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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1224283 |
審判番号 | 不服2007-29280 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-29 |
確定日 | 2010-09-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第525183号「半導体素子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月 5日国際公開、WO95/26571、平成 9年12月16日国内公表、特表平 9-512665〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、1995年(平成7年)3月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年3月25日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年10月26日付け及び平成18年7月4日付けで手続補正がなされたが,平成19年7月23日付けで平成18年7月4日付け手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付け及び同年10月30日付けで手続補正がなされた後、平成20年8月21日付けで特許法第162条の規定に基づく拒絶理由通知がなされ、平成21年2月25日付けで手続補正がなされたものである(以下、平成21年2月25日付けでなされた手続補正を「本件補正」という。)。 第2 本件補正についての却下の決定 1 結論 本件補正を却下する。 2 理由 (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を、補正前(平成19年10月30日付け手続補正後のもの。)の 「【請求項1】 下記条件: 1.0Torrより大きく50Torrより小さい範囲にある圧力; 水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で高度に希釈された珪素含有供給ガス;及び 約10:1?約10,000:1の該希釈剤気体:該供給ガスの希釈比 でアモルファスシリコンのプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行うことにより基板上に担持されたアモルファスシリコン層を具備する半導体素子を製作する工程を含む半導体素子の製造方法。 【請求項2】 前記PECVDは、20℃?150℃の基板温度で行われる、請求項1に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項3】 前記PECVDは、80℃?150℃の基板温度で行われる、請求項1又は2に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項4】 前記PECVDは、無線周波数(RF)グロー放電を含み、前記圧力が約6Torr?12Torrの範囲であり、基板温度が120℃?150℃の範囲であり、放電密度が40mW/cm^(2)?80mW/cm^(2)の範囲であり、前記希釈比が40:1?200:1の範囲である、請求項1?3の何れか1項に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項5】 前記半導体素子は、前記アモルファスシリコン層を含むi-層と、0.645よりも大きな曲線因子(FF)と、0.9Vよりも大きな開放電圧(V_(OC))とを有する単接合太陽電池を具備し、前記希釈剤気体は水素を含み、前記供給ガスはシランを含み、前記基板はガラス及び金属からなる群より選択される、請求項1?4の何れか1項に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項6】 前記基板はガラスを含み、前記単接合太陽電池は0.7よりも大きな曲線因子(FF)と1.0Vよりも大きな開放電圧(V_(OC))を有する、請求項1?5の何れか1項に記載の半導体素子の製造方法。」 から、 「【請求項1】 下記条件: 1.0Torrより大きく50Torrより小さい範囲にある圧力; 水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で高度に希釈された珪素含有供給ガス; 約10:1?約10,000:1の該希釈剤気体:該供給ガスの希釈比及び 20℃?150℃の基板温度 でアモルファスシリコンのプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行うことにより基板上に担持されたアモルファスシリコン層を具備する半導体素子を製作する工程を含む半導体素子の製造方法。 【請求項2】 前記PECVDは、80℃?150℃の基板温度で行われる、請求項1に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項3】 前記希釈剤気体:供給ガスの希釈比は約30:1?10,000:1である、請求項1又は2に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項4】 前記PECVDは、無線周波数(RF)グロー放電を含み、前記圧力が約6Torr?12Torrの範囲であり、基板温度が120℃?150℃の範囲であり、放電密度が40mW/cm^(2)?80mW/cm^(2)の範囲であり、前記希釈比が40:1?200:1の範囲である、請求項1?3のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項5】 前記半導体素子は、前記アモルファスシリコン層を含むi-層を有する単接合太陽電池であって、0.645よりも大きな曲線因子(FF)と、0.9Vよりも大きな開放電圧(V_(OC))とを有する単接合太陽電池を具備し、前記希釈剤気体は水素を含み、前記供給ガスはシランを含み、前記基板はガラス及び金属からなる群より選択される、請求項1?4の何れか1項に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項6】 前記基板はガラスを含み、前記単接合太陽電池は0.7よりも大きな曲線因子(FF)と1.0Vよりも大きな開放電圧(V_(OC))を有する、請求項5に記載の半導体素子の製造方法。」 に補正するものである。 (2)補正の目的 ア 上記(1)によれば、補正後の請求項1は、補正前の請求項2と同一の内容であるから、本件補正は、補正前の請求項1を削除するものとひとまず解することができ、補正前後の各請求項の記載内容からみて、補正後の請求項2、請求項4ないし6は、補正前の請求項3ないし6に対応するものと解される。 そうすると、補正後の請求項3は、補正前の特許請求の範囲に対応する請求項が存在しないこととなるから、上記(1)の補正のうち、請求項3を「前記希釈剤気体:供給ガスの希釈比は約30:1?10,000:1である、請求項1又は2に記載の半導体素子の製造方法。」とする補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成6年改正前特許法」という。)第17条の2第3項第1号ないし第4号に掲げる事項のいずれをも目的とするものとは認められない。 イ 上記(1)のとおり、補正の前後を通じて請求項の数は変わりがないことから、補正後の請求項1ないし6は、補正前の請求項1ないし6に対応するものと解することもできるが、このように解しても、補正前の請求項1には、基板温度を特定する事項は記載されていないから、請求項1に「20℃?150℃の基板温度」との要件を付加する補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。 よって、上記のように解しても、本件補正が、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められず、同第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものとも認められない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (4)付言 なお、上記(2)アのとおり、補正後の請求項1は、補正前の請求項2と同一の内容であるところ、後記第3、2で検討するとおり、補正前の請求項2に係る発明は、特許を受けることができないものであるから、本件補正を認める余地はない。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年10月30日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)及び請求項2に係る発明(以下「本願発明2」という。)は、前記第2、2(1)において、補正前の請求項1及び請求項2に記載したとおりのものである。 (1)本願発明1について ア 刊行物の記載 平成20年8月21日付けで通知した拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-21494号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。以下同じ。)。 (ア)「【0062】 【半導体層】 【i型半導体層】半導体層104は通常の薄膜作製プロセスによって製作されるもので、蒸着法、スパッタ法、高周波プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR法、熱CVD法、LPCVD法など公知の方法を所望に応じて用いることにより作製できる。工業的に採用されている方法としては、原料ガスをプラズマで分解し、基板上に堆積させるプラズマCVD法が好んで用いられている。また、反応装置としては、バッチ式の装置や連続成膜装置などが所望に応じて使用できる。 ・・・ 【0080】本発明に用いられるSi:H膜もしくはSiGe:H膜を形成する際には、CVD法が好ましく用いられるがこの時基体温度は好ましくは100℃?500℃、より好ましくは150℃?450℃、最適には200℃?400℃に設定される。また、成膜時の内圧はRFプラズマCVD法を用いる場合には、好ましくは10^(-2)Torr?50Torr、より好ましくは10^(-1)Torr?10Torr、最適には0.5Torr?1.5Torrに設定され、マイクロ波プラズマCVD法を用いる場合には、好ましくは10^(-4)Torr?1Torr、より好ましくは10^(-3)Torr?10^(-1)Torr、最適には2×10^(-3)Torr?2×10^(-2)Torrに設定される。」 (イ)「【0100】 【実施例3】本実施例3においては、図10に示したような断面構成のデバイスを作製した。作製工程等の基本的な方法は実施例1と同じである。異なる点はミドルセルMCLのi型層107におけるGe原子の含有量の極大値(C_(max)107)とボトムセルBCLのi型層104におけるGe原子の含有量の極大値(C_(max)104)とを異ならしめC_(max)104>C_(max)107とした点である。 【0101】図5に示す構成の堆積膜形成装置を用いて、以下の手順で作製した。まず、50mm×50mmの大きさのステンレス製基体101を周知のスパッタリング装置内に入れ10^(-5)Torr以下に真空排気した後、Arをスパッタ用ガス、Agをターゲットとして用い、前記基体101上に下部電極102となる約1000ÅのAg薄膜を堆積した。この基体101を取り出し、ロードロック室213内にある基体搬送治具206上に基体保持用カセット202を配し、その上に下部電極102の堆積された面を図5中下側に向けて固定し、ロードロック室213内を不図示の排気ポンプで10^(-5)Torr以下の圧力に真空排気した。この間、成膜室201は排気ポンプ215により10^(-5)Torr以下の圧力に排気されている。両室の圧力がほぼ等しくなった時点でゲートバルブ207を開け、基体搬送治具206を用いて基体保持用カセット202を成膜室201内に移動し再びゲートバルブ207を閉じた。 【0102】次に、ヒーター205にて基体101の表面温度が200℃となるように加熱を行った。基体温度が安定した時点で、Si_(2)H_(6)ガス10sccmと水素ガスにて1%希釈したPH_(3)ガス、12sccm及びH_(2)ガス500sccmをガス供給パイプ208,209より導入した。次いで、排気バルブ214の開度を調節し、成膜室201の内圧を1.5Torrに保った。 【0103】高周波電源210はマッチング回路211を介してカソード電極212に接続されており、前記高周波電源210より13.56MHzの高周波電力20Wを直ちに投入し成膜を開始した。このようにして、n型のμc-Si:H膜を200Å形成後ガスの導入及び高周波電力の投入を止めて排気ポンプ215により成膜室201内を10^(-5)Torr以下に真空排気した。次いで、成膜室201と全く同じ構成で10^(-5)Torr以下に真空排気されている成膜室216へn型半導体層103の形成された基体101を基体搬送治具206を用いて移動させた。 【0104】以下成膜室216内の構成は成膜室201と同じ故、同じ図面番号にて説明する。成膜室216内では圧力を1.2TorrとしSi_(2)H_(6)ガスを10sccm導入し、15Wの高周波電力を投入して200Å厚のノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層117を形成した。次いで、一旦高周波電力の投入を止めSi_(2)H_(6)ガスの流量を一定にしたまま、GeH_(4)ガスを流量1.5sccmで供給し、再び15Wの高周波電力を投入したままGeH_(4)ガスの流量を徐々に10sccmまで増大させてi型層104中の層領域104′を2000Å程形成し続いてGeH_(4)ガスの流量を徐々に1.5sccmまで減少させ800Åの層領域104″を形成した。高周波電力の投入を止めGeH_(4)ガスの供給を中止してから再度高周波電力を投入し200Åのノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層118を形成した。 【0105】次に、基体保持用カセット202に固定され上記工程にてバッファ層118まで堆積された基体101を基体搬送治具206にて成膜室201に搬送し10^(-5)Torr以下に保ちつつ基体101をヒーター205で230℃に加熱し基体温度が安定したところでガス導入管208,209よりSiH_(4)ガス5sccm,水素ガスにて2%希釈したBF_(3)ガス5sccmを成膜室201に導入し、排気バルブ214の開度を調整して成膜室の内圧を1.5Torrに保った。次いで前述と同じ方法で150Wの高周波電力を投入し100Åのp型μc-Si半導体層105をi型のバッファ層118上に堆積した。次に前述のn型μc-Si:H膜103の堆積方法と全く同じ条件で成膜室201内でp型μc-Si半導体層105上にn型μc-Si:H膜106を100Å堆積させた。 【0106】次に成膜室216内に基体を配し、圧力1.2Torr Si_(2)H_(6)ガスを10sccm導入し、15Wの高周波電力を投入してノンドープのa-Si:Hを100Å堆積させバッファ層119を形成した。続いて、一旦高周波電力の投入を止め、GeH_(4)ガスを流量1.5sccmで供給した後、再び高周波電力を投入しながらGeH4ガスの流量を5.0sccmまで徐々に増大させa-SiGe:Hからなる層厚400Åの層領域107′を形成し、続いてGeH_(4)ガスの流量を1.5sccmまで徐々に減少させa-SiGe:Hからなる層厚200Åの層領域107″を形成した。再び高周波電力の投入を中止し、GeH4ガスの供給を停止させた後、高周波電力の投入を再開しノンドープのa-Si:Hからなる100Åのバッファ層120を形成した。 【0107】次に前述のp型μc-Si半導体層105と同様の方法により成膜室201内でp型μc-Si半導体層108を100Å堆積し、こうしてボトムセルBCLの上にミドルセルMCLを形成した。そして成膜室201内で前述のn型μc-Si:H膜103の堆積方法と全く同じ条件でp型μc-Si半導体層108上にn型μc-Si:H膜109を100Å堆積させた。次に、成膜室216内で、基体温度を250℃、Si_(2)H_(6)ガス流量10sccm、H_(2)ガス流量500sccm、圧力1.1Torr、高周波電力15Wの条件下でi型のa-Si:H半導体層110を600Å堆積した。 【0108】次に前述のp型μc-Si半導体層105と同様の方法により成膜室201内でp型μc-Si半導体層111を100Å堆積した。こうしてミドルセルMCL上にトップセルTCLを形成した。基体搬送治具206にて基体搬送用カセット202をゲートバルブ207を介して取り出し用ロードロック室213に移動させ、冷却後nip型半導体層の堆積された基体101を取り出した。 【0109】3つのセルBCL,MCL,TCLが積層された基体101をInとSnの金属粒が重量比1:1で充填された蒸着用ボートがセットされた周知の真空蒸着装置に入れ、10^(-5)Torr以下に真空排気した後、抵抗加熱法により1×10^(-3)Torr程度の酸素雰囲気中で透明電極112としてのITO薄膜を約700Å蒸着した。この時の基体温度は170℃とした。冷却後、該基体101を取り出し、透明電極112の上面に集電電極パターン形成用のマスクパターンを密着させて配置し、真空蒸着器に入れ、10-5Torr以下に真空排気した後、抵抗加熱法によりAgを厚さ約0.8μm蒸着し、櫛形の集電電極113を形成し、このようにして形成された光起電力デバイスを作製した。」 イ 引用発明 (ア)上記ア(イ)によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。 「ステンレス製基体101上に下部電極102となるAg薄膜を堆積し、n型のμc-Si:H膜からなるn型半導体層103を形成し、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層117、層領域104″、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層118を形成し、p型μc-Si半導体層105をi型のバッファ層118上に堆積し、p型μc-Si半導体層105上にn型μc-Si:H膜106を堆積し、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層119、層領域107′、層領域107″、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層120を形成し、p型μc-Si半導体層108を堆積し、こうしてボトムセルBCLの上にミドルセルMCLを形成し、p型μc-Si半導体層108上にn型μc-Si:H膜109を堆積し、i型のa-Si:H半導体層110を堆積し、p型μc-Si半導体層111を堆積し、こうしてミドルセルMCL上にトップセルTCLを形成し、透明電極112としてのITO薄膜を蒸着し、透明電極112の上面にAgを蒸着して櫛形の集電電極113を形成する光起電力デバイスの作製方法であって、前記i型のa-Si:H半導体層110は、基体温度を250℃、Si_(2)H_(6)ガス流量10sccm、H_(2)ガス流量500sccm、圧力1.1Torr、高周波電力15Wの条件下で堆積する光起電力デバイスの作製方法。」 (イ)前記ア(ア)の引用刊行物の記載に照らすと、上記(ア)の発明における「前記i型のa-Si:H半導体層110は、基体温度を250℃、Si_(2)H_(6)ガス流量10sccm、H_(2)ガス流量500sccm、圧力1.1Torr、高周波電力15Wの条件下で堆積する」方法は、高周波プラズマCVD法を用いるものと認められる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。 「ステンレス製基体101上に下部電極102となるAg薄膜を堆積し、n型のμc-Si:H膜からなるn型半導体層103を形成し、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層117、層領域104″、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層118を形成し、p型μc-Si半導体層105をi型のバッファ層118上に堆積し、p型μc-Si半導体層105上にn型μc-Si:H膜106を堆積し、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層119、層領域107′、層領域107″、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層120を形成し、p型μc-Si半導体層108を堆積し、こうしてボトムセルBCLの上にミドルセルMCLを形成し、p型μc-Si半導体層108上にn型μc-Si:H膜109を堆積し、i型のa-Si:H半導体層110を堆積し、p型μc-Si半導体層111を堆積し、こうしてミドルセルMCL上にトップセルTCLを形成し、透明電極112としてのITO薄膜を蒸着し、透明電極112の上面にAgを蒸着して櫛形の集電電極113を形成する光起電力デバイスの作製方法であって、前記i型のa-Si:H半導体層110は、基体温度を250℃、Si_(2)H_(6)ガス流量10sccm、H_(2)ガス流量500sccm、圧力1.1Torr、高周波電力15Wの条件下で高周波プラズマCVD法を用いて堆積する光起電力デバイスの作製方法。」 (以下「引用発明」という。) ウ 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「光起電力デバイスの作製方法」は、本願発明1の「半導体素子の製造方法」に相当する。 (イ)引用発明の「ステンレス製基体101」は、本願発明1の「基板」に相当する。 引用発明の「ステンレス製基体101」及び「i型のa-Si:H半導体層110」は、本願発明1の「基板」及び「アモルファスシリコン層」に相当する。 (ウ)引用発明は,「ステンレス製基体101上に」「Ag薄膜を堆積し、n型のμc-Si:H膜からなるn型半導体層103を形成し、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層117、層領域104″、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層118を形成し、p型μc-Si半導体層105をi型のバッファ層118上に堆積し、p型μc-Si半導体層105上にn型μc-Si:H膜106を堆積し、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層119、層領域107′、層領域107″、ノンドープのa-Si:Hからなるバッファ層120を形成し、p型μc-Si半導体層108を堆積し、こうしてボトムセルBCLの上にミドルセルMCLを形成し、p型μc-Si半導体層108上にn型μc-Si:H膜109を堆積し、i型のa-Si:H半導体層110を堆積」するものであるから、引用発明の「i型のa-Si:H半導体層110」は、「ステンレス製基体101」に担持されたものといえる。 よって、引用発明の「i型のa-Si:H半導体層110」は、本願発明1の「基板上に担持されたアモルファスシリコン層」に相当する。 (エ)引用発明の「i型のa-Si:H半導体層110」は、「圧力1.1Torr」の条件下で堆積するものであるから、本願発明1の「1.0Torrより大きく50Torrより小さい範囲にある圧力」との条件を備える。 (オ)引用発明の「i型のa-Si:H半導体層110」は、「Si_(2)H_(6)ガス流量10sccm、H_(2)ガス流量500sccm」の条件下で堆積する」ものであるところ、「Si_(2)H_(6)ガス」は、本願発明1の「珪素含有供給ガス」に相当する。 そして、引用発明における「Si_(2)H_(6)ガス流量」は10sccm、「H_(2)ガス流量」は500sccmであって、H_(2)ガス流量:Si_(2)H_(6)ガス流量は500:10、すなわち、50:1であるから、「H_(2)ガス」は、本願発明1の「水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体」に相当し、引用発明は、本願発明1の「約10:1?約10,000:1の該希釈剤気体:該供給ガスの希釈比」との条件を備え、また、「水素、重水素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される希釈剤気体で高度に希釈された珪素含有供給ガス」との条件を備える。 (カ)引用発明の「i型のa-Si:H半導体層110」は、「高周波プラズマCVD法を用いて堆積する」ものであるから、上記(ア)ないし(ウ)に照らすと、引用発明は、「アモルファスシリコンのプラズマ励起化学気相成長(PECVD)を行うことにより基板上に担持されたアモルファスシリコン層を具備する半導体素子を製作する工程を含む」ものといえ、この点において、本願発明1と一致する。 (キ)以上によれば、引用発明は、本願発明1の構成をすべて備え、両者に相違するところはない。 エ 小括 以上のとおり、引用発明は、本願発明1の構成をすべて備え、両者に相違するところはないから、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明である。 よって、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)本願発明2について ア 刊行物の記載及び引用発明 前記(1)ア及びイのとおりである。 イ 対比 本願発明2と引用発明とを対比すると、前記(1)ウでの検討に照らして、両者は、 「PECVDが、本願発明2では、20℃?150℃の基板温度で行われるのに対して、引用発明は、250℃で行われる点。」(以下「相違点」という。) で相違し、その余の点において一致するものと認められる。 ウ 判断 (ア)前記(1)ア(ア)によれば、引用刊行物には、「本発明に用いられるSi:H膜もしくはSiGe:H膜を形成する際には、CVD法が好ましく用いられるがこの時基体温度は好ましくは100℃?500℃、より好ましくは150℃?450℃、最適には200℃?400℃に設定される。」との記載があり、この記載に基づいて、引用発明におけるPECVDを、本願発明2が規定する範囲に含まれる100℃?150℃で行い、これにより、相違点に係る本願発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。 (イ)上記(ア)のとおり、引用発明において、相違点に係る本願発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるときに、本願発明2が、引用発明及び引用刊行物の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものでないというためには、引用発明との相違点について、当業者が予測し得ない格別の技術的意義を要するというべきである。 そこで、本願明細書及び図面(平成19年10月30日付け手続補正後のもの。以下同じ。)をみるに、以下の記載が認められる。 a 「【技術分野】 【0001】 本発明はアモルファスシリコンおよびその合金から製作される光起電デバイスおよび電子デバイス、特に光起電デバイスおよび電子デバイスの光学的および電気的性質を強めるプラズマ蒸着方法に関する。 ・・・ 【背景技術】 ・・・ 【0013】 これまでは、アモルファスシリコンおよびその合金を低濃度の水素希釈を用いて少なくとも250℃の温度および0.5Torrより低い圧力におけるグロー放電により蒸着させていた。・・・これまで、光起電およびアモルファスシリコン蒸着技術の専門家は一般的には低温蒸着は、安定性に劣り、低品質の製品しか製造できないと信じていた。」 b 「【発明が解決しようとする課題】 【0014】 従って、改良された性質を有するアモルファスシリコンデバイスを製造するための改良された方法を提供することが望まれる。 【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0016】 新規な方法では、アモルファスシリコンまたはその合金の活性な真性i-層もしくは領域、p-i界面またはi-n界面を低い蒸着温度および高い蒸着圧力において、例えば水素(H_(2))および/または重水素(D_(2))の如き希釈剤気体で高度に希釈されたシランまたは他の蒸着気体(原料)のプラズマ励起化学蒸着(PECVD)により蒸着させる。望ましくは、基板の蒸着温度(Ts)は最良の結果のためには実質的に250℃より低く、そして好適には220℃より低く、且つ実質的に80℃より高い。蒸着圧力は実質的に0.5?1.0Torrより大きく且つ50Torrより小さく、そして好適には2Torrより大きく且つ20Torrより小さい。 ・・・ 【0021】 DCグロー放電は80?210℃の範囲の温度において、0.1?10Torrの範囲の圧力において、10:1?200:1の範囲の希釈剤対原料(蒸着気体)の希釈比で行うことができる。RFグロー放電は80?220℃の範囲の温度において、1?50Torrの、好適には2?20Torrの範囲の圧力において、1,000:1より小さい、好適には10:1?400:1のそして最も好適には20:1?200:1の範囲の希釈比で行うことができる。」 c 「【0046】 [実験の詳細:a-Si:H] 真性膜およびp-i-n太陽電池の両者を試験した。膜を石英および単結晶Si基板の両者に蒸着させた。一部の石英基板には、ニッケルクロム(NiCr)パッドを予め蒸着させて、共平面伝導性および拡散長さ測定を可能にした。膜は0.5および1ミクロンの間の厚さであり、そして電池中のi-層と同じ方法で蒸着させた。希釈しないシラン(SiH_(4))および水素(H_(2))中で希釈されたSiH_(2)から270℃以下の温度範囲で成膜させた。我々の通常の蒸着方法は270℃における未希釈の蒸着を含む。・・・ ・・・ 【0050】 表5は、本発明の方法で示されているような低温において蒸着させたi-層を有する電池の特性に対する、270℃においてシラン(SiH_(4))から蒸着させたi-層を有する従来の標準電池の太陽電池特性を比較している。 【0051】 【表5】 ![]() 【0052】 表5からわかるように、効率における大きな全体的な増加を生ずるV_(oc)における実質的な増加およびJ_(sc)における小さい損失がある。・・・ ・・・ 【0053】 270℃における水素(H_(2))希釈なしの標準条件下で製造された太陽電池は露光時間の対数に関する効率が線形的に減少する。しかしながら、低温において製造された電池は、露光時間に対する効率の質的に異なる関数依存性を示す。比較が図7に示されており、そこではH_(2)希釈下で低温において製作された太陽電池が劣化速度の遅延を示し、飽和に近付くことがわかる。経時性能変化が図7に示されている太陽電池は、a-SiC p-i界面層を有していない。これらの電池が最適化されたSiC p-i界面層を具備しており、結果として、相当高い初期効率が与えられるなら、それらは大きな光誘導劣化を受けない。H_(2)-希釈で低温において蒸着された電池は、比較的高い開放電圧(V_(oc))だけでなくそれらの開放電圧(V_(oc))における改良された安定性も示す。低温H_(2)で希釈された素子は、それらが比較的高い開放電圧(V_(oc))減衰を有していても、約2または3%だけしか衰微しない。」 図7は、次のとおりである。 ![]() d 「【0083】 [方法の意義] ・・・ 【0086】 予期せぬことに且つ驚くべきことに、高圧無線周波数(RF)グロー放電蒸着で優れたa-Si:H電池が得られることが見いだされた。典型的には、RFまたは直流(DC)グロー放電a-Si:Hおよびその合金の従来の処理では、圧力は0.1?0.5Torrである。一般的にはDCグロー放電に関しては、蒸着室内の気圧は約3Torrより高くなく、その理由はこの圧力以上だと安定なプラズマを維持しそして膜蒸着の良好な均一性を保つことが困難であるからである。本発明の方法に関する5.0Torr(好適には約10Torr)より高い蒸着圧力は任意の温度または水素(H_(2))希釈比または電力においてこれまでに実施されたものよりはるかに高い。本発明の方法は例えば500:1までの非常に高いH_(2)-希釈比も特徴としており、それはアモルファスシリコンおよびその合金を製造するためにこれまで試みられていなかった。先行技術と比較して、低温における安定なa-Si:H合金の製造は明らかに顕著な達成事項である。 【0087】 以下の表7および8には、a-Si:Hおよびその合金を製造するための新規な技術におけるRFおよびDC蒸着条件の範囲が挙げられている。新規な方法を有利に使用して広い禁制帯幅(禁制帯幅>1.80eV)のa-Si:H合金、例えばa-SiC:Hおよびa-Si:H、を製造することができる。 【0088】 【表7】 ![]() 【0089】 ・・・選択されるRF電力密度、基板温度、蒸着圧力および蒸着速度は水素希釈比に依存する。RFグロー放電方法は、高い水素希釈度H_(2)/(CH_(4)+SiH_(4))>80、高い圧力(?9Torr)、および低い温度(?150℃)を含むことができる。」 e 「【0095】 【表8】 ![]() 」 f 「【0103】 高い開放電圧(V_(oc))およびすばらしい安定性を有する非常に改良された水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)および水素化非晶質炭化珪素(a-SiC:H)単接合素子を生じた蒸着条件のいくつかの例を表12に示す。表12における太陽電池モジュールは、4つのi-層、2つのa-Si:Hおよび2つのa-SiC:Hを有する。表12における太陽電池は、1.6cmの電極間隔を有する無線周波数(RF)13.56MHzグロー放電蒸着により製造された。 【0104】 【表12】 ![]() 【0105】 表12におけるA2357-3に関する劣化は1000時間の光ソーキング後に約25%である。一般的には、比較的低い基板温度が比較的高い開放電圧(V_(oc))をもたらす。水素(H_(2))希釈が十分高い限り、低温電池の安定性は非常に良好であるようである。 上記のことから、優れた品質のアモルファスシリコン太陽電池を高圧、高い水素(H_(2))希釈、および低温の条件下でアモルファスシリコン合金プラズマ化学蒸着(CVD)により製造できることがわかる。本発明の方法は、中圧ないし高圧(>4Torr、例えば10Torr)、原料の高いH_(2)希釈(例えば>50:1)、および相対的に低い温度(例えば室温ないし150℃もしくは200℃)の組み合わせ条件下で、高品質の安定な電子材料、例えばa-Si:Hおよびその合金、のプラズマCVD蒸着(グロー放電)を生じる。パラメーターのこの独特な組み合わせはこれまでは成功するとは考えられていなかった。」 g 「【0111】 [試験] 種々の水素(H_(2))希釈水準を用いて数種の温度において、単接合a-Si:H p-i-n太陽電池を製造した。これらの素子の安定性を評価した。安定性に影響を与える可能性のある素子中のi-層の厚さは、試験で使用された全ての素子に関して大体一定に保たれていた(1700Å?2200Å)。 【0112】 表13は、長期間の光ソーキング(100mW/cm^(2)強度における519時間)の前および後のこれらの試験で使用された選択された代表的素子に関する光起電パラメーターを示す。 【0113】 【表13】 ![]() 【0114】 素子の安定性に関する多くの傾向を表13から見いだすことができる。安定性は長期化された露光後の正規化された電池効率として定義することができる。最初に、H_(2)希釈比があるしきい値以下である時には、a-Si:Hの蒸着における水素(H_(2))希釈の増加で素子の安定性が改良される。このしきい値は、例えば、210℃における約10:1および150℃における約30:1である。 【0115】 図18は、水素(H_(2))希釈度を変動させて150℃で製造された一連の素子に関して対数目盛りで露光時間の関数として正規化された電池効率をプロットすることにより上記の傾向を説明している。図18では、H2希釈で製造された素子中では光誘導劣化がH_(2)希釈なしで製造された素子での光誘導劣化(>1000時間)よりはるかに早く(?100時間)飽和することも明らかである。 【0116】 これらの試験から見いだすことができる第二の傾向は、一定のH_(2)希釈比では素子の安定性は基板温度の低下につれて劣化することである。これは、それぞれ210℃および150℃においてしかし同じH_(2)希釈比(10:1)で製造された2つの電池の正規化された効率を示す図19から明らかにわかる。図19における正規化された効率は、対数露光時間の関数としてプロットされている。 【0117】 上記の2つの傾向を組み合わせることにより、我々は素子の開放電圧(V_(oc))および安定性を同時に最適化するためには十分高いH_(2)希釈比と共に十分低い基板温度を使用してa-Si:H系太陽電池を蒸着させるべきである、と結論づけることができる。上記の発見を適用する温度およびH_(2)希釈比に関する範囲は、80℃?280℃の範囲の温度および1:1?100:1の水素(H_(2))希釈であるべきである。」 図19は、次のとおりである。 ![]() (ウ)a 上記(イ)a及びbによれば、本願明細書には、本発明はアモルファスシリコンおよびその合金から製作される光起電デバイス及び電子デバイのプラズマ蒸着方法に関するものであって、これまでは、アモルファスシリコンおよびその合金を低濃度の水素希釈を用いて少なくとも250℃の温度および0.5Torrより低い圧力におけるグロー放電により蒸着させていたという認識に立ち、改良された性質を有するアモルファスシリコンデバイスを製造するための方法を提供するという課題を解決するための手段として、アモルファスシリコンまたはその合金の活性な真性i-層等を低い蒸着温度(望ましくは、実質的に250℃より低く、そして好適には220℃より低く、且つ実質的に80℃より高い)及び高い蒸着圧力(実質的に0.5?1.0Torrより大きく且つ50Torrより小さく、そして好適には2Torrより大きく且つ20Torrより小さい)において、例えば水素(H_(2))および/または重水素(D_(2))の如き希釈剤気体で高度に希釈されたシランまたは他の蒸着気体(原料)のプラズマ励起化学蒸着(PECVD)により蒸着させるという方法を採用したものであることが記載されているものと認められる。 また、DCグロー放電は80?210℃の範囲の温度において、0.1?10Torrの範囲の圧力において、10:1?200:1の範囲の希釈剤対原料(蒸着気体)の希釈比で行うことができ、RFグロー放電は80?220℃の範囲の温度において、1?50Torrの、好適には2?20Torrの範囲の圧力において、1,000:1より小さい、好適には10:1?400:1のそして最も好適には20:1?200:1の範囲の希釈比で行うことができることが記載されているものと認められる。 しかし、PECVDが、20℃?150℃の基板温度で行われることについては、全く記載されていない。 b 上記(イ)cによれば、本願明細書の表5には、270℃においてシランから蒸着させたi-層を有する従来の標準電池より、本発明の方法で示されているような低温において蒸着させたi-層を有する電池の方がV_(oc)及び効率が増加したこと、また、図7には、前者は効率が露光時間の対数に関して線形的に減少するが、後者は100時間程度で効率の低下が飽和することが示されているものと認められる。 しかし、ここでいう低温が何度なのか不明であるし、シランを水素で希釈したものと希釈しないものとを対比したものであるから、シランを水素で希釈するものにおいて蒸着温度の相違によりどのような特性の差異が生じるのかを示すものではない。 c 上記(イ)dによれば、本願明細書の表7には、RF蒸着条件が示されており、「基板温度(℃)」として、「広範囲20?250」、「中間範囲80?180」、「好適範囲120?150」と記載されているものの、本願発明2において規定される「20℃?150℃」に格別の技術的意義があることを示すものとはいえず、また、【0089】には、「RFグロー放電方法は、高い水素希釈度H_(2)/(CH_(4)+SiH_(4))>80、高い圧力(?9Torr)、および低い温度(?150℃)を含むことができる」との記載があるものの、「20℃?150℃」に格別の技術的意義があることを裏付ける根拠は見いだせない。 d 上記(イ)eによれば、本願明細書の表8には、DC蒸着条件が示されるところ、「蒸着温度(℃)」として、「広範RT?500」、「中間80?300」、「好適120?210」と記載されているにすぎず、本願発明2において規定される「20℃?150℃」に格別の技術的意義があることを示すものとはいえない。 e 上記(イ)fによれば、本願明細書の【0105】には、「本発明の方法は、中圧ないし高圧(>4Torr、例えば10Torr)、原料の高いH_(2)希釈(例えば>50:1)、および相対的に低い温度(例えば室温ないし150℃もしくは200℃)の組み合わせ条件下で、高品質の安定な電子材料、例えばa-Si:Hおよびその合金、のプラズマCVD蒸着(グロー放電)を生じる。」との記載があるものの、表12には、a-Si:hとして基板温度150℃及び140℃のもの、a-SiC:Hとして基板温度150℃及び145℃のものが示されるにすぎず、本願発明2において規定される「20℃?150℃」に格別の技術的意義があることを裏付ける根拠は見いだせない。 f 上記(イ)gによれば、本願明細書の表13には、低温高H_(2)希釈Siセルの性能が示されるところ、基板温度210℃のもの及び150℃のものが記載されているものの、本願発明2において規定される「20℃?150℃」に格別の技術的意義があることを示すものとはいえない。 むしろ、【0116】に記載されるとおり、図19には、一定のH_(2)希釈比では素子の安定性は基板温度の低下につれて劣化する、すなわち、基板温度210℃のものより150℃のものの方が安定性が劣化することが示されているものと認められるのであって、本願発明2において規定される「20℃?150℃」に格別の技術的意義があるとは到底認められない。 さらに、【0117】には、「上記の発見を適用する温度およびH_(2)希釈比に関する範囲は、80℃?280℃の範囲の温度および1:1?100:1の水素(H_(2))希釈であるべきである。」と記載されているのであって、本願発明2において規定される「20℃?150℃」とは異なる温度範囲が示されるところである。 g 本願明細書及び図面の他の記載をみても、本願発明2において規定される「20℃?150℃」に格別の技術的意義があることを裏付ける根拠は見いだせない。 (エ)以上のとおりであるから、相違点に係る本願発明2の構成について、当業者が予測し得ない格別の技術的意義があるものとは認められない。 エ 小括 以上の検討によれば、本願発明2は、引用発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願発明2は、引用発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-15 |
結審通知日 | 2010-04-16 |
審決日 | 2010-04-27 |
出願番号 | 特願平7-525183 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L) P 1 8・ 571- Z (H01L) P 1 8・ 113- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 濱田 聖司、加藤 万里子 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
右田 昌士 吉野 公夫 |
発明の名称 | 半導体素子の製造方法 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 松山 美奈子 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 千葉 昭男 |