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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47B
管理番号 1224452
審判番号 無効2008-800217  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-10-23 
確定日 2010-10-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4130215号発明「パイプ組立式収納棚」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4130215号の請求項1ないし請求項4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許第4130215号は、平成19年5月10日に出願され(特願2007-125970号。以下「本願」という。)、平成20年5月30日に特許権の設定登録がなされたものである。
2 平成20年10月23日に特許無効の審判請求がなされ、これに対して、平成21年2月2日付けで被請求人から答弁書が提出され、同年6月12日に口頭審理を行った。

第2 本件特許第4130215号に係る発明
本件特許第4130215号に係る発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
パイプをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚において、
前記パイプは、表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成されており、パイプ表面から油分が除去されている
ことを特徴とするパイプ組立式収納棚。
【請求項2】
前記パイプ表面からの油分の除去は、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれる、請求項1に記載のパイプ組立式収納棚。
【請求項3】
前記パイプはその外径が27.8mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のパイプ組立式収納棚。
【請求項4】
前記鋼板は、前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のパイプ組立式収納棚。」(以下、請求項1ないし請求項4に係る各発明を「本件発明1」ないし「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」という。)

第3 請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明1ないし本件発明4についての特許を無効とする審決を求め、その理由として、大要以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出している。

1 無効理由1(明確性要件違反)
本件発明は、「パイプ表面から油分が除去されていること」を発明特定事項とするところ、「パイプ表面から油分が除去されている」と規定するだけでは、金属表面の状態を明確に特定したことにならず、油分の付着量を定量的に特定する必要があるが、発明の詳細な説明には具体的な説明がなされておらず、どの程度油分が除去されていることをもって「油分が除去されている」とするのか、当業者は該用語の意味を理解することができず、用語の意味が曖昧である。
被請求人により平成20年3月25日に提出された「早期審査に関する事情説明書」(甲第17号証)によれば、被請求人は、パイプ組立式収納棚においては、パイプ表面の油脂分をほぼ完全に除去することが至上命題であって、油をどの程度除去するかということが本件発明1において極めて重要である旨主張するところ、油の付着量について、何ら定量的または具体的な説明なく単に「油が除去されている」と特定するだけでは、当業者は、ほぼ完全に除去したものか否かを実際に判断することができない。
したがって、本件発明の特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである(審判請求書6頁4行?下から3行、口頭審理陳述要領書17頁1行?下から2行)。

2 無効理由2(実施可能要件違反)
本件発明は、「パイプ表面から油分が除去されていること」を発明特定事項とするところ、発明の詳細な説明からは「除去されている」との用語の意味を具体的に把握することができないため、当業者が容易に実施をすることができる程度に発明が記載されているとはいえない。
また、発明の詳細な説明に具体的方法として記載された「ドライコート」なる方法についても具体的条件が何ら記載されておらず、該方法によって処理されたものと特定してもその金属表面の状態は何ら特定されたことにならない。このような方法をもって「パイプ表面から油分が除去されている」という状態を特定することもできず、かかる記載を参酌したとしても、発明の詳細な説明に、当業者が容易に実施をすることができる程度に発明が記載されているとはいえない。
したがって、本件発明の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである(審判請求書6頁末行?8頁3行)。

3 無効理由3(進歩性の欠如)
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証から、次の発明が把握される(審判請求書15頁下から7行?同3行)。
「パイプをジョイントで結合して組み立てるパイプ組立式収納棚において、前記パイプは、ステンレスや鉄などの鋼板から形成されているパイプ組立式収納棚。」

(2)本件発明1について
ア 本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と、以下の点で相違する(審判請求書15頁下から3行?16頁13行)。

(ア)本件発明1は「前記パイプは、表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成されており、」との要件を有するが、甲第1号証に記載された発明は、鋼板が、所定の溶融めっきされた鋼板であるとの要件を有していない点(相違点イ)。

(イ)本件発明1は「パイプ表面から油分が除去されている」との要件を有するが、甲第1号証に記載された発明は、その要件を有していない点(相違点ロ)。

イ 相違点イについて
(ア)甲第6号証には、相違点イに係る構成が記載されており、しかも、その用途が「ラック」、すなわち、甲第1号証に記載された発明と同じ「棚」であるため、相違点イについては、当業者にとって想到容易である(口頭審理陳述要領書5頁2行?17行)。

(イ)表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板(ZAM鋼板)を用いることにより、耐食性に優れた各種製品を構成し得ることは、本件特許出願時において当業者に周知慣用の技術であり(甲第5号証?甲第8号証、甲第15号証及び第16号証)、甲第1号証に記載された発明の「ステンレスや鉄などの鋼」に代えて、耐食性に優れた「ZAM鋼板」を採用することは、当業者にとって想到容易である(審判請求書16頁16行?17頁2行、口頭審理陳述要領書5頁18行?6頁下から3行)。
なお、めっき鋼管やステンレス鋼等の金属管をジョイントで結合してパイプ組立式の収納棚とすることは周知慣用の技術であったものと認められ(甲第2号証?甲第4号証)、このような周知慣用技術が存在することを参酌すると、「パイプ組立式の収納棚」を構成するパイプ材として「ZAM鋼板」を適用することは、当業者にとって極めて容易である(審判請求書17頁3行?10行)。

ウ 相違点ロについて
(ア)甲第1号証には、物品棚等の組立体は、パイプ受け部とパイプ材との摩擦力によって固定がなされる旨記載されており、油分を除去すれば摩擦力が向上することは一般常識であるから、パイプ表面から油分を除去することは、当業者にとって想到容易である(審判請求書17頁12行?18行)。
また、金属材料表面には、製造工程で使用された油が残留しており、この油は組み立て作業や加工をする際に障害となるため除去すべきであるということは、当業者にとって周知の課題である(甲第9号証?甲第11号証)。しかも、甲第7号証には、ZAM鋼板にも脱脂すべき油が付着していることが記載されており、ZAM鋼板が例外的でないことも公知となっているから、周知の課題に鑑み、パイプ受け部とパイプ材との摩擦力によって固定がなされる物品棚においてパイプ表面から油分を除去しようとすることは、当業者にとって想到容易である(審判請求書17頁13行?18頁3行)。

(3)本件発明2について
本件発明2は、「前記パイプ表面からの油分の除去は、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれる」点においても、甲第1号証に記載された発明と相違する。
しかるところ、本件明細書には、「本方式は「ドライコート」と呼ばれる方法であり、パイプの表面を有機溶剤の蒸気を吹き付けて薄い有機溶剤の被膜(厚さ数ミクロン)でコーティングするものである。」(【0022】)と記載されており、上記相違点の下位概念のひとつとして、「パイプの表面を有機溶剤で吹き付けて薄い有機溶剤の被膜でコーティングする方法」が挙げられている。
一方、金属材料の表面から油脂を除去する方法として、溶剤蒸気を用いる方法は、当業者に周知の技術であったものといえる(甲第10号証?甲第13号証)ところ、かかる方法においても、溶剤蒸気が金属材料の表面で凝縮して液体となり、該液体状の有機溶剤が金属表面に付着した油脂を洗い流すことで油脂が除去されるため、少なくとも一時的に有機溶剤の被膜がコーティングされた状態になり、上記周知技術を甲第1号証に記載された発明に適用すると、「パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングする」ことになるから、前記相違点は、当業者にとって想到容易である(審判請求書18頁14行?19頁7行、口頭審理陳述要領書7頁3行?下から2行)。

(4)本件発明3について
本件発明3は、「前記パイプはその外径が27.8mmである」点においても、甲第1号証に記載された発明と相違する。
しかし、甲第1号証に記載された発明において、パイプの外径をどの程度とするかは設計的事項である。
また、外形寸法が28mmであるパイプ材を使用することは、パイプ組立式収納棚の技術分野においては、部品の汎用性という観点での事実上の標準であり(甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証)、本件明細書の記載からは、本件発明3が格別顕著な効果を奏すると把握することもできない。。
したがって、前記相違点は、当業者にとって想到容易である(審判請求書19頁14行?20頁3行)。

(5)本件発明4について
本件発明4は、「前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板である」点においても、甲第1号証に記載された発明と相違する。
しかし、甲第1号証に記載された発明において、パイプの強度をどの程度とするかは設計的事項である。
ちなみに、相違点の強度はJIS規格に記載された鋼管の全種類に相当するものである(甲第14号証)ため、かかる規格を満たす鋼管を使用することは、容易というよりもむしろ使用してしかるべきものである。
なお、甲第7号証にもZAM鋼板が所定の強度を有することが記載されており、例えば引張強さはJISと同様のものである。
更に、本件明細書の記載からは、本件発明4が格別顕著な効果を奏すると把握することもできない。
したがって、前記相違点は、当業者にとって想到容易である(審判請求書20頁11行?21頁3行)。

4 甲各号証
請求人が提出した甲各号証は、以下のとおりである。
(1)甲第1号証:WO2002/093022再公表特許(平成16年9月2日発行)
(2)甲第2号証:特開2005-330092号公報
(3)甲第3号証の1:「PIPE RACKING SYSTEM」と題されたG.S. ACE INDUSTRY CO.,LTD発行のカタログ(抄訳、甲第3号証の2)
(4)甲第4号証:「NEW Pipe Rack System」と題されたTMEHジャパン株式会社発行のカタログ
(5)甲第5号証:特開2003-328105号公報
(6)甲第6号証:「物流機器に“ZAM鋼管”」と題された日新鋼管株式会社発行のパンフレット
(7)甲第7号証:「Nissin Steel Quality ProductsZAM」と題された日新製鋼株式会社発行のカタログ
(8)甲第8号証:「日新のZAM鋼管」と題された日新鋼管株式会社発行のパンフレット
(9)甲第9号証:特開2003-277961号公報
(10)甲第10号証:特公昭49-48382号公報
(11)甲第11号証:日刊工業新聞社「ステンレス鋼便覧」(昭和50年12月20日、4版発行)
(12)甲第12号証:特開平9-143767号公報
(13)甲第13号証:特開2000-345377号公報
(14)甲第14号証:JIS G 3445(1988)「機械構造用炭素鋼鋼管(抜粋)」
(15)甲第15号証:2001年(平成13年)1月4日付け日本経済新聞(第1面及び第15面)
(16)甲第16号証:2001年(平成13年)1月4日付け日経産業新聞(第1面、第12面及び第13面)
(17)甲第17号証:早期審査に関する事情説明書

第4 被請求人の主張
一方、被請求人は、大要以下のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。

1 無効理由1(明確性要件違反)について
本件発明は、要するに、「油分除去されたZAMパイプから形成されたパイプ組立式収納棚」という一体不可分の技術的思想にあり、本願出願前には「パイプ組立式収納棚を形成するZAMパイプの表面から油分を除去する」との考え方は存在しなかったのであるから、発明特定事項として「パイプ表面から油分が除去されている」との記載で足りるというべきである。
あえて付言すると、本件明細書の【0020】には問題点として「・・・パイプ表面に付着した微量の油分によりパイプ表面の摩擦係数が減少し、ジョイントによるパイプの強固な結合ができなくなるという不具合が生じた。」と記載されており、【0022】には本件発明の効果として「この被膜コーティングの過程で上記油分は除去され、コーティングされた有機被膜自体は油分のように摩擦係数を低下させることがないため、ジョイントによるパイプの結合を仕様どおり強固に行うことができる。」と記載されている。したがって、本件発明に接した当業者は、「ジョイントによるパイプの結合を仕様どおり強固に行う」ことができる程度に油分が除去されている、ということを明瞭に理解することができ、油分除去の程度は上記効果により把握されればよいのであって、定量的に規定する必要性はない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は明確である(答弁書10頁下から3行?11頁19行)。

2 無効理由2(実施可能要件違反)について
上記1のとおり、「パイプ表面から油分が除去されている」との記載は明確であり、当業者は本件発明を十分に実施できる。すなわち、油分の除去程度ないし金属表面の状態は、「ジョイントによるパイプの結合を仕様どおり強固に行う」ことができる程度まで必要であり、これで足りる。
なお、請求人は、相違点ロに関し、金属パイプ表面からの油分除去は周知慣用技術であると主張しており、これによれば、本件発明は実施可能要件を満たすものというべきであるから、請求人の主張は矛盾を含んでいる。
いずれにしても、発明の詳細な説明は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである(答弁書12頁2行?14行)。

3 無効理由3(進歩性の欠如)について
(1)本件発明1について
ア 総論
「パイプ組立式収納棚」、「ZAM鋼板」、「金属パイプ表面から油分を除去すること」は、それ自体、本件特許出願前に公知であるが、本件発明1はこれらを互いに組み合わせたことにあり、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、従来どおり丈夫で耐食性に優れ、既存のジョイントで容易に組み立てるという効果を奏するのであり、このような技術的思想は、甲第1号証?甲第14号証に開示も示唆もなく、周知慣用技術でもないから、本件発明1が甲第1号証?甲第14号証及び周知慣用技術から容易になし得るものということはできない。
仮に本件発明1を分節して評価したとしても、以下のとおり進歩性は否定されない(答弁書5頁14行?6頁7行)。

イ 相違点イについて
パイプ組立式収納棚のパイプには見た目の美しさ、例えば光沢が求められるのが一般的であるが、ZAM鋼板を造管することで形成されるZAMパイプには、造管工程において長手方向に線状の傷が無数に入ってしまい、しかも、パイプ組立式収納棚のパイプとして用いるのに必要な油分除去を行うと傷がいっそう目立ってしまう(乙第3号証)から、ZAMパイプを用いることは不可能と考えられていた。
一方、本件特許出願前までに実際にパイプ組立式収納棚に用いられていたパイプは、樹脂コーティングタイプ(乙第1号証)、窒素表面改質(NICO)パイプ(乙第2号証)、ステンレスパイプ(例えば甲第4号証3頁)であり、これらはいずれも光沢ないし鏡面性といった美観を有している。
すなわち、本件特許出願前までは、組立式収納棚のパイプには一定の美観が必要とされていたのであり、言い換えると、一定の美観が当然の前提であったということができる。事実、本件特許製品を見た顧客から、表面の傷について苦情を受けることもあった。
実際の現場にはこのような事情が存在し、この事情のもとで、表面に傷のあるZAMパイプをパイプ組立式収納棚のパイプに採用しようなどということは、当業者であればなおさら、容易に想到し得ないことであり、パイプ組立式収納棚のパイプにZAMパイプを採用することには阻害事由がある。
本件発明1があえてZAMパイプを採用したのは、樹脂被覆を要さず、廃棄が簡単であり、環境リサイクルの課題を解決するためである。
甲第2号証?甲第4号証が開示するのは、パイプ組立式収納棚のパイプとして美感のあるパイプを採用することにとどまり、ZAMパイプを採用することは開示も示唆もない。
甲第5号証?甲第8号証にも、ZAMパイプをパイプ組立式収納棚のパイプに採用することは開示も示唆もない。
請求人は、甲第6号証にZAMパイプの用途としてラックが明記されているから甲第1号証に甲第6号証を適用する動機付けがある旨主張するが、甲第6号証に記載されるものは、ZAMパイプを溶接して形成されるラック等であり、解体しまたは再組立するという考え方はないし、パイプ組立式収納棚の分野には上述した固有の事情があり、阻害事由が存在する。
また、甲第5号証及び甲第6号証にはZAMパイプが美麗な外観を呈する旨記載されているが、腐食や白錆の発生がないことを意味するに過ぎず、パイプ組立式収納棚のパイプとしてステンレスのように美麗であるという意味ではない。
すなわち、甲第2号証?甲第8号証には、パイプ組立式収納棚のパイプにあえてZAMパイプを採用する動機付けは見当たらない。
なお、甲第5号証?甲第8号証は、特定のグループ企業が3年にも満たない短期間のうちに発行したパンフレット等に過ぎないから、ZAM鋼板を用いて各種製品を構成することが周知慣用であるとはいえない。仮に周知慣用であるとしても、パイプ組立式収納棚のパイプにZAMパイプを採用することに阻害事由があるのは、上述のとおりである。
したがって、甲第2号証?甲第8号証を参酌しても、パイプ組立式収納棚のパイプにZAMパイプを採用することを容易に想到し得るとはいえない(答弁書7頁2行?8頁下から4行、口頭審理陳述要領書2頁下から8行?3頁6行、同4頁9行?14行)。

ウ 相違点ロについて
上述したように、ZAMパイプ表面の油分除去を行うと線状の傷がいっそう目立つようになり、パイプ組立式収納棚のパイプとしての美観が損なわれるから、単なるZAMパイプではなく、パイプ組立式収納棚のパイプとして用いられるZAMパイプに油分除去を施すことには、困難があるというべきである。
結局のところ、甲第9号証?甲第13号証は、一般的な油分除去を開示するに過ぎず、パイプ組立式収納棚のパイプに採用されたZAMパイプの油分除去まで言及するものではない。
なお、甲第7号証には、ZAM鋼板の脱脂について記載されているが、これは、塗装前処理に過ぎない。すなわち、塗装の場合には、塗膜とZAM鋼板表面との間の接着性が問題となるので、脱脂が必要なのである。ZAMパイプをパイプ組立式収納棚のパイプに用いる場合とはなんら関係ない。
したがって、甲第9号証?甲第13号証を参酌しても、パイプ組立式収納棚のパイプに用いられるZAMパイプ表面から油分を除去することを容易に想到し得るとはいえない(答弁書9頁下から9行?10頁7行)。

(2)本件発明2?本件発明4について
ア 総論
本件請求項2から4は本件請求項1に従属するものであるから、本件発明2から4もまた、甲各号証及び周知慣用技術に基づいて容易に想到し得るとすることはできない(答弁書10頁11行?13行)。

イ 本件発明2について
甲第11号証には「スプレー法」との記載があるものの、これが具体的にどのようなものなのか、請求人からの説明もなく、不明である。仮に「スプレー法」が溶剤蒸気を吹き付けるものであるとしても、それによって当然にコーティングが形成されるのかも不明である。
甲第9号証はパイプを洗浄剤に浸漬するもの(【0044】参照)、甲第10号証は冷却管で凝縮し液滴となった有機溶剤が被処理材表面を流下するもの(第3欄40行?44行参照)、甲第13号証は被脱脂素材を溶剤の蒸気内に配置するもの(【0015】等参照)、甲第12号証は溶剤蒸気浴による方法を開示するに過ぎない。
よって、本件請求項2に記載の技術と請求人の主張する技術とは異なるものである(口頭審理陳述要領書3頁8行?22行)。

4 乙各号証
被請求人が提出した乙各号証は、以下のとおりである。
(1)乙第1号証:「Enjoy!イレクター」と題された矢崎化工株式会社発行のパンフレット(2頁)
(2)乙第2号証:「NICO PIPE」と題された株式会社ジャロック発行のカタログ(裏表紙)
(3)乙第3号証:参考資料1(ZAMパイプ(油分除去前)のサンプル)、参考資料2(ZAMパイプ(油分除去後)のサンプル)、参考資料3(ステンレスパイプのサンプル)の写真

第5 当審の判断
事案にかんがみ、請求人が主張する無効理由3(前記第3、3)について、まず検討する。

1 本件発明の技術上の意義について
(1)本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の備品等を保管する組立式の収納棚に関し、特に、パイプを専用のジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ組立式収納棚は、骨組み部材であるパイプとこのパイプを組み立てるためのジョイントからなっており、これらを組み合わせることにより、溶接等による接合を用いずに種々の形状のラック等を容易に製作することができる(特許文献1)。このラック等は、例えば自動車を始めとする製造組立工場等における部品等の収納用として、あるいは生産組付台及び搬送用台車として使用される。
【0003】
図1、2にパイプとジョイントの一例を示す。前記ジョイントは、前記パイプの端部または中間部が嵌合される凹部を有する部材と、前記パイプが嵌合された前記部材同士を固定する締結用部材とからなり、パイプの中間部あるいは端部に他のパイプを容易にかつ強固に接続することができ、製造現場のニーズに合わせて様々の形状寸法のラック等を短時間で製作することができる。上記ラックには下部に車輪を取り付けて移動可能とすることも容易であり、製造現場における作業能率向上に役立てられている。
【0004】
従来、製造現場等で用いられる上記パイプ組立式収納棚では、耐食性、美観の観点から、パイプとしてプラスチックコーティングパイプを使用していた。プラスチックコーティングパイプは金属性パイプの外面にプラスチックの層を接着剤でコーティングしたもので、耐食性に優れ、種々の色彩の表面とできるという美観上の利点もあった。
【特許文献1】特開2001-286350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のパイプ組立式収納棚では、製作時に出る端材の処理あるいは廃棄時の処理において、パイプのプラスチックの層を除去することが困難であるため、環境上の問題があった。すなわち、プラスチック層が付着したままでは廃棄あるいはリサイクルの処理が環境上の問題を生じるために行えず、プラスチック層の除去を行うためには上記のようにコスト過大となってしまうという問題が生じていた。
【0006】
この問題の解決方法として、発明者らは後述するめっき鋼板で製造されたパイプを使用することにより、プラスチックコーティングを不要とする方法を検討した。しかし、耐食性、硬度等の表面性能において優れており、従来のパイプの代替品として有力であるにもかかわらず、上記めっき鋼管からパイプを製造する段階で、不可避的にパイプ表面に付着してしまう油分により、ジョイントによる組み立てに不具合が生じてしまうという新たな問題が生じた。上記のパイプ表面に付着した油分を能率上、採算上問題ない範囲で除去できなければ、実際上、上記めっき鋼板で製造されたパイプを採用することはできない。
【0007】
本発明は、従来のめっき処理よりも優れた耐食性を有するめっき処理を施したパイプを使用し、さらにそれに伴う上記の技術上の問題を解決することで上記の環境上の問題点を解消し、従来どおり容易に組立てることができ、耐食性に優れ、丈夫でしかも環境上の問題のないパイプ組立式収納棚を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、パイプをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚において、前記パイプは、表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成されており、パイプ表面から油分が除去されていることを特徴とする。これにより、表面にプラスチックのコーティングを行うことなく長期間高耐食性を有し、また、表面に油分の付着のないパイプを得る事ができるため、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、しかも従来どおり耐食性に優れ、容易に組立てることができるパイプ組み立て式収納棚とすることができる。
請求項2に記載の発明は、さらに、前記パイプ表面からの油分の除去は、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれることを特徴とする。これにより、パイプ表面の油分を効率的かつ十分に除去することができ、組み立て時の不具合を防止することができる。
請求項3に記載の発明は、さらに、前記パイプはその外径が27.8mmであることを特徴とする。これにより、従来のジョイントの使用が可能となり、資源の節約及び廃棄物の低減を図ることができる。
請求項4に記載の発明は、さらに、前記鋼板は、前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板であることを特徴とする。これにより、十分な曲げ強度を有し、パイプ表面に傷のつきにくいパイプ組み立て式収納棚とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
上記解決するための手段により、本発明のパイプ組み立て式収納棚は、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、しかも従来どおり丈夫で耐食性に優れ、既存のジョイントで容易に組立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、本パイプ組立式収納棚の特徴である、パイプ製造用鋼板の表面処理について説明する。
【0011】
図3は、本実施形態のパイプの材料として使用されるZAMめっき鋼板の表面における腐食抑制のメカニズムを説明するための図である。鋼素地にドブ漬けによりめっきされたZn-Al-Mgの成分からなる本実施例のめっき層(ZAMめっき層)のさらに表面側に、緻密なMg含有Zn-Al系保護被膜と、該保護被膜のさらに表面側に、緻密なMg含有Zn系保護被膜とが時間経過とともに生じる。これがZAMめっき層の従来のめっき層との違いであって、時間経過と共に生じる上記2層の新たな高耐食めっき被膜によりZAMめっき層の表面は一層腐食しにくくなる。
【0012】
ZAMめっき鋼板は、後述の溶融Znめっき鋼板の10?20倍、溶融Zn-5%Al合金めっき鋼板の5?8倍の耐食性を示す。また、ZAMめっき層は通常の上記溶融Znめっき層よりも硬く、優れた耐摩耗性、耐疵付き性をも有している。以下、上記のZAMめっき鋼板から溶接にて製造した本実施例のパイプをZAMパイプと記す。
【0013】
図4に、ZAMめっき層において、Mg含有率をゼロから3%まで増加させた場合の赤錆発生サイクルを表すグラフを示す。これは、塩水噴霧、乾燥、湿潤の条件を1サイクルとして繰り返す複合サイクル腐食試験(CCT:JASO M609-91)の結果であり、試験片の条件としては、めっき付着量90g/m2、Al含有率6質量%一定で行ったものである。図からこの成分範囲ではMg含有率が高いほど赤錆発生に対する抑制力が増すことがわかる。
【0014】
図5は、曲げ加工部の塩水噴霧試験試験(SST:JISZ2371)において、比較例1と比較例2に比べて本実施例のZAMめっきが長時間赤錆の発生を防止することを示している。ここで、比較例1は溶融Znめっきであり、比較例2は溶融Zn-5%Al合金めっきである。試験条件は、各めっき条件で板厚3.2mmの鋼板にめっき層120g/m^(2)を形成させ、1tの荷重にて180°の曲げ加工を行った試験片で上記塩水噴霧試験を行うものである。めっき後の鋼板でパイプを製造するため、本試験にて比較を行った
ものである。
【0015】
比較例1や比較例2に示しためっき鋼板で製造したパイプでは、製造現場の高湿な環境では防食性が不十分であり、従来のプラスチックコーティングパイプの代替品とはなりえない。本パイプ組立式収納棚は上記ZAMめっき鋼板により製造された溶接鋼管を採用することで、高い耐食性と表面の美観を具備することができるため、従来のパイプの環境上の欠点を除去した上記代替品としての採用が可能となった。
【0016】
また、図示しないが、ZAMめっき鋼板は溶接部においても同条件の上記比較例2の溶融Zn-5%Al合金めっき鋼板に比べて優れた耐食性を示す。これは、めっき層中のMgが溶接部の金属層へも溶出し優れた保護被膜効果を発現させたことによるものと推定される。これにより、上記ZAMめっき鋼板により製造されたパイプは溶接部においても耐食性に問題ないことが確認された。
【0017】
図6は、ZAMめっきが鋼板の切断面においても耐食性を向上させるメカニズムを説明するための図であり、ZAMめっき鋼板の切断部を模式的に表している。ZAMめっき処理された鋼板が切断された場合、切断時から数週間の暴露初期段階では図6(a)に示すように、切断面においては端面の鋼素地露出部が酸化し、ZAMめっきされた鋼板表面部には特に変化は見られない。切断されてから数週間以上経過した暴露中期段階になると、図6(b)に示すように、切断面はだれ部から流れた緻密なMg含有Zn系保護被膜に覆われ、徐々に灰色から灰黒色に変化する。さらに、切断されてから1年以上経過した暴露長期段階になると、切断面だけでなく鋼板表面部も緻密なMg含有Zn系保護被膜に覆われる。
【0018】
上記のように、ZAMめっきにおいては、めっき層に含有されるMgとAlの効果により、時間の経過とともに緻密で付着性の強い二層構造の保護被膜をめっき表面及び切断面に形成し、腐食を抑制するため、優れた防食性を発揮する。本パイプ組み立て式収納棚では、定尺サイズ(2m、4m)のパイプを使用者が必要長さに切断して使うものであるため、切断面の防食が大きな課題であったが、上記性能を有するZAMパイプを採用することによりこの課題は解決された。
【0019】
ここで、上記ZAMめっきする鋼板として一般の鋼板を用いた場合、パイプ強度が不十分となり、ラック等で使用する場合にたわみが生じやすく、一度たわんだパイプを復元することは困難である。そのため、本実施例ではZAMめっきする鋼板として、前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板を用いる。これにより、十分な曲げ強度を有し、パイプ表面が傷つきにくいパイプ組み立て式収納棚とすることができる。
【0020】
次に本パイプ組立式収納棚のもう一つの特徴であるパイプ表面の油分除去について説明する。
上述のように、本パイプ組立式収納棚はZAMパイプを用いることで、上記収納棚の製作時に発生するパイプの端材の処理や、廃棄時のパイプの処理については、対環境性に優れたリサイクルに好適なものとすることができる。しかし、その一方で上記収納棚の組み立て時において、ZAM処理された鋼板からの造管工程でパイプ表面に付着した微量の油分によりパイプ表面の摩擦係数が減少し、ジョイントによるパイプの強固な結合ができなくなるという不具合が生じた。
【0021】
上記油分の除去にはいくつかの方法が考えられたが、人力による拭き取りは能率、コスト面で不可であり、アルカリ脱脂液にドブ漬けする方法についてはパイプの表面処理剤やめっきそのものまで取れてしまう問題、パイプの溶接部とそれ以外の管体部で上記脱脂液の効果に差が出る問題、さらには脱脂後の乾燥を結束状態で行うため、パイプ同士の接触部の乾燥が不十分となりパイプに筋状の塩分が残る問題等様々の問題点があった。
【0022】
以下に、ZAMパイプ表面の脱脂に関する上記の様々な問題点を解決する方策として、発明者らが見出した方法について説明する。
本方式は「ドライコート」と呼ばれる方法であり、パイプの表面を有機溶剤の蒸気を吹き付けて薄い有機溶剤の被膜(厚さ数ミクロン)でコーティングするものである。この被膜コーティングの過程で上記油分は除去され、コーティングされた有機被膜自体は油分のように摩擦係数を低下させることがないため、ジョイントによるパイプの結合を仕様どおり強固に行うことができる。
【0023】
この「ドライコート」は従来農業用ビニールハウス向け鋼管で採用されていたものであり、ここでは一般的な洗浄の目的で使われていたものであって、本件のような脱脂の目的で使用されることは想定されておらず、実際に採用されている例もなかった。この処理方法を本パイプ組み立て式収納棚に使用するパイプの脱脂方法として採用することで、実際上、上記収納棚用パイプの自動生産が可能になった。
【0024】
以上説明したように、本発明により、上記ZAMめっき鋼板より製造された溶接管を採用し、上記パイプ製造時に表面に付着する油分を上記ドライコート処理で除去することで、プラスチックをコーティングせずに高耐食性を有し、しかも十分な曲げ強度を有する硬く傷つきにくいパイプとすることができるため、上記環境上の問題を生じさせないパイプ組み立て式収納棚を提供できる。」

(2)上記(1)によれば、本件発明の技術上の意義について、以下の事項が認められる。

ア 本件発明は、パイプをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚に関し、該パイプ組立式収納棚は、溶接等による接合を用いずに種々の形状の、例えば自動車を始めとする製造組立工場等における部品等の収納用として、あるいは生産組付台及び搬送用台車として使用されるラック等を容易に製作することができるものである(【0001】?【0003】)。

イ 従来、製造現場等で用いられる上記パイプ組立式収納棚では、耐食性、美観の観点から、パイプとしてプラスチックコーティングパイプを使用していたが、上記従来のパイプ組立式収納棚では、製作時に出る端材の処理あるいは廃棄時の処理において、環境上の問題から、プラスチック層が付着したままでは廃棄あるいはリサイクルの処理を行えず、プラスチック層の除去を行うためにはコスト過大となってしまうという問題が生じていた(【0004】?【0005】)。

ウ 表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板で製造されたパイプは、耐食性、硬度等の表面性能において優れており、従来のパイプの代替品として有力であるが、上記めっき鋼板からパイプを製造する段階で、不可避的にパイプ表面に付着してしまう油分により、ジョイントによる組み立てに不具合が生じてしまうという新たな問題が生じた(【0006】)。

エ 本件発明1は、パイプをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚において、前記パイプは、表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成されており、パイプ表面から油分が除去されていることを特徴とし、これにより、表面にプラスチックのコーティングを行うことなく長期間高耐食性を有し、また、表面に油分の付着のないパイプを得る事ができるため、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、しかも従来どおり耐食性に優れ、容易に組立てることができるパイプ組み立て式収納棚とすることができるものである(【0008】)。

オ 本件発明2は、さらに、前記パイプ表面からの油分の除去は、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれることを特徴とし、これにより、パイプ表面の油分を効率的かつ十分に除去することができ、組み立て時の不具合を防止することができるものである(【0008】)。

カ 本件発明3は、さらに、前記パイプはその外径が27.8mmであることを特徴とし、これにより、従来のジョイントの使用が可能となり、資源の節約及び廃棄物の低減を図ることができるものである(【0008】)。

キ 本件発明4は、さらに、前記鋼板は、前記パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板であることを特徴とし、これにより、十分な曲げ強度を有し、パイプ表面に傷のつきにくいパイプ組み立て式収納棚とすることができるものである(【0008】)。

ク 溶融Znめっきや溶融Zn-5%Al合金めっきを行っためっき鋼板で製造したパイプでは、製造現場の高湿な環境では防食性が不十分であり、従来のプラスチックコーティングパイプの代替品とはなりえないが、ZAMめっき鋼板から溶接にて製造したパイプ(ZAMパイプ)は、高い耐食性と表面の美観を具備することができるため、従来のパイプの環境上の欠点を除去した上記代替品としての採用が可能となり、また、溶接部及び切断部においても優れた耐食性を示す(【0011】?【0018】)。

ケ ZAMめっきを行う鋼板として一般の鋼板を用いた場合、パイプ強度が不十分となり、ラック等で使用する場合にたわみが生じやすく、一度たわんだパイプを復元することは困難であるが、パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板を用いることにより、十分な曲げ強度を有し、パイプ表面が傷つきにくいパイプ組み立て式収納棚とすることができる(【0019】)。

コ パイプ表面に付着した油分の除去方法として、人力による拭き取り、アルカリ脱脂液にドブ漬けする方法には、様々の問題点があったが、従来農業用ビニールハウス向け鋼管で一般的な洗浄の目的で使われていた、有機溶剤の蒸気を吹き付けて薄い有機溶剤の被膜(厚さ数ミクロン)でパイプの表面をコーティングする「ドライコート」と呼ばれる方法をパイプの脱脂方法として採用することで、実際上、収納棚用パイプの自動生産が可能になった。当該方法によれば、被膜コーティングの過程で油分は除去され、コーティングされた有機被膜自体は油分のように摩擦係数を低下させることがないため、ジョイントによるパイプの結合を仕様どおり強固に行うことができる(【0020】?【0023】)。

2 甲各号証の記載
(1)甲第1号証(WO2002/093022再公表特許)は、本願出願前に頒布された刊行物と認められるところ、同号証には、以下の記載がある。

ア 「技術分野
本発明は、種々の長さのパイプ材を接続するためのパイプ継手およびこのパイプ継手を用いた組立体に関する。
背景技術
従来、種々の長さのパイプ材と継手を用いて、それらパイプ材の端部同士やパイプ材の中間位置において、組み立て材であるパイプ材に適合する寸法および形状のパイプ受け部が形成された複数種類の割り継手を組み合わせることにより、筒部を形成する。この筒部にパイプ材を挿入し、挟み込んだ状態でボルト・ナットで固定させる。この構造を用いることにより、複数のパイプ材を互いに直交させて縦横自在に組み立てる構成はすでに知られている。
このような従来技術の例として、特公昭53-25170号公報には、円弧状(または半円弧状、1/4円弧状等)の把持部とこれに連接された半管状の管部からなる割り継手において、管P1を把持部内に挿入し、これと異方向の管P2を相対する管部に嵌めて管部の把持部寄りの箇所で堅締して固定するという管の接続方法およびその継手が開示されている。
また、他の例として実開平1-92507号公報には、互いに接合するときに略円筒形となる半円筒形のパイプ受入溝を直交させて形成した2つの連結部材と、その連結部材を固定するボルト・ナットとからなり、一方の半円筒形のパイプ受入溝にその溝の長手方向に沿って延びる長孔を形成し、その長孔に沿ってボルトを移動自在に固定できるパイプ連結具が開示されている。
そして、これらの割り継手(あるいは連結具)を互いに組み合わせて、ボルト・ナットで固定する際、特公昭53-25170号公報においては、管P1の所望の位置で半管状の管部に設けられた孔5にボールトナット6を貫通させて固定する旨、記載されている。また、実開平1-92507号公報においても、締め付けボルト用孔が取り付け時の利便を考慮した長孔とされており、締め付けボルトによってパイプの側面が半円筒形のパイプ受入溝に挟恃されて固定される。このように、いずれの場合もボルト・ナットの締め付けによるパイプ受け部とパイプ材との摩擦力によって固定がなされているものである。」(3頁14行?40行)

イ 「発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のパイプ継手およびこのパイプ継手を用いた組立体の実施形態を示す斜視図であり、その組立体の例として物品棚の構造を示す。
この構造は、パイプ材の端部どうし、パイプ材の中間位置おいて(審決注、「中間位置において」の誤記と認められる。)、組み立て材であるパイプ材に適合する寸法および形状のパイプ受け部が形成された複数種類の割り継手を互いに組み合わせて筒部を形成する。その筒部の中にパイプ材を挿入し、これを挟み込んだ状態で固定する。これにより、種々の長さのパイプ材を縦方向、横方向、高さ方向に自在に組み立てられ、所望の物品棚を構成する。
この実施形態で使用されるパイプ材としては、プラスチック製パイプ、あるいはステンレスや鉄などの鋼を材料として製造された金属管、紙製パイプ、あるいは芯材となる金属管の表面に合成樹脂層が被覆されたもの等が好適に使用される。
・・・なお、パイプ材の断面形状は円形であり、その外径寸法は28mmである。」(5頁1行?18行)

(2)甲第6号証(「物流機器に“ZAM鋼管”」と題された日新鋼管株式会社発行のパンフレット)の第2面右下に記載された「’05.11」は、「2005年11月」、すなわち、平成17年11月を意味するものと解されるところ、この種のパンフレットには作成された時期が記載され、当該時期以後速やかに顧客等に頒布されるのが通常であるから、同号証は、本願出願前に頒布された刊行物と推認できる。
そして、同号証には、以下の記載がある。

「「ZAM鋼管の特性」
1 優れた耐食性と犠牲防食作用を誇ります。
・ドブ漬け亜鉛めっき鋼管と比較して、耐赤錆性は3倍優れています。
・塩害環境下で優れた耐食性を示します。
・疵付部においては、めっき層から溶け出したAl、Mgを含む緻密な亜鉛系保護被膜が疵部を覆うことにより、優れた耐食性を発揮します。
・ドブ漬け亜鉛めっき、塗装品の代替に最適です。
・・・
3 キズがつきにくく、美観を保ちます。
・他の表面処理鋼管と比較して、耐疵付性が非常に優れています。
・定期的メンテナンス回数の削減により、コストダウンが図れます。
・フォークリフトによる取扱いにおいても、キズつきにくい特性があります。
・・・」(第1面)、
「Zn-Al-Mgめっき鋼管(ZAM)とは
種類
亜鉛、アルミニウム6%、マグネシウム3%のめっき層を持つ新しい溶融めっきです。
・・・
主な用途例
倉庫用ラック部材
タイヤ・ラック
水産加工品パレット
自動車パーツ・パレット
ガラス保管搬送パレット
宅配用パレット他」(第2面)

(3)甲第9号証(特開2003-277961号公報)には、以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】金属材料の加工には、摩擦の低減、焼付きの防止等を目的に、種々の加工用油が使われている。これらの油としては、天然物由来のものでは鉱物油、植物油、動物油等が使われ、また、人工的に合成したものではポリブテン、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成エステル等が使われている。一般には、これらの油を主成分とし、油性向上剤、粘度調整剤、防錆剤、酸化防止剤、防腐剤等のさまざまな添加剤が加えられて用いられる。従来、これらの油の選定は、もっぱら加工特性の実現を目的になされてきた。
【0003】一方、加工後の素材表面には加工時に用いられた油が残留しており、これは加工後の塗装、メッキ、組み立て、溶接、ロウ付等の作業をする上で障害となるので、この加工後残留する油を除去するための適切な洗浄が必要である。加工後残留する油の洗浄では、従来は塩化メチレン、トリクロロエチレン等の有機塩素系溶剤が広く用いられてきた。これら有機塩素系溶剤は、多くの種類の油を溶解する能力が高く、また、表面張力が小さいため、脱脂能力が高くて油の洗浄性能に優れており、更に、金属素材を腐食しにくく、乾燥しやすく、不燃性であって取り扱いが容易であり、また、価格が安いといった多くの利点を有している。」

(4)甲第10号証(特公昭49-48382号公報)には、以下の記載がある。

「 金属製品その他においてはその製造乃至加工工程或いは保管目的等において表面に油脂が附着せしめられることが多い。例えば鋼板、亜鉛メッキ、錫メッキ等を含む各種メッキ鋼板や鋼管等においてその冷牽又は圧延その他の加工目的や防錆目的においてその表面に油脂分を塗布される機会が大であり、このようにして製品表面に附着せしめられた油脂分はその後の加工乃至処理に際して除去することが必要である。ところで斯様な脱脂目的において従来採用されている代表的な方法としてはトリクロールエチレン蒸気浴洗浄法があり、その他四塩化炭素等の有機溶剤を用いた洗浄法が採用され、・・・」(1頁第1欄27行?第2欄2行)

(5)甲第11号証(日刊工業新聞社「ステンレス鋼便覧」)には、以下の記載がある。

「9.4 脱脂と洗浄

1.4.1 概説
ステンレス鋼は,表面の美麗さとすぐれた耐食性を特徴としているため,洗浄作業は素材の製造工程においても,製品加工の中間,仕上工程においても重要な表面処理作業である.たとえば,素材製造工程において,冷間圧延や引抜加工の潤滑油は熱処理の前処理として脱脂され,また不動態化処理によって,均一な不動態化皮膜を形成させる場合には,表面の異物はさびを誘発する恐れがあるため除去されなければならない.
製品加工においても,表面に付着したグリースやさび止め油,プレスの潤滑油,切削油剤の焼入油,機械油などや,研摩剤などの油脂性物質は,完全に除去する必要がある.しかし,脱脂方法は,対象とする汚れの種類,品物に要求される清浄度などを十分に考慮して選定する必要がある.

9.4.2 脱脂方法とその種類
一般工業的に採用されている脱脂方法には,溶剤脱脂,アルカリ脱脂,界面活性剤脱脂電解脱脂などがある.
脱脂方法の選定は,対象とする汚れの種類や必要とする清浄度の程度によって行われることが好ましく,たとえば,溶剤脱脂やアルカリ脱脂は油脂溶解能力の程度ではすぐれているが清浄度に劣るという欠点があり,逆に電解脱脂では,清浄度には非常にすぐれているが油脂溶解能力が劣るなどの点を考慮する必要がある.したがって,素材の製造工程においては,潤滑油の汚れがひどいので次工程に要求される清浄度が比較的軽い場合には,溶剤脱脂やアルカリ脱脂が多く試用され,まためっきや塗装の前処理などのように高度の清浄度が必要な場合には,脱脂を完全に行うためにいくつかの方法が併用されるのが普通である.

9.4.3 溶剤脱脂
溶剤脱脂はトリクロルエチレン,パークロルエチレン,トリクロルエタンなどの塩素系炭化水素や,ガソリン,ソルベントナフサ,ベンゼン,アセトン,アルコ-ル,エーテルなどの有機溶剤を用いる方法で,主として,鉱物性油脂の脱脂に用いられる.・・・
溶剤脱脂の方法には金属表面に付着した油脂性の汚れを,布にひたした溶剤でふきとる方法と浸漬法,蒸気洗浄法があるが,一般には浸漬法と蒸気洗浄法を組合わせたものが多く使用されている.・・・蒸気洗浄法には気相法,液相-気相法,スプレー法などがあり,トリクロルエチレンではおもに蒸気洗浄法が用いられている.」(846頁下から13行?848頁4行)

3 甲第1号証に記載された発明
前記2(1)イによれば、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。

「パイプ材の端部同士や中間位置において、組み立て材であるパイプ材に適合する寸法及び形状のパイプ受け部が形成された複数種類の割り継手を互いに組み合わせて筒部を形成し、その筒部の中にパイプ材を挿入し、これを挟み込んだ状態で固定することにより、種々の長さのパイプ材を縦方向、横方向、高さ方向に自在に組み立てて構成した物品棚であって、前記パイプ材として、プラスチック製パイプ、あるいはステンレスや鉄などの鋼を材料として製造された金属管、紙製パイプ、あるいは芯材となる金属管の表面に合成樹脂層が被覆されたもの等が好適であり、前記パイプ材の断面形状は円形、その外径寸法は28mmである物品棚。」(以下「甲1発明」という。)

4 本件発明についての検討
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「パイプ材」及び「『互いに組み合わせて筒部を形成』した『割継ぎ手』」は、本件発明1の「パイプ」及び「ジョイント」に相当し、甲1発明の「筒部の中にパイプ材を挿入し、これを挟み込んだ状態で固定することにより、種々の長さのパイプ材を縦方向、横方向、高さ方向に自在に組み立てて構成した物品棚」は、本件発明1の「パイプをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚」に相当する。
よって、両者は、「パイプをジョイントで結合して組立てるパイプ組立式収納棚。」(以下「一致点」という。)である点で一致し、パイプについて、本件発明1は、「パイプは、表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成されており、パイプ表面から油分が除去されている」のに対して、甲1発明は、「パイプ材として、プラスチック製パイプ、あるいはステンレスや鉄などの鋼を材料として製造された金属管、紙製パイプ、あるいは芯材となる金属管の表面に合成樹脂層が被覆されたもの等が好適」なものであって、「パイプ表面から油分が除去されている」かどうか不明である点(以下「相違点1」という。)で相違するものと認められる。

イ 判断
(ア)甲1発明は、「パイプ材として、プラスチック製パイプ、あるいはステンレスや鉄などの鋼を材料として製造された金属管、紙製パイプ、あるいは芯材となる金属管の表面に合成樹脂層が被覆されたもの等が好適」であるものであることに照らせば、当業者は、用途に応じた種々の管をパイプ材として用いるものであることがうかがえる。

(イ)他方、前記2(2)によれば、甲第6号証には、Zn-Al-Mgめっき鋼管(ZAM)とは、亜鉛、アルミニウム6%、マグネシウム3%の溶融めっき層を持つものであって、優れた耐食性をもち、また、傷がつきにくいといった特性を示すこと、主な用途として、倉庫用ラック部材や各種のパレットがあることが記載されているものと認められ、倉庫用ラック部材や各種のパレットは収納棚ということができる(本件特許明細書にも、自動車を始めとする製造組立工場等における部品等の収納用として、あるいは生産組付台及び搬送用台車として使用されるラックが、パイプ組立式収納棚として例示されるところである。前記1(2)アを参照。)。

(ウ)そして、甲1発明は、収納棚である点において、甲第6号証記載の「倉庫用ラック部材や各種のパレット」と共通するものであるから、甲1発明において、パイプに耐食性を持たせたり、傷が付きにくくするようにするために、甲第6号証記載の、亜鉛、アルミニウム6%、マグネシウム3%の溶融めっき層を持つZn-Al-Mgめっき鋼管(以下「ZAM鋼管」という。)、すなわち、本件発明1の「表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成」されているパイプを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)ここで、前記2(3)ないし(5)によれば、金属製品の製造ないし加工工程において用いられる油分が製品の表面に付着することは、本願出願時における技術常識に属するものと認められ、このことは、ZAM鋼管の製造ないし加工工程においても、同様であると解される。
また、同じく、前記2(3)ないし(5)によれば、金属製品の表面に付着した上記油分を除去することも、本願出願時における慣用手段というべきものと認められる。

(オ)しかるところ、前記2(1)アによれば、甲第1号証には、背景技術として、割り継手を組み合わせることにより形成した筒部にパイプ材を挿入し、ボルト・ナットで固定させる旨の記載が認められ、このことは、甲1発明も同様であると解される。
してみれば、甲1発明において、パイプとしてZAM鋼管を用いる際に、その表面に油分が付着したままであると、ボルト・ナットで固定する際の妨げになることは、当業者ならずとも容易に理解し得るものといえ、上記(エ)のとおり、金属製品の表面に付着した油分を除去することが慣用手段であることもあわせて考慮すれば、パイプを、その表面から油分が除去されているものとすることは、当業者が当然考慮する程度のことというべきである。

(カ)以上を総合すると、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成である、「パイプは、表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成されており、パイプ表面から油分が除去されている」ものとすることは、甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得たものというべきである。

(キ)前記1(2)エのとおり、本件発明1は、「表面にプラスチックのコーティングを行うことなく長期間高耐食性を有し、また、表面に油分の付着のないパイプを得る事ができるため、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、しかも従来どおり耐食性に優れ、容易に組立てることができるパイプ組み立て式収納棚とすることができる」ものである。
しかし、甲1発明は、「芯材となる金属管の表面に合成樹脂層が被覆されたもの」のほか、「プラスチック製パイプ、あるいはステンレスや鉄などの鋼を材料として製造された金属管、紙製パイプ」もパイプ材として好適なものであって、これらのパイプを用いる場合にあっては、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がないことにおいて、本件発明1と相違するところはなく、本件発明1が、端材処理時や収納棚の廃棄時の環境上の問題をなくしたことをもって、格別顕著な効果ということはできない。
本件発明1が全体として奏する効果についてみても、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることにより、当然奏される程度のものにとどまるから、本件発明1が格別顕著な効果を奏するものということはできない。

ウ 小括
以上の検討によれば、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 被請求人の主張について
(ア)被請求人は、「パイプ組立式収納棚」、「ZAM鋼板」、「金属パイプ表面から油分を除去すること」は、それ自体、本件特許出願前に公知であるが、本件発明1はこれらを互いに組み合わせたことにあり、端材処理時や収納棚の廃棄時に環境上の問題がなく、従来どおり丈夫で耐食性に優れ、既存のジョイントで容易に組み立てるという効果を奏するのであり、このような技術的思想は、甲各号証に開示も示唆もなく、周知慣用技術でもないから、本件発明1が甲各号証及び周知慣用技術から容易になし得るものということはできない、と主張する(前記第4、3(1)ア)。
しかし、甲1発明において、本件発明1との相違点である、相違点1に係る本件発明1の構成とすることが、当業者にとって容易になし得たことであり、本件発明1が格別顕著な効果を奏するものということはできないことは、前記イで検討したとおりであるから、本件発明1が、「パイプ組立式収納棚」、「ZAM鋼板」、「金属パイプ表面から油分を除去すること」を互いに組み合わせた点に格別の発明があるものと評価することはできない。

(イ)被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証を挙げつつ、本願出願前までは、当然の前提として、組立式収納棚のパイプには一定の美観が必要とされていた旨主張し、乙第3号証のとおり、ZAM鋼管は、造管工程において長手方向に線状の傷が無数に入ってしまい、しかも、パイプ組立式収納棚のパイプとして用いるのに必要な油分除去を行うと傷がいっそう目立ってしまうから、表面に傷のあるZAM鋼管をパイプ組立式収納棚のパイプに採用しようなどということは、当業者が容易に想到し得ないことであり、パイプ組立式収納棚のパイプにZAMパイプを採用すること、パイプ組立式収納棚のパイプとして用いられるZAMパイプに油分除去を施すことには阻害事由がある旨主張する(前記第4、3(1)イ、ウ)。
しかし、前記イ(ア)のとおり、甲1発明は、「パイプ材として、プラスチック製パイプ、あるいはステンレスや鉄などの鋼を材料として製造された金属管、紙製パイプ、あるいは芯材となる金属管の表面に合成樹脂層が被覆されたもの等が好適」であって、当業者は、用途に応じた種々の管をパイプ材として用いるものであることがうかがえることに照らせば、「本願出願前までは、当然の前提として、組立式収納棚のパイプには一定の美観が必要とされていた」旨の被請求人の主張は、直ちには採用し難いところであるし、油分を除去したZAM鋼管の表面に傷があるとしても、美観を必要とする組立式収納棚においては商品価値に問題が生じるにとどまり、甲1発明において、表面から油分を除去したZAM鋼管を用いることに、技術上の妨げがあるということはできない。

(ウ)以上のとおりであるから、被請求人の主張は採用できない。

(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、前記(1)アに照らして、両者は、前記(1)アの一致点で一致し、前記(1)アの相違点1のほか、本件発明2は、「パイプ表面からの油分の除去は、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれる」ものであるのに対し、甲1発明は、「パイプ表面から油分が除去されている」かどうか不明である点(以下「相違点2」という。)で相違するものと認められる。

イ 判断
(ア)前記第2の、請求項2の記載によれば、本件発明2は、本件発明1の「パイプ組立式収納棚」における、パイプ表面からの油分の除去が、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれることを特定したもの、すなわち、パイプ表面からの油分の除去方法が、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれるものであることを特定したものと認められる。
しかし、本件発明2は、「パイプ組立式収納棚」という物に係る発明であって、「パイプ組立式収納棚」という物を特定する上で、パイプ表面からの油分の除去方法を特定しても、「パイプ表面から油分が除去されている」以上の構成を特定するものということはできない。
してみると、相違点2は、相違点1以上の相違を意味するものということはできず、本件発明2と甲1発明とは、相違点1においてのみ相違することになる。
そして、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることが、甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得たことであることは、前記(1)イで検討したとおりである。

(イ)念のため、パイプ表面からの油分の除去方法が、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれるものであることについて、以下検討する。

a 前記2(3)ないし(5)によれば、金属製品表面の脱脂のために有機溶剤を用いることは、本願出願時における慣用手段であったものと認められ、前記2(4)及び(5)によれば、代表的な方法として、トリクロルエチレンを用いた蒸気洗浄法が周知であったものと認められる。
しかるところ、有機溶剤の蒸気により金属製品表面を脱脂、洗浄する際には、有機溶剤が金属表面をコーティングすることになるものと解され、パイプ表面からの油分の除去のために、上記周知の蒸気洗浄法を採用することにより、「パイプ表面からの油分の除去は、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれる」ものとすることは、当業者が適宜なし得る程度のことというべきである。

b さらに、前記2(5)によれば、蒸気洗浄法にはスプレー法があることが認められるところ、「スプレー」とは、一般に「噴霧器。また、液体を噴霧器で吹き付けること。」を意味する(広辞苑)ことに照らすと、スプレー法とは、金属製品表面に有機溶剤の蒸気を吹き付けて洗浄する方法と解される。
他方、本件特許明細書には、従来農業用ビニールハウス向け鋼管で一般的な洗浄の目的で使われていた、有機溶剤の蒸気を吹き付けて薄い有機溶剤の被膜(厚さ数ミクロン)でパイプの表面をコーティングする「ドライコート」と呼ばれる方法をパイプの脱脂方法として採用することで、実際上、収納棚用パイプの自動生産が可能になった旨の記載が認められる(前記1(2)コを参照。)ところ、ここでいう、有機溶剤の蒸気を吹き付けて薄い有機溶剤の被膜(厚さ数ミクロン)でパイプの表面をコーティングする「ドライコート」なる方法が、上記スプレー法と格別相違するものとは認め難い。
加えて、本件特許明細書にも、「ドライコート」なる方法が従来農業用ビニールハウス向け鋼管で一般的な洗浄の目的で使われていたものであることが記載されていることからすれば、パイプ表面からの油分の除去方法を、前記パイプ表面へ有機溶剤の被膜をコーティングすることにより行なわれるものとすることについて、金属製品表面を脱脂、洗浄する方法として、本願出願前に周知であった方法を採用した以上のものと評価することはできず、このことに格別の発明があるといえない。

ウ 小括
以上の検討によれば、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 被請求人の主張について
被請求人は、上記イ(イ)bの「スプレー法」が具体的にどのようなものなのか不明であり、仮に「スプレー法」が溶剤蒸気を吹き付けるものであるとしても、それによって当然にコーティングが形成されるのかも不明であること、本件請求項2に記載の技術と請求人の主張する技術とは異なることを主張する(前記第4、3(2)イ)。
しかし、被請求人の上記主張は、上記イ(イ)で検討したところに照らして、採用できないし、上記イ(ア)で検討したとおり、本件発明2と甲1発明とは、相違点1においてのみ相違するものであるから、上記ウの判断を左右するものではない。

(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、前記(1)アに照らして、両者は、前記(1)アの一致点で一致し、前記(1)アの相違点1のほか、パイプの外径が、本件発明3では、27.8mmであるのに対し、甲1発明では、28mmである点(以下「相違点3」という。)で相違するものと認められる。

イ 判断
本件発明3は、パイプの外径を27.8mmとすることにより、従来のジョイントの使用が可能となる(前記1(2)カを参照。)ものであることに照らして、本件発明3においてパイプの外径を規定したことの意義は、従来使用されていたパイプの外径と同程度であることを規定するにとどまるものと解される。
他方、甲1発明におけるパイプの外径は28mmであって、本件発明3が規定する27.8mmとは0.2mmの差があるものの、まさに、同程度の外径と評価できるものであって、0.2mmの差は、数値表現上の微差にすぎない。
よって、相違点3は、実質的な相違ではなく、本件発明3と甲1発明とは、相違点1においてのみ相違することになる。
そして、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることが、甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得たことであることは、前記(1)イで検討したとおりである。

ウ 小括
以上の検討によれば、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲1発明とを対比すると、前記(1)アに照らして、両者は、前記(1)アの一致点で一致し、前記(1)アの相違点1のほか、本件発明4では、鋼板は、パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板であるのに対し、甲1発明では、パイプが炭素鋼鋼板を用いたものではなく、パイプの強度が不明である点(以下「相違点4」という。)で相違するものと認められる。

イ 判断
甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成である、「パイプは、表面に亜鉛と、6重量パーセントのアルミニウムと、3重量パーセントのマグネシウムとを構成成分とする溶融めっきが施されている鋼板から形成されており、パイプ表面から油分が除去されている」ものとすることは、甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得たことは、前記(1)イで検討したとおりである。
ここで、本件発明4において規定される「パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板」についてみるに、甲第14号証(JIS G 3445(1988)「機械構造用炭素鋼鋼管(抜粋)」)によれば、「STKM11A?20A」とは、JIS(日本工業規格)G3445の「機械構造用炭素鋼鋼管」の全種類に相当するものと認められるところであり、本件発明4において「鋼板は、パイプの強度が、JISG3445、STKM11A?20A相当となる炭素鋼鋼板であることを規定した意義は、パイプが、JISG3445の「機械構造用炭素鋼鋼管」の規格に合う炭素鋼鋼管であることを規定するにとどまるものと解される。
そして、パイプを形成する鋼管を具体的にどのようなものとするかは、当業者が設計上の必要に応じて適宜定めるべき事項というべきところ、工業製品をJIS規格に合ったものとすることは、広く一般に行われているから、パイプをJISG3445の「機械構造用炭素鋼鋼管」の規格に合う炭素鋼鋼管とし、相違点4に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。

ウ 小括
以上の検討によれば、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効理由1及び無効理由2について検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-06 
結審通知日 2009-07-10 
審決日 2009-07-22 
出願番号 特願2007-125970(P2007-125970)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A47B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 秀幹  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 三橋 健二
吉野 公夫
登録日 2008-05-30 
登録番号 特許第4130215号(P4130215)
発明の名称 パイプ組立式収納棚  
代理人 大橋 康史  
代理人 篠崎 正海  
代理人 大平 和由  
代理人 森本 有一  
代理人 小山 雄一  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 島田 哲郎  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  
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