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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1227748
審判番号 不服2007-30077  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-05 
確定日 2010-12-01 
事件の表示 平成 8年特許願第527837号「ヘテロ原子機能化ポルフィラジン化合物」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月19日国際公開、WO96/28449、平成10年 1月20日国内公表、特表平10-500706〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年3月11日(パリ条約により優先権主張日 1995年3月14日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成18年9月27日付の拒絶理由が通知され、平成19年3月28日付で手続補正がなされるとともに意見書が提出された後、同年7月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年11月21日受付で手続補正がなされたものである。

2.平成19年11月21日受付の手続補正(以下、「本件補正」ともいう。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年11月21日受付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、平成19年3月28日付で補正された特許請求の範囲の請求項1?35項、すなわち、
「(1)以下の構造式、すなわち;


[式中、Mは、2Hまたはピロール窒素原子と結合する元素であり、そして、A、B、CおよびDは、それぞれ、独立して;
(a)スルホ;スルフィドリル…チオ部分;
(b)以下の構造式;


[式中、R_(1)とR_(2)は、水素、1個?16個の炭素原子を有するアルキル基、2-ピリジルメチル、ベンジル、アリル、-CH_(2)CO_(2)H、そのR_(15)が、1個?16個の炭素原子を有するアルキル基である-COCH_(2)OR_(15)および-CH_(2)OCCH_(2)COR_(15);そのqが、2?6の整数であり、そのR_(16)が、水素、1個?10個の炭素原子を有するアルキル基、2-ピリジルメチル、ベンジル、アリル、-CH_(2)CO_(2)H、そのR_(10)が1個?12個の炭素原子を有するアルキル基である-COCH_(2)OR_(10)または-CH_(2)OCCH_(2)COR_(10)である、-NR_(16)-(CH_(2))_(q)-NR_(16)-、-NR_(16)-(CH_(2)CH_(2)CH_(2)NR_(16))_(q)CH_(2)CH_(2)CH_(2)NR_(16)-、-NR_(16)-(CH_(2)-NR_(16))_(q)-CH_(2)NR_(16)-および-NR_(16)-(CH_(2)CH_(2)NR_(16))_(q)CH_(2)CH_(2)NR_(16)-からなるグループから選択される]の構造式で表されるアミノ部分;
(c)ヒドロキシル、…からなるグループから選択されるオキソ部分;
(d)そのR_(3)およびR_(4)は、…からなるグループから選択されるホスフォ部分;
(e)セレノ(-SeHまたは-Se^(-))、…からなるグループから選択されるセレン部分またはテルル部分;および
(f)1個?18個の炭素原子を有するアルキル基、…からなるグループから選択される炭化水素部分からなるグループから選択され、
(g)A、B、CおよびDのすべてが、チオ部分である場合、A、B、CおよびDのすべてが、炭化水素部分である場合、A、B、CおよびDのすべてが、そのR_(1)およびR_(2)が、それぞれ、独立して、1個?16個の炭素原子を有するアルキル基、2-ピリジルメチルまたはベンジルであるNR_(1)R_(2)となる場合、および
A、B、CおよびDのすべてが、アルコキシ部分である場合は除外され、および
(h)A、B、CおよびDの少なくとも二つが金属イオンM1と個別に配位結合する]
の構造式で表される、ことを特徴とするヘテロ原子機能化ポルフィラジン化合物。
(2)A、B、CおよびDの少なくとも三つが、金属イオンM1と個別に配位結合する請求項1に記載の化合物。
(3)A、B、CおよびDのすべてが、金属イオンM1と個別に配位結合する請求項1に記載の化合物。
(4)AおよびBが、金属イオンM1と個別に配位結合する請求項1に記載の化合物。
(5)AおよびCが、金属イオンM1と個別に配位結合する請求項1に記載の化合物。
(6)…省略…
(7)…省略…
(8)…省略…
(9)…省略…
(10)…省略…
(11)…省略…
(12)以下の構造式、すなわち;


[式中、R_(1)およびR_(2)が、それぞれ、独立して、水素、1個?16個の炭素原子を有するアルキル基、2-ピリジルメチル、ベンジル、アリル、-CH_(2)CO_(2)H、R_(15)が1個?16個の炭素原子を有するアルキル基である-COCH_(2)OR_(15)、および-CH_(2)COCH_(2)COR_(15)から選択される]の構造式で表される請求項1に記載の化合物。
(13)以下の構造式、すなわち;


[式中、Rが、1個?10個の炭素原子を有するアルキル基である]の構造式で表される請求項1に記載の化合物。
(14)…省略…
(15)以下の構造式、すなわち;


[式中、Bnbeが、p-カルボキシブチルベンジルである]のいずれかの構造式で表される請求項1に記載の化合物。
(16)…省略…
(17)…省略…
(18)…省略…
(19)…省略…
(20)請求項1乃至19のいずれかに記載の化合物と、当該化合物の周縁に結合する一つ以上の金属イオンM1とを含む、ことを特徴とする多金属ポルフィラジン化合物。
(21)以下の構造式、すなわち;


[式中、Lが、金属イオンM1に配位結合するリガンドであり、および、pが、0?10の整数である]の構造式で表される請求項20に記載の化合物。
(22)…省略…
(23)…省略…
(24)…省略…
(25)…省略…
(26)以下の構造式、すなわち;


[式中、Lが、金属イオンM1に配位結合するリガンドである]の構造式で表される請求項20に記載の化合物。
(27)…省略…
(28)…省略…
(29)…省略…
(30)…省略…
(31)…省略…
(32)…省略…
(33)…省略…
(34)…省略…
(35)前記基質が、抗体、デキストラン、サイクロデキストラン、ポリスチレン、ハイドロキシアパタイト、またはこれらの混合物からなるグループから選択される請求項33に記載の複合体。」を
「【請求項1】
以下の構造式;
【化1】


[式中、Mは、2H、マグネシウム、ニッケル、および、銅からなるグループから選択され、Aが、S-p-カルボキシブチルベンジル基(S-Bnbe基)であり、および、B?Dが、ベンゾ基である]で表されるポルフィラジン化合物。
【請求項2】
以下の構造式;
【化2】


[式中、Mは、2H、マグネシウム、ニッケル、および、銅からなるグループから選択され、M^(1)が、パラジウムイオンであり、Lが、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン]-[(ノルフタロシアニン)ジチオレート]パラジウムに由来するジホスフィンリガンドである]で表されるポルフィラジン化合物。
【請求項3】
以下の構造式;
【化3】


[式中、Mは、2H、マグネシウム、および、ニッケルからなるグループから選択され、A?Dが、NR_(1)R_(2)[式中、R_(1)およびR_(2)の少なくとも一方が、ベンジル基またはピリジルメチル基である]である]で表されるポルフィラジン化合物。」
と補正するものである。

(2)補正の適否
本件補正は、特許法第17条の2第1項第4号における「拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にするとき」になされたものであるところ、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」ともいう。)第17条の2第4項において、そのような場合において特許請求の範囲についてする補正は、同項第1号乃至第4号に掲げる事項(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明)を目的とするものに限るとされているので、また、同法第17条の2第5項において、第126条第4項(現行法第5項)の規定は前項第2号の場合に準用するとされているので、それらの規定を満たすか検討する。
なお、「本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」と「本件補正後の特許請求の範囲の請求項1」は、それぞれ単に「補正前の請求項1」と「補正後の請求項1」という(他の請求項についても同様)。

(ア)補正後の請求項1への補正について
補正後の請求項1は、同一の構造式が記載されていることからみて、補正前の請求項1に対応するものと解し、以下検討する。なお、この解釈は、審判請求時の補正についての「補正前の請求項2?25および27?35を、削除いたしました。そして、補正前の請求項1を、『…(補正後の請求項1)…』と書き改めて、限縮補正を行いました。」(審判請求理由;平成19年11月21日受付の手続補正書(方式)を参照)との請求人の主張に沿うものである。

補正前の請求項1は、ポルフィラジン化合物の分子内の4種類の置換基A?Dについて、「(h)A、B、CおよびDの少なくも二つが金属イオンM1と個別に配位結合する」という条件を満たすことを発明特定事項とするものであった。
ここで、同請求項1の「(h)A、B、CおよびDの少なくも二つが金属イオンM1と個別に配位結合する」との特定事項について検討すると、「A、B、CおよびDの少なくも二つ」が「金属イオンM1」と「配位結合する」との記載からすれば、同請求項1に係るポルフィラジン化合物は、分子内の4つのピロール環上の4種類の置換基A?Dのうち少なくとも2種類以上の置換基が金属イオンM1と個別に配位結合した化学構造を有するものと解される。しかし、例えば、同請求項1を引用する請求項12に係る化合物は、請求項1の置換基A?Dに相当するNR_(1)R_(2)が分子内の4つのピロール環上に8つ存在する化学構造を有するものであるが、ここで、NR_(1)R_(2)が金属イオンに対し配位結合能を有することは技術的に明らかであるが、同請求項12にはNR_(1)R_(2)が金属イオンM1と配位結合した形で記載されているわけではない。また、同請求項20には、「請求項1乃至19のいずれかに記載の化合物と、当該化合物の周縁に結合する一つ以上の金属イオンM1とを含む、ことを特徴とする多金属ポルフィラジン化合物。」(下線は当審による。)と記載されていることから、同請求項20に係る「多金属ポルフィラジン化合物」の一構成成分である補正前の請求項1に係る「ポルフィラジン化合物」は、その周縁でもう一つの構成成分である「金属イオンM1」と結合するものの、補正前の請求項1に係る「ポルフィラジン化合物」自体は分子内で金属イオンM1と配位結合した化学構造を有するものとは認められない。これらを考慮すると、補正前の請求項1の「(h)A、B、CおよびDの少なくも二つが金属イオンM1と個別に配位結合する」とは、分子内の4つのピロール環上の4種類の置換基A?Dのうち少なくとも2種類以上の置換基(つまり、少なくとも4つ以上の置換基)が金属イオンM1と個別に「配位結合している」という化学構造を有するというのではなく、金属イオンM1と個別に「配位結合できる」、すなわち、金属イオンM1に対する「配位結合能を有する」ことを意味するものと解するのが妥当であって、そのような解釈は補正前の請求項1を引用する他の請求項の記載内容と整合するものである。
以上のとおりであるから、補正前の請求項1の「(h)」は、「A、B、CおよびDの少なくとも二つが金属イオンM1と個別に配位結合『できる』」ことと同義であるとの解釈に基づき、本件補正の適否について以下に検討する。

本件補正により、補正後の請求項1における置換基A?Dについて、「Aが、S-p-カルボキシブチルベンジル基(S-Bnbe基)であり、および、B?Dが、ベンゾ基である」と特定された。ここで、その化学構造からみて「S-Bnbe基」は金属イオンM1との間に配位結合能を有するが、「ベンゾ基」は配位結合能を有するものではないことは技術的に明らかであるから、本件補正は、4種類の置換基A?Dについて、補正前の請求項1におけるA?Dの置換基のうち少なくとも2種類以上の置換基が金属イオンM1と配位結合できるという内容を、Aのみが金属イオンM1と配位結合できるという内容に発明特定事項を変更するものである。すなわち、本件補正は、金属イオンM1と配位結合できる置換基の種類を本件補正前の「少なくとも二つ」から「一つ」に変更するものであるから、発明特定事項を限定する限定的減縮に該当するものではない。また、このような補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当しないことは明らかである。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げる事項の何れにも該当しない。

(なお、補正前の請求項13に記載された化合物、同請求項15の右上に記載された化合物、同請求項21に記載された化合物、および同請求項26に記載された化合物は、補正後の請求項1に係る化合物を含むものではあるが、補正前の請求項13および15は、「(h)A、B、CおよびDの少なくとも二つが金属イオンM1と個別に配位結合する」という条件を発明特定事項とする同請求項1を引用するものであるし、補正前の請求項21および26は、同請求項1を引用する同請求項20をさらに引用するものであることに鑑みるに、同請求項13、15、21および26に記載された化合物はそのような置換基(金属イオンM1と個別に配位結合する置換基)を2種以上有するものではないから齟齬をきたしており、誤記であると認められる。このような解釈は、平成19年3月28日付の意見書の第6頁下から第6行?第7頁第6行における「いずれの御引例にも、補正後の本願請求項1に記載のポルフィラジン化合物の全体構造はおろか、そこに含まれるA、B、CおよびDのいずれの置換要素も明示されていない」および「審査官殿が示された引例1では、A、B、CおよびDの置換要素を具備した化合物が開示されておりますが、その置換形態は、置換要素の内の一つだけが金属イオンと結合するというものでしかありません。このことは、補正前の請求項2に記載の構成要素、すなわち、A、B、CおよびDの少なくとも二つが金属イオンM1と個別に配位結合する(補正後の本願請求項1(h))、という本願発明のポルフィラジン化合物が示す反応性とは明らかに異なる」との請求人の主張に沿うものである。)

(イ)補正後の請求項3への補正について
補正後の請求項3は、補正前の請求項1または請求項12に対応するものと解し、検討を進める。なお、請求人は、審判請求理由において、補正後の請求項3は新たな請求項を追加したものである旨主張しているが、その補正の目的であるとすると、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げる事項の何れにも該当しないものであることは明らかである。

本件補正により、補正後の請求項3は、ピロール環上の4種類の置換基A?Dが全てNR_(1)R_(2)[式中、R_(1)およびR_(2)の少なくとも一方が、ベンジル基またはピリジンメチル基である]であるポルフィラジン化合物に特定された。ここで、R_(1)およびR_(2)の少なくとも一方が「ピリジンメチル基」であるとされているが、メチル基へのピリジン環の置換位置の相違により、「ピリジンメチル基」は、「2-ピリジルメチル」、「3-ピリジルメチル」、「4-ピリジンメチル」という3つの態様を含むものである。しかし、補正後の請求項3に係る化合物に関連すると認められる補正前の請求項1および同請求項12には、R_(1)、R_(2)が「2-ピリジルメチル」であり得ることが記載されるに止まるものであって、R_(1)、R_(2)が「3-ピリジルメチル」、「4-ピリジルメチル」も選択し得ることについては何ら記載も示唆もされていない。すなわち、本件補正は、補正後の請求項3の置換基R_(1)およびR_(2)について、補正前の「2-ピリジルメチル」から、「2-ピリジンメチル」の他に「3-ピリジルメチル」、「4-ピリジルメチル」も概念上包含する「ピリジルメチル基」に拡張するものである。
さらに、補正後の請求項3は、「R_(1)およびR_(2)の少なくとも一方が、ベンジル基またはピリジルメチル基である」と特定するものであるから、R_(1)およびR_(2)のいずれか一方が「ベンジル基またはピリジルメチル基」でない場合も想定されるが、その場合もう一方がどのような置換基であるのか何ら特定しないものである。一方、補正後の請求項3に係る化合物に関連すると認められる補正前の請求項1および同請求項12には、R_(1)およびR_(2)の置換基について具体的に限定されている。すなわち、本件補正は、補正後の請求項3の置換基R_(1)およびR_(2)のうち一方の置換基を任意とするものであって、これは具体的に限定された補正前のR_(1)およびR_(2)の置換基を拡張するものである。
以上のとおり、本件補正により、補正後の請求項3は、置換基R_(1)およびR_(2)を本件補正前から拡張するものであって、発明特定事項を限定する限定的減縮に該当するものではない。また、このような補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当しないことは明らかである。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げる事項の何れにも該当しない。

仮に、補正後の請求項3が限定的減縮であるとしても、R_(1)およびR_(2)のうち一方の置換基が「ベンジル基またはピリジルメチル基」でない場合については、その置換基がどのようなものか何ら具体的に特定されていないのであるから、同請求項3に記載された発明特定事項が明確であるとは認められず、特許法第36条第6項第2号に違反し、独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に違反し、または同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?35に記載された発明は、平成19年3月28日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?35に記載された事項による特定されるとおりのものであって、そのうち請求項12に係る発明は(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「以下の構造式、すなわち;


[式中、R_(1)およびR_(2)が、それぞれ、独立して、水素、1個?16個の炭素原子を有するアルキル基、2-ピリジルメチル、ベンジル、アリル、-CH_(2)CO_(2)H、R_(15)が1個?16個の炭素原子を有するアルキル基である-COCH_(2)OR_(15)、および-CH_(2)COCH_(2)COR_(15)から選択される]の構造式で表される請求項1に記載の化合物。」
そして、請求項12の上記構造式の「M」は、引用する請求項1の「2Hまたはピロール窒素原子と結合する元素」である。請求項12の特定は、引用する請求項1(上記「2.(1)」の請求項1を参照)における置換基A?Dについて、(a)?(h)の特定がなされているところ、(a)?(f)のうち(b)の-NR_(1)R_(2)を選択し、R_(1)とR_(2)について請求項12で特定する置換基を選択したものであるが、(g)の「そのR_(1)およびR_(2)が、それぞれ、独立して1個?16個の炭素原子を有するアルキル基、2-ピリジルメチルまたはベンジルであるNR_(1)R_(2)となる場合…は除外され」との条件を被るものであり、他方、(h)の「A、B、C、およびDの少なくとも二つが金属イオンM1と個別に配位結合する」との条件は、上記「2.(2)(ア)」で検討したとおり「…配位結合能を有する」との意味に解されるので、-NR_(1)R_(2)を選択したことにより満たされている。

(1)引用例
原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先権主張日前に頒布された次の刊行物には、以下の事項が記載されている。

・Zhurnal Organicheskoi Khimii, 1979, Vol.15, No.5, pp.1076-1082(以下、「引用例A」という。)(原文はロシア語)

(A-1)「


」(第1077頁)
(A-2)化合物VIIの一例が「C_(48)H_(80)MgN_(16)・2C_(5)H_(11)OH」であることが吸収電子スペクトル等物性データと共に記載されている(第1078頁の表、第1079頁の図2)。

(2)対比・判断
引用例Aには、摘記事項(A-1)、(A-2)によれば、分子内の4つの各ピロール環に2つのt-BuNHが置換し(すなわち、分子内に8つのt-BuNHが存在する)、且つ中心金属Mがマグネシウムである式(VII)で表される化学構造を有する化合物(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
そこで、本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「t-Bu」は4個の炭素原子を有するアルキル基であって、本願発明の「1個?16個の炭素原子を有するアルキル基」に包含されるものであるから、引用発明における「t-BuNH」は、本願発明における「R_(1)およびR_(2)が、それぞれ、独立して、水素、1個?16個の炭素原子を有するアルキル基、…から選択される」のうち、「R_(1)およびR_(2)」が「水素」および「1個?16個の炭素原子を有するアルキル基」である「NR_(1)R_(2)」に相当するものであり、「水素」があるため前記(g)の除外される条件に反しないものである。また、引用発明における中心金属Mである「マグネシウム」は、本願発明における「M」、すなわち、「ピロール窒素原子と結合する元素」に相当するものである。そして、両者はその余のポルフィラジン構造についても一致している。
してみると、本願発明と引用発明に相違する点はない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
それ故、他の請求項に論及するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2010-07-02 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-20 
出願番号 特願平8-527837
審決分類 P 1 8・ 57- Z (C07D)
P 1 8・ 113- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 關 政立  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 星野 紹英
伊藤 幸司
発明の名称 ヘテロ原子機能化ポルフィラジン化合物  
代理人 角田 嘉宏  

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