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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1227153 |
審判番号 | 不服2009-20360 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-10-22 |
確定日 | 2010-11-15 |
事件の表示 | 特願2004- 32268「排気系構造」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月18日出願公開、特開2005-219709〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、平成16年 2月 9日を出願日とする特許出願であって、平成21年 7月23日付けで拒絶査定がされ(拒絶査定の送達(発送)日:同月28日)、これに対し、同年10月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同時に特許法第17条の2第1項第4号の規定による手続補正(前置補正)がされたものである。 第2 平成21年10月22日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成21年10月22日付けの手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 平成21年10月22日付けの手続補正(以下「本件手続補正」という。)の趣旨及び当該補正後のこの出願の発明について (1) 本件手続補正の前後における、それぞれの請求項1に係る発明は次のとおりである。 <本件手続補正前>の請求項1に記載された発明 「【請求項1】 内燃機関を有する車両に備えられており、排気管、触媒、及びマフラを含む排気系全体が3つの荷重支持点で支持されるように構成されており、 平面視において、前記排気系の全体重心が、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置しており、且つ、 平面視において、前記マフラの重心も、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置する、 排気系構造。」 <本件手続補正後>の請求項1に記載された発明 「【請求項1】 内燃機関を有する車両に備えられており、排気管、触媒、及びマフラを含み、前記内燃機関の排気マニホールドに接続される排気系全体が3つの荷重支持点で支持されるように構成されており、 平面視において、前記排気系の全体重心が、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置しており、且つ、 平面視において、前記マフラの重心も、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置する、 排気系構造。」(以下「本願補正発明」という。) (2) 前記手続補正は、当該補正前の発明に対して、下線部の限定を加えるものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ同条第3項でいう願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。 さらに、本件手続補正が適法なものとされるためには、前記本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同じく特許法第126条第5項の規定に適合すること)が必要であるので、以下でこの要件の可否について検討する。 2 引用例、その記載事項及び引用発明 (1)原査定の拒絶理由で引用された、この出願前に頒布された刊行物である特開平11-2121号公報(以下「引用例1」という。)には、図1とともに、次の事項が記載されている。 ア 「【0015】図1において、車両1のフロア2の下に排気装置10が配置されており、排気装置10は、図外のエンジンから排気マニホールド4,フロント排気管5,触媒コンバータ3,センター排気管6,消音器7が連通され、エンジンから排出される排気を浄化し、排気温度を低減し、排気音を減少して大気へ放出している。 【0016】前記排気装置10は、フロア2に対してゴム等の弾性体8,8,8を介して懸架されている。」(第3ページ第3欄第18行から第25行まで) 【引用例に記載されている発明】 前記の記載事項からみて、前記引用例1には、 「エンジンを備えた車両1のフロア2の下に配置された排気装置10であって、この排気装置10は、エンジンから排気マニホールド4,フロント排気管5,触媒コンバータ3,センター排気管6,消音器7が連通されて構成されると共に、フロア2に対してゴム等の弾性体8,8,8を介して懸架されている排気装置10。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2) 同じく原査定の拒絶理由で引用された、この出願前に頒布された実願昭58-104349号(実開昭60-12615号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、車両の排気装置に関して、第2図とともに、以下の技術的事項が記載されている。 ア 「而して前記マフラー3は第2図に示す如くその前面の1点Aが取付ブラケツト4及びマウントラバー10を介して車体側に支持され、後面の前記支持点Aの対角線上の位置Bが取付ブラケツト5及びマウントラバー10を介して車体側に支持されている。 又前記フロントパイプ2aの直角に折曲された部分の1点Dは取付ブラケツト6及びマウントラバー10を介して、且つ前記マフラー3と一体に車体側に支持されている。」(明細書第3ページ第19行から第4ページ第8行まで) イ 「・・・フロントパイプ2aとマフラー3を含めた系の重心Gは第2図に示す如く三角形ABD内に位置するようになり、このことはフロントパイプ2aとマフラー3とを一体に支持したことも併せて排気装置1の支持バランス上有利であり、又これにより支持剛性を高めることができる。」(明細書第4ページ第16行から第5ページ第2行まで) ウ 「以上の説明で明らかな如く本考案によれば、フロントパイプの1点とマフラーの2点を一体に支持し、これら支持点を結んで描かれる三角形内にフロントパイプとマフラーを合わせた系の重心が位置するようにしたため、排気装置の支持部品点数の削減、支持構造の単純化を図って・・・該装置の支持バランス、剛性等の面でも有利となる。」(明細書第5ページ第7行から第14行まで) (3)また、同じく実願昭58-105921号(実開昭60-13821号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、車両の排気装置に関して、第2図とともに、次の技術的事項が記載されている。 ア 「而して前記マフラー3は第2図に示す如く車体の長手方向に延びるサイドフレーム101の下方に、且つこれに対して斜めに配置されており、これの前面1点Aは該マフラー3に固着されたブラケツト4、サイドフレーム101に固着されたブラケツト5及び両ブラケツト4,5を連結するマウントラバー10を介してサイドフレーム101に吊下げ支持されており、後面の前記支持点Aの対角線上の1点Bは同様にブラケツト6,7及びマウントラバー10を介してサイドフレーム101に吊下げ支持されている。 又前記フロントパイプ2aの直角に折曲された部分の1点Dはブラケツト8及びマウントラバー10を介して車体に取付支持されている。」(明細書第4ページ第1行から第14行まで) イ 「更に第2図に示す如く支持点A,B,Dを結んで描かれる三角形ABDの内部にフロントパイプ2aとマフラー3を含めた系の重心Gを位置せしめることができ、この結果、支持バランスは良好となり、支持剛性も向上せしめられる。」(明細書第5ページ第7行から第11行まで) (4) さらに、同じく原査定の拒絶理由で引用された、この出願前に頒布された実願昭58-139717号(実開昭60-46435号)のマイクロフィルム(以下「引用例4」という。)には、排気装置に関して、第2図とともに、次の技術的事項が記載されている。 ア 「触媒コンバータ7とマフラとをフランジ結合させ、前記コンバータ7の重心GC付近の上部1個所と、マフラ8の重心GM付近を通る線上の2個所をそれぞれマウントラバー11と15,16を用いて車体1側に弾性支持し・・・。」(明細書第5ページ第5行から第12行まで) イ 「4.図面の簡単な説明・・・、第2図は・・・平面図、第3図は・・・背面図、・・・。」(明細書第6ぺージ第19行から第7ページ第4行まで) ウ 平面視において、触媒コンバータ7及びマフラ8を車体に支持するマウントラバー11,15,16の設置点(支持点)を結んで描かれる仮想の三角形の内側にマフラの重心GMが位置すること(第2図) 3 発明の対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明でいう「エンジンを備えた車両」は、本願補正発明でいう「内燃機関を有する車両」に相当し、以下同様に、「フロント排気管,センター排気管」は「排気管」、「触媒コンバータ」は、「触媒」、「消音器」は「マフラ」にそれぞれ相当しており、さらに、これらが「排気系構造」を構成するものであることは明らかである。そして、引用発明において、排気装置10が「フロア2に対してゴム等の弾性体8,8,8を介して懸架されている」としているのは、本願補正発明でいう「排気系全体が3つの荷重支持点で支持される」のと、同じことを意味している。 したがって、本願補正発明と引用発明との間の一致点及び相違点を次のとおりである。 [一致点]「内燃機関を有する車両に備えられており、排気管、触媒、及びマフラを含み、前記内燃機関の排気マニホールドに接続される排気系全体が3つの荷重支持点で支持されるように構成されている、排気系構造。」である点。 [相違点] 本願補正発明では、「平面視において、前記排気系の全体重心が、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置しており、」かつ「平面視において、前記マフラの重心も、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置する、」のに対して、引用発明では3つの荷重支持点と、排気系の全体重心及びマフラの重心との位置の関係について言及されていない点。 4 相違点についての検討判断 前記引用例2に記載されたものにおいては、「フロントパイプとマフラーを合わせた系の重心」とし、また、引用例3に記載されたものにおいては、「フロントパイプ2aとマフラー3を含めた系の重心G」としているけれども、そこでいう「フロントパイプ」や「マフラー」は、車両の排気装置(排気系)に含まれる主要な重量部材として指摘されたものと解される。 そして、一般的な車両においては、フロントパイプの前方部分に、相当程度の重量を持つ触媒(触媒コンバータ)が設けられるのが普通であることを考慮すれば、前記の引用例2及び引用例3の記載は、排気系の支持点を結んで描かれる三角形内に、触媒を含む排気系の全体重心が位置することの優位性を示唆したものといえる。 また、引用例4においては、同様の排気系の支持点を結んで描かれる三角形内にマフラの重心が位置することが記載されている。 引用例4においては、マフラの重心をそのように位置させることによりどのような作用効果を奏するかについて明示はされていないが、マフラを支持する上で、その重心を排気系の支持点を結んで描かれる三角形内に位置することの優位性は、工学上の原理からして当業者であれば直ちに認識することができるものといえる。 そうすると、引用発明において、引用例2ないし引用例4に記載された技術的事項及び示唆に基づいて、「平面視において、前記排気系の全体重心が、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置しており、」かつ「平面視において、前記マフラの重心も、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置する、」ものとすることは、当業者であれば容易になし得る程度の設計事項と認められる。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2ないし引用例4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 5 独立特許要件の欠如に伴う本件手続補正の却下 前記検討から明らかなように、本願補正発明は、引用発明及び引用例2ないし引用例4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件手続補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同第126条第5項の規定に違反することになり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成21年10月22日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、この出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 内燃機関を有する車両に備えられており、排気管、触媒、及びマフラを含む排気系全体が3つの荷重支持点で支持されるように構成されており、 平面視において、前記排気系の全体重心が、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置しており、且つ、 平面視において、前記マフラの重心も、前記3つの荷重支持点を頂点として形成される三角形の仮想領域内に位置する、 排気系構造。」 2 引用例、その記載事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記第2の2に記載したとおりである。 3 発明の対比・相違点についての検討判断 前記第2の1(1)で指摘したところから明らかなように、本願発明は、排気系に関して、本願補正発明における「前記内燃機関の排気マニホールドに接続される」という限定事項を除いたものといえる。 そうすると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含むとともに当該事項に更に限定を付加した本願補正発明が、前記第2において検討したとおり、引用発明及び引用例2ないし引用例4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2ないし引用例4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、請求人は、当審からの審尋に対する回答中で、本願の発明について「前記内燃機関の排気マニホールドに接続される2本の排気管をマフラで集合させて1本の排気管として後方右側に排気する排気系構造」に係るものであることを明らかにする等の補正の機会を求める旨を述べているが、「内燃機関の排気マニホールドに接続される2本の排気管をマフラで集合させて排気管から後方に排気する排気系構造」は、この技術分野における周知の排気系構造であり(周知例として、特開平7-269338号公報、特開平11-200854号公報、新型車解説書(FGY32-1) NISSAN シーマ FGY32型系車、B-31ページ及びB-32ページ、日産自動車株式会社、平成3年10月16日特許庁万国工業所有権資料館受入、等の刊行物を参照。)、かつ、この技術分野において、内燃機関を有する車両の排気を車両の後方右側又は左側のいずれから排気させるか、及び排気管を1本とするか2本とするかは設計上の事項であること(必要であれば、具体例として、前記引用例2(第1図に関する記載。)、前記引用例3(第1図に関する記載。)、前記特開平11-200854号公報、等の刊行物を参照。)からして、かかる周知の排気系構造であって排気する方向を後方右側としたものにおいて、前記引用例2ないし引用例4に記載された示唆に基づく設計変更を施すことにも格別の困難性は認められないので、この出願の発明に関して、仮に請求人がいうような補正がされたとしても、上述した検討の結果が左右されるというものではない。 4 むすび 以上のとおり、この出願の発明については、引用発明及び引用例2ないし引用例4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-17 |
結審通知日 | 2010-09-21 |
審決日 | 2010-10-04 |
出願番号 | 特願2004-32268(P2004-32268) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸 智章 |
特許庁審判長 |
林 浩 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 植前 津子 |
発明の名称 | 排気系構造 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |