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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1225944
審判番号 不服2009-11018  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-15 
確定日 2010-10-29 
事件の表示 特願2003- 18111「ガイドシュー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日出願公開、特開2004-231304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成15年1月28日に特許出願されたものであり、平成20年7月8日付けで拒絶理由が通知され、同年9月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年3月24日付けで拒絶査定がなされ、同年6月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されて明細書を補正する手続がなされたが、平成21年6月15日付けで提出の手続補正書は平成20年改正特許法第17条の2第1項第4号に規定する拒絶査定不服審判請求と同時に提出されたものではないとして平成21年10月15日付けの手続却下の処分により上記手続は却下されたものである。
そして、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年9月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「移動路に設けたガイドレールと摺動してエレベータの乗り籠等の移動体の移動を案内するガイドシューであって、
前記ガイドレールと摺動するシューの外面に防振ゴムを一体成形したシュー組立体および前記シュー組立体を保持してこれを前記移動体に固定するハウジングを備えたガイドシュー組立体と、前記ガイドレールと摺動するシューの外面に防振ゴムを一体成形した連結用シュー組立体および前記連結用シュー組立体を保持する連結用ハウジングを備えた連結用ガイドシュー組立体とを有し、
前記ガイドシュー組立体の上方に前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能として前記シューの摺動方向長さを調整可能とし、
前記ガイドシュー組立体におけるハウジングには、その正面に設けた前記シュー組立体を収容するための溝状の収容凹部の下端部に、収容したシュー組立体が下方へ脱落するのを抑制するフランジ状の受け部が設けられ、これに対し前記連結用ガイドシュー組立体における連結用ハウジングには、前記受け部に相当する構造は設けられておらず、前記受け部の有無において前記ガイドシュー組立体と前記連結用ガイドシュー組立体は互いに異なる構造とされていることを特徴とするガイドシュー。」



2.引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-261259号公報(以下、「引用刊行物」という。)に記載された事項

引用刊行物には、以下の事項が図面とともに記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エレベータの昇降路に設けたガイドレールと摺動して乗りかごの昇降を案内するエレベータのガイドシューに関し、より詳しくは、摩耗したシューの交換を容易かつ安価に行えるように改良されたガイドシューに関する。」(段落【0001】)

イ.「【0009】そこで、本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、摩耗したシューの交換を容易かつ安価に行えるエレベータのガイドシューを提供することにある。」(段落【0009】)

ウ.「【0016】図1に示したように、本実施形態のエレベータのガイドシュー10は、エレベータの乗りかごに固定されるハウジング11と、このハウジング11の内部に収納されるシュー組立体12、およびこのシュー組立体12をハウジング11内に固定する固定手段としてのプレート13およびボルト14を備えている。
【0017】前記ハウジング11は、ガラス繊維入りの樹脂材料から一体に射出成形されたもので、その中央部には前記シュー組立体12を収納する収納凹部15が凹設されている。前記収納凹部15の3つの内壁面の下部には、図示されないガイドレールに向かって延びるフランジ(保持部)16が垂設されている。そして、このフランジ16の内側空間であるガイドレール挿通部17に、図示されないガイドレールが挿通される。また、乗りかご3に密着する後壁18には、このハウジング11を乗りかご3に固定するボルト31を挿通する、合計4個のボルト孔19が貫設されている。また、このハウジング11の上部には、前記プレート13を受容する平坦な凹部であるプレート装着部20が凹設されるとともに、前記ボルト14が螺合する雌ねじが螺設されたねじ孔21が形成されている。さらに、収納凹部15の正面の内壁面には上下方向に延びる凹溝22が凹設されている。
【0018】前記シュー組立体12は、ガイドレール2の摺動部2aに外嵌して摺動するシュー23の外周面に、防振ゴム24を一体に成形したものである。」(段落【0016】ないし【0018】)

エ.「【0021】前記プレート13は、やや厚手の鋼鈑を打ち抜き成形したもので、ボルト14によってハウジング11に螺着されると、シュー組立体12をハウジング11内に堅固に保持できるだけの強度および剛性を有している。また、このプレート13には、ガイドレール2を挿通するガイドレール挿通部28が切り欠かれている。さらに、このプレート13には、このプレート13をハウジング11に固定するボルト14を挿通するための左右一対のボルト孔29が貫設されている。」(段落【0021】)

オ.「【0022】本実施形態のガイドシュー10を組み立てる際には、まず最初に、ハウジング11の収納凹部15内にシュー組立体12を挿入する。このとき、シュー組立体12の防振ゴム24を収納凹部15に圧入することになるが、防振ゴム24の挿入側の端部には丸みを帯びた案内部26が設けられているため、容易に圧入することができる。その後、ハウジング11の上部に設けたプレート装着部20にプレート13を装着し、ボルト14で固定すれば組み立てを完了する。
【0023】組み立てが完了すると、シュー23の上面23aの一部がプレート13に密着するとともに、その下面23bの一部がハウジング11のフランジ16に密着する。これにより、シュー23はハウジング11内において、上下方向には相対変位できないが、防振ゴム24の撓みに伴って前後左右方向には相対変位することができる。なお、防振ゴム24の背面に凸設した上下方向に延びる凸部27が、収納凹部15の背面に凹設した上下方向に延びる凹溝22と左右方向に係合しているので、防振ゴム24の左右方向への過剰な変形を規制することができる。」(段落【0022】及び【0023】)

カ.「【0024】組み立てを完了したガイドシュー10を乗りかご3に固定する際には、エレベータの昇降路1に設けたガイドレール2の摺動部2aに、ガイドシュー10のシュー23を外嵌する。次いで、ガイドシュー10をガイドレール2上で摺動させて乗りかご3側に変位させ、乗りかご3の所定位置にボルト31で固定する。」(段落【0024】)

キ.「【0025】乗りかご3の昇降に伴って摩耗したシュー23を交換する際には、まず最初にボルト14を緩めてプレート13を取り除く。次いで、シュー組立体12に上向きの力を作用させることにより、シュー組立体12をハウジング11の収納凹部15から上方に抜出すことができる。このとき、図3に示したように、シュー23の下面23bの一部がハウジング11のガイドレール挿通部17内に露出している。これにより、この部分に治工具を突き当てれば、シュー組立体12を容易に上方に押動することができる。」(段落【0025】)

ク.「【0029】また、古いシュー組立体12を取り除く際には、プレート13およびボルト14をハウジング11から取り外した後に、古いシュー組立体12をガイドレール2に沿わせて上方に変位させれば良く、ハウジング11を乗りかご3から取り外す必要がない。同様に、新しいシュー組立体12をハウジング11に組み付ける際には、新しいシュー組立体12をガイドレール2に外嵌させた状態でハウジング11側に変位させて収納凹部15内に収納した後、ボルト14を用いてプレート13をハウジング11に組み付けてシュー組立体12を固定すれば良い。これにより、本実施形態のエレベータのガイドシュー10においては、シューを交換する作業を容易に行うことができる。」(段落【0029】)

ケ.「【0030】以上、本発明に係るエレベータのガイドシューの一実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、上述した実施形態においては、シュー組立体12の下側をハウジング11に設けたフランジ16によって保持しているが、上側と同様にプレートおよびボルトを用いて保持することもできる。」(段落【0030】)

(2)上記(1)並びに図1及び図2からわかること。
上記(1)ウ.に「【0016】図1に示したように、本実施形態のエレベータのガイドシュー10は、エレベータの乗りかごに固定されるハウジング11と、このハウジング11の内部に収納されるシュー組立体12、およびこのシュー組立体12をハウジング11内に固定する固定手段としてのプレート13およびボルト14を備えている。」とあること及び上記(1)オ.に「【0022】本実施形態のガイドシュー10を組み立てる際には、まず最初に、ハウジング11の収納凹部15内にシュー組立体12を挿入する。・・(中略)・・その後、ハウジング11の上部に設けたプレート装着部20にプレート13を装着し、ボルト14で固定すれば組み立てを完了する。」とあること並びに図1及び図2からみて、引用刊行物に記載された「ガイドシュー10」は「ガイドレール2」と摺動する「シュー23」の外面に「防振ゴム24」を一体成形した「シュー組立体12」および前記「シュー組立体12」を保持してこれを「乗りかご3」に固定する「ハウジング11」を備えたガイドシュー組立体を有することがわかる。

(3)引用刊行物に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用刊行物には次の発明が記載されていると認められる。

「昇降路1に設けたガイドレール2と摺動して乗りかご3の移動を案内するガイドシュー10であって、
前記ガイドレール2と摺動するシュー23の外面に防振ゴム24を一体成形したシュー組立体12および前記シュー組立体12を保持してこれを前記乗りかご3に固定するハウジング11を備えたガイドシュー組立体を有し、
前記ガイドシュー組立体におけるハウジング11には、その正面に設けた前記シュー組立体12を収容するための溝状の収容凹部15の下端部に、収容したシュー組立体12が下方へ脱落するのを抑制するフランジ16が設けられているガイドシュー10。」
(以下、「引用発明」という。)



3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、両者の対応関係は次のとおりである。

引用発明における「昇降路1」は、その機能からみて、本願発明における「移動路」に相当し、以下同様に「ガイドレール2」は「ガイドレール」に、「乗りかご3」は「エレベータの乗り籠等の移動体」に、「ガイドシュー10」は「ガイドシュー」に、「シュー23」は「シュー」に、「防振ゴム24」は「防振ゴム」に、「シュー組立体12」は「シュー組立体」に、「ハウジング11」は「ハウジング」に、「フランジ16」は「フランジ状の受け部」に、それぞれ相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「移動路に設けたガイドレールと摺動してエレベータの乗り籠等の移動体の移動を案内するガイドシューであって、
前記ガイドレールと摺動するシューの外面に防振ゴムを一体成形したシュー組立体および前記シュー組立体を保持してこれを前記移動体に固定するハウジングを備えたガイドシュー組立体を有し、
前記ガイドシュー組立体におけるハウジングには、その正面に設けた前記シュー組立体を収容するための溝状の収容凹部の下端部に、収容したシュー組立体が下方へ脱落するのを抑制するフランジ状の受け部が設けられているガイドシュー。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

「ガイドシュー」について、本願発明においては「ガイドシュー組立体」に加えて「前記ガイドレールと摺動するシューの外面に防振ゴムを一体成形した連結用シュー組立体および前記連結用シュー組立体を保持する連結用ハウジングを備えた連結用ガイドシュー組立体とを有し、前記ガイドシュー組立体の上方に前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能として前記シューの摺動方向長さを調整可能」とするとともに「ガイドシュー組立体におけるハウジングには、」「フランジ状の受け部が設けられ、これに対し前記連結用ガイドシュー組立体における連結用ハウジングには、前記受け部に相当する構造は設けられておらず、前記受け部の有無において前記ガイドシュー組立体と前記連結用ガイドシュー組立体は互いに異なる構造とされている」のに対して、引用発明においては「ガイドシュー組立体」のみを有し、「前記ガイドシュー組立体におけるハウジング11には、」「フランジ16が設けられている」ものの、「フランジ16」に相当する構造は設けられていない連結用ハウジングを備える連結用ガイドシュー組立体を有しておらず、「ガイドシュー組立体」の上方に連結用ガイドシュー組立体を連結可能としてシューの摺動方向長さを調整可能とするものではない点(以下、「相違点」という。)。



4.判断
上記相違点について検討する。
基本エレメントと、上記基本エレメントとは一部構造が異なる複数の連結用エレメントを有し、上記基本エレメントと上記連結用エレメントとを連結したり、上記基本エレメントと上記連結用エレメントとを連結したものに更にして上記連結用エレメントを連結することによって装置全体の規模を調整することは周知慣用技術(必要があれば、例えば、特開平7-280306号公報の段落【0019】ないし【0021】及び図2、特開平9-173749号公報の段落【0010】ないし【0013】及び【0016】並びに図1及び図2、特開2000-274716号公報の段落【0016】ないし【0020】及び【0025】並びに図3ないし図5、特開平6-5193号公報の段落【0008】ないし【0010】、【0013】及び【0014】並びに図1ないし図6、実願平5-70570号(実開平7-41217号)のCD-ROMの段落【0011】、【0014】、【0015】及び【0020】、実公昭13-3817の第2ページ第5行ないし第8行及び第1図ないし第3図を参照されたい。以下、「周知慣用技術」という。)である。

一方、引用発明においては、上記「ガイドシュー10」は乗りかごの昇降を案内するエレベータのガイドシューであるから、乗りかごの大きさによって上記「ガイドシュー10」の規模を変える必要があるという課題を内在していることは明らかである。
また、上記2.(1)イ.に「【0009】そこで、本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、摩耗したシューの交換を容易かつ安価に行えるエレベータのガイドシューを提供することにある。」とあること及び上記2.(1)キ.に「【0025】乗りかご3の昇降に伴って摩耗したシュー23を交換する際には、まず最初にボルト14を緩めてプレート13を取り除く。次いで、シュー組立体12に上向きの力を作用させることにより、シュー組立体12をハウジング11の収納凹部15から上方に抜出すことができる。このとき、図3に示したように、シュー23の下面23bの一部がハウジング11のガイドレール挿通部17内に露出している。これにより、この部分に治工具を突き当てれば、シュー組立体12を容易に上方に押動することができる。」とあることからみて、引用発明においては、ガイドシューにおいて摩耗したシューの交換を容易かつ安価に行えるようにするために、「ハウジング11」の「ガイドレール挿通部17」内に露出している「シュー23」の「下面23b」の一部に治工具を突き当てれば、「シュー組立体12」を容易に上方に押動することができるという機能を奏するようにしたものである。

そして、引用発明において、上記課題を解決するために、上記周知慣用技術を適用し、その際に上記機能が失われないように、基本エレメントとしての「ガイドシュー組立体」に加えて「ガイドレール2」と摺動するシューの外面に防振ゴムを一体成形した連結用シュー組立体および前記連結用シュー組立体を保持する連結用ハウジングを備えた、連結用エレメントとしての連結用ガイドシュー組立体を備え、前記「ガイドシュー組立体」の上方に前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能としてシューの摺動方向長さを調整可能とするとともに前記連結用ガイドシュー組立体における連結用ハウジングには、「ガイドシュー組立体」における「フランジ16」に相当する構造は設けず、前記「フランジ16」の有無において前記「ガイドシュー組立体」と前記連結用ガイドシュー組立体は互いに異なる構造とされているように構成することは当業者にとって格別困難なことであるとは認められない。
なお、上記2.(1)ク.に「【0030】・・(中略)・・例えば、上述した実施形態においては、シュー組立体12の下側をハウジング11に設けたフランジ16によって保持しているが、上側と同様にプレートおよびボルトを用いて保持することもできる。」とあるように、引用発明においては、「ハウジング11」の上側及び下側をプレートおよびボルトを保持する構成、つまり、「ハウジング11」において「フランジ16」を備えない構成が実施態様として示唆されている。

よって、引用発明において、上記周知慣用技術を適用して上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知慣用技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。



5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。



6.付記
(1)平成21年10月15日付けの手続却下の処分によりその手続が却下された平成21年6月15日付けで提出の手続補正書には請求項1として以下のものが記載されている。

「移動路に設けたガイドレールと摺動してエレベータの乗り籠等の移動体の移動を案内するガイドシューであって、
前記ガイドレールと摺動するシューの外面に防振ゴムを一体成形したシュー組立体および前記シュー組立体を保持してこれを前記移動体に固定するハウジングを備えたガイドシュー組立体と、前記ガイドレールと摺動するシューの外面に防振ゴムを一体成形した連結用シュー組立体および前記連結用シュー組立体を保持する連結用ハウジングを備えた連結用ガイドシュー組立体とを有し、
前記ガイドシュー組立体の上方に前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能として前記シューの摺動方向長さを調整可能とし、
前記ガイドシュー組立体におけるハウジングには、その正面中央に設けた前記シュー組立体を収容するための溝状の収容凹部の下端部に、収容したシュー組立体が下方へ脱落するのを抑制するフランジ状の受け部が設けられ、正面両側には雌ネジが形成された上側フランジ部、下側フランジ部および凹部が形成され、これに対し前記連結用ガイドシュー組立体における連結用ハウジングには、正面中央に前記シュー組立体を収容する収容凹部が形成され、正面両側には雌ネジが形成された上側フランジ部、前記雌ネジと位置を合わせて形成された連結ボルトの差込み孔が形成された下側フランジ部および凹部が形成されており、前記シュー組立体が有する前記受け部に相当する構造は設けられておらず、前記受け部の有無において前記ガイドシュー組立体と前記連結用ガイドシュー組立体は互いに異なる構造とされ、
前記雌ネジと位置を合わせて形成された連結ボルトの差込み孔が形成された蓋を更に有し、前記蓋の差込み孔または前記連結用ガイドシュー組立体の差込み孔に連結ボルトを挿し込んで前記ガイドシュー組立体の雌ネジに締結することで前記ガイドシュー組立体に前記蓋または前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能とし、また前記蓋の差込み孔または前記連結用ガイドシュー組立体の差込み孔に連結ボルトを挿し込んで前記連結用ガイドシュー組立体の雌ネジに締結することで前記連結用ガイドシュー組立体に前記蓋または前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能として前記シューの摺動方向長さを調整可能としていることを特徴とするガイドシュー。」

(2)上記請求項1には「前記ガイドシュー組立体におけるハウジングには、・・(中略)・・収容したシュー組立体が下方へ脱落するのを抑制するフランジ状の受け部が設けられ」という記載(以下、「記載A」という。)があり、「ガイドシュー組立体」における「ハウジング」に「フランジ状の受け部」が設けられているとされる。他方で上記請求項1には「これに対し前記連結用ガイドシュー組立体における連結用ハウジングには、・・(中略)・・前記シュー組立体が有する前記受け部に相当する構造は設けられておらず、」という記載(以下、「記載B」という。)があり、前記「受け部」を有するのは「シュー組立体」とされている。よって、上記記載Aの示す技術事項と上記記載Bの示す技術事項とに整合性はみられず、上記請求項1は不明確な記載を含むものとなっているから、上記請求項1によって本件出願の発明を特許すべきとすることはできない。

(3)仮に、上記記載Bを「これに対し前記連結用ガイドシュー組立体における連結用ハウジングには、・・(中略)・・前記ガイドシュー組立体におけるハウジングが有する前記受け部に相当する構造は設けられておらず、」と解すると、上記請求項1に記載されているものは本願発明に以下の技術事項を加えたものであるといえる。

a.ガイドシュー組立体におけるハウジングの「正面両側には雌ネジが形成された上側フランジ部、下側フランジ部および凹部が形成され」ている点。

b.連結用ガイドシュー組立体における連結用ハウジングの「正面中央に前記シュー組立体を収容する収容凹部が形成され、正面両側には雌ネジが形成された上側フランジ部、前記雌ネジと位置を合わせて形成された連結ボルトの差込み孔が形成された下側フランジ部および凹部が形成されて」いる点。

c.「前記雌ネジと位置を合わせて形成された連結ボルトの差込み孔が形成された蓋を更に有し、前記蓋の差込み孔」「に連結ボルトを挿し込んで前記ガイドシュー組立体の雌ネジに締結することで前記ガイドシュー組立体に前記蓋」「を連結可能」とする点。

d.「前記連結用ガイドシュー組立体の差込み孔に連結ボルトを挿し込んで前記ガイドシュー組立体の雌ネジに締結することで前記ガイドシュー組立体に」「前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能」とする点。

e.「前記蓋の差込み孔」「に連結ボルトを挿し込んで前記連結用ガイドシュー組立体の雌ネジに締結することで前記連結用ガイドシュー組立体に前記蓋」「を連結可能」とする点。

f.「前記連結用ガイドシュー組立体の差込み孔に連結ボルトを挿し込んで前記連結用ガイドシュー組立体の雌ネジに締結することで前記連結用ガイドシュー組立体に」「前記連結用ガイドシュー組立体を連結可能」とする点。

(4)引用刊行物においては、上記2.(1)ウ.及び図1からみて、「ハウジング11」の正面両側には「雌ねじ孔21」が形成された上側フランジ部、下側フランジ部および凹部が形成されていることがわかる。よって、引用刊行物には上記(3)a.に相当する技術事項が記載されていると認められる。

(5)引用刊行物においては、上記2.(1)エ.及び図1からみて、「プレート13」には前記「雌ねじ孔21」と位置を合わせて形成された「ボルト14」を挿通するための「ボルト孔29」が形成され、前記「ボルト孔29」に「ボルト14」を挿し込んで前記「ハウジング11」の「雌ねじ孔21」の「雌ねじ」に締結することで前記「ハウジング11」に前記「プレート13」を連結可能としていることがわかる。よって、引用刊行物には上記(3)c.に相当する技術事項が記載されていると認められる。

(6)上記(4)で述べたように「ハウジング11」の正面両側には「雌ねじ孔21」が形成された上側フランジ部、下側フランジ部および凹部が形成されている。そして、上記4.において述べた周知慣用技術を引用刊行物に記載された「ガイドシュー10」に適用し、前記「ハウジング11」からなる基本エレメントとは構造が異なる複数の連結用エレメントを前記「ハウジング11」と同様に正面両側には「雌ねじ孔21」が形成された上側フランジ部、下側フランジ部および凹部が形成されているように構成することは格別困難なものではない。
また、上記(5)で述べたように前記「ハウジング11」に連結可能とされる前記「プレート13」には前記「雌ねじ孔21」と位置を合わせて形成された「ボルト14」を挿通するための「ボルト孔29」が形成されており、前記「プレート13」と前記「ハウジング11」からなる基本エレメントに連結可能な前記連結用エレメントとは前記「ハウジング11」に連結可能とされる部材である点で同様である点を上記適用に際して考慮すれば、上記連結用エレメントの下側フランジ部に前記「雌ねじ孔21」と位置を合わせて形成された「ボルト14」を挿通するための「ボルト孔29」が形成することも格別困難なものではない。
よって、上記(3)b.に相当する技術事項は引用刊行物と周知慣用技術から容易に想到されるものと認められる。

(7)そして、上記(4)ないし(6)で述べたような前記「プレート13」、前記「ハウジング11」からなる基本エレメント、前記基本エレメントに連結可能な前記連結用エレメントを適宜連結すれば上記(3)d.ないしf.に相当する技術事項が達成されると認められる。

(8)したがって、上記請求項1に記載されているものも、本願発明と同様に引用刊行物に記載されたもの及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許すべきとすることはできない。
 
審理終結日 2010-08-31 
結審通知日 2010-09-01 
審決日 2010-09-14 
出願番号 特願2003-18111(P2003-18111)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 良憲  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 大谷 謙仁
加藤 友也
発明の名称 ガイドシュー  
代理人 野本 陽一  
代理人 野本 陽一  

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