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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01L
管理番号 1226832
審判番号 不服2008-28672  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-10 
確定日 2010-11-08 
事件の表示 特願2005- 99342「圧力センサ、近接センサおよびリソグラフィトポグラフィマッピング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開、特開2005-283588〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年3月30日(パリ条約による優先権主張平成16年3月30日、米国)の出願であって、平成19年10月12日付け拒絶理由通知に対し、平成20年2月15日付けで手続補正されたが、同年8月11日付けで拒絶査定され、これに対し、同年11月10日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。

第2 平成20年11月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年11月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。

「【請求項1】圧力センサにおいて、
ダイアフラムを包含し、該ダイアフラムは剛性の外側部分と、前記ダイアフラムの第1の側と第2の側との間の圧力差に応じて変位する変位可能な内側部分とを有し、
前記ダイアフラムに近接して配置されており、前記ダイアフラムの内側部分の前記変位をセンシングするセンサを包含し、
前記センサと接続されており、前記ダイアフラムの変位から前記圧力差を求める監視制御システムを包含し、
前記センサは、光送信モジュールと、前記光送信モジュールから送出された第1の光ビームを直接的に受信し、且つ前記光送信モジュールから送出され、前記ダイアフラムにおいて反射された第2の光ビームを受信する光センシングモジュールと、を包含し、 前記光送信モジュールは光源光を前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームに分割する回折装置と接続されている出力側を有する送信ファイバを包含し、 前記ダイアフラムの変位は、第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンにおける光の強度を変調させ、 前記監視制御システムは、強度が変調された光から前記ダイアフラムの変位を求める、圧力センサ。」(下線は補正された箇所である。)

すると、本件補正は、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に関し、光送信モジュールとして、「光源光を前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームに分割する回折装置と接続されている出力側を有する送信ファイバを包含」するものに限定し、
監視制御システムとして、「強度が変調された光から前記ダイアフラムの変位を求める」ものから、「前記ダイアフラムの変位は、第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンにおける光の強度を変調させ」られることにより「前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンから前記ダイアフラムの変位を求める」ものと、各々限定したものを含むものである。

したがって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下、「平成18年法改正前」とする。)の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶理由通知で引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭57-108633号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)「2.特許請求範囲
(1)本体及びダイアフラムを有するトランスジユーサを具備し、上記ダイアフラムはこれに与えられる測定さるべき差圧力によつて上記本体に対して変位されるように上記本体内に取り付けられて、この変位が差圧カを表わすようにされ、
そして
上記ダイアフラムの変位を測定する手段を更に具備し、上記ダイアフラムの少なくとも或る表面領域は反射性であり、上記測定手段は、上記ダイアフラムの上記表面領域とでもつて干渉計構成体を形成するように上記ダイアフラムの上記表面領域に隣接して上記本体に対して固定された部分反射面と、この部分反射面を通して上記ダイアフラムの上記表面領城に光を向けて上記干渉計構成体に光を当て、上記ダイアフラムで反射された光と上記部分反射面で反射された光とを干渉させるような光を向ける手段とを備えており、上記干渉計構成体に当たる光は所定の連続した周波数帯域を有するものであるか、或いは上記帯域を通して周期的にスイープされる1つの周波数を有するものであり、そして更に上記測定手段は、上記干渉反射光に応答して、上配周波数帯域内の干渉反射光の周波数に伴なう振巾変化の出力指示を与えるように構成された検出器と、上記出力指示を処理して上記ダイフラムの変位の指示を与える処理手段とを備えていることを特徴とする装置。
(2)上記光を向ける手段は、上記ダイアフラムの上記表面領域の所定の限定部分及び上記部分反射面の対応限定部分のみに光を当てるように構成され、上記両面の上記両限定部分は互いに平行であり且つ上記光の入射方向に対して垂直である特許請求の範囲第1項に記載の装置。
(3)上記光を向ける手段は、上記帯域内の光の最大波長をλ_(L)とし、最小波長をλ_(S)とし、そして測定さるべき最小距離をd_(min)とすれば、
(λ_(L)λ_(S) )/(2(λ_(L)-λ_(S))) < d_(min)(当審注:数学的に等価な式による表記。)
であるような光を向けるように構成される特許請求の範囲第2項に記載の装置。
(4)上記処理手段は、上記周波数帯域間の周波数に伴なう光の振巾の変化の中の少なくとも2つの選択された最小値又は最大値に対応する周波数を決定し、そしてこれらの選択された最小値又は最大値にある最小値又は最大値の個数をカウントし、ここから上記ダイアフラムの変位の値を計算するように構成される特許請求の範囲第3項に記載の装置。」

(1-イ)「先ず第1図を参照すれば、差圧力トランスジユーサのダイアフラムの片面上の或る点とトランスジユーサの本体即ち筐体の隣接面との間の距離dを測定する装置が示されている。第1図においては、図示簡略化のためトランスジユーサのダイアフラム1 の1部分と本体2の1部分しか示されていない。ここに取り上げる一般的な種類の差圧力トランスジユーサは例えば上記の英国特許第1,318,780号において良く知られているものである。」(6頁左上欄4?13行)

(1-ウ)「第1図において、典型的に白熱電球である光源4からの白色光は光導体5に沿つて遠隔位置から圧力トランスジユーサへと送られる。この光導体5からトランスジユーサに放出される光はレンズ系10により透明な基準プレート11を経てダイアフラム1の面12に集束される。基準プレート11の面13は、該プレート11のすぐ近くにあるダイアフラム1の面12の接線方向に平行であり且つ光学的に平らにラツプ仕上げされる。少なくともプレート11のすぐ近くに対向したダイアフラム1の面12は反射性にされ、そしてプレート11の面13は部分的に反射性にされる。従つて、ダイアフラム1の面12で反射されて再びプレート11に入る光は該プレートの部分反射面13で最初に反射される光と干渉する。干渉反射光は初めの光学路を経て光導体5へと戻される。光導体5は2つのオプチカルフアイバ束7及び8を備えており、これらは光導体5の大部分の長さにわたつて実質的に均一に混ぜ合わせているが、6において分岐し、一方の束7は光源4へと通じておりそして第2の束8は参照番号9で一般的に示された光学系へと通じている。光導体5へ再入する反射干渉光の1部分は束8のオプチカルフアイバに入つて束8により光学系9へ送られることが明らかであろう。光学系9はプリズム18を備え、これは反射干渉光の種々の周波数成分を分散させる。プリズム18からの光スペクトルが当たるように光検出器のマトリクス即ち配列体19が配置されており、色々な周波数における戻り光の相対的な輝度即ち振巾をマトリクス19で選択的に測定できるようになつている。
両面間の間隔dが半波長の倍数であるような周波数においては、ダイアフラムの面12から反射された光と、部分反射面13で反射された光との間に破壊干渉が生じることが明らかである。従つて、配列体19へと分散される光のスペクトルは、面12と13との間のギヤツプに破壊干渉が生じるような光の波長に相当するスペクトルに沿つた位置に明暗の縞を含む。
光検出器の配列体19を走査して、スペクトルにわたる相対的な輝度を表す逐次出力をライン30に与えるような手段(図示せず)が設けられる。スペクトルの周波数に対する配列体19の各素子の位置は、配列体の種々の素子の位置が分かるとスペクトル内の暗い縞の波長を容易に決定できるように、予め決められていることが明らかであろう。
光検出器の配列体の逐次出力は電子ユニツト20へ送られ、ここで暗い縞の波長が計算されそしてこれらの波長から間隔dも計算される。その結果は表示装置21へ送られる。」(6頁右上欄8行?右下欄18行)

これらの記載事項によると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「トランスジューサにおいて、
測定さるべき差圧力によつて上記本体に対して変位されるように上記本体内に取り付けられて、この変位が差圧カを表わすようにされたダイアフラム1と、
光源4と、前記光源4からの白色光を送るオプチカルファイバ束7と、
基準プレートの部分反射面13と該ダイアフラムの面12からの反射された光とが干渉反射光として、オプチカルファイバ束8により光学系9へ送られ、
前記配列体19の逐次出力は電子ユニット20へ送られ、上記周波数帯域間の周波数に伴う光の振巾の変化の中の少なくとも2つの選択された最小値又は最大値に対応する周波数を決定し、そしてこれらの選択された最小値又は最大値の個数をカウントし、ここから上記ダイアフラムの変位の値を計算するように構成される
トランスジューサ」

3.対比・判断
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明の「トランスジューサ」は差圧を測定していることから、本願補正発明の「圧力センサ」に相当する。

(2)引用例1発明の「測定さるべき差圧力によつて上記本体に対して変位されるように上記本体内に取り付けられて、この変位が差圧カを表わすようにされたダイアフラム1」は、変位可能な内側部分と固定される剛性を有する部分とで構成されるというダイアフラム構造の技術常識からみて、本願補正発明の「ダイアフラムを包含し、該ダイアフラムは剛性の外側部分と、前記ダイアフラムの第1の側と第2の側との間の圧力差に応じて変位する変位可能な内側部分とを有し」に相当する。

(3)引用例1発明の「前記光源4からの白色光を送るオプチカルファイバ束7」は、その機能・構成からみて、本願補正発明の「送信ファイバ」に相当し、
引用例1発明の「光源4と、前記光源4からの白色光を送るオプチカルファイバ束7」からなるものは、その機能・構成からみて、本願補正発明の「光送信モジュール」に相当する。

(4)引用例1発明の「基準プレートの部分反射面13と該ダイアフラムの面12からの反射された光とが干渉反射光として、オプチカルファイバ束8により光学系9へ送られ」
は、「基準プレート」が(ア)入射した光を基準プレートの部分反射面13による反射光による光路と(イ)ダイアフラムの面12からの反射光による光路の2つに光を分割する機能を有しているといえるから、
本願補正発明の「光源光を前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームに分割する回折装置」との間で、
「光源光を前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームに分割する手段」という点で共通する。
そして、引用例1発明の「基準プレート」も、本願補正発明の「回折装置」も、「送信ファイバ」と接続されている点で共通している。

(5)引用例1発明の「基準プレートの部分反射面13と該ダイアフラムの面12からの反射された光とが干渉反射光として、オプチカルファイバ束8により光学系9へ送られ、光検出器の配列体19は、光学系9から送られた光のスペクトルの輝度を検出し」は、「オプチカルファイバ束8」に2種類の反射光が通ることや「オプチカルファイバ束8」、「光学系9」、「光検出器の配列体19」が全体で受信機能を有しているといえるから、
本願補正発明の「前記光送信モジュールから送出された第1の光ビームを直接的に受信し、且つ前記光送信モジュールから送出され、前記ダイアフラムにおいて反射された第2の光ビームを受信する光センシングモジュール」との間で、
「前記光送信モジュールから送出された第1の光ビームを受信し、且つ前記光送信モジュールから送出され、前記ダイアフラムにおいて反射された第2の光ビームを受信する光センシングモジュール」という点で共通する。

(6)引用例1発明の「光源4」、「オプチカルファイバ束7及び8」、「光学系9」及び「検出器の配列体19」からなるものは、ダイアフラムへの光の送受信を行う機能からみて、測定対象であるダイアフラムの近傍に配置されており、その機能・構成からみて、本願補正発明の「前記ダイアフラムに近接して配置されており、前記ダイアフラムの内側部分の前記変位をセンシングするセンサ」に相当する。

(7)引用例1発明の「前記配列体19の逐次出力は電子ユニット20へ送られ、上記周波数帯域間の周波数に伴う光の振巾の変化の中の少なくとも2つの選択された最小値又は最大値に対応する周波数を決定し、そしてこれらの選択された最小値又は最大値の個数をカウントし、ここから上記ダイアフラムの変位の値を計算するように構成される」は、電子ユニット20が属するトランスジューサが、ダイアフラムの変位が差圧を表すものであることから、変位から差圧に変換する機能も当然有しており、かつ、検出器の配列体19と接続しているから、本願補正発明の「前記センサと接続されており、前記ダイアフラムの変位から前記圧力差を求める監視制御システム」に相当する。

(8)引用例1発明の「前記配列体19の逐次出力は電子ユニット20へ送られ、上記周波数帯域間の周波数に伴う光の振巾の変化の中の少なくとも2つの選択された最小値又は最大値に対応する周波数を決定し、そしてこれらの選択された最小値又は最大値の個数をカウントし、ここから上記ダイアフラムの変位の値を計算するように構成される」と、
本願補正発明の「前記ダイアフラムの変位は、第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンにおける光の強度を変調させ、前記監視制御システムは、強度が変調された光から前記ダイアフラムの変位を求める」とは、
「前記監視制御システムは、光から前記ダイアフラムの変位を求める」点で共通する。

以上、(1)?(8)の考察から、両者は、

(一致点)
「圧力センサにおいて、
ダイアフラムを包含し、該ダイアフラムは剛性の外側部分と、前記ダイアフラムの第1の側と第2の側との間の圧力差に応じて変位する変位可能な内側部分とを有し、
前記ダイアフラムに近接して配置されており、前記ダイアフラムの内側部分の前記変位をセンシングするセンサを包含し、
前記センサと接続されており、前記ダイアフラムの変位から前記圧力差を求める監視制御システムを包含し、
前記センサは、光送信モジュールと、前記光送信モジュールから送出された第1の光ビームを受信し、且つ前記光送信モジュールから送出され、前記ダイアフラムにおいて反射された第2の光ビームを受信する光センシングモジュールと、を包含し、前記光送信モジュールは光源光を前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームに分割する手段と接続されている出力側を有する送信ファイバを包含し、
前記監視制御システムは、光から前記ダイアフラムの変位を求める、
圧力センサ。」

である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
光源光を前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームに分割する手段が、本願補正発明では、「回折装置」であるのに対し、
引用例1発明では、「基準プレート」である点。

(相違点2)
光センシングモジュールが、本願補正発明では、「前記光送信モジュールから送出された第1の光ビームを直接的に受信し、且つ前記光送信モジュールから送出され、前記ダイアフラムにおいて反射された第2の光ビームを受信する」のに対し、
引用例1発明では、「基準プレートの部分反射面13と該ダイアフラムの面12からの反射された光とが干渉反射光として、オプチカルファイバ束8により光学系9へ送られ、光検出器の配列体19は、光学系9から送られた光のスペクトルの輝度を検出し」であり、第1の光ビームを直接的にではなく、基準プレートの部分反射面13で反射させている点。

(相違点3)
光から前記ダイアフラムの変位を求めるという監視制御システムの機能が、本願補正発明では、「前記ダイアフラムの変位は、第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンにおける光の強度を変調させ、前記監視制御システムは、強度が変調された光から前記ダイアフラムの変位を求める」のに対し、
引用例1発明では、「前記配列体19の逐次出力は電子ユニット20へ送られ、上記周波数帯域間の周波数に伴う光の振巾の変化の中の少なくとも2つの選択された最小値又は最大値に対応する周波数を決定し、そしてこれらの選択された最小値又は最大値の個数をカウントし、ここから上記ダイアフラムの変位の値を計算するように構成される」と、光の強度を変調させて変位を求めているか否かが不明である点。

4.当審の判断
上記(相違点1)?(相違点3)は、干渉パターンを発生し測定する技術として関連性があるため、まとめて検討する。

干渉現象を用いて物体の変位や位置を測定する装置の技術分野において、「送信光を2つのビームにビームスプリッタのような回折手段で分岐し、一方の光を測定対象物に反射させ、もう一方を直接的に、各々受光部に送信し、干渉パターンを起こさせ、変位に応じて強度変調した光を測定して、測定対象物の変位や位置を測定する」技術は、本願の優先権主張の日前に周知の技術である。

例えば、
(ア)特開2000-121323号公報には、
「【0024】ビーム成形光学系11で形成されたスリット状の光束は、レンズ出射端から被検査物までの距離が大きい、即ち作動距離の大きな対物レンズ12を透過し、参照光生成光学系でもある照明側のビームスプリッタ(2つの光束に分岐する分岐光学系の機能とS偏光の照射光束を照射角度θで照射する機能とP偏光の参照光束を出射する機能とを有する。)20を透過した後、カラーフィルタ基板4の所望の位置に入射角θが82度以上でスリット状の領域200を照明する。照明側のビームスプリッタ20は、例えば、P偏光を透過、S偏光を反射する偏光ビームスプリット面201と透過したP偏光を全反射するミラー面202と1/2波長板203とから構成されている。従って、カラーフィルタ基板4に入射するスリット状のビーム光束21は、透過P偏光の光束がミラー面202で全反射されて1/2波長板203を透過後紙面に垂直なS偏光の光束となる。他方、照明側の偏光ビームスプリット面(参照光生成光学系)201で反射して分岐されるS偏光の照射光束は、1/2波長板203を透過後紙面に平行なP偏光の光束でカラーフィルタ基板4とほぼ平行に進み、干渉の参照光の光束として用いられる。なお、ビームスプリッタ20として偏光ビームスプリッタを用いたのは、偏光ビームスプリッタ20から拡がりもった光束を照射面近傍において0.005?0.02mm程度の幅に非常に細く絞る必要があり、そのため照射角度θを90度近くにすることが難しく、照明領域200に対してS偏光の光束を照射できるようにするためである。このようにS偏光の光束を照明領域200に照射することによって、照射角度θを82度?89度程度にすることによって、多重干渉を防止して雑音成分を5%以内に低減することが可能となる。なお、S偏光の光束の方が、P偏光の光束より、反射率が高くなり、雑音成分を低減することができる。
【0025】カラーフィルタ基板4の200の領域で反射したS偏光の光束21′及び基板に平行に進むP偏光として参照光の光束22は、照明側のビームスプリッタ20と同じ形状で対称に配置されている検出側のビームスプリッタ20′に至る。検出側のビームスプリッタ(照射角度θで反射してくるS偏光の反射光束とビームスプリッタ20から出射されてくるP偏光の参照光束とを合成する合成光学系)20’も、照明側のビームスプリッタ20と同様に、1/2波長板203’と該1/2波長板203’を通過することによってS偏光からP偏光に変換される被測定点200からのP偏光の光束を全反射するミラー面202’と上記1/2波長板203’を通過することによってP偏光からS偏光に変換される参照光の光束を反射し、ミラー面202’からのP偏光を透過する偏光ビームスプリット面201’とから構成される。従って、カラーフィルタ基板4の表面の高さや傾きに応じて若干異なるがビームスプリッタ21′通過後、両光束(被測定反射光束と参照光束)は、ほぼ一致した光路を進み、対物レンズ30によって検出センサである1次元アレイセンサ32の受光面に結像される。
・・・(中略)・・・
【0027】以上説明したように、検出センサである1次元アレイセンサ32の受光面上で被測定反射光束と参照光束とが重畳されて干渉することにより、1次元アレイセンサ32の各絵素からは、領域200内における各画素に対応する測定点の表面状態(表面の高さ)に応じて異なった干渉強度信号が検出される。そこで、信号処理部5において、1次元アレイセンサ32の各絵素から検出される干渉強度信号の位相を検出することにより、領域200内のブラックマトリックス44や各フィルタ41、42、43やガラス基板40の表面の高さを10?20nm程度の精度で求めることができる。」と記載されている。

(イ)特開平6-295855号公報には、
「【0009】図1の3の部分が高さ傾き検出光学系3の一実施例である。高さ傾き検出光学系3は照明光学系1と干渉縞検出系2とから構成される。高さ傾き検出光学系3の出力は処理回路と制御回路から成る高さ傾き検出・制御機構5に渡される。図1の実施例図には傾き検出の1軸分しか図示されていないが、これと直角な紙面に垂直な方向に向かいウエハに照射する系は省略されている。まず照明系1を説明する。可干渉性光源11を出射した光ビームはウエハ上で所望のビーム径となるように照射レンズ系110を通る。ビームスプリッタ10は光源11から出射したビームを2つに分離し、ハーフミラー12を介し、一方はウエハに照射する検出光に、他方はウエハに当たらず、しかし検出光と近い光路を進む参照光になる。検出光はウエハに立てた垂線に対し88°、即ち入射角88°で入射する。しかも前記垂線と入射光線が含む面に直角な方向に直線偏光する状態(S偏光)で光を照射する。このような検出光と参照光は折り返しミラー14で共に反射し、元の光路を逆に進み、ハーフミラー12を通過する。12を透過した光は干渉縞検出系2に進む。検出系2にはミラー210,220、結像レンズ21,22,22’によりCCD20上に干渉縞を形成させる。結像レンズ21,22,22’はウエハ4の表面から折り返しミラー14近傍の位置とCCDをほぼ結像の関係にしている。光路シフタ24は上記の結像関係を満たし、かつCCD上で干渉縞が発生する役割をしている。CCD20の出力を処理して、高さ傾き検出・制御機構5で被検物の高さ傾きを検出する。高さ傾き検出光学系3は2軸の傾き検出のため、図に垂直な方向にもう1組設けられている。
【0010】図2は干渉縞による高さ傾き検出方法を用いた投影露光装置の別の実施例である。図2の3の部分の高さ傾き検出光学系のみが図1の実施例と異なっているのでこの部分について説明する。この実施例では高さ傾き検出光学系3に図1の実施例の折り返しミラー14を持たず、照明光学系1を出た検出光は一度ウェハを照射した後、干渉縞検出系2に入り干渉縞信号を出力する。その他の部分の構成は図1に示した実施例と同様である。図1に示した実施例では、CCD20は折り返しミラー14と光学的に共役となっており、CCD20をウェハ4と完全な光学的共役関係にすることが出来ないため、図5によって後述する干渉縞のピッチとウェハ表面の傾きの対応が幾分ぼけて、表面高さ・傾き検出の横方向解像度が3mm程度であるのに対して、図2に示した実施例では、CCD20がウェハ4と光学的に共役であるため、表面高さ・傾き検出の横方向解像度が向上する。このため、FFTに入力する干渉縞データの範囲を変えることにより、露光するチップの大きさに応じてウェハ上の任意の領域の高さ・傾きを検出することが可能になる。」と記載されており、段落【0011】?【0014】の【数1】及び【数2】からみて、干渉縞の強度信号I(k)は、ウエハの高さに関係する微小傾きδに依存することから、ウエハの高さにより干渉パターンにおける光の強度が変化しているといえる。

(ウ)特開平3-40417号公報には、
「第8図は本発明の一実施例である。第1図と同一番号は同一物である。また第1図同様y方向の傾き検出系の図は省略している。半導体レーザ1は波長がλ_(1)、半導体レーザ1′は波長がλ_(2)であり、例えば、λ_(1)=810nm、λ_(2)=750nmである、半導体レーザ1,1′で出射した光はそれぞれ11と11′により平行光になり、回折格子18,18’により0次と1次の平行光に分離される。分離された4本の平行ビームは波長分離ミラー19によりλ_(1)の光は透過、λ_(2)の光は反射し、プリズム110で4本のビームは互に平行な平行ビームとなる。波長λ_(1)とλ_(2)のビーム16,16’は全く同一の光路を通りミラー13で反射し、ウェハにθ_(1)で入射し、反射光は物体光となり、ミラー23,レンズ21,22から成る検出光学系を通り、パターン検出手段3に入射する。他方波長λ_(1)とλ_(2)のビーム17と17’は全く同一の参照光路を通り、パターン検出手段3に、物体光と一定の角度を成し入射する。物体光路と参照光路はウェハ面での反射を除き、全く同一光学部品を通る。処理回路5′は半導体レーザ1と1′を交互に点滅し、パターン検出手段3からλ_(1)とλ_(2)の波長の干渉縞情報を交互に受信する。第9図は処理回路で受信されるλ_(1)の波長の干渉縞情報である。実線は最良の高さ位置に於るものであり、点線はΔZだけ高さが変化した時のものである。・・・(中略)・・・検出されるパターンの強度は次式となる。
(式8)(省略)
ここでXは検出手段の受光面の座標でありMは結像倍率である。従ってI_(z)=I(X_(0),ΔZ;λ_(i))となる。・・・(中略)・・・
この間でλ_(1)の位相がΔφ_(2)で、λ_(1)の位相がΔ_(2)になるのはΔZ_(0)の一点だけであり、この条件を満たす次のΔZの値は次式で与えられる高さとなる。
ΔZ=ΔZ_(1)+mS_(1)S_(0) ・・・(10)
但しここでmは整数である。」(6頁左下欄19行?7頁左下欄6行)と記載されている。

よって、引用例1発明の「基準プレートを用いて2つのビーム光を発生させて干渉パターンを発生させてダイアフラムの変位を測定する手段」と、上記周知技術とは、干渉パターンを用いた変位・位置検出手段という同一の技術分野に属することから、引用例1発明において、「基準プレートを用いて2つのビーム光を発生させて干渉パターンを発生させてダイアフラムの変位を測定する手段」に換えて、上記周知技術のものを採用し、回折装置を接続して、1つのビーム光を直接受光し、干渉パターンの強度変調から変位を求めるようにして、第1の上記相違点1?3における本願補正発明のような構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果についても、引用例1及び上記周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、当審における審尋に対する平成22年3月31日付け回答書において、審尋において指摘した請求項2の「前記第2の波長は前記第1の波長に相対的に位相シフトされており、」との記載が、どのようなことを意味しているのかが明確でないことに対する意見とともに、請求項1、7を削除し、不明点を補正する旨の補正案を提示している。

審尋において指摘した明確でないな点に関しては、回答書には明細書に基づく形式的な主張のみであり、技術的に不明確な点は残る。しかしながら、一般的に、位相差という概念は、波長が同一の2つの波を比較するために用いられることが多く、波長が異なる場合には、各々の周期が異なるため、各々の位相に差があるのは、物理的に当然のことといえる。一方、干渉現象は、波長差が少ないまたは、高調波との間で顕著に発生するものであるため、本件補正における請求項2に記載された「第1の波長」と「第2の波長」とは、常識の範囲での波長の差であると考えられる。
これらの技術常識を参酌すると、本件補正の請求項2の「前記第2の波長は前記第1の波長に相対的に位相シフトされており」または、補正案の請求項1の「前記第2の波長の位相は前記第1の波長の位相に対してシフトされており」を理解すると、第1の波長の属する波と、第2の波長の属する波とが位相がずれているものを指すものと一応理解できる。
こうした前提で同請求項全体を再度検討するに、「ダイヤフラムの変位は、前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンに一定の速度の変化を生じさせ」とあるが、「干渉パターンに一定の速度の変化を生じさせ」とは、何によって速度の変化を生じさせるのかが、請求項2の他の構成から不明であり、明細書を参酌しても、何によって発生しているか不明であり、かつ、技術常識からみて、何に基づくものかが不明である。そして、「監視制御システムは、前記ダイアフラムの変位を前記一定の速度から複号するカウンタを包含する」ことも同様の理由により、「カウンタ」がどのような機能を有しているかが不明である。
また、明細書を参酌しても特に本願特有の具体的な実施手段を特定できない以上、周知技術の範囲で不明な点を明確にするような補正がなされたとしても、上記周知技術の範囲で適宜なしうるものといえる。
したがって、上記補正案によってもその進歩性があるとはいえない。
よって、上記補正案は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用例1発明、及び、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年11月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1乃至12に係る発明は、平成20年2月15日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
圧力センサにおいて、
ダイアフラムを包含し、該ダイアフラムは剛性の外側部分と、前記ダイアフラムの第1の側と第2の側との間の圧力差に応じて変位する変位可能な内側部分とを有し、
前記ダイアフラムに近接して配置されており、前記ダイアフラムの内側部分の前記変位をセンシングするセンサを包含し、
前記センサと接続されており、前記ダイアフラムの変位から前記圧力差を求める監視制御システムを包含し、
前記センサは、光送信モジュールと、前記光送信モジュールから送出された第1の光ビームを直接的に受信し、且つ前記光送信モジュールから送出され、前記ダイアフラムにおいて反射された第2の光ビームを受信する光センシングモジュールと、を包含し、
前記監視制御システムは、前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンから前記ダイアフラムの変位を求める、
圧力センサ。」

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、
光送信モジュールとして、「光源光を前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームに分割する回折装置と接続されている出力側を有する送信ファイバを包含」する限定を除き、
監視制御システムとして、「前記ダイアフラムの変位は、第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンにおける光の強度を変調させ」られることにより「前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームから形成された干渉パターンから前記ダイアフラムの変位を求める」ものから、「強度が変調された光から前記ダイアフラムの変位を求める」ものとして限定を除いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定的な発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3.」に記載したとおり,引用例1発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである以上、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-17 
結審通知日 2010-06-18 
審決日 2010-06-29 
出願番号 特願2005-99342(P2005-99342)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01L)
P 1 8・ 575- Z (G01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 健太  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
居島 一仁
発明の名称 圧力センサ、近接センサおよびリソグラフィトポグラフィマッピング装置  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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