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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41F |
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管理番号 | 1225657 |
審判番号 | 不服2008-15085 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-16 |
確定日 | 2010-10-20 |
事件の表示 | 特願2003-559777「イメージ転写方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月24日国際公開、WO03/59635、平成17年 5月19日国内公表、特表2005-514247〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2002年12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年1月24日に手続補正がなされ、同年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成20年6月16日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成20年6月16日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の内容・目的 平成20年6月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、次の(1)及び(2)の補正内容を含むものである。(下線は審決で付した。以下同じ。) (1)本件補正前の請求項2に、 「基板に印刷するための装置であって、 基板と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜と、 前記基板との接触前に前記基板に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記基板へと前記イメージを転写するための手段とを含む装置。」とあったものを、 「基板に印刷するための装置であって、 基板と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜と、 前記基板との接触前に前記基板に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記基板へと前記イメージを転写するための手段とを含み、前記イメージを転写する前記手段は、前記膜上に印刷された前記イメージとの接触に前記基板を押し付けることによって前記転写を行うことを特徴とする装置。」と補正して新たな請求項1とする。 (2)本件補正前の請求項62に、 「基板上に印刷するための方法であって、 表面を有する基板を提供する過程と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜を提供する過程と、 前記フレキシブルな膜に近接して成形取付具を配置し、前記基板との接触前に前記膜を前記基板に対し補完的な形状へ成形する過程と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記フレキシブルな膜より前記基板へと前記印刷されたイメージを転写する過程とを含む方法。」とあったものを、 「基板上に印刷するための方法であって、 表面を有する基板を提供する過程と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜を提供する過程と、 前記フレキシブルな膜に近接して成形取付具を配置する過程と、 前記基板との接触前に前記膜を前記基板に対し補完的な形状へ成形する過程と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けることにより前記フレキシブルな膜より前記基板へと前記印刷されたイメージを転写する過程とを含む方法。」と補正して新たな請求項31とする。 上記(1)の補正内容は、発明を特定するために必要な事項として本件補正前の請求項2に記載されていた「転写」について、「前記膜上に印刷された前記イメージとの接触に前記基板を押し付けることによって」行うと限定するものであり、上記(2)の補正内容は、発明を特定するために必要な事項として本件補正前の請求項62に記載されていた「転写」について、「前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けることによ」るものであると限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)及び本件補正後の請求項31に係る発明(以下「本願補正発明2」という。)が、それぞれ、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 刊行物の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭56-15359号公報(以下「引用例1」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。 ア 「2.特許請求の範囲. (1) 転写用の弾性シートが可動枠に張設されてなる任意数の転写版と、この転写版を所定の方向に水平動装置と、水平動する転写版の進路上の定位置に固定的に設置されていて、転写版の弾性シート面に、泥状絵具による模様を、印刷用のスクリーンならびにスキージを介してこれを印刷する印刷制御装置と、同じく転写版の進路上にあたる別の定位置に設置されていて、該定位置に陶磁器を順次定位置にセツトさせる陶磁器定位セツト装置と、更に上記陶磁器定位セツト装置と同位置に設置されていて、該位置に到達する転写版の弾性シートを、昇降式の弾性パツドを介してこれを陶磁器面に押しあてる転写装置と備えた陶磁器転写印刷装置において、水平動する転写版の水平進路が、転写装置位置から任意の方向に向け2条もしくはそれ以上直線状に設置されていて、これらの各進路上に夫々転写版と印刷装置とが設けられているとゝもに、各進路上の転写版が転写装置と夫々の印刷装置との間を適時往復動するようになっていることを特徴とする陶磁器転写印刷装置。 …略… (6) 転写装置における弾性パツドが、上面を陶磁器の被転写面の形状に適合させた嵌合面とし、適時シリンダで昇降する昇降竪軸の上端に固定されている特許請求の範囲第1ないし第5項のいずれか記載の陶磁器転写印刷装置。」(1頁左下欄3行?2頁右上欄1行) イ 「そして、上記転写版Sが停止すると、シリンダ9によりパツド10が上昇して転写版の弾性シート4を下方からこれを安定支持するとゝもに、同時にスキージ8がスクリーン7面上を摺動して、該スクリーン7の模様を転写版の弾性シート4面上に印刷するようになっている。尚、印刷装置Raは、記述したごとく上記印刷装置Rと同一の構造になつていて、専ら転写版Saに対する印刷が行なわれるようになっている。 …略… そして又、陶磁器セツト装置Qは、長手方向の1端部を支点12とし、この支点を基台1上面の中央部にあらしめ、転写版の進退方向と直交する方向に適時180度の往復回転をするアーム13と、このアーム13の他端部に固着されていて、陶磁器14を着脱自在に真空チヤツク(図示せず。)でこれを安定して保持する保持具15と、更にアーム13に上記した回転を賦与するモータ16とを具えたものとなっているとゝもに、この陶磁器セツト装置Qによつて保持される陶磁器14は、転写時にあつては後述する転写装置Pにおける転写版S、Saの停止位置において、該位置で停止する転写版の直ぐ上方をその定位置Mとし、転写後における反転時にあっては基台1上の1側部をその定位置Nとするものになっている。 更に、転写装置Pは、上記した陶磁器セツト装置Qの下方に設置されていて、転写用の弾性パツド17と、この弾性パツド17を適時昇降させるシリンダ18とを具えたものとなっており、このうち弾性パツド17は、上面が定位置Mにある陶磁器14の下面(被転写面)の形状に適合させた嵌合面19になっていて、転写版S、Saのうちそのいずれかが上記定位置Mの真下で停止するとシリンダ18を介して上昇し、転写版の弾性シートをその下方からこれを押し上げて陶磁器14の下面(被転写面)に押しあてるようになっている。 尚、転写版S、Saを水平動させるシリンダ5印刷装置R、Raにおける各パツド昇降用の各シリンダ9ならびに各スキージ8摺動用の各シリンダ11、陶磁器セツト装置Qにおけるモータ16、そして転写装置Pにおける弾性パツド17昇降用のシリンダ18は、いずれも別に設けられている制御装置(図示せず。)で調整されていて、弾性シート面の印刷がなされた転写版S、Saのうちそのいずれか一方が、転写装置Pの上方にあたる陶磁器14定位置Mの直下で停止すると、転写装置Pにおける弾性パツド17が上昇して上方にある転写版の弾性シートを陶磁器14の被転写面にこれを押しつけ転写を行なうとゝもに、ついで陶磁器セツト装置Qのアーム13が180度回転しその反転時の定位置で、陶磁器14の新たなものとのとりかえが行なわれるようになっている。 そして上記のようにして、転写を完了した上記転写版は、レール2に案内されて当面する印刷装置R、Raのうちそのいずれか一方の位置に移動して該位置で再び印刷が行なわれるとゝもに、この時には定位置Mにおいて新たな陶磁器14面に別の転写版による転写が行なわれるようになっている。」(4頁左上欄7行?同頁右下欄16行) ウ 第5図から、盃状の陶磁器14が見て取れるとともに、定位置Mに反転してセットされた盃状の陶磁器14の被転写面は、下に向いた湾曲面であり凹面であることが見て取れる。 エ 上記アないしウからみて、引用例1には、 「転写用の弾性シート4が可動枠3に張設されてなる転写版Sと、 この転写版Sを所定の方向に水平動させる水平動装置と、 水平動する転写版Sの進路上の定位置に固定的に設置されていて、転写版Sの転写用の弾性シート4面に、泥状絵具による模様を、印刷用のスクリーン7ならびにスキージ8を介してこれを印刷する印刷制御装置Rと、 転写版Sの進路上の定位置Mに盃状の陶磁器14をセットする陶磁器セット装置Qと、 上記陶磁器セット装置Qの下方に設置されていて、上面が定位置Mにある盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)の形状に適合させた嵌合面19になっている転写用の弾性パッド17と、この転写用の弾性パッド17を適時昇降させるシリンダ18とを具え、転写版Sが上記定位置Mの真下で停止すると、弾性パッド17はシリンダ18を介して上昇し、転写版Sの転写用の弾性シート4をその下方から押し上げて盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)に押しあてるようになっている転写装置Pとを備え、 弾性シート面の印刷がなされた転写版Sが転写装置Pの上方にあたる陶磁器14の定位置Mの直下で停止すると、転写装置Pにおける転写用の弾性パッド17が上昇して上方にある転写版Sの転写用の弾性シート4を反転された盃状の陶磁器14の湾曲面でありかつ凹面である被転写面に押しつけ泥状絵具による模様の転写を行なう、 陶磁器転写印刷装置及び陶磁器転写印刷方法。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (2)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭57-176165号公報(以下「引用例2」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。 ア 「2.特許請求の範囲 (1)伸縮性を有するシート上に、転写画像を形成し、該シートの裏面から、被印刷体の表面形状を反転させた形状(以下反転形状という)面を有し、かつ表面に多数の小穴を有する圧胴を押し当て、該圧胴内より吸引することにより、前記シートを反転形状に変形させて、圧胴に密着し、次いで、被印刷体表面に該シートの転写画像面を圧着し、転写画像を転写して成る三次元表面形状を有する成型品への印刷方法。 (2)伸縮性を有するシートを、一方向又は二方向に延伸した状態で、転写画像を形成し、次いで延伸を解く特許請求の範囲第(1)項記載の印刷方法。」(1頁左下欄4?16行) イ 「3.発明の詳細な説明 本発明は印刷方法に関し、特に三次元表面形状を有する成形品に適した印刷方法に関するものである。 従来三次元表面形状を有する成形品に印刷する方法として、パットプレス方法が用いられている。この方法は柔かく弾力性の富む蛸の頭の形状をしたパットにインキを付着させ、これを成形品に圧着しパットが変形することにより三次元表面に印刷する方式である。この方式においては表面形状の複雑なもの、例えば凹面の谷面、底面への印刷等の印刷は不可能であった。これはパットは柔らかい材質を用いてはいるが、印刷の際の圧力を大きくした場合パットの変形には限度があり、またパットの変形を大きくするほど、パットと成形品と滑りが大きくなり、印刷された画像が乱れてしまう問題があったからである。従って使用されている形状は単純な凸面、凹面に限られていた。 本発明は、かかる従事法を改良した方法で、その特徴とするところは、表面形状が複雑な、三次元表面形状を有する成形品に対しても、美麗な印刷を施すことができる方法に関する。 すなわち本発明は、伸縮性を有するシート上に、転写画像を形成し、該シートの裏面から、被印刷体の表面形状を反転させた形状(以下反転形状という)面を有し、かつ表面に多数の小穴を有する圧胴を押し当て、該圧胴内より吸引することにより、前記シートを反転形状に変形させて、圧胴に密着し、次いで、被印刷体表面に該シートの転写画像面を圧着し、転写画像を転写して成る三次元表面形状を有する成型品への印刷方法である。 以下図面を用いて、更に詳細に説明する。第1図に示すようにポリウレタン、シリコンゴム等の弾性、伸縮性を有するシート(1)を外枠(2)に取り付け、次いでロール(4)等で、裏面より、印刷圧力を受けながら、適宜印刷法にて、印刷を行い、転写画像(3)を形成する。次に、第2図に示すように該シート(1)の裏面から、被印刷体の表面形状を反転させた形状面を有し、かつ、表面に多数の小穴を有する圧胴(5)を押し当て、該圧胴(5)内より吸引することにより、前記シート(1)を反転形状に変形させて圧胴(5)に密着する。 ここで圧胴(5)は、ゴム等の弾性体又は、木、金属等の剛体で作成されており、かつ反転形状面は、被印刷体の表面形状に、近似した反転形状でも、本発明においては実施可能である。 次に第3図に示すように被印刷体(6)表面に、圧胴(5)に密着した状態で、前記シート(1)の転写画像(3)面を圧着し、転写画像(3)を被印刷体(6)に転写し、第4図に示すように本発明の印刷方法は完了する。 ここで、被印刷体の表面形状が複雑で、凹凸形状が大きい場合、前記シートを反転形状に変形させた際、伸びが大きい為に、転写画像であるインキ面に割れが生じ、印刷濃度の低下を起こす場合がある。かかる場合には、シート面に、転写画像を形成する前に、第5図に示すように、シートを一方向又は二方向に延伸した状態で第6図に示すように、転写画像を形成し、次いで第7図に示すように延伸を解いた後に、シートを反転形状に変形させることにより、シートの伸びによる転写画像であるインキ面の割れ、濃度低下を防止することができる。尚、シートの引き伸ばし率、引き伸ばし方向は、被印刷体の表面形状、印刷濃度により適宜選定する。 本発明は、以上のような構成であるため、現在一般的に行われているパット印刷に比較し、平坦なシートに印刷を行うため、インキを乗せる際のズレが生じることがなく、また被印刷体に印刷する際は、シートが被印刷体の表面形状を反転させた形状に成形されているため、コスレ、ズレを生じることなく、良好な印刷が可能となった。また一般のパット印刷がごく単純な凹面や凸面にのみにしか応用できなかったが、本発明を用いることにより、曲率が大きく複雑な形状の製品への印刷が可能となった。」(1頁左下欄17行?2頁左下欄12行) ウ 上記ア及びイからみて、引用例2には、 「外枠(2)と、伸縮性を有するシート(1)と、ロール(4)を具えた適宜の印刷手段と、表面に多数の小穴を有する圧胴(5)と、三次元表面形状を有する被印刷体(6)とを備え、 前記圧胴(5)の面を前記被印刷体(6)の表面形状を反転させた形状である反転形状にとなし、 前記シート(1)を前記外枠(2)に取り付け、 次いで、前記シート(1)上に、前記印刷手段により適宜印刷法にて印刷を行って転写画像(3)を形成し、 次いで、該シート(1)の裏面から前記圧胴(5)を押し当て、該圧胴(5)内より該シート(1)を吸引することにより、該シート(1)を前記反転形状に変形させて、前記圧胴(5)に密着させ、 次いで、前記被印刷体(6)表面に前記シート(1)の転写画像(3)面を圧着して該転写画像(3)を該被印刷体(6)表面に転写することにより、 三次元表面形状を有する被印刷体へ印刷する印刷装置及び印刷方法。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 3 本願補正発明1と引用発明1との対比・判断 (1)対比 本願補正発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「『湾曲面でありかつ凹面である被転写面』を有する『盃状の陶磁器14』」と本願補正発明1の「基板」とは、「被印刷物」である点で一致する。 また、引用発明1の「上面が定位置Mにある盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)の形状に適合させた嵌合面19になっている転写用の弾性パッド17」は、転写版Sが上記定位置Mの真下で停止すると、シリンダ18を介して上昇し、転写版Sの転写用の弾性シート4をその下方から押し上げて盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)に押しあてるようになっているから、その際、転写用の弾性パッド17は、まず「転写版Sの転写用の弾性シート4」に接触してこれを「盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)の形状に適合させた嵌合面19」の形状に成形し、その後に盃状の陶磁器14の下面に接触することが当業者に自明である。 そして、引用発明1における「転写用の弾性シート4」は本願補正発明1の「フレキシブルな膜」に相当する。 よって、引用発明1の「上記陶磁器セット装置Qの下方に設置されていて、『転写版Sが上記定位置Mの真下で停止すると、シリンダ18を介して上昇し、転写版Sの転写用の弾性シート4をその下方から押し上げて盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)に押しあて』るようになっており、シリンダ18により『適時昇降させ』られ『上面が定位置Mにある盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)の形状に適合させた嵌合面19になっている転写用の弾性パッド17』」と本願補正発明1の「前記基板との接触前に前記基板に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具」とは、「前記被印刷物との接触前に前記被印刷物に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具」である点で一致するといえる。 イ 引用発明1の「陶磁器転写印刷装置」、「泥状絵具による模様」、「押しつけ」及び「『転写版Sの転写用の弾性シート4面に』印刷された『泥状絵具による模様』」は、それぞれ、本願補正発明1の「印刷するための装置」、「印刷されたイメージ」、「接触」及び「前記膜上に印刷された前記イメージ」に相当する。 ウ 引用発明1の「弾性シート面の印刷がなされた転写版Sが転写装置Pの上方にあたる陶磁器14の定位置Mの直下で停止すると、転写用の弾性パッド17が上昇して上方にある転写版Sの転写用の弾性シート4を反転された盃状の陶磁器14の湾曲面でありかつ凹面である被転写面に押しつけ泥状絵具による模様の転写を行なう転写装置P」と本願補正発明1の「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記基板へと前記イメージを転写するための手段」とは、「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写するための手段」である点で一致する。 エ 引用発明1の「転写用の弾性シート4を反転された盃状の陶磁器14の湾曲面でありかつ凹面である被転写面に押しつけ」ることと本願補正発明1の「前記膜上に印刷された前記イメージとの接触に前記基板を押し付けること」とは「前記膜上に印刷された前記イメージと前記被印刷物とを押圧接触させる」点で一致するといえる。 オ 上記アないしエから、本願補正発明1と引用発明1とは、 「被印刷物に印刷するための装置であって、 被印刷物と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜と、 前記被印刷物との接触前に前記被印刷物に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写するための手段とを含み、前記イメージを転写する前記手段は、前記膜上に印刷された前記イメージと前記被印刷物とを押圧接触させることによって前記転写を行う装置。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1: 前記「被印刷物」が、本願補正発明1では「基板」であるのに対して、引用発明1では「陶磁器14」である点。 相違点2: 前記イメージを転写するための手段が前記転写を行うため、前記膜上に印刷された前記イメージと前記被印刷物とを押圧接触させる際に、本願補正発明1では「前記被印刷物」を押し付けるのに対して、引用発明1では「前記膜」を押し付ける点。 (2)判断 上記相違点1及び2について検討する。 ア 相違点1について 本願の明細書の発明の詳細な説明の、 「本発明は、基板(substrate)に対しイメージを転写させるための装置及び方法に関する。更に詳しくは、平面、及び/又は、例えば複雑に湾曲した表面のような湾曲面を有する少なくとも一つの基板に対し、少なくとも一つのイメージを転写させるための装置及び方法に関する。イメージが印刷されたフレキシブルな膜が基板に対し補完的な形状へと少なくとも一つの成形取付具によって成形される。基板に対し成形された膜よりイメージを転写させる手段が提供される。」(【0001】参照。) 及び 「図12に於いて示されているように、基板184は例えば少なくともその一部分が平面である上部表面196又は下部表面198のような、少なくともひとつの表面を有していてもよく、及び/又は基板184が、例えば少なくとも一部分が凹面200、凸面202、又は凹凸面204であって図13、図14、及び図15で示されている部分を有する湾曲した上部表面196及び/又は湾曲した下部表面198を有していてもよい。凹凸の基板は少なくとも部分的に一つもしくは複数の凹面200及び凸面202を組み合わせることによって構成されている。加えて、基板184が、上述したような表面のいずれかの組合せを有して形成されていてもよい。凹面の基板の複雑に湾曲した内部表面上にイメージ102を配置するための方法及び装置がここに開示され得るが、それは上述したような基板184のいずれか上にて上部及び/又は下部表面上にイメージ102を配置するための本願発明の範囲及び精神を逸脱するものではない。基板184は例えば、ポリカーボネイト、アクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミノのようなプラスチック材料や、ガラス、金属、木材、セラミック混合物質、又はその他材料であってもよい。」(【0043】参照。)の記載からみて、 本願補正発明1の「基板」は、セラミック混合物質、又はその他材料からなるものも含み、複雑に湾曲した表面のような湾曲面を有するものも含み、凹面、凸面又は凹凸面である部分を有する湾曲した上部表面及び/又は湾曲した下部表面を有するものも含むものであると解されるから、 引用発明1の「『湾曲面でありかつ凹面である被転写面』を有する『盃状の陶磁器14』」は本願補正発明1の「基板」に相当するものであるといえる。 また、引用発明1の「被印刷物に印刷するための装置」を用いて「基板(一例として、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-171062号公報に記載されている「プリント配線基板」などの「被印刷物」である「ワーク22」参照。)」に印刷できることは当業者に自明である。 してみると、上記相違点1は、実質的な相違点ではない、あるいは、引用発明1において、上記相違点1に係る本願補正発明1の構成となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 イ 相違点2について (ア)「被印刷物を押し付けてイメージと被印刷物とを押圧接触させることによりイメージを被印刷物に転写して印刷する」ことは本願の優先日前に周知である(例.特開昭52-26912号公報(2頁右上欄下から3行目?同頁左下欄6行、第2図及び第3図参照。)、特開平2-128845号公報(4頁右上欄12行?同頁左下欄11行及び第2図参照。)、特開平7-24994号公報(3頁左欄5?9行及び図1参照。)。以下「周知技術」という。)。 (イ)引用例1の記載からみて、引用発明1において、前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後においては、前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写するために、被印刷物を押し付けてイメージと被印刷物とを押圧接触させてはならない理由はない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からして、引用発明1において、前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に、前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写するために、被印刷物を押し付けてイメージと被印刷物とを押圧接触させるようになすこと、すなわち、引用発明1において、上記相違点2に係る本願補正発明1の構成となすことは、当業者が上記(ア)の周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。 ウ 効果について 本願補正発明1の奏する効果は、引用発明1の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。 エ まとめ したがって、本願補正発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 本願補正発明1と引用発明2との対比・判断 (1)対比 本願補正発明1と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「三次元表面形状を有する被印刷体(6)」と本願補正発明1の「基板」とは「被印刷物」である点で一致する。 また、引用発明2の「伸縮性を有するシート(1)」は本願補正発明1の「フレキシブルな膜」に相当する。 よって、引用発明2の「前記被印刷体(6)表面に前記シート(1)の転写画像(3)面を圧着して該転写画像(3)を該被印刷体(6)表面に転写する」前に、「シート(1)の裏面から押し当て、該シート(1)を吸引することにより、該シート(1)を被印刷体(6)の表面形状を反転させた形状である反転形状に変形させて」密着させる圧胴(5)と、本願補正発明1の「前記基板との接触前に前記基板に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具」とは、「前記被印刷物との接触前に前記被印刷物に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具」である点で一致するといえる。 イ 引用発明2の「三次元表面形状を有する被印刷体へ印刷する印刷装置」、「印刷手段により適宜印刷法にて印刷を行って形成された転写画像(3)」、「圧着」及び「前記シート(1)の転写画像(3)」は、それぞれ、本願補正発明1の「印刷するための装置」、「印刷されたイメージ」、「接触」及び「前記膜上に印刷された前記イメージ」に相当する。 ウ 引用発明2の「次いで、前記被印刷体(6)表面に前記シート(1)の転写画像(3)面を圧着して該転写画像(3)を該被印刷体(6)表面に転写する(手段)」と本願補正発明1の「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記基板へと前記イメージを転写するための手段」とは、「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写するための手段」である点で一致する。 エ 引用発明2の「前記被印刷体(6)表面に前記シート(1)の転写画像(3)面を圧着」することと本願補正発明1の「前記膜上に印刷された前記イメージとの接触に前記基板を押し付けること」とは「前記膜上に印刷された前記イメージと前記被印刷物とを押圧接触させる」点で一致するといえる。 オ 上記アないしエから、本願補正発明1と引用発明2とは、 「被印刷物に印刷するための装置であって、 被印刷物と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜と、 前記被印刷物との接触前に前記被印刷物に対し補完的な形状へと前記膜を成形するための成形取付具と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写するための手段とを含み、前記イメージを転写する前記手段は、前記膜上に印刷された前記イメージと前記被印刷物とを押圧接触させることによって前記転写を行う装置。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点3: 前記「被印刷物」が、本願補正発明1では「基板」であるのに対して、引用発明2では「三次元表面形状を有する被印刷体」である点。 相違点4: 前記イメージを転写するための手段が前記転写を行うため、前記膜上に印刷された前記イメージと前記被印刷物とを押圧接触させる際に、本願補正発明1では「前記被印刷物」を押し付けるのに対して、引用発明2では「前記膜」を押し付ける点。 (2)判断 上記相違点3及び4について検討する。 ア 相違点3について 引用発明2の「三次元表面形状を有する被印刷体へ印刷する印刷装置」を用いて「基板(一例として、上記特開平6-171062号公報に記載されている「プリント配線基板」などの「被印刷物」である「ワーク22」参照。)」に印刷できることは当業者に自明であるから、引用発明2において、上記相違点3に係る本願補正発明1の構成となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 イ 相違点4について (ア)「被印刷物を押し付けてイメージと被印刷物とを押圧接触させることによりイメージを被印刷物に転写して印刷する」ことは本願の優先日前に周知である(上記3(2)イ(ア)参照。)。 (イ)引用例2の記載からみて、前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写する(該転写画像(3)を該被印刷体(6)表面に転写する)ために、被印刷物(前記被印刷体(6))を押し付けてイメージ(転写画像(3))と被印刷物とを押圧接触(圧着)させてはならない理由はない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からして、引用発明2において、前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に、前記膜より前記被印刷物へと前記イメージを転写するために、被印刷物を押し付けてイメージと被印刷物とを押圧接触させるようになすこと、すなわち、引用発明2において、上記相違点4に係る本願補正発明1の構成となすことは、当業者が上記(ア)の周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。 ウ 効果について 本願補正発明1の奏する効果は、引用発明2の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。 エ まとめ したがって、本願補正発明1は、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 本願補正発明2と引用発明1との対比・判断 (1)対比 本願補正発明2と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「『湾曲面でありかつ凹面である被転写面』を有する『盃状の陶磁器14』」と本願補正発明2の「基板」とは、「表面を有する被印刷物」である点で一致する。 また、引用発明1の「上面が定位置Mにある盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)の形状に適合させた嵌合面19になっている転写用の弾性パッド17」は、転写版Sが上記定位置Mの真下で停止すると、シリンダ18を介して上昇し、転写版Sの転写用の弾性シート4をその下方から押し上げて盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)に押しあてるようになっているから、その際、転写用の弾性パッド17は、まず「転写版Sの転写用の弾性シート4」に接触してこれを「盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)の形状に適合させた嵌合面19」の形状に成形し、その後に盃状の陶磁器14の下面に接触することが当業者に自明である。 そして、引用発明1における「転写用の弾性シート4」は本願補正発明2の「フレキシブルな膜」に相当する。 よって、引用発明1の「上記陶磁器セット装置Qの下方に設置されていて、『転写版Sが上記定位置Mの真下で停止すると、シリンダ18を介して上昇し、転写版Sの転写用の弾性シート4をその下方から押し上げて盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)に押しあて』るようになっており、シリンダ18により『適時昇降させ』さられ『上面が定位置Mにある盃状の陶磁器14の下面(湾曲面でありかつ凹面である被転写面)の形状に適合させた嵌合面19になっている転写用の弾性パッド17』」と本願補正発明2の「成形取付具」とは、「『前記フレキシブルな膜に近接して配置』され、『前記被印刷物との接触前に前記被印刷物に対し補完的な形状へと前記膜を成形する』もの」である点で一致するといえる。 イ 引用発明1の「陶磁器転写印刷方法」、「泥状絵具による模様」、「押しつけ」及び「『転写版Sの転写用の弾性シート4面に』印刷された『泥状絵具による模様』」は、それぞれ、本願補正発明2の「印刷するための方法」、「印刷されたイメージ」、「接触」及び「前記膜上に印刷された前記イメージ」に相当する。 ウ 引用発明1の「弾性シート面の印刷がなされた転写版Sが転写装置Pの上方にあたる陶磁器14の定位置Mの直下で停止すると、転写用の弾性パッド17が上昇して上方にある転写版Sの転写用の弾性シート4を反転された盃状の陶磁器14の湾曲面でありかつ凹面である被転写面に押しつけ泥状絵具による模様の転写を行なう」過程と本願補正発明2の「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けることにより前記フレキシブルな膜より前記基板へと前記印刷されたイメージを転写する過程」とは、「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させることにより前記フレキシブルな膜より前記被印刷物へと前記印刷されたイメージを転写する過程」である点で一致する。 エ 上記アないしウから、本願補正発明2と引用発明1とは、 「被印刷物上に印刷するための方法であって、 表面を有する被印刷物を提供する過程と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜を提供する過程と、 前記フレキシブルな膜に近接して成形取付具を配置する過程と、 前記被印刷物との接触前に前記膜を前記被印刷物に対し補完的な形状へ成形する過程と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させることにより前記フレキシブルな膜より前記被印刷物へと前記印刷されたイメージを転写する過程とを含む方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点5: 前記「被印刷物」が、本願補正発明2では「基板」であるのに対して、引用発明1では「陶磁器14」である点。 相違点6: 前記転写する過程において、前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させることを、本願補正発明2では、「前記基板」を前記フレキシブルな膜に押し付けることで行うのに対して、引用発明1では「前記膜」を押し付ける点。 (2)判断 上記相違点5及び6について検討する。 ア 相違点5について 上記3(2)アで述べた理由と同様の理由で、上記相違点5は、実質的な相違点ではない、あるいは、引用発明1において、上記相違点5に係る本願補正発明2の構成となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 イ 相違点6について (ア)「被印刷物を押し付けてイメージと被印刷物とを押圧接触させることによりイメージを被印刷物に転写して印刷する」ことは本願の優先日前に周知である(上記3(2)イ(ア)参照。)。 (イ)引用例1の記載からみて、引用発明1において、前記転写する過程で、前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させる際に、前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けてはならない理由はない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からして、引用発明1において、前記転写する過程で、前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させる際に、前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けるようになすことは、当業者が上記(ア)の周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。 ウ 効果について 本願補正発明2の奏する効果は、引用発明1の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。 エ まとめ したがって、本願補正発明2は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 本願補正発明2と引用発明2との対比・判断 (1)対比 本願補正発明2と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「三次元表面形状を有する被印刷体(6)」と本願補正発明2の「基板」とは「被印刷物」である点で一致する。 また、引用発明2の「伸縮性を有するシート(1)」は本願補正発明2の「フレキシブルな膜」に相当する。 よって、引用発明2の「前記被印刷体(6)表面に前記シート(1)の転写画像(3)面を圧着して該転写画像(3)を該被印刷体(6)表面に転写する」前に、「シート(1)の裏面から押し当て、該シート(1)を吸引することにより、該シート(1)を被印刷体(6)の表面形状を反転させた形状である反転形状に変形させて」密着させる圧胴(5)と、本願補正発明2の「成形取付具」とは、「『前記フレキシブルな膜に近接して配置』され、『前記被印刷物との接触前に前記被印刷物に対し補完的な形状へと前記膜を成形する』もの」である点で一致するといえる。 イ 引用発明2の「三次元表面形状を有する被印刷体へ印刷する印刷方法」、「印刷手段により適宜印刷法にて印刷を行って形成された転写画像(3)」、「圧着」及び「前記シート(1)の転写画像(3)」は、それぞれ、本願補正発明2の「印刷するための方法」、「印刷されたイメージ」、「接触」及び「前記膜上に印刷された前記イメージ」に相当する。 ウ 引用発明2の「次いで、前記被印刷体(6)表面に前記シート(1)の転写画像(3)面を圧着して該転写画像(3)を該被印刷体(6)表面に転写する(過程)」と本願補正発明2の「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けることにより前記フレキシブルな膜より前記基板へと前記印刷されたイメージを転写する過程」とは、「前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させることにより前記フレキシブルな膜より前記被印刷物へと前記印刷されたイメージを転写する過程」である点で一致する。 エ 上記アないしウから、本願補正発明2と引用発明2とは、 「被印刷物上に印刷するための方法であって、 表面を有する被印刷物を提供する過程と、 印刷されたイメージを有するフレキシブルな膜を提供する過程と、 前記フレキシブルな膜に近接して成形取付具を配置する過程と、 前記被印刷物との接触前に前記膜を前記被印刷物に対し補完的な形状へ成形する過程と、 前記膜が前記成形取付具によって補完的な形状に成形された後に前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させることにより前記フレキシブルな膜より前記被印刷物へと前記印刷されたイメージを転写する過程とを含む方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点7: 前記「被印刷物」が、本願補正発明2では「基板」であるのに対して、引用発明2では「三次元表面形状を有する被印刷体」である点。 相違点8: 前記転写する過程において、前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させることを、本願補正発明2では、「前記基板」を前記フレキシブルな膜に押し付けることで行うのに対して、引用発明2では「前記膜」を押し付ける点。 (2)判断 上記相違点7及び8について検討する。 ア 相違点7について 引用発明2の「三次元表面形状を有する被印刷体へ印刷する印刷装置」を用いて「基板(一例として、上記特開平6-171062号公報に記載されている「プリント配線基板」などの「被印刷物」である「ワーク22」参照。)」に印刷できることは当業者に自明であるから、引用発明2において、上記相違点7に係る本願補正発明2の構成となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。 イ 相違点8について (ア)「被印刷物を押し付けてイメージと被印刷物とを押圧接触させることによりイメージを被印刷物に転写して印刷する」ことは本願の優先日前に周知である(上記3(2)イ(ア)参照。)。 (イ)引用例2の記載からみて、引用発明2において、前記転写する過程で、前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させる際に、前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けてはならない理由はない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からして、引用発明2において、前記転写する過程で、前記被印刷物と前記フレキシブルな膜とを押圧接触させる際に、前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けるようになすこと、すなわち、引用発明2において、上記相違点8に係る本願補正発明1の構成となすことは、当業者が上記(ア)の周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。 ウ 効果について 本願補正発明2の奏する効果は、引用発明2の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。 エ まとめ したがって、本願補正発明2は、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 小括 本願補正発明1及び2は、上記3ないし6のとおり、当業者が、引用例1に記載された発明又は引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成20年1月24日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし111に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項2に係る発明(以下「本願発明1」という。)及び請求項62に係る発明(以下「本願発明2」という。)は、それぞれ、上記「第2〔理由〕1」で、本件補正前の請求項2及び請求項62として記載したとおりのものである。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明1は、前記第2で検討した本願補正発明1から、「転写」についての「前記膜上に印刷された前記イメージとの接触に前記基板を押し付けることによって」行うとの限定を省いたものに相当し、本願発明2は、前記第2で検討した本願補正発明2から、「転写」についての「前記基板を前記フレキシブルな膜に押し付けることによ」るものであるとの限定を省いたものに相当する。 そうすると、それぞれ本願発明1及び2の構成要件をすべて含み、さらに減縮したものに相当する本願補正発明1及び2が、前記「第2〔理由〕3ないし6」に記載したとおり、当業者が、引用例1に記載された発明又は引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1及び2も同様の理由により、当業者が、引用例1に記載された発明又は引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が、引用例1に記載された発明又は引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-19 |
結審通知日 | 2010-05-25 |
審決日 | 2010-06-07 |
出願番号 | 特願2003-559777(P2003-559777) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41F)
P 1 8・ 575- Z (B41F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國田 正久 |
特許庁審判長 |
小牧 修 |
特許庁審判官 |
藏田 敦之 菅野 芳男 |
発明の名称 | イメージ転写方法及び装置 |
代理人 | 大島 陽一 |