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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1225363 |
審判番号 | 不服2006-25231 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-06 |
確定日 | 2010-10-15 |
事件の表示 | 特願2001-298589「超音速ガス流を使用する粒子送達のための無針注射器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月26日出願公開、特開2002-179557〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年4月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1993年4月8日,英国、1993年9月6日,英国、1993年10月15日,英国、1993年12月21日,英国)を国際出願日とする特願平6-522877号の一部を平成13年9月27日に新たな特許出願としたものであって、拒絶理由通知に応答して平成18年7月12日付けの手続補正書が提出されたが、平成18年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年11月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正の概略 本件補正により、特許請求の範囲は、補正前の請求項1?68が補正後の請求項1?67と補正されたものであり、そのうち補正後の請求項1?31,33は、補正前の請求項1?31,34に対応するものであり、それぞれ以下のとおりである。補正前の請求項35?68と補正後の請求項34?67については摘示を省略する。 すなわち、本件補正は、 補正前(平成18年7月12日付け手続補正書参照)の 「【請求項1】 200?2500m/secの範囲の速度で無針注射器によって経皮送達のための医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、該医薬が、10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含む、粒子供給源。 【請求項2】 200?2500m/secの範囲の速度で無針注射器によって経皮送達のための医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、該医薬が、10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する粒子を含む、粒子供給源。 【請求項3】 請求項1または2に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記薬剤が、不活性キャリヤも希釈剤も含まないか、あるいは少量の不活性キャリヤまたは希釈剤を含む、粒子供給源。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記速度範囲が、500?1500m/secである、粒子供給源。 【請求項5】 請求項4に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記速度範囲が、750?1000m/secである、粒子供給源。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒径範囲が、1?50μmである、粒子供給源。 【請求項7】 請求項6に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒径範囲が、少なくとも10μmである、粒子供給源。 【請求項8】 請求項7に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒径範囲が、10?20μmである、粒子供給源。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記密度範囲が、0.5?2.0g/cm^(3)である、粒子供給源。 【請求項10】 請求項1?9のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記薬剤が、湿式混合された場合に不安定となる、安定した混合物であるか、またはインシュリンを含む、粒子供給源。 【請求項11】 治療処置のための医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、該粒子供給源が、2?10kg/sec/mの間の運動量密度での経皮投入するための粉末治療薬剤の粒子を含む、粒子供給源。 【請求項12】 医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、該粒子供給源が、2?10kg/sec/mの間の運動量密度での経皮投入のための粉末薬剤を含む、粒子供給源。 【請求項13】 請求項11または12に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記運動量密度が、4?7kg/sec/mの間である、粒子供給源。 【請求項14】 哺乳動物被験体の免疫化のための組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、該粒子供給源が、経皮無針注射器投入のための粉末薬剤の粒子を含む、粒子供給源。 【請求項15】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、ウイルス免疫原を含む、粒子供給源。 【請求項16】 請求項15に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記ウイルス免疫原が、ウイルスタンパク質である、粒子供給源。 【請求項17】 請求項15に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記ウイルス免疫原が、A型肝炎由来である、粒子供給源。 【請求項18】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、免疫原を含む、粒子供給源。 【請求項19】 請求項18に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記免疫原が、髄膜炎の免疫源由来である、粒子供給源。 【請求項20】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、Mycobacterium tuberculosis株カルメット-ゲラン杆菌(BCG)免疫原を含む、粒子供給源。 【請求項21】 皮下投与のための、請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項22】 皮内投与のための、請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項23】 筋肉内投与のための、請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項24】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、実質的に不活性なキャリアを含む、粒子供給源。 【請求項25】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、希釈剤を含む、粒子供給源。 【請求項26】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、増密薬を含む、粒子供給源。 【請求項27】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記哺乳動物被検体が、ヒトである、粒子供給源。 【請求項28】 200?2500m/secの間の範囲の速度で経皮的に無針投与される部位に送達されるための請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項29】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末治療薬剤の粒子が、約0.1?250μmの範囲が多数を占める粒径を有する、 【請求項30】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤の粒子が0.5?25g/cm^(3)の範囲の密度を有する、粒子供給源。 【請求項31】 請求項1?13のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源、または請求項14?30のいずれか1項に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒子が、10?50μmの範囲の粒径を有する、粒子供給源。 【請求項32】 請求項1?31のいずれかに記載の粒子供給源であって、該粒子供給源が、該粒子を含む密封ユニットの形を取る、粒子供給源。 【請求項33】 請求項32に記載の粒子供給源であって、前記密封ユニットがプラスチック包装またはカプセルである、粒子供給源。 【請求項34】 細長い管状ノズル(26)と、ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む請求項1?31のいずれかに記載の粒子供給源と、作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)とを備える無針注射器。」(請求項35?68の摘示は省略する。)から、 補正後の 「【請求項1】 密封ユニットを含む無針注射器のための粒子供給源であって、該密封ユニットは、200?2500m/secの範囲の速度での無針注射器による経皮送達のための医薬を含む無菌組立体としての取扱いができ、該医薬が、10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含み、該密封ユニットが、破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される、粒子供給源。 【請求項2】 密封ユニットを含む無針注射器のための粒子供給源であって、該密封ユニットは、200?2500m/secの範囲の速度での無針注射器による経皮送達のための医薬を含む無菌組立体としての取扱いができ、該医薬が、10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する粒子を含み、該密封ユニットが、破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される、粒子供給源。 【請求項3】 請求項1または2に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記薬剤が、不活性キャリヤも希釈剤も含まないか、あるいは少量の不活性キャリヤまたは希釈剤を含む、粒子供給源。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記速度範囲が、500?1500m/secである、粒子供給源。 【請求項5】 請求項4に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記速度範囲が、750?1000m/secである、粒子供給源。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒径範囲が、1?50μmである、粒子供給源。 【請求項7】 請求項6に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒径範囲が、少なくとも10μmである、粒子供給源。 【請求項8】 請求項7に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒径範囲が、10?20μmである、粒子供給源。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記密度範囲が、0.5?2.0g/cm^(3)である、粒子供給源。 【請求項10】 請求項1?9のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記薬剤が、湿式混合された場合に不安定となる、安定した混合物であるか、またはインシュリンを含む、粒子供給源。 【請求項11】 密封ユニットを含む無針注射器のための粒子供給源であって、該密封ユニットは、治療処置のための医薬を含む無菌組立体としての取扱いができ、該粒子供給源が、2?10kg/sec/mの間の運動量密度で経皮投入するための粉末治療薬剤の粒子を含み、該密封ユニットが、破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される、粒子供給源。 【請求項12】 医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、該粒子供給源が、2?10kg/sec/mの間の運動量密度での経皮投入のための粉末薬剤を含む、粒子供給源。 【請求項13】 請求項11または12に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記運動量密度が、4?7kg/sec/mの間である、粒子供給源。 【請求項14】 密封ユニットを含む無針注射器のための粒子供給源であって、該密封ユニットは、哺乳動物被験体の免疫化のための組成物を含む無菌組立体としての取扱いができ、該粒子供給源が、経皮無針注射器投与のための粉末薬剤の粒子を含み、該密封ユニットが、破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される、粒子供給源。 【請求項15】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、ウイルス免疫原を含む、粒子供給源。 【請求項16】 請求項15に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記ウイルス免疫原が、ウイルスタンパク質である、粒子供給源。 【請求項17】 請求項15に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記ウイルス免疫原が、A型肝炎由来である、粒子供給源。 【請求項18】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、免疫原を含む、粒子供給源。 【請求項19】 請求項18に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記免疫原が、髄膜炎の免疫源由来である、粒子供給源。 【請求項20】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、Mycobacterium tuberculosis株カルメット-ゲラン杆菌(BCG)免疫原を含む、粒子供給源。 【請求項21】 皮下投与のための、請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項22】 皮内投与のための、請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項23】 筋肉内投与のための、請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項24】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、実質的に不活性なキャリアを含む、粒子供給源。 【請求項25】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、希釈剤を含む、粒子供給源。 【請求項26】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤が、増密薬を含む、粒子供給源。 【請求項27】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記哺乳動物被検体が、ヒトである、粒子供給源。 【請求項28】 200?2500m/secの間の範囲の速度で経皮的に無針投与される部位に送達されるための請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源。 【請求項29】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末治療薬剤の粒子が、約0.1?250μmの範囲が多数を占める粒径を有する、 【請求項30】 請求項14に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粉末薬剤の粒子が0.5?25g/cm^(3)の範囲の密度を有する、粒子供給源。 【請求項31】 請求項1?13のいずれか1項に記載の医薬を含む無針注射器のための粒子供給源、または請求項14?30のいずれか1項に記載の組成物を含む無針注射器のための粒子供給源であって、前記粒子が、10?50μmの範囲の粒径を有する、粒子供給源。 【請求項32】 請求項1?31のいずれか1項に記載の粒子供給源であって、前記密封ユニットがプラスチック包装またはカプセルである、粒子供給源。 【請求項33】 細長い管状ノズル(26)と、請求項1?31のいずれかに記載の粒子供給源と、作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)とを備える無針注射器。」(請求項34?67の摘示は省略する。請求項1?33中の下線は、原文のとおり。) とする補正を含むものである。 (2)補正の適否 本件補正は、特許法第17条の2第1項第4号の拒絶査定不服審判を請求する場合においてその審判の請求の日から30日以内にするときになされたものであるところ、そのような補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成6年法改正前」ともいう。)の第17条の2第3項において、同項第1号乃至第4号に掲げる事項(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明)を目的とするものに限るとされているので、その規定を満たすか検討する。 本件補正により、少なくとも、補正前の請求項1?31,34に係る発明は、それぞれ補正後の請求項1?31,33に係る発明に補正されたものと認められるところ、補正後の請求項33に係る発明に着目して、検討を進める。 補正後の請求項33に係る発明は、補正前の請求項34に係る発明を特定するために必要な事項である「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む」を削除したものであるから、その点だけで言えば拡張であって、特許請求の範囲の減縮に当たらないが、請求項1?31のいずれか1項を引用しているので、その引用される請求項の発明特定事項についても勘案する必要がある。 (2-1)請求項12,13,31を引用する請求項33について 補正後の請求項33で引用する請求項12は、補正前の請求項12そのものであって補正されていない。また、補正後の請求項13,31は、補正されておらず、引用する請求項12も補正されていないから、請求項12を引用する請求項13,31は補正されていない。そして、補正後の請求項12,13,31では、「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)」について、発明特定事項とされていない。 そうすると、補正後の請求項12を引用する請求項33に係る発明、及び、補正後の請求項12を引用する請求項13,31を更に引用する請求項33に係る発明は、補正前の請求項12を引用する請求項34に係る発明及び補正前の請求項12を引用する請求項13,31を更に引用する請求項34に係る発明において、「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む」との発明特定事項が削除されたものに相当するから、その補正は拡張であって特許請求の範囲の減縮に当たらないことが明らかであり、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらないことも明らかである。 そうすると、補正後の請求項33に係る発明の補正は、平成6年法改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないし、更に、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれにも該当しないことが明らかである。 (2-2)請求項1?11,13?31を引用する請求項33について 補正後の請求項33で引用する請求項1?11,13?31(請求項12を引用する部分を除く)では、「密封ユニットを含む」ことが補正により特定されている(引用されている請求項での特定を含む)ので、そして、審判請求理由(平成19年1月17付けの請求理由の手続補正書(方式)参照)において「密封ユニットを含む粒子供給源」の点を明瞭にした旨を主張しているので、「密封ユニットを含む」との発明特定事項が「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む」との特定事項を限定したことに相当するか更に検討する。 「密封ユニット」について、本件分割時の当初明細書を検討すると、(イ)当初請求項34に「密封ユニットがプラスチック包装またはカプセルである」,(ロ)当初請求項39(「裂開可能の膜(34)が、裂開可能の膜(33、34)によって提供される」)を引用する請求項40に「前記隔膜が周縁端を取り囲んでお互いに密封され、前記粒子を含む共通のプラスチック包装またはカプセル(28)を形成する」,(ハ)当初請求項62に「隔膜の周縁端を取り囲み、お互いに直接的または間接的に密封されている2つの隔膜を備える密封ユニットを備え」,(ニ)当初請求項63に「密封された裂開可能のプラスチック包装またはカプセルの形態」,(ホ)段落【0013】に「密封ユニットがプラスチック包装またはカプセルである」,(ヘ)段落【0017】に「隔膜が周縁端を取り囲んでお互いに密封され、この粒子を含む共通のプラスチック包装またはカプセル(28)を形成する。」,(ト)段落【0022】に「隔膜の周縁端を取り囲み、お互いに直接的または間接的に密封されている2つの隔膜を備える密封ユニットを備え」,「この製品は、密封された裂開可能のプラスチック包装またはカプセルの形態である。」,(チ)段落【0062】に「隔膜の周縁端は、好ましくは粒子を入れる共通のプラスチック包装またはカプセルを形成するために該周縁端に直接一緒に密封され、または間接的に、例えば中間リングの対向軸面に密封される。」,(リ)段落【0063】に「プラスチック包装、カプセルまたはその他の密封ユニットは、一緒に注入される異なる粉末治療薬を入れた複数の隔絶成分を提供するために3つまたはそれ以上の隔膜を含むことができる。」,(ヌ)段落【0065】に「密封ユニットを含む治療目的用の製品を含み、前記ユニットは直接的または間接的に該ユニット周縁端の他の1つに密封される2つの隔膜を含み」,(ル)段落【0080】に「図8に示したように、カプセルは、室32の周囲に円錐台の内部円周を有し、注入される粒子を入れる環状リング31を含む。この室の先端は、比較的弱いMylar隔膜33によって、かつ底部では強いMylar隔膜34によって密閉される。これらの隔膜は、ノズル26とリブ27との間に圧力をかけてリング31の上部および下部の壁に密閉することはできるが、好ましくはリング面に熱またはその他の手段で接合され、この結果、カプセルは内蔵型密封ユニットを形成する。隔膜34が使用中に裂開されるとき、すべての粒子が室から搬出されることを保証するために、下方に点線で示したように凹みを作ることができる。リングは、2つの分割室を提供するために部分間の第3の弱い隔膜で2つの部分に分割することができる。」,(ヲ)段落【0092】に「ピストンとカプセル28との間の圧力がカプセル隔膜を裂開させる」,(ワ)段落【0095】に「チャンバ25内の圧力がカプセル28の隔膜を裂開させる」,(カ)段落【0097】に「個々の粒子物質は、部分10とノズル26との間の密封ユニット28の隔膜33,34との間に供給することができる。」との記載が認められる。 これらの記載に徴すると、「密封ユニット」の形成は、具体的には、2つの隔膜の周縁端が互いに直接的に密封されてプラスチック包装またはカプセルを形成することにより((ロ),(ハ),(ト)など参照)、または2つの隔膜を環状リングの上下の壁に密閉することによって間接的に密封されて((ハ),(ト),(チ),(ヌ),(ル),図8など参照)なされるものと認められ、それら以外の態様の具体的説明が見当たらないこと、及び、該「密封ユニット」は、使用時にノズル内側を横切って伸びる隔膜相当の箇所で裂開すること(即ち「破裂」すること)が必要であることも明らかであると認められることから、「密封ユニット」は、「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む」態様そのものといえる。 他方、「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む」部分は、付勢手段による適切な裂開を生じさせるまでの間は適切に隔膜を保持する必要があり且つ2つの隔膜の間で医薬粒子を保持する必要があると認められるところ、発明の詳細な説明には「密封ユニット」とする以外の具体的説明が示されていないから、「密封ユニット」が実質的な選択肢といえるものである。 なお、(リ)と(ル)の摘示に3つ以上の隔膜について言及があるところ、「密封ユニット」と「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む」のいずれもが、そのような3つ以上の隔膜を含む態様についても選択肢として含むものと認められる。 そうすると、「密封ユニット」は、「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む」ことを単に言い換えたものにすぎないと認められるから、実質的な限定に当たらない。 そこで、補正後の請求項1?11,13?31(請求項12を引用する場合を除く)を引用する請求項33に係る発明について更に検討すると、補正前の請求項1?11,13?31を引用する請求項34に係る発明に対し、該密封ユニットが、無針注射器による経皮送達のための医薬を含む「無菌組立体としての取扱いができ」る点と、密封ユニットが、「破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される」点を特定している(引用された請求項での特定も含む)。 しかし、補正前の請求項34の無針注射器は、医薬粒子供給源の隔膜の裂開とともに医薬粒子を経皮送達するためのものであり、また、隔膜の裂開と密封ユニットの破裂は実質的に同じ意味であるから、「無菌組立体としての取扱いができ」ること、かつ、「破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される」ようにすることは、そのような表明をするか否かにかかわらず、投薬における当然に要請される特性であると認められるから、本件無針注射器を実質的に限定しているものとは認められない。 よって、本件補正に含まれる上記補正は、特許請求の範囲の減縮に当たらず、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも当たらないといえる。 そうすると、補正後の請求項33に係る発明の補正は、平成6年法改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないし、更に、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれにも該当しない。 ところで、本件補正が限定的減縮であると解したところで、本件補正後の前記請求項33に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることが必要である。 そこで、本件補正後の選択肢として請求項1を引用する請求項33に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (3)同日出願発明との同一性 原査定の拒絶の理由の1つに挙げられている、同一出願人が同日出願した「特願平6-522877号(特許第3260375号)」の請求項33に係る発明と本願補正後の請求項33に係る発明は同一の無針注射器であり、実質的に同一と認められるから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないとの理由を検討する。 ここに、特願平6-522877号(特許第3260375号)の出願は、本件分割の原出願に当たるものであり、その出願日とパリ条約による優先権主張日はいずれも本願と同一である。そして、該同日出願は既に特許されているから、協議することができないものである。 <同日出願発明> 該同日出願の特願平6-522877号(特許第3260375号)の請求項33には、次のとおりの発明が記載されている。ここで、引用請求項1?31のうち請求項1を選択した請求項33に係る発明を、「同日出願発明」と言うこととする。なお、記号(A)?(E)は後記対比のために便宜的に当審が付したものである。 「【請求項33】(C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給し、(C2)該粒子が主として10?250μmの範囲の粒径と、0.1?25g/cm^(3)の密度範囲とを有することを特徴とする請求の範囲第1項ないし第31項のいずれか1項に記載の注射器。」 そして、該請求項33に選択肢として特定される請求項1は、次のとおりである。 「【請求項1】(A)細長い管状ノズル(26)と、(B1)最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する裂開可能の膜と、該膜に近接して配置された治療薬剤の粒子と、(D)膜を裂開させ、かつ該ノズルを介して該粒子が連行される超音速ガス流を生じさせるための十分な気体圧力を該膜の上流側に作用させるための付勢手段とを備え、(B2)該粒子がノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)の間に配設された粉末治療薬剤であることを特徴とする(E)無針注射器。」 該同日出願発明(請求項1を選択肢として引用する請求項33に係る発明)を書き直すと、次のとおりである。 「(A)細長い管状ノズル(26)と、 (B1)最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する裂開可能の膜と、該膜に近接して配置された治療薬剤の粒子と、 (B2)該粒子がノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)の間に配設された粉末治療薬剤であり、 (C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給し、 (C2)該粒子が主として10?250μmの範囲の粒径と、0.1?25g/cm^(3)の密度範囲とを有し、 (D)膜を裂開させ、かつ該ノズルを介して該粒子が連行される超音速ガス流を生じさせるための十分な気体圧力を該膜の上流側に作用させるための付勢手段とを備えた、 (E)無針注射器。」 <本願補正発明> 一方、本願補正後の請求項33に係る発明は、次のとおりである。なお、記号(a)?(f)は対比のために便宜的に当審が付したものである。 「【請求項1】 (b)密封ユニットを含む無針注射器のための粒子供給源であって、該密封ユニットは、200?2500m/secの範囲の速度での無針注射器による経皮送達のための医薬を含む無菌組立体としての取扱いができ、該医薬が、(c2)10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、(c1)0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含み、(f)該密封ユニットが、破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される、粒子供給源。」と 「【請求項33】 (a)細長い管状ノズル(26)と、請求項1?31のいずれかに記載の粒子供給源と、(d)作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)とを備える(e)無針注射器。」 そして、請求項1を選択肢として引用する請求項33に係る発明(本願補正発明)を書き直すと、次のとおりである。 「(a)細長い管状ノズル(26)と、 (b)密封ユニットを含む無針注射器のための粒子供給源であって、該密封ユニットは、200?2500m/secの範囲の速度での無針注射器による経皮送達のための医薬を含む無菌組立体としての取扱いができ、 該医薬が、 (c2)10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、 (c1)0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含み、 (f)該密封ユニットが、破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される、 (d)作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)とを備える (e)無針注射器。」 <対比・判断> そこで、両発明を対比すると、少なくとも、 「細長い管状ノズル(26)と、付勢手段とを備える無針注射器。」 で一致することは明らかである((a),(d),(e);(A),(D),(E)を参照)。 更に、残りの発明特定事項が両発明で一致するか、検討を進める。 (α)本願補正発明の「(b)密封ユニットを含む無針注射器のための粒子供給源であって、該密封ユニットは、200?2500m/secの範囲の速度での無針注射器による経皮送達のための医薬を含む無菌組立体としての取扱いができ」は、 該「200?2500m/secの範囲の速度での無針注射器による経皮送達のため」が、ノズルを通る粒子(医薬)に関するものであることが明らかなため、同日出願発明の「(C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給し」に対応するものであり、 該「密封ユニット」が、前記「2(2)」で検討したように、「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)」に実質的に相当すること、および以下の理由α1?α4からみて、 同日出願発明の「(B2)該粒子がノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)の間に配設された粉末治療薬剤である」こと、及び、同日出願の「(B1)最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する裂開可能の膜と、該膜に近接して配置された治療薬剤の粒子」に相当する。 理由α1:本願補正発明の密封ユニット内に経皮送達する医薬粒子を配設することが明らかであり、密封ユニットが実質的にノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜を有し、それらの隔膜の間に粉末治療粒子が配設されることも明らかである。 理由α2:同日出願発明に「粒子供給源」との表現はないが、粉末治療薬剤(即ち、粒子)が付勢手段によって膜が裂開することにより供給されること(即ち、粒子供給源となること)が明らかであるから、実質的な差異ではない。 理由α3:本願補正発明に「最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する裂開隔膜」との表現は無いが、密封ユニットの構成として裂開可能の膜が想定でき、ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖することは、裂開可能な膜から構成される密封ユニットを持つ無針注射器として必然の構造といえる。 理由α4:本願補正発明に、粒子が(裂開可能の)「膜に近接して配置される」ことの表現は無いが、密封ユニット内にある医薬は、該医薬の粒子が裂開可能の膜に近接して配置されている状態そのものである。 ところで、本願補正発明の「無菌組立体としての取扱いができ」は、経皮投与に用いる無針注射器の特性として、無菌組立体としての取扱いを当然に配慮すべきことにすぎないから、同日出願発明にそのような特性が明示的に特定されていなくても実質的な相違点であるとは言えない。 (β)本願補正発明の「該医薬が、(c2)10?250μmの範囲を多数が占める粒径」と「該医薬が、(c1)0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含み」は、同日出願発明の粒子が粉末治療薬剤であること((B2)参照)に鑑み、また本願補正発明の「治療薬剤の粒子」と同日出願発明の「粒子が粉末治療薬」は実質的に同一物を指すと認められること(粉末との用語によって粒子に実質的な差異は生じない)から、同日出願発明の「(C2)該粒子が主として10?250μmの範囲の粒径と、0.1?25g/cm^(3)の密度範囲とを有し」に相当する。 (γ)本願補正発明の「(f)該密封ユニットが、破裂して、精密な投与量で送達するために利用可能な医薬を形成するように配置される」は、医薬の経皮投与に用いる無針注射器の特性として、精密な投与量で送達することは当然に配慮すべきことにすぎないから、同日出願発明にそのような特性が明示的に特定されていなくても、両発明の実質的な相違点であるとは言えない。 (δ)本願補正発明の「(d)作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)とを備える」と「(f)該密封ユニットが、破裂して、・・・」は、該「ノズルを介して」とは同日出願発明の「ノズルを通り」と実質的に同じであり、気体圧力との言は無いが本願明細書に徴すると気体圧力を用いることも当然のことと認められ、また、該密封ユニットが破裂することが裂開可能な膜を裂開させることに相当し、同日出願発明の裂開させる膜の上流側に圧力を作用させるのは本願補正発明でも必然であると認められることから、同日出願発明の「(C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給し」と「(D)膜を裂開させ、かつ該ノズルを介して該粒子が連行される超音速ガス流を生じさせるための十分な気体圧力を該膜の上流側に作用させるための付勢手段とを備えた」に相当する。 よって、本願補正発明と同日出願発明の間には、表現上の微差があるだけで、実質的に相違する点は見い出せないから、本願補正後の請求項33に係る発明と引用例の請求項33に係る発明と実質同一であると言う他なく、特許法第39条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび よって、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の第17条の2第3項の規定に違反するものであり、乃至は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成18年11月6日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項34に係る発明は、平成18年7月12日付け手続補正で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項34に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。ここで、引用請求項1?31のうち請求項1を選択した請求項34に係る発明を、「本願発明」と言うこととする。なお、記号(a)?(e)は対比のために便宜的に当審が付したものである。 「【請求項34】 (a)細長い管状ノズル(26)と、(b)ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む請求項1?31のいずれかに記載の粒子供給源と、(d)作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)とを備える(e)無針注射器。」 そして、該請求項34において選択肢として特定される請求項1は、次のとおりである。 「【請求項1】 (c1)200?2500m/secの範囲の速度で無針注射器によって経皮送達のための医薬を含む無針注射器のための粒子供給源であって、(c2)該医薬が、10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含む、粒子供給源。」 (1)同日出願発明 これに対し、原査定の拒絶の理由の1つは、同一出願人が同日出願した「特願平6-522877号(特許第3260375号)」の請求項33に係る発明と本願の請求項34(補正前の当初の請求項53)に係る発明は同一の無針注射器であり、実質的に同一と認められるから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないとの理由である。なお、平成18年7月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項34が、特許法第39条第2項の拒絶理由の対象となった当初請求項53に対応するものであることは、平成18年7月12日付けの意見書において、その対応関係が示されていることからも明らかである。 ここに、特願平6-522877号(特許第3260375号)の出願は、本件分割の原出願に当たるものであり、その出願日とパリ条約による優先権主張日はいずれも本願と同一である。そして、該同日出願は既に特許されているから、協議することができないものである。 そして、該同日出願の特願平6-522877号(特許第3260375号)の請求項33には、次のとおりの発明が記載されている。ここで、引用請求項1?31のうち請求項1を選択した請求項33に係る発明を、「同日出願発明」と言うこととする。なお、記号(A)?(E)は対比のために便宜的に当審が付したものである。 「【請求項33】(C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給し、(C2)該粒子が主として10?250μmの範囲の粒径と、0.1?25g/cm^(3)の密度範囲とを有することを特徴とする請求の範囲第1項ないし第31項のいずれか1項に記載の注射器。」 そして、該請求項33に選択肢として特定される請求項1は、次のとおりである。 「【請求項1】(A)細長い管状ノズル(26)と、(B1)最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する裂開可能の膜と、該膜に近接して配置された治療薬剤の粒子と、(D)膜を裂開させ、かつ該ノズルを介して該粒子が連行される超音速ガス流を生じさせるための十分な気体圧力を該膜の上流側に作用させるための付勢手段とを備え、(B2)該粒子がノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)の間に配設された粉末治療薬剤であることを特徴とする(E)無針注射器。」 (2)対比、判断 そこで、本願発明と同日出願発明とを対比する。 本願発明は、請求項1を取り込んで請求項34を書き直すと、次のとおりである。 「(a)細長い管状ノズル(26)と、 (b)ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む粒子供給源であって、 (c1)該粒子供給源が、200?2500m/secの範囲の速度で無針注射器によって経皮送達のための医薬を含む無針注射器のためであって、 (c2)該医薬が、10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含むものであり、 (d)作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)とを備える (e)無針注射器。」 一方、同日出願発明は、請求項1を取り込んで請求項33を書き直すと、次のとおりである。 「(A)細長い管状ノズル(26)と、 (B1)最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する裂開可能の膜と、該膜に近接して配置された治療薬剤の粒子と、 (B2)該粒子がノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)の間に配設された粉末治療薬剤であり、 (C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給し、 (C2)該粒子が主として10?250μmの範囲の粒径と、0.1?25g/cm^(3)の密度範囲とを有し、 (D)膜を裂開させ、かつ該ノズルを介して該粒子が連行される超音速ガス流を生じさせるための十分な気体圧力を該膜の上流側に作用させるための付勢手段とを備えた、 (E)無針注射器。」 そうすると、両発明は、少なくとも、 「細長い管状ノズル(26)と、付勢手段とを備える無針注射器。」 で一致することは明らかである((a),(d),(e);(A),(D),(E)を参照)。 残りの発明特定事項が両発明で一致するか、更に検討を進める。 (α)本願発明の「(b)ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む粒子供給源」は、以下の理由α1?α4からみて、同日出願発明の「(B2)該粒子がノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)の間に配設された粉末治療薬剤である」こと、及び、同日出願の「(B1)最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する裂開可能の膜と、該膜に近接して配置された治療薬剤の粒子」に相当する。 理由α1:本願発明の2つの裂開可能の隔膜(33、34)の間に粒子を配設することが明らかであり、該粒子が「治療薬剤の粒子」であることも明らか((c2)参照)である。 理由α2:同日出願発明に「粒子供給源」との表現はないが、粉末治療薬剤(即ち、粒子)が付勢手段によって膜が裂開することにより供給されること(即ち、粒子供給源となること)が明らかであるから、実質的な差異ではない。 理由α3:裂開可能の膜について、本願発明に「最初に前記ノズルの上流側端に近接するノズルを通る流路を閉鎖する」ことの表現は無いが、本願発明で「ノズル内側を横切って延びる」との特定があり、ノズルを通る流路を上流側で閉鎖することも無針注射器として必然の構造といえる。 理由α4:本願発明に、粒子が(裂開可能の)「膜に近接して配置される」ことの表現は無いが、本願発明の「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜(33、34)を含む粒子供給源」は、粒子が裂開可能の膜に近接して配置されている状態そのものである。 (β)本願発明の「(c1)粒子供給源が、200?2500m/secの範囲の速度で無針注射器によって経皮送達のための医薬を含む無針注射器のためであって」は、以下の理由β1,β2からみて、同日出願発明の「(C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給」することに相当する。 理由β1:本願発明の粒子供給源が「ノズル内側を横切って延びる2つの裂開可能の隔膜」((b)参照)を含んでいるのであるから、作動中にノズルを通って粒子が供給されることが明らかである。 理由β2:同日出願発明に「経皮送達のための医薬を含む無針注射器のためで」との限定は無いが、同日出願発明の無針注射器は皮膚に医薬を注射するものであるから、その点に実質的な差異があるとは言えない。 (γ)本願発明の「(c2)該医薬が、10?250μmの範囲を多数が占める粒径と、0.1?25g/cm^(3)の範囲の密度とを有する治療薬剤の粒子を含む」は、同日出願発明の粒子が粉末治療薬であること((B2)参照)に鑑み、また本願発明の「治療薬剤の粒子」と同日出願発明の「粒子が粉末治療薬」は実質的に同一物を指すと認められること(粉末との用語によって粒子に実質的な差異は生じない)から、同日出願発明の「(C2)該粒子が主として10?250μmの範囲の粒径と、0.1?25g/cm^(3)の密度範囲とを有する」に相当する。 (δ)本願発明の「(d)作動時において、200?2500m/secの間の範囲の速度で、該ノズルを介して該粒子を供給する付勢手段(10)」は、該「ノズルを介して」とは同日出願発明の「ノズルを通り」と実質的に同じであり、気体圧力との言は無いが本願明細書に徴すると気体圧力を用いることも当然のことと認められるから、同日出願発明の「(C1)作動中に、速度が200?2,500m/secの間の範囲でノズルを通り前記粒子を供給し」に相当し、該供給が同日出願発明の「(D)膜を裂開させ、かつ該ノズルを介して該粒子が連行される超音速ガス流を生じさせるための十分な気体圧力を該膜の上流側に作用させるための付勢手段」によってなされることが明らかである。 なお、音速は約340m/sec(15℃)であるから、200?2500m/secの表現では超音速でない場合が含まれるが、本願発明ではその音速を超えない場合を含めて超音速ガス流と呼んでいるものと解すべき(例えば、本願明細書段落【0001】参照)であり、超音速ガス流の表現の有無によって実質的な差異があるわけではない。 以上のとおり、両発明に、表現上の微差があるだけで、実質的に相違する点は見い出せない。 (3)むすび したがって、本願請求項34に係る発明は、同日出願の請求項33に係る発明と実質同一であるから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。それ故、その余について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-21 |
結審通知日 | 2010-05-24 |
審決日 | 2010-06-07 |
出願番号 | 特願2001-298589(P2001-298589) |
審決分類 |
P
1
8・
574-
Z
(A61K)
P 1 8・ 4- Z (A61K) P 1 8・ 572- Z (A61K) P 1 8・ 573- Z (A61K) P 1 8・ 571- Z (A61K) P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 幸司 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
上條 のぶよ 大久保 元浩 |
発明の名称 | 超音速ガス流を使用する粒子送達のための無針注射器 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 竹内 茂雄 |
代理人 | 小野 新次郎 |