ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 D06F |
---|---|
管理番号 | 1226792 |
審判番号 | 無効2009-800037 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-02-20 |
確定日 | 2010-10-14 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3095454号発明「洗濯機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第3095454号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。 平成 3年 6月14日 特許出願。 平成12年 8月 4日 特許権の設定登録(請求項の数1)。 平成21年 2月20日 無効審判請求。 平成21年 5月25日 答弁書(第1回)。 訂正請求。 平成21年 7月 3日 弁駁書。 平成21年 8月26日 答弁書(第2回)。 第2 訂正の可否に対する判断 平成21年5月25日付けの訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、特許第3095454号の明細書を訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。 1.訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の「報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものであって、その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたことを特徴とする洗濯機。」を「報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものであって、その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたことを特徴とする洗濯機。」に訂正する。 訂正事項b 明細書段落【0005】の「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の洗濯機においては、異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたところに特徴を有する。」を「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の洗濯機においては、異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたところに特徴を有する。」に訂正する。 訂正事項c 明細書段落【0019】の「このように、本構成のものでは、異常発生時のブザー25鳴動中(報知装置作動中)は、操作入力の制限をすることによって、操作キー16からの操作入力(ブザー25の鳴動を停止させる操作入力)と電源スイッチ7からの操作入力(電源を遮断する操作入力)以外の他の操作入力を受付けず、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をするようにしているから、異常発生時に使用者がブザー25の鳴動を停止させる正規の操作入力以外のむやみなキー操作をしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、異常の発生あるいは異常の内容を極力確実に認識させ得るもので、それにより、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができる。」を「このように、本構成のものでは、異常発生時のブザー25鳴動中(報知装置作動中)は、操作入力の制限をすることによって、操作キー16からの操作入力(ブザー25の鳴動を停止させる操作入力)と電源スイッチ7からの操作入力(電源を遮断する操作入力)以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をするようにしているから、異常発生時に使用者がブザー25の鳴動を停止させる正規の操作入力以外のむやみなキー操作をしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、異常の発生あるいは異常の内容を極力確実に認識させ得るもので、それにより、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができる。」に訂正する。 訂正事項d 明細書段落【0022】の「【発明の効果】以上の記述で明らかなように、本発明の洗濯機は、報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものにあって、その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたことを特徴とするもので、それにより、異常発生時に使用者がむやみなキー操作をしたとしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができ、そのほか、報知装置の作動を任意に停止させることももちろんできて、更にリセットも任意にさせることができるという優れた効果を奏する。」を「【発明の効果】以上の記述で明らかなように、本発明の洗濯機は、報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものにあって、その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたことを特徴とするもので、それにより、異常発生時に使用者がむやみなキー操作をしたとしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができ、そのほか、報知装置の作動を任意に停止させることももちろんできて、更にリセットも任意にさせることができるという優れた効果を奏する。」に訂正する。 2.訂正の適否 訂正事項aは、特許明細書段落【0015】中の「次いでブザー25を鳴動させて、この場合、異常発生の報知をし(ステップS10)、その後、電源スイッチ7がオフ操作されたか否かの判断をし(ステップS11)、オフ操作されない(NO)と判断されれば、次にブザー用の操作キー16が操作されたか否かの判断をして(ステップS12)、操作された(YES)と判断されれば、直ちに、操作されないと判断されれば、その後15秒経過するのを待って(ステップS13)、ブザー25の鳴動を停止させる(ステップS14)。」との記載、及び【図1】のフローチャートに基づいて、制御内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この点について、請求人は、1)特許された請求項1に記載された発明では、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御は、異常発生時の報知装置作動中全域に亘って実行されているのに対し、訂正後の当該発明では、異常発生時の報知装置作動中であり、かつ、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合に限り実行されているものと解釈されるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであり、2)本件明細書には、電源を遮断する操作入力の有無を確認することなく、「報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、」表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をすることの開示も示唆もないから、明細書又は図面に記載した事項の範囲外の補正であり、3)異常発生時の報知装置作動中の制御につき、特許時には、「操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、」という制御と「表示装置を異常表示作動状態に保つ」制御とが並列構造で規定されていたものが、訂正後には、表示装置の制御に変更されているから、特許請求の範囲が実質上変更されている旨の主張をしている(平成21年7月3日付け弁駁書第2?6頁6.(1)訂正請求の認容の可否)ので検討する。 まず、1)の点についてみると、訂正後の請求項1に記載された発明において、「報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合」に限って「表示装置を異常表示作動状態に保つ制御」を行っているという限定は付加されておらず、この点についての請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものである。 そもそも異常時には報知装置と表示装置が作動しており、報知装置の作動を停止する操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けないのであるから、表示装置は作動したままであることは明らかであって、請求人の主張のような解釈は前提において誤りがある。 次に、2)の点についてみると、確かに、特許明細書中、実施例としてブザー鳴動後、電源スイッチオフ操作がなされたものか判断した後で、ブザーオフキー操作の判断をするものが示されている。 しかしながら、特許請求の範囲において、実施例記載のとおりのものを請求する必要がないことは言うまでもないことであって、この点について、請求人の主張には、理由がない。 さらに、3)の点についてみると、特許された請求項1の発明も、訂正後の請求項1の発明も、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御を行う点で相違するところはなく、訂正後の請求項1の発明は、報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合を明確にしたものであって、実質上特許請求の範囲を変更又は拡張したものではない。 以上のとおりであるから、請求人の前記主張は、採用できない。 そして、訂正事項b?dは、いずれも特許請求の範囲の訂正である訂正事項aの訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を整合しようとするものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 3.むすび 以上のとおり、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、本件訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 本件発明について 1.本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるので、本件の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されたとおりのものである(前記「第2.(1)訂正事項a」参照。以下「本件発明」という。)。 2.請求人の主張 請求人は、本件特許の請求項1に係る発明は、下記の甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから無効である旨主張(審判請求書)し、さらに、訂正請求が認められたとしても、訂正により付加された構成要件は、良く知られた事項であるとし、下記の甲第6?8号証を提示し、請求項1に係る発明の特許は、無効である旨の主張している(平成21年7月3日付け弁駁書)。 甲第1号証:松下電器産業株式会社、Technical Guide 全 自動洗濯機 NA-F55Y6、平成3年2月、p1?31 甲第2号証:特開平1-166800号公報 甲第3号証:米国特許第4195500号明細書 甲第4号証:特開昭61-29394号公報 甲第5号証:特開昭56-162122号公報 甲第6号証:特開昭57-176424号公報 甲第7号証:実公昭44-27389号公報 甲第8号証:特公昭45-34061号公報 3.引用例 甲各号証には、以下の事項が記載されている。 (1)甲第1号証 甲第1号証について、被請求人は、これが特許法第29条第1項第3号にいう刊行物に該当せず、本件特許発明の出願前に頒布されたものか不明である旨主張している(平成21年5月25日付け答弁書第3頁第5行?第4頁第11行)。 しかし、当該証拠に、機密を示す記載は見当たらず、「発行 平成3年2月」との記載が見られることから、当審においては、本件特許発明の出願前に頒布された刊行物であると推認して、検討することとする。 甲第1号証には、図面とともに以下の記載がある。 ア 「定格(仕様比較一覧表)」において、ブザーの項目に、終了報知、受付報知、異常報知との内容が示されている(第4頁)。 イ 「■操作部の名称と働き」欄において、上段左から2番目の枠に、進行表示/・現在進行中の行程を表示します。との記載、「■基本動作と表示の項目」欄において、(1)[原文は、○数字に1]初期設定状態(電源スイッチ投入時)の下の枠内に、時計部:現在時刻表示との記載がある(第12頁)。 ウ 「分解要領」欄において、写真の項目に、ふたスイッチ の記載がある(第17頁)。 エ 「 ■異常報告内容」欄において、 「※操作間違いや、排水不良及び脱水不良など、洗濯機に異常があると異常報知を行ない運転を停止しエラー表示しま」との記載があり、その下の表には、「異常項目」、「異常表示」、「処理」、「解除方法」の項目が示され、 異常項目「・排水異常」 異常表示「E1 ・16分毎に10秒間 ・進行表示LED 「洗たく・すすぎ・脱水」点滅」 解除方法 「フタの開閉をしてください。」 異常項目「・予約時刻異常」異常表示「E11予約 ・16分毎に10秒間ピー音鳴る ・進行表示LED「洗たく・すすぎ・脱水」点滅 解除方法 「「予約」スイッチを押してください。」 異常項目「電子水位(圧力)スイッチ異常」 異常表示「FF1 ・電源スイッチが切れます(オートオフ)」 解除方法「電源コンセントを抜いてください。」 との記載がある(第21頁)。 以上の記載から、甲第1号証には、 「ブザーと表示部を具え、異常があるとそれらを作動させるようにしたものであって、フタの開閉をすること、スイッチを押すこと、電源コンセントを抜くことなどによりその作動を解除する制御手段を具えた全自動洗濯機。」(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 (2)甲第2号証 甲第2号証には、図面とともに、次の記載がある。 ア 「本発明は、水位検知手段を備えた洗濯機の制御装置に関するものであ る。」(第1頁左下欄第15?16行) イ 「本発明は、この溢水状態を早期に検知し、使用者に表示またはブザー を用いて報知することを目的とする。」(第1頁右下欄第14?16行 ) ウ 「本発明の実施例を第1図?第4図により説明する。本実施例の具体構成は第1図に示すように、水位検知手段1とこれを入力とし・・・表示手段6、ブザー7を制御する制御手段9を備えている。」(第2頁左上欄第17行?右上欄第6行) エ 「しかしながら排水ホースが倒し忘れられた場合には、・・・溢水状態の判別を行うものである。この情報にもとずいて、制御手段9はモータ4及び給水弁5をoffし、表示手段6またはブザー7を用いて使用者に異常を知らしめるものである。さらに、この溢水報知状態から通常の状態への復帰を行うために、洗濯蓋の開閉をすれば、制御手段9は洗濯蓋8の開閉データを取り込み、溢水報知状態を解除する。」(第2頁右上欄第11行?左下欄第3行) 以上の記載から、甲第2号証には、 「ブザー7と表示手段6とを備え、溢水状態の判別を行い、これにもとずいて表示手段6またはブザー7を用いて異常を知らせ、洗濯蓋を開閉することにより通常の状態への復帰を行う制御手段9を備えた洗濯機。」(以下「甲2記載の事項」という。)が記載されている。 (3)甲第3号証 甲第3号証には、図面とともに次の記載がある。 ア 「The present invention relates to an automatic washing machine which automatically carries out the steps of washing and dehydrating , and more particularly to an automatic washing machine which can indicate the occurrence of abnormal operation in the steps of washi ng, rinsing and draining.」(第1欄12-17行。 本発明は、洗濯、 すすぎ、脱水の各工程を自動的に行う全自動洗濯機、特に、前記各工程に おける異常表示ができる全自動洗濯機に関するものである。訳は、当審に よる。以下同じ。) イ 「FIG.4 shows a block diagram of an electric circuit 25 which carries out the controls(1)to(7) described above. The electrical circuit 25 comprises an LSI central processing unit26, ・・・a drive circuit 30,・・・ , an indication circuit 38, a buzzer circuit 39, ・・・」(第4欄8-16行。第4図は、前記(1)から(7)の制御を行 う電気回路25のブロックダイアグラムを示す。電気回路25は、LSI 中央処理装置26、ドライブ回路30、・・・、表示回路、ブザー回路 を含む。) ウ 「If T≧T_(0)(that is, water level in the tub 5 does not reach the predetermined full level), the abnormal indication by the indication mode X_( 4 )is made and the operation is stopped.」(第6欄59-62行。洗濯槽5内の水位が所定の最終到達水位に達しないと(T≧T_(0))、モード X_( 4) による異常表示をし、運転を休止する。) 以上の記載から、甲第3号証には、 「ブザー回路39と表示回路38を備える全自動洗濯機であって、洗濯工程において異常が発生すると異常表示を行うものにおいて、給水の異常発生時に、その異常を表示し、運転を休止する全自動洗濯機。」(以下「甲3記載の事項」という。)が記載されている。 なお、請求人は、甲第3号証の洗濯機が、異常発生時にindication circuit 38とbuzzer circuit 39が作動し、作動中は、操作入力の制限を行うことによって indication circuit 38を異常表示作動状態に保つ制御をする旨の主張をしている(審判請求書第4頁第32行?第5頁第12行)。 しかし、図面1、4、9及び関連記載部分をみてもそのような記載は見当たらず、被請求人が、異常表示とともに、異常報知を同時に行うとの内容、及び、異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限を行うことによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受け付けないという内容の記載は開示されていないとの主張(平成21年5月25日付け答弁書第6頁第3?16行)に対し、何ら反論していない(平成21年 7月 3日付け弁駁書。)。 (4)甲第4号証 甲第4号証には、図面とともに次の記載がある。 ア 「本発明は、脱水時に於ける上蓋の開放動作と異常振動を共通のスイツチによつて検知する全自動洗濯機の検知方式に関する。」(第1頁左下欄第15?17行) イ 「第2図に於いて、マイコン(20)には、洗濯槽(3)の水位を検知する液面スイッチ(41)の検知信号、上蓋(16)の開閉に連動してOFF-ONすると共に脱水時の異常振動検知時には瞬間的にOFFする安全スイッチ(42)の制御信号、リセット回路(43)のリセット信号が夫々入力される。・・・、(46)は各種の状態を使用者に報知する報知手段としてのブザーである。」(第2頁左下欄第7?15行) ウ 「偏荷重に伴なう異常振動が脱水中に発生し、安全スイッチ(42)が一時的にOFFしてそれを検知すると、駆動モータ(7)への電源をしや断し、排水弁(10)を閉じる。そして、脱水の時間を再設定し、給水して1分間ためすすぎを行ない、排水して偏荷重を修正し、脱水を再起動する。この脱水の時間の再設定回数が3回以上になると、ブザー(46)による断続音を一定時間或いはストップキー(30)が操作されるまで発生させると共に、LED(31)?(37)をストップキー(30)が操作されるまで点滅し、異常を報知する。また、再設定回数はクリアされる。そして、ストップキー(30)によつて異常報知を解除してスタートキーを操作すれば、脱水起動を実行できる。」(第4頁左下欄第11行?右下欄第4行) エ 「そして、この設定回数が2回までは1分間ためすすぎを実行して偏荷重を修正し、排水し、再び脱水行程に入いる。3回目になると、再設定回数をクリアし、LED(31)?(33)の点滅、ブザー(46)の断続鳴音により異常報知を行なう。ブザー(46)は所定時間だけ実行されるが、ストップキー(30)の操作によりLEDの点滅と共に停止する。」(第5頁左下欄第10?16行) そして、甲第4号証のものは、前記制御を行う制御手段を具備することは明らかである。 これらの記載から、甲第4号証には、 「ブザー(46)とLED(31)?(37)とを備え、脱水の再設定回数が3回以上となると、ブザー(46)による断続音を発生させ、LED(31)?(37)を点滅するようにしたものであって、ストップキー(30)が操作されると、断続音とLEDの点滅は共に停止する制御手段を備える全自動洗濯機。」(以下「甲4発明」という。)が記載されている。 (4)甲第5号証 甲第5号証には、図面とともに次の記載がある。 ア 「第1図は本発明の一実施例である印字装置付電卓をブロツク的に示したものであり、電源容量を検出して電源容量が低下した時警告表示を行いキー入力を禁止することを可能とする。」(第1頁右下欄第17?20行) イ 「電源Bの電気容量が十分にあれば・・・CPUは何も動作しないが、・・・電源Bの電気容量が低下し、・・・表示部に通常の演算結果オーバーフローエラー等の警告表示が行なわれる。また・・・、キーボード部KBからのキー信号が禁止され、CPUに入力されない。 上記の如くして電源Bの電気容量が低下すると演算に関するすべてのキー入力が禁止され、これにより以後キー入力に基づく印字がなされないため誤印字が防げる。 フリツプフロツプF1は電源投入時のみリセツトが働くのでこのキー入力禁止状態を解除するためには一度電源スイツチPRをOFFにして、電源Bを新しい電池と交換した後再び電源スイツチPSをONすることにより、F1は“0”にリセツトされキー入力禁止状態が解除される。」(第2頁左下欄第4?右下欄第6行) 以上の記載から、甲第5号証には、 「表示部を備え、電源Bの電気容量が低下すると、表示部に警告表示を行うとともに、キー入力を禁止状態とし、電源を交換し、再び電源スイツチをONすることにより、キー入力禁止状態を解除する印字装置付電子機器。」(以下「甲5記載の事項」という。)が記載されている。 (5)甲第6号証 甲第6号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア 「本発明は宿直室設置警報盤にプロセス及び制御装置の異常を警報するシステム異常警報方式に関する。」(第1頁左下欄第11?13欄) イ 「装置異常、プロセス異常時はその接点4が動作し警報処理部1で警報判定し操作室の監視盤2に取付た、各異常項目毎に表示する異常表示ランプ5の刻当ランプ(「該当ランプ」の誤記と思われる。)を点灯するとともに警報ブザ6を吹鳴する。・・・異常発生時は、異常表示ランプ5の項目を確認し、警報停止スイツチ7を操作して警報ブザ6の吹鳴を止め、異常を復旧したのち表示復帰スイツチ8を操作して、異常表示ランプ5を消灯する。」(第1頁右下欄第7?18行) ウ 「この場合、宿直員は操作室の監視盤2の警報停止スイツチ7を操作することにより完全に警報を停止でき、監視盤2の異常表示ランプ5の項目を確認できる。」(第2頁左上欄第12?15行) 以上の記載から、甲第6号証には、 「警報ブザ6と異常表示ランプ5とを備え、装置異常、プロセス異常時は、異常表示ランプ5の該当ランプを点灯するとともに警報ブザ6を吹鳴し、異常発生時、運転員は警報停止スイツチ7を操作して警報ブザ6の吹鳴を止め、異常を復旧したのち表示復帰スイツチ8を操作して、異常表示ランプ5を消灯すること。」(以下「甲6記載の事項」という。)が記載されている。 (6)甲第7号証 甲第7号証には、次の事項が記載されている。 ア 「ここでいう集中警報装置とは、多数の計器の内どれかが警報を発したならばブザーおよび警報灯を作動させ、オペレータがその警報を確認したならば警報確認スイツチを押すことによつてブザーのみを停止させる。」(第1頁左欄第19?23行) そうすると、甲第7号証には、 「ブザーと警報灯を備え、多数の計器の内どれかが警報を発したならばブザーおよび警報灯を作動させ、オペレータがその警報を確認したならば警報確認スイッチを押すことによつてブザーのみを停止させること。」(以下「甲7記載の事項」という。)が記載されている。 (7)甲第8号証 甲第8号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。 ア 「本発明は多数の機器装置等を集中制御する場合において、各機器、装置等に異常を発生したときこれを表示し警報する異常警報装置に関するものである。」(第1頁左欄第22?25行) イ 「第3図において、L_(1),L_(2)・・・・・・Lnはそれぞれ各機器即ち、1号機、2号機・・・・・・n号機の状態を表示するランプで、各機器の停止、運転、異常に応じ消灯、点灯、点滅する。」(第1頁右欄第2?5行) ウ 「1は警報装置で例えばブザー、2は異常を確認したときブザーの吹鳴を停止させるための警報停止用リレー、4は異常時前記ランプを点滅表示させるためにフリツカ動作をするフリツカリレーである。」(第1頁右欄第12?16行) エ 「1号機に異常な事態が生じ、正常に運転されないときは、2つの接点A1bが閉路、接点A1bが開路の状態のままであるかもしくはかかる状態に変化するから、ブザー1を付勢するから警報を生じるとともに、フリツカリレー4を付勢してその接点4aの導通を断続せしめもつてランプL_(1)を点滅させる。操作員が異常を知り、ブザー停止押釦3を閉路するとリレー2が動作してその接点2aにより自己保持しまたその接点2bの開路によりブザーを消勢する。しかし1号機に異常のあることを示すランプL_(1)の点滅動作はなお続行する。」(第1頁右欄第25?36行) 以上の記載から、甲第8号証には、 「ブザー1と異常を表示するランプL_(1?)nを備え、異常な事態が生じ、正常に運転されないときは、ブザー1を付勢し警報を生じるとともに、該当するランプを点滅させ、ブザー停止押釦3を閉路すると、ブザー1を消勢し、当該ランプの点滅動作を続行すること。」(以下「甲8記載の事項」という。)が記載されている。 4.対比・判断 請求人は、平成21年7月3日付け弁駁書において、甲第1号証と甲第4号証を中心に無効を主張しているので、この順に検討する。 (1)甲1発明に基づく容易想到性について 本件発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ブザー」は本件発明の「報知装置」に相当し、以下同様に、「表示部」は「表示装置」に、「異常があると」は「異常発生時に」に、「全自動洗濯機」は「洗濯機」に、それぞれ相当している。 そして、甲1発明は、「フタの開閉をすること、スイッチを押すこと、電源コンセントを抜くことなどにより作動を解除する」までは、ブザーと表示部の作動は保持されているものと理解できるから、その制御手段は、異常表示作動状態を保つ機能を具備するものと考えられる。 そうすると、両発明は、「報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものであって、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御手段を備えた洗濯機。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点 本件発明の制御手段は、「その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知操作作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知手段の作動を停止する一方で、」(表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする)との構成を具備するのに対し、甲1発明では、該構成を具備するものであるか不明である点。 そこで、上記相違点について検討する。 そもそも、請求人は、相違点の構成の内、「その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、」についての構成が、甲第1号証に記載されていると主張しているが(審判請求書第3頁第32?35行)、このことを示す記載は見当たらない。 そこで、他の証拠について相違点の構成の内の前記構成が示されているか検討する。 甲第2号証、甲第3号証においても、請求人が主張するような記載は見当たらない。 甲第4号証に記載された甲4発明は、本件発明の「異常発生時」に相当する「脱水の再設定回数が3回以上となる」とき、本件発明の「報知装置」に相当する「ブザー」の作動を停止させる操作入力に相当する「ストップキー(30)の操作」を受付けるものである。 しかし、甲4発明は、「ストップキー(30)の操作」により電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けないという構成まで開示するものではない。 この点について、請求人は、「しかしながら、図7のフローチャートにおいて、・・・。このように、断続音、LED点滅はストップキーが操作されて初めて停止するとされている以上、他のキーの入力がされても断続音、LED点滅が継続し、他の操作を受付けず動作しないことは明らかである。」(弁駁書第9頁第7?15行)と主張している。 しかし、このフローチャート及び前記記載からは、異常報知が、ストップキーの入力により停止することを示すにとどまり、報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けないという積極的な構成まで記載されているとはいえないし、記載されているに等しいとまで言うこともできない。したがって、請求人の前記主張は、採用できない。 そして、甲第5号証記載の事項は、本件発明の「異常発生時」に相当する「電源Bの電気容量が低下する」ときに、本件発明の「操作入力を受付けず」に相当する「キー入力を禁止状態と」するものではあるが、報知装置を具備するものではなく、その報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けないことまで記載するものではなく、示唆するものでもない。 さらに、甲第6?8号証記載の事項は、「その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず」との構成について、記載するものではない。 次に、相違点の構成の内、「報知操作作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知手段の作動を停止する一方で、」(表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする)との構成について検討する。 請求人は、前記構成は、甲第6?8号証に記載のように、本件出願前、当業者において、良く知られた事項である旨主張している(弁駁書第6頁第7行?第7頁第30行)。 確かに、甲第6?8号証には、前記のとおり、装置の異常発生時、報知操作作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知手段の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする一般的な技術が記載されている。 しかし、甲第6?8号証のものは、異常報知機能を有するものではあるが、前記のとおり、「その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、」との構成を欠くものである。 そうすると、前記周知の技術事項があったとしても、甲第6?8号証のものが前記構成を欠く以上、前提構成を欠くものというべきであって、甲1発明に上記一般的な技術を適用したとしても、前記相違点の構成を容易に想到できたものということはできない。 そして、本件発明は、前記相違点の構成を具備することにより、「異常発生時に使用者がむやみなキー操作をしたとしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができ、そのほか、報知装置の作動を任意に停止させることももちろんできて、更にリセットも任意にさせることができる」という明細書記載の効果を奏するものである。 そうすると、本件発明は、甲1発明、甲4発明及び甲2、3、5?8記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (2)甲4発明に基づく容易想到性について 次に、本件発明と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「ブザー(46)」は本件発明の「報知装置」に相当し、以下同様に、「LED(31)?(37)」は「表示装置」に、「脱水の再設定回数が3回以上となる」は「異常発生」に、「全自動洗濯機」は「洗濯機」に、それぞれ相当する。 そして、甲4発明は、「ストップキー(30)が操作される」までは、「断続音とLEDの点滅」は保持されるものと理解できるから、その制御手段は、異常表示作動状態を保つ機能を具備するものと考えられる。 そうすると、両発明は、「報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものであって、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御手段を備えた洗濯機。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点 本件発明の制御手段は、「その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知操作作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知手段の作動を停止する一方で、」(表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする)との構成を具備するのに対し、甲4発明では、該構成を具備するものであるか不明である点。 そこで、まず、相違点の構成の内、「その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、」の構成について検討する。 甲第1?3、5?8号証において前記構成が、記載されていないことは、前記のとおりである(「(1)甲1発明に基づく容易想到性について」参照。)。 次に、相違点の構成の内、「報知操作作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知手段の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする」構成について検討する。 請求人は、上記構成は、甲第6?8号証に記載のように、本件出願前、当業者において、良く知られた事項である旨主張している(弁駁書第6頁第7行?第7頁第30行)。 確かに、甲第6?8号証には、前記のとおり、装置の異常発生時、報知操作作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知手段の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする一般的な技術が記載されている。 しかし、甲第6?8号証のものは、異常報知機能を有するものではあるが、前記のとおり、「その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、」との構成を欠くものである。 そうすると、前記周知の技術事項があったとしても、それらは、相違点の構成において、前提となる構成を欠くものであるから、甲4発明において、前記周知の技術を適用したとしても、相違点の構成を容易に想到できたものということはできない。 そして、本件発明は、前記相違点の構成を具備することにより、「異常発生時に使用者がむやみなキー操作をしたとしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができ、そのほか、報知装置の作動を任意に停止させることももちろんできて、更にリセットも任意にさせることができる」という明細書記載の効果を奏するものである。 そうすると、本件発明は、甲1発明、甲4発明及び甲2、3、5?8記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第162条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 洗濯機 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものであって、その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたことを特徴とする洗濯機。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、異常発生時に報知装置と表示装置とを作動させて異常を知らしめる洗濯機に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、洗濯機においては、ブザー等の報知装置と、発光ダイオード等の表示装置とを具え、異常発生時にそれらをともに作動させるようにしたものが供されている。これは、異常発生時に報知装置を作動させただけでは、それが何を報知しているのか分からないからであって、表示装置はそれを補助すべく、すべての発光ダイオードを点滅させたり、異常内容をコード表示したりして、異常を表示するようになっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、報知装置が作動すると、それを停止させるべく、むやみなキー操作をする使用者がいて、それにより、表示装置までが異常表示作動を停止され、異常の発生が認識されない、あるいは異常の内容が認識されないまま、リセットされることがあった。しかして、その結果、運転を再開させても、異常による停止が繰返されることになり、更に、前回の運転モードを記憶していて電源オン時にそれを再現設定するものでは、上述のむやみなキー操作により運転モードが変更されてしまって、それを次の電源オン時に再現設定しまうという不具合を生じていた。 【0004】 本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、異常発生時に報知装置と表示装置とを作動させて異常を知らしめるものにあって、その異常発生時に使用者がむやみなキー操作をしたとしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることのない優れた洗濯機を提供するにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明の洗濯機においては、異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたところに特徴を有する。 【0006】 【作用】 上記手段によれば、異常発生時に使用者がむやみなキー操作をしても、報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けずに、表示装置を異常表示作動状態に保つのであるから、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなくなる。又、この場合、報知装置の作動を停止させる操作入力は受付けるのであるから、その報知装置の作動は任意に停止させることができ、更に電源を遮断する操作入力も受付けるのであるから、リセットも任意にさせることができる。 【0007】 【実施例】 以下、本発明の一実施例につき、図面を参照して説明する。 【0008】 まず図2には洗濯機全体の外箱1を示しており、洗濯槽2と脱水槽3とを並置状態で内設している。又、外箱1の上面部には洗濯蓋4と脱水蓋5とを設けると共にパネル6を設けており、このパネル6に電源スイッチ7と操作・表示部8とを設けている。 【0009】 ここで、図3は上記操作・表示部8の一部を示しており、水位を設定するため操作キー9、水流を設定するための操作キー10、コースを設定するための操作キー11、洗いの時間を設定するための操作キー12、すすぎの時間を設定するための操作キー13、脱水の時間を設定するための操作キー14、運転のスタート及びストップのための操作キー15、ブザーの鳴動及び非鳴動の設定並びに停止のための操作キー16が存すると共に、表示装置としてそれらの設定内容を表示する発光ダイオード17?22及びデジタル表示器23が存している。 【0010】 一方、図4には前記パネル6の裏側に設けたマイクロコンピュータから成る制御装置24を示しており、これには家庭の電源コンセントをもとにした電源部25から必要な電源が供給されるようになっている。又、この制御装置24には、前記ブザー用の操作キー16から操作信号が入力されると共に、その他の操作キー9?15からも各操作信号が入力され、更に前記電源スイッチ7からも操作信号が入力されるようになっている。そして、それらの入力並びにあらかじめ記憶された制御プログラムに基づき、該制御装置24は、報知装置であるブザー25を駆動する駆動回路26と、前記発光ダイオード17?22及びデジタル表示器23等から成る表示部27を駆動する駆動回路28、並びに図示しない洗濯用モータや脱水用モータ,給水弁,排水弁等から成る駆動部29を駆動する駆動回路30に、それぞれ駆動制御信号を与え、次に述べるような制御手段として機能するようになっている。 【0011】 そこで、以下には上記制御装置24による制御内容について述べる。 【0012】 図1に示すように、制御装置24はその作動が開始された最初に、電源スイッチ7がオン操作されたか否かの判断をし(ステップS1)、オン操作されたと判断されたところで発光ダイオード17?22及びデジタル表示器23等の表示装置(表示部27)を標準状態に作動させる(ステップS2)。 【0013】 次いで、使用者による操作設定の受付けをし(ステップS3)、その後にスタートキーが操作されたか否かの判断をして(ステップS4)、操作されたと判断されたところで、駆動部29を作動させ、設定された内容の運転を開始する(ステップS5)。 【0014】 この後、異常がないか否かの判断をし(ステップS6)、ここで異常があった(NO)と判断されれば、次に運転を停止させ(ステップS7)、その後、ブザー用の操作キー16と電源スイッチ7以外の操作入力を受付けない状態になり(ステップS8)、そして、表示装置を、例えばすべての発光ダイオードを点滅させたり、デジタル表示器23に異常内容をコード表示させたりして、異常を表示するように作動させる(ステップS9)。 【0015】 次いでブザー25を鳴動させて、この場合、異常発生の報知をし(ステップS10)、その後、電源スイッチ7がオフ操作されたか否かの判断をし(ステップS11)、オフ操作されない(NO)と判断されれば、次にブザー用の操作キー16が操作されたか否かの判断をして(ステップS12)、操作された(YES)と判断されれば、直ちに、操作されないと判断されれば、その後15秒経過するのを待って(ステップS13)、ブザー25の鳴動を停止させる(ステップS14)。 【0016】 そして、このようにブザー25の鳴動を停止させた後には、すべての操作入力を受付ける状態に戻り(ステップS15)、この状態で、次に表示装置の異常表示作動を停止(消去)させる操作入力があったか否かの判断をして(ステップS16)、その操作入力があった(YES)と判断されたところで、表示装置の異常表示作動を停止させる(ステップS17)。 【0017】 なお、上記ステップS11で電源スイッチ7がオフ操作された(YES)と判断されれば、ステップS17に飛んで表示装置の異常表示作動を停止させる。 【0018】 又、先のステップS6で異常がない(YES)と判断されれば、この場合、次には運転終了時間に達したか否かの判断をし(ステップS18)、達した(YES)と判断されたところで運転を停止させ(ステップS19)、更に、ステップS8同様にブザー用の操作キー16と電源スイッチ7以外の操作入力を受付けない状態になり(ステップS20)、その後、ステップS10に移行してブザー25を鳴動させ、この場合、運転終了の報知をする。以降、ステップS11?17については上述どおりである。 【0019】 このように、本構成のものでは、異常発生時のブザー25鳴動中(報知装置作動中)は、操作入力の制限をすることによって、操作キー16からの操作入力(ブザー25の鳴動を停止させる操作入力)と電源スイッチ7からの操作入力(電源を遮断する操作入力)以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をするようにしているから、異常発生時に使用者がブザー25の鳴動を停止させる正規の操作入力以外のむやみなキー操作をしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、異常の発生あるいは異常の内容を極力確実に認識させ得るもので、それにより、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができる。 【0020】 又、この場合、ブザー25の鳴動を停止させる正規の操作入力はもちろん受け付けるのであるから、そのブザー25の鳴動を任意に停止させることができ、更に電源を遮断する操作入力も受付けるのであるから、リセットも任意にさせることができ、実用上の不都合を生じることはない。 【0021】 なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、特に報知装置と表示装置の具体的部品,構成等の点につき、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。 【0022】 【発明の効果】 以上の記述で明らかなように、本発明の洗濯機は、報知装置と表示装置とを具え、異常発生時にそれらを作動させるようにしたものにあって、その異常発生時の報知装置作動中は、操作入力の制限をすることによって報知装置の作動を停止させる操作入力と電源を遮断する操作入力以外の他の操作入力を受付けず、報知装置作動中に報知装置の作動を停止させる操作入力を受付けた場合、報知装置の作動を停止する一方で、表示装置を異常表示作動状態に保つ制御をする制御手段を具えたことを特徴とするもので、それにより、異常発生時に使用者がむやみなキー操作をしたとしても、表示装置が異常表示作動を停止されたり、運転モードが変更されたりすることがなく、運転再開時に異常による停止が繰返されたり、次の電源オン時に不所望の運転モードが再現設定されてしまったりする不具合の発生をなくすことができ、そのほか、報知装置の作動を任意に停止させることももちろんできて、更にリセットも任意にさせることができるという優れた効果を奏する。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例を示す作用説明用のフローチャート 【図2】洗濯機全体の斜視図 【図3】操作・表示部の部分平面図 【図4】概略電気構成図 【符号の説明】 7は電源スイッチ、9?15はブザー用を除く他の操作キー、16はブザー用の操作キー、17?22は発光ダイオード(表示装置)、23はデジタル表示器(表示装置)、24は制御装置(制御手段)、25はブザー(報知装置)を示す。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-12-17 |
結審通知日 | 2009-12-25 |
審決日 | 2010-01-05 |
出願番号 | 特願平3-143310 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(D06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丸山 英行 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 豊島 唯 |
登録日 | 2000-08-04 |
登録番号 | 特許第3095454号(P3095454) |
発明の名称 | 洗濯機 |
代理人 | 小川 泰典 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 小川 泰典 |
代理人 | 高橋 省吾 |
代理人 | 萩原 亨 |
代理人 | 小川 泰典 |
代理人 | 小川 泰典 |
代理人 | 家入 久栄 |
代理人 | 小川 文男 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 堀口 浩 |