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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08C
管理番号 1224577
審判番号 不服2008-29726  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-20 
確定日 2010-10-07 
事件の表示 特願2003-143822「無線検針システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-348377〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年5月21日の出願であって、平成20年4月11日付け拒絶理由通知に対し、同年5月22日付けで手続補正されたが、同年10月17日付けで拒絶査定され、これに対し、同年11月20日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年同月28日付けで手続補正されたものである。

第2 平成20年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年11月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】 乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーとデータとを用いて暗号化データを作成する携帯可能な情報処理端末と、
前記情報処理端末との間で無線で通信し且つ前記情報処理端末からの乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーと前記情報処理端末からの暗号化データとを用いて前記データを復号する無線親機と、
前記無線親機との間で特定小電力無線で通信する無線子機と、
前記無線子機に接続され、物理量を計量する計量器とを備え、
前記情報処理端末は、前記計量器で計量された物理量を前記無線子機及び前記無線親機を経由して取得することにより検針を行い、
前記無線親機は、前記情報処理端末と無線通信するブルートゥース用無線通信部と、前記無線子機間と通信する特定小電力用無線通信部とを備えることを特徴とする無線検針システム。」(下線は補正された箇所である。)

すると、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明に対して、
(1)携帯可能な情報処理端末として、「乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーとデータとを用いて暗号化データを作成する」ものと限定し、
(2)無線親機として、「前記情報処理端末からの乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーと前記情報処理端末からの暗号化データとを用いて前記データを復号する」ものと限定したものを含むものである。

したがって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」とする。)の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶理由通知で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-198594号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(1-ア)「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、水道水・ガス・電気等の使用量や、エネルギー消費量などを計量する水道メータ・ガスメータ・電力計・カロリーメータのような計量器を無線で遠隔検針する無線検針システムに適用しうる。詳しくは、そのような無線検針システムにおいて、計量器に接続した子機(子無線機)との間で信号の授受を行って計量器の計量結果等を記憶したり液晶表示したりプリントアウトしたりする持ち運び可能な無線検針用親機(親無線機)に関する。」

(1-イ)「【0012】【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。図1に、請求項1および2に記載した発明の無線検針用親機を備える無線検針システムの概略構成を示す。
【0013】この無線検針システムは、図中符号Aで示す親機と、子機Bと、計量器Mとで構成する。
【0014】親機Aは、本体器10と、操作器11の2つに分けて構成する。一方の本体器10は、たとえば腰に付けたり肩に掛けたりして携行できる重さと大きさで、内部に、制御部12を備える。そして、制御部12に、計量結果等を液晶ディスプレイ等で表示する表示部13と、計量結果のお知らせ票等をプリントアウトするプリントアウト部14と、計量結果等を記憶するデータ記憶部15と、それらを駆動するための電池等からなる電源16を接続してなる。
【0015】他方の操作器11は、携帯に便利なように軽くて小さく、送受信兼用アンテナ17を立てた無線送受信部18を備え、その無線送受信部18を情報制御部19と接続する。そして、情報制御部19に、キー・バーコード・音声等により入力を行う入力部20と、計量結果等を液晶ディスプレイ等で表示する表示部21を接続する。しかして、この操作器11は、情報制御部19を有線22にて本体器10の制御部12と接続し、有線22を通じて本体器10と操作器11間で信号の授受を行えるようにする。
【0016】そして、請求項2に記載の発明では、この操作器11を、本体器10の電源16を用いて駆動可能とする。
【0017】子機Bは、計量器Mとともに、たとえばマンション等の集合住宅の各戸別に備える。そして、送受信兼用アンテナ23を立てた図示しない無線送受信部を備え、その無線送受信部を情報制御部と接続し、その情報制御部を有線24にて計量器Mに接続してなる。
【0018】さて、この集合住宅の計量器検針を行うときは、本体器10を、たとえば腰に掛けて携行し、操作器11を手で持ち歩く。そして、適宜スイッチをオンして後、玄関先で操作器11の入力部20を操作し、計量器番号とともに検針要求信号等を入力し、無線送受信部18から無線通信回線を通じて検針要求信号等を計量器番号と対応する子機Bへ送信する。すると、当該子機Bは、検針要求に応じた計量器Mの計量結果等の信号を操作器11の無線送受信部18へ返信する。そして、操作器11は、計量結果等を表示部21で表示する一方、情報制御部19により有線22を介して本体器10の制御部12へ送る。そして、計量結果等をデータ記憶部15に記憶する一方、表示部13で表示するとともに、必要に応じ計量結果等をもとにお知らせ票等をプリントアウト部14でプリントアウトする。」

(1-ウ)「【0021】ところで、以上の実施の形態における親機Aは、いずれも操作器11に表示部21を備えるが、操作器11の小型・軽量化のため、そのような表示部は、本体器10にだけ備える構成としてもよい。
【0022】また、さらに一層の小型・軽量化のために、図1の場合において、無線送受信部を本体器10にだけ備え、その無線送受信部を用いて子機Bとの間で信号の授受を行うようにすることもできる。」

上記摘記事項(1-イ)に記載された「計量器番号とともに検針要求信号等を入力し、無線送受信部18から無線通信回線を通じて検針要求信号等を計量器番号と対応する子機Bへ送信する。すると、当該子機Bは、検針要求に応じた計量器Mの計量結果等の信号を操作器11の無線送受信部18へ返信する。そして、操作器11は、計量結果等を表示部21で表示する一方、情報制御部19により有線22を介して本体器10の制御部12へ送る。そして、計量結果等をデータ記憶部15に記憶する一方、表示部13で表示するとともに、必要に応じ計量結果等をもとにお知らせ票等をプリントアウト部14でプリントアウトする。」における検針時における計量結果の信号の流れからみて、操作器11は、計量器Mの計量結果を子機B及び本体器10を経由して取得することにより検針を行っていることが読み取れる。

これらの記載事項によると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「情報制御部19を有する、携帯に便利なように軽くて小さな操作器11と、
前記操作器11と有線22で信号の授受を行う本体器10と、
前記本体器10との間で無線通信する子機Bと、
前記子機Bに接続され、水道水・ガス・電気等の使用量や、エネルギー消費量などを計量する水道メータ・ガスメータ・電力計・カロリーメータのような計量器Mとを備え、
前記操作器11は、計量器Mの計量結果を子機B及び本体器10を経由して取得することにより検針を行い、
前記本体器10は、前記子機Bとの間で通信する無線送受信部を備えた、無線検針システム」

3.対比・判断
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明の「情報制御部19を有する、携帯に便利なように軽くて小さな操作器11」は、情報制御部19が情報を処理する機能を有しているといえるから、本願補正発明の「乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーとデータとを用いて暗号化データを作成する携帯可能な情報処理端末携帯可能な情報処理端末」との間で、「携帯可能な情報処理端末」という点で共通する。

(2)引用例1発明の「前記操作器11と有線22で信号の授受を行う本体器10」は、本体器10が無線送受信部を有しているから、本願補正発明の「前記情報処理端末との間で無線で通信し且つ前記情報処理端末からの乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーと前記情報処理端末からの暗号化データとを用いて前記データを復号する無線親機」との間で、「前記情報処理端末との間で通信する無線親機」という点で共通する。

(3)引用例1発明の「前記本体器10との間で無線通信する子機B」と、本願補正発明の「前記無線親機との間で特定小電力無線で通信する無線子機」とは、「前記無線親機との間で無線で通信する無線子機」という点で共通する。

(4)引用例1発明の「前記子機Bに接続され、水道水・ガス・電気等の使用量や、エネルギー消費量などを計量する水道メータ・ガスメータ・電力計・カロリーメータのような計量器M」は、機能・構成からみて、本願補正発明の「前記無線子機に接続され、物理量を計量する計量器」に相当する。

(5)引用例1発明の「前記操作器11は、計量器Mの計量結果を子機B及び本体器10を経由して取得することにより検針を行」うことは、機能・構成からみて、本願補正発明の「前記情報処理端末は、前記計量器で計量された物理量を前記無線子機及び前記無線親機を経由して取得することにより検針を行」うことに相当する。

(6)引用例1発明の「前記本体器10は、前記子機Bとの間で通信する無線送受信部を備え」ることと、本願補正発明の「前記無線親機は、前記情報処理端末と無線通信するブルートゥース用無線通信部と、前記無線子機間と通信する特定小電力用無線通信部とを備えること」とは、「前記無線親機は、前記無線子機間と通信する無線通信部とを備えること」で共通する。

以上、(1)?(6)の考察から、両者は、

(一致点)
「携帯可能な情報処理端末と、
前記情報処理端末との間で通信する無線親機と、
前記無線親機との間で無線で通信する無線子機と、
前記無線子機に接続され、物理量を計量する計量器とを備え、
前記情報処理端末は、前記計量器で計量された物理量を前記無線子機及び前記無線親機を経由して取得することにより検針を行い、
前記無線親機は、前記無線子機間と通信する無線通信部とを備えることを特徴とする無線検針システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「無線親機と無線子機との間で通信する無線」、及び、「無線親機の無線通信部」が、本願補正発明では、「特定小電力」用のものであるのに対し、引用例1発明では、そのようなものであるか否かが不明である点。

(相違点2)
本願補正発明では、情報処理端末と無線親機との間の通信が「無線で通信」し、無線親機が「情報処理端末と無線通信するブルートゥース用無線通信部」を備えているのに対し、引用例1発明では、「有線22で信号の授受を行う」ものであり、ブルートゥースによる無線通信を行うものではない点。

(相違点3)
本願補正発明では、情報処理端末が「乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーとデータとを用いて暗号化データを作成する」ものであり、無線親機が「前記情報処理端末からの乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーと前記情報処理端末からの暗号化データとを用いて前記データを復号する」ものであるのに対し、引用例1発明の「操作器11」及び「本体器10」には、そのような暗号化機能がない点。

4.当審の判断
(1)上記(相違点1)について検討する。
無線検針システムの技術分野において、特定小電力通信を行う技術は、一例として、特開2001-250184号に「【0021】図1において、1は本実施の形態における検針用携帯端末装置本体、2は検針用携帯端末装置本体1の制御を司るCPU (中央処理演算装置)、3はアプリケーションプログラムや検針データを格納する為のROMやRAMで構成される主記憶装置、4は文字等を表示する表示装置、5はユーザーがデータ-の入力を行う為に、LCD等の表示装置の上部に被さる様に配置されたタッチパネル又はキーボード等の入力装置、6はCPU2や主記憶装置3等で構成されるシステム部である。
【0022】7はメータ10やFAX15とのデータの送受信を無線で行う為の無線モジュールであり、メータ10やFAX15との通信を同一周波数帯域の電波を用いて行うものとする。
【0023】この無線モジュールは微弱無線や400MHz特定小電力無線、またはbluetoothとして規格化される2.4GHz帯のISMバンドを利用した無線などで、無免許にて使用できると共に、低電力で通信を行うことが可能であるが、通信可能距離(電波到達距離)は数メートルから数十メートル程度のものとする。」と記載されているように、本願の出願前に周知の技術である。

したがって、引用例1発明の本体器10と子機Bとの間の無線の態様として、周知の特定小電力通信のものを採用し、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば、容易になし得たことである。

(2)上記(相違点2)について検討する。
各種技術分野において、端末装置とその近傍で用いる無線機器との間で、ブルートゥース規格の無線通信を行うことは、本願の出願前に周知の技術である。
例えば、特開2002-314705号には、「【0018】ここで、携帯電話機10とPDA機器20、及びPDA機器20と表示装置30との間で実現される通信機能は、例えば電波や赤外線などを互いに送受信することにより無線通信を行うことにより実現される。このような無線通信としては、例えばBluetooth規格で規定されるような手法を採用すればよい。また、特に無線通信を行うことに限定されるものではなく、例えば通信ケーブルを相互に接続することによる有線通信により実現してもよい。」と記載され、

国際公開第01/82789号(訳文は、対応する国内出願である特表2003-531663号による。)には、「A person carries the PDA 70 and monitor module 74. The person measures their resting metabolism every e. g. week using the Gas Exchange Monitor (GEM) 72, an indirect calorimeter invented by James R. Mault. Metabolic data is transferred to the PDA 70. The monitor module 74 transmits physical activity data using the Bluetooth wireless protocol to the PDA 70. The PDA 70 is also used to record the caloric intake of the person, for example using a diet log software program such as described in U. S. Patent Nos. 5,704,350 and 4,891,756 to Williams, incorporated herein by reference, or other menu-based entry systems, bar-code scanners, and the like. The monitor can also transmit data to the remote computer using e. g. a wireless Internet connection.」(9頁31行?10頁9行)(訳文)「【0024】被監視者はPDA70及びモニターモジュール74を携行する。被監視者は、ガス交換モニター(GEM)72、即ちジェームズRモルトにより発明された間接カロリーメーターを使って、例えば、週毎に安静時の代謝を測定する。代謝データはPDA70に転送される。モニターモジュール74は、ブルートゥース無線プロトコルを使って身体活動データをPDA70に送信する。PDA70は、例えば、ウイリアムズに与えられた米国特許第5,704,350号、及び同第4,891,756号のような食餌療法ログソフトウェアプログラム、又は他のメニューベースの入力システム、バーコードスキャナなどを使って、当人の摂取カロリーを記録するためにも使用される。なお、上記特許は参考文献としてここに援用する。モニターは、例えば無線インターネット接続を使って、遠隔コンピュータにデータを送信することもできる。」と記載されている。

したがって、引用例1発明の携帯型の操作器11とその近傍部で用いる本体器10に対し、有線通信に換えて、上記周知の端末装置とその近傍で用いる無線機器との間で用いるブルートゥース規格による無線通信を採用して、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば、容易になし得たことである。

(3)上記(相違点3)について検討する。
情報通信技術分野において、ブルートゥース規格による無線通信を行う際に、一方の情報通信機器により乱数を用いて暗号キーを作成し、それをもとに暗号化データを作成し、もう一方の情報通信機器により、前記暗号キーと暗号化データからデータを復号するという暗号化に係る技術は、本願の出願前に周知の技術である。
例えば、特開2002-190845号には、「【0012】パソコン1a、1b、及び1cは、それぞれLAN通信部3a、3b、及び3cを備え、電子メールの送受信やその他通信を行なうようホスト装置4が接続されたLAN5に接続している。パソコン1aはさらに、外部機器との間で近距離無線通信を行なう無線通信部7を備えると共に、スケジュール管理ソフト9がインストールされており、このスケジュール管理ソフト9で用いるスケジュールデータ9aを保持している。PDA11は、上記無線通信部7と無線通信を行なう無線通信部13を備えている。そして、上記スケジュール管理ソフト9と互換性のあるスケジュール管理ソフト15がインストールされており、このスケジュール管理ソフト15で用いるスケジュールデータ15aを保持している。尚、上記無線通信部7及び13は、Bluetooth規格Ver.1.0に対応した無線通信モジュールである。」、及び、「【0055】無線通信部7は暗号化キーBを受信すると(ステップS324)、自ら生成した暗号化キーAと一致するか比較する(ステップS325)。ステップS325での比較の結果不一致である場合、ステップ319からS324を繰り返し、この動作を3回繰り返しても暗号化キーが一致しない場合は、無線通信リンク確立失敗として本フェーズを終了する。同時に、CPU25に対して無線通信リンク確立失敗であることを通知し、CPU25は使用者に知らせるべくLCD37にその旨表示を行なう。
【0056】ステップS324において、暗号化キーが一致したと判断した場合、ベースバンド部45はそれを示す一致通知を無線送信する(ステップS327)。この一致通知を無線通信部13が受信する(ステップS328)と無線リンク確立となる。さらにパソコン1aでは、ベースバンド部45がCPU25へ無線リンク確立の通知を伝送する。一方、PDA11でも、無線通信部13内のベースバンド部がCPU81へ同様に無線リンク確立を通知する。これをもって無線通信リンク確立フェーズが終了する。
【0057】無線通信リンクが確立すると、最後はスケジュールデータ同期化フェーズS4であり、「随時更新」と「定期更新」の場合に分けて説明する。まず「随時更新」の場合から図17乃至図19を用いて説明する。図17は図16と同様に、、パソコン1aのフローを左側に、PDA11のフローを右側にそれぞれ記載し、両者間の無線データ通信は、左右を横切る矢印により示している。そして無線データ通信時には、パソコン1aからのデータは前フェーズにて生成した暗号化キーAにより、またPDA11からのデータは暗号化キーBによりそれぞれ暗号化して送信される。暗号化されたデータを受信すると、受信機器側では、受信機器側で持っている暗号化キー(送信側と一致していることは確認済)により復号化した後にデータを使用することになる。またここでは、パソコン1aがマスタとなり、スレーブであるPDA11に対して追加・変更のあったスケジュールデータの無線送信を行なう動作を説明する。」と記載され、

特開平2002-353955号には、「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、情報伝送システムに係り、特に、2つの制御機器間でブルートゥース態様の無線信号を用いて情報伝送を行う際に、情報の暗号化処理を行わなかった場合に注意を促すために表示画面中に警告用表示を行うようにした情報伝送システムに関する。」、及び、「【0004】また、近距離無線データ通信方式は、2つの制御機器間で行われる無線信号の伝送方式であるため、無線信号によって伝送される情報のセキュリティ確保のためにセキュリティ処理が行われている。そのセキュリティ処理の1つは、暗号鍵を用いた認証処理であり、そのセキュリティ処理の他の1つは暗号化処理である。この場合、暗号鍵を用いた認証処理は、一方の(マスター)制御機器側が、乱数を形成して他方の(スレーブ)制御機器側に送信するとともに、その乱数を自己のリンクキーを用いて処理した暗数を設定し、スレーブ制御機器側が、受信した乱数を自己のリンクキーを用いて処理した暗数を設定し、その暗数をマスター制御機器側に返信し、マスター制御機器側が、自己側で設定した暗数とスレーブ制御機器側から送信された暗数とを比較し、それらが合致するか否かによって認証の認否をする処理である。また、暗号化処理は、マスター制御機器側がスレーブ制御機器側に暗号化要求とそれに続くエンクリプションキーサイズ要求を行い、それらの要求の了承がスレーブ制御機器側から得られた場合、マスター制御機器側が、スレーブ制御機器側に乱数を送信するとともに、その乱数を自己のリンクキーを用いて処理してエンクリプションキーを形成し、同様に、スレーブ制御機器側が、受信した乱数を自己のリンクキーを用いて処理して同様にエンクリプションキーを形成し、以後、マスター制御機器側及びスレーブ機器側がこれらのエンクリプションキーを用いて情報の暗号化をする処理である。」と記載されている。

したがって、上記(2)で検討したように、引用例1発明の携帯型の操作器11とその近傍部で用いる本体器10に対し、有線通信に換えて、上記周知の端末装置とその近傍で用いる無線機器との間で用いるブルートゥース規格による無線通信を採用する際に、ブルートゥース規格において周知の暗号化機能を付加して、本願補正発明のように構成することは、当業者であれば、容易になし得たことである。

(4)効果
本願補正発明の奏する効果について、引用例1の記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5)小括
したがって、本願補正発明は、引用例1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至5に係る発明は、平成20年5月22日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 携帯可能な情報処理端末と、
前記情報処理端末との間で無線で通信する無線親機と、
前記無線親機との間で特定小電力無線で通信する無線子機と、
前記無線子機に接続され、物理量を計量する計量器とを備え、
前記情報処理端末は、前記計量器で計量された物理量を前記無線子機及び前記無線親機を経由して取得することにより検針を行い、
前記無線親機は、前記情報処理端末と無線通信するブルートゥース用無線通信部と、前記無線子機間と通信する特定小電力用無線通信部とを備えることを特徴とする無線検針システム。」

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び2は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、

本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に関し、
(1)携帯可能な情報処理端末において、「乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーとデータとを用いて暗号化データを作成する」こととの限定を除き、
(2)無線親機において、「前記情報処理端末からの乱数を用いて暗号キーを作成し作成された暗号キーと前記情報処理端末からの暗号化データとを用いて前記データを復号する」こととの限定を除いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定的な発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3.」に記載したとおり,引用例1発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである以上、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-09 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-26 
出願番号 特願2003-143822(P2003-143822)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08C)
P 1 8・ 575- Z (G08C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 健太  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 信田 昌男
居島 一仁
発明の名称 無線検針システム  
代理人 三好 秀和  

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