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審決分類 |
審判 訂正 特126 条1 項 訂正しない H01J 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない H01J |
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管理番号 | 1227154 |
審判番号 | 訂正2010-390051 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2010-05-25 |
確定日 | 2010-11-15 |
事件の表示 | 特許第4360952号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第4360952号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項18に係る発明は、平成21年8月21日にその特許権の設定登録がなされたものであって、平成22年5月25日に本件訂正審判の請求がなされた後、同年6月28日付けで訂正拒絶理由が通知され、これに対して、同年7月26日付けで、審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲、訂正明細書及び審判請求書の請求の理由を補正する手続補正がなされるとともに意見書が提出された。 第2 平成22年7月26日付け手続補正について 1 手続補正の内容 平成22年7月26日付け手続補正は、平成22年6月22日付け訂正拒絶理由において意味内容が不明確であると指摘した「非線形」という用語に関し、訂正特許請求の範囲の請求項12および訂正明細書の段落【0027】について、「ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する」との事項を、「ラジアル軸受のラジアル負荷容量の増加率が実質的に増加する」と補正するとともに、訂正明細書の段落【0062】について、「周方向近接部分間の距離の減少量に対して非線形に増加して」との事項を、「周方向近接部分間の距離の減少量に対して増加率が実質的に増加して」と補正するものである(下線は当審で付加した。)。 2 手続補正の適否の判断 上記補正の内容は、「増加」の態様を、線形に対応する概念である「非線形」から、線形か非線形かを問わない「増加率」を用いた概念に変更する事項を含むものであり、当該変更により、例えば、対数関数のように増加率が減少する態様を含む「非線形に増加する」という増加の態様が、そのような増加率が減少する増加の態様を含まない「増加率が実質的に増加する」という増加の態様に変更されることになる。 そうすると、上記補正の内容は審判を申し立てている事項の同一性を変更するものと言うことができるから、平成22年7月26日付け手続補正は、審判請求書の要旨を変更するものであって、特許法第131条の2第1項の規定により、認めることはできない。 第3 請求の趣旨及び訂正事項の詳細 1 請求の趣旨 上記のとおり、平成22年7月26日付け手続補正は審判請求書の要旨を変更するものであり、当該手続補正による審判請求書、および、それに添付された訂正特許請求の範囲、訂正明細書の補正は認められないから、本件の訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲および明細書の記載を、本件訂正審判の審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲および訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 2 訂正事項 本件審判請求に係る訂正は、下記の訂正事項を含むものである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項12の、 「【請求項12】 真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に嵌合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記の回転体がその中心軸を前記固定体の中心軸に略一致させて回転するときに前記それぞれのラジアル軸受の軸受隙間内に生じる圧力がそれぞれの軸受の中央部分において最高に成って分布するようにそれぞれの軸受が構成されており、前記回転体を含む回転部分全体の重心は、前記第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と前記第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成されたことを特徴とする回転陽極型X線管。」(以下「特許発明12」という。) を、 「【請求項12】 真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に嵌合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記の回転体がその中心軸を前記固定体の中心軸に略一致させて回転するときに前記それぞれのラジアル軸受の軸受隙間内に生じる圧力がそれぞれの軸受の中央部分において最高に成って分布するようにそれぞれの軸受が構成されており、前記回転体を含む回転部分全体の重心は、前記第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と前記第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成され、 前記第1の表面及び/又は前記第2の表面は、前記回転体が所定の速度で回転しながら所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合に、同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近するようになっていることを特徴とする回転陽極型X線管。」(以下「訂正発明12」という。) と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項13の、 「【請求項13】 真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に嵌合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存するように構成されていることを特徴とする回転陽極型X線管。」(以下「特許発明13」という。) を、 「【請求項13】 真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に嵌合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存するように構成され、 前記第1の表面及び/又は前記第2の表面は、前記回転体が所定の速度で回転しながら前記回転体又は前記固定体に弾性変形を生じる程度に大きな所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合に、同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、軸方向に所定の幅にわたって実質的に均一な隙間を保ちながら、対向面に接近するようになっていることを特徴とする回転陽極型X線管。」((以下「訂正発明13」という。) と訂正する。 (3)訂正事項3 特許明細書の段落【0062】の、 「【0062】 軸受回転体24が回転速度6000rpmで回転し、外力Fが印加されて軸受回転体24の中心軸が傾斜した場合について、断面z=z1内に於ける軸受回転体24の変位量と、第1ラジアル軸受BR1のラジアル負荷容量との関係を計算して図7に曲線(1)で示している。図3(c)の点A1,A2の近傍では、軸受回転体24が傾斜したとき、軸受回転体24の内表面Sと軸受固定体31の外表面Tの対向面間距離の差を減少しながら互いに近づく。これらの表面間の距離が小さくなると圧力が大きくなるが、これらの表面が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づくので軸受回転体24の内表面Sが受ける全圧力は極めて大きくなる。図7には、比較の為に、同一サイズであり、軸受隙間Gの寸法が軸方向に一様な従来の軸受を用いた場合の、軸受回転体24の端部における変位量と、第1ラジアル軸受BR1のラジアル負荷容量との関係を曲線(2)で示している。曲線(2)は、軸受隙間Gの寸法が軸受の全領域Ltで一定な値、15μm、の場合を示しており、低負荷時の軸受特性が曲線(1)の場合と同等になっている。曲線(2)の場合には、軸受回転体24が傾斜した場合に、互いの軸受面が成す角度を増加しながら、両方の軸受面が互いに近づくので、隙間が狭くて圧力が増えた領域の面積は小さく、十分な全圧力の増加が得られないままで一部分が機械的に接触し、ラジアル負荷容量が小さな値に制限される。」 を 「【0062】 軸受回転体24が回転速度6000rpmで回転し、外力Fが印加されて軸受回転体24の中心軸が傾斜した場合について、断面z=z1内に於ける軸受回転体24の変位量と、第1ラジアル軸受BR1のラジアル負荷容量との関係を計算して図7に曲線(1)で示している。図3(c)の点A1,A2の近傍では、軸受回転体24が傾斜したとき、軸受回転体24の内表面Sと軸受固定体31の外表面Tの対向面間距離の差を減少しながら互いに近づく。これらの表面間の距離が小さくなると圧力が大きくなるが、これらの表面が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づくので軸受回転体24の内表面Sが受ける全圧力は、図7の曲線(1)で示すように前記両表面における前記周方向近接部分間の距離の減少量に対して非線形に増加して、極めて大きくなる。図7には、比較の為に、同一サイズであり、軸受隙間Gの寸法が軸方向に一様な従来の軸受を用いた場合の、軸受回転体24の端部における変位量と、第1ラジアル軸受BR1のラジアル負荷容量との関係を曲線(2)で示している。曲線(2)は、軸受隙間Gの寸法が軸受の全領域Ltで一定な値、15μm、の場合を示しており、低負荷時の軸受特性が曲線(1)の場合と同等になっている。曲線(2)の場合には、軸受回転体24が傾斜した場合に、互いの軸受面が成す角度を増加しながら、両方の軸受面が互いに近づくので、隙間が狭くて圧力が増えた領域の面積は小さく、十分な全圧力の増加が得られないままで一部分が機械的に接触し、ラジアル負荷容量が小さな値に制限される。」 と訂正する。 (4)訂正事項4 特許明細書の段落【0027】の、 「【0027】 本発明の一つは、真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に勘合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記の回転体がその中心軸を前記固定体の中心軸に略一致させて回転するときに前記それぞれのラジアル軸受の軸受隙間内に生じる圧力がそれぞれの軸受の中央部分において最高に成って分布するようにそれぞれの軸受が構成されており、前記回転体を含む回転部分全体の重心は、前記第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と前記第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成されたことを特徴とする回転陽極型X線管である。この回転陽極型X線管では、前記回転体に大きな外力が印加された場合に於ける前記回転中心軸の前記固定体の中心軸に対する傾斜角が小さくなるので、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差が小さくなり、ラジアル負荷容量が増大し易い。」 を 「【0027】 本発明の一つは、真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に勘合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記の回転体がその中心軸を前記固定体の中心軸に略一致させて回転するときに前記それぞれのラジアル軸受の軸受隙間内に生じる圧力がそれぞれの軸受の中央部分において最高に成って分布するようにそれぞれの軸受が構成されており、前記回転体を含む回転部分全体の重心は、前記第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と前記第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成され、前記第1の表面及び/又は前記第2の表面は、前記回転体が所定の速度で回転しながら所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合に、同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量のが非線形に増加する距離まで、対向面に接近するようになっていることを特徴とする回転陽極型X線管である。この回転陽極型X線管では、前記回転体に大きな外力が印加された場合に於ける前記回転中心軸の前記固定体の中心軸に対する傾斜角が小さくなるので、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差が小さくなり、ラジアル負荷容量が増大し易い。」 と訂正する。 (5)訂正事項5 特許明細書の段落【0028】の 「【0028】 本発明の一つは、真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に勘合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存するように構成されていることを特徴とする回転陽極型X線管である。この回転陽極型X線管では、前記回転体に大きな遠心力が作用した場合に、前記第1及び前記第2のラジアル軸受による回転モーメントが生じず、前記回転体は傾斜することなく半径方向に変位するので互いに近づく前記第1の表面及び前記第2の表面の間で大きな圧力が大きな面積にわたって生じ、大きなラジアル負荷容量を得ることができる。この回転陽極型X線管では前記回転体の表面と固定体の表面とがそれぞれ軸受幅方向に一定であることが、制作が容易であるので、好ましい。また、軸受隙間の寸法は、15μmより大きいことが軽負荷時の回転トルクが小さく出来ることと制作が容易であることから好ましい。前記重心の位置は、前記中央位置と丁度一致するのが好ましいが、前記回転体の傾斜の程度が実質的に無視できる程度に限定できる距離だけ前記中央位置から離れていても許容される。」 を 「【0028】 本発明の一つは、真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に勘合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存するように構成され、前記第1の表面及び/又は前記第2の表面は、前記回転体が所定の速度で回転しながら前記回転体又は前記固定体に弾性変形を生じる程度に大きな所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合に、同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、軸方向に所定の幅にわたって実質的に均一な隙間を保ちながら、対向面に接近するようになっていることを特徴とする回転陽極型X線管である。この回転陽極型X線管では、前記回転体に大きな遠心力が作用した場合に、前記第1及び前記第2のラジアル軸受による回転モーメントが生じず、前記回転体は傾斜することなく半径方向に変位するので互いに近づく前記第1の表面及び前記第2の表面の間で大きな圧力が大きな面積にわたって生じ、大きなラジアル負荷容量を得ることができる。この回転陽極型X線管では前記回転体の表面と固定体の表面とがそれぞれ軸受幅方向に一定であることが、製作が容易であるので、好ましい。また、軸受隙間の寸法は、15μmより大きいことが軽負荷時の回転トルクが小さく出来ることと制作が容易であることから好ましい。前記重心の位置は、前記中央位置と丁度一致するのが好ましいが、前記回転体の傾斜の程度が実質的に無視できる程度に限定できる距離だけ前記中央位置から離れていても許容される。」 と訂正する。 第4 当審の判断 上記の各訂正事項について、以下検討する。 1 訂正事項1について 訂正事項1は、特許発明12に、「前記第1の表面及び/又は前記第2の表面は、前記回転体が所定の速度で回転しながら所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合に、同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近するようになっている」という発明特定事項(以下「特定事項1」という。)を追加するものである。 ア 訂正の目的 前記特定事項1の追加は、特許発明12に係る「回転陽極型X線管」について、「回転体が所定の速度で回転しながら所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合」という条件において、「第1の表面及び/又は第2の表面は」、「同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近するようになっている」という事項を追加するものであって、当該事項は回転部分全体の重心位置に密接に関連する事項であると認められるので、特許発明12の減縮を目的とするものといえる。 イ 新規事項の有無 そこで、前記特定事項1が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらすべてを「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内おいてしたものであるか否か検討する。 本件特許明細書等には、訂正発明12、すなわち、「回転体を含む回転部分全体の重心は、前記第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と前記第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成された」(以下、当該重心位置に係る構成を「両軸受中央内側の構成」という。)「回転陽極型X線管」に関連した記載として、以下の記載がある。 (1a)「【0027】 本発明の一つは、真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に嵌合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記の回転体がその中心軸を前記固定体の中心軸に略一致させて回転するときに前記それぞれのラジアル軸受の軸受隙間内に生じる圧力がそれぞれの軸受の中央部分において最高に成って分布するようにそれぞれの軸受が構成されており、前記回転体を含む回転部分全体の重心は、前記第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と前記第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成されたことを特徴とする回転陽極型X線管である。この回転陽極型X線管では、前記回転体に大きな外力が印加された場合に於ける前記回転中心軸の前記固定体の中心軸に対する傾斜角が小さくなるので、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差が小さくなり、ラジアル負荷容量が増大し易い。」 (1b)「【0028】 本発明の一つは、真空空間を画定する真空容器と、この真空容器内に設けられた固定体と、この固定体と同軸的に嵌合された部分を有する回転体と、この回転体に取り付けられたX線ターゲットと、前記回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において、前記第1及び第2のラジアル軸受のそれぞれは、前記固定体の第1の表面と、この第1の表面に微小な軸受隙間を保って対向する前記回転体の第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面の少なくとも一方に設けられたらせん溝と、この中に充填された液体金属潤滑剤と、を含む動圧式すべり軸受から成っており、前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存するように構成されていることを特徴とする回転陽極型X線管である。この回転陽極型X線管では、前記回転体に大きな遠心力が作用した場合に、前記第1及び前記第2のラジアル軸受による回転モーメントが生じず、前記回転体は傾斜することなく半径方向に変位するので互いに近づく前記第1の表面及び前記第2の表面の間で大きな圧力が大きな面積にわたって生じ、大きなラジアル負荷容量を得ることができる。この回転陽極型X線管では前記回転体の表面と固定体の表面とがそれぞれ軸受幅方向に一定であることが、製作が容易であるので、好ましい。また、軸受隙間の寸法は、15μmより大きいことが軽負荷時の回転トルクが小さく出来ることと制作が容易であることから好ましい。前記重心の位置は、前記中央位置と丁度一致するのが好ましいが、前記回転体の傾斜の程度が実質的に無視できる程度に限定できる距離だけ前記中央位置から離れていても許容される。」 (1c)「【実施例4】 【0067】 図11を参照して他の実施例について説明する。図11において図3と同じ働きの部分は同じ番号を付している。本実施例では、第1ラジアル軸受BR1と第2ラジアル軸受BR2とが実質的に同一の構造と実質的に同一の寸法を有して構成されており、回転陽極の回転部分全体の重心GXがこれらラジアル軸受BR1、BR2の丁度中間位置、つまりz=(z3+z4)/2の位置に一致する場合の様態を表している。この場合には、軸受隙間Gの寸法は15μmよりも大きな一定の値になっており、低負荷時の回転トルクは小さな値である。図6には図示していないが、第1ラジアル軸受BR1と第2ラジアル軸受BR2とが同一の寸法であり、重心GXの位置が丁度中間点にある場合つまり、L1=Lt/2である特殊な場合について図6と同様に計算した結果、回転中心軸C1-C1’は固定体中心軸C-C’と平行に変位するとの結果を得た。この場合には、外力Fが大きくなった場合に、軸受回転体24の中心軸C1-C1’は軸受固定体31の中心軸C-C’と平行を保ちながら変位するので、軸受隙間Gの寸法は位置zに関係なく実質的に一定に形成されているのが好ましい。この場合には、外力Fが大きくなると最近接部分の面積が大きい状態で軸受面同士が接近するので大きなラジアル負荷容量を有することになる。実際の回転陽極型X線管でこのように、回転部分全体の重心GXをラジアル軸受BR1、BR2の丁度中間に位置させるのは困難であるが、例えば図12のように構成することによって実現できる。好ましくは無いが、前記重心GXの位置が前記中間位置に厳密に一致していなくても、実質的に一致しておれば、類似の効果が得られる。図12において、図1の各部に相当する部分には同じ番号を付して表している。図12において、X線ターゲット3は中心部分に大きな穴があり、この穴の部分は折り返し金具100の一端に固定されており、折り返し金具100の他端はターゲット支持体21に固定されている。更に、軸受回転体24の他端にある回転環状体28をタングステン等の高密度材料で構成する。X線ターゲット3や回転環状体28の質量や取付け位置を適正化することによって図11に示す実施例を実現することが出来る。」 (1d)「【図11】」 これらの記載ならびに図面の図示内容からして、回転体が公転による遠心力を受けた時には、径方向への変位を伴うことは自明であるといえるので、「前記回転体が所定の速度で回転しながら所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合」があることは、明らかである。そこで、その場合に、「第1の表面及び/又は第2の表面は」、「同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近するようになっている」との技術的事項(以下、「訂正技術的事項」という。)が、本件特許明細書等のすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるか否かについて、さらに検討する。 訂正発明12は、少なくとも、「回転体を実質的に支承する第1及び第2のラジアル軸受と、を具備する回転陽極型X線管において」、「前記回転体を含む回転部分全体の重心は、前記第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と前記第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成された」ことを発明特定事項とする発明であるので、回転体を含む回転部分全体の重心を、第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置させることに関連した記載を本件特許明細書等に求めると、前記(1a)?(1d)に加え、以下の記載がある。 (1e)「【0038】 上記の作用は、前記軸受回転体の中心軸に沿った方向に一様な寸法の軸受隙間を有する従来の軸受において、前記軸受回転体の中心軸と前記軸受固定体の中心軸が平行を保った状態で前記軸受回転体の表面が前記軸受固定体の表面に接近した場合に類似している。しかしながら、このように中心軸が互いに平行状態を保ちながら変位するのは、前記第1のラジアル軸受と前記第2の軸受とが同一の特性を有し、前記回転陽極の回転部分全体の重心が両ラジアル軸受の丁度中間位置に一致する特殊な場合に限られる。実際の回転陽極型X線管ではこのような条件を満たすのは容易ではなく、且つ、一般的でない。上記にような軸方向に傾斜した軸受隙間を設けた場合には、実際の回転陽極型X線管でよくあるように、前記回転陽極の回転部分全体の重心が軸受の端部又は軸受を外れた位置にあっても、十分に大きなラジアル負荷容量を持つことになり、コンパクトで大きなラジアル負荷容量を持つ回転陽極型X線管を容易に実現できる。」 (1f)「【0059】 外力Fが十分に大きい場合には、重心GXが外力Fの方向と角度を成した方向に変位すると共に、重心GXの周りで傾斜する。これらの様子を計算した結果を図5及び図6に示している。図5において、横軸は、外力Fに平行な方向への重心GXの変位量を表しており、縦軸は、軸受回転体24の中心軸C1-C1’と外力Fとに直角な方向への重心GXの変位量を表している。図5から分かるとおり、重心座標L1の大きさによって重心GXの変位量及び変位方向が変化する。重心GXの変位量は、同一の外力Fが印加された場合において、重心座標L1が小さい場合に大きく、重心座標L1が第1ラジアル軸受BR1と第2ラジアル軸受BR2の両端間の距離、つまり軸受全長Lt、の中央位置近傍で最小になり、重心座標L1が更に大きい場合に大きくなる。 【0060】 図6において、横軸は、外力Fに平行な方向を中心とした、重心GXの回りにおける軸受回転体24の中心軸C1-C1’の傾斜角度を表しており、縦軸は、重心Gを通り、軸受回転体24の中心軸C1-C1’及び外力Fの両方向に直角な軸の回りにおける軸受回転体24の中心軸C1-C1’の傾斜角度を表している。図6から分かるとおり、重心座標L1の大きさによって前記回転中心軸C1-C1’の傾斜角度及び傾斜方向が変化する。回転中心軸C1-C1’の傾斜角度は、重心座標L1が小さい場合に大きく、重心座標L1が前記軸受全長Ltの中央位置近傍で最小であり、重心座標L1が更に大きい場合に大きいことが分かる。図6は、重心座標L1がどの値であっても外力Fが大きくなると回転中心軸C1-C1’の傾斜が大きくなることを示している。」 (1g)「【図5】,【図6】」 これらの回転体を含む回転部分全体の重心位置に関連した記載および図面の図示内容、本件特許明細書の段落【0009】に記載された軸受全長Ltの値である「112mm」、ならびに、請求人の提出した平成22年7月26日付け意見書の主張を参酌すると、本件特許明細書等から、以下の技術的事項(以下「明細書技術的事項1」という。)を把握することができる。 「軸受回転体表面と軸受固定体表面の軸受隙間の寸法を軸受回転体の中心軸に沿った方向に実質的に一定となる構成(以下「軸受隙間寸法が軸方向に一定の構成」という。)とした場合において、 重心位置を両軸受中央内側の構成とした場合には、 前記重心を、第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域よりも外側の軸方向領域に位置する構成(以下「両軸受中央外側の構成」という。)とした場合に比較して、 回転体に大きな外力が印加されたときに、 回転体重心の軸方向と直交する方向への変位量が小さくなるとともに、前記回転体の中心軸が固定体の中心軸に対して傾斜する角度を小さくすることができ、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差が小さくなって、ラジアル負荷容量が増大し易い回転陽極型X線管を得ることができる。」 そうすると、上記明細書技術的事項1から、当業者は以下の技術的事項を理解することができる。 「軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に一定の構成を採用した場合には、重心位置を両軸受中央内側の構成とすることにより、回転体に大きな外力が印加されたときに、回転体重心の軸方向と直交する方向への変位量が小さくなるとともに、前記回転体の中心軸が固定体の中心軸に対して傾斜する角度を小さくすることができ、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差が小さくなって、ラジアル負荷容量が増大し易い回転陽極型X線管を得ることができる。」 一方、請求人が特定事項1の根拠として主張する本件特許明細書等の記載のうち、段落【0013】,【0036】,【0058】,【0061】,【0062】,【0064】,【0068】について検討すると、これらの記載は、いずれも、重心位置が両軸受中央外側の構成である場合に、2個のラジアル軸受の互いに隣接する領域に於ける軸受隙間の寸法よりも前記2個のそれぞれのラジアル軸受の他端領域に於ける軸受隙間の寸法を大きくする構成(以下「軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成」という。)を採用することにより、回転体に大きな外力が印加されてラジアル軸受の回転中心軸が傾いたときに、対向するそれぞれの軸受面が互いに対向する軸受面との間の傾き角度を減少しながら近接することにより、大きな圧力が生じる領域の面積が大きくなって、大きなラジアル負荷容量を有するように作用することを前提とする技術、すなわち、本件特許明細書等の【図3】に代表例として図示された事項を前提とした記載であり、同じく請求人が特定事項1の根拠として主張する本件特許明細書等の記載のうち、【図7】の曲線(1),【図8】は、【図3】に図示された前提事項に基づいてラジアル負荷容量の変化を図示したものである。 また、同じく請求人が特定事項1の根拠として主張する本件特許明細書等の記載のうち、段落【0002】,【0009】,【0012】は、背景技術や課題に関する一般的な記載にすぎない。 そして、前記【図7】の曲線(1),【図8】は、軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用した場合、回転体に大きな外力が印加されてラジアル軸受の回転中心軸が傾いたときに、対向するそれぞれの軸受面が互いに対向する軸受面との間の傾き角度を減少しながら近接して大きな圧力が生じる領域の面積が大きくなり、大きなラジアル負荷容量を有するように作用すること、すなわち、軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用した場合、回転体に働く外力が小さい間は、回転体はラジアル軸受の回転中心軸が対向する軸受面に向けて傾き、その間、ラジアル負荷容量は略直線状に増大し、その後、ラジアル軸受面間の距離が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づき、その間、ラジアル負荷容量は曲線的に増大する、というラジアル負荷容量の変化曲線を図示したものといえる。 そうすると、請求人が特定事項1の根拠として主張する本件特許明細書等の記載からは、以下の技術的事項(以下「明細書技術的事項2」という。)を把握することができる。 「重心位置が両軸受中央外側の構成である場合には、 軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用することにより、 回転体に働く外力が小さい間は、回転体はラジアル軸受の回転中心軸が対向する軸受面に向けて傾き、その間、ラジアル負荷容量は略直線状に増大し、その後、ラジアル軸受面間の距離が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づき、その間、ラジアル負荷容量は曲線的に増大する回転陽極型X線管を得ることができる。」 しかしながら、前述のとおり、重心位置として両軸受中央内側の構成を採用するのは、「軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に一定の構成を採用した場合に」、「回転体に大きな外力が印加された場合に、回転体重心の軸方向と直交する方向への変位量が小さくなるとともに、前記回転体の中心軸が固定体の中心軸に対して傾斜する角度を小さくすることができ、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差が小さくなって、ラジアル負荷容量が増大し易い回転陽極型X線管を得ることができる」からであることからして、重心位置を両軸受中央内側の構成とするに加えて、さらに、軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用し、「回転体に働く外力が小さい間は、回転体はラジアル軸受の回転中心軸が対向する軸受面に向けて傾き、その間、ラジアル負荷容量は略直線状に増大し、その後、ラジアル軸受面間の距離が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づき、その間、ラジアル負荷容量は曲線的に増大する」ようにする必要はない。 それのみならず、重心位置として両軸受中央内側の構成を採用した場合において、さらに軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用した場合には、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差は大きくなるのであるから、前記明細書技術的事項1として把握できる「回転体の中心軸が固定体の中心軸に対して傾斜する角度を小さくすることができ、対向した軸受面間距離の軸方向位置による異差が小さくなって、ラジアル負荷容量が増大し易い回転陽極型X線管を得ることができる」という作用を奏することがなくなってしまう。 したがって、前記明細書技術的事項1、2から、「回転体を含む回転部分全体の重心を第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成」とした場合に、さらに加えて、「回転体に働く外力が小さい間は、回転体がラジアル軸受の回転中心軸が対向する軸受面に向けて傾く間、ラジアル負荷容量が略直線状に増大し、その後、ラジアル軸受面間の距離が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づく間、ラジアル負荷容量が曲線的に増大するようにラジアル負荷容量が変化するような回転陽極型X線管。」に関する技術的事項を導き出すことはできない。 そして、本件特許明細書等の【図7】について記載した、特許明細書の段落【0062】の記載からして、前記訂正技術的事項は、実質的に、前記【図7】の曲線(1)に図示された負荷容量の変化形態を意味していることは明らかであるから、前記明細書技術的事項1、2から、「回転体を含む回転部分全体の重心を第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成」とした場合に、さらに加えて、「(固定体の)第1の表面及び/又は(回転体の)第2の表面は」、「同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近するようになっている」という訂正技術的事項を付加する構成を導き出すことはできない。 また、本件特許明細書等のその他の記載を精査しても、重心位置を両軸受中央内側の構成とするに加えて、さらに、軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用した回転陽極型X線管を得ることについての記載、ならびにそのことを示唆する記載はない。 以上のとおりであるから、本件特許明細書等の記載からは、回転体を含む回転部分全体の重心が、第1のラジアル軸受の軸方向中央位置と第2のラジアル軸受の軸方向中央位置とで挟まれた軸方向領域に位置するように構成した場合に、「(固定体の)第1の表面及び/又は(回転体の)第2の表面は」、「同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近するようになっている」回転陽極型X線管に関する技術的事項を把握することはできない。 よって、前記訂正技術的事項は、本件特許明細書等のすべての事項を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえるから、前記特定事項1を含む訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内おいてしたものとはいえず、特許法第126条第3項の規定に違反するものである。 なお、特定事項1の「対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近」の意味するところが明確でないことは後述(下記ウの(ウ-2)を参照)のとおりであるが、請求人の主張を勘案し、「ラジアル軸受面が相互に実質的に平行を保ちながら印加された外力と増大したラジアル負荷容量とがつりあう距離まで接近する」ことを意味するものと解した。 ウ 特許法第126条第4,5項についての検討 訂正事項1が特許法第126条第3項の規定に違反することは上記のとおりであるが、念のため、訂正事項1による訂正が実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであるか否か、ならびに、訂正発明12が独立特許要件を満たすか否かついても検討する。 (ウ-1)特許請求の範囲の変更について 上記イで述べたとおり、本件特許明細書等からは2つの技術的事項を把握することができ、特許発明12は、前記明細書技術的事項1として把握できる事項に関する発明ということができる。そうすると、特許発明12は、前記明細書技術的事項2の前提である、軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用するという事項を含まない発明であるといえる。 一方、訂正発明12は、前記明細書技術的事項1の前提である重心位置として両軸受中央内側の構成を採用しつつ、前記明細書技術事項2の前提である軸受隙間に軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用した際のラジアル負荷容量の変化態様と認められる「前記第1の表面及び/又は前記第2の表面は、前記回転体が所定の速度で回転しながら所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合に、同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近する」という前記特定事項1を追加するものである。 そして、本件特許明細書等の段落【0062】には、ラジアル軸受回転体の構成として前記明細書技術的事項2を前提とする場合について「軸受回転体24が傾斜したとき、軸受回転体24の内表面Sと軸受固定体31の外表面Tの対向面間距離の差を減少しながら互いに近づく。これらの表面間の距離が小さくなると圧力が大きくなるが、これらの表面が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づくので軸受回転体24の内表面Sが受ける全圧力は極めて大きくなる。」と記載され、さらに、前記明細書技術的事項2を前提としない場合について、「軸受回転体24が傾斜した場合に、互いの軸受面が成す角度を増加しながら、両方の軸受面が互いに近づくので、隙間が狭くて圧力が増えた領域の面積は小さく、十分な全圧力の増加が得られないままで一部分が機械的に接触し、ラジアル負荷容量が小さな値に制限される。」と記載され、ラジアル軸受回転体の構成として前記明細書技術的事項2を前提としない場合には、「互いの軸受面が成す角度を増加しながら、両方の軸受面が互いに近づくので、……十分な全圧力の増加が得られない」こと、すなわち、「これらの表面が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づく」ことを否定する事項が明記されている。 そうすると、訂正発明12に特定事項1を追加することにより、実質的に、特許発明12が具備している軸受隙間についての構成である、軸受隙間寸法が軸方向に一定の構成に代えて、軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成を採用することになるから、ラジアル軸受の軸受回転体、あるいは軸受固定体の形状が変更されることは明らかである。 したがって、訂正事項1により、特許発明12は実質上変更されることとなるので、訂正事項1は特許法第126条第4項の規定に違反するものである。 (ウ-2)独立特許要件について 訂正発明12の、「対向面に局部的に異常接近することなく、前記ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近」は、次の点で、本件特許明細書の記載を参酌しても、その意味が明らかでなく、発明が不明確である。 第1に、「ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する」とは、どのようにラジアル負荷容量が増加することを意味するのか不明である。請求人は、段落【0012】,【0013】,【0061】,【0062】の記載を引用しつつ、【図7】の「曲線(1)」で図示されるようなラジアル負荷容量の変化態様を、「ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する」態様としている。しかしながら、【図7】に図示された「曲線(1)」から、略直線状の部分と指数関数類似の曲線部分を見出すことはできるものの、その2つの部分は連続しており、どの曲線部分を「非線形」とし、どの部分からを「非線形に増加する」とするのか、明確に理解することはできない。すなわち、本件特許明細書には、ラジアル負荷容量について「非線形に増加する」態様について、具体的な記載がなく、「非線形」の意味自体が不明確である。 第2に、「ラジアル軸受のラジアル負荷容量が非線形に増加する距離まで、対向面に接近」とは、どのような距離まで周方向近接部分が接近するのか不明である。すなわち、段落【0062】に記載されている「軸受回転体24が傾斜したとき、軸受回転体24の内表面Sと軸受固定体31の外表面Tの対向面間距離の差を減少しながら互いに近づく。これらの表面間の距離が小さくなると圧力が大きくなるが、これらの表面が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づくので軸受回転体24の内表面Sが受ける全圧力は極めて大きくなる。」との記載を参酌しても、「軸受回転体24の内表面Sと軸受固定体31の外表面Tの対向面間距離」がどのようになった時点が「非線形に増加する距離」であるのか定かでないし、「非線形に増加する距離まで」との記載からすると、所定の距離で接近が停止することを意味するものと認められるが、その停止距離がどのような距離であるかも明らかでない。 したがって、訂正発明12は、発明が明確でない点で特許法第36条第6項第2号の規定に適合せず独立して特許を受けることができないので、訂正事項1は特許法第126条第5項の規定に違反するものである。 エ 訂正事項1についてのむすび 以上のとおり、訂正事項1は、特許法第126条第3項の規定に違反するものであり、仮に、特許法第126条第3項の規定に違反しないものであったとしても、特許法第126条第4項ならびに同第5項の規定に違反するものである。 2 訂正事項2について 訂正事項2は、特許発明13に「前記第1の表面及び/又は前記第2の表面は、前記回転体が所定の速度で回転しながら前記回転体又は前記固定体に弾性変形を生じる程度に大きな所定の遠心力を公転によって径方向に受けて径方向に変位する場合に、同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、軸方向に所定の幅にわたって実質的に均一な隙間を保ちながら、対向面に接近するようになっている」という発明特定事項(以下「特定事項2」という。)を追加する訂正である。 ア 訂正の目的 最初に、前記特定事項2の追加が、特許法第126条第1項第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当するか否かを検討する。特許発明13の特徴的構成である発明特定事項、すなわち、「前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存する」場合について、本件特許明細書等には、次の記載がある 「【実施例4】 【0067】 図11を参照して他の実施例について説明する。図11において図3と同じ働きの部分は同じ番号を付している。本実施例では、第1ラジアル軸受BR1と第2ラジアル軸受BR2とが実質的に同一の構造と実質的に同一の寸法を有して構成されており、回転陽極の回転部分全体の重心GXがこれらラジアル軸受BR1、BR2の丁度中間位置、つまりz=(z3+z4)/2の位置に一致する場合の様態を表している。この場合には、軸受隙間Gの寸法は15μmよりも大きな一定の値になっており、低負荷時の回転トルクは小さな値である。図6には図示していないが、第1ラジアル軸受BR1と第2ラジアル軸受BR2とが同一の寸法であり、重心GXの位置が丁度中間点にある場合つまり、L1=Lt/2である特殊な場合について図6と同様に計算した結果、回転中心軸C1-C1’は固定体中心軸C-C’と平行に変位するとの結果を得た。この場合には、外力Fが大きくなった場合に、軸受回転体24の中心軸C1-C1’は軸受固定体31の中心軸C-C’と平行を保ちながら変位するので、軸受隙間Gの寸法は位置zに関係なく実質的に一定に形成されているのが好ましい。この場合には、外力Fが大きくなると最近接部分の面積が大きい状態で軸受面同士が接近するので大きなラジアル負荷容量を有することになる。実際の回転陽極型X線管でこのように、回転部分全体の重心GXをラジアル軸受BR1、BR2の丁度中間に位置させるのは困難であるが、例えば図12のように構成することによって実現できる。好ましくは無いが、前記重心GXの位置が前記中間位置に厳密に一致していなくても、実質的に一致しておれば、類似の効果が得られる。……(以下、省略)」(下線は当審で付加した。) この記載からすると、「第1ラジアル軸受BR1と第2ラジアル軸受BR2とが実質的に同一の構造と実質的に同一の寸法を有して構成され」、「回転陽極の回転部分全体の重心GXがこれらラジアル軸受BR1、BR2の丁度中間位置に一致」あるいは「前記重心GXの位置が前記中間位置に厳密に一致していなくても、実質的に一致」する場合には、「外力Fが大きくなった場合に、軸受回転体24の中心軸C1-C1’は軸受固定体31の中心軸C-C’と平行を保ちながら軸受面同士が接近するように変位する」あるいは「類似の効果が得られる」といえる。 また、本件特許明細書等には、特許発明13の特徴的構成である発明特定事項、すなわち、「前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存する」場合に関しては、上記の記載以外の記載は見いだすことはできないから、そもそも、特許発明13が、「軸受回転軸の中心軸に沿った方向に一様な寸法の軸受隙間を有する」軸受隙間の構成(軸受隙間寸法が軸方向に一定の構成)以外の、「2個のラジアル軸受の互いに隣接する領域に於ける軸受隙間の寸法よりも前記2個のそれぞれのラジアル軸受の他端領域に於ける軸受隙間の寸法を大きくした」軸受隙間の構成(軸受隙間寸法が軸方向に変化する構成)を含む発明であるとする根拠を見いだすことはできない。 そして、軸受隙間の構成が、「軸受回転軸の中心軸に沿った方向に一様な寸法の軸受隙間を有する」(軸受隙間寸法が軸方向に一定の構成)場合には、「軸受回転体24の中心軸C1-C1’は軸受固定体31の中心軸C-C’と平行を保ちながら軸受面同士が接近するように変位する」あるいは「類似の効果が得られる」ならば、ラジアル軸受の回転体と固定体の各表面は、「同一の軸方向位置において周方向内で最も対向面に近づく周方向近接部分が、対向面に局部的に異常接近することなく、軸方向に所定の幅にわたって実質的に均一な隙間を保ちながら、対向面に接近する」ことは明らかである。 そうすると、前記特定事項2は、特許発明13の発明特定事項である、「前記第1のラジアル軸受の直径及び軸受幅と前記第2のラジアル軸受の直径及び軸受幅がそれぞれ実質的に同一であり、前記回転体を含む回転部分全体の重心が前記第1のラジアル軸受と前記第2のラジアル軸受との間の軸方向の略中央位置に存する」場合における、ラジアル軸受の回転体と固定体の各表面の接近態様を明文化したものにすぎず、特定事項2は、特許発明13を何ら減縮するものではないので、訂正事項2は、特許法第126条第1項第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 次いで、前記特定事項2の追加が、特許法第126条第1項第2号あるいは同3号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」あるいは「明りようでない記載の釈明」に該当するか否かを検討するに、前記特定事項2の追加が誤記の訂正でないことは明らかであるし、特許発明13が明りようでないと認めるべき根拠もないので、明りようでない記載の釈明に該当しないことも明らかである。 イ 訂正事項2についてのむすび 以上のとおりであるので、訂正事項2は、特許法第126条第1項各号に規定する事項を目的とするものとはいえず、特許法第126条第1項の規定に適合していない。 3 訂正事項3について 訂正事項3は、特許明細書の段落【0062】中の図7に関する説明として記載されている、「これらの表面間の距離が小さくなると圧力が大きくなるが、これらの表面が十分に近接した状態では実質的に平行を保ちながら更に近づくので軸受回転体24の内表面Sが受ける全圧力は極めて大きくなる。」(下線は当審で付加した。)の「全圧力」について、「全圧力は、図7の曲線(1)で示すように前記両表面における前記周方向近接部分間の距離の減少量に対して非線形に増加して、極めて大きくなる。」と訂正するものである。 ア 訂正の目的 前記訂正事項3が、特許法第126条第1項各号に規定するいずれかを目的とするものであるか否かを検討すると、訂正事項3が特許請求の範囲の減縮、あるいは誤記の訂正を目的とするものでないことは明らかであるので、明りようでない記載の釈明に該当するか否かについて、以下に検討する。 (a)訂正事項3が、特許請求の範囲を訂正する訂正事項1に係る訂正にともない、訂正事項1と整合するよう、特許明細書の記載を訂正しようとするものであるとすると、(1)で述べたとおり、訂正事項1は適法な訂正であるとは認められないから、訂正事項3が、訂正事項1と整合するよう特許明細書の記載を訂正する、すなわち、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるとは認められない。 (b)特許明細書の段落【0062】の記載が明りようでないとする根拠は見いだせないから、訂正事項3が、特許明細書の段落【0062】について、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるとも認められない。 (c)訂正事項1に関して述べた(1)のウの(ウ-2)で述べたとおり、「非線形」の意味自体が明確でない。そうすると、訂正事項自体が明りようでないので、訂正事項3が明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるとは認められない。 以上のとおり、訂正事項3は、明りようでない記載の釈明に該当するとも認められない。 イ 訂正事項3についてのむすび したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項各号に規定する事項を目的とするものとはいえず、特許法第126条第1項の規定に適合していない。 4 訂正事項4について 訂正事項4は、特許請求の範囲を訂正する訂正事項1に係る訂正にともない、訂正事項1と整合するよう、特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正しようとするものである。 しかしながら、(1)で述べたとおり、訂正事項1は適法な訂正であるとは認められないから、訂正事項4が、訂正事項1と整合するよう特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正する、すなわち、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるとは認められない。 また、訂正事項4が、特許請求の範囲の減縮や誤記の訂正に該当しないことも明らかである。 したがって、訂正事項4は、特許法第126条第1項各号に規定する事項を目的とするものとはいえず、特許法第126条第1項の規定に適合していない。 5 訂正事項5について 訂正事項5は、特許請求の範囲を訂正する訂正事項2に係る訂正にともない、訂正事項2と整合するよう、特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正しようとするものである。 しかしながら、(2)で述べたとおり、訂正事項2は適法な訂正であるとは認められないから、訂正事項5が、訂正事項2と整合するよう本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正する、すなわち、明りようでない記載の釈明を目的とする訂正であるとは認められない。 また、訂正事項5が、特許請求の範囲の減縮や誤記の訂正に該当しないことも明らかである。 したがって、訂正事項5は、特許法第126条第1項各号に規定する事項を目的とするものとはいえず、特許法第126条第1項の規定に適合していない。 第5 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に違反する、もしくは特許法第126条第4項ならびに同第5項の規定に違反する訂正事項、ならびに、特許法第126条第1項の規定に適合していない訂正事項を含むものである。 したがって、本件訂正は適法でないから、本件特許の特許請求の範囲および明細書の記載を、本件訂正審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを認めることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-16 |
結審通知日 | 2010-09-21 |
審決日 | 2010-10-06 |
出願番号 | 特願2004-80020(P2004-80020) |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Z
(H01J)
P 1 41・ 85- Z (H01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡▲崎▼ 輝雄 |
特許庁審判長 |
村田 尚英 |
特許庁審判官 |
神 悦彦 橋本 直明 |
登録日 | 2009-08-21 |
登録番号 | 特許第4360952号(P4360952) |
発明の名称 | 回転陽極型X線管装置 |