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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1228900
審判番号 不服2008-14580  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-10 
確定日 2010-12-16 
事件の表示 特願2003-500857「セキュア・オンライン決済システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 5日国際公開、WO02/97752、平成16年10月28日国内公表、特表2004-533062〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は,2002年6月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年6月1日,アイルランド国)を国際出願日とする出願であって,平成19年8月15日付けで拒絶理由が通知され,同年12月17日に手続補正書及び意見書が提出され,平成20年3月11日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年6月10日に審判請求がされるとともに,同年7月10日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成20年7月10日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

補正却下の決定の結論

本件補正を却下する。

理由

1 補正の内容

本件補正により,特許請求の範囲は,次のとおり補正された。なお,下線は,補正された部分を示すものとして,手続補正書に付されたものを援用したものである。

≪本件補正前≫

「【請求項1】
1以上のサーバ、承認ホスト及びそれらに接続されたカード保有者の端末を有するネットワークにおいて、オンライン決済取引を処理するためのコンピュータ・データ処理方法であって、
前記ネットワークに接続するという、前記カード保有者の端末での決済カード・カード保有者からの要求をサーバが受信するステップであって、前記要求はカード保有者パスワードを含む、前記受信するステップと、
前記サーバが、前記カード保有者要求を認証し、かつ前記ネットワークへの前記カード保有者の端末によるアクセスを用意するステップと、
サーバ内の取引プロセッサが、商売人と前記カード保有者との間の取引に関連づけられた決済要求を受信するステップであって、前記決済要求は商売人情報及び取引価格を確認する、前記受信するステップと、
前記取引プロセッサが、カード保有者詳細データベースから前記カード保有者の決済カード詳細を検索するステップと、
前記取引プロセッサが、前記取引を承認するために前記検索された決済カード詳細のための決済承認要求を承認ホストに提出するステップであって、前記決済承認要求はシステム商売人コード及び前記取引価格を含む、前記提出するステップと、
承認の受信に応答して前記商売人に、又は承認の拒絶の受信に応答して前記カード保有者に、前記取引プロセッサが情報を送るステップと
を含む、前記コンピュータ・データ処理方法。
【請求項2】
前記取引プロセッサが、前記商売人からの商売人コードを要求するステップをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項3】
前記決済要求を受信するステップは、前記取引プロセッサが前記商売人のための商売人コード識別子を格納するステップをさらに含む、請求項2に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項4】
前記決済要求が、商売人コード及び商売人コード識別子を含み、及び前記決済承認要求
・データ処理方法。
【請求項5】
前記取引プロセッサによって前記商売人に送られた前記情報が、前記承認の確認である、請求項4に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項6】
前記取引プロセッサによって前記商売人に送られた前記情報が、システム・カード保有者口座コードを含む第2の決済要求及び前記取引価格である、請求項1に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項7】
承認の受信に応答して前記決済取引の処理をするために、前記取引プロセッサが決済ホストに前記決済要求を送るステップをさらに含む、請求項1?6のいずれか一項に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項8】
配送の確認が受信されるまで、前記取引プロセッサが前記決済要求を送ることを遅らせ
るステップをさらに含む、請求項7に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項9】
商売人に提供された前記カード保有者情報が前記カード保有者詳細データベース内に格納されたカード保有者情報に一致することを保証するために前記取引プロセッサが検証するステップをさらに含む、請求項1?8のいずれか一項に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項10】
1以上のサーバ、承認ホスト及びそれらに接続されたカード保有者の端末を有するネットワークにおいて、オンライン決済取引を処理するためのコンピュータ・データ処理方法であって、
サーバが、ネットワークに接続するという、前記カード保有者の端末でのカード保有者からの要求を受信するステップであって、前記要求はカード保有者パスワードを含む、前記受信するステップと、
前記サーバが、前記カード保有者要求を認証し、かつ前記ネットワークへの前記カード保有者の端末によるアクセスを用意するステップと、
サーバ内の取引プロセッサが、前記カード保有者に関連付けられた第1の決済要求を受信し、商売人コード識別子を含む商売人情報及び取引価格を確認するステップと、
前記取引プロセッサが、商売人と前記カード保有者との間の取引に関連づけられた第1の取引要求を受信し、そして商売人コード識別子を含む商売人情報及び取引価格を確認し、或いは商売人と前記カード保有者との間の取引に関連付けられた第1の決済要求を受信するステップと、
前記取引プロセッサが、カード保有者詳細データベースから前記カード保有者の決済カード詳細を検索するステップと、
前記取引プロセッサが、前記取引を承認するために前記検索された決済カード詳細のための決済承認要求を承認ホストに提出するステップであって、前記決済承認要求は前記取引価格、及び決済要求が受信される場合に前記商売人コード又は第1の取引要求が受信される場合にシステム商売人コードをさらに含む、前記提出するステップと、
前記ホストからの承認の受信に応答して、前記取引プロセッサが前記商売人に情報を送るステップと、
前記ホストからの承認の拒絶の受信に応答して、前記取引プロセッサが前記カード保有者に情報を送るステップと
を含む、前記コンピュータ・データ処理方法。
【請求項11】
前記取引プロセッサが、前記商売人からの商売人コードを要求するステップをさらに含む、請求項10に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項12】
決済要求が受信される場合、前記情報が前記承認結果の確認である、請求項10又は11に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項13】
第1の取引要求が受信される場合、前記情報がシステム・カード保有者口座コードを含む、前記商売人への取引要求である、請求項10又は11に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項14】
前記決済取引の処理をするために、前記取引プロセッサが決済ホストに前記決済要求を送るステップを更に含む、請求項10?13のいずれか一項に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項15】
配送の確認が受信されるまで、前記取引プロセッサが前記決済要求を送ることを遅らせるステップをさらに含む、請求項14に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項16】
商売人に提供された前記カード保有者情報が前記カード保有者詳細データベース内に格納されたカード保有者情報に一致することを保証するために前記取引プロセッサが検証するステップをさらに含む、請求項10?15のいずれか一項に記載のコンピュータ・データ処理方法。
【請求項17】
オンライン決済取引を処理するためのシステムであって、前記システムはインターネットへの接続及びさらにローカル・ネットワークを介してのカード保有者の端末への接続を有し、
前記システムは、
ネットワークに接続するというカード保有者からの要求を受信する受信手段であって、前記要求はカード保有者パスワードを含む、前記受信手段と、
前記カード保有者要求を認証しかつ前記ネットワークへの前記カード保有者によるアクセスを用意する認証手段と、
取引プロセッサと
を含み、
前記取引プロセッサが、
商売人と前記カード保有者との間の取引に関連付けられた第1の取引要求を受信する、又は前記カード保有者に関連付けられた決済要求を受信し且つ商売人コード識別子を含む商売人情報及び取引価格を確認し、
データベースから前記カード保有者のための決済カード詳細を検索し、
前記取引を承認するために前記検索された決済カード詳細のための決済承認要求を承認ホストに提出し、ここで前記決済承認要求は、第1の取引要求が受信される場合に前記取引価格及びシステム商売人コードを或いは決済要求が受信される場合に商売人コードを含み、
前記承認ホストからの承認の受信に応答し、第1の取引要求が受信される場合にシステム・カード保有者口座コードを含む取引要求又は決済要求が受信される場合に前記承認の確認のいずれかを前記商売人に送り、
前記承認ホストからの承認の拒絶の受信に応答し、前記カード保有者に情報を送る、
前記オンライン決済取引を処理するためのシステム。
【請求項18】
前記取引プロセッサがさらに、前記商売人から商売人コード識別子を得る、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記取引プロセッサがさらに、承認の受信に応答し、前記決済取引を処理するために決済ホストに前記決済要求を送る、請求項17または請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記取引プロセッサが、配送の確認が受信されるまで前記決済要求を送ることを遅らせる、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記取引プロセッサが、商売人に提供された前記カード保有者情報が前記データベース内に格納されたカード保有者情報に一致することを保証するために検証を行う、請求項17?20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
個々のネットワーク化されたコンピュータによって互いに接続された商売人とカード保有者との間でオンライン決済取引を処理するための決済処理システムであって、取引プロセッサを含み、該取引プロセッサが、
前記商売人と前記カード保有者との間の取引に関連付けられた決済要求を受信し、ここで前記決済要求は商売人情報及び取引価格を確認し、
カード保有者カード詳細のデータベースから前記カード保有者のための決済カード詳細を検索し、
前記取引を承認するために前記検索された決済カード詳細のための決済承認要求を承認ホストに提出し、ここで前記決済承認要求は前記検索された決済カード詳細、システム商売人コード及び前記取引価格を含み、
承認に応答して前記商売人に又は承認の拒絶に応答して前記カード保有者に情報を送る、前記システム。
【請求項23】
前記取引プロセッサがさらに、前記商売人から商売人コードを要求する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記取引プロセッサが、前記商売人のための商売人コード識別子を格納する、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記決済要求が、商売人コード及び商売人コード識別子を含み、及び前記決済承認がシステム商売人コードの代わりに商売人コードを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記取引プロセッサによって前記商売人に送られた前記情報が、承認の確認である、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記取引プロセッサによって前記商売人に送られた前記情報が、システム・カード保有者口座コードを含む第2の決済要求及び前記取引価格である、請求項22に記載のシステム。
【請求項28】
承認の受信に応答して前記決済取引の処理をするために、前記取引プロセッサがさらに、決済ホストに前記決済要求を送る、請求項22?27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
配送の確認が受信されるまで、前記取引プロセッサが前記決済要求を送ることを遅らせる、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
商売人に提供された前記カード保有者情報が前記データベース内に格納されたカード保有者情報に一致することを保証するために前記取引プロセッサが検証を行う検証手段をさらに含む、請求項22?29のいずれか一項に記載のシステム。」

≪本件補正後≫

「【請求項1】
個々のネットワーク化されたコンピュータによって互いに接続された商売人とカード保有者との間でオンライン決済取引を処理するための、複数のネットワーク化されたコンピュータを含む決済処理システムであって、前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの1つに格納された取引プロセッサ部を含み、該取引プロセッサ部が、
前記商売人のネットワーク化されたコンピュータと前記カード保有者のネットワーク化されたコンピュータとの間の電子取引に関連付けられた決済要求メッセージを受信し、ここで前記決済要求メッセージは商売人情報及び取引価格を確認し、
前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの前記1つに格納されたカード保有者カード詳細のデータベースから前記カード保有者のための決済カード詳細データを検索し、
前記取引を承認するために前記検索された決済カード詳細データのための決済承認要求メッセージを承認ホストとしての前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの他の1つに提出し、ここで前記決済承認要求メッセージは前記検索された決済カード詳細データ、前記取引プロセッサ部の商売人コードであるシステム商売人コード、及び前記取引価格を含み、
承認メッセージの受信に応答して前記商売人のネットワーク化されたコンピュータに又は承認メッセージの拒絶の受信に応答して前記カード保有者に情報を送る、前記システム。
【請求項2】
前記取引プロセッサ部がさらに、前記商売人のネットワーク化されたコンピュータから商売人コードをさらに要求する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記取引プロセッサ部が、前記商売人のネットワーク化されたコンピュータのための商売人コード識別子をさらに格納する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記決済要求メッセージが、商売人コード及び商売人コード識別子を含み、及び前記決済承認要求メッセージがシステム商売人コードの代わりに商売人コードを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記取引プロセッサ部によって前記商売人のネットワーク化されたコンピュータに送られた前記情報が、承認メッセージの確認である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記取引プロセッサ部によって前記商売人のネットワーク化されたコンピュータに送られた前記情報が、システム・カード保有者口座コード及び前記取引価格を含む第2の決済要求メッセージである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
承認メッセージの受信に応答して前記決済取引の処理をするために、前記取引プロセッサ部がさらに、決済ホストとしての前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの他の1つに前記決済要求メッセージをさらに送る、請求項1?6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
配送メッセージの確認が受信されるまで、前記取引プロセッサ部が前記決済要求メッセージを送ることをさらに遅らせる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
商売人のネットワーク化されたコンピュータに提供された前記カード保有者情報が前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの前記1つにおける前記データベース内に格納されたカード保有者情報に一致することを保証するために前記取引プロセッサ部が第2の検証をさらに行う、請求項1?8のいずれか一項に記載のシステム。」

2 本件補正の補正目的の適否

本件補正は,本件補正前の請求項1-21を削除することにより,本件補正前の請求項22-30を,それぞれ新たに請求項1-9とするとともに,発明を特定するために必要な事項である「決済処理システム」,「取引プロセッサ」,「商売人」,「カード保有者」,「取引」,「決済要求」,「カード保有者カード詳細のデータベース」,「決済カード詳細」,「決済承認要求」,「承認ホスト」,「システム商売人コード」,「承認」,「応答」という構成について,それぞれ「複数のネットワーク化されたコンピュータを含む決済処理システム」,「複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの1つに格納された取引プロセッサ部」,「商売人のネットワーク化されたコンピュータ」,「カード保有者のネットワーク化されたコンピュータ」,「電子取引」,「決済要求メッセージ」,「複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの前記1つに格納されたカード保有者カード詳細のデータベース」,「決済カード詳細データ」,「決済承認要求メッセージ」,「承認ホストとしての前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの他の1つ」,「取引プロセッサ部の商売人コードであるシステム商売人コード」,「承認メッセージ」,「受信に応答」とすることで,限定を行うものである。
そうすると,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号,第2号に規定する請求項の削除,及び特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するといえる。

そこで,次に,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(独立特許要件)について,検討する。

3 引用例の記載内容と引用発明

(1)原査定の拒絶理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第97/3410号(以下「引用例1」という。)には,図とともに次の記載がある。なお,下線は,当審において付加したものである。

(ア)「These and other objects and advantages of the present invention are achieved by an Internet billing method in accordance with the present invention. A provider establishes an agreement with a customer, and a second agreement with a vendor, wherein the provider agrees with the customer and the vendor to bill for products and services purchased over the Internet by the customer from the vendor. Associated with the customer agreement are one or more billing accounts to which purchases may be charged. Associated with the vendor agreement are one or more methods of remitting funds to the vendor. The provider creates access to the Internet for the customer through the provider's equipment. When the customer orders a product or service over the Internet from the vendor, the provider obtains transactional information transmitted between the customer and the vendor including a transaction amount relating to the ordered product or service and the provider then bills the transaction amount to a customer billing account and remits a portion of the transaction amount to the vendor. 」(仮訳「本発明の上記および他の目的および特長は、本発明のインターネット課金方法により達成される。プロバイダはカスタマと合意を行いベンダーと第2の合意をおこない、プロバイダは、カスタマからベンダーによりインターネット上で購入された商品およびサービスに対する課金をするためにカスタマおよびベンダーと合意する。カスタマの合意と関連するものは購入が請求された1以上の課金アカウントである。ベンダーの合意と関連するものは、ベンダーに資金を送る1つ以上の方法である。プロバイダはプロバイダの装置を通してカスタマに対してインターネットへのアクセスを作り出す。カスタマがベンダーからインターネット上で商品あるいはサービスを注文したとき、プロバイダは、注文された商品あるいはサービスに関連したトランザクション金額を含むカスタマとベンダーとの間で伝送されたトランザクション情報を獲得し、プロバイダは次いでトランザクション金額をカスタマの課金アカウントに課金し、またトランザクション金額の一部をベンダーに送金する。」)(第4頁第12行-第5頁第9行)

(イ)「In a typical transaction in accordance with the present invention, from the customer's point of view all use of the Internet appears to be conventional. Depending upon the prearrangements made between the provider and the customer and between the provider and the vendor, the customer can charge a purchase to a credit card, to a cable television account, or to a telephone account. The account of the customer to be billed need not be with the provider. For example, the customer may be using one telephone company as an access provider and a second telephone company as a telephone service provider and the account to be billed is that with the second telephone company. The customer specifies which account is to be billed by an indication to the provider, but neither the customer nor the vendor has to transmit any account numbers over the Internet, because it is the provider, not the vendor who submits the charge to the credit card company, the cable television company or the telephone company, and the provider already has been given, during the course of making prearrangements with the customer and the vendor, the appropriate account number of both the customer and the vender. The provider sends this information to the appropriate party by the same secure means customarily used for similar transactions not made over the Internet.」(仮訳「本発明による一般的例のトランザクションにおいて、カスタマの観点からは、インターネットの使用の全ては従来通りであると思われる。プロバイダとカスタマとの間およびプロバイダとベンダーとの間の事前のアレンジにより、カスタマは購入をクレジットカードに対して、ケーブルテレビのアカウントに対して、あるいは電話アカウントに対して請求することができる。課金されるカスタマのアカウントはプロバイダにある必要はない。例えば、カスタマはアクセスプロバイダとして1つの電話会社を、また電話サービスプロバイダとして第2の電話会社を使用し、また課金されるアカウントは第2の電話会社とのものとする。カスタマはプロバイダへの指示によりどのアカウントが課金されるかを指定するが、クレジットカード会社、ケーブルテレビ会社あるいは電話会社に請求書を提出するのがベンダーでなくてプロバイダであり、またプロバイダはカスタマおよびベンダーとの事前のアレンジの間にカスタマおよびベンダーの両方の適当なアカウント番号をすでに得ていることから、カスタマあるいはベンダーはいずれもインターネット上でアカウント番号を送信しない。プロバイダはこの情報を、インターネット上で行われない、同様なトランザクションのために通常使用される同じ安全な手段により適当な第3者に送信する。」)(第9頁第1行-第10頁第2行)

(ウ)「When the customer has made a purchase, the provider charges the transaction amount to the agreed account of the customer and credits the agreed portion of that amount to the agreed account of the vendor, keeping the differential as the provider's charge for making the service available.」(仮訳「カスタマが購入を行った場合、プロバイダはトランザクション金額をカスタマの承認されたアカウントに請求し、またその金額の承認された部分をベンダーの承認されたアカウントにクレジットし、差額を利用可能なサービスを行ったプロバイダの請求とする。」)(第10頁第23行-第11頁5行)

(エ)「Referring to Fig.1, a system for carrying out the method of the present invention is shown. In that system, the Internet is shown schematically as a network1 to which providers 2,6 vendors 5.1-5.n, 6.1-6.n and 8.1-8.n and customers 4.1-4.n and 10.1-10.n (where n is an integer to indicate a range from one to many) are connected in different ways.」(仮訳「図1を参照して、本発明の方法を実行するためのシステムが示されている。このシステムでは、インターネットは、プロバイダ2、6、ベンダー5.1-5.n、6.1-6.nおよび8.1-8.nおよびカスタマ4.1-4.nおよび10.1-10.n(nは1から多くの範囲を示す整数)が異なる方法で接続されたネットワーク1として図式的に示されている。」)(第11頁第17行-第12頁第2行)

(オ)「In step14, the transaction information is obtained by the provider 2. The communication can be a separate transmission by the vendor or the customer to the provider 2, or the provider 2 can extract the information from the exchange of information taking place between the customer and the vendor through the provider's equipment. The provider 2 can then send verifying information to one or both of the customer and vendor to indicate that the transaction has been approval, if approval of an outside party, such as credit card company, is required. Most importantly, the entire transaction takes place without the need of communicating the customer's credit card or account number over the Internet 1.」(仮訳「ステップ14において、トランザクション情報はプロバイダ2により獲得される。通信は、ベンダーあるいはカスタマからプロバイダ2への別々の送信であり、あるいはプロバイダ2はカスタマとベンダーとの間でプロバイダの装置を通って行われた情報の交換から情報を抽出することができる。クレジットカード会社のような外部の第3者の承認が必要な場合には、プロバイダ2は次いで、トランザクションが承認されたことを示すために、カスタマおよびベンダーの一方あるいは両方に対して検証情報を送信する。最も重要なことは、カスタマのクレジットカードありはアカウント番号をインターネット1上で連絡する必要なしに全体のトランザクションが行われることである。」)(第14頁第11行-第15頁第1行)

(カ)「In accordance with another feature of the present invention, prior to the billing of the transaction amount to the account of the customer and after obtaining the transactional information, the provider can obtain approval to bill the transaction amount to the billing account. This is particularly true in the case where the billing account is a credit card account. In that instance, approval must be obtained from a third party, i.e., the bank issuing the credit card. Where the account is with the provider, approval would be obtained from the provider itself. In a preferred embodiment of the present invention, the approval can be obtained over the Internet and most preferably during the communication between the customer and the vendor.」(仮訳「本発明の他の特徴によれば、カスタマのアカウントにトランザクション金額の課金をする前でトランザクション情報を獲得した後に、プロバイダは課金アカウントにトランザクション金額を課金するための承認を得ることができる。これは、課金アカウントがクレジットカードアカウントである場合に特に有効である。その場合、第3者、例えばクレジットカードを発行した銀行からの承認を得なければならない。アカウントがプロバイダとである場合、プロバイダ自身から承認を得る。本発明の好ましい実施の形態において、承認はインターネット上で、また最も好ましくはカスタマとベンダーとの間の通信の間に得ることができる。」)(第15頁第20行-第16頁第11行)

(a)指摘事項(エ)における「In that system, the Internet is shown schematically as a network1 to which providers 2,6 vendors 5.1-5.n, 6.1-6.n and 8.1-8.n and customers 4.1-4.n and 10.1-10.n (where n is an integer to indicate a range from one to many) are connected in different ways.」(仮訳「このシステムでは、インターネットは、プロバイダ2、6、ベンダー5.1-5.n、6.1-6.nおよび8.1-8.nおよびカスタマ4.1-4.nおよび10.1-10.n(nは1から多くの範囲を示す整数)が異なる方法で接続されたネットワーク1として図式的に示されている。」)との記載,及び図1の記載によると,引用例1は,「ネットワークによって互いに接続されたプロバイダ,ベンダー,カスタマを含むシステム」に関するものである。

(b)指摘事項(イ)における「but neither the customer nor the vendor has to transmit any account numbers over the Internet」,「the provider already has been given, during the course of making prearrangements with the customer and the vendor, the appropriate account number of both the customer and the vender.」(仮訳「またプロバイダはカスタマおよびベンダーとの事前のアレンジの間にカスタマおよびベンダーの両方の適当なアカウント番号をすでに得ていることから、カスタマあるいはベンダーはいずれもインターネット上でアカウント番号を送信しない。」)との記載によると,プロバイダは,使用するカスタマのアカウント番号を事前に得ているから,引用例1では,「プロバイダは,カスタマのアカウント番号を,事前に取得して格納しているものである」のは,明らかである。

(c)指摘事項(カ)における「prior to the billing of the transaction amount to the account of the customer and after obtaining the transactional information, the provider can obtain approval to bill the transaction amount to the billing account. This is particularly true in the case where the billing account is a credit card account. In that instance, approval must be obtained from a third party, i.e., the bank issuing the credit card.」(仮訳「カスタマのアカウントにトランザクション金額の課金をする前でトランザクション情報を獲得した後に、プロバイダは課金アカウントにトランザクション金額を課金するための承認を得ることができる。これは、課金アカウントがクレジットカードアカウントである場合に特に有効である。その場合、第3者、例えばクレジットカードを発行した銀行からの承認を得なければならない。」)及び,「In a preferred embodiment of the present invention, the approval can be obtained over the Internet」(仮訳「本発明の好ましい実施の形態において、承認はインターネット上で得ることができる。」)との記載によると,引用例1には,課金アカウントがクレジットカードアカウントである場合に,「プロバイダが,第3者であるクレジットカードを発行した銀行に対し,インターネット上で,カスタマのアカウントへトランザクション金額を課金するための承認を得る」ことが記載され,さらに,指摘事項(イ)における「The customer specifies which account is to be billed by an indication to the provider」,「because it is the provider, not the vendor who submits the charge to the credit card company, the cable television company or the telephone company」(仮訳「カスタマはプロバイダへの指示によりどのアカウントが課金されるかを指定するが、クレジットカード会社、ケーブルテレビ会社あるいは電話会社に請求書を提出するのがベンダーでなくてプロバイダであり」)との記載によると,前記承認は「プロバイダを請求者とした」請求に関する承認であるといえる。そうすると,引用例1には,「プロバイダが,第3者であるクレジットカードを発行した銀行に対し,前記プロバイダを請求者としたカスタマのアカウントへトランザクション金額を課金するための承認を得る」との事項が記載されているのは,明らかである。

(2)以上の点を踏まえ,上記指摘事項(ア)-(カ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には

「ネットワークによって互いに接続されたプロバイダ,ベンダー,カスタマを含むシステムにおいて,
前記プロバイダは,注文された商品あるいはサービスに関連したトランザクション金額を含むカスタマとベンダーとの間で伝送されたトランザクション情報を獲得し,
前記プロバイダは,前記カスタマのアカウント番号を,事前に取得して格納しているものであり,
前記プロバイダが,第3者であるクレジットカードを発行した銀行に対し,インターネット上で,前記プロバイダを請求者とした前記カスタマのアカウントへ前記トランザクション金額を課金するための承認を得,
前記プロバイダは,トランザクションが承認されたことを示すために,ベンダーに対して検証情報を送信する
ことにより課金処理を行う課金方法。」(以下「引用発明」という。)

が記載されていると認められる。

4 対比・判断

(1)対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると

ア 引用発明の「カスタマ」は,クレジットカードによってネットワーク上で購入した商品等の決済を行う者,若しくは,その者が使用するネットワークに接続されたコンピュータを指すから,本願補正発明の「カード保有者」若しくは「カード保有者のネットワーク化されたコンピュータ」に相当する。
イ 引用発明の「ベンダー」は,ネットワーク上において商品等の販売を行う者,若しくは,その者が使用するネットワークに接続されたコンピュータを指すから,本願補正発明の「商売人」若しくは「商売人のネットワーク化されたコンピュータ」に相当する。
ウ 引用発明において,プロバイダ及び銀行は,互いに協働して,注文された商品等に関連した課金のための処理を行っているから,かかるプロバイダ及び銀行からなる構成は,「複数のコンピュータを含む決済処理システム」であるといえる。また,引用発明では,プロバイダから銀行への承認要求は,インターネット上で行われているから,プロバイダと銀行は,互いにネットワークによって接続されているものと認められる。そうすると,引用発明における「プロバイダ」及び「銀行」からなる構成は,本願補正発明の「複数のネットワーク化されたコンピュータを含む決済処理システム」に相当する。
エ 引用発明において,ベンダーとカスタマは,ネットワークによって互いに接続されているから,かかるベンダーとカスタマは,「個々のネットワーク化されたコンピュータによって互いに接続され」ているといえる。また,引用発明は,カスタマからベンダーに注文された商品等に関連した課金のための処理を行うものであるから,「商売人とカード保有者との間でオンライン決済をするための」ものであるといえる。そうすると,引用発明は,本願補正発明と同様に「個々のネットワーク化されたコンピュータによって互いに接続された商売人とカード保有者との間でオンライン決済取引を処理するための」ものであるといえる。
オ 上記ウ,エから,引用発明における「プロバイダ」及び「銀行」からなる構成は,本願補正発明の「個々のネットワーク化されたコンピュータによって互いに接続された商売人とカード保有者との間でオンライン決済取引を処理するための,複数のネットワーク化されたコンピュータを含む決済処理システム」に相当する。
カ 引用発明の「プロバイダ」は,コンピュータであるから,処理を実行するためにプロセッサ部を内蔵していることは,自明である。そして上記エから,引用発明の「プロバイダ」は,「複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの1つ」であるといえるから,かかるプロバイダのプロセッサ部は,本願補正発明の「複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの1つに格納された取引プロセッサ部」に相当する。
キ 引用発明における「トランザクション情報」は,注文された商品等に関連してカスタマとベンダーとの間で伝送されるものであり,この情報を獲得することによってプロバイダが,当該商品等の取引に関する課金処理を行うものであるから,本願補正発明の「商売人のネットワーク化されたコンピュータとカード保有者のネットワーク化されたコンピュータとの間の電子取引に関連づけられた決済要求メッセージ」に相当する。
ク 引用発明の「トランザクション金額」は,注文された商品等に関連した金額であるから,本願補正発明の「取引価格」に相当する。
ケ 引用発明において,プロバイダがトランザクション情報を獲得する処理は,本願補正発明における「取引プロセッサ部が、」「決済要求メッセージを受信」する処理に相当する。そして,引用発明では,当該トランザクション情報は,トランザクション金額を含んでおり,また,当該トランザクション情報が,カスタマとベンダーとの間で伝送される情報であることを考えると,当該トランザクション情報に,伝送先となるベンダーを識別する情報(本願補正発明の「商売人情報」に相当。)が含まれていることは,自明である。そうすると,引用発明と本願補正発明は,「決済要求メッセージは商売人情報及び取引価格を確認」するものである点において共通している。
コ 引用発明における「カスタマのアカウント番号」は,アカウントがクレジットアカウントであることを考えると,決済カードに関するデータであるといえ,本願補正発明の「カード保有者のための決済カード詳細データ」に相当する。そして,引用発明では,プロバイダが,当該カスタマのアカウント番号を事前に格納し,承認要求の際にこれを利用するから,利用にあたって格納された当該カスタマのアカウント番号が,何らかの手段により取得されているのは明らかである。そうすると,後述する相違点はあるものの,引用発明と本願補正発明とは,「複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの前記1つに格納されたカード保有者のための決済カード詳細データを取得」する処理が行われる点において共通している。
サ 引用発明における「銀行」は,カスタマのアカウントにトランザクション金額を課金することについての承認を行うコンピュータであり,上記ウで見たように,決済処理システムを構成する2つのコンピュータのうち,プロバイダではないコンピュータであるから,本願補正発明の「承認ホストとしての前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの他の1つ」に相当する。
シ 引用発明において,プロバイダは,カスタマのアカウントへトランザクション金額を課金するための承認要求を,銀行に対し,インターネット上で行っているから,引用発明と本願補正発明とは,「取引を承認するために前記取得された決済カード詳細データのための決済承認要求メッセージを承認ホスト」「に提出」する処理を行う点において共通している。
ス 引用発明にける承認は,カスタマのアカウントへトランザクション金額を課金するための承認であるから,プロバイダから銀行に対して送信される承認要求に,カスタマのアカウントに関する情報及びトランザクション金額に関する情報が含まれていることは明らかである。そうすると,後述する相違点はあるものの,引用発明と本願補正発明とは,「前記決済承認要求メッセージは前記取得された決済カード詳細データ及び前記取引価格を含む」点において共通している。
セ 引用発明における「トランザクションが承認されたことを示すために,ベンダーに対して検証情報を送信する」処理は,本願補正発明の「承認メッセージの受信に応答して前記商売人のネットワーク化されたコンピュータに情報を送る」処理に相当する。

(2)一致点と相違点

そうすると,本願補正発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりと認められる。

ア 一致点

「個々のネットワーク化されたコンピュータによって互いに接続された商売人とカード保有者との間でオンライン決済取引を処理するための,複数のネットワーク化されたコンピュータを含む決済処理システムであって,前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの1つに格納された取引プロセッサ部を含み,該取引プロセッサ部が,
前記商売人のネットワーク化されたコンピュータと前記カード保有者のネットワーク化されたコンピュータとの間の電子取引に関連付けられた決済要求メッセージを受信し,ここで前記決済要求メッセージは商売人情報及び取引価格を確認し,
前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの前記1つに格納された前記カード保有者のための決済カード詳細データを取得し,
前記取引を承認するために前記取得された決済カード詳細データのための決済承認要求メッセージを承認ホストとしての前記複数のネットワーク化されたコンピュータのうちの他の1つに提出し,ここで前記決済承認要求メッセージは前記取得された決済カード詳細データ及び前記取引価格を含み,
承認メッセージの受信に応答して前記商売人のネットワーク化されたコンピュータに情報を送る,
前記システム。」

イ 相違点

[相違点1]本願補正発明では,カード保有者のための決済カード詳細データが,カード保有者カード詳細のデータベースに格納され,かかるカード保有者カード詳細のデータベースを検索することで,カード保有者のための決済カード詳細データが取得されているが,引用発明では,カード保有者のための決済カード詳細データが,どのように取得されるのかが明らかでない点。

[相違点2]本願補正発明では,決済承認要求メッセージに,取引プロセッサ部の商売人コードであるシステム商売人コードが含まれているのに対し,引用発明では,それが明らかでない点。

[相違点3]本願補正発明では,承認メッセージの拒絶の受信に応答してカード保有者に情報が送られるのに対し,引用発明では,それが明らかでない点。

(3)判断

ア 相違点1について

原査定の拒絶理由に引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-240814号公報(以下「引用例2」という。)には,「【0023】会員情報サーバ6では、送信された注文情報及び利用者情報に基づき会員検索を行い、カードの有効性、与信限度等の判定基準に基づき、クレジットカードが利用可能か否かを判定する。判定基準を満たさない場合には、クレジットカードを利用できない旨の無効情報が注文管理サーバ4に送信される。そして、注文管理サーバ4に送信された無効情報はホームページ2上に入力される。」(下線は,当審において付加したものである。)との記載があり,クレジットカードに関する詳細情報を検索可能なように蓄積し,注文に応じて,その注文者のクレジットカードに関する詳細情報を検索して取得するという技術が記載されていると認められる。
そうすると,引用発明において,引用例2に記載のかかる技術的事項を適用し,プロバイダにおいて,クレジットカードに関する詳細情報であるアカウント番号を,検索可能なようにデータベースとして格納し,これを注文を行ったカスタマに応じて検索することで取得できるようにし,相違点1にかかる構成とすることは,当業者においては適宜なし得たことといえる。

イ 相違点2について

クレジットカード決済における承認要求に,課金の請求者の識別子を含ませることは,周知の技術的事項にすぎない。これに関して,例えば,国際公開第00/14648号には,クレジットカード決済において,銀行のコンピュータに送信する情報に,課金の請求者の識別子である売り手の番号を含ませることが(第13頁第16行-第18行参照。),特開平10-91682号公報には,クレジットカード決済において,カードセンタに送信する情報に,課金の請求者の識別子である加盟店番号を含ませることが(段落【0037】-【0041】参照。),それぞれ記載されていると認められる。
ここで,引用発明におけるプロバイダによる銀行に対する承認要求は,プロバイダを請求者として行われる承認要求であるから,引用発明において,前記周知の技術的事項を適用して,当該承認要求のために送信される決済承認要求メッセージに,課金の請求者であるプロバイダの識別子(本願補正発明の「取引プロセッサ部の商売人コードであるシステム商売人コード」に相当。)を含ませるようにし,相違点2にかかる構成とすることは,当業者においては適宜なし得たことといえる。

ウ 相違点3について

クレジットカード決済において,決済要求が拒絶された場合に,その旨をカード保有者に表示することは,周知の技術的事項にすぎない。これに関して,例えば,特開平6-208640号公報には,クレジットカードの処理が拒否されると,その旨のメッセージを,クレジットカードの保有者である客に対して表示することが(段落【0098】-【0100】参照。),特開2001-134684号公報には,クレジットシステムが信用を供与できないと判断した場合,クレジット販売が拒否された旨の表示を,購入希望者に対して行うことが(段落【0120】参照。),それぞれ記載されていると認められる。
そうすると,引用発明において,前記周知の技術的事項を適用し,銀行において決済要求が拒絶された場合,その旨をカスタマに対して表示するために,カスタマに情報を送るようにし,相違点3にかかる構成とすることは,当業者においては適宜なし得たことといえる。

(4)まとめ

以上判断したとおり,本願補正発明における上記各相違点に係る発明特定事項は,当業者が容易に想到することができたものであり,また,本願補正発明の作用効果も引用発明,引用例2に記載の技術的事項及び周知の技術的事項から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 結論

以上の次第で,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明

1 本願発明の内容

以上のとおり,本件補正(平成20年7月10日に提出された手続補正書による補正)は,却下されたので,本願の請求項22に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正前の請求項22(平成19年12月17日に提出された手続補正書により補正された請求項22)に記載されたとおりのものであり,以下に再掲する。

「【請求項22】
個々のネットワーク化されたコンピュータによって互いに接続された商売人とカード保有者との間でオンライン決済取引を処理するための決済処理システムであって、取引プロセッサを含み、該取引プロセッサが、
前記商売人と前記カード保有者との間の取引に関連付けられた決済要求を受信し、ここで前記決済要求は商売人情報及び取引価格を確認し、
カード保有者カード詳細のデータベースから前記カード保有者のための決済カード詳細を検索し、
前記取引を承認するために前記検索された決済カード詳細のための決済承認要求を承認ホストに提出し、ここで前記決済承認要求は前記検索された決済カード詳細、システム商売人コード及び前記取引価格を含み、
承認に応答して前記商売人に又は承認の拒絶に応答して前記カード保有者に情報を送る、前記システム。」

2 引用発明および引用例2の記載内容

引用発明については,前記第2,3,(2)で,引用例2については,前記第2,4,(3),アで認定したとおりである。

3 対比・判断

第2,2で述べたように,本願補正発明は,本願発明に限定的減縮を加えたものである。逆に言えば,本件補正前の発明(本願発明)は,本願補正発明から,この限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明が,前記第2,4において検討したとおり,引用発明,引用例2に記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,引用例2に記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものということができる。また,その作用効果も,引用発明,引用例2に記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が予測できる程度のものである。

4 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-16 
結審通知日 2010-07-21 
審決日 2010-08-04 
出願番号 特願2003-500857(P2003-500857)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄小山 満  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 小林 義晴
山本 章裕
発明の名称 セキュア・オンライン決済システム  
代理人 松井 光夫  

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