塗布してトップコート(203)を形成し、300?350℃で15分間乾燥する段階及び、
乾燥した前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射して不規則な凹凸状の不連続コーティング(6)層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。」
【請求項8】
「プライマーコート(201)、ミッドコート(202)及びトップコート(203)の順に表面に積層されてスリーコーティング層(200)が形成された器具において、
前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記トップコート(203)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項9】
「前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項8に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。」
【請求項10】
「前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%及び無機分散液8.8重量%の組成でなることを特徴とする請求項9に記載の表面層にインクが塗布されてなる器具。」

第4 無効審判請求人の主張する無効理由の概要
上記「第1 4 平成21年3月31日付け補正許否の決定について」で述べたように、請求人の主張する無効理由は概略以下(1)?(3)のとおりである。

(1)本件訂正後の請求項1?10に係る各発明は、特許法第36条第6項第2号に適合しない。よって、訂正後の本件特許は、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきである。
(2)本件訂正後の請求項1,7,8に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。よって、訂正後の本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。
(3)本件訂正後の請求項1?10に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、訂正後の本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

しかしながら、平成21年1月13日の第1回口頭審理の調書のとおり、請求人は、下記aに係る主張を撤回している。

a 同口頭陳述要領書の4頁5行?31行の「6.2.2 訂正後の請求項1-10」のうち、4頁6行?27行における、本件訂正発明7は、甲第1号証に記載された発明と実質的に異なるところがない同一の発明であり、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができず、特許法第123条第1項2号に規定する無効理由を有する旨の主張

そうすると、請求人の主張する無効理由は、以下のとおりのものである。
1 本件訂正後の請求項1,8に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。よって、訂正後の本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。
2 本件訂正後の請求項1?10に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、訂正後の本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。
3 本件訂正後の請求項1?10に係る各発明は、特許法第36条第6項第2号に適合しない。よって、訂正後の本件特許は、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきである。
以下、「無効理由1」、「無効理由2」及び「無効理由3」という。

第5 証拠方法及び主な証拠方法の内容
1 請求人が提出したもの
(1)特公平6-77544号公報(甲第1号証)
(2)特表2001-505125号公報(甲第2号証)
(3)特開平10-15439号公報(甲第3号証)
(4)「標準 化学用語辞典」日本化学会編、134頁の「顔料」の項(甲第4号証)
(5)「岩波 理化学辞典 第5版」、699頁の「顔料」の項(甲第5号証)
(6)特開平9-290184号公報(甲第6号証)
(7)特開2001-25703号公報(甲第7号証)
(8)特開2000-86941号公報(甲第8号証)
(9)特開昭51-73037号公報(甲第9号証)
(10)特開昭58-55070号公報(甲第10号証)
(11)「広辞苑第4版」、CD-ROM版の「霜降」の項(甲第11号証)
(12)「塗装技術」、1992年5月号、102頁?105頁の写し(甲第12号証)
(13)「色材」、52巻、10号、1979年、567頁?579頁(甲第13号証)
(14)ダイキン工業株式会社のカタログ「フッ素樹脂塗料」、1994年3月印刷分(甲第14号証)
(15)デュポン社の「フッ素樹脂コーテイング技術講習会」(平成2年3月15日)の資料(甲第15号証)
(16)「水性エマルション塗料,無機質塗料のつくり方」、技術情報協会、2004年3月29日発行(甲第16号証)

2 被請求人が提出したもの
(1)「ヤフー百科辞典(日本大百科全書(小学館))」、「充填材」について(乙第1号証)
(2)「ヤフー百科辞典(日本大百科全書(小学館))」、「無機顔料」について(乙第2号証)

3 特公平6-77544号公報(甲第1号証)について
その出願前頒布された刊行物であることが明らかな特公平6-77544号公報(甲第1号証。以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

1-a「【請求項2】高温調理機器の調理面あるいは加熱室壁面等の基材上に形成される皮膜であって、
主成分であるポリチタノカルボシランワニス、耐熱顔料に、フッ素樹脂粉末を添加して有機溶剤で液状にした塗料で下塗装膜層を、基材上に塗布形成した後に、
この下塗装膜層を、室温乾燥あるいは強制乾燥によって、有機溶剤を揮発させ或いは半焼成状態にし、この下塗装膜層の上に、ディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を、霜降り状或いは薄く連続して塗布形成して焼結する高温調理機器用皮膜の形成方法」(【特許請求の範囲】)

1-b「この発明は、電子レンジやオーブントースターなどの加熱室の壁面、ホットプレートや調理鍋等の加熱調理面の基材の上に形成される皮膜の構造及びこの皮膜の形成方法に関する。」(【発明の詳細な説明】)

1-c「まず、第1図Aを参照して、基板32の上に塗料42が10?40ミクロン仕上げになるようにスプレー塗布される。塗料42としては、ポリチタノカルボシラン(たとえば宇部興産株式会社製のチラノコート)を結合剤とした有機溶剤ワニス中に、高温に耐えるFe,Co,Mn,Cr等の金属酸化物または複合酸化物の耐熱顔料、フッ素樹脂粉末(ヘキストジャパン株式会社のフォスタフロン♯9205)、増粘剤、シリコンオイルおよび有機溶剤を混合してなるものを使用した。…(略)…
次に、150℃20分の予備乾燥後、或は、室温乾燥後、ディスパージョン型四フッ化エタノン樹脂のフッ素樹脂の液状塗料(例えば、ダイキン工業株式会社の商標“シルクウエア”黒色系)を薄く、霜降り状或は薄く連続して塗布し、室温乾燥或は150℃20分の予備乾燥を経て、380?420℃の温度で20?30分焼結すると、第1図B或いは第1図Cに示す塗膜が形成される。
第1図Bは、連続したディスパージョン型四フッ化エタノン樹脂塗料を薄く塗布したとき、第1図Cは、霜降り状に薄く塗布して仕上げた場合の成膜断面構成図である。」(3頁5欄45行?6欄27行)

1-d「上述のとおり、最上層部に非粘着性を呈する樹脂からなる四フッ化エチレン樹脂系ディスパージョン塗料を用いて仕上げることのできるように、このディスパージョン型四フッ化エチレン樹脂塗料塗膜層の下に、四フッ化エチレン樹脂粉末(20%以下)を含有するポリチタノカルボシランを顔料粒子を主成分とする塗料の塗膜層をあらかじめ形成しておいて、複合積層した1体の皮膜層構造にする。この複層構造は、2?3層からなり、最上層部は、従来のフッ素樹脂コーティングの表面肌であるが、下層のセラミック層の働きで、相乗効果によって、硬く,金属ヘラ或はホーロー仕上品,ステンレス等の調理部品と接触しても傷付きがない。又、目的の油滴等が付着し、強固に焦げ付いても、容易に除去でき、除去した後の染色(シミあと)も少なく目立たない。又、高温450℃まで耐え、密着性も良好である。」(3頁6欄48行?4頁7欄12行)

1-e「実施例1
前述の一般的配合割合において、フッ素樹脂粉末(ヘキストジャパン社製ホスタフロン♯9205)を3,6,8,15,20重量%と変化させて、塗料50を形成した。…(略)…フッ素樹脂粉末を含む塗料50を、…(略)…10?40ミクロン仕上げになるように塗布した。塗布方法は第2図に示すとおりである。すなわち、基材32の上に塗料50を吹付けて、常乾又は150℃20分の予備乾燥で、溶剤分を揮発させたのち、四フツ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料43を薄く霜降り状、或は、薄く連続して塗布する方法である。…(略)…次に、150℃で20分間予備乾燥を行なった後、焼付け硬化を380?420℃で20分間行なった。」(4頁7欄43行?8欄9行)

1-f「実施例7
第8図を参照して、基材32の調理面を400℃でオイル焼きした後、ショットブラストして凹凸をつけた。得られた粗面54を清掃、清浄した後、粗面54上にセラミック質のアルミナ-チタニア56を溶射した。その後、ポリチタノカルボシランを結合剤にしたアルミニウム粉を混合したシルバー色の耐熱プライマ塗料58を3?5ミクロン仕上げになるように塗布した。その後室温で乾燥し、溶剤揮発させた後、フッ素樹脂を含まない塗料52を10?15ミクロン仕上げになるように塗布した。その後、室温で乾燥し、フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料50を10?30ミクロン仕上げになるように塗布し、室温で乾燥又は、150℃20分の強制乾燥で、有機溶剤分を揮発させた後、四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料43を薄く、霜降り状或は、薄く連続して塗布し、150℃20分の予備乾燥を経て、380?420℃の温度で、20?30分間焼付硬化を行なった。」(5頁9欄33行?49行)

1-g「○以上説明したとおり、本発明の皮膜構造によれば、最上層部に非粘着性を呈する樹脂からなる非粘着性脂(フッ素樹脂)層が、従来法(時として、セラミック層内部にフッ素粉末が多く埋没する)に比べ、確実に表層に霜降り状或いは連続して形成されるので、非粘着性において、バラツキを生じない。又、塗装する設備の違いによる大差も生じない。」(5頁10欄28行?34行)

1-h「金属,ホーロー仕上げ,セラミック,陶器,磁器などの硬質で、鋭角な傷付きを起こし易い調理器具,食器などが、たびたび接触しても、ハクリの起こさない皮膜構造は、前記したフッ素樹脂粉末を添加したセラミック塗装膜が下にしたことが必須の条件であり、さらに、上塗のディスパージョン型フッ素樹脂塗料の吹付膜が厚くなると、フッ素樹脂本来の柔軟な性質がでて、鋭利な金属ヘラや、ホーロートレイの接触で高温?室温条件でハクリ、傷付きを起こしてしまう。本発明の場合、10μ以下の霜降り状或は連続膜にしているので、下塗のフッ素樹脂粉末入セラミック層との相乗効果で、フッ素樹脂本来の欠点がカバーでき、耐摩耗性,金属ヘラの使える皮膜となっているので、電子レンジオーブン調理が高温でも、トレイの出し入れで、皮膜がハクリしない。又、ホットプレートで調理を行い、金属ヘラを用いても、ハクリを起こさないことが判明した。…(略)…
前記、非粘着性向上効果を、実調理でテストした結果例を示すと、ローストチキン(若鳥一匹)をコンべクション機能で調理し、飛散した油脂分が、オーブン壁面に霧状?油滴状に付着し、焦げ付いた汚れを水にぬれた拭きとり清掃紙で清掃すると、従来法のフッ素樹脂粉末を添加したセラミック塗料を最上層部に塗布して、フッ素樹脂リッチ層を表面に形成したものは、ほぼ、完全に近い状態に拭きとれるが、小さい点状で焦げついた(こびりついた)ものは、除去するのに力がかかり、点状のシミが残ったりして、十分な評価がでていなかった。本発明の皮膜構造は、それを上回わる完全なものとなり、焦げ付き付着物が完全にとれて、付着物のあとシミ,汚れが目立たなくなった。
一方、ホットプレートのステーキ調理テストの場合、セラミック塗料中にフッ素樹脂粉末を添加した表面仕上の従来品は、300℃に昇温したプレート面にステーキ肉を載せて調理を行うと、調理後のホットプレートのプレート表面を、清掃すると肉汁がこびりついて、クリーンにすることが難しい状態になる。本発明の皮膜構造にすると、調理後のプレート面にこびりついた肉汁や焦げついた調理カスも、布や紙で拭き取れる状態になって、実用性のある皮膜構造であることが実証され、又、金属ヘラを使っても、耐久性のある硬い非粘着性を示した。」(6頁11欄4行?12欄9行)

1-i「


」(第1C図)

1-j「


」(第2図)

1-k「


」(第8図)

4 特開平9-290184号公報(甲第6号証)について
特開平9-290184号公報(甲第6号証)には、以下の記載がある。

2-a「速乾性の水溶性塗料を、この水溶性塗料とともに供給される噴霧エアおよびパターンエアによって50?100cc/分の割合で供給し、被塗装物の表面に斑点状の模様を形成するスパッタ塗装用のノズルであって、
ニードルが出没することによって水溶性塗料の供給量を調整するようになされたニードルノズルと、このニードルノズルを取り巻いて噴霧エアおよびパターンエアを供給するエアノズルとを具備し、ニードルノズルの先端部が円錐状となされたことを特徴とするスパッタ塗装用ノズル。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

2-b「【従来の技術】
一般に、塗装方法の一つとして、噴霧エアおよびパターンエアとともに塗料を供給して、被塗装物の表面に斑点状の模様を形成するスパッタ塗装が知られている。
従来より、このスパッタ塗装は、塗料の条件を限定することで、一つのスプレーガン当たり100?400cc/分の少量の塗料で塗装することが可能となされていた(例えば、特公平6-102176号公報参照)。また、このスパッタ塗装に使用するノズルとしては、通常のスプレーガンに使用されているノズルを用い、塗料が霧化するか否かの状態となるように、塗料量およびエアー量を調整して供給していた。」(【0002】?【0003】)

2-c「すなわち、このスパッタ塗装用ノズル1は、ニードルノズル2を取り巻いてエアノズル3が設けられている。
ニードルノズル2は、ニードル21の出没によって先端開口部22からの塗料4の供給量が調整できるようになされている。この先端開口部22は、塗料4のキレが良くなるように、円錐状に形成されている。
エアノズル3は、ニードルノズル2の周囲を囲繞するようになされたもので、噴霧エア31とパターンエア32との異なった二つのエア通路が形成されている。このうち、噴霧エア31は、ニードルノズル2との間に形成された間隙33と、その周囲を取り巻くように穿孔された噴霧孔34から噴出される。また、パターンエア32は、噴出孔34のさらに外側を取り囲むように形成されたリブ35の内側面に斜め方向に向けて穿孔された噴出孔36から噴出される。そして、この噴霧エア31とパターンエア32とのバランスを取ることで、ニードルノズル2から供給される塗料4が、霧化するか否かの状態で噴霧される。これにより、被塗装物(図示省略)の表面には、塗料4を斑点状に塗布できるようになされている。」(【0010】?【0012】)

5 特開2001-25703号公報(甲第7号証)について
特開2001-25703号公報(甲第7号証)には、以下の記載がある。

3-a「被塗物表面に、色調などが異なる複数の着色塗料を、それぞれ別々の吐出孔からほぼ同時に粒状に噴霧して斑点状に塗着させて斑点状多彩模様を形成せしめる第1工程と、ついでその模様塗面に、再度、同様にして色調などが異なる複数の着色塗料をそれぞれ別々の吐出孔からほぼ同時に粒状に噴霧塗装して斑点状多彩模様を形成せしめる第2工程からなり、しかもこの両工程における塗着した塗料の斑点の大きさを異ならしめることを特徴とする多彩模様塗膜形成方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項2】)

3-b「被塗面に色調が異なる複数の着色塗料を単色ごとに、時間差を設けて順次噴霧塗装して、斑点状の多色模様を形成することはすでに公知である。例えば、白色塗料及び黒色塗料を使用する塗装系では、まず白色塗料を斑点状に塗装してから、その後、黒色塗料を噴霧して、白黒が斑点状に混在した模様を形成せしめている。」(【0002】)

3-c「着色塗料(B)を構成する2種類以上の着色塗料の塗装は、それぞれ別々の吐出孔からほぼ同時に粒状に噴霧することによって行われる。例えば、着色塗料(B-1)及び着色塗料(B-2)を使用する場合は、着色塗料(B-1)は吐出孔aから、着色塗料(B-2)は吐出孔bから、それぞれ粒状に噴霧する。これらの噴霧時の霧化圧力は、0.5?2kgf/cm^(2 )であることが好ましい。また吐出孔a及び吐出孔bは、同一の塗装ガンに装備されている1ガン方式、または別々の塗装ガンに装備されている2ガン方式のいずれでも差支えない。
着色塗料(B)を構成する2種類以上の着色塗料の塗装は、塗料を噴出させるための吐出孔(塗装ノズル)を有するエアレススプレ-、エアスプレ-などを用いて行うことができる。被塗面に塗着した斑点状塗膜の個々の大きさは、直径で0.5?10mm、特に2?6mm程度、その膜厚は硬化塗膜で20μm?50μmが適している。」(【0020】?【0021】)

6 特開昭51-73037号公報(甲第9号証)について
特開昭51-73037号公報(甲第9号証)には、以下の記載がある。

4-a「塗膜形成面にプラスチゾル塗料を塗装していつたん焼付けた後、同一または異なる色のプラスチゾル塗料をスプレー塗装し、更にこれを焼付けることによつて模様入りの凹凸塗膜を得ることを特徴とする模様入り塗膜の作成方法。」(特許請求の範囲)

4-b「本発明では、まず塗膜形成面にプラスチゾル塗料が塗装されるが、該塗装方法は何ら限定されるものではない。しかしてもつとも代表的な方法はロール塗装法殊にロールコーター塗装法であり、該方法であれば平滑な塗膜面を連続的に生成することができる。…この他スプレー塗装、デイッピング塗装等の一般的な塗装手段で行なうこともでき、塗装後漸時放置するか或いは振動を与えれば、塗膜面が平滑になり、ロール塗装法に劣らぬ塗膜面を与えることも可能である。
次いで
前記塗膜面上に同一または異なる色のプラスチゾル塗料がスプレー塗装される。…該スプレー塗装に使用されるプラスチゾル塗料は、先に塗装されていたプラスチゾル塗料と同種若しくは異種のものを使用すればよく、また1種若しくは2種以上を混合して使用することもできるが、同種のものを使用するのがもつともよい。」(2頁左下欄17行?右下欄17行)

7 特開昭58-55070号公報(甲第10号証)について
特開昭58-55070号公報(甲第10号証)には、以下の記載がある。

5-a「基体面に対し、粘度18?22sec(♯4フォードカップ)の塗料を、吹付霧化圧力0.05?0.25kg/cm^(2)をもつて、0.5?1g/10cm^(2)の付着量になるように吹付け、斑点模様を現出したのち上塗りすることを特徴とする吹付塗装による斑点模様現出方法。」(特許請求の範囲)

5-b「本発明における適正な粘度範囲は18?22sec(♯4フォードカップ)で、吹付霧化圧力の適正範囲の0.05?0.25kg/cm^(2)と相俟つて、スプレーガンより塗料が雫となつて滴下し、それが弱い吹付圧力によつて、被塗面に一部重なるように塗着され、斑点模様を現出するのである。この際、塗料の付着量が0.5g/10cm^(2)未満のときは、斑点同士の間隔が広過ぎて所望斑点模様が得られず、又、1g/10cm^(2)を超えると斑点同士の間隔が狭過ぎて、斑点の重なりが多くなり、これ又所望の斑点模様が得られない。」(2頁右上欄2行?12行)

8 「広辞苑第4版」、CD-ROM版の「霜降」の項(甲第11号証)
「広辞苑第4版」、CD-ROM版の「霜降」(甲第11号証)の項には、以下の記載がある。

6-a「霜の降りたように、白い斑点が散らばっている模様。」

9 「塗装技術」、1992年5月号、102頁?105頁(甲第12号証)について
「塗装技術」、1992年5月号、102頁?105頁の写し(甲第12号証)には、以下の記載がある。

7-a「このような状況の中で,東北大学の(故)矢島教授のグループによる「セラミックスのポリマー前駆体」に関する研究から,新規なケイ素系ポリマーであるチラノポリマーが生れた。このポリマーをバインダー主成分とする耐熱塗料「チラノコート」を当社が上市して依頼,約5年経過し,幅広い分野で需要を拡大している。」(102頁左欄16行?22行)

7-b「


」(第1図)

7-c「上記のようなユニークな性能をもつチラノポリマーを主要なバインダー成分として,さらに各種の機能性をもつニューセラミック微粉末,無機系着色顔料,充填剤,塗料用分散剤および有機溶剤を配合したものである。
このチラノコートには,添加するセラミック微粉末材料の種類によって,第1表のような塗料グレードをあらかじめ設定しているし,またユーザーの要求に基づいて新規にグレード設計することも可能である。」(103頁右欄7行?16行)

7-d「

」(第1表)


10 「水性エマルション塗料,無機質塗料のつく方」、技術情報協会、2004年3月29日発行(甲第16号証)について
「水性エマルション塗料,無機質塗料のつくり方」、技術情報協会、2004年3月29日発行(甲第16号証)には、以下の記載がある。

8-a「


」(表6)

8-b「


」(表7)

第6 当審の判断
1 無効理由1,2について
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「加熱調理面の基材の上に形成される皮膜の構造及びこの皮膜の形成方法」に関して記載されており(摘記1-b)、刊行物1には、具体的に、「高温調理機器の調理面あるいは加熱室壁面等の基材上に形成される皮膜であって、主成分であるポリチタノカルボシランワニス、耐熱顔料に、フッ素樹脂粉末を添加して有機溶剤で液状にした塗料で下塗装膜層を、基材上に塗布形成した後に、この下塗装膜層を、室温乾燥あるいは強制乾燥によって、有機溶剤を揮発させ或いは半焼成状態にし、この下塗装膜層の上に、ディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を、霜降り状或いは薄く連続して塗布形成して焼結する高温調理機器用皮膜の形成方法」が記載されている(摘記1-a)。ここで、第11図には、高温調理機器であるホットプレートが記載されており、摘記1-bには、高温調理機器としてホットプレート及び調理鍋が記載されていることから、刊行物1には、前記高温調理機器用皮膜の形成方法のみならず、その方法によって形成された皮膜を有する高温調理機器も記載されているといえる。
また、ディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料として、ディスパージョン型四フッ化エタノン樹脂のフッ素樹脂の液状塗料(例えば、ダイキン工業株式会社の商標“シルクウエア”黒色系)が記載されている(摘記1-c)。一般に、ディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料が通常乳白色であること、ディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料において、着色のために無機顔料を添加することは周知・慣用であること(特公平1-38813号公報及び特公昭45-28117号公報等参照)をかんがみると、黒色系である前記液状塗料は、カーボンブラック等の無機顔料を含有していると考えるのが極めて自然である。
よって、刊行物1には、
「主成分であるポリチタノカルボシランワニス、耐熱顔料に、フッ素樹脂粉末を添加して有機溶剤で液状にした塗料で下塗装膜層を、高温調理機器の調理表面上に塗布形成した後に、この下塗装膜層の上に、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を、霜降り状に塗布形成して焼結する皮膜を有する高温調理機器」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

刊行物1は、「加熱調理面の基材の上に形成される皮膜の構造及びこの皮膜の形成方法」に関して記載されており(摘記1-b)、その加熱調理面の基材として、加熱調理器具が含まれることは上述したとおりである。そして、刊行物1には、具体的に、「基材32の調理面を…ショットブラストして凹凸をつけ…得られた粗面54を清掃、清浄した後、…ポリチタノカルボシランを結合剤にしたアルミニウム粉を混合したシルバー色の耐熱プライマ塗料58を3?5ミクロン仕上げになるように塗布し…その後室温で乾燥し、溶剤揮発させた後、フッ素樹脂を含まない塗料52を10?15ミクロン仕上げになるように塗布した…後、室温で乾燥し、フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料50を10?30ミクロン仕上げになるように塗布し、室温で乾燥又は、150℃20分の強制乾燥で、有機溶剤分を揮発させた後、四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料43を薄く、霜降り状或は、薄く連続して塗布し、150℃20分の予備乾燥を経て、380?420℃の温度で、20?30分間焼付硬化を行なった」旨が記載されている(摘記1-f)。
ここで、「ショットブラストして凹凸をつける」ことは、技術常識をかんがみれば、基材表面に粒体を衝突させてその基材表面に凹凸を設け、表面積を増大させる方法であるといえる。
また、四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液状塗料として、ディスパージョン型四フッ化エタノン樹脂のフッ素樹脂の液状塗料(例えば、ダイキン工業株式会社の商標“シルクウエア”黒色系)が記載されており、上述したように、黒色系である前記液状塗料は、カーボンブラック等の無機顔料を含有していると考えるのが極めて自然である。
よって、刊行物1には、
「加熱調理器具の調理面の表面積をショットブラストして増大させる段階、
得られた粗面を清掃、清浄する段階、
ポリチタノカルボシランを結合剤にしたアルミニウム粉を混合したシルバー色の耐熱プライマ塗料を3?5ミクロン仕上げになるように塗布した後室温で乾燥する段階、
フッ素樹脂を含まない塗料を10?15ミクロン仕上げになるように塗布した後、室温で乾燥し、
フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料を10?30ミクロン仕上げになるように塗布し、150℃で20分の強制乾燥する段階、
無機顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料を薄く、霜降り状に塗布し、150℃で20分の予備乾燥を経て、380?420℃の温度で20?30分間焼付硬化を行う段階を含む、加熱調理面の基材の上の皮膜形成方法」
の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

また、上述のように、刊行物1には、皮膜を有する高温調理機器が記載されているといえ、その皮膜は、基材の調理面に、ポリチタノカルボシランを結合剤にしたアルミニウム粉を混合したシルバー色の耐熱プライマ塗料、フッ素樹脂を含まない塗料、フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料の順に塗布して積層された層、すなわちスリーコーティング層の上に、無機顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料を薄く、霜降り状に塗布することにより得られるものである。
よって、刊行物1には、
「ポリチタノカルボシランを結合剤にしたアルミニウム粉を混合したシルバー色の耐熱プライマ塗料、フッ素樹脂を含まない塗料、フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料の順に積層されたスリーコーティング層が形成された高温調理機器において、フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料の上に顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料を薄く、霜降り状に塗布されてなる高温調理機器」
の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

なお、以下、「引用発明1」?「引用発明3」を併せて、「引用発明」という。

(2)対比・判断
【本件訂正発明1について】
本件訂正発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「主成分であるポリチタノカルボキシランワニス、耐熱顔料に、フッ素樹脂粉末を添加して有機溶剤で液状にした塗料で下塗装膜層」は、本件訂正発明1の「耐熱塗料が塗布されて形成されたワンコーティング層」に相当し、本件訂正発明1の「器具」としては、本件訂正明細書を参酌すると、厨房用機器が例示されていることから(例えば、【0002】、【0003】及び【0005】)、引用発明1の「高温調理機器」は本件訂正発明1の「器具」に相当する。そして、引用発明1の「下塗装膜層」は、高温調理機器の調理表面の基材上に塗布形成したものであるから、引用発明1の「高温調理機器」は、「下塗装膜層」が形成されたもの、すなわち、「下塗装膜層が形成された高温調理機器」であるといえるので、本件訂正発明1の「耐熱塗料が塗布されて形成されたワンコーティング層が形成された器具」に相当する。
また、引用発明1の「この下塗装膜層の上に、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を塗布」することは、本件訂正発明1の「前記ワンコーティング層上に顔料を含むコーティング液を塗布」することに相当する。
さらに、引用発明1の「この下塗装膜層の上に、耐熱顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を塗布形成して焼結する皮膜を有する高温調理機器」は、本件訂正発明1の「前記ワンコーティング層上に顔料を含むコーティング液を塗布し、表面層に顔料が塗布されてなる器具」に相当する。
よって、両者は、
「耐熱塗料が塗布されて形成されたワンコーティング層が形成された器具において、
前記ワンコーティング層上に顔料を含むコーティング液を塗布し、表面層に顔料が塗布されてなる器具」
である点で一致し、以下の点(i)?(iii)で一応相違する。
(i)顔料が、本件訂正発明1においては、「インク顔料」であるのに対して、引用発明1においては、「無機顔料」である点
(ii)ワンコーティング層上に顔料を含むコーティング液を塗布する方法が、本件訂正発明1においては、「噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布」するのに対して、引用発明1においては、「霜降り状に連続して塗布」する点
(iii)表面が、本件訂正発明1においては、「ワンコーティング層(100)とインク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成された」ものであるのに対して、引用発明1においては、表面について明らかでない点

上記相違点について検討する。
ア 相違点(i)について
本件訂正発明1の「インク顔料」について、本件訂正明細書を参酌すると、インク顔料としては耐熱塗料と同一種類あるいは類似の色相を有する顔料を使用することができる旨が記載されていることから(【0040】)、インク顔料は耐熱塗料に用いられているのと同様の無機顔料であるといえる。よって、上記相違点(i)は、実質的な相違点ではない。

イ 相違点(ii)について
刊行物1には、引用発明1における「霜降り状に塗布」する方法がどのような方法であるのか記載されていないが、「液状塗料を、霜降り状或いは薄く連続して塗布」と記載されていることから(摘記1-a)、「霜降り状に塗布」することは、「薄く連続して塗布」することと相対する意味であるといえ、してみれば、不連続に塗布することであるといえる。また、「霜降り状」とは、「霜の降りたように、白い斑点が散らばっている模様」を意味することから(甲第11号証の摘記6-a)、「霜降り状に塗布」することは、斑点状に塗布することである。そして、当該技術分野において、斑点状に塗布する方法として、液状塗料を噴霧器で一回以上噴霧する方法は慣用技術であるから(例えば、甲第6号証の摘記2-a,2-b,2-c、甲第7号証の摘記3-a,3-b,3-c,甲第10号証の摘記5-a,5-b)、引用発明1における「霜降り状に塗布」する方法には、噴霧器で一回以上噴射して斑点状に塗布する方法が包含されていると解するのが自然である。よって、上記相違点(ii)は、実質的な相違点ではない。
仮に相違点であるとしても、引用発明1において、霜降り状に塗布する方法として、噴霧器で一回以上噴射して無機顔料を含有する液状塗料を斑点状に塗布する方法を適用することは、当業者が極めて容易に想到することである。

ウ 相違点(iii)について
引用発明1は、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を霜降り状に塗布しており、「霜降り状に塗布」することは、上記「イ 相違点(ii)について」で述べたように、不連続に塗布することであるといえる。そして、引用発明1の表面の状態について、刊行物1の第1図C及び第2図を参酌すると(摘記1-i及び1-j)、表面が不規則な凹凸であることは明らかである。してみると、霜降り状に塗布して得られる無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料からなる表面は、下塗装膜層と顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたものであるから、実質的な相違点とはならない。
また、上記「イ 相違点(ii)について」で述べたように、引用発明1における「霜降り状に塗布」する方法に、噴霧器で一回以上噴射して斑点状に塗布する方法が包含されていると解すれば、本件訂正発明1と引用発明1とは、同一の製造方法により得られていることから、当然に、得られたものも同一となるといえる。

エ 効果について
ここで、本件訂正発明の効果について検討する。
本件訂正発明の効果は、本件訂正明細書【0027】?【0030】を参酌すると、以下のとおりである。
(ア) スクラッチ(scratch)現象に耐える耐傷性および耐磨耗性が向上し、これにより疵が発生しなくなり、よって使用後の器具の掃除も容易になる。
(イ)層の厚さが20?40μm以上となって耐久性が向上することにより、不良率が減少し、これにより、生産性が向上する利点がある。
(ウ)飲食物が触れる表面積が、他の器具に比べて相対的に増加して熱伝逹が均一になるので、飲食物を均等に煮ておいしく調理することができる效果もある。
(エ)ワンコーティング層、またはトップコート上で直接反射する不連続コーティング層による光沢效果によって、デザインが高級で美麗な器具を提供することができる利点もある。
しかしながら、刊行物1には、「本発明の場合、10μ以下の霜降り状或は連続膜にしているので、…(略)…耐摩耗性,金属ヘラの使える皮膜となっているので、電子レンジオーブン調理が高温でも、トレイの出し入れで、皮膜がハクリしない。又、ホットプレートで調理を行い、金属ヘラを用いても、ハクリを起こさないことが判明した。」及び「本発明の皮膜構造は、それを上回わる完全なものとなり、焦げ付き付着物が完全にとれて、付着物のあとシミ,汚れが目立たなくなった。」と記載されていることから(摘記1-h)、上記(ア)の効果は予測できる範囲のものであるといえる。
また、刊行物1には、「本発明の皮膜構造にすると、調理後のプレート面にこびりついた肉汁や焦げついた調理カスも、布や紙で拭き取れる状態になって、実用性のある皮膜構造であることが実証され、又、金属ヘラを使っても、耐久性のある硬い非粘着性を示した。」と記載されていることから(摘記1-h)、上記(イ)の効果も予測できる範囲のものであるといえる。
さらに、引用発明は、表面に不規則な凹凸を有しているが、不規則な凹凸によって表面積、すなわち接触面積が増大することは明らかであり、また、不規則な凹凸によって入射した光が乱反射することも自明である。そして、接触面積が増大することにより熱伝達性が向上することは技術常識であり、光が乱反射することにより意匠性に優れることも周知である。してみると、上記(ウ)及び(エ)の効果は、格別顕著な効果であるともいえない。

オ まとめ
したがって、本件訂正発明1は、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明2について】
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の「耐熱塗料」の組成を、シリコン複合樹脂、複合有機溶剤、カーボンまたは無機顔料分散液、および複合充填材からなるものに特定したものである。一方、引用発明1は、上述したように、「ポリチタノカルボシランワニス」、「耐熱顔料」、「フッ素樹脂」及び「有機溶剤」からなるものである。ここで、引用発明1の「ポリチタノカルボシランワニス」は、刊行物1を参酌すると、「ポリチタノカルボシラン(たとえば宇部興産株式会社製のチラノコート)を結合剤とした有機溶剤ワニス」と記載されている。そして、チラノコートとは、ケイ素系ポリマーであるチラノポリマーをバインダー主成分とし、無機系着色顔料、充填材及び有機溶剤等を含む耐熱塗料のことであり(甲第12号証の摘記7-a,7-c,7-d)、チラノポリマーは、その構造から「シリコン複合樹脂」であるといえる(甲第12号証の摘記7-b)。してみると、チラノコートは「シリコン複合樹脂」、「複合充填材」、「無機顔料」及び「有機溶媒」を含むものといえる。してみると、「ポリチタノカルボシラン」として、チラノコートが例示されていることから、「ポリチタノカルボシラン」は、「シリコン複合樹脂」、「複合充填材」、「無機顔料」及び「有機溶媒」を含むものといえ、「ポリチタノカルボシランワニス」は「ポリチタノカルボシラン」を有機溶剤に溶かしたものであるから、結局、「ポリチタノカルボシランワニス」は、「シリコン複合樹脂」、「複合充填材」、「無機顔料」及び「有機溶媒」を含むものであるといえる。そして、引用発明1の「無機顔料」が分散液であることは明記されていないが、塗料として用いるために、有機溶媒等に分散させることは当然に行うことであるし、引用発明1には、本件訂正発明2の「シリコン複合樹脂」、「複合充填材」、「無機顔料」及び「有機溶媒」のすべての成分が包含されていることから、これらの成分を混合して得られる耐熱塗料としては相違ない。
そして、本件訂正発明2の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明2は、刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明3について】
本件訂正発明3は、本件訂正発明2の組成の比率を特定したものであるが、当該技術分野において、塗料に要求される性能に応じて、その組成比を変えることは、当業者が適宜行うことであるから、引用発明1において、耐熱塗料の組成比を変えることは、当業者が容易に想到することである。
そして、本件訂正発明3の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明3は、刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明4について】
本件訂正発明4は、本件訂正発明1の「インク顔料コーティング液」の組成を、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤および無機分散液に特定したものである。しかしながら、当該技術分野において、ディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を製造するにあたり、PTFEと水及び/またはトルエン等の芳香族炭化水素からなる液状媒体を含むディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料に、分散性を向上させるために界面活性剤を添加すること(特公平1-38813号公報及び特公昭45-28117号公報等参照)、コーティング時における消泡のためにオレイン酸を添加すること(甲第16号証の摘記8-a)、エマルションを水中で安定させるためにトリエチルアミンを添加すること(甲第16号証の摘記8-b)は、当業者が通常行う範囲のことである。
よって、引用発明1において、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料に界面活性剤、オレイン酸、トリエチルアミンを添加すること、液状媒体として、水と芳香族炭化水素の両方を含ませることは、当業者であれば、容易に想到することである。
そして、本件訂正発明4の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明4は、刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明5について】
本件訂正発明5は、本件訂正発明4の組成の比率を特定したものであるが、当該技術分野において、塗料に要求される性能に応じて、その組成比を変えることは、当業者が適宜行うことであるから、引用発明1において、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料の組成比を変えることは、当業者が容易に想到することである。
そして、本件訂正発明5の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明5は、刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明6について】
本件訂正発明6は、本願訂正発明1のインク顔料を相異なる色相のインク顔料とするものであるが、多彩な模様の塗膜を形成するために、色調の異なる複数の顔料を用いることは、当該技術分野において、通常行われていることであるから(甲第7号証の摘記3-b,甲第9号証の摘記4-a,4-b)、引用発明1において、相異なる色相の顔料を用いることは、当業者であれば、容易に行うことである。
そして、本件訂正発明6の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明6は、刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明7について】
本件訂正発明7と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「基材の調理面」は、本件訂正発明7の「コーティング対象器具の表面」に相当し、引用発明2の「ショットブラストして凹凸をつける」方法は、基材表面に粒体を衝突させてその基材表面に凹凸を設け、表面積を増大させる方法である。また、引用発明2の「ポリチタノカルボシランを結合剤にしたアルミニウム粉を混合したシルバー色の耐熱プライマ塗料」は、本件訂正発明7の「プライマー塗布液」に相当し、引用発明2において、プライマ塗料を塗布することによってプライマーコートを形成することは自明である。さらに、引用発明2の「フッ素樹脂を含まない塗料」は、プライマーコートの上に塗布するものであるから、本件訂正発明7の「ミッド塗布液」に相当し、引用発明2において、フッ素樹脂を含まない塗料を塗布することによりミッドコートを形成することも自明である。そして、引用発明2の「フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料」は、ミッドコートの上に塗布するものであるから、本件訂正発明7の「トップ塗布液」に相当し、トップ塗布液を塗布することによりトップコートを形成することも自明である。また、引用発明2の「顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料」は、本件訂正発明7の「顔料を含むコーティング液」に相当し、引用発明2において、顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料を塗布し、焼き付け硬化、すなわち、熱処理することによりコーティング層を形成することも自明である。そして、引用発明2の「加熱調理面の基材の上の皮膜形成方法」は、本件訂正発明7の「器具のコーティング層形成方法」に相当する。
してみると、両者は、
「コーティング対象器具の表面の表面積を増大させる段階、
前記器具の表面を洗浄する段階、
プライマー塗布液を前記器具の表面に塗布してプライマーコートを形成した後、乾燥する段階、
ミッド塗布液を前記プライマーコート上に塗布して、ミッドコートを形成した後、前記ミッドコート上にトップ塗布液を塗布してトップコートを形成し、乾燥する段階及び、
乾燥した前記トップコート上に顔料を含むコーティング液を塗布してコーティング層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。」
である点で一致し、以下の点(i)?(x)で相違する。
(i)表面積を増大させる方法が、本件訂正発明7においては「サンドブラスティング」であるのに対して、引用発明2においては「ショットブラスト」である点
(ii)プライマー塗布液の厚さが、本件訂正発明7においては「10?12μm」であるのに対して、引用発明2においては「3?5ミクロン」である点
(iii)プライマーコートの乾燥条件が、本件訂正発明7においては「200℃15分間」であるのに対して、引用発明2においては「室温」である点
(iv)ミッド塗布液の厚さが、本件訂正発明7においては「10?12μm」であるのに対して、引用発明2においては「10?15ミクロン」である点
(v)ミッドコートが、本件訂正発明7においては「湿った状態」であるのに対して、引用発明2においては「室温で乾燥させられた状態」である点
(vi)トップ塗布液の厚さが、本件訂正発明7においては「8?12μm」であるのに対して、引用発明2においては「10?30ミクロン」である点
(vii)トップコートの乾燥条件が、本件訂正発明7においては「300?350℃で15分間」であるのに対して、引用発明2においては「150℃で20分」である点
(viii)顔料が、本件訂正発明7においては「インク顔料」であるのに対して、引用発明2においては、「無機顔料」である点
(ix)コーティング層が、本件訂正発明7においては「不規則な凹凸状の不連続コーティング層」であるのに対して、引用発明2においては明らかでない点
(x)コーティング層の熱処理条件が、本件訂正発明7においては「405?415℃で20分間」であるのに対して、引用発明2においては「150℃で20分の予備乾燥を経て、380?420℃の温度で20?30分間」

ここで、相違点(vii)について検討すると、刊行物1の5頁10欄35行?6頁11欄1行には、「最上層部のフッ素樹脂層の密着性は、下塗にフッ素樹脂粉末を添加したセラミック塗料を用いていることと、下塗を塗ったあと、焼成しないで溶剤を揮発する室温設置セッティング…(略)…或は、150℃前後の強制乾燥を10?20分行い…(略)…最上層にディスパージョン型フッ素樹脂塗料のトルエン等の有機溶剤を含む塗料で、前記、霜降り或は連続膜を形成させ、予備乾燥後フッ素樹脂塗料のフッ素樹脂分が熱溶融重合する380?420℃20分の焼成を行い仕上げ完了とする。このとき、下塗のフッ素樹脂粉末を含むセラミック塗料を塗布したのち、最終焼成の300℃以上の焼付けを行ってしまうと、最上層部フッ素樹脂塗料層との最終焼結完了時の密着性で層間ハクリを起こし、最上層部のフッ素樹脂がフイルム状にハクリする。」と記載されていることから、引用発明において、トップコートの乾燥条件を、あえて層間ハクリを起こすとされる「300?350℃で15分間」とすることは困難である。

したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明7が、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。

【本件訂正発明8について】
本件訂正発明8と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「ポリチタノカルボシランを結合剤にしたアルミニウム粉を混合したシルバー色の耐熱プライマ塗料」からなる層は、本件訂正発明8の「プライマーコート」に相当し、引用発明3の「フッ素樹脂を含まない塗料」からなる層は、プライマーコートの上に積層するものであるから、本件訂正発明8の「ミッドコート」に相当し、引用発明3の「フッ素樹脂を8?15重量%含む塗料」は、ミッドコートの上に積層するものであるから、本件訂正発明8の「トップコート」に相当する。そして、引用発明3の「顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料」は、本件訂正発明8の「顔料を含むコーティング液」に相当し、引用発明3はスリーコーティング層の上に「顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料」を塗布していることから、トップコート上に「顔料を含有する四フッ化エチレン樹脂のディスパージョン型液体塗料」を塗布していることは明らかであり、表面層に顔料が塗布されているといえる。さらに、上記「【本件訂正発明1について】」で述べたように、引用発明3の「高温調理機器」は、本件訂正発明8の「器具」に相当するといえる。
してみると、両者は、
「プライマーコート、ミッドコート及びトップコートの順に表面に積層されてスリーコーティング層が形成された器具において、
前記トップコート上に顔料を含むコーティング液を塗布して、表面層に顔料が塗布されてなる器具。」
である点で一致し、以下の点(i’)?(iii’)で一応相違する。
(i’)顔料が、本件訂正発明8においては、「インク顔料」であるのに対して、引用発明3においては、「無機顔料」である点
(ii’)トップコート上に顔料を含むコーティング液を塗布する方法が、本件訂正発明8においては、「一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布」するのに対して、引用発明3においては、「霜降り状に塗布」する点
(iii’)表面が、本件訂正発明8においては、「トップコートとインク顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成された」ものであるのに対して、引用発明3においては、表面について明らかでない点

上記相違点について検討する。
ア 相違点(i’)について
本件訂正発明8の「インク顔料」について、本件訂正明細書を参酌すると、インク顔料としては耐熱塗料と同一種類あるいは類似の色相を有する顔料を使用することができる旨が記載されていることから(【0040】)、インク顔料は耐熱塗料に用いられているのと同様の無機顔料であるといえる。よって、上記相違点(i)は、実質的な相違点ではない。

イ 相違点(ii’)について
刊行物1には、引用発明3における「霜降り状に塗布」する方法がどのような方法であるのか記載されていないが、刊行物1には、「液状塗料を、霜降り状或いは薄く連続して塗布」と記載されていることから(摘記1-a)、「霜降り状に塗布」することは、「薄く連続して塗布」することと相対する意味であるといえ、してみれば、不連続に塗布することであるといえる。また、「霜降り状」とは、「霜の降りたように、白い斑点が散らばっている模様」を意味することから(甲第11号証の摘記6-a)、「霜降り状に塗布」することは、斑点状に塗布することである。そして、当該技術分野において、斑点状に塗布する方法として、液状塗料を噴霧器で一回以上噴霧する方法は慣用であるから(例えば、甲第6号証の摘記2-a,2-b,2-c、甲第7号証の摘記3-a,3-b,3-c、甲第10号証の摘記5-a,5-b)、引用発明3における「霜降り状に塗布」する方法には、噴霧器で一回以上噴射して斑点状に塗布する方法が包含されていると解するのが自然である。よって、上記相違点(ii)は、実質的な相違点ではない。
仮に相違点であるとしても、引用発明3において、霜降り状に塗布する方法として、噴霧器で一回以上噴射して無機顔料を含有する液状塗料を斑点状に塗布する方法を適用することは、当業者が極めて容易に想到することである。

ウ 相違点(iii’)について
引用発明3は、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を霜降り状に塗布しており、「霜降り状に塗布」することは、上記「イ 相違点(ii’)について」で述べたように、不連続に塗布することであるといえる。そして、引用発明3の表面の状態について、刊行物1の第8図を参酌すると(摘記1-k)、表面が不規則な凹凸であることは明らかである。してみると、霜降り状に塗布して得られる無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料からなる表面は、下塗装膜層と顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたものであるから、実質的な相違点とはならない。
また、上記「イ 相違点(ii’)について」で述べたように、引用発明3における「霜降り状に塗布」する方法に、噴霧器で一回以上噴射して斑点状に塗布する方法が包含されていると解すれば、本件訂正発明8と引用発明3とは、同一の製造方法により得られていることから、当然に、得られたものも同一となるといえる。
そして、本件訂正発明8の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明8は、刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明9について】
本件訂正発明9は、本件訂正発明8の「インク顔料コーティング液」の組成を、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤および無機分散液に特定したものである。しかしながら、当該技術分野において、ディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料を製造するにあたり、PTFEと水及び/またはトルエン等の芳香族炭化水素からなる液状媒体を含むディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料に、分散性を向上させるために界面活性剤を添加すること(特公平1-38813号公報及び特公昭45-28117号公報等参照)、コーティング時における消泡のためにオレイン酸を添加すること(甲第16号証の摘記8-a)、エマルションを水中で安定させるためにトリエチルアミンを添加すること(甲第16号証の摘記8-b)は、当業者が通常行う範囲のことである。
よって、引用発明3において、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料に界面活性剤、オレイン酸、トリエチルアミンを添加すること、液状媒体として、水と芳香族炭化水素の両方を含ませることは、当業者であれば、容易に想到することである。
そして、本件訂正発明9の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明9は、刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本件訂正発明10について】
本件訂正発明10は、本件訂正発明8の組成の比率を特定したものであるが、当該技術分野において、塗料に要求される性能に応じて、その組成比を変えることは、当業者が適宜行うことであるから、引用発明3において、無機顔料を含有するディスパージョン系のフッ素樹脂の液状塗料の組成比を変えることは、当業者が容易に想到することである。
そして、本件訂正発明10の効果については、上記【本件訂正発明1について】で説示したとおりである。

したがって、本件訂正発明10は、刊行物1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【被請求人の主張について】
被請求人(金玲)は、平成21年2月24日付け上申書において、「甲第1号証のコーティング層は不規則な凹凸形状であるとは認められますが、不連続な層ではありません。本件特許のコーティング層は図1等に示されておりますように、明らかに複数の顔料粒子同士が連続しておらず不連続であります。甲第1号証におきましては、このような顔料粒子同士の不連続性については一切記載されておりません。」(3頁14行?18行)と主張している。
しかしながら、上記【本件訂正発明1について】及び【本件訂正発明8について】の「イ」及び「ウ」において述べたように、刊行物1には、「液状塗料を、霜降り状或いは薄く連続して塗布」と記載されていることから(摘記1-a)、「霜降り状に塗布」することは、「薄く連続して塗布」することと相対する意味であるといえ、してみれば、不連続に塗布することであるといえる。また、「霜降り状」とは、「霜の降りたように、白い斑点が散らばっている模様」を意味することから(甲第11号証の摘記6-a)、「霜降り状に塗布」することは、斑点状に塗布することであり、インク顔料を斑点状に塗布した結果として得られる、インク顔料のコーティング層は、当然に不連続であるといえる。
また、同日付け上申書において、被請求人は、「甲第1号証の発明では、上層と下層との相乗効果によって、各層が強固に相互結合することによって耐傷性が向上するというものであります。一方、本件特許では、不連続の顔料粒子が、調理器具のコーティング層への直接的な接触を防止することによって、耐傷性を向上させているのであって、それぞれの効果の発揮の仕方が明らかに相違します。」とも主張している。
しかしながら、上記【効果について】で述べたように、刊行物1には、「本発明の場合、…(略)…耐摩耗性,金属ヘラの使える皮膜となっている」というように、引用発明においても、耐摩耗性及び耐傷性があるといえる。そして、本件訂正発明も引用発明もメカニズムはともかく、ともに傷がつきにくいという効果を奏する点で異なるものではなく、かつ、本件訂正発明において耐傷性の程度が格別であると認めるに足るものもない。そうすると、本件訂正発明の上記効果は、予測できない格別顕著な効果であるとはいえない。
したがって、被請求人の主張は、当審の上記判断を左右するものではない。

(3)小括
よって、本件訂正発明1,8は、本件特許の出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件訂正発明1?6,8?10は、本件特許の出願前に頒布された刊行物1に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件訂正発明1,8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に、本件訂正発明1?6,8?10に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 無効理由3について
請求人は、本件訂正後の請求項1,8に係る各発明は、固体である「インク顔料」なる用語と、本件訂正により「インク顔料」から訂正された液体である「インク顔料を含むコーティング液」なる用語とが同義語として混在するため、「インク顔料」なる用語が液体であるのか固体であるのか不明確であり、これらの請求項に従属する本件訂正後の請求項2?6,9?10に係る各発明も不明確である旨主張している。
しかし、本件訂正は、上記「第3 1(1)」及び「第3 1(4)」で述べたように、本件特許明細書等を検討すると、【0019】には、「前記コーティング層に塗布される前記インク顔料のコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成を含む」と記載されており、その前の【0018】には、「前記ワンコーティング層または前記スリーコーティング層の表面に塗布されるインク顔料は…」と記載されていることから、「コーティング層」とは、「ワンコーティング層またはスリーコーティング層」を意味していると解され、ワンコーティング層またはスリーコーティング層に噴射するのは、インク顔料のコーティング液であるといえ、そのために、コーティング層に噴射する「インク顔料」なる記載を「インク顔料を含むコーティング液」と訂正したものである。してみると、本件訂正発明1及び8における「インク顔料」なる記載は固体を意味し、「インク顔料を含むコーティング液」なる記載は液体を意味することから、不明確であるとはいえない。

したがって、本件訂正後の請求項1?10に係る各発明は、特許法第36条第6項第2号に適合しない。よって、訂正後の本件特許は、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1,8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に、本件訂正発明1?6,8?10に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件訂正発明7は、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとも、同法第36条第6項第2号に違反してなされたものともいえないから、同法第123条第1項第2号及び第4号に該当せず、無効とすべきものではない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その10分の1を請求人の負担とし、10分の9を被請求人の負担とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ワンコーティングまたはスリーコーティング層にインク顔料を塗布してコーティング層を形成した器具およびその形成方法
【技術分野】
【0001】
本発明はワンコーティング層またはスリーコーティング層の表面にインク顔料を噴射して斑点状のコーティング層を形成した器具、および前記器具に塗布されるコーティング層の形成方法に係り、より詳しくは、セラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料のいずれ一つを器具の表面に塗布して形成されるワンコーティング層上に、インク顔料を斑点状に塗布して不規則な凹凸状の不連続コーティング層を形成した器具、および器具上に不連続コーティング層を形成するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面をコートする必要がある一般的な器具の殆どはアルミニウムのような金属材からなる。以前は金属材のみからなった器具を使用していたが、このような金属材のみの器具は、厨房用器具の場合、飲食物のようなものを調理するとき、またはその以外の場合に、前記器具の表面が掻かれるなどの問題が発生する。これを防止するため、コーティング液を表面に塗布してコーティング層を前記表面に形成した器具が開発されて以来、多様な種類のコーティング液を塗布してなった多様な形態のコーティング層が表面に形成された器具が登場することになった。
【0003】
そのなかでも、器具の表面にプライマーコート(primer coat)、ミッドコート(mid coat)およびトップコート(top coat)が順に積層されてコーティング層を形成している、いわゆるスリーコーティング(three coating)が普遍的に器具に適用されている。図3に示すように、最近では、一歩進んで、器具10に形成されたプライマーコート20またはミッドコート30が部分的に乾燥しているかまたは湿った状態で、相違したスパッターインクを塗布して、連続的な小さな球形体からなる不連続コート60を形成し、その上にトップコート40を塗布することにより、前記不連続コートがスリーコーティング層50を多色で多様に表現するとともに、その自体が少し突出して、器具の表面が掻かれることも防止するコーティング層が開発された。このような器具は厨房器具に代表的に適用されている。
【0004】
しかし、このような形態のコーティングにおいて、スリーコーティング層に不連続コートを適用する主目的は、反射性顔料によっては容易には得られない色表現が可能な器具を提供することにあるので、前記のように、不連続コートがプライマーコートとミッドコートとの間に、またはミッドコードとトップコーとの間に塗布される形態においては、前記トップコートが不連続コートを完全に覆ってしまうから、表面のコーティング層がほぼ平坦な面をなすため、耐傷性をはっきりと発揮することができない問題があった。
【0005】
また、前記のような方式でスリーコーティング層に不連続コートを形成すると、図3に示すように、例えば厨房器具の場合、あまり広くない表面積(飲食物が触れる部位)を形成することになるので、飲食物を調理する時、熱伝逹が均一でなくなり、飲食物が正常に調理されない問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のようなコーティング層が形成された器具の問題点を改善するためになされたもので、器具表面の耐傷性および耐磨耗性をより確実に発揮し、熱伝逹が均一になるようにし、乱反射による光沢效果をより確実に発揮するように、セラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料のいずれか一つを塗布し、すなわち器具の表面に形成されるワンコーティング層上にインク顔料を斑点状に塗布して不連続コーティング層を形成するか、あるいはスリーコーティング層のトップコート上に、またはトップコートがない場合は、ミッドコート上にインク顔料を斑点状に塗布して不規則的な凹凸状の不連続コーティング層を前記トップコートまたはミッドコートとともに表面のコーティング層として形成した器具、および特定の組成および組成比率を有するプライマーコート、ミッドコートおよびトップコートでスリーコーティング層を構成し、特定の組成と組成比率を有するインク顔料をワンコーティング層上に、あるいはトップコート、またはトップコートがない場合はミッドコート上に塗布してコーティング層を形成する方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の技術内容は以下の構成を備えることにより前記課題を解決できた。
(1)耐熱塗料が塗付されて形成されたワンコーティング層が形成された器具において、前記ワンコーティング層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記ワンコーティング層と前記インク顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(2)前記耐熱塗料は、シリコン複合樹脂、複合有機溶剤、カーボンまたは無機顔料分散液、および複合充填材の組成でなることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(3)前記耐熱塗料を構成している各組成の比率は、シリコン複合樹脂35重量%、複合有機溶剤40重量%、カーボンまたは無機顔料分散液5重量%、および複合充填材20重量%であることを特徴とする前記(2)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(4)前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成でなることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(5)前記インク顔料を含むコーティング液を構成している各組成の比率は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%であることを特徴とする前記(4)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(6)前記ワンコーティング層(100)上に一回以上塗布される前記インク顔料は相異なる色相のインク顔料であることを特徴とする前記(1)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(7)コーティング対象器具の表面の表面積をサンドブラスティングで増大させる段階、前記器具の表面を洗浄する段階、プライマー塗布液を10?12μm厚さに前記器具の表面に塗布してプライマーコートを形成した後、200℃で15分間乾燥する段階、ミッド塗布液を10?12μm厚さに前記プライマーコート上に塗布して、湿った状態のミッドコートを形成した後、前記ミッドコート上にトップ塗布液を8?12μm厚さに塗布してトップコートを形成し、300?350℃で15分間乾燥する段階及び、乾燥した前記トップコート上にインク顔料を含むコーティング液を噴射して不規則な凹凸状の不連続コーティング層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。
(8)プライマーコート、ミッドコート及びトップコートの順に表面に積層されてスリーコーティング層が形成された器具において、前記トップコート上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記トップコートと前記インク顔料の不連続コーティング層が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(9)前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機分散液の組成でなることを特徴とする前記(8)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
(10)前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%及び無機分散液8.8重量%の組成でなることを特徴とする前記(9)に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【発明の効果】
【0027】
以上のような目的および構成を有する本発明によるワンコーティング層またはスリーコーティング層にインク顔料を塗布した器具、および器具のコーティング層形成方法によれば、スリーコーティング層のトップコート上に噴射されて斑点状に塗布されたインク顔料の不連続コーティング層が上向きに充分に突出しているので、例えば調理器具に適用する場合、スクラッチ(scratch)現象に耐える耐傷性および耐磨耗性が向上し、これにより疵が発生しなくなり、よって使用後の器具の掃除も容易になる。
【0028】
また、前記のようなインク顔料の不連続コーティング層によって、ワンコーティング層またはスリーコーティング層を含んだ全体コーティング層の厚さが20?40μm以上となって耐久性が向上することにより、不良率が減少し、これにより、生産性が向上する利点がある。
【0029】
特に、調理器具の場合、飲食物が触れる表面積が、他の器具に比べて相対的に増加して熱伝逹が均一になるので、飲食物を均等に煮ておいしく調理することができる效果もある。
【0030】
さらに、セラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層のワンコーティング層、またはトップコート上で直接反射する不連続コーティング層による光沢效果によって、デザインが高級で美麗な器具を提供することができる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0032】
図1および図2は本発明による器具を示す斜視図および表面コーティング層の拡大断面図である。
【0033】
図1に示すように、セラミック塗料を器具1の表面に塗布してセラミックコーティング層のワンコーティング層100を形成し、前記セラミックコーティング層のワンコーティング層100上に、セラミック塗料などの、前記ワンコーティング層と同種または異種のインク顔料を含むコーティング液を噴射器で斑点状に塗布して、前記インク顔料によって不規則な模様の凹凸状の不連続コーティング層6をセラミックコーティング層のワンコーティング層とともに形成する。
【0034】
一方、図2に示すように、器具1の表面にプライマーコート201、ミットコート202およびトップコート203が順に塗布され積層されてスリーコーティング200層が形成され、前記スリーコーティング層の最上部であるトップコート203上に噴射器でインク顔料を斑点状に塗布して、前記インク顔料でトップコートと共に不規則な模様の凹凸状の不連続コーティング層を形成する。
【0035】
前記セラミックコーティング層のワンコーティング層100上に、またはスリーコーティング層200のトップコート203上に斑点状に形成されたインク顔料の不連続コーティング層が上向きに突出している。図面の拡大断面図は、セラミックコーティング層のワンコーティング層、またはスリーコーティング層を含んだインク顔料の不連続コーティング層を拡大して示したものであるが、実際には前記セラミックコーティング層のコート厚さと突出するインク顔料の不連続コーティング層厚さの和は10μm前後となる。
【0036】
ここで、前記不連続コーティング層は、プライマーコとミッドコートからなったコーティング層の前記ミッドコート上に形成されるか、あるいはプライマーコートとトップコートからなったコーティング層の前記トップコート上に形成することもできる。
【0037】
一方、前記器具の面にセラミック塗料を塗布して形成されるセラミックコーティング層のワンコーティング層は必ずしも前記セラミックコーティング層に限定されるものではなく、例えば耐熱塗料を塗布して形成される耐熱コーティング層のワンコーティング層、またはフッ素樹脂塗料を塗布して形成されるフッ素樹脂コーティング層のワンコーティング層にして、前記耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層のワンコーティング層上に噴射器により噴射されて斑点状に定着したインク顔料の不連続コーティング層が上向きに突出するようにすることもできる。
【0038】
このように、インク顔料をセラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層のいずれか一つであるワンコーティング層上に塗布して不連続コーティング層を形成するか、またはスリーコーティング層のトップコート上に塗布して不連続コーティング層を形成すると、全体厚さが20?30μm以上に厚くなるので、ワンコーティング層、またはスリーコーティング層とインク顔料がコーティング層を形成することにより、耐久性が向上し、不良率が減少し、よって生産性が向上することになる。
【0039】
前記セラミックコーティング層のワンコーティング層を形成するために塗布されるセラミック塗料は、アルコール30重量%、SiO_(2)10重量%、酸10重量%、シラン20重量%、およびカーボンまたは無機顔料分散液30重量%の組成および組成比率を有し、耐熱コーティング層のワンコーティング層を形成するために塗布される耐熱塗料は、シリコン複合数35重量%、複合有機溶剤40重量%、カーボンまたは無機顔料分散液5重量%、および複合充填材充填材20重量%の組成および組成比率を有し、フッ素樹脂コーティング層のワンコーティング層を形成するために塗布されるフッ素樹脂塗料は、ポリアミドnmp混合物16.8重量%、水4.1重量%、PTFE分散液67.2重量%、カーボンまたは無機顔料分散液3.5重量%、およびシリカ8.4重量%の組成および組成比率を有する。
【0040】
また、前記セラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層の一つであるワンコーティング層上に分散されて斑点状に塗布されるインク顔料としては、前記ワンコーティング層を形成するために塗布されるセラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料と同一種類ないし類似の色相を有する顔料を使用するが、必ずしもこれに限定されるものではなく、セラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料と違う種類または色相の顔料を使うこともでき、必要によって、多数回インク顔料を塗布する場合、塗布されるインク顔料ごとに違う色相を持たせることにより、斑点状の模様が単色でない多様な色相を有するようにすることもできる。
【0041】
前記スリーコーティング層において、プライマーコートのコーティング液は、ポリアミドのnmp溶解混合物16.8重量%、水4.1重量%、PTFE分散液67.2重量%、カーボンブラック分散液3.5重量%、およびシリカ分散液8.4重量%の組成および組成比率を有し、ミッドコートのコーティング液は、PTFE分散液81.5重量%、水9.22重量%、芳香族炭化水素3.14重量%、トリエチルアミン0.46重量%、オレイン酸0.46重量%、界面活性剤0.33重量%、カーボンブラック分散液3.35重量%、および雲母1.54重量%の組成および組成比率を有し、トップコートのコーティング液は、PTFE分散液89.25重量%、水6.53重量%、芳香族炭化水素1.09重量%、トリエチルアミン0.32重量%、オレイン酸0.32重量%、界面活性剤0.25重量%、および雲母2.24重量%の組成および組成比率を有する。
【0042】
また、前記スリーコーティング層のトップコート上に分散されて斑点状に塗布されるインク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%の組成および組成比率を有する。
【0043】
前記のような組成および組成比率を有するセラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料のいずれ一つで塗布されて形成されるセラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層の一つであるワンコーティング層上に、同種または異種のインク顔料で器具の表面にコーティング層を形成する方法を説明すれば次のようである。
【0044】
まず、第1段階で、コーティング対象器具の表面に、微細なエンボスを無数に形成するサンドブラスティング(sand blasting)処理を行うことでその表面積を増大させ、第2段階で、前記サンドブラスティング処理された器具の表面をきれいに洗浄し、第3段階で、サンドブラスティング処理されて洗浄された器具の表面にワンコーティング層、またはスリーコーティング層を形成する。すなわち、セラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料の内から選択した一つの塗料を15?25μm厚さに塗布してセラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層の一つであるワンコーティング層を形成した後、100?150℃で10?15分間熱処理するか、あるいはプライマーコーティング液を10?12μm厚さに塗布してプライマーコートを形成した後、200℃で15分間乾燥し、第4段階で、器具の表面に塗布されたプライマーコート上にミッドコーティング液を10?12μm厚さに塗布してミッドコートを形成し、第5段階で、前記ミッドコートが全く乾燥する前にトップコーティング液を8?12μm厚さに塗布してトップコートを形成した後、300?350℃で15分間乾燥することにより、スリーコーティング層を完成することになる。その次の段階で、ワンコーティング層またはスリーコーティング層の乾燥したトップコート上にインク顔料を含むコーティング液を噴射して斑点状の不規則模様の凹凸状不連続コーティング層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理することになる。
【0045】
前記コーティング層の形成方法による器具においては、スリーコーティング層のトップコート上にインク顔料の不連続コーティング層を形成しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、場合によっては、プライマーコートおよびミッドコートのコーティング層を形成した後、トップコートなしに、前記ミッドコート上に直接、前記のような方法でインク顔料の不連続コーティング層を形成するか、あるいはミッドコートなしに、プライマーコートおよびトップコートのみでコーティング層を形成した後、前記トップコート上に前記のような方法でインク顔料の不連続コーティング層を形成することもできる。
【0046】
また、前記コーティング層の形成方法においては、ミッドコートまたはトップコートが乾燥した状態で不連続コーティング層を形成しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、場合によっては、前記ミッドコートまたは前記トップコートが湿った状態で不連続コーティング層を形成することもできる。このような方法を適用すると、不連続コーティング層の大きさ、すなわち斑点状の突起大きさが、乾燥した状態で塗布したものより小さくなるので、前記不連続コーティング層の大きさ調節のために適用することができる。
【0047】
ここで、ワンコーティング層の場合、サンドブラスティング処理する段階と、セラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料の一つを塗布し、100?150℃で10?15分間熱処理する段階は、場合によって省略することができる。ただし、サンドブラスティング処理を行う場合には、器具の表面に塗布されるセラミック塗料または耐熱塗料またはフッ素樹脂塗料の接着力が増大することになる。
【0048】
また、前記コーティング層の形成方法においては、セラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層のワンコーティング層が乾燥した状態で不連続コーティング層を形成することにより、器具の表面をもっと突出させるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、場合によっては、前記セラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層のワンコーティング層が湿った状態で不連続コーティング層を形成することもできる。このような方法を適用すると、不連続コーティング層の大きさ、すなわち斑点状の突起の大きさが、乾燥した状態で塗布してなるものより低くなるので、前記不連続コーティング層の大きさを調節するために適用され、このように湿った状態、つまり湿った状態で斑点状に塗布した場合には、結果として斑点状突起の突出程度が低くなる。
【0049】
ところで、前記のような方法により表面がコートされた器具は、図面に示すように、代表的には、飲食物が主に表面に接触する厨房器具に適用することができ、その外にも表面をコーティングする必要があるすべての器具に適用することができる。
【0050】
また、前記のような方法でコーティング層を形成すると、厨房器具の場合、図1および図2に示すように、飲食物の触れる表面積が他の場合に比べて一層増加して、飲食物への熱伝逹が均一で活発になされるので、飲食物が均等に調理できる。一方、トップコートが不連続コーティング層を覆っている従来の場合には、前記トップコートで遮られた状態で不連続コーティング層の反射がなされて光沢效果の発揮が不十分であるが、本発明においては、セラミックコーティング層または耐熱コーティング層またはフッ素樹脂コーティング層の一つであるワンコーティング層、またはトップコート上で不連続コーティング層の反射がなされるので、光沢效果をより確実に発揮することができるものである。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による、ワンコーティング層にインク顔料の不連続コーティング層を形成した器具を示す斜視図及び表面コーティング層を示す拡大断面図
【図2】本発明による、スリーコーティング層にインク顔料の不連続コーティング層を形成した器具を示す斜視図及び表面コーティング層を示す拡大断面図
【図3】従来の調理器具を示す斜視図及び表面コーティング層を示す拡大断面図
【符号の説明】
【0053】
1、10 器具
100 ワンコーティング層
50、200 スリーコーティング層
20、201 プライマーコート
30、202 ミッドコート
40、203 トップコート
6、60 不連続コーティング層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱塗料が塗付されて形成されたワンコーティング層(100)が形成された器具において、
前記ワンコーティング(100)層上にインク顔料を含むコーティング液を噴霧器で一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記ワンコーティング層(100)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項2】
前記耐熱塗料は、シリコン複合樹脂、複合有機溶剤、カーボンまたは無機顔料分散液、および複合充填材の組成でなることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項3】
前記耐熱塗料を構成している各組成の比率は、シリコン複合樹脂35重量%、複合有機溶剤40重量%、カーボンまたは無機顔料分散液5重量%、および複合充填材20重量%であることを特徴とする請求項2に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項4】
前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤、および無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項5】
前記インク顔料を含むコーティング液を構成している各組成の比率は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%、および無機分散液8.8重量%であることを特徴とする請求項4に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項6】
前記ワンコーティング層(100)上に一回以上塗布される前記インク顔料は相異なる色相のインク顔料であることを特徴とする請求項1に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項7】
コーティング対象器具の表面の表面積をサンドブラスティングで増大させる段階、
前記器具の表面を洗浄する段階、
プライマー塗布液を10?12μm厚さに前記器具の表面に塗布してプライマーコート(201)を形成した後、200℃で15分間乾燥する段階、
ミッド塗布液を10?12μm厚さに前記プライマーコート(201)上に塗布して、湿った状態のミッドコート(202)を形成した後、前記ミッドコート(202)上にトップ塗布液を8?12μm厚さに塗布してトップコート(203)を形成し、300?350℃で15分間乾燥する段階及び、
乾燥した前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を噴射して不規則な凹凸状の不連続コーティング(6)層を形成した後、405?415℃で20分間熱処理する段階を含んでなることを特徴とする器具のコーティング層形成方法。
【請求項8】
プライマーコート(201)、ミッドコート(202)及びトップコート(203)の順に表面に積層されてスリーコーティング層(200)が形成された器具において、
前記トップコート(203)上にインク顔料を含むコーティング液を一回以上噴射して前記インク顔料を斑点状に塗布し、前記トップコート(203)と前記インク顔料の不連続コーティング層(6)が表面に不規則な凹凸状に形成されたことを特徴とする表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項9】
前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤及び無機分散液の組成でなることを特徴とする請求項8に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
【請求項10】
前記インク顔料を含むコーティング液は、PTFE分散液86.8重量%、水3.38重量%、芳香族炭化水素0.56重量%、トリエチルアミン0.17重量%、オレイン酸0.17重量%、界面活性剤0.12重量%及び無機分散液8.8重量%の組成でなることを特徴とする請求項9に記載の表面層にインク顔料が塗布されてなる器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-04-01 
結審通知日 2009-04-10 
審決日 2009-04-21 
出願番号 特願2005-200032(P2005-200032)
審決分類 P 1 113・ 537- ZD (B05D)
P 1 113・ 832- ZD (B05D)
P 1 113・ 113- ZD (B05D)
P 1 113・ 121- ZD (B05D)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 鈴木 正紀  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 坂崎 恵美子
橋本 栄和
登録日 2008-03-14 
登録番号 特許第4094016号(P4094016)
発明の名称 ワンコーティングまたはスリーコーティング層にインク顔料を塗布してコーティング層を形成した器具およびその形成方法  
代理人 西尾 美良  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 赤岡 和夫  
代理人 西尾 美良  
代理人 赤岡 迪夫  

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