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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680205 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B60R
審判 全部無効 2項進歩性  B60R
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
管理番号 1228640
審判番号 無効2007-800228  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-19 
確定日 2010-11-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2989788号「エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置」の特許無効審判事件についてされた平成20年10月15日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10443号平成21年 3月18日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2989788号の請求項1?23に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第2989788号の請求項1?29に係る発明についての出願は、平成9年10月8日(優先権主張平成8年10月31日)の出願であって、平成11年10月8日に、その発明について特許の設定登録がされたものである。

(2)請求人は、平成19年10月19日に審判請求書を提出して、本件特許は無効である旨主張し、証拠方法として甲第1?11号証を提出した。
これに対して、被請求人は、平成20年1月7日付けで答弁書及び証拠方法として乙1,2号証を提出するとともに、同日付けで訂正請求書(1回目)を提出して訂正を求めた。

(3)これに対し、請求人は、平成20年2月15日付けで弁駁書を提出し、証拠方法として、甲第12?16号証を提出した。さらに平成20年4月25日に、請求人は、本件特許に係る侵害訴訟における準備書面を添付した上申書を提出した。

(4)平成20年5月20日に口頭審理が行われ、請求人、被請求人は、同日付けで陳述要領書を提出し、請求人は、証拠方法としてさらに甲第17?20号証を提出した。口頭審理において調書が作成され、その後、追加の主張として、同年6月17日付けで上申書が請求人、被請求人から提出されるとともに、請求人から証拠方法として甲第21?27号証が、被請求人から「口頭審理技術説明用資料」及び参考資料1,2が提出された。これに対して、それぞれの主張に反論する上申書が同年6月24日付けで提出され、被請求人はさらに証拠方法として参考資料3?6を提出した。

(5)当審は、前記訂正請求書(1回目)による訂正を認めた上で、本件特許の請求項1?25に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから無効である旨の、平成20年7月30日付け無効理由通知書を通知した。

(6)これに対して、被請求人は、同年9月1日付けで意見書を提出するとともに証拠方法として乙第3号証及び参考資料7?23を提出した。また、同日付けで訂正請求書(2回目)を提出して訂正を求めた。さらに、被請求人は、同年9月26日付けでこれまでの主張を整理した上申書を提出した。

(7)当審は、前記訂正請求書(2回目)による訂正を認めた上で、平成20年10月15日付けで、本件特許の請求項1?25に係る発明についての特許を無効とする審決をしたところ、被請求人は同年11月25日付けで知的財産高等裁判所に審決の取消しを求める訴訟を提起した後、平成21年2月23日付けで本件特許の訂正審判(訂正2009-390019)を請求し、証拠方法として参考資料1?2を提出した。これに対し、知的財産高等裁判所は審決取消しの決定(平成20年(行ケ)第10443号、平成21年3月18日)をしたので、上記訂正審判の請求書に添付された全文訂正明細書により、本件無効審判の訂正の請求(3回目)がなされたものとみなし、審理を開始した。

(8)請求人は、平成21年6月12日付けで弁駁書を提出し、証拠方法としてさらに甲第28?30号証を提出した。
これに対して、被請求人は、平成21年8月5日付けで答弁書を提出した。

2.請求人の主張の概要
請求人は概要以下のように主張して、本件特許を無効とするとの審決を求め、証拠方法として以下の甲第1?30号証を提出している。

2-1.無効理由1
本件特許の請求項1?29に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり無効とすべきである。

2-2.無効理由2
本件特許の明細書及び特許請求の範囲における「ガス発生剤のガス発生量に対する上記開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol」、及び「ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)」の記載は、その数値限定の技術的根拠が不明であり、特許法第36条第6項第1号、及び同条第4項に規定する要件を満たしていないから、無効とすべきである。

2-3.無効理由3
本件特許の請求項1,3,15,16,17及び18に係る発明は、甲第5号証または甲第6号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、無効とすべきである。

2-4.無効理由4
本件特許の請求項2,4?14,19?29に係る発明は、慣用技術を勘案すれば、甲第1号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、無効とすべきである。

2-5.無効理由5
本件特許の請求項1?3,5?7,14,15?21,28,29に係る発明は、本件特許出願の優先日前の他の特許出願であって、本件特許出願後に国際公開がなされた甲第11号証の国際出願日における国際出願の明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、無効とすべきである。

2-6.証拠方法
[平成19年10月19日付け審判請求書にて提示]
(1)甲第1号証:国際公開第96/10495号
(2)甲第2号証:特表平8-501765号公報
(3)甲第3号証:Peter Materna、“Advances in Anaiytical Modeling of Airbag Inflator”、SAETECHNICAL PAPER SERIES誌、1992年2月、第7?17頁
(4)甲第4号証:“Proceedings of the Ninethenth International Pyrotechnics Seminar”、Christchurch New Zealand、1994年2月、第517?530頁
(5)甲第5号証:特開平8-253092号公報
(6)甲第6号証:国際公開第96/23748号
(7)甲第7号証:特開平4-265292号公報
(8)甲第8号証:特開平2-74442号公報
(9)甲第9号証:国際公開第90/05651号
(10)甲第10号証:国際公開第96/10494号
(11)甲第11号証:特表平11-510779号公報
[平成20年2月15日付け弁駁書にて提示]
(12)甲第12号証:被請求人有価証券報告書
(13)甲第13号証:Paresh Khandhadia外、“Development of Advanced Inflator Technology for Automotive Airbag Modules”、Issues in Automotive Safety Technology(USA)、SAE Inc.、1995年2月、SP-1072、記事番号9501062、275?278頁
(14)甲第14号証:欧州特許出願公開第763512号明細書
(15)甲第15号証:特許第2926040号公報
(16)甲第16号証:特開平5-16762号公報
[平成20年5月20日付け口頭審理陳述要領書にて提示]
(17)甲第17号証:特開昭49-44434号公報
(18)甲第18号証:甲第3号証の抄訳
(19)甲第19号証:甲第9号証の抄訳
(20)甲第20号証:甲第13号証の抄訳
[平成20年6月17日付け上申書にて提示]
(21)甲第21号証:Paresh Khandhadia外、“Development of Advanced Inflator Technology for Automotive Airbag Modules”、Issues in Automotive Safety Technology(USA)、SAE Inc.、1995年2月、SP-1072、記事番号9501062、表紙及び目次、275?278頁
(22)甲第22号証:甲第21号証の抄訳
(23)甲第23号証:甲第13号証の抄訳
(24)甲第24号証:登録実用新案第3023847号公報
(25)甲第25号証:特開平7-52748号公報
(26)甲第26号証:米国特許第5125684号明細書
(27)甲第27号証:甲第26号証の抄訳
[平成21年6月12日付け弁駁書にて提示]
(28)甲第28号証:特開平6-227884号公報
(29)甲第29号証:特開平8-151288号公報
(30)甲第30号証:“Journal of the Industrial Explosives Society,Japan”、工業火薬協会誌、第16巻、第4冊、1955年12月、199?213頁
<参考資料>
[平成19年10月19日付け審判請求書にて提示]
(1)参考資料1:兼子 一、染野義信共著,「判例工業所有権法」,第一法規出版株式会社
(2)参考資料2:日本化薬(株)作成の「発生ガスモル計算」に関する資料
(3)参考資料3:本件特許の侵害訴訟に関する報道記事
[平成20年2月15日付け弁駁書にて提示]
(4)参考資料4:特開平2-155858号公報

3.被請求人の主張の概要
被請求人は、概要以下のように主張して、本件特許には無効理由がない旨主張し、証拠方法として以下の書面を提出している。

3-1.無効理由1について
(1)甲第1号証の第1?3図及び第9図が示すガス発生器は、ハウジング内部の開口の絞り作用によって燃焼内圧を制御する内絞り構造であり、第7,8図が示すガス発生器は破裂板によって燃焼内圧を制御する破裂板構造のガス発生器であって、訂正後の本件特許発明のように、ハウジングの開口の絞り作用によって燃焼内圧を制御する外絞り構造のガス発生器とは異なる。
本件特許発明は、このような相違点に係る外絞り構造の構成により、小型・軽量化、成形加工性に優れ、フィルタの損傷・変形が少ないという顕著な作用効果を奏するものであり、甲第1号証から当業者が容易に想到し得たものではない。
(2)甲第2?27号証にも、破裂板を有しない前記外絞り構造の非アジド系ガス発生剤を用いたガス発生器は記載も示唆もされていない。本件特許発明は、高い燃焼内圧を受ける容器部分をできるだけ小さくしようとする従来の技術常識を覆すものであり、当業者が容易に想到し得たものではない。
(3)甲第10号証は、破裂板によって内圧を制御するもので、破裂板が有する問題を解決することを課題とする本件特許の引用例とはなりえない。甲第10号証は、本件特許発明が限定している燃焼内圧の範囲では「破裂板による制御が有効でなくなる」としているものであるから、本件特許発明に想到しえない阻害要因がある。

3-2.無効理由2について
本件特許の明細書には、ガス発生剤のガス発生量に対する開口部総面積の比及びガス発生器の作動時の最大内圧を、本件特許明細書記載の所定の数値範囲に限定すれば、線燃焼速度の遅い非アジド系ガス発生剤を使用してもエアバッグ展開にふさわしい出力カーブが得られ、かつ容器に過度な強度を必要としないから、ガス発生器の小型、軽量化が可能となるという作用効果が記載されている。
また、本件特許明細書記載によれば、ガス発生剤の種類及び量を適当に選択すれば、同明細書記載の当該数値範囲にすることは当業者であれば容易に実施しうることは明らかである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載は、特許法第36条第6項第1号、及び同条第4項に規定する要件を満たしている。

3-3.無効理由3について
甲第5号証は破裂板を有するものであり、「含窒素有機化合物」を燃料とするものではない。また、甲第6号証における実施例に基づいて請求人が計算したガス発生量に対するガス開口部の総面積の比は、ガス噴出孔(開口部)が一つであるとの誤った前提で行われたものであり、図面などを参酌すれば本件特許発明の数値範囲とは異なるものである。
したがって、本件特許の請求項1,3,15,16,17及び18に係る発明は、甲第5号証または甲第6号証に記載された発明ではない。

3-4.無効理由4について
甲第1号証、甲第5号証及び甲第6号証には、少なくとも訂正後の本件特許の請求項1に係る発明における「非アジド系ガス発生剤は、フィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設され」の構成、及び「複数の開口部は、前記ハウジングに形成され、前記ハウジングの最大内圧を制御する」の構成が開示も示唆もされておらず、当業者が容易に想到し得たものでもない。
そして、訂正後の本件特許の請求項13に係る発明は、基本的に同請求項1に係る発明と同じ構成を有するものであるから、請求項1,13に係る発明がこれら各甲号証から容易に想到し得たものでない以上、これらの請求項を引用する他の請求項に係る発明が周知技術を付加するものであったとしても、甲第1号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでないことは明らかである。

3-5.無効理由5について
甲第11号証は、「含窒素有機化合物を燃料として含有する中空円柱状の非アジド系ガス発生剤」を用いたガス発生器ではなく、「非アジド系ガス発生剤は、フィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設され」の構成、及び「複数の開口部は、前記ハウジングに形成され、前記ハウジングの最大内圧を制御する」の構成について開示も示唆もないから、訂正後の本件特許の請求項1,13に係る発明と同一ではない。したがって、また、これら請求項を引用する他の請求項に係る発明についても、甲第11号証と同一でないことは明らかである。

3-6.証拠方法
[平成20年1月7日付け答弁書にて提示]
(1)乙第1号証:知財高裁第2部平成18年6月28日判決(平成17年(行ケ)10702号)
(2)乙第2号証:東京高裁平成13年7月16日判決(平成12年(行ケ)第66号)
[平成20年9月1日付け意見書にて提示]
(3)乙第3号証:独立法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 宇宙輸送工学研究科 堀 恵一教授の陳述書(平成20年8月29日付け)

<参考資料>
[平成20年6月17日付け上申書にて提示]
(4)口頭審理技術説明用資料
(5)参考資料1:ダイセル化学工業(株)の勝田氏による「宣誓書」(平成20年6月17日付け)
(6)参考資料2:ダイセル化学工業(株)の上田氏による「宣誓書」(平成20年6月17日付け)
[平成20年6月24日付け上申書にて提示]
(7)参考資料3:特開平9-207705号公報
(8)参考資料4:甲第25号証に関する説明書面
(9)参考資料5:米国特許第3856181号明細書
(10)参考資料6:米国特許第6168199号明細書
[平成20年9月1日付け意見書にて提示]
(11)参考資料7:特開平7-9941号公報
(12)参考資料8:特表平8-501765号公報
(13)参考資料9:特開平5-124482号公報
(14)参考資料10:特開平5-178157号公報
(15)参考資料11:特開平7-237519号公報
(16)参考資料12:特開平5-178154号公報
(17)参考資料13:特開平7-215166号公報
(18)参考資料14:特開平4-50057号公報
(19)参考資料15:特許第2938648号公報
(20)参考資料16:特開平7-237520号公報
(21)参考資料17:特開平5-96147号公報
(22)参考資料18:特開平6-278565号公報
(23)参考資料19:米国特許第5482316号明細書
(24)参考資料20:甲第25号証を説明する参考図面
(25)参考資料21:特開平11-82207号公報
(26)参考資料22:東京高裁平成6年(行ケ)第43号判決
(27)参考資料23:特許庁審判部編「判決からみた進歩性の判断」,社団法人 発明協会,P.28,146?149
[平成21年2月23日付け訂正審判(訂正2009-390019)請求書にて提示]
(28)参考資料1:「化学工業」第23巻、第3号、1959年、165?174頁
(29)参考資料2:ダイセル化学工業(株)による実験報告書(平成21年2月23日付け)

4.訂正請求に係る訂正事項と訂正の可否に対する判断
上記本件無効審判の訂正請求書(3回目)とみなされた平成21年2月23日付けの訂正審判の請求書による訂正請求に係る訂正事項は、本件特許の明細書を上記訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正事項は以下のとおりである。

4-1.訂正事項
(1)訂正事項1
請求項1について、
「【請求項1】ハウジング内部にガス発生剤を収納し、該ガス発生剤から発生したガスがエアバッグへと通過する方向にガス発生剤の燃焼を制御する複数の開口部が設けられているガス発生器であって、ガス発生剤のガス発生量に対する上記開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol、ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)とすることを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項1】ハウジング内部に含窒素有機化合物を燃料として含有する中空円柱状の非アジド系ガス発生剤を収納し、前記非アジド系ガス発生剤から発生したガスがエアバッグへと通過する方向に前記非アジド系ガス発生剤の燃焼を制御する複数の開口部が設けられているガス発生器であって、
前記非アジド系ガス発生剤は、フィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設され、 前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間には、環状のガス通路となる間隙が形成され、 前記複数の開口部は、前記ハウジングに形成され、前記ハウジングの最大内圧を制御するものであり、 前記非アジド系ガス発生剤のガス発生量に対する前記複数の開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol、ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)とすることを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。
(文中下線部は付加、ないしは修正された訂正部分である。以下同じ。)

(2)訂正事項2
請求項2について、
「【請求項2】各開口部が円相当径2?5mmを有する請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項2】前記複数の各開口部は、円相当径2?5mmを有し、 前記ハウジングは、前記ハウジング内に配設される前記ハウジングとは別体の中央筒部材と一体化されている請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(3)訂正事項3
請求項3について、
「【請求項3】開口部総面積/ガス発生量が1.00?1.50cm^(2)/mol、作動時の最大内圧が130?180kg/cm^(2)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項3】前記複数の開口部総面積/前記ガス発生量は、1.00?1.50cm^(2)/molであり、前記作動時の最大内圧は、130?180kg/cm^(2)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(4)訂正事項4
請求項4について、
「【請求項4】ハウジング内容積が120cc以内であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項4】前記ハウジングは、内容積が120cc以内であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(5)訂正事項5
請求項5を削除する。

(6)訂正事項6
請求項6について
「【請求項6】ガス発生剤が、70Kg/cm^(2)の加圧下に於いて、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤であることを特徴とする請求項1?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項5】前記ガス発生剤は、70kg/cm^(2)の加圧下に於いて、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤であり、 前記ハウジングは、プレス成形してなる、前記複数の開口部を有するディフューザシェルを備えることを特徴とする請求項1?4の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(7)訂正事項7
請求項7を削除する。

(8)訂正事項8
請求項8について、
「【請求項8】各開ロ部の閉口面積が、1又は2以上の異なった開口面積を有することを特徴とする請求項1?7の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項6】前記複数の各開口部は、1又は2以上の異なった開口面積を有することを特徴とする請求項1?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(9)訂正事項9
請求項9について、
「【請求項9】ハウジング又は隔壁毎に、開口部が合計12?24個周方向に配置されたことを特徴とする請求項1?8の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項7】前記ハウジングは、前記複数の開口部が合計12?24個周方向に配置されていることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(10)訂正事項10
請求項10について、
「【請求項10】ハウジング又は隔壁毎に、開口部が合計12?20個周方向に配置されたことを特徴とする請求項1?8の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項8】前記ハウジングは、前記複数の開口部が合計12?20個周方向に配置されていることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(11)訂正事項11
請求項11について、
「【請求項11】開口部に、防湿用のシールテープが貼付されたことを特徴とする請求項1?10の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項9】前記複数の開口部は、防湿用のシールテープが貼付されていることを特徴とする請求項1?8の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(12)訂正事項12
請求項12について、
「【請求項12】シールテープが、開口部直径の2?3.5倍の幅を有し、25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープであることを特徴とする請求項1?11の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項10】前記シールテープは、前記複数の開口部直径の2?3.5倍の幅を有し、25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープであることを特徴とする請求項9記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(13)訂正事項13
請求項13について、
「【請求項13】シールテープが該ガス発生剤の燃焼に応じて、該発生ガスにより該ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破裂する、請求項12記載のエアバッグ用ガス発生器。」を、
「【請求項11】前記シールテープは、前記ガス発生剤の燃焼に応じて、前記発生ガスにより前記ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破裂する、請求項10記載のエアバッグ用ガス発生器。」と訂正する。

(14)訂正事項14
請求項14について、
「【請求項14】少なくとも、エアバッグ用ガス発生器と、衝撃を感知しその感知信号を出力する衝撃センサと、前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、前記エアバッグを収容するモジュールケースとからなり、前記エアバッグ用ガス発生器が、請求項1?13の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。」を、
「【請求項12】少なくとも、エアバッグ用ガス発生器と、衝撃を感知しその感知信号を出力する衝撃センサと、前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、前記エアバッグを収容するモジュールケースとからなり、前記エアバッグ用ガス発生器が、請求項1?11の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。」と訂正する。

(15)訂正事項15
請求項15を削除する。

(16)訂正事項16
請求項16について、
「【請求項16】エアバッグ用ガス発生器に於て、ガス発生器からそれと組み合わせのエアバッグへのガス流を制御する方法であって、ガス発生器ハウジングに、可燃性ガス発生剤と、該ガス発生剤を収納し、且つ該ガス発生剤及び該エアバッグと連通する複数のガス排出口を設け、該ガス排出口の総面積及び該ガス発生剤の特性を、該総面積/発生ガス量が0.50?2.50cm^(2)/molの範囲内にある様相関させること、からなる方法。」を、
「【請求項13】エアバッグ用ガス発生器に於て、ガス発生器からそれと組み合わせのエアバッグへのガス流を制御する方法であって、ガス発生器ハウジングに、含窒素有機化合物を燃料として含有する中空円柱状の可燃性非アジド系ガス発生剤を収納し、且つ前記非アジド系ガス発生剤及び前記エアバッグと連通する、前記ガス発生器ハウジングの最大内圧を制御する複数のガス排出口を設け、前記非アジド系ガス発生剤をフィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設し、前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間には、環状のガス通路となる間隙を形成し、前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を、前記総面積/前記ガス発生剤の発生ガス量が0.50?2.50cm^(2)/molの範囲内にある様相関させること、および前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を前記発生ガスにより前記ハウジング内に生成される最大内圧が100?300kg/cm^(2)の範囲内にある様相関させること、からなる方法。」と訂正する。

(17)訂正事項17
請求項17を削除する。

(18)訂正事項18
請求項18について、
「【請求項18】該総面積/発生ガス量が1.00?1.50cm^(2)/molである請求項16又は17記載の方法。」を、
「【請求項14】前記複数のガス排出口の総面積/前記発生ガス量が1.00?1.50cm^(2)/molである請求項13記載の方法。」と訂正する。

(19)訂正事項19
請求項19について、
「【請求項19】該ガス排出口の総面積及び該ガス発生剤の特性を該ガスにより該ハウジング内に生成される最大内圧が130?180kg/cm^(2)の範囲内にある様相関させる請求項16の方法。」を、
「【請求項15】前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を前記発生ガスにより前記ハウジング内に生成される最大内圧が130?180kg/cm^(2)の範囲内にある様相関させる請求項13の方法。」と訂正する。

(20)訂正事項20
請求項20について、
「【請求項20】該複数のガス排出口の寸法が円相当径2?5mmの範囲内である様調整される請求項16又は17の方法。」を、
「【請求項16】前記複数のガス排出口の寸法が円相当径2?5mmの範囲内である様調整される請求項13の方法。」と訂正する。

(21)訂正事項21
請求項21を削除する。

(22)訂正事項22
請求項22について、
「【請求項22】該複数のガス排出口の寸法を少なくとも二つの夫々の円相当径をもつグループに調整する請求項16又は17の方法。」を、
「【請求項17】前記複数のガス排出口の寸法を少なくとも二つの夫々の円相当径をもつグループに調整する請求項13の方法。」と訂正する。

(23)訂正事項23
請求項23について、
「【請求項23】該ガス排出口が該ハウジングの周方向に12?24個設けられる請求項16又は17の方法。」を、
「【請求項18】前記複数のガス排出口が前記ハウジングの周方向に12?24個設けられる請求項13の方法。」と訂正する。

(24)訂正事項24
請求項24について、
「【請求項24】該ガス排出口が12?20個該ハウジングの周方向に設けられる請求項23の方法。」を、
「【請求項19】前記複数のガス排出口が前記ハウジングの周方向に12?20個設けられる請求項18の方法。」と訂正する。

(25)訂正事項25
請求項25について、
「【請求項25】ガス排出口が該ガス発生剤の水分による劣化を防止するため容易に破られる防湿層でシールされる請求項16又は17の方法。」を、
「【請求項20】前記複数のガス排出口が前記ガス発生剤の水分による劣化を防止するため容易に破られる防湿層でシールされる請求項13の方法。」と訂正する。

(26)訂正事項26
請求項26について、
「【請求項26】該防湿層として、該ガス排出口の直径の2乃至3.5倍の巾と25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープを用いる、請求項25の方法。」を、
「【請求項21】前記防湿層として、前記複数のガス排出口の直径の2乃至3.5倍の巾と25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープを用いる、請求項20の方法。」と訂正する。

(27)訂正事項27
請求項27について、
「【請求項27】該防湿層として、該ガス発生剤の燃焼に応答して、該発生ガスにより該ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破れる材料を準備する請求項25の方法。」を、
「【請求項22】前記防湿層として、前記ガス発生剤の燃焼に応答して、前記発生ガスにより前記ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破れる材料を準備する請求項20の方法。」と訂正する。

(28)訂正事項28
請求項28を削除する。

(29)訂正事項29
請求項29について、
「【請求項29】70kg/cm^(2)の加圧下に於て、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤を選択する請求項28の方法。」を、
「【請求項23】70kg/cm^(2)の加圧下に於て、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤を選択する請求項13の方法。」と訂正する。

4-2.訂正の可否について
当該訂正請求に係る訂正事項1?29は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明、または誤記の訂正を目的とするものであって、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、上記訂正を認める。

なお、本件特許明細書には、上記訂正事項1で新たに付加された「フィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設され」などの構成が、周知慣用技術以上の格別の効果を奏することを認めるにたる記載がないにもかかわらず、請求人が、当該新たに付加された構成により訂正後の本件特許発明が新規性進歩性を有すると主張するのであれば、当該訂正は特許請求の範囲を実質上変更するものとなるから、これらの訂正事項に係る訂正の適法性についても争う旨の請求人の主張(平成20年2月15日付け弁駁書)には、一定の肯首しうる理由があるが、これらの新たに付加された構成によって訂正後の本件特許発明が新規性進歩性を有するか否かは、いずれ無効理由1,3,4,5で検討すべき事項であるから、上記結論のとおり訂正を認め、これらの新規性進歩性に係る無効理由について検討を進めることとする。

5.本件特許発明
請求人は、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第6項第1号、及び同条第4項に規定する要件を満たしていないから、本件特許は無効である(無効理由2)旨を主張しているから、本件特許に係る発明を認定するにあたって、まず無効理由2について検討する。

5-1.特許法第36条に関する無効理由2について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「非アジド系ガス発生剤を安定して燃焼させるためには、ガス発生器内の最大圧力が少なくとも100kg/cm^(2)必要であること、そしてガス発生器最大内圧が300kg/cm^(2)を超えると容器(ハウジング)に過度な強度が必要とされ、ガス発生器が小型、軽量にならないことを見出した。」(段落[0004])と記載され、本件特許請求の範囲に記載の当該数値範囲に限定することによる作用効果、すなわち当該数値範囲の技術的意義が記載されている。
そして、同発明の詳細な説明には、「しかしてこの様な最大内圧に対しては破裂板による圧力制御は不必要であること、小型容器(内容積120cc以内)において、最大内圧100?300kg/cm^(2)、開口部総面積/ガス発生量0.50?2.50cm^(2)/molであればエアバッグ展開にふさわしい出力カーブが得られることを見出して、本発明に到ったものである。」(段落[0005])とも記載されている。
請求人が主張するように、「エアバッグ展開にふさわしい出力カーブ」について、本件特許明細書中には従前と異なる新たな「出力カーブ」が具体的に記載されているわけでもないから、当業者において概ね周知のエアバッグの種類などに応じた、「ふさわしい出力カーブ」を意味しているにすぎないものと解するのが相当である。そのような前提で本件特許明細書の記載をみれば、本件特許明細書記載の上記数値範囲に調整しさえすれば、同明細書記載の所定の作用効果を得ることができることが記載されていると解することができる。
そうすると、本件特許明細書に、「エアバッグ展開にふさわしい出力カーブ」などの具体例が記載されていないからと言って、本件特許がサポート要件を満たしておらず、したがって特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、とまでは言えない。

また、請求人が主張するように、本件特許の明細書には、当該数値範囲に調整するためのガス発生剤の態様等の諸条件を明確にする実施例について十分に記載されているとは言えないが、同明細書の段落[0022]には、「ガス発生剤としては非アジド系ガス発生剤の種類及び量を適当に選択し、開口部総面積/ガス発生量が0.50?2.50cm^(2)/mol、好ましくは0.50?2.00cm^(2)/mol、更に好ましくは1.00?1.50cm^(2)/molとなる様に調整し、ガス発生器の作動時の最大内圧が100?300kg/cm^(2)、好ましくは130?180kg/cm^(2)となる様にする。」と記載され、ガス発生剤の種類及び量を適当に選択して本件特許の明細書記載の当該数値範囲にすることは、当業者の技術常識を勘案すれば、当業者が適宜なしえたことである旨が示唆されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の当該記載は、当業者が実施し得る程度に明確であるということができる。
したがって、請求人が主張する特許法第36条に関わる無効理由2は理由がない。

5-2.本件特許発明
以上のとおり、無効理由2には理由がなく、本件特許明細書は特許法第36条に規定する要件を満たしていると認められるから、本件特許に係る発明は、上記訂正請求書(3回目)に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?23に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ハウジング内部に含窒素有機化合物を燃料として含有する中空円柱状の非アジド系ガス発生剤を収納し、前記非アジド系ガス発生剤から発生したガスがエアバッグへと通過する方向に前記非アジド系ガス発生剤の燃焼を制御する複数の開口部が設けられているガス発生器であって、
前記非アジド系ガス発生剤は、フィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設され、
前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間には、環状のガス通路となる間隙が形成され、
前記複数の開口部は、前記ハウジングに形成され、前記ハウジングの最大内圧を制御するものであり、
前記非アジド系ガス発生剤のガス発生量に対する前記複数の開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol、ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)とすることを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。
【請求項2】
前記複数の各開口部は、円相当径2?5mmを有し、
前記ハウジングは、前記ハウジング内に配設される前記ハウジングとは別体の中央筒部材と一体化されている請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項3】
前記複数の開口部総面積/前記ガス発生量は、1.00?1.50cm^(2)/molであり、前記作動時の最大内圧は、130?180kg/cm^(2)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項4】
前記ハウジングは、内容積が120cc以内であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項5】
前記ガス発生剤は、70kg/cm^(2)の加圧下に於いて、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤であり、
前記ハウジングは、プレス成形してなる、前記複数の開口部を有するディフューザシェルを備えることを特徴とする請求項1?4の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項6】
前記複数の各開口部は、1又は2以上の異なった開口面積を有することを特徴とする請求項1?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記複数の開口部が合計12?24個周方向に配置されていることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記複数の開口部が合計12?20個周方向に配置されていることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項9】
前記複数の開口部は、防湿用のシールテープが貼付されていることを特徴とする請求項1?8の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項10】
前記シールテープは、前記複数の開口部直径の2?3.5倍の幅を有し、25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープであることを特徴とする請求項9記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項11】
前記シールテープは、前記ガス発生剤の燃焼に応じて、前記発生ガスにより前記ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破裂する、請求項10記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項12】
少なくとも、エアバッグ用ガス発生器と、衝撃を感知しその感知信号を出力する衝撃センサと、前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、前記エアバッグを収容するモジュールケースとからなり、前記エアバッグ用ガス発生器が、請求項1?11の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項13】
エアバッグ用ガス発生器に於て、ガス発生器からそれと組み合わせのエアバッグへのガス流を制御する方法であって、ガス発生器ハウジングに、含窒素有機化合物を燃料として含有する中空円柱状の可燃性非アジド系ガス発生剤を収納し、且つ前記非アジド系ガス発生剤及び前記エアバッグと連通する、前記ガス発生器ハウジングの最大内圧を制御する複数のガス排出口を設け、前記非アジド系ガス発生剤をフィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設し、前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間には、環状のガス通路となる間隙を形成し、前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を、前記総面積/前記ガス発生剤の発生ガス量が0.50?2.50cm^(2)/molの範囲内にある様相関させること、および前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を前記発生ガスにより前記ハウジング内に生成される最大内圧が100?300kg/cm^(2)の範囲内にある様相関させること、からなる方法。
【請求項14】
前記複数のガス排出口の総面積/前記発生ガス量が1.00?1.50cm^(2)/molである請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を前記発生ガスにより前記ハウジング内に生成される最大内圧が130?180kg/cm^(2)の範囲内にある様相関させる請求項13の方法。
【請求項16】
前記複数のガス排出口の寸法が円相当径2?5mmの範囲内である様調整される請求項13の方法。
【請求項17】
前記複数のガス排出口の寸法を少なくとも二つの夫々の円相当径をもつグループに調整する請求項13の方法。
【請求項18】
前記複数のガス排出口が前記ハウジングの周方向に12?24個設けられる請求項13の方法。
【請求項19】
前記複数のガス排出口が前記ハウジングの周方向に12?20個設けられる請求項18の方法。
【請求項20】
前記複数のガス排出口が前記ガス発生剤の水分による劣化を防止するため容易に破られる防湿層でシールされる請求項13の方法。
【請求項21】
前記防湿層として、前記複数のガス排出口の直径の2乃至3.5倍の中と25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープを用いる、請求項20の方法。
【請求項22】
前記防湿層として、前記ガス発生剤の燃焼に応答して、前記発生ガスにより前記ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破れる材料を準備する請求項20の方法。
【請求項23】
70kg/cm^(2)の加圧下に於て、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤を選択する請求項13の方法。」
(以下それぞれ「本件訂正発明1?23」という。)

6.本件訂正発明1の無効理由について
本件訂正発明1の無効理由について検討するに当たり、まず、平成20年7月30日付けで当審が通知した無効理由通知書に記載された理由に沿って、本件特許発明が、上記無効理由1、3ないし4において引用されている刊行物を含む、以下の引用刊行物に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとの無効理由について検討する。

6-1.引用刊行物及びその記載事項
[引用刊行物]
1)国際公開第96/10495号(甲第1号証:以下「引用例1」という。)
2)国際公開第96/10494号(甲第10号証:以下「引用例2」という。)
3)登録実用新案第3023847号公報(甲第24号証:以下「引用例3」という。)
4)特開平7-52748号公報(甲第25号証:以下「引用例4」という。)
5)Paresh Khandhadia外,“Development of Advanced Inflator Technology for Automotive Airbag Modules”,Issues in Automotive Safety Technology(USA),SAE Inc.,1995年2月,SP-1072,記事番号9501062,表紙及び目次,275?278頁(甲第21号証:以下「引用例5」という。)
6)特開昭49-44434号公報(甲第17号証:以下「引用例6」という。)
7)Junichi KISHIMOTO外,「SIMULATION OF NON-AZIDE GAS GENERANT FOR AUTOMOTIVE AIRBAG INFLATORS」,Proceedings of the Nineteenth International Pyrotechnics Seminar(New Zealand),South Pacific Information Services Ltd,1994年,517?530頁(甲第4号証:以下「引用例7」という。)
8)国際公開第96/23748号(甲第6号証:(以下「引用例8」という。)
9)特表平8-501765号公報(甲第2号証:以下「引用例9」という。)
10)特開平8-253092号公報(甲第5号証:以下「引用例10」という。)
11)特開平4-265292号公報(甲第7号証:以下「引用例11」という。)
12)特開平2-74442号公報(甲第8号証:以下「引用例12」という。)

また、本件訂正発明1の訂正事項1に対し、平成21年6月12日付け弁駁書にて提示された下記刊行物を、周知技術として新たに引用する。
13)特開平6-227884号公報(甲第28号証:以下「引用例13」という。)
14)“Journal of the Industrial Explosives Society,Japan”、工業火薬協会誌、第16巻、第4冊、1955年12月、199?213頁(甲第30号証:以下「引用例14」という。)

[引用刊行物の記載事項]
(1)引用例1(甲第1号証)の記載事項
(ア)「前記ガス化率の高い非アジ化ソーダ系のガス発生剤としては、含窒素化合物をガス発生成分とし、硝酸塩を主成分とする酸化剤とを組み合わせたものがある。
前記含窒素化合物としては、テトラゾール誘導体、…からなる群から選ばれる1種又は2種以上がある。
これらの具体例としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、…等が挙げられる。
その中でも構造式中に-NH_(2)基又は-NH-を有する化合物と構造式中に-CHO基を有する有機化合物又は-CHO基を生じ得る有機化合物とを反応させて得られた反応生成物が好ましい例として挙げられる。

この構造式中に-NH_(2)基又は-NH-を有する化合物の具体例は、アゾジカルボンアミド(ADCA)、…等が挙げられ、これらは一種又は二種以上が混合して使用される。」(明細書第6頁第25行?第7頁第26行)
(イ)「つぎに、上述した構造のガス発生器4の作動を説明する。スクイブ10が発火し、着火剤41が燃焼して発生した高温ガスがオリフィス33を通って吹き出す。この高温ガスがガス発生剤カップ50を突き抜け、ガス発生剤51を着火させる。ガス発生剤51が燃焼することで発生する大量のガスはインナーウォール31のオリフィス32を経てフィルター30に至る。さらに、フィルタ-30によって必要に応じてガスに含まれるスラグが除かれて放出孔36から図示されないエアバッグ内へと放出される。」(明細書第10頁第7?14行)
(ウ)「上述のガス発生器2は、ガス発生剤カップ24の大部分が金網で形成されているので、熱容量が金属板で形成されているものに比べて小さくなる。そのため、ガス発生剤51を収納している空間の温度が、ガス発生剤カップ24の温度から影響を受けることが少なく、発生したガス或いはガス発生剤自体がガス発生剤カップ24で冷却される程度も少なくなり、ガス発生剤51の燃焼速度の変化の度合いが一層少なくなる。このような低熱容量のカップとしては、金網製のカップの他に炭素繊維で編まれたネットを用いたカップを使用することもできる。
上述した機能を果たす金網としては、ステンレス製で比較的目の粗いものが好ましいが、鉄、銅であっても構わない。」(明細書第13頁第8?17行)
(エ)「環状のガス発生剤カップ24,50は、上記ガス発生剤容器21内で前記筒体105を取り巻くように収納されている。そして、ガス発生剤カップ24,50の外周側側面と容器21の側面の内面部分との間に、クーラントもフィルターもないガス滞留空間111が形成されている。このガス滞留空間111は、ガス発生剤カップ24,50からのガスを放出孔36に向かって均等に配分するための空間である。
加えて、容器21の内側であって、その側面にラプチャー(rupturesheet)を兼ねる断熱部材108が放出孔36を塞ぐように設けられている。黒鉛シートのような可撓性を有する断熱部材シート108をラプチャーに使うと、内部の圧力に応じて順番に破れていき開口面積を増やしていく。そのため、放出孔36を塞ぐ断熱部材108の厚み等で内圧調整が可能になる。」(明細書第15頁第18行?第16頁第4行)
(オ)図面の第1?3図には、フィルター30が、容器21に形成された放出孔36の内側(手前)に隣接して設けられていることが記載されている。

<引用発明>
上記記載事項(イ)によれば、ガス発生剤51は、ガス発生剤カップ50,24に収容された状態でオリフィス32を有するインナーウォール31によって画成された室内に配設され、燃焼されるのであるから、インナーウォール31によって画成された当該室は、少なくとも燃焼室の一部を形成していると言える。
また、ガス発生剤51から発生したガスは放出孔36からエアバッグに放出されるから、発生したガスがエアバッグへと通過する方向に放出孔36が設けられていることは明らかである。
したがって、上記記載事項(ア)?(オ)から、引用例1には図1?3の実施例に対応して次の発明が記載されている。
「容器21内部に含窒素有機化合物を燃料として含有する非アジド系ガス発生剤51を収納し、前記非アジド系ガス発生剤51から発生したガスがエアバッグへと通過する方向に複数の放出孔36が設けられているガス発生器(2,4,5)であって、
前記非アジド系ガス発生剤51は、インナーウォール31によって画成された少なくとも燃焼室の一部を形成する室内に配設され、
前記複数の放出孔36は、前記容器21に形成され、前記非アジド系ガス発生剤51から発生したガスは放出孔36の内側に隣接して設けられたフィルタ-30によってスラグが除かれてからエアバッグ内へと放出されるガス発生器(2,4,5)。」
(以下「引用発明」という。)

(2)引用例2(甲第10号証)の記載事項
(カ)「本発明は、車両のエアバッグ用ガス発生器に係り、特に、収納されたガス発生剤の燃焼速度をガス発生器の容器(ハウジング)等の周囲温度に影響されずに適切な所定範囲内に保つことができるガス発生器に関する。」(明細書第1頁第4?7行)
(キ)「しかしながら、上述したバッグの外にガスを逃がすガス発生器やガス出ロの開口面積を自動的に増大させるガス発生器は、アジ化ナトリウムを基剤としたガス発生剤に対してある程度の効果が認められるものの、無機アジ化物を除く含窒素化合物と酸化剤を組み合わせる非アジ化系ガス発生剤の場合には期待通りの効果が得られないという問題点があった。
その理由は以下の通りであることが判った。一般に火薬の燃焼速度r〔1/sec〕は、r=1/t=kP^(n)で示される。tは燃焼時間〔sec〕、kは定数、Pは圧力〔kgf/cm^(2)〕、nは圧力指数である。
アジ化ナトリウムを主成分とするガス発生剤の場合、nは0.3?0.4と小さい。従ってPが高くなる+85℃の高温においてもさほど燃焼速度の増加は著しくない。しかしながら、無機アジ化物を除く含窒素化合物と酸化剤を組み合わせる非アジ化系ガス発生剤の場合は、nが一般に0.4?1.0と大きくなる為、燃焼速度の周囲温度による影響が大きい。
そのため、バッグ外にガスを逃がすガス発生器の場合、ガスを逃がすために十分な開口面積がとれず、圧力降下の程度が不足する。ガス出口の開口面積を自動的に増大させるガス発生器でも、開口面積の増大が圧力上昇に追いつかず、圧力降下の程度が不足したり、間口面積が増大しすぎて燃焼速度が低下したりする。そのため、高温では異常な圧力増加によるバッグの破れ、あるいはガス発生器の容器破壊も起こり得る。高温対策の為に極端に開口面積を大きくすると、低温の場合ではバッグ展開の遅れが生じる。
従って、非アジ化系ガス発生剤をガス発生器に使用する場合は、最適設計が難しいという問題点があった。バッグ展開の遅れがあってはならないため、高温時には燃焼速度が早くなってガス圧が高くなりがちである。そのため、上述したバッグ外にガスを逃がすという対策やガス出口の開口面積を自動的に増大させるという対策を施したとしても、ガス発生器の容器の構造を圧力増大に耐え得る非常に堅固なものにしなければならない。その結果、ガス発生器が重くなると共に大型化してしまう。」(明細書第2頁第6行?第3頁第10行)
(ク)「具体的には、前記破裂板の引張り強さをA〔kgf/cm^(2)〕、前記破裂板の厚みをt〔cm〕、破裂板が接する開口部の円相当径をD〔cm〕としたとき、破裂板の厚みtと開口部(ディフューザー)の円相当径Dの関係を、下記(1)式を満足するようにする。
t=(B×D)/A、但し、B=8?40・・・(1)

この(1)式において、Bの値が8未満の場合は燃焼速度が充分でないか未燃焼物が残ることになり、Bの値が40を越える場合は燃焼速度が速すぎてガス発生剤の容器が破壊する恐れがある。
すなわち、無機アジ化物を除く含窒素化合物を含む燃料と酸化剤の組み合わせである非アジ化系ガス発生剤を用いる場合、破裂板の材質の種類を問わず、破裂板の引っ張り強さをA〔kgf/cm^(2)〕、前記破裂板の厚みをt〔cm〕、破裂板が接する開口部の円相当径D〔cm〕が(1)式を充足することによって、破裂板の破裂圧力を100〔bar〕以下の所定値に厳密に制御でき、圧力依存性の高い非アジ化系ガス発生剤を適切に燃焼させる。その結果、ガス発生器の内圧を例えば100〔bar〕以下の所定値とし、ガス発生器の小型化を図ることが可能になる。さらに、-40℃?+85℃の広範囲の周囲温度で特性の変化が少ないガス発生器を得ることができる。」(明細書第3頁第24行?第4頁第22行)
(ケ)「しかし、開口部の円相当径Dが極端に小さい場合には、ガス発生器内のガス圧が高くなりすぎるという不都合が生じるため、標準状態(273゜K,1気圧)でのガス発生量に対する開口部総面積が、0.143〔cm^(2)/リットル〕以上とすることが望ましい。すなわち、開口部総面積が0.143〔cm^(2)/リットル〕未満であると、開口部での流路抵抗によるガス圧の増加によって、破裂板によるガス圧の制御が有効でなくなる。この0.143〔cm^(2)/リットル〕という数字は、種々の非アジ化系ガス発生剤の燃焼実験に基づいて求められた。」(明細書第5頁第5?12行)
(コ)「本発明に通用されるガス発生器は、内部にガス発生剤を収納し、該ガス発生剤からのガスが通過する方向に対して、順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられているものであればよい。そのようなガス発生器1としては第1図に示されるものがある。…
この外側開口部12の内側に破裂板11が接触状態で配置され、ガスが通過する方向に対して順に破裂板11と該破裂板11が接する開口部12が設けられる。ガス出口である外側開口部12に破裂板11を設けると、ガス発生剤の燃焼による高熱の影響を受けにくい。また、クーラント8をフィルター10と共に最外室側に収納し、ガス発生剤7をカップに入れ、内部開口部9に接するカップを破裂板となるようにしてもよい。外側開口部12の破裂板11に加えて内部開口部9にも破裂板を設ける場合、内部開口部9の破裂板に対する(1)式のBの値を、外側開口部12の破裂板に対する(1)式のBの値より小さくする。すると、内部開口部9の破裂板が先に破れるものの、燃焼室6のガス圧の保持が確実になる。もちろん、外側開口部12の破裂板に代えて、内部開口部9の破裂板だけとすることもできる。
また、クーラント8やフィルター10はガス発生剤の種類によって用いられたり、用いられなかったする。また、容器2の区分の仕方も最大ガス圧に応じて種々のものがある。上述したように、ガス圧が100〔bar〕以下の場合には、耐圧がそれほど必要でないため、容器2を2重又は3重の円筒にせず、単なる円筒にすることもできる。」(明細書第9頁第21行?第10頁第25行)
(サ)「つぎに、本発明の他のガス発生器101を第3図により説明する。
容器102は、第1容器103と第2容器104とをボルト106で接合し、一重円筒による単一室の単純な構造になっている。第2容器104の中央の保持部116にスクイプ108を挿入し、かしめ部分107でスクイプ108を固定している。保持部116に孔109を有するアルミ筒110が被せられ、着火剤111の位置決めを行っている。このアルミ筒110と着火剤111は金網112の底112aの上に押し当てられている。金網112の円筒壁112bの内部にガス発生剤113が詰め込まれ、第2容器104で蓋されると共に押しこまれている。
また、第1容器103の外周壁部103aに40個以上の多数の開口部114が設けられ、ガスの出口となっている。この開口部114の内側に、黒鉛シートの破裂板115が接着剤で張り付けられている。図示例の開口部114の形状は円であるが、円に限らず楕円や四角であってもよい。」(明細書第17頁第4?17行)
(シ)「蓄積されるガス量が多くなると、ガス圧が所定圧力に達し、開口部114の破裂板115が破裂しはじめ、開口部114からガスが放出される。開口する開口部114の数はガス圧に依存し、ガス圧が高いと開口する開口部114の数が多くなる。そのため、ガス圧が所定値に保たれる。
第3図の破裂板は容器102の外周の開口部の内側に設けられている。このように、ガス発生剤のガス圧を制御するためには、ガスが通過する方向に対して、順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられておればよい。ガス発生器のガスの出口を構成する開口部に破裂板を取り付けることが好ましいが、容器内の燃焼室を壁で囲い、この壁に開口部を設け、この開口部に破裂板を設けるものであってもよい。また、ガス出口の開口部と上記した燃焼室の開口部の両方に破裂板を設けるものであってもよい。」(明細書第18頁第2?14行)
(ス)「そして、ガス発生剤の薬量を20?25gの間で変化させた場合の、開口部の開口率の変化を表6に示す。薬量が増えるということは、ガス量が多くなってガス圧が増加することを意味する。薬量が増えると共に、開口率が増加しており、ガス圧に応じた細かい開口面積の増大が達成されている。」(明細書第19頁第4?8行)

(3)引用例3(甲第24号証)の記載事項
(セ)「【0019】
ディフューザカバー104は環状頂壁110とこれと一体となって形成された下方向きに垂れる円筒形状の外部側壁112とを含む。その円筒形状の外部側壁112と環状の円形頂壁110はアルミニウム又は鋼製のシート材で作製され、かつその外部側壁112には複数個のガス排出用ディフューザポート116がその周囲に沿う一つのリング形状をなして配列され、半径方向に伸びる矢印Aで表示したように、そのハウジング102内で発生したガスをエアバッグ(図示されない)に向け半径外方へ流出するように導出される。環状頂壁110には環状基板106上の中央開口107と同心状に整合してその中央部に円形の中央開口109が形成される。頂壁110にはその半径外向き方向に拡がる頂壁の外方部分の上表面下方の高さレベルに在って中央開口109にじかに接して包囲する下方に凹ませた環状肩部111が形成される。
【0020】
本考案によれば、そのインフレータ100はまた外部側壁112と同心状に整合して中心部に配置された円筒形状の内部側壁120を含む。一つのリベット状点火ハウジング部材125(図11)は鍛造成形、深絞り成形又は型打ち成形法により金属材で製作されたものであって、その部材には垂れ下った内部側壁120が一体的に結合されると共にハウジング102内に設けた中央点火室124の上部端面を閉塞する円形の上部端壁123を含む。上記円形の上部端壁123は中央開口109の半径外向き方向にわずかの距離だけ突き出され、そして頂壁110の外周に形成された肩部表面111に対して環状溶接部122、密封性封止リング、ガスケット又は他の密封接合方法により封止される。上記頂壁110の外方上部表面及びリベット状ハウジング部材125の上部端壁123の上部表面は図示のように実質的に一線状に並びハウジング102の上表面全体を平坦な表面にしている。」
(ソ)「【0021】
内部側壁120には複数個の点火ポート130が形成され、この点火ポートは点火室124とその外周を包囲する環状の燃焼部と濾過器を含む組合せ室132との間を直接連通している。ガス発生物質108は上記組合せ室132の内方部分に環状の塊として配置され、そして外部側壁112の内側面に隣接して設けた外側の環状ガス濾過器134により包囲される。その点火室壁の点火ポート130は加熱燃焼生成物を点火管126と点火増進剤128からガス発生ペレット108の環状塊に向けて矢印Bで表示したように導出する。
【0022】
種々の異なる形式の環状ガス濾過器134が利用できる。そして一般に、この濾過器はハウジング102内で発生した加熱燃焼生成物を受け取るため大面積の円筒形状の内方表面又は入口面を有すると共にポート付き外部側壁112のディフューザ排出ポート116と対面関係にある外部表面を有している。このディフューザ壁ポート116は粘着材を施した薄い密封テープ136により封鎖遮断され、作動前のインフレータの寿命期間中に外部汚染物の侵入が防止され、この粘着テープはインフレータ100の活動が開始されたとき規定のガス圧力により容易に裂壊する。濾過器134の上部及び下部の環状端面は頂壁110の下面並びに基板106の上面に対しそれぞれ一対の柔軟な環状密封リング又はガスケット138と140により封止され、ガス濾過器134の上部及び下部の環状端面まわりの加熱ガスの噴き洩れ現象を防止する。密封リング138及び140はそのガスが濾過器を出てディフューザ壁ガス排出ポート116に到達するまで、そのガスの流れを濾過器134の利用可能な流路断面内部に封じ込めることにより良好な濾過機能が確保される。」
(タ)図面の図1?10,12には、ガス濾過器134(フィルタ)と外部側壁112との間に、環状の間隙が記載されている。

(4)引用例4(甲第25号証)の記載事項
(チ)「【0012】
【実施例】以下、この発明を具体化した実施例について、図1,2を用いて説明する。図1はこの発明の冷却捕集フィルタを備えたガス発生器の一例を示す正断面図、図2は冷却捕集フィルタを示す斜視図である。このガス発生器は図示しないステアリングシャフトに取付けられ、そのガス排出口が同じくステアリングシャフトに沿って配設されたガス導入管に連結されている。そして、ガス発生器で発生したガスがガス排出口よりガス導入管を介して図示しないエアバッグに導入されるようになっている。
【0013】図1に示すように、ハウジング1はアルミニウム又はスチールにより円筒状に形成され、その一端が開口されるとともに、他端は縮径されてガス排出口2が形成されている。」
(ツ)「【0014】多数のガス流出孔11を有し、強度のあるアルミニウム又はステンレススチール製の支持板12は、ハウジング1内の他端側にハウジング1に設けられた係止部13に係止されている。この支持板12のガス流出孔11の開口面積は、支持板12の強度に応じて変形を防ぐことのできる範囲内で大きい方がガスの流通性が良く望ましい。また、ガス流出孔11の形状は円形のほか、楕円形などであってもよい。
【0015】燃焼室14はハウジング1内においてキャップ4と支持板12との間に形成され、キャップ4側にはガス発生剤15が収容され、支持板12側には冷却捕集フィルタ16が収容されている。前記支持板12は冷却捕集フィルタ16を支持し、フィルタ16がガス圧により変形するのを防止するとともに、ガス排出口2との間に圧力調整用空間17を形成している。
【0016】この圧力調整用空間17は冷却捕集フィルタ16の外周部までガスの流通を可能とし、フィルタ16を均一に利用できるようにする。しかも、燃焼ガスの圧力が縮径されたガス排出口2で決定され、燃焼室14と圧力調整用空間17との間では圧力がほぼ同等となり、フィルタ16を通過するガスの流出速度が抑制されて固体残渣がガス圧によりフィルタ16から押し出されることが防止される。
【0017】ガス発生剤15は従来より知られているものは全て使用されるが、例えばアジ化ナトリウムに代表されるアルカリ金属や、アルカリ土類金属と金属酸化物との組合せよりなるものが使用される。」

(5)引用例5(甲第21号証)の記載事項
以下の引用例5の記載事項については、その訳として請求人から提出された甲第22号証の訳文を併記する。
(テ)「Because of the non-toxic nature of the advanced non-azide propellant, the inflator incorporates a simple, single-stage, low-pressure filter. 」(第275頁右欄、下から第4?2行)
「先進的な非アジド系ガス発生剤の無毒性という特性のおかげで、そのようなインフレータでは、構造が簡素で一体化された低圧のフィルターが使用される。」
(ト)「The advanced non-azide inflator for the driver-side airbag is shown in Figure 1. Small and compact, the unit measures 70mm (2.8 in.) in diameter and is 32 mm (1.28 in.) high. It weighs 410 grams (0.9 lb).
The design of the inflator is toroidal and consists of threestainless steel stampings that are welded together to form thepressure vessel. The igniter is crimped in place.
The system's filter is designed as a simple component,unlike the complex multistage filter assembly typically found in azide inflators.」(第276頁右欄第9?18行)
「運転席側エアバッグのための先進的な非アジド系インフレータを図1こ示す。その装置は小型且つコンパクトで、直径が70mm(2.8インチ)であり高さは32mm(1.28インチ)である。その重さは410g(0.9ポンド)である。
当該インフレータの設計はトロイド形状であり、プレス成型された3つのステンレス鋼が互いに溶接されて圧力容器を形成するものからなる。点火器具(igniter)は所定の位置にクリンプ止めされている。
当該システムのフィルターは単純なコンポーネントとして設計され、アジド系インフレータにおいては典型的である複雑な多段フィルタ・アセンブリとは異なっている。」
(ナ)「In operation, gas from thepropellant flows through the filter and out of the inflator in a relatively straight path, yielding a low time-to-first-gas of 2ms.」(第276頁右欄、下から第4?1行)
「作動時、ガス発生剤からのガスはフィルターを通り、比較的に直線的な経路を通ってインフレータから出ていくので、2msといった速い初発ガス時間を得ることができる。」
(ニ)「Performance of the inflator can be tailored by altering theburn surface area through manipulation of the propellant geometry and, to a lesser extent,adjustment of the exit area.」(第277頁左欄第1?3行)
「インフレータの性能は、ガス発生剤の形状を変えて燃焼表面積を変化させるか、それほどではないにしても、開口部面積を調節することで、調節することが可能である。」

(6)引用例6(甲第17号証)の記載事項
(ヌ)「従って燃焼室内の圧力Pを高くすればする程、ガス発生剤6は迅速に燃焼し、それだけ早くガスを発生させることができ、それだけ早くエアーバッグを展開させることが可能となるので、燃焼室内の圧力Pは高く設定する方がよいことになる。そのためには第2の円筒体4の多数の孔4’の全面積Atを小さく、換言すれば孔4’を小さくするか、またはガス発生剤6の全表面積Abを大きくすればよいが、孔4’を小さくすることは流出ガス量を少なくすることになり、バッグ展開速度の点で好ましくない。
このようにして第1、第2の円筒体1、4間に形成される燃焼室内の耐圧強度を燃焼圧力以上の高圧力に設定しておけば、ガス発生剤6を迅速に燃焼させて速やかにガスを発生させ、第2の円筒体4の多数の孔4’より流出させることができる。」(第2頁左下欄第2?17行)

(7)引用例7(甲第4号証)の記載事項
以下の引用例7の記載事項については、請求人から提出された訳文を併記する。
(ネ)「ABSTRACT
The present paper gives calculating results of the simulation of non-szide(azodicarbonamide=ADCA) gas generant for automotive airbag inflators.

On the results of the calculating analysis, for an airbag inflator using non-azide gas generant it is comfirmed thatthe design of a lighter, smaller and less expensive inflator than conventional one using sodium azide gas generant mey be possible.」(第517頁第11?27行)
「概要
この論文は自動車用エアバッグに用いられる非アジ化物ガス発生剤(アジゾカルボンアミド:ADCA)のシュミレーション結果を与えている。

計算解析の結果として、非アジ化物ガス発生剤を用いたインフレータは、アジ化ナトリウム系ガス発生剤を用いたものより軽く、小さく、コストを下げる設計が可能かもしれないことを確認した。」
(ノ)「Figure 2 shows a calculation flow chart. …Input data for the gas generating unit are the dimentions and masss of the pellet, number of pellets, linear burning rate(r=aPn), density, gas volume per gram gas compositions, combusting temperture and so on of the gas generant.」(第519頁第12?17行)
「図2は計算のフローチャートを示している。…ガス発生ユニットのインプットデータは、ガス発生剤のペレット寸法と重量、ペレットの数、線燃焼速度(r=aP^(n))、密度、グラム当たりのガス容量、ガス組成、燃焼熱などである。」
(ハ)「As the results, the combustor pressure and tank pressure are proportional to the intial surface area and linear burring rate of gas generant, if the mass of gas generant is the same.」(第523頁第2?5行)
「ガス発生剤の重量が同じであれば、燃焼室圧力とタンク圧力は、ガス発生剤の初期表面積と線燃焼速度に比例する結果となる。」

(8)引用例8(甲第6号証)の記載事項
(ヒ)「更に本発明のエアバッグ用ガス発生剤は、適当な形状に製剤化することができる。例えば、本発明のガス発生剤組成物に適量のバインダーを添加混合して打錠又は打錠乾燥すればよい。その際、水等の溶媒を適量加えるのが安全上特に好ましい。バインダーとしては斯かる目的に常用されているものを使用すればよい。製剤形状は特に制限はなく、例えば、ペレット状、ディスク状、球状、棒状、中空円筒状、こんぺい糖状、テトラポット状等を挙げることができ、無孔のものでもよいが有孔状のもの(例えば練炭状のもの)でもよい。」(明細書第31頁第10?19行)
(フ)「実施例4
アゾジカルボンアミド45部、過塩素酸カリウム56.3部、硝酸カリウム10部、二酸化珪素1部及び表4に示す配合量(部)のモリブデン酸化物の各粉末をよく混合し、これにデンプン含有量が1.5部となるように可溶性デンプンの10%水溶液を加えて更に混合し、湿潤粉体を製造した。以下実施例1と同様に操作し、9種のガス発生剤のペレット(径6mm、厚さ3mm、重量0.15g)を製造した。」(明細書第42頁第3?11行)
(ヘ)表5(第45頁)には、破裂板を用いないインフレーター(ガス発生器)において、実施例4で製造したガス発生剤の充填量等を変えて作動させた場合、「CPmax:インフレーターの燃焼室(チャンバー)内の最大圧力」が102,122,190kgf/cm^(2)(第45頁表5)など、本件訂正発明1の数値範囲「100?300kg/cm^(2)」に含まれる最大内圧が得られることが記載されている。

(9)引用例9(甲第2号証)の記載事項
(ホ)「容器における開口あるいは「設定破断個所」は沢山形成され、その場合円形の開口が有利である。この開口の数および直径はその都度の容器の構造に関係して変化する。本発明に基づく火工混合物が4.5g装填され12リットル形エアバッグを膨らませるために使用される内部容積10cm^(3)の円筒状容器に対しては、例えば容器の円周壁に直径2.5mmの28個の孔が設けられることが有利である。これらの孔の直径は好適には1mm?5mm特に有利には2mm?3mmにされる。」(第25頁第14?20行)
(マ)「開口20は推進剤を点火した際の圧力経過を支配する主要なパラメータであり、詳しくは容器2の内部における高圧室11並びに空間範囲29およびエアバッグ容積31の中における圧力経過を支配する主要なパラメータである。」(第30頁第5?7行)
(ミ)「容器2の外周面に接触する薄膜ホース28を利用する代わりに、推進剤3を防湿フィルム10の中に詰めることもできる。推進剤3を点火した際、所定の臨界ガス圧においてフィルム10に開口20に相応した孔が開けられる。…
フィルム10は例えばアルミニウムや特殊鋼のような金属あるいは合成樹脂で作られる。」(第30頁第20行?第31頁第5行)

(10)引用例10(甲第5号証)の記載事項
(ム)「【0044】
【実施例】図1に示すガス発生装置1を、以下の条件で製造した。ガス発生装置1の本体は、ステンレス鋼製であり、全高35.5mm、及び側壁3の外径47mmの寸法を有する。環状蓋6は、同様にステンレス鋼製であり、ダベイ・ビックフォード(Davey Bickford)DD1714PRの形式の点火器を支持する。この点火器は、2.15オームの電気抵抗を有する。
【0045】ケース25は、アルミニウム製であり、0.22mmの厚みを有する。ブロック形推進薬からなる火工装薬18は、図2に示す形状であり、19gの重さを有する。火工装薬の成分は、シリコーン結合剤が20重量部、過塩素酸アンモニウムが47重量部、及び硝酸ナトリウムが33重量部である。側壁3は、直径3.5mmの円筒形のオリフィス4を4個備える。
【0046】ディフューザ33は80mmの外径を有する。凝縮器のメッシュ38は、直径1mmのワイヤから形成される格子寸法2.1mm×2.1mmのメッシュであり、ガス発生装置を1回取り巻いている。ガス発生装置を取り巻く2つのメッシュ39、40は、直径0.5mmのワイヤから形成される格子寸法1.0mm×1.0mmのメッシュである。
【0047】このガス発生装置1を、60l容器内で点火した。容器内の最大圧力は0.26MPa であった。90%最大圧力での燃焼時間は、33ミリ秒であった。」

(11)引用例11(甲第7号証)の記載事項
(メ)「【0041】実施例5
5AT 、硝酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、及び二酸化珪素の混合物を次の組成 (重量%)で調製した。:33.0% 5AT、10.0% 硝酸ナトリウム、49.0% 硝酸ストロンチウム、及び 8.0% 二酸化珪素(Hi-sil 233)。これらの粉末を乾式ブレンドし、圧縮成形してペレットを製造した。プロパン-酸素トーチで燃焼させたところ、このペレットは急速に燃焼し、固い固体の残滓が残った。この組成物の燃焼速度は 1000psiにおいて 0.70 インチ/秒であった。燃焼速度は公知の長さのシリンダー上のペレットの燃焼に要する時間を測定して決定した。ペレットは径 1/2インチのダイの中で約16,000重量ポンド(pounds force)で圧縮成形し、側面に沿って燃えるのを防止するために側面をエポキシ/二酸化チタン禁止剤で被覆した。」

(12)引用例12(甲第8号証)の記載事項
(モ)「第3図に示す実力例では、異なる大きさの開口3a,3b,3cが示され、その後方にある普通の箔蓋11の破壊によって、大きさの順序にこれらの開口か開かれる。場合によっては異なる大きさの穴の範囲にある箔蓋の破裂強度を、その有効肉厚の変化によって変えることもできる。」(明細書第2頁右下欄第12?17行)

(13)引用例13(甲第28号証)の記載事項
(ヤ)「【0024】本発明組成物は上記各成分を混合することにより製造され、得られる混合物をそのままガス発生剤として用いてもよいが、製剤化して用いてもよい。製剤化は常法に従って行われる。例えば、本発明組成物とバインダーを適量混合し成形すればよい。バインダーとしてはかかる目的に常用されているものを使用すればよい。製剤形状は特に制限はなく、例えば、ペレット状、ディスク状、球状、棒状、中空円筒状、こんぺい糖状、テトラポット状などを挙げることができ、無孔のものでもよいが有孔状のもの(例えば煉炭状のもの)でもよい。」

(14)引用例14(甲第30号証)の記載事項
(ユ)「§3.形状函数
火薬片の燃焼は表面に並行な層によって進み,各瞬間に於ける火薬片は始めの形と相似の形を保ちつつ燃焼するから,火薬片の形状は発射薬としての性能上最も重要なる要素の一つを占める。
一般に火薬片の初容積をV_(0)とし或時間迄に燃焼した容積をVとしてZ=V/V_(0)とすれば,其の時刻の燃焼表面Sと,初表面S_(0)との比S/S_(0)をZの函数として表わし得る。即ち
S/S_(0)=φ(Z) (6)
であり,此のφ(Z)を火薬燃焼の形状函数と言う。

火薬片の種々の形状の場合に就き,この形状函数を記せば次の如くである。

2.円盤,正方形,長円柱状(図3)
φ(Z)=√1-Z (9)

4.短円管(図5)
短管状火薬の厚さと長さの比を0.2程度とするとき
φ(Z)=√1-0.57Z (11)
である。…
5.中孔円盤,中孔方形薬(図6)
厚さ/(外径)-(内径)=0.05とすれば
φ(Z)=√1-0.33Z (12)

6.長管状,長帯状火薬(図7)
φ(Z)=1 (13)
即ち,燃焼面不変の場合である。…
7.七孔円筒(図8)
之れは7個の孔を有する短円筒状火薬である。その第一期の燃焼は概ね
φ(Z)=√1+Z (14)
として表わされる。此の形は燃焼が進むに従ってガス発生量が増加する」(第200頁左欄第10行?第201頁左欄第8行)

6-2.本件訂正発明1と引用発明の一致点及び相違点
本件訂正発明1と上記引用発明とを対比すると、上記引用発明における「容器21」、「ガス発生器(2,4,5)」は、それぞれ本件訂正発明1の「ハウジング」、「エアバッグ用ガス発生器」に相当する。また、引用発明における「放出孔36」と本件訂正発明1の「開口部」とは、「開口」である限りにおいて共通するから、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

<一致点>
「ハウジング内部に含窒素有機化合物を燃料として含有する非アジド系ガス発生剤を収納し、前記非アジド系ガス発生剤から発生したガスがエアバッグへと通過する方向に複数の開口が設けられているガス発生器であって、
前記非アジド系ガス発生剤は、燃焼室内に配設され、
前記複数の開口は、前記ハウジングに形成されているエアバッグ用ガス発生器。」

<相違点>
A.本件訂正発明1では、燃焼室が「フィルタ手段によって画成され」、「ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間には、環状のガス通路となる間隙が形成され」ているのに対して、上記引用発明では、燃焼室は少なくとも「インナーウォール31によって画成」された室を含み、「フィルター30」は「放出孔36の内側に隣接して設けられ」ていて、容器21の外周壁とフィルタ31との間に間隙が無い点。
B.ハウジングに形成された複数の開口は、本件訂正発明1では「前記非アジド系ガス発生剤の燃焼を制御する」とともに「前記ハウジングの最大内圧を制御する」「開口部」であり、「前記非アジド系ガス発生剤のガス発生量に対する前記複数の開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol、ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)とする」ものであるのに対して、上記引用発明では「放出孔36」であり、燃焼や最大内圧を制御するものであるかどうか不明であって、「非アジド系ガス発生剤のガス発生量に対する前記複数の開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol、ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)とする」構成がない点。
C.本件訂正発明1では、ガス発生剤が「中空円柱状」であるのに対して、上記引用発明では、ガス発生剤の形状が「中空円柱状」であるとの構成がない点。

6-3.上記相違点についての検討・判断
(1)相違点Aについて
上記引用例3(甲第24号証)の記載事項(ソ)、上記引用例4(甲第25号証)の記載事項(ツ)に示されるように、フィルター手段で画成した燃焼室を有するエアバッグ用ガス発生器は周知である。そして、同引用例3、引用例4には、フィルタ手段とハウジング開口部との間に間隙が形成されている構成も記載されており[それぞれ記載事項(タ)、(ツ)参照]、引用例5(甲第21号証)においても、その記載事項(ナ)及び図1の記載を当業者の技術常識をもって見れば、明記されてはいないものの、ハウジングの外周壁に開口が形成されていることは自明であり、当該開口とガス発生剤を囲む縦縞部分のいずれかに配置されていることが明らかなフィルター手段との間に間隙が形成されていることが示されている。
そうすると、これらのエアバッグ用ガス発生器における周知技術、すなわち、燃焼室をフィルター手段で画成すること、ハウジング外周壁とフィルタ手段との間に間隙を形成することを、外周壁に開口部(放出孔)を形成した円筒状のハウジング(容器)を有する引用発明のガス発生器に適用すれば、ハウジング外周壁とフィルタ手段との間に形成される間隙が環状をなすことは当然の技術的帰結であり、これら周知技術を引用発明に適用することに格別の困難性も無いから、上記引用発明に、これら引用例3?5等に記載の周知技術を適用して、相違点Aに係る本件訂正発明1の構成としたことは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、被請求人は、引用例3にはハウジング外周壁とフィルタ手段との間に間隙が形成されている点は記載されておらず、その根拠として引用例3における「外側側壁512の内面に隣接して設けた外側の環状ガス濾過器534」(段落[0060])の記載をあげている。
しかしながら、上記記載事項(ソ)の「この濾過器は…外部側壁112のディフューザ排出ポート116と対面関係にある外部表面を有している」(段落[0022])などの記載は、これら図面の記載と矛盾しておらず、被請求人が上記主張の根拠とする「隣接」なる記載も、優先権主張の基礎出願の翻訳による用語であること、及び明細書全体から見てフィルタ134と外部側壁112とが隙間なく接していなけらばならないと解すべき理由もないことを勘案すれば、図面の全てにわたって記載されたフィルタ134と外部側壁112との間の環状間隙を否定するほどの意味を持つとは言えない。
また、被請求人は、引用例4のガス排出口2は本件訂正発明の開口部に相当するものではないとも主張しているが、引用例4のガス排出口2も、燃焼内圧を決定する絞り作用を有する開口である点で本件訂正発明の開口部と同じであり、フィルタ16とガス排出口2との間に圧力調整用空間17という間隙を有していることが明確に記載されているから、上記被請求人の主張は失当である。
さらに、被請求人は、引用例1のガス発生器が、周囲温度から受けるガス発生剤収納空間への影響を少なくすることを目的とするものであり、引用発明に引用例3乃至5のフィルタ手段を適用することは上記目的に反すると主張しているが、引用例1においては、燃焼室内のガス発生剤カップ(24)の素材や、燃焼室の上方及び/又は下方に配置される断熱部材によって、上記目的を達成するのであって、引用発明に、上記引用例3?5等に記載の周知技術を適用して燃焼室をフィルター手段で画成した際に、上記目的を達成するためのガス発生剤カップや断熱部材が置換又は削除されるものではないことは、引用例1の第3図等の記載から明らかであるから、上記被請求人の主張は失当である。

(2)相違点Bについて
ガス発生剤の種類にかかわらず、一般に開口面積がエアバッグ用ガス発生器の燃焼内圧を決定する要因であることは周知であり[引用例4(甲第25号証)の上記記載事項(ツ)、引用例6(甲第17号証)の上記記載事項(ヌ)等参照]、燃焼室内圧によって燃焼が制御されることも、引用例2(甲第10号証)の上記記載事項(キ)、引用例7の上記記載事項(ハ)等に見るように、当該技術分野における技術常識に類することである。
そうすると、開口面積を変えることによって燃焼内圧を制御し、そのことで燃焼を制御すること、すなわち開口面積が燃焼を制御する要因であることは、当業者において周知の事項であったと言え、引用例12(甲第8号証)などは、そのような周知の技術事項を前提に発明されたもの(引用例2:第2頁第3?5行参照)ということができる。
そのような周知の技術事項を前提とすれば、破裂板を使用しない非アジド系ガス発生剤を用いるエアバッグ用ガス発生器である引用発明に当該周知の技術事項を適用して、開口面積によって燃焼内圧を制御することは当業者が適宜なしえたものと認められるところ、引用例2には、「外側開口部12の破裂板11に加えて内部開口部9にも破裂板を設ける場合、…内部開口部9の破裂板が先に破れるものの、燃焼室6のガス圧の保持が確実になる。もちろん、外側開口部12の破裂板に代えて、内部開口部9の破裂板だけとすることもできる。」[上記記載事項(コ)参照]、「ガス発生剤のガス圧を制御するためには、ガスが通過する方向に対して、順に破裂板と該破裂板が接する開口部とが設けられておればよい。ガス発生器のガスの出口を構成する開口部に破裂板を取り付けることが好ましいが、容器内の燃焼室を壁で囲い、この壁に開口部を設け、この開口部に破裂板を設けるものであってもよい。また、ガス出口の開口部と上記した燃焼室の開口部の両方に破裂板を設けるものであってもよい。」[上記記載事項(シ)参照]との記載があるように、最大内圧を制御するために破裂板を備えた開口部を、ハウジングの外周壁に設けるかハウジングの内側に設けるか(または両方に設けるか)は当業者が適宜選択し得たことであるのだから、引用発明において、開口面積によって最大内圧を制御する開口部をハウジングの外周壁に形成した開口部とすることは当業者が適宜決定し得たことである。

そこで、上記のとおり開口面積によって燃焼内圧を制御することが周知の技術であることを前提とすれば、引用例2における「しかし、開口部の円相当径Dが極端に小さい場合には、…開口部総面積が0.143〔cm^(2)/リットル〕未満であると、開口部での流路抵抗によるガス圧の増加によって、破裂板によるガス圧の制御が有効でなくなる。この0.143〔cm^(2)/リットル〕という数字は、種々の非アジ化系ガス発生剤の燃焼実験に基づいて求められた。」[上記記載事項(ケ)参照]との記載からは、ガス発生量に対する開口部総面積の比が小さい場合には、破裂板が全て破れた後も流路抵抗によってさらに内圧が上昇することが解され、その後は、ハウジングが破壊しない限り、開口部総面積によって決まる最大内圧に達し、ガス発生量がピークを越えるとともに低下していくこととなるのは当業者であれば容易に理解しうることである。
また、同じく引用例2の「ガス発生剤の薬量を20?25gの間で変化させた場合の、開口部の開口率の変化を表6に示す。薬量が増えるということは、ガス量が多くなってガス圧が増加することを意味する。薬量が増えると共に、開口率が増加しており、ガス圧に応じた細かい開口面積の増大が達成されている。」[上記記載事項(ス)参照]との記載は、当該表6の記載とともに、最大内圧を所望の圧力に維持しようとすればガス発生量が増えるとともに開口面積(破裂板の開口率)が増加することを示している。
よって、これらの引用例2の記載は、開口面積によって燃焼内圧を制御することが周知の技術であることを前提とした際に、ガス発生量に対する開口部総面積の比が、作動時の最大内圧を決定する指標となりうることを示唆するものと解するのが相当である。

さらに、ガス発生器の容器やエアバッグが破壊しない範囲に最大内圧を設定する(所定値以下にする)ことは周知[引用例2の上記記載事項(キ)等参照]であり、ガス発生剤を燃焼させる際、必要な燃焼速度を得るためにガス発生剤に応じた所定の内圧(r=kP^(n))が必要であることも周知[引用例2の上記記載事項(キ)、引用例7の上記記載事項(ハ)等参照]であって、非アジド系ガス発生剤を用いた上記引用例8(甲第6号証)には、「CPmax:インフレーターの燃焼室内の最大圧力」として、102,122,190kgf/cm^(2)などの、本件訂正発明1の数値範囲に含まれる最大内圧が記載されている[上記記載事項(ヘ)参照]。

そうすると、引用発明において、容器21(ハウジング)の放出孔36を最大内圧を制御する開口部とし、その最大内圧を制御するにあたってガス発生量に対する当該開口部総面積の比を指標として、当該最大内圧を所定の範囲に設定し、その所定範囲に応じたガス発生量に対する開口部総面積の比を決定することは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、その最大内圧の所定範囲を、上記引用例8記載の数値を含むとともに格別の臨界的意義も認められない「100?300kg/cm^(2)」とし、ガス発生量に対する開口部の総面積を「0.50?2.50/cm^(2)/mol」に特定したことも、試行錯誤により当業者が容易に想到し得たことというべきである。
したがって、相違点Bに係る本件訂正発明1の構成は、上記引用例1,2記載の発明及び上記各周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

なお、被請求人は、破裂板による内圧制御と開口部(面積)による内圧制御とは制御機構が異なるので、破裂板による内圧制御において、最大内圧を制御する開口部を外側にするか内側にするかが適宜決定し得たことであったとしても、そのことが開口部による制御においても当てはまるとは言えず、破裂板を使用する引用例2を破裂板を使用しない引用発明に適用することはできない、と主張している。そして、破裂板による制御を行う引用例2等は、破裂板を使用しない本件訂正発明1の引用例としてそもそも不適格であり、阻害要因がある旨主張している。
しかしながら、破裂板による内圧制御は、開口部の面積を変化(増加)させることによって、最大内圧が所定値を超えないように(一定期間、所定値を維持しようと)したものであり[引用例2の上記記載事項(シ)等参照]、開口部面積によってきまる開口部の絞り作用によって内圧を制御するという作動原理において、破裂板による内圧制御と開口部による内圧制御とは特段変わりがない。そうすると、破裂板による制御であるか、破裂板を使用しない開口部(のみ)による制御であるかによる「制御機構の違い」をもって、直ちに適用に阻害要因があると主張する被請求人の主張には根拠がない。

また、被請求人は、引用発明はハウジング内部の開口の絞り作用によって燃焼内圧を制御する内絞り構造であり、ハウジングの開口の絞り作用によって燃焼内圧を制御する外絞り構造の本件訂正発明1とは異なり、そのことにより小型・軽量化、成形加工性に優れ、フィルタの損傷・変形が少ないという顕著な作用効果を奏するから、当業者が容易に想到し得たものではない旨、主張している。
しかしながら、無効理由2についての検討(5-1)でも述べたように、「エアバッグ展開にふさわしい出力カーブ」について本件特許明細書中に具体的な記載があるわけではないから、被請求人が言うところの外絞り構造か内絞り構造かによって、燃焼内圧の制御に格別の差異が生じるものとも認められない。そして、被請求人が主張する外絞り構造による上記作用効果は、本件特許明細書中に必ずしも明確な根拠を有するものとは言えないが、当該作用効果についても、引用例5の上記記載事項(ト)、引用例7の上記記載事項(ネ)等に示されるように、非アジド系ガス発生剤を用いたガス発生器において予期し得ない格別のものともいえないから、上記被請求人の主張は理由がない。

さらに、被請求人は、引用例2は、「3.20[cm^(2)/mol](0.143〔cm^(2)/リットル〕)」未満では制御が有効でなくなると記載しているのだから、制御不能な状態となることを意味しており、本件訂正発明1が設定する数値範囲「0.50?2.50[cm^(2)/mol]」を排除するものであり、本件訂正発明1の引用例とはなり得ないと主張している。
しかしながら、引用例2の上記記載事項(ケ)は、「3.20[cm^(2)/mol](0.143〔cm^(2)/リットル〕)未満」では、破裂板による制御が有効でなくなると言っているのであって、破裂板が全て破裂して破裂板を使用し得ない状態、すなわち開口部の流路抵抗によって内圧が決まる状態について記載したものであって、ハウジングの開口部(面積)による制御が有効でないとまで言っているわけではないから、上記被請求人の主張は理由がない。

(3)相違点Cについて
上記引用例8(甲第6号証)の記載事項(ヒ)、上記引用例13(甲第28号証)の記載事項(ヤ)に示されるように、ガス発生剤として中空円柱状のものは周知であり、引用発明のガス発生剤として上記周知の中空円柱状のものを選択することは、当業者が適宜なし得たことである。
また、引用例14(甲第30号証)の上記記載事項(ユ)からは、火薬片の燃焼が形状によって左右されること、無孔状の円盤や長円柱状の火薬片に比して、有孔状の中空円筒状や中孔方形状の火薬片の方が、燃焼が進行しても全体の表面積の変化が少ないことが解され、火薬片の燃焼と形状の関係が、引用発明におけるガス発生剤の燃焼と形状の関係にも該当することは明らかであるから、引用発明のガス発生剤として中空円柱状のものを選択した際に、円盤状等の無孔状のものに比して、燃焼が進行しても全体の表面積の変化が少ない効果が得られることも、当業者が容易に予測し得たことである。

また、本件訂正発明1が奏する作用効果も、上記引用例1、2記載の発明及び上記各周知技術から予測される程度以上のものでもない。

7.本件訂正発明2?23についての無効理由について
(1)本件訂正発明13について
本件訂正発明13は方法に関する発明であり、物の発明である本件訂正発明1とはカテゴリーが異なるが、本件訂正発明1と実質的に同一か、本件訂正発明1に実質的に含まれるものである。そして、本件訂正発明1が上記引用例1,2記載の発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことであることは前記のとおりであるから、本件訂正発明13も、同様に上記引用例1?8記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(2)本件訂正発明2、16について
開口部の相当径は、本件訂正発明1におけるガス発生量に対する開口部の総面積の比の数値範囲が容易想到であれば、当業者が適宜決定し得た設計的事項であると認められるところ、引用例9(甲第2号証)、引用例10(甲第5号証)には、それぞれ「直径は好適には1mm?5mm特に有利には2mm?3mm」[上記記載事項(ホ)]、「直径3.5mm」[上記記載事項(ム)]などの記載があるから、本件訂正発明2、16の「円相当径2?5mm」の数値範囲は、当業者が容易に想到し得たことである。
また、ハウジングとは別体の中央筒部材を一体化させた点は、引用例3(甲第24号証)に記載されている。
したがって、本件訂正発明2、16は上記引用例1?10記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(3)本件訂正発明3、14、15について
本件訂正発明1の数値範囲が容易想到であることは上記のとおりだから、当該数値範囲をさらに最適化するように限定する程度のことは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件訂正発明3、14、15は、上記引用例1?10記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(4)本件訂正発明4について
ハウジングの内容積は、必要なガス発生量、すなわちガス発生剤の量や構成部材の強度などにより、当業者が必要に応じて適宜決定し得た設計的事項にすぎないものと認められ、引用例10の上記記載事項(ム)から、ガス発生器の内容積が約62ccであることが算出できるから、ハウジングの内容積を「120cc以内」と限定した点に格別の創意性は認められない。
したがって、本件訂正発明4は、上記引用例1?10記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(5)本件訂正発明5、23について
引用例11の上記記載事項(メ)等によれば、非アジド系ガス発生剤において、「70kg/cm^(2)の加圧下に於いて、線燃焼速度が30mm/sec以下」のものは周知である。
また、ハウジングをプレス成形で成形し、ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間に環状のガス通路となる間隙を形成したものも、前出した引用例3の上記記載事項(セ)、引用例5の上記記載事項(ト)に示されるように、周知のものである。
したがって、本件訂正発明5、23は、上記引用例1?11記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(6)本件訂正発明6、17について
開口部が、「1又は2以上の異なった開口面積を有すること」及び「少なくとも二つの夫々の円相当径をもつグループ」に調整されることは周知の技術であり[引用例12の上記記載事項(モ)等参照]、該周知の構成を適用することに格別の困難性もない。
したがって、本件訂正発明6、17は、上記引用例1?12記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(7)本件訂正発明7、8、18、19について
ハウジングに形成する開口部の個数は、本件訂正発明1の数値範囲を前提に、必要なガス発生量やガス発生器の構造等に応じて当業者が適宜決定し得た設計的事項にすぎないものと認められるところ、引用例9には、前記のとおり「直径は好適には1mm?5mm特に有利には2mm?3mm」とともに、「例えば容器の円周壁に直径2.5mmの28個の孔が設けられることが有利である。」[上記記載事項(ホ)参照]とも記載されていることから見て、本件訂正発明7、8、18、19のように「12?24個」、「12?20個」程度に限定した点に、格別の創意性はない。
したがって、本件訂正発明7、8、18、19は、上記引用例1?12記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(8)本件訂正発明9?11、20?22について
開口部にガス発生剤の燃焼に応じて最大内圧を制御することなしに破裂する防湿用アルミニウムフィルムを設置することは周知[引用例9の上記記載事項(ミ)等参照]の技術であり、防湿フィルムを粘着剤を施したテープとすることも周知[引用例3の上記記載事項(ソ)等参照]であって、これら周知技術を寄せ集めて適用することに何ら格別の創意性は認められない。そして、該防湿テープ幅や厚さを所定の数値範囲に限定したことも、当業者が適宜決定し得た設計的事項にすぎない。
したがって、本件訂正発明9?11、20?22は、上記引用例1?12記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(9)本件訂正発明12について
エアバッグ装置が衝撃センサやエアバッグを収容するモジュールケースを備えることは、普通に行われていることである。
したがって、本件訂正発明12は、上記引用例1?12記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

また、本件訂正発明2?23が奏する作用効果も、上記引用例1?12記載の発明及び周知技術から予測される程度以上のものでもない。

8.むすび
以上の検討から、本件訂正発明1?23に係る各発明は、引用例1?12に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求人が主張する上記無効理由1,3?5について検討するまでもなく、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内部に含窒素有機化合物を燃料として含有する中空円柱状の非アジド系ガス発生剤を収納し、前記非アジド系ガス発生剤から発生したガスがエアバッグへと通過する方向に前記非アジド系ガス発生剤の燃焼を制御する複数の開口部が設けられているガス発生器であって、
前記非アジド系ガス発生剤は、フィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設され、
前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間には、環状のガス通路となる間隙が形成され、
前記複数の開口部は、前記ハウジングに形成され、前記ハウジングの最大内圧を制御するものであり、
前記非アジド系ガス発生剤のガス発生量に対する前記複数の開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol、ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)とすることを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。
【請求項2】
前記複数の各開口部は、円相当径2?5mmを有し、
前記ハウジングは、前記ハウジング内に配設される前記ハウジングとは別体の中央筒部材と一体化されている請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項3】
前記複数の開口部総面積/前記ガス発生量は、1.00?1.50cm^(2)/molであり、前記作動時の最大内圧は、130?180kg/cm^(2)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項4】
前記ハウジングは、内容積が120cc以内であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項5】
前記ガス発生剤は、70kg/cm^(2)の加圧下に於いて、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤であり、
前記ハウジングは、プレス成形してなる、前記複数の開口部を有するディフューザシェルを備えることを特徴とする請求項1?4の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項6】
前記複数の各開口部は、1又は2以上の異なった開口面積を有することを特徴とする請求項1?5の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記複数の開口部が合計12?24個周方向に配置されていることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記複数の開口部が合計12?20個周方向に配置されていることを特徴とする請求項1?6の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項9】
前記複数の開口部は、防湿用のシールテープが貼付されていることを特徴とする請求項1?8の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項10】
前記シールテープは、前記複数の開口部直径の2?3.5倍の幅を有し、25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープであることを特徴とする請求項9記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項11】
前記シールテープは、前記ガス発生剤の燃焼に応じて、前記発生ガスにより前記ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破裂する、請求項10記載のエアバッグ用ガス発生器。
【請求項12】
少なくとも、エアバッグ用ガス発生器と、衝撃を感知しその感知信号を出力する衝撃センサと、前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、前記エアバッグを収容するモジュールケースとからなり、前記エアバッグ用ガス発生器が、請求項1?11の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項13】
エアバッグ用ガス発生器に於て、ガス発生器からそれと組み合わせのエアバッグへのガス流を制御する方法であって、ガス発生器ハウジングに、含窒素有機化合物を燃料として含有する中空円柱状の可燃性非アジド系ガス発生剤を収納し、且つ前記非アジド系ガス発生剤及び前記エアバッグと連通する、前記ガス発生器ハウジングの最大内圧を制御する複数のガス排出口を設け、前記非アジド系ガス発生剤をフィルタ手段によって画成された燃焼室内に配設し、前記ハウジングの外周壁と前記フィルタ手段との間には、環状のガス通路となる間隙を形成し、前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を、前記総面積/前記ガス発生剤の発生ガス量が0.50?2.50cm^(2)/molの範囲内にある様相関させること、および前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を前記発生ガスにより前記ハウジング内に生成される最大内圧が100?300kg/cm^(2)の範囲内にある様相関させること、からなる方法。
【請求項14】
前記複数のガス排出口の総面積/前記発生ガス量が1.00?1.50cm^(2)/molである請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記複数のガス排出口の総面積及び前記ガス発生剤の特性を前記発生ガスにより前記ハウジング内に生成される最大内圧が130?180kg/cm^(2)の範囲内にある様相関させる請求項13の方法。
【請求項16】
前記複数のガス排出口の寸法が円相当径2?5mmの範囲内である様調整される請求項13の方法。
【請求項17】
前記複数のガス排出口の寸法を少なくとも二つの夫々の円相当径をもつグループに調整する請求項13の方法。
【請求項18】
前記複数のガス排出口が前記ハウジングの周方向に12?24個設けられる請求項13の方法。
【請求項19】
前記複数のガス排出口が前記ハウジングの周方向に12?20個設けられる請求項18の方法。
【請求項20】
前記複数のガス排出口が前記ガス発生剤の水分による劣化を防止するため容易に破られる防湿層でシールされる請求項13の方法。
【請求項21】
前記防湿層として、前記複数のガス排出口の直径の2乃至3.5倍の巾と25?80μmの厚さを有するアルミニウムテープを用いる、請求項20の方法。
【請求項22】
前記防湿層として、前記ガス発生剤の燃焼に応答して、前記発生ガスにより前記ハウジング内につくり出される最大内圧を制御することなしに破れる材料を準備する請求項20の方法。
【請求項23】
70kg/cm^(2)の加圧下に於て、線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤を選択する請求項13の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝撃から乗員を保護するエアバッグ用ガス発生器、及びエアバッグ装置に関する。特に非アジド系ガス発生剤を安定して燃焼させることのできるエアバッグ用ガス発生器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のガス発生器においては、ガス発生剤としてアジ化ナトリウムを基剤としたものが使用されていたが、アジ化ナトリウムを使用する場合は有害なスラグ及びミストを発生するため、最近は無機アジ化物を除く含窒素化合物と酸化剤を組み合わせた非アジド系ガス発生剤を用いることが提案されている。併しながら、非アジド系ガス発生剤は70kg/cm^(2)圧力下での線燃焼速度が30mm/sec以下であるものが多く、これを安定して燃焼させ、バラツキのない出力性能を得ることは困難であった。国際公開番号WO96/10494では、非アジ化系ガス発生剤を用いて安定に燃焼させるエアバッグ用ガス発生器として、ガス発生剤からのガスの通過する開口部に破裂板を設けて、この破裂板の強度と厚み並びに該開口部の大きさを調整することによりガス発生器内の最大圧力を100bar以下に制御するガス発生器が提案されている。しかしながら、この様に破裂板によりガス発生器の内部圧力を100bar以下に調整しようとすると、一定の圧力が加わらないと破裂板が破裂しないため、ガス発生器の立ち上がりの遅れを生じ易く、非アジド系ガス発生剤が安定に燃焼せず、出力性能のバラツキが多いこと、またCOガスの発生が多いことが見出された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の有する問題点を解消し、70kg/cm^(2)圧力下での線燃焼速度が30mm/sec以下の非アジド系ガス発生剤を安定して燃焼させるに適したエアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討の結果、本発明者は上記非アジド系ガス発生剤を安定して燃焼させるためには、ガス発生器内の最大圧力が少なくとも100kg/cm^(2)必要であること、そしてガス発生器最大内圧が300kg/cm^(2)を超えると容器(ハウジング)に過度な強度が必要とされ、ガス発生器が小型、軽量にならないことを見出した。
【0005】しかしてこの様な最大内圧に対しては破裂板による圧力制御は不必要であること、小型容器(内容積120cc以内)において、最大内圧100?300kg/cm^(2)、開口部総面積/ガス発生量0.50?2.50cm^(2)/molであればエアバッグ展開にふさわしい出力カーブが得られることを見出して、本発明に到ったものである。
【0006】即ち本発明は、ハウジング内部にガス発生剤を収納し、該ガス発生剤から発生したガスがエアバッグへと通過する方向にガス発生剤の燃焼を制御する複数の開口部が設けられているガス発生器であって、ガス発生剤のガス発生量に対する上記開口部の総面積を0.50?2.50cm^(2)/mol、ガス発生器の作動時の最大内圧を100?300kg/cm^(2)とすることを特徴とするエアバッグ用ガス発生器に係わるものである。
【0007】本発明の実施にあたっては開口部が円相当径2?5mmを有することが好ましい。ここで円相当径とは、開口部が円のみならず、円に近似できる形状を有する場合もあるので、直径ではなく、円相当径とした。これは各開口部と面積を等しくする真円とした場合の径である。開口部の円相当径が2mm未満では開口部総面積/ガス発生量が2.50cm^(2)/mol以下であっても、開口部出口に存在するエアバッグ部品、例えば、開口部がハウジングのディフューザーのガス排出口であればエアバッグ、開口部がハウジング内部の燃焼室隔壁であればフィルターやクーラント等を損傷させる。又これを防ぐため開口部の数を増やすと孔数が多くなりすぎ、加工に費用がかかる。
【0008】本発明では内容積120cc以内の小型容器で、最大内圧を100?300kg/cm^(2)、好ましくは130?180kg/cm^(2)、開口部総面積/ガス発生量を0.50?2.50cm^(2)/mol、好ましくは0.05?2.00cm^(2)/mol、更に好ましくは1.00?1.50cm^(2)/molに制御する様に非アジド系ガス発生剤組成物を選択し、又開口部の孔径及び個数を決定する。これによってエアバッグ展開にふさわしい出力カーブを得ることができる。開口部総面積は(1つの孔面積)×(個数)で決まる。従って、バッグに対しての損傷を考慮すれば孔径が決まり、従って個数も決まることになる。
【0009】本発明のガス発生器は、内部にガス発生剤を収容し、該ガス発生剤からのガスが通過する方向に、ガス発生剤の燃焼を制御する複数の開口部が、該発生器のハウジング及び/又はガス発生剤から発生したガスがエアバッグへと通過する方向のハウジング内の隔壁(以下、単にハウジング内の隔壁とする。)に形成されているものであればよい。上記開口部は、1つの開口部の開口面積が、内径2?5mmの円面積に相当する大きさであり、ハウジング、ハウジング内の隔壁、又はハウジングとハウジング内の隔壁との双方の何れかに、周方向に合計12?24個、好ましくは12?20個形成されることが望ましい。本発明に於いてガス発生器内の作動時の最大内圧は、ハウジング又はハウジング内の隔壁の何れかに設けた開口部、或いはハウジングとハウジング内の隔壁との双方に設けた開口部によって規制される。例えば、ハウジングとハウジング内の隔壁との双方に開口部を設け、ハウジング又はハウジング内の隔壁の何れかの開口部でハウジングの内圧を規制する場合には、他方の開口部は更に内圧を規制することとならない範囲内に於いて、適宜形成することができる。
【0010】発生したガスが通過する開口部は、ハウジング及び/又はハウジング内の隔壁の円周方向に一列に、或いは千鳥形に配置することができる。
【0011】ハウジングは、鋳造・鍜造によって形成する他、ガスを排出するための開口部(以下、ガス排出口とする。)を有するディフューザシェルと中央孔を有するクロージャシェルとをプレス成形し、これらを各種溶接法、例えばプラズマ溶接、摩擦溶接、プロゼクション溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、ティグ溶接などにより溶接して形成することができる。該ハウジングはガス排出口を有する。このプレス形成によるハウジングは、その製造が容易になると共に、製造コストを低減することができる。ディフューザシェルとクロージャシェルは、例えば、それぞれ厚さ1.2?3.0mm、好ましくは1.2?2.0mmのステンレス鋼板を用いて、ディフューザシェルの外径を45?75mm、好ましくは65?70mm、クロージャシェルの外径を45?75mm、好ましくは65?75mmとして形成することができる。ステンレス鋼板の代わりに鋼板にニッケルメッキを施したものを使用してもよい。このハウジングには取付用のフランジを形成すること、又ハウジング外周壁とクーラントとの間には、ガス流路として機能する1.0?4.0mmの間隙を形成することが好ましい。ハウジングの全高は、25?40mmとすることが好ましく、30?35mmとすることが更に好ましい。
【0012】隔壁は、ハウジング内を2室以上に区画するものであって、必要に応じてハウジング内に適宜形成される。但し本発明に於いてガス発生剤の燃焼を制御する複数の開口部が設けられる隔壁とは、ガス発生剤の燃焼室で発生したガスが通過する方向にある隔壁である。このような隔壁としては、例えば、ハウジング内のガス発生剤収納室とクーラントとの間に配置される隔壁の他、コンバッションリングも含まれる。このコンバッションリングは、燃焼室を囲むようにハウジング内に配置され、その周壁にはガス発生剤燃焼時の最大内圧を制御する開口部が多数設けられている。
【0013】なお、この隔壁は、ハウジング内に筒状部材を収納して、その周壁を隔壁とすることもできる。筒状部材は、例えば、厚さ1.2?2.0mmのステンレス鋼板を管状に丸めて溶接した溶接管を用いて形成することができる。或いはプレス成形によって形成してもよく、鋼板の厚さは適当に選定し得る。筒状部材を用いて隔壁とした場合にも、該筒状部材には開口部が形成される。
【0014】上記の開口部には、外気(湿気)の進入を阻止する必要がある場合には、孔径の2?3.5倍の幅を有するシールテープが貼付されることが望ましい。このシールテープは、専ら防湿の目的で開口部を閉塞するものであり、発生したガスが開口部を通過するに際して何等障害とはならず、一切、ハウジングの内圧を規制することはない。即ちシールテープがあってもなくても最大内圧は変わらない。従って、本発明に於いてシールテープの厚さは、湿気の進入を阻止することができる充分な厚みを有すれば足り、例えばシールテープとしてアルミニウムテープを用いた場合には、該テープの厚さを25μm以上とすることにより、テープ面からの湿気の進入を阻止することができる。但し、本発明においては、迅速にガス発生器を立ち上げる為にハウジング内最大内圧は、専ら開口部総面積によって規制するから、該アルミニウムテープの厚さが80μm以上の場合には、ガス発生剤の燃焼によって噴出ガスが発生しても、アルミニウムテープは破裂しにくいものとなり、アルミニウムテープが破裂する迄の時間が必要となるので、エアバッグ装置の立ち上がり動作が遅れ、所期の目的を達成することができないおそれがある。従ってアルミニウムテープをシールテープとして用いた場合には、そのテープ厚は25?80μmであることが望ましい。アルミニウムテープは、粘着性アルミニウムテープ、アクリル系接着剤、またはホットメルト系接着剤その他公知の接着剤等を用いて貼付することができる。
【0015】本ガス発生器に使用するガス発生剤は、非アジド系ガス発生剤、例えば、テトラゾール、トリアゾール、又はこれらの金属塩等の含窒素有機化合物とアルカリ金属硝酸塩等の酸素含有酸化剤を主成分とするもの、トリアミノグアニジン硝酸塩、カルボヒドラジッド、ニトログアニジン等を燃料及び窒素源とし、酸化剤としてアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩などを使用した組成物などが使用でき、その他にも、燃焼速度、非毒性及び燃焼温度の要求に応じて、非アジド系ガス発生剤が適宜選定採用される。ガス発生剤は、ペレット状、ウエハー状、中空円柱状、多孔状、又はディスク状等の適当な形状に於いて使用される。
【0016】更に本発明に於いては、ハウジング内に鋼板を円筒状に形成した中央筒部材を配設し、該中央筒部材内に、伝火薬と点火器とから成る点火手段を収納する他、燃焼室外周には、発生したガスを冷却するクーラントや燃焼残渣を捕集するフィルターやガス発生剤のクッション部材などを配設することもできる。
【0017】クーラント部材は、例えば平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮する等により空隙構造を複雑なものとした場合には、優れた捕集効果をも有するので、冷却機能と捕集機能を兼ね備えたクーラント/フィルタ一体型のクーラント部材を構成して、フィルター部材を省略することができる。なお、このクーラント部材と中央筒部材との間に、クーラント部材の移動を阻止する為のクーラント支持部材を配置することもできる。このクーラント支持部材は、例えば厚さ0.5?1.0mmのステンレス鋼板、鋼板などから形成し、その内周部及び外周部に形成された屈曲部の弾力によって配設することもできる。更にこのクーラント支持部材には、クーラント部材の内周面を火炎から保護する為の防炎板部を設けることもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例のガス発生器の断面図、図2は本発明の別の実施例のガス発生器の断面図、図3は本発明のエアバッグ装置の構成図をそれぞれ示す。
【0019】『エアバッグ用ガス発生器』図1は、本発明のエアバッグ用ガス発生器の一例の縦断面図である。本ガス発生器は、ディフューザシェル1とクロージャシェル2からなるハウジング3と、このハウジング3内に配設される中央筒部材16と、該中央筒部材16内の中空部に配設される点火手段、すなわち点火器4及び伝火薬5と、これらにより点火されて燃焼ガスを発生するガス発生手段、すなわち固形のガス発生剤6と、これらガス発生剤6の周囲に配設されるクーラント部材、すなわちクーラント・フィルタ7と、そしてこのクーラント・フィルタ7の両側端部に配設されるクーラント支持部材、即ちプレート部材32及び33と、クーラントの変形を阻止する為に該クーラントの外周面に嵌合配置される積層金網体からなる外層29とを含んでいる。
【0020】ディフューザシェル1は、ステンレス鋼板をプレス加工により成形してなり、その周壁部10に円相当径3mmの開口部(ガス排出口11)が、周方向一列に18個、等間隔に配設されている。ハウジングの最大内圧はこの開口部11により制御されている。またクロージャシェル2もステンレス鋼板をプレス加工により成形してなり、その底面中央部には中央孔15が形成されている。この中央孔15には中央筒部材16が配置されている。
【0021】上記ディフューザシェル1とクロージャシェル2は、それぞれフランジ部19、20を有し、これらフランジ部19及び20を重ね合わせてレーザ溶接21により接合しハウジング3を形成している。ハウジングの内容積は120ccであり、ガス排出口総面積は1.13cm^(2)である。
【0022】このハウジング内には、中央筒部材16が電子ビーム溶接22により一体化されている。この中央筒部材16は、厚さ1.2?3.0mm、好ましくは1.2?2.0mm、外径17?22mm、好ましくは17?20mmであって、その両端を開放したステンレス鋼管よりなり、その周壁面には直径2.5mmの貫通孔54が6個、等間隔に穿孔されている。中央筒部材16の内部は点火手段収納室となり、該点火手段収納室23内には点火手段、センサ(図示せず)からの信号により作動する点火器4と、この点火器4により着火される伝火薬5を充填した伝火薬容器53とが収納されている。点火器4は、中央筒部材16の点火器保持部材27をかしめることによって固定されている。また、この中央筒部材16の外側は燃焼室28となり、この燃焼室28内に中空円柱体の固形ガス発生剤6が多数配設されている。ガス発生剤6が中空円柱体であることから、燃焼が進行してもガス発生剤全体の表面積はあまり変わらない。ガス発生剤としては非アジド系ガス発生剤の種類及び量を適当に選択し、開口部総面積/ガス発生量が0.50?2.50cm^(2)/mol、好ましくは0.50?2.00cm^(2)/mol、更に好ましくは1.00?1.50cm^(2)/molとなる様に調整し、ガス発生器の作動時の最大内圧が100?300kg/cm^(2)、好ましくは130?180kg/cm^(2)となる様にする。
【0023】クーラント・フィルタ7は、ガス発生剤6を取り囲んで配設され、中央筒部材16の周囲に環状の室、すなわち燃焼室28を画成している。このクーラント・フィルタ7は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮してなることから空隙構造が複雑となり、優れた捕集効果をも有している。更にクーラント・フィルタ7の外側に積層金網体からなる外層29が形成され、ガス圧によってクーラント・フィルタ7が膨出し、間隙9が閉塞される事態を抑止する。このクーラント・フィルタ7により、燃焼室28が画成されると共に、燃焼室で発生した燃焼ガスが冷却され、そして燃焼残渣が捕集される。ハウジングの開口部でガス発生器の内圧を規制しない場合には、前記クーラント・フィルタ7の内周に、多数の開口部を有するコンバッションリングを配設し、このコンバッションリングの開口部で内圧を制御しても良い。このクーラント・フィルタ7は、ハウジングの外周壁8の角部に形成された大きなアール(R)により、その位置決め及び半径方向の移動が阻止されている。この内周面31に代わり、クーラント・フィルタの端部にハウジングの外周壁8に当接する突出部を設け、この突出部によりクーラント・フィルタの位置決め及び半径方向移動阻止手段としてもよい。更にクーラント・フィルタ7の上側端部にプレート部材32を、また下側端部にプレート部材33をそれぞれ配設し、クーラント・フィルタ7の移動を抑止している。上側端部のプレート部材32は周壁部34を有しており、この周壁部34を、点火手段の火炎用貫通孔54に対向して配置し、貫通孔54付近のクーラント・フィルタ内周面41をカバーしている。
【0024】ハウジングの外周壁8と、クーラント・フィルタ7外側に配設される外層29との間に間隙9が形成されており、この間隙9によりクーラント・フィルタ7の周囲に半径方向断面が環状のガス通路が形成される。
【0025】図1に示すガス発生器においては、外部からハウジング3内に湿気が侵入するのを阻止するために、ガス排出口11をアルミニウムテープ52で塞いでいる。このアルミニウムテープは、発生したガスを排出する際に障害とならず、専ら防湿機能を果たし得るように、その厚さは例えば50μmである。
【0026】本ガス発生器を組み立てるときは、中央筒部材16を接合したディフューザシェル1をその突出円形部13を底にして置き、プレー卜部材32を中央筒部材16に通し、プレート部材32の周壁部外側にクーラント・フィルタ7を嵌合し、これによりクーラント・フィルタ7の位置決めを行い、その内側に固形ガス発生剤6を充填し、更にその上にプレート部材33を配設する。その後、クロージャシェルの中央孔15を中央筒部材16に挿通してクロージャシェルのフランジ部20をディフューザシェルのフランジ部19に重ね、レーザ溶接を行い、ディフューザシェル1とクロージャシェル2、及びクロージャシェル2と中央筒部材16とを接合する。最後に、中央筒部材16内に伝火薬容器53及び点火器4を挿入し、点火器用保持部材27をかしめてこれらを固定する。上記プレート部材33は、溶接の際、溶接防護板としても機能している。
【0027】このように構成されたガス発生器は、衝撃をセンサ(図示せず)が感知すると、その信号が点火器4に送られて点火器4を作動させ、これによって伝火薬容器53内の伝火薬5が着火して高温の火炎を生成する。この火炎は貫通孔54より噴出し、貫通孔54付近のガス発生剤6に点火すると共に、周壁部34により進路が曲げられて燃焼室下部のガス発生剤に点火する。これによりガス発生剤が燃焼して高温・高圧のガスを生成する。この生成したガスは、クーラント・フィルタ7の全領域を通過し、その間に効果的に冷却され、また燃焼残渣が捕集され、冷却・浄化された燃焼ガスは、ガス通路(間隙9)を通り、アルミニウムテープ52の壁を破ってガス排出口11より噴出し、エアバッグ内に流入する。これによりエアバッグが膨張し、乗員と堅い構造物の間にクッションを形成して衝撃から乗員を保護する。
【0028】更に本発明は、図2に示すような他の例によるエアバッグ用ガス発生器においても具体化することができる。
【0029】図2に示すエアバッグ用ガス発生器においても、図1に示すガス発生器同様に、ハウジングの最大内圧は、ハウジング63に形成される開口部77で制御される。この開口部は、図1の場合と同じくガス発生剤としては非アジド系ガス発生剤の種類及び量を適当に選択し、開口部総面積/ガス発生量が0.50?2.50cm^(2)/mol、好ましくは0.50?2.00cm^(2)/mol、更に好ましくは1.00?1.50cm^(2)/molとなる様に調整し、ガス発生器の作動時の最大内圧が100?300kg/cm^(2)、好ましくは130?180kg/cm^(2)となる様に調整する。
【0030】このガス発生器は、ディフューザシェル61とクロージャシェル62からなるハウジング63と、このハウジング63内の収容空間に配設される点火器64と、この点火器64により点火されて燃焼ガスを発生する固形ガス発生剤66と、そしてこれらガス発生剤66を収容するガス発生剤収納室84を画成するクーラント・フィルタ67とを含んでいる。この例に於いても開口部77を閉塞するシールテープ96は、専ら防湿の目的で貼付されている。図2中、91はフィルタ支持部材を示している。
【0031】『エアバッグ装置』図3に、本発明のガス発生器を有するエアバッグ装置の例を示す。このエアバッグ装置は、ガス発生器80と、衝撃センサ81と、コントロールユニット82と、モジュールケース83と、そしてエアバッグ84からなっている。
【0032】ガス発生器80としては、図1に基づいて説明したガス発生器が使用されている。
【0033】衝撃センサ81は、例えば半導体式加速度センサからなることができる。この半導体式加速度センサは、加速度が加わるとたわむようにされたシリコン基板のビーム上に4個の半導体ひずみゲージが形成され、これら半導体ひずみゲージはブリッジ接続されている。加速度が加わるとビームがたわみ、表面にひずみが発生する。このひずみにより半導体ひずみゲージの抵抗が変化し、その抵抗変化を加速度に比例した電圧信号として検出するようになっている。
【0034】コントロールユニット82は、点火判定回路を備えており、この点火判定回路に前記半導体式加速度センサからの信号が入力するようになっている。センサからの衝撃信号がある値を越えた時点でコントロールユニット82は演算を開始し、演算した結果がある値を越えたときガス発生器80の点火器18に作動信号を出力する。
【0035】モジュールケース83は、例えばポリウレタンから形成され、モジュールカバー85を含んでいる。このモジュールケース83内にエアバッグ84及びガス発生器80が収容されてパッドモジュールとして構成され、このパッドモジュールは自動車のステアリングホイール87に取り付けられている。
【0036】エアバッグ84は、ナイロン(例えばナイロン66)、またはポリエステルなどから形成され、その袋口86がガス発生器のガス排出口7を取り囲み、折り畳まれた状態でガス発生器のフランジ部14に固定されている。
【0037】自動車の衝突時に衝撃を半導体式加速度センサ81が感知すると、その信号がコントロールユニット82に送られ、センサからの衝撃信号がある値を越えた時点でコントロールユニット82は演算を開始し、演算した結果がある値を越えたときガス発生器80の点火器18に作動信号を出力する。これにより点火器18が作動してガス発生剤に点火しガス発生剤は燃焼してガスを生成する。このガスはエアバッグ84内に噴出し、これによりエアバッグはモジュールカバー85を破って膨出し、ステアリングホイール87と乗員の間に衝撃を吸収するクッションを形成する。
【0038】
【発明の効果】
本発明のガス発生器は、ガス発生剤、特に非アジド系ガス発生剤を用い、その発生ガスがエアバッグへ通過する方向の開口部の孔径及び開口部総面積/ガス発生量を制御することにより、破裂板を用いることなく、ガス発生剤を安定に燃焼させ、小型容器でエアバッグ展開にふさわしい出力カーブを得ることができる。従ってエアバッグ用ガス発生器を小型・軽量化する際に有利なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のガス発生器の断面図。
【図2】本発明の別の実施例のガス発生器の断面図。
【図3】本発明のエアバッグ装置の構成図。
【符号の説明】
1 ディフューザシェル
2 クロージャシェル
3 ハウジング
4 点火器
6 ガス発生剤
7 クーラント
11 ガス排出口(開口部)
28 燃焼室
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2009-09-03 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願平9-276215
審決分類 P 1 113・ 536- ZA (B60R)
P 1 113・ 537- ZA (B60R)
P 1 113・ 121- ZA (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三澤 哲也藤井 昇  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 植前 津子
中川 真一
登録日 1999-10-08 
登録番号 特許第2989788号(P2989788)
発明の名称 エアバッグ用ガス発生器及びエアバッグ装置  
代理人 金山 賢教  
代理人 大崎 勝真  
代理人 坪倉 道明  
代理人 小野 誠  
代理人 岩永 勇二  
代理人 川口 義雄  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 平田 忠雄  
代理人 岩永 勇二  
代理人 平田 忠雄  

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