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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1224552
審判番号 不服2007-31029  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2010-10-07 
事件の表示 特願2002-289882「工程管理システム及び工程管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開,特開2003-178940〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成9年6月27日に出願された特願平9-187535号(以下「原出願」という。)の一部を分割して平成14年10月2日に新たな出願としたものであって,平成19年7月13日付けの拒絶理由通知に対して,同年9月20日に手続補正書及び意見書が提出されたが,同年10月10日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月15日に審判請求がされるとともに,同年12月17日に手続補正書が提出され,その後当審において平成22年4月19日付けで審尋がされ,同年6月18日に回答書が提出されたものである。


第2.平成19年12月17日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項1?6を,補正後の特許請求の範囲の請求項1?6と補正するものであり,補正事項を整理すると,次のとおりである。
(1)補正事項1
補正前の請求項1の「管理部と, を備えること」を,補正後の請求項1の「管理部と, を備え, 前記出荷情報は,出荷先及び出荷時の情報に関する情報を含むこと」と補正すること。
(2)補正事項2
補正前の請求項2の「前記出荷情報は,出荷先,包装形態,出荷日の少なくとも一つを含むこと」を,補正後の請求項2の「前記出荷時の状況に関する情報には,包装状態,出荷日の情報を含むこと」と補正すること。
(3)補正事項3
補正前の請求項4の「管理する,こと」を,補正後の請求項4の「管理するもので, 前記出荷情報は,出荷先及び出荷時の状況に関する情報を含むこと」と補正すること。
(4)補正事項4
補正前の請求項5の「前記出荷情報は,出荷先,包装形態,出荷日の少なくとも一つを含むこと」を,補正後の請求項5の「前記出荷時の状況に関する情報には,包装状態,出荷日の情報を含むこと」と補正すること。

2.補正の目的の適否
(1)補正事項1は,補正前の請求項1に記載された「出荷情報」が,「出荷先及び出荷時の情報に関する情報を含む」ものであることを限定するものであるから,平成14年法律24号改正附則2条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項(以下,単に「特許法17条の2第4項」という。)2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)補正事項2は,補正事項1に伴って記載を整理するとともに,補正前の請求項2の「前記出荷情報は,出荷先,包装形態,出荷日の少なくとも一つを含む」における「少なくとも一つ」を削除することにより,「出荷情報」が「出荷先」,「包装状態」,「出荷日」のすべてを必ず含むものであることを限定するものであるから,特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(3)補正事項3は,補正前の請求項4に記載された「出荷情報」が,「出荷先及び出荷時の状況に関する情報を含む」ものであることを限定するものであるから,特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(4)補正事項4は,補正事項3に伴って記載を整理するとともに,補正前の請求項5の「少なくとも一つ」を削除することにより,「出荷情報」が「出荷先」,「包装状態」,「出荷日」のすべてを必ず含むものであることを限定するものであるから,特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(5)したがって,本件補正は,特許法17条の2第4項2号に掲げる事項を目的とするものに該当するから,適法になされたものである。

そこで,次に,本件補正後の請求項4に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が,平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項(以下,単に「特許法17条の2第5項」という。)において準用する特許法126条5項の規定(独立特許要件)を満たすか否かについて検討する。

3.独立特許要件(容易想到性)
(1)本願補正発明
平成19年12月17日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項4の記載によれば,本願補正発明は,次のとおりである。

「半導体チップを樹脂にて封止した半導体装置の該樹脂の表面上に二次元コードが付加された半導体装置の該二次元コードを読み取り,
読み取られた該二次元コードから認識されるチップID情報を用いて,記憶された製造工程履歴情報と前記半導体装置の出荷情報のうちの少なくとも一方の情報を前記データベースから抽出し,
物流工程,または出荷工程,またはクレーム処理工程の少なくとも1つを管理するもので,
前記出荷情報は,出荷先及び出荷時の状況に関する情報を含むことを特徴とする工程管理方法。」

(2)引用例の記載内容と引用発明
(2-1)引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平6-84730号公報(以下「引用例」という。)には,図1,2とともに,次の記載がある。(下線は当審で付加したもの,以下同じ。)

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,半導体チップの製造履歴に係わる個別の固有情報をパッケージに表示する半導体装置の形成方法に関する。
【0002】半導体装置の中の特定品種では,半導体チップの製造履歴を示すウエーハNo.やチップアドレス(ウエーハ内の位置)など,半導体チップの製造に係わる個別の固有情報をパッケージに捺印表示している。この表示は間違いのないよう正確に行う必要がある。」

イ.「【0003】
【従来の技術】上記ウエーハNo.やチップアドレスなどの固有情報をパッケージに捺印表示するためには,ウエーハからチップを切り出したときに個々のチップ毎に定まっている固有情報を,多数の工程を経過させた後の捺印工程でパッケージに表示する必要がある。
【0004】従来は,個々のチップに関して上記固有情報を対応付けながら工程を進めるという管理を,捺印工程に至るまでの諸工程毎に行って実現している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このため,上記従来の方法では,捺印工程に至るまでの管理が非常に煩雑である問題があり,また,その間にチップと上記固有情報との対応を取り違えてパッケージへの表示に間違いを起こす恐れがある。
【0006】本発明は,半導体チップの製造履歴に係わる個別の固有情報をパッケージに表示する半導体装置の製造方法に関し,固有情報が定まってから表示するまでの管理が簡素であり,然も,間違いのない固有情報の表示を行い得る方法の提供を目的とする。」

ウ.図1,2を参照して,
「【0010】
【実施例】以下本発明の実施例について図1及び図2を用いて説明する。図1は実施例のフローチャート,図2は実施例における表示の捺印工程を示す構成図,である。
【0011】図1において,先ず,半導体チップの設計(1)は追加のメモリ領域を設ける。このメモリは書込み可能なROMにする。そして,この半導体チップを製造するようにウエーハプロセス(2)を進める。続いて,プローブ試験(3)の際に個々の半導体チップの固有情報をそれぞれの上記メモリ領域に書き込む。この固有情報は先に述べたウエーハNo.やチップアドレスなどである。その後,半導体チップの切り出し(4)によりウエーハから個々の半導体チップを切り出す。
【0012】この半導体チップを用いて,パッケージングなど(5)の工程により捺印表示前のパッケージを備えた半導体装置を形成する。そして,パッケージへの捺印(6)の際に,後述する図2のようにして固有情報の読み取りと表示を行う。その後は,残りの工程(7)を経て半導体装置を完成する。
【0013】図2において,同図は図1(5)の工程で形成した半導体装置1のパッケージに対しレーザー捺印装置2により所要の表示を行うところを示す。レーザ捺印装置2は捺印文字書き込み制御装置3によって制御される。実施例では,この捺印工程の中で上記固有情報の表示を行う。このため,記憶読み出し装置4が,半導体装置1の先に述べたメモリ領域から半導体チップの固有情報を読み出し,そのデータを捺印文字書き込み制御装置3に送っている。
【0014】上述のように,パッケージに表示する半導体チップの固有情報は,その表示を行う捺印工程で捺印対称としている半導体装置1から読み出すので,従来行っていた半導体チップと固有情報を対応付ける管理が不要であり,然も固有情報の表示に間違いを起こすことがない。」

エ.「【0015】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば,半導体チップの製造履歴に係わる個別の固有情報をパッケージに表示する半導体装置の製造方法に関し,固有情報が定まってから表示するまでの管理が簡素であり,然も間違いのない固有情報の表示を行い得る方法が提供されて,当該半導体装置の製造における管理の簡素化を可能にさせ,然も,当該表示の間違いを無くさせる効果がある。」

(2-2)引用発明
ア.上記(2-1)アによれば,引用例には,「半導体チップの製造履歴を示すウエーハNo.やチップアドレス(ウエーハ内の位置)など,半導体チップの製造に係わる個別の固有情報」に関して,「本発明は,半導体チップの製造履歴に係わる個別の固有情報をパッケージに表示する半導体装置の形成方法に関する」ことが記載されている。
ここで,一般に通常の使用,販売等を行うにあたっては,一旦「パッケージ」となって製品化された後は,製品単位で管理すれば十分であるところ,引用例に記載されたように,「半導体チップの製造履歴に係わる個別の固有情報をパッケージに表示する」ということは,「半導体チップ」が「パッケージ」となった後においても,「半導体チップ」ごとの「個別の固有情報」を入手する(読み取る)必要性があることを意味している。よって,引用例が,「パッケージ」から入手した(読み取った)「半導体チップ」ごとの「個別の固有情報」を用いて,個々の「半導体チップ」単位で何らかの管理を行うことを前提として記載されたものであることは,明らかである。
したがって,引用例には,半導体チップの製造履歴を示すウエーハNo.やチップアドレスなどを含む,半導体チップの製造に係わる個別の固有情報をパッケージに表示し,半導体チップの製造に係わる個別の固有情報を読み取り,読み取られた個別の固有情報を用いて,半導体チップ単位の管理を行う管理方法が開示されている。

イ.上記(2-1)ウによれば,引用例には,「この半導体チップを用いて,パッケージングなど(5)の工程により捺印表示前のパッケージを備えた半導体装置を形成する。そして,パッケージへの捺印(6)の際に,後述する図2のようにして固有情報の読み取りと表示を行う。その後は,残りの工程(7)を経て半導体装置を完成する。」と記載されているから,引用例には,半導体チップをパッケージングした半導体装置が開示されている。

ウ.上記(2-1)ウによれば,引用例には,「半導体装置1のパッケージに対しレーザー捺印装置2により所要の表示を行うところを示す。レーザ捺印装置2は捺印文字書き込み制御装置3によって制御される。」と記載されているから,引用例には,半導体装置のパッケージへの表示をレーザー捺印装置で捺印文字を書き込むことにより行うことが開示されている。

エ.したがって,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「半導体チップをパッケージングした半導体装置のパッケージに,前記半導体チップの製造履歴を示すウエーハNo.やチップアドレスなどを含む,前記半導体チップの製造に係わる個別の固有情報を,レーザー捺印装置で捺印文字を書き込むことにより表示し,
前記半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報を読み取り,
読み取られた前記半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報を用いて,半導体チップ単位の管理を行う,
管理方法。」

(3)本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点

(3-1)対比
ア.引用発明の「パッケージング」は,本願補正発明の「封止」に相当する。 また,本願補正発明では「樹脂にて封止した半導体装置」であるから,「樹脂」は封止物であり,引用発明の「パッケージ」も封止物であるから,本願補正発明の「半導体チップを樹脂にて封止した半導体装置の該樹脂」と,引用発明の「半導体チップをパッケージングした半導体装置のパッケージ」とは,「半導体チップを」「封止した半導体装置の」封止物である点で共通する。
イ.引用発明の「半導体チップをパッケージングした半導体装置のパッケージに,」「レーザー捺印装置で捺印文字を書き込むことにより表示」することにより,「捺印文字」が「半導体チップをパッケージングした半導体装置のパッケージ」の表面に「書き込」まれることになる。
また,本願補正発明の「二次元コード」と,引用発明の「捺印文字」とは,いずれもパターンによって情報を提示するものであり,情報パターンである点で共通する。
よって,上記アの点も含めると,本願補正発明の「半導体チップを樹脂にて封止した半導体装置の該樹脂の表面上に二次元コードが付加された半導体装置」と,引用発明の「半導体チップをパッケージングした半導体装置のパッケージに,」「レーザー捺印装置で捺印文字を書き込むことにより表示」されたものとは,「半導体チップを」「封止した半導体装置の」封止物「の表面上に」情報パターン「が付加された半導体装置」である点で共通する。
ウ.引用発明の「前記半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報を読み取」ることにおいて,「捺印文字」を読み取っていることは明らかであるから,上記ア,イの点も含めると,本願補正発明の「半導体チップを樹脂にて封止した半導体装置の該樹脂の表面上に二次元コードが付加された半導体装置の該二次元コードを読み取」ることと,引用発明の「半導体チップをパッケージングした半導体装置のパッケージに,前記半導体チップの製造履歴を示すウエーハNo.やチップアドレスなどを含む,前記半導体チップの製造に係わる個別の固有情報を,レーザー捺印装置で捺印文字を書き込むことにより表示し, 前記半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報を読み取」ることとは,「半導体チップを」「封止した半導体装置の」封止物「の表面上に」情報パターン「が付加された半導体装置の該」情報パターン「を読み取」ることである点で共通する。
エ.引用発明の「読み取られた前記半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報」は,「読み取られた」「捺印文字」から認識される「前記半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報」のことである。
また,引用発明の「半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報」は,「半導体チップの製造履歴を示すウエーハNo.やチップアドレスなどを含む」ものであり,半導体チップを個別に特定するために必要な情報を含んでいるから,個々の半導体チップを完全に特定するために必要な全ての情報(例えばロットNo.)は明記されていないものの,実質的に本願補正発明の「チップID情報」に相当する情報を含むものと認められる。
よって,本願補正発明の「読み取られた該二次元コードから認識されるチップID情報を用い」ることと,引用発明の「読み取られた前記半導体チップの製造に係わる前記個別の固有情報を用い」ることとは,「読み取られた該」情報パターン「から認識されるチップID情報を用い」ることである点で共通する。
オ.本願補正発明の「物流工程,または出荷工程,またはクレーム処理工程の少なくとも1つを管理する」ことと,引用発明の「半導体チップ単位の管理を行う」こととは,「管理する」ことである点で共通する。
カ.本願補正発明の「工程管理方法」と引用発明の「管理方法」とは,「管理方法」である点で共通する。

(3-2)そうすると,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりとなる。

《一致点》
「半導体チップを封止した半導体装置の封止物の表面上に情報パターンが付加された半導体装置の該情報パターンを読み取り,
読み取られた該情報パターンから認識されるチップID情報を用いて,
管理するものである,
管理方法。」

《相違点》
《相違点1》
「封止物」の材料に関して,本願補正発明では「樹脂」であるのに対し,引用発明では「パッケージ」の材料が特定されていない点。
《相違点2》
「情報パターン」に関して,本願補正発明では「二次元コード」であるのに対し,引用発明では「捺印文字」である点。
《相違点3》
「管理する」ことに関して,本願補正発明では,「記憶された製造工程履歴情報と前記半導体装置の出荷情報のうちの少なくとも一方の情報を前記データベースから抽出し, 物流工程,または出荷工程,またはクレーム処理工程の少なくとも1つを管理する」ものであり,「前記出荷情報は,出荷先及び出荷時の状況に関する情報を含む」のに対し,引用発明では,何をどのようにして管理するのかについて具体的に明らかにされていない点。

(4)相違点についての検討
上記各相違点について,それぞれ検討する。

(4-1)相違点1について
ア.半導体チップを封止(パッケージング)した半導体装置において,封止材として樹脂を用いることは,例えば以下の周知例1,2にも記載されているように,本願の原出願の出願前における周知技術である。

(ア)周知例1
本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平7-335510号公報(以下「周知例1」という。)には,次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】・・・ウェハプロセスを終了したウェハは,半導体装置(チップ)に切断され,組立工程においては,電気的接触用の導体およびチップを樹脂やセラミックで封止するようにされる。」

(イ)周知例2
本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平7-235617号公報(以下「周知例2」という。)には,次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】・・・ウェハプロセスを終了したウェハは,半導体装置(チップ)に切断され,組立工程において電気的接触用の導体,及びチップを樹脂やセラミックで封止し,計算機などの電子機器に用いられる。・・・」

イ.よって,引用発明において,「パッケージ」の材料として樹脂を用いることにより,本願補正発明の「半導体チップを樹脂にて封止した半導体装置の該樹脂の表面上」とすることは,例えば上記周知例1,2に記載された周知技術を勘案すれば,当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

(4-2)相違点2について
ア.引用発明における「捺印文字」も,光学的に読み取り可能な情報パターンの一形態である。そして,光学的に読み取り可能な情報パターンとして,二次元コードのような,マトリックス状に情報を表示したものを用いることは,例えば以下の周知例3,4にも記載されているように,本願の原出願の出願前における周知技術である。

(ア)周知例3
本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平7-175883号公報(以下「周知例3」という。)には,図1とともに,次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,機械によって光学的に読取ることができる2進コード(binary code),特に,動的変動を可能とする2進コードに関する。
【0002】
【従来の技術】光学的に読取ることができるコードは,本技術分野において公知である。かかるコードの1つとして,黒および白の方形(square)の形態で情報を表わす「チェッカーボードシンボル」( "checker board symbol" )として形成されるものがある。チェッカーボードマトリックスに含まれる各方形は,他の方形と同じサイズを有している。・・・」
「【0024】
【実施例】以下,本発明を添付図面に示す実施例に関して説明する。先づ,図1aについて説明すると,本発明に従って構成された2進コードが,マトリックス10として全体示されている。2進コードマトリックス10は,実線により形成される側部(side)12を交差させるとともに,交互するパターンをなす暗方形(dark square)16および明方形(lightsquare)18から形成される側部14を交差させることによって形成された周囲部(perimeter)11を備えている。参照番号19で全体示されているデータが,マトリックス10の周囲部11内に記憶される。
【0025】データ19は,記憶しようとする各文字を,2進情報の1および0に相当する暗方形と明方形とにより表わされる目視,即ち,可視の(visual)2進コードに変換することにより,マトリックス10の周囲部内に記憶される。・・・」

(イ)周知例4
本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平5-315207号公報(以下「周知例4」という。)には,図2とともに,次の記載がある。
「【0014】図2は本発明の半導体装置の他の実施例を説明するためのウェーハに形成される一チップを示す平面図である。この実施例の半導体装置では図2に示すように,前述の実施例で示した位置情報をドットマトリクスのかわりに二次元バーコードで記録することである。
【0015】ここで二次元バーコードとしては,米国特許4939354で開示されたものを使用すると,便利である。即ち,この二次元バーコードを使用すると,通常の1次元バーコードやドットマトリクスに比べさらに多くの情報を小さく収容でき,前記公知例の二次元バーコードを使えば,10×10個のピクセルで9桁の10進数が記録できる。
【0016】この二次元バーコードは前記実施例のようなレーザーマーカを使って印字してもよいし,フォトリソグラフィ工程で焼きつけてもよい。また,読取りは光学的に行ない,デジタル処理することにより容易に行なえる。
【0017】本実施例の場合は前述の実施例に比べ収容できる情報量が多いため,チップ位置だけでなく,ウェーハ番号やその他の製造履歴情報もあわせて記録できるという利点がある。」

イ.よって,引用発明において,「半導体チップの製造に係わる個別の固有情報」を表示するための「情報パターン」として二次元コードを用いることにより,本願補正発明の「二次元コードが付加された半導体装置の該二次元コードを読み取り, 読み取られた該二次元コードから認識されるチップID情報を用い」たものとすることは,例えば上記周知例3,4に記載された周知技術を勘案すれば,当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

(4-3)相違点3について
ア.一般に,パッケージされた部品(半導体素子等)の管理を,パッケージに付加された情報を用いて行う管理手法において,パッケージに付加された部品特定情報と,製造工程履歴情報や出荷情報をはじめとする様々な情報を記憶したデータベースとを関連づけておき,必要に応じて,パッケージに付加された部品特定情報をもとに,データベースに記憶された関連する情報を抽出し,抽出された情報を用いて様々な工程管理を行うことは,例えば以下の周知例5,6,7にも記載されているように,本願の原出願の出願前における周知技術である。

(ア)周知例5(周知例1と同じ公報)
上記周知例5(特開平7-335510号公報)には,図1,3,8,10とともに,次の記載がある。
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明では,半導体装置に付与した識別子に応じて半導体装置の製造来歴をトレースできるようにすることで,半導体特有の製造方式(ウェハプロセス,切断,組立)での不良発生とその原因究明の期間を短縮し,これにより,歩留りの早期向上を図り,あるいは,顧客からの不良報告に対して早期に原因対策の処置を行うことを可能とする。以下,本発明の概要を簡単に説明する。
【0007】ウェハプロセスでは,識別子(ID)は,ウェハプロセスで多用される写真蝕刻法(ホトエッチング)を用いて,チップ上にチップIDとして付与される。このチップIDには,ロット番号やウェハ番号と関係付けて,前工程ライン名や前工程カレンダー(日付)情報等も記録しておく。
【0008】組立工程では,上記したチップIDを含んだパッケージIDが,組立後の封止材(パッケージ)上に印刷等で付与,もしくは,半導体装置内の専用記録領域に電気的に書き込まれる。このパッケージIDには,ウェハプロセスでの識別子(チップID情報)や,製品に組み立てるまでの製造工程を処理する単位,組立工程ロット番号や,製品の出荷単位,出荷先等の情報も合わせて記憶する。
【0009】また,上述したチップIDもしくはパッケージIDを用いることによって,製造時の投入から出荷までの変遷を管理するシステムに記憶しているデータ(各製造工程での製造装置,製造条件,検査結果等や,製造したロットの変遷,製造したロットの品質データ等々)を適宜検索する構成とする。
【0010】
【作用】上記した手段によれば,半導体装置の製造来歴を,各製造工程の管理単位と管理単位よりも詳細に管理する部分とで掌握でき,また,製造条件データ等はシステム上にあるデータを用いるて知ることができる。
【0011】すなわち,不良発生時には識別子から,不良発生時の製品形態(ロット,ウェハ,チップ,製品)での検査情報や製造来歴を情報として特定できる。ここで,半導体の場合には,不良の原因が前の別形態で製造された時に作り込まれている場合が多く,本発明における識別子には前の別形態での製造来歴情報が含まれているので,前の別形態の時の製造状態を特定できて,これにより早期に原因を解析でき,対策を立案できる。また,最小の単位の管理もできるので,製造工程の管理単位での解析よりも,より詳細に解析することが可能となる。」
「【0012】
【実施例】以下,本発明の詳細を図示した実施例によって説明する。
【0013】まず,図1を用いて本発明の実施例で用いられる製品のID(識別子)について説明する。製品IDは,製品の製造来歴等の情報をコード化したものである。このコードをもとにして,生産管理,進捗度管理,品質管理等が行われるようになっている。
【0014】上記製品IDの付け方について説明する。本発明の実施例では,製品IDは,ウェハID101と,チップID102と,パッケージのID103(以下,これをマーク103と称す)とからなっている。
【0015】ウェハID101は,品種名,前工程ロットNO,ウェハNO,前工程ライン名より構成する。チップID102は,品種名,前工程ロットNO,ウェハNO,チップNO(ウェハ内チップ座標),前工程ライン名より構成する。マーク103は,品種名,前工程ロットNO,ウェハNO,チップNO,前工程ライン名,組立ライン名,組立ロットNO,選別ライン名,選別ロットNO,出荷日(週),出荷日(曜日)より構成する。これらのコード形態は,図1に示した通りである。
・・・
【0019】以上のルールで,各ID101?103の詳細を表現する。各項目の並べ方は,図1の「コードの意味の欄」に示す。また各項目は,単にアルファベット等で表現してあるだけで,その詳細は,各項目毎に対応表があり,その内容は,データベースに登録されている。例えば,品種名の場合は,図3に示すような対応表になる。
【0020】次に,IDの付与方式として,レーザや電子ビーム等を用いてウェハやチップの表面に刻印する方法,パッケージの表面に印刷する方法,および,チップ(もしくは製品)内に専用記憶領域を持たせ,その領域内にID等の必要な情報を電気的に書き込む方法について説明する。」
「【0028】また前記マーク103は,図8に示すように,製品800のパッケージ(封止材)801の表面に印刷によって付与する。このマーク103の印刷の時期は,各製品800のアクセス速度や消費電力(パワ-)によって製品800を選別した後の,適宜時点とする。印刷は公知の適宜手法が採用可能である。なお,マーク103の付与は,印刷以外にも,場合によってはレーザビーム等を用いたID付与手法も採用可能である。
【0029】このマーク103には,前記したように組立ロットNO,選別ライン名,選別ロットNOが含まれているので,異なるロット間のウェハにまたがって新たにロットを作っても容易に対処可能であり,しかもこの際,同一の選別ロットNO等の製品であっても,前工程の情報が併せてマーク103に含まれているため,不良解析等に際し確実・充分な情報を持つものとなっている。」
「【0031】次に,本発明の実施例で用いられる前記した製品IDの管理解析システムの構成について説明する。図10は本発明の実施例に係る製品IDの管理解析システムの構成図である。
【0032】図10に示した本システムは,製造条件データベース(以下,DBと略す)1001と,設備条件DB1002と,検査規格値のDB1003と,製造仕様書の情報が入ったDB1004と,各工程で測定したデータが蓄積されているDB1005と,設計情報DB1006と,各製造ラインの記号と実際のライン名の対応をとるための情報が入ったDB1007と,各品種名と品種名を表す記号の対応をとるための情報が入ったDB1008と,各ロットを示す記号と実際のロットNOの対応をとるための情報が入ったDB1009と,各ウェハを示す記号と実際のウェハNOの対応をとるための情報が入ったDB1010と,解析した結果を蓄積しておくノウハウDB1011と,各情報とIDを対応付けかつ各種の解析を行うID管理システム1012とからなる。各種情報は,図10に示すように,おたがいのやり取りが可能である。」
「【0052】次に,顧客に渡った製品に不良が発生した場合など,顧客クレームを対処する方法について説明する。
【0053】まず,顧客より不良となった製品およびクレーム内容を回収し,製品のパッケージ上に記載された前記マークを手がかりに,前記図10のシステムにおいて,当該チップの後工程製造来歴情報を,DBから検索して呼び出し,表示装置上に一覧表として表示させる。そして,呼び出した後工程の製造来歴情報より,不良原因と思われる工程の諸項目を抽出し,原因究明を行うようにされる。
【0054】また,前工程に不良原因があると判断した場合は,前記図10のシステムにおいて,前記チップIDをキーとして,前工程の製造来歴情報をDBから検索して呼び出し,表示装置上に一覧表として表示させる。そして,呼び出された情報より不良発生工程および諸項目を抽出し,詳細解析を行い,不良原因および不良発生工程の特定をするようにされる。
【0055】また,不良原因を早期に見つける方法として,クレームのあったチップと同一品種および同一ロット/同一ウェハ内で良品チップがあるかを調べ,この良品チップの製造来歴情報とクレームのあったチップの製造来歴情報とを呼び出して,両者を比較することで相違点の摘出をし,不良原因の究明をすることもできる。
【0056】また,顧客からクレームのあったチップのウェハIDをキーに,当該チップと同一ウェハおよび同一ロット,更には,当該チップとほぼ同一時期に製造した同一品種で別ロット内にあるチップについて,異常が発生する恐れがないかどうかを調べ,異常が発生する可能性があるチップについては,ID情報を手がかりに異常が発生する可能性があるチップが渡った顧客を検索し,異常が発生したこともしくは発生する可能性があることを,顧客に警告ないしは通知することができる。これにより,顧客に対する信用度を上げることができる。
【0057】上述したように,本実施例のシステムを用いることによって,前記したIDをキーとして,組立製造ライン,組立条件,組立時期,ウェハプロセス製造ライン,製造時期,製造ロット,製造ウェハ,製造ウェハ位置の情報を順次検索でき,この検索情報から,不良となった製品の製造来歴である処理工程,製造装置,製造条件,製造結果,検査結果を順次検索できる。また,この検索情報から,同一製造ロットの販売先を検索・特定して,不良発生状況を販売先に知らせることができる。
【0058】また,本実施例のシステムを用いることによって,製造途中の工程での検査において不良となった製品のIDをキーとして,検査工程の前に製造した工程の処理工程,製造装置,製造条件,製造結果,検査結果を検索できる。さらに,これと同時に,不良製品が処理された時と略同時に処理した別製品の製造装置,製造条件,製造結果,検査結果を合わせて検索できる。」

上記記載によれば,周知例5には,パッケージされたチップの管理を,パッケージの表面に印刷された「マーク(パッケージID)103」を用いて行い,「マーク103」を構成する「前工程ロットNO」,「ウェハNO」,「チップNO」等のID情報と,「製造条件データベース1001」等からなる製品IDの管理解析システムとを関連づけておき,必要に応じて,「マーク(パッケージID)103」等のID情報をもとに,システムのデータベースから関連する情報を検索・抽出し,抽出された情報を工程管理に利用する技術が開示され,また,「製造来歴情報」,「出荷先」,「出荷日」を情報として扱う(「出荷先」及び「出荷日」は,パッケージに記憶させているが,通常データベースにも記憶させることは明らか)とともに,顧客クレームの対処(具体的には,顧客より不良となった製品およびクレーム内容を回収し,製品のパッケージ上に記載された前記マークを手がかりに,製造来歴情報等を抽出し,不良原因および不良発生工程の特定をするとともに,異常が発生する可能性があるチップ渡った顧客に警告ないしは通知する)を行う技術も開示されている。

(イ)周知例6(周知例2と同じ公報)
上記周知例6(特開平7-235617号公報)には,図1,3,6,7とともに,次の記載がある。
「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では,半導体装置に付与した識別子に応じて半導体装置の製造来歴をトレースできるようにすることで,半導体特有の製造方式(ウェハプロセス,切断,組立)での不良発生とその原因究明の期間を短縮し,歩留りの早期向上や,顧客からの不良報告に対して早期に原因対策の処置を行うことができる。以下本発明の概要を簡単に説明する。
【0006】半導体装置の識別子(ID)はウェハプロセスで多用される写真蝕刻法(ホト,エッチング)を用いて,チップ上に識別子を付与する。この識別子の付与に合わせて,製品の製造来歴を記録し,製造来歴はウェハプロセスでは主にロット番号や,ウェハ番号で管理できるが,上記識別子は,前記ロット,ウェハ番号と関係付けて記録しておく。組立工程では,切断したウェハからの個々のチップの識別子までを,管理し,このとき組立工程では半導体装置に組み立てるまでの製造工程を処理する単位,組立工程ロット番号をも付与される。このときウェハプロセスと同様に,製造ライン,製造装置,製造条件,検査結果等の製造来歴を記憶する。
【0007】更に半導体装置として製品化された半導体装置の出荷単位,出荷先等の情報を半導体装置の識別子と合わせて記憶する。
【0008】上述したロット番号,ウェハ番号,チップID,組立ロット番号,半導体装置の識別子の製造工程に合わせて,製造時の投入から出荷までの変遷を管理することと,各製造工程での品質管理,生産管理,設備管理システムなどの製造したロットの変遷や製造したロットの品質を管理するシステムの記憶しているデータと合わせて管理ができる。
【0009】
【作用】上記した手段によれば,半導体装置の製造来歴を各製造工程の管理単位と管理単位より詳細に管理する部分とを管理でき,製造データは各システム上にあるデータを用いることができる。
【0010】すなわち,不良発生時の製品の管理単位,もしくは識別子から不良発生時の製品形態(ロット,ウェハ,チップ,半導体装置)での検査情報や製造来歴は情報として特定できる。しかし半導体の場合には,不良の原因が前の別形態で製造された時に作り込まれている場合が多く,上記した管理単位の変遷の管理ができるので,前の別形態の時の製造状態を特定でき原因を解析でき,対策を立案できる。また,最小の単位の管理もできるので,製造形態の管理単位での解析よりもより詳細に解析することを可能とする。」
「【0011】
【実施例】まず,製品のIDについて説明する。IDは,製品の製造来歴等の情報をコード化したものである。このコードをもとにして,生産管理,進度管理,品質管理等が行われている。
【0012】次に上記製品IDの付け方について説明する。本発明では,IDとして,ウェハID,チップID及びパッケージのID(以下「マーク」と呼ぶ)について,それぞれの内容を以下に示す。
【0013】ウェハIDは,品種名,前工程ロットNO,ウェハNO及び前工程ライン名より構成する。チップIDは,品種名,前工程ライン名,前工程ロットNO,ウェハNO,ウェハ内チップ座標より構成する。マークは,品種名,前工程ロットNO,ウェハNO,チップNO,組立ライン名,組立ロットNO,選別ライン名,選別ロットNO,出荷日(週),出荷日(曜日)より構成する。それぞれのコード形態を図1に示す。
・・・
【0015】以上のルールで,各IDを表現する。各項目の並べ方は,図1のコードの意味の欄に示す。又各項目は,単にアルファベット等で表現したあるだけで,その詳細は,各項目毎に対応表があり,その内容は,DBに登録されている。例えば,品種名の場合は,図3に示すような対応表になる。」
「【0018】マークは,図6に示すように,パッケージ表面に印刷する。
【0019】次に,本発明のシステム構成について説明する。図7に本システムの構成を示す。製造条件データベース701(以下,「DB」と略す。)と設備条件DB702と,検査規格値のDB703と,製造仕様書の情報が入ったDB704と,各工程で測定したデータが蓄積されているDB705と,設計情報DB706と,各製造ラインの記号と実際のライン名の対応をとるための情報が入ったDB707と,各品種名と品種名を表す記号の対応をとるための情報が入ったDB708と,各ロットを示す記号と実際のロットNOの対応をとるための情報が入ったDB709と,各ウェハを示す記号と実際のウェハNOの対応をとるための情報が入ったDB710と解析した結果を蓄積しておくノウハウDB711と,各情報とIDを対応付けかつ各種解析を行うID管理システム712からなる。各種情報は,図7に示すように,おたがいのやり取りが可能である。」
「【0044】次に,顧客に渡った製品に不良が発生した場合など,顧客クレームを対処する方法について説明する。
【0045】まず,顧客より不良となった製品及びクレーム内容を回収し,製品ののパッケージ上に記載されたマークを手がかりに,該チップの後工程製造来歴情報をDB検索する。呼び出した後工程の製造来歴情報より,不良原因と思われる工程の諸項目を抽出し,原因究明を行う。
【0046】また,前工程に不良原因があると判断した場合は,チップIDをキーとして,前工程の製造来歴情報をDBより呼び出す。呼び出された情報より不良発生工程及び諸項目を抽出し,詳細解析を行い,不良原因及び不良発生工程の同定をする。
【0047】また,不良原因を早期に見つける方法として,クレームのあったチップと同一品種及び同一ロット/ウェハ内で良品チップがあるか調べ,該良品チップの製造来歴情報を呼び出して,比較することで相違点の摘出をし,不良原因の究明をする方法もある。
【0048】また,顧客からクレームのあったチップのウェハIDをキーに,該チップと同一ウェハ及び同一ロット,更には,該チップとほぼ同一時期に製造した同一品種で別ロット内にあるチップについて,異常が発生する恐れがないかどうか調べ,異常が発生する可能性があるチップについては,IDを手がかりに該チップが渡った顧客を検索し,異常が発生したことを警告をする。これにより,顧客に対する信用度を上げることができる。」

上記記載によれば,周知例6には,パッケージされたチップの管理を,パッケージの表面に印刷された「マーク(パッケージID)」を用いて行い,「マーク」を構成する「前工程ロットNO」,「ウェハNO」,「チップNO」等のID情報と,「製造条件データベース701」等からなるシステムとを関連づけておき,必要に応じて,「マーク(パッケージID)」等のID情報をもとに,システムのデータベースから関連する情報を検索・抽出し,抽出された情報を工程管理に利用する技術が開示され,また,「製造来歴情報」,「出荷先」,「出荷日」を情報として扱う(「出荷先」及び「出荷日」は,パッケージに記憶させているが,通常データベースにも記憶させることは明らか)とともに,顧客クレームの対処(具体的には,顧客より不良となった製品及びクレーム内容を回収し,製品のパッケージ上に記載されたマークを手がかりに,製造来歴情報等を抽出し,不良原因及び不良発生工程の同定をするとともに,異常が発生する可能性があるチップ渡った顧客を検索して警告する)を行う技術も開示されている。

(ウ)周知例7
本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平7-36997号公報(以下「周知例7」という。)には,図1,2とともに,次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】従来のIC部品の品質管理では,製品の出荷後,製品構成のIC部品に障害等が発生し,IC部品の回収および交換等が必要な場合,出荷伝票等から人手で該当納入先を捜すため,長期間かけてIC部品の回収および交換等を実施していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この従来のIC部品の品質管理では,製品の出荷後,製品構成のIC部品に障害等が発生し,IC部品の回収および交換等が必要な場合,出荷伝票等から人手で該当納入先を捜すため,時間がかかり作業効率が低く全ての出荷済製品の部品交換ができないという問題があった。
【0004】本発明はかかる問題を解決するためになされたもので,出荷後にIC部品不良が発生した場合,そのロット番号でデータベースに問い合わせると対象の全電子回路パッケージがわかり,迅速に障害処理ができ,また,人手による台帳管理が不要となるバーコードIC部品ロット管理システムを得ることを目的とする。」
「【0007】
【実施例】つぎに本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例を示すシステム構成図である。この図1において,1はコンピュータ,2はこのコンピュータ1のデータベース,3はコンピュータ1のICロット番号収集モジュール,4はコンピュータ1の製品構成管理モジュールで,この製品構成管理モジュール4は納入先の装置毎の電子回路パッケージの製造シリアル番号を管理する製品構成管理モジュールを構成している。
【0008】そして,本発明においては,電子回路パッケージ等の製品に製造シリアル番号をバーコード化したラベルを貼付している。コンピュータ1のICロット番号収集モジュール3はこれを活用し,製造シリアル番号単位に電子回路パッケージのIC部品のロット番号を収集するICロット番号収集モジュールを構成している。コンピュータ1のデータベース2はICロット番号収集モジュール3と製品構成管理モジュール4からの情報を一元管理しているICロットおよび製品構成データベースを構成している。
【0009】5は端末,6はバーコードラベルを読み取るバーコードリーダ,7は電子回路パッケージのIC部品のロット番号を読み取るICロット番号読取カメラ,8は電子回路パッケージ,9および10はこの電子回路パッケージ8を組み立てるときに貼付する電子回路パッケージ8のバーコードラベルおよび電子回路パッケージ8に実装されている電子回路パッケージ8のIC部品,11は電子回路パッケージ8を搭載する装置,12はこの装置11の装置用バーコードラベルである。図2は図1の機能説明に供するデータベースの内容(構造)を示す説明図で,(a)は製品構成データベースを示したものであり,(b)はICロットデータベースを示したものである。
【0010】つぎに図1に示す実施例の機能を図2を参照して説明する。まず,電子回路パッケージ8を組立てるときに製造シリアル番号をバーコード化したバーコードラベル9を貼付する。そして,出荷工程で電子回路パッケージ8のバーコードラベル9をバーコードリーダ6で読み取った内容と電子回路パッケージ8のIC部品10のロット番号をICロット番号読取カメラ7で読み取った内容が,端末5よりICロット番号収集モジュール3を介してデータベース2へ登録される。
【0011】つぎに,装置11へ電子回路パッケージ8を搭載するときに電子回路パッケージ8のバーコードラベル9と装置11の装置用バーコードラベル12をバーコードリーダ6で読み取り,それぞれの内容と納入先コードを端末5より製品構成管理モジュール4を介してデータベース2へ登録される。そして,IC部品に不良が発生したときには,端末5よりそのICロット番号を入力し製品構成管理モジュール4を介してデータベース2を検索しその該当する納入局装置,電子回路パッケージを端末5へ表示する。
【0012】図2はデータベースの構造で,納入局コードAへ装置製造シリアル番号A_(1 )とA_(2 )からA_(n )が納入されていて,その装置製造シリアル番号A_(1 )には電子回路パッケージ製造シリアル番号a_(1 )とa_(2 )からa_(n )が搭載されている。そして,電子回路パッケージ製造シリアル番号a_(1 )には「イ」ICロット番号が「92001」と「92002」が組込まれ,「ロ」ICロット番号が「92101」が組込まれている。電子回路パッケージ製造シリアル番号a_(2 )の構造も電子回路パッケージ製造シリアル番号a_(1 )と同様の考え方である。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように本発明は,製品出荷後のICロット番号管理をするため,組立時に装置および電子回路パッケージ1点毎に製造シリアル番号をバーコード化したラベルを貼付し,この製造シリアル番号とICロット番号との対応をデータベースに登録するようにしたので,出荷後にIC部品不良が発生した場合,そのロット番号でデータベースに問い合わせると対象の全電子回路パッケージがわかり,迅速に障害処理ができる効果がある。また,データベースで製品構成管理を一元管理しているので,人手による台帳管理が不要になるという効果を有する。」

上記記載によれば,周知例7には,電子回路パッケージ等に含まれるIC部品の管理を,電子回路パッケージ等に貼付した「製造シリアル番号」を用いて行い,「製造シリアル番号」からなる部品特定のための情報と,「コンピュータ1」の「データベース2」(「ICロット番号収集モジュール3」と「製品構成管理モジュール4」からの情報を一元管理)とを関連づけておき,必要に応じて,「製造シリアル番号」からなる部品特定のための情報をもとに,「データベース2」を検索し,得られた情報を工程管理に利用する技術が開示されている。
また,周知例7には,「ICロット番号」や「納入先」を情報として扱う(「ICロット番号」が,実質的にそのロットにおける製造工程履歴情報と関連づけられていることは,通常ロット単位で処理が行われることを考えれば明らか)とともに,出荷後にIC部品不良が発生した場合の対処(具体的には,電子回路パッケージ1点毎に与えられた製造シリアル番号と対応させてデータベースに登録されているIC部品のICロット番号でデータベースに問い合わせ,得られた対象の全電子回路パッケージから該当納入先を把握し,迅速にIC部品の回収および交換等の障害処理を行う)を行う技術も開示されている。

イ.上記周知例5?7に記載された周知技術を勘案すれば,引用発明において,パッケージに付加された半導体チップの製造に係わる個別の固有情報と,他の様々な情報を記憶したデータベースとを関連づけておき,必要に応じて,上記個別の固有情報をもとに,データベースに記憶された関連する情報を抽出し,抽出された情報を用いて様々な工程管理を行うことにより,本願補正発明の「記憶された」「情報を前記データベースから抽出し,」「工程」「を管理する」ことは,当業者が容易になし得たことである。
また,管理の対象となる具体的な工程及び管理のために使用する具体的な情報については,目的に応じて当業者が適宜設定する事項である。

ウ.実際,製造工程履歴情報により物流工程を管理することは,例えば周知例5,6(なお,周知例7も,明記されてはいないものの,「ICロット番号」が用いられていることを考えれば,通常は,それと関連づけられた製造工程履歴情報を用いて物流工程を管理しているものと認められる)に,出荷情報により出荷工程やクレーム工程を管理することは例えば周知例5?7に,出荷情報として出荷先及び出荷日等の出荷時の状況に関する情報を含めることは例えば周知例5,6に,それぞれ記載されているように,何ら特別な管理手法及び情報ではなく,当業者であれば普通に想定し得るものである。

エ.よって,引用発明において,上記イのとおり周知例5?7に記載された周知技術を勘案して,「記憶された」「情報を前記データベースから抽出し,」「工程」「を管理する」際に,管理の対象となる具体的な工程として,物流工程,出荷工程,クレーム処理工程の少なくとも1つを採用するとともに,管理のために使用する具体的な情報として,製造工程履歴情報と,出荷先及び出荷時の状況に関する情報を含む出荷情報のうちの少なくとも一方の情報を採用することにより,本願補正発明の「記憶された製造工程履歴情報と前記半導体装置の出荷情報のうちの少なくとも一方の情報を前記データベースから抽出し, 物流工程,または出荷工程,またはクレーム処理工程の少なくとも1つを管理する」ものとし,「前記出荷情報は,出荷先及び出荷時の状況に関する情報を含む」ものとすることは,目的に応じて当業者が適宜なし得た技術的な設計事項である。

(5)以上検討したとおり,引用発明において,相違点1?3に係る構成とすることは,いずれも周知技術を勘案することにより当業者が容易になし得たものであって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項において準用する特許法126条5項の規定に適合しないので,特許法159条1項において読み替えて準用する特許法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明
1.前記「第2.」のとおり,本件補正は却下されたので,本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年9月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された,次のとおりのものである。

「半導体チップを樹脂にて封止した半導体装置の該樹脂の表面上に二次元コードが付加された半導体装置の該二次元コードを読み取り,
読み取られた該二次元コードから認識されるチップID情報を用いて,記憶された製造工程履歴情報と前記半導体装置の出荷情報のうちの少なくとも一方の情報を前記データベースから抽出し,
物流工程,または出荷工程,またはクレーム処理工程の少なくとも1つを管理する,
ことを特徴とする工程管理方法。」

2.引用例の記載及び引用発明については,それぞれ,前記「第2.」「3.」の(2-1)及び(2-2)において認定したとおりである。

3.対比・判断
前記「第2.」「2.」の(3)で検討したように,本件補正後の請求項4の内容(本願補正発明)は,本件補正前の請求項4に対して,「出荷情報」が「出荷先及び出荷時の状況に関する情報を含む」ものであることを限定的に減縮したものである。逆に言えば,本件補正前の発明(本願発明)は,本願補正発明から,上記の限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定した本願補正発明が,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものなのであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4.結言
以上のとおり,本願発明(本願の請求項4に係る発明)は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-09 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-23 
出願番号 特願2002-289882(P2002-289882)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次大嶋 洋一  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 相田 義明
安田 雅彦
発明の名称 工程管理システム及び工程管理方法  
代理人 萩原 康司  
代理人 金本 哲男  
代理人 亀谷 美明  

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