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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 B08B |
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管理番号 | 1225223 |
審判番号 | 無効2008-800145 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-08-11 |
確定日 | 2010-09-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3675922号「足場板と建枠の兼用ケレン装置」の特許無効審判事件についてされた平成21年1月27日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成21年(行ケ)第10054号平成21年5月22日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3675922号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件特許第3675922号の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)についての出願は、平成8年2月2日に特許出願され、平成17年5月13日に本件発明1及び2について特許の設定登録がされたものである。 (2)これに対して、請求人は、本件発明1は、甲第1?6号証の刊行物に記載された発明、及び、甲第7号証に示されるように公然知られた、または公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2は、甲第1?6、8?11号証の刊行物に記載された発明、及び、甲第7号証に示されるように公然知られた、または公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであると主張し、その証拠方法として、 甲第1号証(実願平5-18561号(実開平6-71766号)の CD-ROM) 甲第2号証(特公平7-85789号公報) 甲第3号証(実願昭61-16701号(実開昭62-130785号) のマイクロフィルム) 甲第4号証(実願昭63-42849号(実開平1-148787号)の マイクロフィルム) 甲第5号証(実公平6-12137号公報) 甲第6号証(実願平2-86202号(実開平4-43653号)の マイクロフィルム) 甲第7号証(三信産業株式会社代表取締役社長大野真人氏による陳述書の 写し) 甲第8号証(実公平6-11317号公報) 甲第9号証(実公平6-11318号公報) 甲第10号証(実願平2-79076号(実開平4-37756号)の マイクロフィルム) 甲第11号証(実願昭63-102786号(実開平2-25643号) のマイクロフィルム) を提出した。 (3)平成21年1月27日付けで、本件発明1及び2は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1及び2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第123条第1項第2号に該当するため、無効とするとの審決がなされた。 なお、上記審決において、周知技術を示す周知例として、特開平7-47335号公報(以下「乙第1号証」という。)及び実願昭59-133371号(実開昭61-47347号)のマイクロフィルム(以下「乙第2号証」という。)を挙げている。 (4)この審決を不服として、被請求人は審決の取消を求めて平成21年3月6日に知財高裁に出訴するとともに、平成21年5月11日に特許庁に対し本件特許についての訂正審判を請求したため、知財高裁により、特許法第181条第2項に基づく審決取消の決定が平成21年5月22付けでなされ、事件は特許庁に差し戻された。 (5)事件の差戻し後、特許法第134条の3第5項の規定により、訂正審判の請求書に添付された訂正明細書を援用した訂正請求がなされたものとみなし、これに対して、無効審判請求人より、平成21年7月9日付けで弁駁書が提出された。 上記弁駁書において、該訂正請求による訂正は訂正要件を満たしていない、仮に訂正要件を満たすとしても、訂正明細書の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号、並びに特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないとの主張がなされた。 特に、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないことの証拠として、上記の甲第2?6号証、甲第10号証及び乙第1号証を再び挙げるとともに、新たに 丙第2号証(実願平4-30416号(実開平5-83190号)の CD-ROM) 丙第3号証(実願平4-85293号(実開平6-47495号)の CD-ROM) 丙第4号証(実開平3-86946号公報) 丙第5号証(実開平3-78842号公報) 丙第6号証(実開平4-82151号公報) 丙第7号証(特許第2627459号公報) 丙第8号証(実願平4-84482号(実開平6-47501号)の CD-ROM) を提出し、請求人は「例えば、甲第2,6,10号証に丙第2号証,丙第7号証の公報を組み合わせることにより、本件の訂正発明は、発明の進歩性を有するものではないことは明らかである。」(弁駁書第11頁第2?3行)と主張している。 (6)上記無効審判請求人による主張は、請求の理由の要旨を変更する補正事項を含むものであるところ、該補正事項は、上記の訂正請求によって補正する必要が生じた事項であると認められ、特許法第131条の2第2項第1号に該当するので、その補正を許可するとともに、同法第134条第2項に基づき、被請求人に対し答弁書を提出する機会を与えた。 (7)平成21年8月17日に、被請求人は第2答弁書を提出するとともに、再度の訂正請求書を提出して訂正を求めた。(先の訂正請求は、特許法第134条の2第4項の規定により、取り下げたものとみなされる。) 当該訂正の内容は、特許請求の範囲を下記のとおり訂正することを求めるものである。(以下「本件訂正」という。) 「【請求項1】 足場板又は建枠をローラで支持して送る送り機構と、前記送り機構で送られる足場板又は建枠に対し、旋回する打撃輪でケレン処理を施すよう上下に配置したドレッサーとからなり、前記ドレッサーは、回転駆動軸を中心とする同心円上に複数の旋回軸を配置し、各旋回軸にその内径が旋回軸より大径の多数の打撃輪を径方向に移動自在となるよう旋回軸の軸方向に密に並べて取り付けたものであり、そのドレッサーのうち下部に位置するドレッサーを上部に位置するドレッサーに対して回転の停止又は減速が別個に行えるようにして、前記建枠のケレン時には、前記送り機構で送られる建枠に対し、上下のドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回させて、その打撃により建枠の上下外周面をケレン処理し、前記足場板のケレン時には、前記上部に位置するドレッサーに足場板の表面を対向させてドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回し、その打撃により前記送り機構で送られる足場板の表面をケレン処理し、かつ足場板の下面に損傷を与えないように前記下部に位置するドレッサーを回転停止又は減速するようにした足場板と建枠の兼用ケレン装置。 (以下「訂正発明1」という。) 【請求項2】 前記足場板が足場板本体の両端部で両側の位置にフックを固定し、このフックの側面にピンでロックプレートを上下に可動となるよう取付けてこのピンの頭部が前記ロックプレートの側面に突出したものであり、前記建枠が両側縦パイプを上部横パイプで結合してなるものであり、前記上部に位置するドレッサーを、足場板又は建枠の厚みに対応し、かつ、前記打撃輪の内径がピンの頭部に係合するのを防止するために、前記打撃輪の最大配置径時に前記打撃輪の内径と外径差による幅の部分が前記ピンの頭部に対応するように上下に位置調整自在としたことを特徴とする請求項1に記載の足場板と建枠の兼用ケレン装置。 (以下「訂正発明2」という。)」 2.訂正の可否に対する判断 本件訂正のうち、訂正発明1についての訂正事項について検討する。 訂正発明1についての訂正事項は、本件発明1を特定するために必要な事項である「ドレッサー」について、「前記ドレッサーは、回転駆動軸を中心とする同心円上に複数の旋回軸を配置し、各旋回軸にその内径が旋回軸より大径の多数の打撃輪を径方向に移動自在となるよう旋回軸の軸方向に密に並べて取り付けたものであ」ると限定し、本件発明1において「少なくとも一方のドレッサーを他方のドレッサーに対して回転の停止又は減速が別個に行える」とあったものを「下部に位置するドレッサーを上部に位置するドレッサーに対して回転の停止又は減速が別個に行える」と限定するとともに、「前記建枠のケレン時には、前記送り機構で送られる建枠に対し、上下のドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回させて、その打撃により建枠の上下外周面をケレン処理し、」足場板のケレン時には「上部に位置する」ドレッサーに足場板の表面を対向させて「ドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回し、その打撃により前記送り機構で送られる足場板の表面をケレン処理」し、かつ「足場板の下面に損傷を与えないように」前記「下部に位置する」ドレッサーを回転停止又は減速するようにしたと限定するものであって、また、上記訂正事項は、本件特許の設定登録時における明細書の段落【0031】?【0033】、【0037】、【0041】及び図面の記載に基づくものである。 したがって、訂正発明1についての訂正事項は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 次に、本件訂正のうち、訂正発明2についての訂正事項について検討する。 訂正発明2についての訂正事項は、本件発明2を特定するために必要な事項である「足場板」について、「足場板本体の両端部で両側の位置にフックを固定し、このフックの側面にピンでロックプレートを上下に可動となるよう取付けてこのピンの頭部が前記ロックプレートの側面に突出したもの」であると限定し、同じく「建枠」について「両側縦パイプを上部横パイプで結合してなるもの」であると限定し、「上部に位置するドレッサー」について、足場板又は建枠の厚みに対応することに加え、さらに「打撃輪の内径がピンの頭部に係合するのを防止するために、前記打撃輪の最大配置径時に前記打撃輪の内径と外径差による幅の部分が前記ピンの頭部に対応するように」上下に位置調整自在としたと限定するものであって、また、上記訂正事項は、本件特許の設定登録時における明細書の段落【0012】、【0014】、【0036】及び図面の記載に基づくものである。 したがって、訂正発明2についての訂正事項は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするとともに、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。 3.第2答弁書における被請求人の主張 被請求人は、第2答弁書において、訂正発明1及び2が、以下の理由により進歩性を有する旨主張している。 (1)訂正発明1の進歩性についての主張 (1)-1) 訂正発明1では、下部ドレッサーに限って回転の停止又は減速を行うので、回転停止又は減速した下部ドレッサーの各打撃輪は旋回軸から垂れ下がって足場板の下面から遠ざかるため、足場板下面に打ち付けることはない。 一方、足場板の裏面側に対向する一方のドレッサーが上部ドレッサーである場合、回転停止した上部ドレッサーの各打撃輪が旋回軸から垂れ下がって足場板の裏面(下面)に接触し、裏面に打ち付けて損傷を与えるという不都合がある。 下部ドレッサーに限って回転の停止又は減速を行うことについては、各引用例のいずれにも記載はなく、示唆するところもない。(「審判第2答弁書」第4頁第8行?第5頁第14行参照) (1)-2) 甲2号証発明は建枠専用のケレン装置であるから、建枠のケレン時に上下に設置したケレン装置は同時に駆動し、同時に減速・停止するのが技術常識である。一方のみを減速・停止すべき必要性も必然性もない。甲第6号証に記載の発明は上面のみケレン装置を有するものであるから、その前提を欠く。 「駆動回転がそれぞれ別個の電動モータによって行われる一対の装置において、一方の装置を他方に対し、別個に回転の停止・減速が行えるようにすることは、電動モータで駆動される装置の技術分野において一般に周知かつ汎用の技術であり、装置の設計に際し通常行われていることである」としても、この周知技術を建枠専用のケレン装置である甲第2号証発明と組み合わせたり、甲第6号証の上面のみケレン処理をする足場板と建枠の兼用ケレン装置と組み合わせる動機付けはない。 足場板は裏面側はケレン処理を行わなければよいという課題は、上下にケレン装置を有する仮想の「建枠と足場板の兼用ケレン装置」のみが有する格別の課題であり、この甲第2号証や甲第6号証のケレン装置にない格別の課題を解決した訂正前の本件発明1及び訂正発明1は、単に甲第2号証発明に周知技術を適用したものではなく、当業者といえども容易に想到し得るものではない。(「審判第2答弁書」第6頁第16行?第5頁第14行参照) (1)-3) 訂正発明1は、上下にケレン装置を有する足場板と建枠兼用のケレン装置であって、足場板のケレン時には、上部ドレッサー(「下部ドレッサー」の誤記と認める。)を回転停止又は減速することによって、足場板の表面(上面)側のみケレン処理を行うことができるという格別の効果を奏する。(「審判第2答弁書」第7頁第15?23行参照) (2)訂正発明2の進歩性についての主張 (2)-1) 足場板に設けたフックの側面に突出するピンの頭部に打撃輪の内径が係合するのを防止しなければならないという課題は、訂正発明2が、ドレッサーとして、打撃輪が旋回するものを採用したことによってはじめて生じたものであるから、当該課題やその解決手段は周知ではなく、甲第10号証や乙第2号証には、上部ドレッサーを上下に位置調整自在とすることについては記載されているが、上記課題やその解決手段については開示も示唆もない。 また、乙第1号証、乙第2号証、丙第7号証、丙第8号証のケレン装置は、多数の打撃輪を用いるドレッサーを使用した点で訂正発明2と共通するが、上部ドレッサーを上下に位置調整自在とすることによって、打撃輪が足場板のピンの頭部に係合するのを防止することについては何の記載も示唆もない。 したがって、訂正発明2は当業者といえども容易に想到することはできない。(「審判第2答弁書」第9頁第17行?第10頁第11行参照) (2)-2) 請求人は、訂正発明2の、打撃輪が足場板のピンの頭部に対応するように上下に位置調整しうる構成は、当業者が使用に応じて適宜行うものである旨主張するが、このような構成がなければ、使用者は当然位置調整できない。 このような位置調整機構は、各引用例には開示も示唆もない。(「審判第2答弁書」第16頁第4?12行参照) 4.甲第2号証、丙第7号証、甲第6号証に記載された事項及び発明 (1)甲第2号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。 a.「第1図は、枠組足場材再生システムの概略構成を示す斜視図である。 この図において、1はケレン装置であり、搬送装置としてのローラーコンベア2により、枠組足場材3…を倒れ姿勢で搬送し、その枠組足場材3…に付着した異物を掻き取って除去するように構成されている。」(第4欄第18?23行) b.「ケレン装置1は、第2図のケレン装置および起立装置を示す平面図、ならびに、第3図のケレン装置および起立装置を示す側面図それぞれに示すように、上下一対のケレン用回転体11,11の複数組と、回転ブラシ12,12とで構成され、両ケレン用回転体11,11それぞれには、回転軸芯方向および周方向それぞれに所定間隔を隔ててチェーン13…が取り付けられ、一方、回転ブラシ12,12それぞれには、回転軸芯方向および周方向それぞれに所定間隔を隔ててワイヤーブラシが取り付けられ、ローラーコンベア2で搬送されてくる枠組足場材3…を両ケレン用回転体11,11間に送り込み、両ケレン用回転体11,11それぞれを電動モータ14によって駆動回転するに伴い、チェーン13…それぞれにより、倒れ姿勢で搬送される枠組足場材3を打撃し、枠組足場材3にこびりついたモルタルなどの異物を掻き取り、その掻き取り後に枠組足場材3から離れずに付着したままになっている粉塵などの異物を回転ブラシ12,12によって良好に除去するように構成されている。」(第4欄第35行?第5欄第2行) c.「前記ケレン用回転体11…それぞれは、第4図のケレン装置の要部の一部切欠正面図、および、第5図の断面図それぞれに示すように、電動モータ14に連動連結されて駆動回転される回転軸20に、外周に環状溝が形成された多数のディスク21…が外嵌して挿入されるとともにキー22によって一体回転自在に連結され、かつ、ディスク21…それぞれの周方向の4箇所において、チェーン13の一端側がピン23により連結されて構成されている。」(第5欄第12?19行) そして、摘記事項bより、枠組足場材3のケレン時には、上下一対の両ケレン用回転体11,11それぞれを駆動回転させ、上下のチェーン13…それぞれにより、倒れ姿勢の枠組足場材3を打撃してケレン処理がなされるのであるから、このとき枠組足場材3の上下外周面がケレン処理されるものであることは明らかである。 したがって、上記摘記事項及び図2?4を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2号証発明」という。)が記載されていると認められる。 「枠組足場材3をローラーコンベア2により搬送する搬送装置と、搬送装置で搬送される枠組足場材3に対し、回転するチェーン13…それぞれにより打撃してモルタルなどの異物を掻き取るよう上下に配置したケレン用回転体11,11とを備え、ケレン用回転体11,11は、回転軸芯方向および周方向それぞれに所定間隔を隔ててチェーン13が取り付けられたものであり、両ケレン用回転体11,11それぞれを電動モータ14によって駆動回転し、枠組足場材3のケレン時には、ローラーコンベア2で搬送されてくる枠組足場材3に対し、両ケレン用回転体11,11を回転させ、チェーン13の打撃により枠組足場材3の上下外周面をケレン処理する、枠組足場材用のケレン装置。」 (2)丙第7号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。 d.「本発明は、建築工事の仮説(「仮設」の誤記と認める。)足場に使用される足場枠や足場板等に付着する付着物、例えばコンクリートや塗料を除去する足場研掃機に関するものである。」(第1欄第15行?第2欄第2行) e.「鎖を使用した足場研掃機は主に衝撃による剥離を行なうため、足場枠等に強固に付着したコンクリートや塗料は除去されず、また隅々まできれいに除去することができない問題点を有していた。 本発明は、従来技術の有する上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、足場枠等に強固に付着したコンクリートや塗料を隅々まできれいに除去することができる足場研掃機を提供しょうとするものである。」(第3欄第4?12行) f.「本発明に係る足場研掃機にあっては、架台上に配設した移送手段上に足場枠等の被研掃物を載置して所望の送り速度で一端部から他端部に向けて移送する。移送される被研掃物はその上下位置に配置した一対の回転軸の間を通過する。前記回転軸は電動機により回転駆動されており、この回転軸と一体になって研掃用リングを多数装着した軸体も回転している。そして前記多数の研掃用リングが上下両方向から被研掃物に衝突して付着物を掻き取るのである。この研掃用リングは軸体に対して遊嵌状態で装着しているため被研掃物に衝突する度に反動で後方に退きながら回転しており、被研掃物の表面に適当な力で衝撃を与えながら付着物を擦り落とすのである。」(第3欄第26?37行) g.「足場研掃機は架台1上の一端部から他端部へと被研掃物を移送する移送手段2と、該移送手段2によって移送される被研掃物の付着物を除去する研掃部3から構成されている。 移送手段2は、研掃部3前後の架台1両側部に立設した支持板4間に支持ローラ5を回転自在に軸受で軸支し、夫々の支持ローラ5の一端部に装着したスプロケット6にチェーン7を巻回すると共に、支持ローラ駆動用の電動機8のスプロケット9と支持ローラ5の一つに装着したスプロケット10にチェーン11を巻回し、電動機8の駆動により支持ローラ5を回転し、投入側から送り込んだ被研掃物Aを回転する支持ローラ5に次々と乗り移して排出側まで移送する。」(第3欄第49行?第4欄第11行) h.「研掃部3は、架台1を跨ぐように支持枠16を配設し、該支持枠16内に被研掃物Aが通過できる間隔を隔てて上下に平行に、かつ被研掃物Aの移送方向に対し略ハ字形状に一対の研掃具17、17′を配置してある。研掃具17、17′は支持枠16の両側部と中央部付近に配設した軸受支持材18、18′に固定した軸受19により回転軸20の両端部を回転自在に軸支しており、その回転軸20の両端部にまた必要に応じて中央部に適宜半径の円板21を固着し、該円板21間に回転軸20と平行に複数本の軸体22を固定している。そして軸体22には薄板から形成したドーナツ状の研掃用リング23が多数個装着してある。この研掃用リング23は内け(「内径」の誤記と認める。)が軸体22の外径より大きくて軸体22に遊嵌状態で取り付けてあり、回転軸20を回転していないときには軸体22に吊り下がった状態となっている。また研掃用リング23は軸体22にできるだけ多く装着するが隣接する研掃用リング23により圧迫されずに自由に軸体22回りに回転できるようにしている。24は回転軸20を回転駆動する電動機であり、支持枠16上の電動機台25上に載置固定してあり、該電動機24の駆動軸に装着したスプロケット26と回転軸20に装着したスプロケット27にチェーン28を巻回し、電動機24の駆動により回転軸20を回転駆動することにより研掃具17、17′を回転している。 しかして、足場研掃機にて被研掃物の付着物を除去するときには、先ず移送手段2の電動機8を駆動して各支持ローラ5を回転駆動すると共に、研掃部3の電動機24を駆動して研掃具17、17′を回転させる。そして被研掃物Aを足場研掃機の一端部の支持ローラ5に載せながら所望の送り速度で送り込む。被研掃物Aは押えローラ12によって適当な力で押えられながら上下に配置した研掃具17、17′の間を通過する。研掃具17、17′は高速度で回転しており、研掃具17、17′の研掃用リング23が通過する被研掃物Aに対し衝突し上下両方向から被研掃物に衝撃を与えて付着物を擦り落とすのである。この研掃用リング23は軸体22に対して遊嵌状態で装着しているため被研掃物Aに衝突する度に後方に退きながら被研掃物の表面に適当な力で接触して付着物を擦り落とすものであり、また被研掃物の凹凸形状に追従して表面の擦りつけることができる。」(第4欄第19行?第5欄第6行) そして、摘記事項h の「回転軸20と平行に」固定された「複数本の軸体22」は、第4図より、「回転軸20」を中心とする同心円上に配置されていることが判る。 また、摘記事項h の「研掃用リング23」は「軸体22に遊嵌状態で取り付けて」あるとの記載及び「研掃用リング23」は「被研掃物Aに衝突する度に後方に退きながら被研掃物の表面に適当な力で接触」するとの記載より、「研掃用リング23」は「径方向に移動自在」となるよう取り付けられていることは明らかである。 したがって、上記摘記事項及び第1?4図を総合すると、丙第7号証には、次の発明(以下「丙7号証発明」という。)が記載されていると認められる。 「足場板や足場枠の被研掃物Aを支持ローラ5で支持して送る移送手段2と、移送手段2で送られる足場板又は足場枠に対し、回転する研掃用リング23で付着物を除去するよう上下に配置した一対の研掃具17,17'とからなり、前記研掃具17,17'は、回転軸20を中心とする同心円上に複数本の軸体22を配置し、各軸体22にその内径が軸体22の外径より大きい多数の研掃用リング23を径方向に移動自在となるよう軸体22にできるだけ多く装着したものであり、被研掃物Aの付着物を除去する時には、前記移送手段2で送られる被研掃物Aに対し、上下の研掃具17,17'を高速度で回転させ、研掃用リング23が被研掃物Aに対し衝突し上下両方向から被研掃物に衝撃を与えて付着物を擦り落とす、足場板や足場枠の研掃機。」 (3)甲第6号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。 i.「建枠用と足場板用のケレン装置がそれぞれ別であると、設備コストが高くつくと共に、広い設置スペースが必要になるという問題がある。 そこでこの考案は、上記のような問題点を解決するため、打撃と掻取りの作業が連続して行なえ、建枠と足場板のケレンが単一の構造で実施でき、設備コスト及び設置スペースの削減が図れるコンクリート付着物のケレン装置を提供することを課題としている。」(明細書第2頁第20行?第3頁第9行) j.「第1のドレッサー機構2は、ワークAに対して上面側に打撃を与えることにより、付着コンクリートの除去を行なうものであり、第3図乃至第5図はその具体的な構造を示している。」(明細書第6頁第3?6行) k.「第2、第3ドレッサー機構3、4を取付けた調整台51は、第6図乃至第8図に示す如く、フレーム7に高さ調整機構71を介して四隅が支持され、ワークAに対するチップ57の接触量を第13図の如く自由に変化させることができるようになっている。」(明細書第12頁第12?17行) l.「第1のドレッサー機構2は、第4図aに矢印Bで示す如く反時計方向に回転し、各可撓性掻取部材35は同図一点鎖線で示す如く、遠心力によって最大径となり、直下を通過するワークAに対して一定化した姿勢の掻取部材35の先端側で打撃し、付着しているコンクリートを剥離する。」(明細書第14頁第4?9行) m.「このように、第1ドレッサー機構2と第2、第3ドレッサー機構3、4は、平面用と曲面用の異なったケレン機能を有するため、足場板と建枠の何れに対してもケレン作業を行なうことができ、しかもコンクリートと樹脂等の両方を除去できる。 なお、建枠に対するケレンは、一面側のケレンを行なった後反転させて他面側のケレンを行なう。」(明細書第15頁第20行?第16頁第6行) 5.当審の判断 (1)訂正発明1についての検討 (1)-1)甲2号証発明との対比 訂正発明1と甲2号証発明とを対比する。 甲2号証発明における「枠組足場材3」は、訂正発明1における「建枠」に相当し、同様に、「ローラーコンベア2により搬送する搬送装置」は「ローラで支持して送る送り機構」に、「打撃してモルタルなどの異物を掻き取る」は「ケレン処理を施す」に、「ケレン用回転体11,11」は「ドレッサー」に、「ローラーコンベア2で搬送されてくる枠組足場材3」は「送り機構で送られる建枠」に、それぞれ相当する。 また、摘記事項bにおける「両ケレン用回転体11,11それぞれを電動モータ14によって駆動回転する」との記載及び第4図より、甲2号証発明は、上下の「ケレン用回転体11,11(ドレッサー)」の駆動回転が、別個の電動モータ14によってそれぞれ行われていることは明らかである。 さらに、甲第2号証には「両ケレン用回転体11,11」について特に回転の減速を行うことについての記載はないから、甲2号証発明における「両ケレン用回転体11,11」は、訂正発明1でいう「正規の速度」で駆動回転されているものと解される。 加えて、甲2号証発明における「チェーン13」と訂正発明1における「打撃輪」とは、「ドレッサー(ケレン用回転体11,11)」に多数取り付けられ、「回転時に発生する遠心力で旋回させて、その打撃により建枠(枠組足場材3)の上下外周面をケレン処理する」、旋回する「打撃部材」である点で共通している。 すると、訂正発明1と甲2号証発明とは、次の一致点及び相違点を有するものである。 <一致点> 建枠をローラで支持して送る送り機構と、前記送り機構で送られる建枠に対し、旋回する打撃部材でケレン処理を施すよう上下に配置したドレッサーとからなり、前記ドレッサーは、多数の打撃部材を取り付けたものであり、上下のドレッサーの駆動回転をそれぞれ行い、前記建枠のケレン時には、前記送り機構で送られる建枠に対し、上下のドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃部材が旋回して、その打撃により建枠の上下外周面をケレン処理する、ケレン装置。 <相違点> 1) 訂正発明1は、「足場板と建枠の兼用ケレン装置」であるのに対し、甲2号証発明は「建枠(枠組足場材)用のケレン装置」である点。 2) 「打撃部材」を取り付けた「ドレッサー(ケレン用回転体11,11)」が、訂正発明1では「回転駆動軸を中心とする同心円上に複数の旋回軸を配置し、各旋回軸にその内径が旋回軸より大径の多数の打撃輪を径方向に移動自在となるよう旋回軸の軸方向に密に並べて取り付けたもの」であり、ケレン時にドレッサーを回転させると、「その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回」して、その打撃によりケレン処理するものであるのに対し、甲2号証発明では「チェーン13が取り付けられたもの」であり、チェーン13の打撃によってケレン処理するものである点。 3) 駆動回転がそれぞれ行われる上下のドレッサー(ケレン用回転体)が、訂正発明1では「下部に位置するドレッサーを上部に位置するドレッサーに対して回転の停止又は減速が別個に行える」ようにして、「足場板のケレン時」には、「上部に位置するドレッサーに足場板の表面を対向させてドレッサーを正規の速度で回転させ」て「足場板の表面をケレン処理」し、かつ「足場板の下面に損傷を与えないように前記下部に位置するドレッサーを回転停止又は減速するようにした」ものであるのに対し、甲2号証発明は足場板のケレンは行わないものであって、そのように「下部に位置するドレッサーを上部に位置するドレッサーに対して回転の停止又は減速が別個に行える」ようにしたものであるか否か不明である点。 (1)-2)訂正発明1についての判断 上記相違点について検討する。 <相違点 1) について> 丙第7号証と同一の出願人による丙第8号証の段落【0002】に、「例えば特願平2-124414号(丙第7号証の出願番号)に示されるような足場枠と兼用の研掃機に足場板を送り込み、足場板表面の付着物を取り除いて次回の使用に備えるようにしている。」と記載されていることからも、丙7号証発明における「足場板や足場枠の研掃機」が、「足場板と建枠の兼用ケレン装置」であることは当業者にとって明らかである。 したがって、建枠と足場板のケレンを単一の装置に兼用させて行うことは、上記丙第7号証、あるいは甲第6号証の摘記事項iにも記載されているように、当該技術分野において従来より周知の技術であるから、甲2号証発明に上記周知技術を適用し、ケレン装置を「建枠」だけでなく「足場板」のケレンも行う「足場板と建枠の兼用ケレン装置」として用いることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。 <相違点 2) について> 訂正発明1と丙7号証発明とを対比する。 丙7号証発明における「足場板や足場枠の被研掃物A」は、訂正発明1における「足場板又は建枠」に相当し、同様に、「支持ローラ5」は「ローラ」に、「移送手段2」は「送り機構」に、「回転する」は「旋回する」に、「研掃用リング23」は「打撃輪」に、「付着物を除去する」は「ケレン処理を施す」に、「研掃具17,17'」は「ドレッサー」に、「回転軸20」は「回転駆動軸」に、「軸体22」は「旋回軸」に、「内径が軸体22の外径より大きい」は「内径が旋回軸より大径」に、「研掃用リング23」は「打撃輪」に、「軸体22にできるだけ多く装着した」は「旋回軸の軸方向に密に並べて取り付けた」に、「付着物を除去する時」は「ケレン時」に、「(研掃用リング23が)被研掃物Aに対し衝突し…被研掃物に衝撃を与えて付着物を擦り落とす」は「(打撃輪が)その打撃により…ケレン処理する」に、それぞれ相当する。 また、<相違点 1) について>で検討したように、丙7号証発明における「足場板や足場枠の研掃機」は、訂正発明1の「足場板と建枠の兼用ケレン装置」に相当するものである。 さらに、丙第7号証には、「研掃具17,17'は高速度で回転しており」(摘記事項h参照)と記載されるのみで、他に「研掃具17,17'」の回転速度についての記載はないから、丙7号証発明における「研掃具17,17'を高速度で回転させ」るとは、訂正発明1における「上下のドレッサーを正規の速度で回転させ」るに相当するものといえる。 そして、丙7号証発明においても、「研掃用リング23」は、訂正発明1における「打撃輪」と同様に、「回転軸20(回転駆動軸)を中心とする同心円上」に配置された「軸体22(旋回軸)」に「径方向に移動自在」に装着されているのであるから、「付着物を除去する時(ケレン時)」に、回転軸20(旋回軸)を中心とする研掃具17,17'(ドレッサー)の「高速度(正規の速度)」の回転によって、「その回転時に発生する遠心力で研掃用リング23(打撃輪)が軸体22(旋回軸)から最大配置径となって旋回」することは、当業者にとり明らかである。 したがって、丙7号証発明を訂正発明1の用語を用い、訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、次のようになる。 「足場板又は建枠(足場板や足場枠の被研掃物A)をローラ(支持ローラ5)で支持して送る送り機構(移送手段2)と、前記送り機構(移送手段2)で送られる足場板又は建枠に対し、旋回する打撃輪(研掃用リング23)でケレン処理を施すよう上下に配置したドレッサー(研掃具17,17')とからなり、前記ドレッサー(研掃具17,17')は、回転駆動軸(回転軸20)を中心とする同心円上に複数の旋回軸(軸体22)を配置し、各旋回軸(軸体22)にその内径が旋回軸(軸体22)より大径の多数の打撃輪(研掃用リング23)を径方向に移動自在となるよう旋回軸(軸体22)の軸方向に密に並べて取り付けたものであり、前記足場板又は建枠のケレン時には、前記送り機構(移送手段2)で送られる足場板又は建枠に対し、上下のドレッサー(研掃具17,17')を正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪(研掃用リング23)が旋回軸(軸体22)から最大配置径となって旋回し、その打撃により上下両方向からケレン処理する、足場板と建枠の兼用ケレン装置(足場板や足場枠の研掃機)。」 そして、上記丙7号証発明は、「鎖を使用した足場研掃機は主に衝撃による剥離を行なうため、足場枠等に強固に付着したコンクリートや塗料は除去されず、また隅々まできれいに除去することができない」(摘記事項e参照)という問題点を解決するために、「鎖」に換えて「打撃輪(研掃用リング23)」の打撃によるケレン処理を採用したものである。 したがって、上記丙第7号証の開示に接した当業者がこれを甲第2号証発明に適用し、鎖(チェーン13)に換えて、丙7号証発明における打撃輪を採用して、ドレッサーを「回転駆動軸を中心とする同心円上に複数の旋回軸を配置し、各旋回軸にその内径が旋回軸より大径の多数の打撃輪を径方向に移動自在となるよう旋回軸の軸方向に密に並べて取り付けたもの」とし、ケレン時にドレッサーを回転させると、「その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回」してその打撃によりケレン処理を行う構成、すなわち、相違点 2) に係る構成を具備させることに、格別の困難性は見出せない。 <相違点 3) について> 足場板のケレンを行う際に、足場板の表面を上部に配置したドレッサーに対向させ、上部ドレッサーにより足場板をケレンすることは、甲第6号証、丙第8号証、乙第1号証、乙第2号証にも記載のように、当該技術分野において周知かつ汎用の技術である。 また、建枠にはその上下面の両方のケレンが必要であるのに対し、足場板には表面(上面)側のみケレンを行えばよいことは、甲第6号証の摘記事項j、mにも記載されるように、当該技術分野における技術常識であると言える。 一方、駆動回転がそれぞれ別個の電動モータによって行われる一対の装置において、一方の装置を他方に対し、別個に回転の停止・減速が行えるようにすることは、電動モータで駆動される装置の技術分野において一般に周知かつ汎用の技術であり、装置の設計に際し通常行われていることである。 したがって、別個の電動モータによってそれぞれ駆動回転される一対の上下ドレッサーを備えた甲2号証発明のケレン装置によって「足場板」についてもケレンを行うに際して、足場板の表面を上部ドレッサーに対向させると共に、不必要なケレン動作によって「足場板の下面に損傷を与えないように」、下部ドレッサーの回転停止又は減速を行うようにすることは、上記足場板のケレンについての周知技術、及び電動モータで駆動される装置についての汎用技術にならい、当業者であれば格別の困難なく為し得るものである。 なお、被請求人は第2答弁書において、別個の電動モータによって駆動回転される一対の装置において、一方の装置を他方に対し別個に回転の停止・減速が行えるようにすることが周知であるとしても、足場板の裏面側の不要なケレン処理を行わないという課題は、上下にケレン装置を有する仮想の「建枠と足場板の兼用ケレン装置」のみが有する格別の課題であるから、この周知技術を建枠専用のケレン装置である甲2号証発明と組み合わせたり、甲第6号証の上面のみケレン処理をする足場板と建枠の兼用ケレン装置と組み合わせる動機付けはない旨主張している(上記3.(1)-2)参照)。 しかしながら、上下にケレン装置を有する「建枠と足場板の兼用ケレン装置」が、丙7号証発明に示されるように、仮想のものではなく当該技術分野において従来より周知であることに鑑みても、上下のドレッサーを別個のモータで駆動する甲2号証発明に、ケレン装置を足場と建枠の兼用とする周知技術及び一対の電動モータの回転駆動を別個に行えるようにする周知技術を併せて適用し、甲2号証発明のケレン装置により足場板のケレンを行い、このときケレン不要となる下部ドレッサーを回転停止又は減速可能とすることは、当業者であれば容易に想到し得るものであるから、被請求人の上記主張は採用できない。 そして、甲2号証発明に丙7号証発明及び周知技術を適用した訂正発明1による効果も、予想される範囲内のものであって、何ら格別のものとは言えない。 (被請求人が第2答弁書において特に主張している、訂正発明1が相違点 3) に係る「下部ドレッサーに限って回転の停止又は減速を行う」構成を備えたことにより、足場板の表面(上面)側のみケレン処理を行うことができるという効果、下部ドレッサーの各打撃輪が旋回軸から垂れ下がってケレン不要の足場板の下面から遠ざかるとの効果、及び上部ドレッサーの回転の停止又は減速するものとした時に上部ドレッサーの各打撃輪が旋回軸から垂れ下がってケレン不要の足場板の裏面を打ち付けるような不都合がないという効果(上記3.(1)-1)、3)参照)についても、当然予想される範囲内のものである。) したがって、訂正発明1は、甲2号証発明、丙7号証発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)訂正発明2についての検討 (2)-1)甲2号証発明との対比 訂正発明2は、上記5.(1)-1)で甲2号証発明と対比した訂正発明1に、 「前記足場板が足場板本体の両端部で両側の位置にフックを固定し、このフックの側面にピンでロックプレートを上下に可動となるよう取付けてこのピンの頭部が前記ロックプレートの側面に突出したものであり、前記建枠が両側縦パイプを上部横パイプで結合してなるものであり、前記上部に位置するドレッサーを、足場板又は建枠の厚みに対応し、かつ、前記打撃輪の内径がピンの頭部に係合するのを防止するために、前記打撃輪の最大配置径時に前記打撃輪の内径と外径差による幅の部分が前記ピンの頭部に対応するように上下に位置調整自在とした」 という限定を付加したものである。 そこで、訂正発明2と甲2号証発明とを対比する。 甲第2号証の第1、2図には、枠組足場材3が、両側縦材を上部横材で結合したものであることが示されており、また、枠組足場材3に軽量のパイプ材を用いることは、当該技術分野において技術常識であることから、甲2号証発明においても、ケレンする枠組足場材(建枠)が「両側縦パイプを上部横パイプで結合してなるもの」であることは当業者にとって明らかである。 したがって、訂正発明2と甲2号証発明との一致点については、訂正発明1と甲2号証発明との一致点及び「建枠が両側縦パイプを上部横パイプで結合してなるもの」である点であり、一方、訂正発明2と甲2号証発明との相違点は、訂正発明1と甲2号証発明との相違点 1) ? 3) 及び次の相違点 4) 、 5) となる。 <相違点> 4) 訂正発明2の「ケレン装置」によりケレンされる「足場板」が、「足場板本体の両端部で両側の位置にフックを固定し、このフックの側面にピンでロックプレートを上下に可動となるよう取付けてこのピンの頭部が前記ロックプレートの側面に突出したもの」であるのに対し、甲2号証発明は足場板のケレンは行わない点。 5) 上下に配置したドレッサー(ケレン用回転体)のうち、上部に位置するドレッサー(ケレン用回転体)を、訂正発明2では「足場板又は建枠の厚みに対応」し、かつ、「打撃輪の内径がピンの頭部に係合するのを防止するために、前記打撃輪の最大配置径時に前記打撃輪の内径と外径差による幅の部分が前記ピンの頭部に対応」するように「上下に位置調整自在とした」のに対し、甲2号証発明ではそのような構成とされていない点。 (2)-2)訂正発明2についての判断 相違点 1) ? 3) については、上記5.(1)-2)を参照。 <相違点 4) について> 「足場板本体の両端部で両側の位置にフックを固定し、このフックの側面にピンでロックプレートを上下に可動となるよう取付けてこのピンの頭部が前記ロックプレートの側面に突出した」足場板は、丙第2?5号証にも記載されるように、当該技術分野において周知かつ汎用されているものである。 そして、上記<相違点 1) について>で検討したように、甲2号証発明のケレン装置によって、「建枠」だけでなく「足場板」のケレンも行うことは当業者であれば容易に想到し得るものであって、その際に、上記周知の「足場板本体の両端部で両側の位置にフックを固定し、このフックの側面にピンでロックプレートを上下に可動となるよう取付けてこのピンの頭部が前記ロックプレートの側面に突出した」足場板をそのケレン対象とすることも、当業者であれば適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。 <相違点 5) について> 上部に位置するドレッサーを、ケレン・洗浄対象物の厚みに対応するように、あるいはケレン・洗浄対象物への接触量を調節できるように、上下に位置調整自在とすることは、建築仮設材のケレン・洗浄の技術分野において従来より周知であり(例えば、甲第6号証の摘記事項k、甲第10号証の明細書第6頁第18行?第7頁第2行等参照)、特に、打撃輪でケレンする上部のドレッサーについても、上下に位置調整することは、乙第2号証の明細書第8頁第2?6行に記載のように従来より周知であるから、甲2号証発明に丙7号証発明を組み合わせて打撃輪を備えさせた際に、該周知技術を適用して、足場板又は建枠の厚みに対応するように、打撃輪を有する上部のドレッサーを上下に位置調整自在とすることは、当業者が適宜為し得る程度の設計的事項である。 そして、そのように打撃輪を有する上部のドレッサーを上下に位置調整自在としたケレン装置を用いて、丙第2?5号証にも記載のように周知の、ピンの頭部が側面に突出した各種の足場板をケレンするときに、「打撃輪の内径がピンの頭部に係合するのを防止する」ために、「打撃輪の最大配置径時に前記打撃輪の内径と外径差による幅の部分が前記ピンの頭部に対応するように」、各種の足場板の様々なピンの頭部位置にそれぞれ合わせて、その都度上下に位置調整することは、装置を使用するに際しての不具合の発生を回避するために、当業者が現場において当然に行い得る事項であって、当業者であれば格別の困難なく想到し得るものである。 なお、被請求人は第2答弁書において、足場板に突出するピンの頭部に打撃輪の内径が係合するのを防止するという課題は、訂正発明2が、ドレッサーとして打撃輪が旋回するものを採用したことによってはじめて生じたものであるから、当該課題やその解決手段は周知ではない、打撃輪が足場板のピンの頭部に対応するように上下に位置調整しうる位置調整機構は、各引用例に開示も示唆もない旨、主張している(上記3.(2)-1)、2)参照)。 しかしながら、打撃輪が旋回するドレッサーを備えたケレン装置は、被請求人が乙第1号証、乙第2号証、丙第7号証、丙第8号証を示したように従来より周知のものであり、このような打撃輪を備えたケレン装置においては、足場板のピンに限らず、ケレン対象物の突起に打撃輪が係合するのを防止しなければならないことは、当業者であれば当然に想定し得る課題であると認められるし、打撃輪を備えた足場板のケレン装置についても、丙第7号証、乙第2号証に示されるように周知であるから、足場板のピン等の突出物に打撃輪の内径が係合するのを防止するという課題についても、従来より当業者に知られたものであったと解される。 そして、ケレン装置の上部ドレッサーを上下に位置調整自在とする技術が従来より周知であったことは上記のとおりであるから、打撃輪の内径が足場板の突出物に係合しないようにするために、該周知の、上下位置調整機構を利用することに、格別の困難性は見いだせない。 したがって、被請求人の上記主張は採用できない。 そして、甲2号証発明に丙7号証発明及び周知技術を適用したことにより奏される効果についても、予想される範囲内のものであって格別のものとは認められない。 よって、相違点 1) ? 5) について合わせ考えても、訂正発明2は、甲2号証発明、丙7号証発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に為し得たものである。 6. 結論 したがって、訂正発明1及び2は、甲2号証発明、丙7号証発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 足場板と建枠の兼用ケレン装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】足場板又は建枠をローラで支持して送る送り機構と、前記送り機構で送られる足場板又は建枠に対し、旋回する打撃輪でケレン処理を施すよう上下に配置したドレッサーとからなり、前記ドレッサーは、回転駆動軸を中心とする同心円上に複数の旋回軸を配置し、各旋回軸にその内径が旋回軸より大径の多数の打撃輪を径方向に移動自在となるよう旋回軸の軸方向に密に並べて取り付けたものであり、そのドレッサーのうち下部に位置するドレッサーを上部に位置するドレッサーに対して回転の停止又は減速が別個に行えるようにして、前記建枠のケレン時には、前記送り機構で送られる建枠に対し、上下のドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回させて、その打撃により建枠の上下外周面をケレン処理し、前記足場板のケレン時には、前記上部に位置するドレッサーに足場板の表面を対向させてドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回し、その打撃により前記送り機構で送られる足場板の表面をケレン処理し、かつ足場板の下面に損傷を与えないように前記下部に位置するドレッサーを回転停止又は減速するようにした足場板と建枠の兼用ケレン装置。 【請求項2】前記足場板が足場板本体の両端部で両側の位置にフックを固定し、このフックの側面にピンでロックプレートを上下に可動となるよう取付けてこのピンの頭部が前記ロックプレートの側面に突出したものであり、前記建枠が両側縦パイプを上部横パイプで結合してなるものであり、前記上部に位置するドレッサーを、足場板又は建枠の厚みに対応し、かつ、前記打撃輪の内径がピンの頭部に係合するのを防止するために、前記打撃輪の最大配置径時に前記打撃輪の内径と外径差による幅の部分が前記ピンの頭部に対応するように上下に位置調整自在としたことを特徴とする請求項1に記載の足場板と建枠の兼用ケレン装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、建築工事等で使用される仮設枠組足場の構成部材である足場板と建枠に対し、付着物の除去を行なう兼用のケレン装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 建築工事等で使用される仮設枠組足場は一定の間隔で対向させた建枠をブレースで結合すると共に、両建枠の上部横桟間に足場板を架設し、建枠上にジョイントを介して新たに建枠を順次継ぎ足すことによって必要な高さに構築される。 【0003】 上記仮設枠組足場は建築物の周囲に位置するため、足場板や建枠にコンクリートや塗料等が付着し、回収後の再使用時には、これら付着物を除去するケレン処理を行なう必要がある。 【0004】 従来、足場板や建枠に生じた付着物を除去するケレン作業を自動的に行えるようにするためのケレン装置はすでに知られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、従来のケレン装置は、足場板用及び建枠用のそれぞれ別個の専用構造になっていたため、足場板と建枠のケレン作業を自動化するには二種類の装置を購入して設置しなければならず、個々の装置の使用効率が極めて悪いだけでなく、広い設置スペースの確保が必要になり、設備投資に要する費用も高くつくという問題がある。 【0006】 そこで、この発明の課題は、足場板と建枠の何れに対してもケレン処理が自動的に行え、設備の効率的な使用が可能になると共に、設備コスト及び設置スペース確保の削減を実現できる足場板と建枠の兼用ケレン装置を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 上記のような課題を解決するため、この発明は、足場板又は建枠をローラで支持して送る送り機構と、前記送り機構で送られる足場板又は建枠に対し、旋回する打撃輪でケレン処理を施すよう上下に配置したドレッサーとからなり、前記ドレッサーは、回転駆動軸を中心とする同心円上に複数の旋回軸を配置し、各旋回軸にその内径が旋回軸より大径の多数の打撃輪を径方向に移動自在となるよう旋回軸の軸方向に密に並べて取り付けたものであり、そのドレッサーのうち下部に位置するドレッサーを上部に位置するドレッサーに対して回転の停止又は減速が別個に行えるようにして、前記建枠のケレン時には、前記送り機構で送られる建枠に対し、上下のドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回させて、その打撃により建枠の上下外周面をケレン処理し、前記足場板のケレン時には、前記上部に位置するドレッサーに足場板の表面を対向させて前記ドレッサーを正規の速度で回転させ、その回転時に発生する遠心力で打撃輪が旋回軸から最大配置径となって旋回し、その打撃により前記送り機構で送られる足場板の表面をケレン処理し、かつ足場板の下面に損傷を与えないように前記下部に位置するドレッサーを回転停止又は減速するようにした構成を採用したものである。 【0008】 この構成において、上記送り機構の投入側に投入用ガイド機構を設け、この機構の基準ガイドを位置調整自在とした構成を採用することができる。 【0009】 また、これらの構成において、上記送り機構のローラが、一方端部の位置に、建枠を誘導する鍔付きローラを備えている構成を採用することができる。 【0010】 【発明の実施の形態】 以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。 【0011】 図11(A)、(B)は、ケレン処理の対象となる足場板1と建枠2の構造と寸法関係を示している。 【0012】 先ず、足場板1は、図10の如く、アルミや鋼材を用いて形成した足場板本体3の両端部で両側の位置にフック4を固定し、フック4の側面にピン5で円弧状のロックプレート6を上下に可動となるよう取付けた構造を有し、ピン5の頭部5aがロックプレート6の側面に突出し、かつ、フック4はその上部が足場板本体3の上面よりも上方に突出した状態になっている。 【0013】 この足場板1には、図11(A)の如く、例えば幅W1が240mmの狭幅足場板と、この狭幅足場板を二枚並べた幅W2が500mmの広幅足場板と、幅W3が500mmの広幅足場板との三種類がある。 【0014】 次に、建枠2は、図11(B)の如く、両側縦パイプ7を上部横8パイプで結合し、更に縦パイプ7と横パイプ8を補強パイプで結合した構造を有し、幅寸法W4があらまし、600mm、760mm、900mm、1200mmの四種類が使用されている。 【0015】 図1乃至図10は、上記足場1及び建枠2に対してケレン処理を自動的に行なうケレン装置を示し、図1と図2のように、ケレン装置は、ケレン機11と、このケレン機11の投入側に設置したフリーローラテーブル12と、取出側に設置したフリーローラテーブル13と、前記投入側のフリーローラテーブル12上に設けたガイド機構14とによって構成されている。 【0016】 上記ケレン機11は、フリーローラテーブル12上から供給された足場板1又は建枠2を水平に支持して取出側に送る送り機構15と、この送機構15で送られる足場板1又は建枠2を挟む上下で前後方向に位置をずらして配置したドレッサー16、17とからなり、送り機構15は、適当な間隔で平面的に並べて配置した多数の送りローラ18と、送りローラ18群の上部に配置した複数のピンチローラ19a乃至19dとで形成されている。 【0017】 上記送りローラ18は、図4に示すように、フレーム20によって両端が支持されるシャフト21にパイプ状のローラ22を同軸心状に嵌合固定し、該ローラ22の外周面に合成樹脂やゴム等を用いた滑り止用被覆層23を設けて形成され、この送りローラ18のローラ22は、最大幅の建枠2の幅方向を支持することのできる長さになっている。 【0018】 各送りローラ18は、フレーム20に固定したモータ24で同一方向へ等速で回転するよう駆動され、これによって足場板1又は建枠2は、投入側から取出側へ送られることになる。なお、モータ24は逆転可能とし、足場板1又は建枠23をドレッサー16、17に対して往復通過させるようにしてもよい。 【0019】 前記ピンチローラは、投入側に位置する第1のピンチローラ19aと、下位ドレッサー16の上流側に近接して位置する第2、第3のピンチローラ19b、19cと、上位ドレッサー17の下流側に位置する第4のピンチローラ19dとからなり、第1と第4のピンチローラ19a、19dは、図3と図4に示すように、フレーム20の両側に取付けた揺動アーム25、25の先端間にシャフト26で回動自在となるよう支持され、揺動アーム25の先端に連結した押下部材27によって常時下降位置へ弾力的に押下げられ、かつ、上方への移動が可能となっている。 【0020】 また、第2と第3のピンチローラ19b、19cは図5と図6に示すように、フレーム20間に架設した回転軸28の両端部に各々相反する方向に突出する揺動アーム29をフリーに揺動するよう取付け、対向する揺動アーム29の先端間にピンチローラ19b、19cを回動自在に取付け、回転軸28をモータで駆動すると共に、回転軸28とピンチローラ19b、19cをスプロケットとチェン30で連動し、該ピンチローラ19b、19cを強制回転させると共に、揺動アーム29の先端に連結した押下部材31によって弾力的に押下げた構造になっている。 【0021】 上記ピンチローラ19a乃至19dは、送りローラ18上の足場板1又は建枠2を上部から押圧し、正確な位置での確実な送りが得られるようにすると共に、ケレン処理時に足場板1又は建枠2が打撃による反動ではね上がることのないように保持する役目を果している。 【0022】 前記ピンチローラ19a乃至19dは、図3や図4で示すように、送りローラ18と同様、シャフト26にパイプ状のローラ33を同軸心状に外嵌固定し、該ローラ33の外周面に滑り止用の被覆層34を設けた構造を有し、最大幅の建枠2に対応する長さになっている。 【0023】 各ピンチローラ19a乃至19dのローラ33には、長さ方向の中心部と一方端部の間に、足場板1のフック4を逃がすための三つの欠除部分35乃至37が設けられている。 【0024】 端部の欠除部分35と中間の欠除部分36は、240mm幅の足場板におけるフック4を逃がすためのものであり、また、両端部の欠除部分35と37は500mm幅の足場板のフックを逃がすために設けられ、ピンチローラ19a乃至19dは、上記欠除部分35乃至37によって、隣接する欠除部分間及び一方の端部に短尺ローラ38、39、40が形成されることになる。 【0025】 各ピンチローラ19a乃至19dにおいて、端部に位置する短尺ローラ38は鍔付きローラに形成され、移動する建枠2の縦パイプを軸方向に誘導する部分になっている。 【0026】 なお、送りローラ18群の上面で両側の位置に、最大幅の建枠2が収納まる対向間隔でガイド41a、41aが設けられている。 【0027】 上記ピンチローラ19a乃至19dにおいて、足場板1の送り機構15に対する供給位置が、欠除部分35乃至37の存在により、これに合うよう設定されると共に、建枠2の場合は、最も幅の狭い建枠を除いて一方の縦パイプ7が鍔付きの短尺ローラ38に対応するように供給し、最も幅の狭い建枠はピンチローラ19a乃至19bの欠除部分35乃至37がない部分で送るように供給位置を設定する。 【0028】 このような足場板1や建枠2の送り機構15に対する供給位置の位置決めは、フリーローラテーブル12上に設置したガイド機構14によって行われる。 【0029】 上記ガイド機構14は、フリーローラテーブル12の上部両側にガイド等に沿って該テーブル12の幅方向へ位置調整自在となるよう配置した長い棒状のガイド41と42によって形成され、ピンチローラ19a乃至19dの欠除部分35乃至37を設けた側に位置する基準ガイド41は、建枠2の縦パイプ7が鍔付きの短尺ローラ38と対応するように位置決めする位置と、足場板1の一方側縁を誘導し、一方のフック4が最短部の切除部分35と対応するように位置決めする位置とに位置調整が自在となる。(図9(A)、(B)参照) 他方のガイド42は、上記した基準ガイド41で一方側縁が誘導される足場板1や建枠2の他方側縁を誘導するように移動ストロークが大きく設定され、この他方ガイド42を最も外側に位置させた状態が最も幅の狭い建枠のガイド位置となる。 【0030】 前記送り機構15の下部に配置された第1のドレッサー16は、送り機構15で送られる建枠2の下面側にケレン処理を施すものであり、また、送り機構15の上面側に配置された第2のドレッサー17は、建枠2及び足場板1の上面にケレン処理を施すためのものである。 【0031】 両ドレッサー16、17は、各々別個のモータ43、44によって回転駆動されると共に、第1のドレッサー16は、第2のドレッサー17による足場板1のケレン処理時に足場板1の下面に損傷を与えないよう、回転を停止又は低速回転するよう第2のドレッサー17とは別個に制御できるようになっている。 【0032】 両ドレッサー16と17は構造的に等しく、フレーム20間に架設した回転駆動軸45に複数の円板46を固定し、対向する円板46間の外周寄りの位置に複数の旋回軸47を、回転駆動軸45を中心とする同心円上に等間隔で配置し、各旋回軸47に多数の打撃輪48を径方向に移動自在となるよう密に並べて取付けた構造になっている。 【0033】 前記打撃輪48は、その内径が旋回軸47よりも大径になり、ドレッサー16、17の回転時に発生する遠心力で打撃輪48は最大配置径となって旋回することになり、下部に位置する第1のドレッサー16は、通過する建枠2に対し、これに最接近した旋回軸47の打撃輪48の最大配置径が建枠2の縦パイプ7等の下部半径の位置になるよう設置され、建枠2の下側半分の表面にケレン処理を施すことになる。 【0034】 また、上部に位置する第2のドレッサー17は、上下に位置調整が自在となり、下降限位置にあるとき、通過する建枠2に対し、これに最接近した旋回軸の最大配置径が縦パイプ7等の上部半径の位置になるよう設置され、建枠2の上半部分の表面にケレン処理を施すようになっている。 【0035】 この第2のドレッサー17は、足場板1と建枠2の厚みの種類に対応して上下に位置調整を行なうため、図7と図8の如く、回転駆動軸45の両端がフレーム20のガイドに沿って上下可動となる軸受ブロック49、49で支持され、このブロック49の上下動とボルト等によるロックにより、高さの変更を可能にしている。 【0036】 また、この第2のドレッサー17は、足場板1のケレン処理時、図10に示すように、最大配置径時に内径と外径差による幅の部分がフック4に設けたピン5の頭部5aに対応するように上下の位置が設定され、これにより、打撃輪48の内径がピン5の頭部5aに係合するのを防止し、足場板1のケレン処理が支障なく行えるようになっている。 【0037】 この発明のケレン装置は、上記のような構成であり、先ず、足場板1をケレン処理する場合は、上部のドレッサー17を正規の速度で回転させると共に、下部のドレッサー16は停止又は低速回転させておき、また、ガイド機構14は、図1及び図9のように、一方のガイド41が鍔付き短尺ローラ38の延長線上に位置し、両ガイド41、42の間隔が足場板1の幅になるように位置調整する。 【0038】 送り機構15の送りローラ18を回転させた状態で、投入側のフリーローラテーブル12上から両側のガイド41、42に沿って、送り機構15に向けて足場板1を供給すると、該足場板1は、送りローラ18群で水平に支持され、かつピンチローラ19a乃至19dで押圧保持されながら前進し、足場板1がピンチローラ19a乃至19dを通過するとき、両端部の両側に設けたフック4の上端部がピンチローラ19a乃至19dに設けた欠除部分35乃至37を通り、該足場板1の送りが支障なく行える。 【0039】 足場板1は、上部ドレッサー17の下を通過するとき、旋回する打撃輪48によって打撃が与えられ、表面の付着物が剥離除去されることになり、ドレッサー17を通過した足場板1は、取出側のフリーローラテーブル13上の送り出される。 【0040】 このように、投入側から送り機構15に足場板1を供給すれば、自動的にケレン処理が行え、また、ガイド41と42の間隔を広幅足場板用に設定しておけば、幅の狭い足場板を二枚並列状に供給してケレン処理を行なうことができる。 【0041】 次に、建枠2のケレン処理を行なう場合は、図9(B)の如く、一方の基準ガイド41を最も端に位置させ、他方のガイド42を建枠2の幅に合わせて位置調整すると共に、下部のドレッサー16も正規の回転とする。 【0042】 ガイド41、42に沿って送り機構15に供給された建枠2は、先ず下半部外周面が下部のドレッサー16でケレン処理され、次に上部のドレッサー17で上半部外周面がケレン処理されて取出側に送り出されることになる。 【0043】 建枠2が移動するとき、一方縦パイプ7がピンチローラ19a乃至19dの鍔付き短尺ローラ38により誘導され、正確に直進することになる。 【0044】 なお、上部のドレッサー17は、ケレン処理せんとする足場板や建枠の厚み寸法に合わせ、予め高さ位置を調整しておくことにより、ケレンが確実に行なえると共に、足場板1のケレンの場合、フック4の側面に突出するピン5の頭部5aに対する打撃輪48の係合発生を防止できる。 【0045】 また、送り機構15において、下部の送りローラ18をピンチローラ19a乃至19dと同様欠除部分を設けた構造としてもよく、このようにすると、足場板1を上面下向きの供給で下位ドレッサー16によってケレン処理が施せることになる。 【0046】 【発明の効果】 以上のように、この発明によると、一台の装置で足場板と建枠の何れでもケレン処理が行なえ、装置を効率よく使用できると共に、ケレン処理の自動化に要する設備経費や設備スペースの削減が可能になり、足場板と建枠のケレン処理のコストダウンを図ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】ケレン装置の一部切欠平面図 【図2】同上の縦断正面図 【図3】第1のピンチローラ部分を示す拡大正面図 【図4】同上の縦断側面図 【図5】第2と第3のピンチローラの拡大した背面図 【図6】同上の横断平面図 【図7】同上の横断平面図 【図8】ケレン機の縦縦断側面図 【図9】(A)はガイド機構の足場板をガイドした状態を示す平面図、(B)は建枠をガイドした状態を示す平面図 【図10】足場板のフックと打撃輪の関係を示す説明図 【図11】(A)は足場板の幅の種類を示す説明図、(B)は建枠の幅の種類を示す説明図 【符号の説明】 1 足場板 2 建枠 3 足場板本体 4 フック 5 ピン 7 縦パイプ 11 ケレン機 12、13 フリーローラテーブル 14 ガイド機構 15 送り機構 16、17 ドレッサー 18 送ローラ 19a?19d ピンチローラ 20 フレーム 21 シャフト 22 ローラ 23 被覆層 24 モータ 25 揺動アーム 26 シャフト 27 押下部材 28 回転軸 29 揺動アーム 30 チエン 31 押下部材 33 ローラ 34 被覆層 35、35、36 欠除部分 38、39、40 短尺ローラ 41 ガイド 42 ガイド 43、44 モータ 45 回転駆動軸 46 円板 47 旋回軸 48 打撃輪 49 軸受ブロック |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-01-13 |
結審通知日 | 2009-01-16 |
審決日 | 2009-01-27 |
出願番号 | 特願平8-17809 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZA
(B08B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中川 隆司 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
佐野 遵 渋谷 知子 |
登録日 | 2005-05-13 |
登録番号 | 特許第3675922号(P3675922) |
発明の名称 | 足場板と建枠の兼用ケレン装置 |
代理人 | 特許業務法人 山広特許事務所 |
代理人 | 鎌田 文二 |
代理人 | 東尾 正博 |
代理人 | 東尾 正博 |
代理人 | 鎌田 文二 |
代理人 | 鎌田 直也 |
代理人 | 鎌田 直也 |