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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
管理番号 1228911
審判番号 不服2008-19477  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-31 
確定日 2010-12-09 
事件の表示 特願2005- 16413「両面マスクの作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開、特開2006-208429〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成17年1月25日にされた出願である。原審において、平成20年3月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年5月23日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたものの、同年6月25日付けで拒絶査定がされた(同年7月1日発送)。
この査定に対し、同年7月31日に、本件の拒絶査定不服審判の請求がされ、同年8月18日付けで手続補正がされた。その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成21年5月12日付けで審尋したところ、同年7月8日付けで回答書が提出された。
その後、当審において平成22年2月4日付けで拒絶理由を通知したところ、同年4月12日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出された。


2 本願発明について
本願に係る発明は、平成22年4月12日付けの手続補正によって補正された、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は以下のとおりである。
<本願発明>
「 表裏両面にパターンを有するフォトマスク(いわゆる両面マスク)の作成方法において、その製造工程が下記の工程からなることを特徴とする両面マスクの作成方法。
(a)透明基板の一方の面(下面)に遮光層を形成し、リソグラフィー手法により、転写有効領域内に該遮光層からなるメインパターンと、転写有効領域外に該遮光層からなるアライメントマークを形成する工程。
(b)透明基板の他方の面(上面)の転写有効領域に遮光層を形成する工程。
(c)透明基板の他方の面(上面)の全面にレジスト層を形成する工程。
(d)透明基板の他方の面(上面)からレジスト層と透明基板を通して、透明基板の一方の面(下面)に形成されたアライメントマークのレーザー光による反射像を認識し、該アライメントマークの座標を測定し、前記一方の面(下面)のアライメントマークの座標を基準座標とすることでメインパターンのアライメントを調整して、他方の面(上面)のレジスト層にメインパターンを描画する工程。
(e)リソグラフィー手法により、他方の面(上面)の遮光層にメインパターンを形成して、上面の遮光層からなるメインパターンを形成する工程。」

3 刊行物及び各刊行物の記載事項
(1)引用例1及び引用例1に記載された事項
当審において平成22年2月4日付けで通知した拒絶理由通知書(以下単に「拒絶理由通知書」という。)で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-145174号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審注:下記「(2)引用発明の認定」において特に関連する記載に下線を引いた。)。
ア 【特許請求の範囲】
「【請求項1】
ブランクの両面にパターンをもつ構造のフォトマスク(以下、両面マスクと記す)を作成する方法において、表面パターンを描画した後、裏面パターンを描画する時に、先に、裏面にアライメントパターンを描画し、該アライメントパターンと前記表面パターンとの位置のずれを測定し、次に、前記測定した位置のずれ量を用いて、裏面パターンの位置を補正して裏面パターンを描画することを特徴とする両面マスクの作成方法。
【請求項2】
前記裏面アライメントパターンと表面パターンとの位置のずれが、それぞれのパターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定することにより得られることを特徴とする請求項1記載の両面マスクの作成方法。
【請求項3】
前記裏面パターンの位置の補正が、裏面のアライメントパターンの座標を変更して、表面パターンと重なるように補正し、裏面パターンを描画することを特徴とする請求項1又は2項記載の両面マスクの作成方法。」

イ 段落【0001】ないし【0042】
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブランクの両面にパターンを有するフォトマスク等を作製する描画方法に係るもので、特に表面と裏面の垂直方向のパターン重ね合わせのずれを回避する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、通常の方法で裏面パターンを描画すると、表面と裏面のセントラリティやローテイションの違いから、両パターンの垂直方向の重ね合わせがずれる問題が発生していた。
【0003】
一般に、両面マスクにおいて、裏面パターンを描画するときに任意のパターンについてセントラリティ及びローテイションを制御しないと、表面パターンと垂直方向の重ね合わせを揃えることができない。
【0004】
通常の描画方法で、表と裏のパターンをそれぞれ描画した場合、任意のパターンについてセントラリティとローテイションを制御することはできなかったので、垂直方向の重ね合わせを揃えた表裏両面パターンを作成することが困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたもので、任意のパターンについてセントラリティとローテイションを制御し、両面パターンの垂直方向の重ね合わせ精度を向上させる両面マスクの作成方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る発明は、ブランクの両面にパターンをもつ構造のフォトマスク(以下、両面マスクと記す)を作成する方法において、表面パターンを描画した後、裏面パターンを描画する時に、先に、裏面にアライメントパターンを描画し、そのアライメントパターンと表面パターンとの位置のずれを測定し、次に、前記測定した位置のずれ量を用いて、裏面パターンの位置を補正して裏面パターンを描画することを特徴とする両面マスクの作成方法である。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は、前記裏面アライメントパターンと表面パターンとの位置のずれが、それぞれのパターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定することにより得られることを特徴とする請求項1記載の両面マスクの作成方法である。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は、前記裏面パターンの位置の補正が、裏面のアライメントパターンの座標を変更して、表面パターンと重なるように補正し、裏面パターンを描画することを特徴とする請求項1又は2項記載の両面マスクの作成方法である。
【0009】
【作用】
本発明の両面マスクの作成方法では、表面パターンと裏面のアライメントパターン中の検査パターンから求めたセントラリティ及びローテイションの差を補正するように、アライメントパターンの位置座標を変更することにより、裏面パターンのセントラリティ及びローテイションを任意の値に変更することが可能となり、垂直方向のパターンの重ね合わせ精度が向上する作用がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は係る課題を解決するものであり、請求項1の発明では、事前に描画されたアライメントパターン中の基準点(以下アライメントマークと記す)でアライメント(位置あわせ)をとってパターンを描画する機能を利用して、裏面パターンを描画するものである。この機能は、ブランクの同一面における一回目パターンと二回目パターンを精度良く重ね合わせるための描画方法であり、本来、アライメントパターンは一回目パターンに含まれる。二回目パターンは、一回目パターンのアライメントマークでアライメントをとり、両パターンのずれがないように重ね描画するもので、位相シフトマスクなどの作成に使われる機能である。両面マスクにおいて本発明の描画方法では、裏面にこのアライメントパターンだけを描画し、処理後、再度レジストをコートし、次に、このアライメントマークでアライメントをとって裏面パターンを重ね描画することにより、アライメントマークに対して、精度良く重ね合わせることを目的として使用する。この時ブランクの同一面でなく表裏両面のパターンの重ね合わせのため、表面のパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションをそれぞれ測定し、ずれ量(以下オフセットと記す)を求める。裏面のパターンの描画では、アライメントマークでアライメントをとり、このオフセット分ずらして裏面パターンを描画することにより、表面パターンとずれることなく裏面パターンを描画することができる。
【0011】
次に、請求項1に係るブランクの両面にパターンをもつ構造のフォトマスク(以下、両面マスクと記す)を作成する方法の手順は以下の通りになる。
(a)ブランク用のガラス基板の両面にCr層をスパッタリングにより形成し、該ブランク表面側のみレジストを塗布する手順。
(b)前記レジスト層に表面パターンを描画し、現像、エッチング、レジスト層の剥膜をする手順。
(c)前記表面パターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定する手順。
(d)前記ブランク裏面側にレジストを塗布する手順。
(e)前記レジスト層にアライメントパターンを描画し、現像、エッチング、レジスト層の剥膜をする手順。
(f)前記アライメントパターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定する手順。
(g)再度、前記ブランク裏面側にレジストを塗布する手順。
(h)表面パターンと、アライメントパターンのセントラリティ及びローテイションの差を補正するように、JOBファイル内のアライメントパターンの座標を補正変更する手順。(i)補正変更した前記JOBにより、アライメントパターンを用いて裏面パターンを重ね描画し、現像する手順。
(j)前記裏面パターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定する手順。(k)前記の裏面パターンと表面パターンのセントラリティ及びローテイションの対比により、表面裏面パターンの重ねのずれに問題がないことを確認後、エッチング、レジスト層を剥膜する手順。
(l)表面裏面パターンの重ねのずれが発生した場合は、前記レジスト層を剥膜し、再度、工程(g)に戻す手順。
【0012】
本発明の請求項2に係る両面マスクを作成する方法におけるパターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定する手順は以下の通りになる。
(a)パターンの最外周の四隅に検査用パターンを描画する手順。
(b)座標顕微鏡を用いて、ブランクのエッジ端部分から前記検査用パターンの座標を測定し、距離を算出する手順。
(c)エッジ端部分から検査用パターンの前記距離のずれから、セントラリティ及びローテイションを算出する手順。
【0013】
本発明の請求項3に係る両面マスクを作成する方法における裏面パターンの座標を変更する方法については、本発明ではアライメントパターンの位置座標を変更し、装置側で任意の値に補正する機能がついていない場合には、裏面パターン描画時のアライメントマークの読み込み座標(位置座標)を変更することで、任意の補正を行うことができる。
【0014】
図1は、本発明の両面マスクの作成方法を説明する工程図である。
【0015】
ブランク用ガラス基板は、ボロシリケート系又は石英ガラスを使用する。前記ガラス基板は熱膨張率に差があり、後者の石英ガラスの方が大幅に小さく、高精度のフォトマスク用に使用されるが、材料が高価のため、フォトマスクの寸法精度により選択することが好ましい。遮光用金属薄膜層はクロームまたは酸化クローム、モリブデンシリサイドの層を単層又は複数層積層させて形成する。本発明に用いる両面ブランクは前記ガラス基板の表、裏面に遮光用金属薄膜層を形成して作製する。前記遮光用金属薄膜は真空蒸着法、スパッタリング法により成膜する。次に、スピンコーター機を用いて、前記両面ブランクの表面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する。(工程(a)参照)
【0016】
次に、前記両面ブランクのレジスト層に表パターンを描画する。各々パターンデータファイルの管理名(データファイル名)と、位置座標を記載した描画手順ファイル(以下JOBファイルと記す)に従って、レジスト層を露光させてパターンの図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て表パターンを形成したフォトマスクができる。(工程(b)参照)
【0017】
前記表パターンの位置精度、すなわち、セントラリティ及びローテイションを本発明の方法により測定する。前記表パターンには検査用パターンが含まれている。
【0018】
次に、前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する。(工程(d)参照)
【0019】
前記両面ブランクの裏面に、アライメントパターンを描画する。パターンを露光させて図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て、アライメントパターンを形成したフォトマスクができる。前記アライメントパターンには検査用パターンが含まれている。(工程(e)参照)
【0020】
前記両面ブランクの裏面のアライメントパターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを本発明の方法により測定する。(工程(f)参照)
【0021】
再度、前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する。(工程(g)参照)
【0022】
前記測定した表面のアライメントパターン(当審注:段落【0017】の記載に照らし、「表面のパターン」の誤記と認める。)と裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションを比較し、その差分を補正して、裏面パターンをアライメントマーク(アライメントパターン中の基準点)でアライメント(位置合わせ)をとる方法で描画を行う。装置上で補正する機能がない場合は、裏面パターンのJOBファイル中のアライメントパターン読み込み位置座標を変更する。すなわち、前記差分をJOBファイルに登録したアライメントパターン位置座標の差分に変換して、アライメントをずらすことにより補正する方法である。(工程(h)参照)
【0023】
裏パターンの現像のみを行う。(工程(i)参照)
【0024】
両面ブランク裏面の前記裏面パターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを本発明の方法により測定する。前記裏パターンには検査用パターンが含まれている。(工程(j)参照)
【0025】
前記測定により、前記の裏面パターンと表面パターンのセントラリティ及びローテイションの対比により、表面裏面パターンの重ねのずれに問題がないことを確認後、エッチング、レジスト層の剥膜し、本発明の両面マスクが完成する。(工程(k)参照)
【0026】
j工程において、表面裏面パターンの重ねのずれが発生した場合は、問題を対処後、前記レジスト層を剥膜し、再度、工程(g)に戻す処置をする。以上本発明の両面マスクの作成方法により目的とする表裏の両面パターンの垂直方向の重ね合わせ精度の高い両面マスクが完成する。
【0027】
次に、図2は、本発明の両面マスク(10)の上面図である。説明のために表パターン(20)はF文字とし、裏パターン(30)はL文字とした。該パターン内に検査用パターン(50)が含まれている。アライメントパターン(40)は描画系座標(100)上に配置されている。表裏パターン(20、30)は製品系座標(200)上に配置され、基準点(座標原点)は描画系座標(100)内に設定している。一般に両面マスク(10)は垂直方向に重なり、表パターンF(20)は正向き、裏パターンL(30)は反向きとなる。
【0028】
図3は、表裏パターンの向き方向を説明する上面図である。
【0029】
左側では、本発明の両面マスク(10)の表パターン(20)はF文字を正向きに描画したもので、右側は両面マスク(10)の裏パターン(30)はL文字を正向きに描画した時、表パターンは波線で表している。
【0030】
図4は、測定した表面のパターンと裏面のアライメントパターンのローテイションを比較し、その差分を補正するために、裏面のJOBファイル中よりアライメントパターン位置座標の補正変更方法を説明する図面である。実線は表パターン(20)を示し四隅に検査用パターン(50)が配置されている。同様に、波線は裏パターン(30)を示し四隅に検査用パターン(50)が配置されている。例えば、表パターン(20)は、仮に基準状態で正常位置に表現され、裏面パターンは、原点(この場合は中心位置)を中心に時計回り方向に回転したずれが発生している。そのローテイションの差分はθ’である。このローテイションの差分はθ’場合は、図上で解るように、表面の検査パターンと中心を結んだ直線とX軸の交差する角度をθとすると、変換後、裏面の検査パターンの角度は、θ± θ’となる。従って、変換後の座標(a’、b’)は、下記(1)式である。(a’、b’)=(cos(θ+θ’)×c、sin(θ+θ’)×c)?????(1)
(a’、b’):変換後の座標
【0031】
図5は、測定した表面のパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティを比較し、その差分を補正するために、裏面のJOBファイル中よりアライメントパターン位置座標の補正変更方法を説明する図面である。実線は表パターン(20)を示し四隅に検査用パターン(50)が配置されている。同様に、波線は裏パターン(30)を示し四隅に検査用パターン(50)が配置されている。例えば、表パターン(20)は、仮に基準状態で正常位置に表現され、裏面パターンは、原点(この場合は中心位置)を中心に、左下方向にずれが発生している。そのセントラリティの差分は(a+b/2)である。このセントラリティの差分は、図上で解るように、変換後の座標は、X軸方向に(a+b/2)補正し平行移動させ重ね合わせる方法である。同様に、Y軸方向も同じ方法によりセントラリティの差分を補正する。
【0032】
請求項2項に係る両面マスクを作成する方法におけるパターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定する方法を順次説明する。
【0033】
アライメントパターンの最外周の四隅に検査用パターンを描画する場合に、検査用パターンの形状は特に限定しないが、位置座標の測定に適した形状が好ましい。座標顕微鏡を用いて、ブランクのエッジ端部分から前記検査用パターンの座標を測定し、距離を算出する。
【0034】
エッジ端部分から検査用パターンの前記距離のずれから、セントラリティ及びローテイションを算出する。
【0035】
図6は、両面マスク(10)の平面図であり、両面マスクの作成方法において、パターンの位置精度のセントラリティ及びローテイションを測定する方法を説明するものである。
【0036】
両面マスク(10)はガラス基板のブランク(1)上に、例えば表用のパターンの四隅に検査用パターン(50)が配置されている。本発明の両面マスクのセントラリティ及びローテイションは前記検査用パターン(50)とブランク(1)端部との距離の測定値をもとに算出する方法を採用した。検査パターン(50)は、四隅、例えばa、b、c、dとし、各検査パターン(50)からブランク端部(1)距離を座標顕微鏡を用いて測定する。図上に記載のように、ax,ay,bx,by,cx,cy,dx,dyの距離を算出する。X方向のセントラリティ、Y方向のセントラリティは下記(2)式で、
Cx=(((ax+cx)/2)-((bx+dx)/2)))/2)Cy=(((ay+by)/2)-((cy+dy))/2))/2)????-(2)
Cx:X方向のセントラリティ
Cy:Y方向のセントラリティ
【0037】
セントラリティは、例えば左右のアライメントパターン(40)の中心点とブランクの中心点とのずれの距離であり、正しい配置は前記中心点と中心点が重なるものであり、この状態で、セントラリティは0となる。
【0038】
ローテイションは、各検査パターン(50)の傾き、例えばθを計算し、その平均値である。ローテイションは下記(3)式で示される。
θ=average(ARCSIN((by-ay)/E)、ARCSIN((ax-cx)/E)、ARCSIN((dx-bx)/E)、ARCSIN((cy-dy)/E)) ?????(3)
θ:ローテイション
【0039】
ローテイションは、アライメントパターン(40)とブランク(1)との傾きの角度であり、正しい配置はブランク(1)上に配置するアライメントパターン(40)の余白距離が上下、左右均等になるものであり、この状態で、ローテイションは0となる。
【0040】
上述したように、セントラリティ、ローテイションの実測値を数式に代入する本発明の方法((2)式、(3)式)が構築され、両面マスクにおいて、裏面パターンを描画する時、任意のパターンのセントラリティ、ローテイションが制御可能となるため、表面パターンと垂直方向の重ね合わせを揃えることが容易になった。
【0041】
【実施例】
次に、本発明の実施例に従って、以下に具体的に説明する。図7は、両面マスク(10)両面に、アライメントパターン(40)及び四隅に検査パターンを配置し、その内部エリアに実線で表した裏パターンと、波線の表パターンが配置されている。表裏のパターンは各々100mm角のパターンを形成した。実施例は本発明の製造方法で補正後、裏パターンを描画した両面マスクを実施例1に記述し、従来の方法は比較例1に記述した。表裏パターンの垂直方向の重ね合わせ精度の測定は、図7に示すA?Eの5ヶ所で測定した。
【0042】
<実施例1>
表パターンの検査パターンと裏用アライメントパターンとを検査比較し、その差分を算出した。裏パターンの描画はセントラリティ及びローテイションの前記差分を補正後、実施例1の両面マスクを作製した。(以下略)」

ウ 【図1】ないし【図7】
【図1】ないし【図7】にはそれぞれ下記のことが図示されている。
【図1】 両面マスク作成の工程図
【図2】 両面マスク上面図
【図3】 両面マスクの表裏関係を示す上面図
【図4】 アライメントマークの座標変換方法を説明する上面図
【図5】 アライメントマークの座標変換方法を説明する上面図
【図6】 アライメントマークの座標変換方法を説明する上面図
【図7】 アライメントマークの実施例を説明する上面図

(2)引用発明の認定
ア 引用例1の段落【0001】の「本発明は、ブランクの両面にパターンを有するフォトマスク等を作製する描画方法に係るもので、特に表面と裏面の垂直方向のパターン重ね合わせのずれを回避する技術に関する。」との記載、段落【0006】の「ブランクの両面にパターンをもつ構造のフォトマスク(以下、両面マスクと記す)を作成する方法」及び段落【0014】の「図1は、本発明の両面マスクの作成方法を説明する工程図である。」との記載を参酌すると、引用例1には「ブランクの両面にパターンを有するフォトマスク(両面マスク)の作成方法」が記載されていると認められる。
イ 引用例1の段落【0015】の「ブランク用ガラス基板は、ボロシリケート系又は石英ガラスを使用する。…(中略)…遮光用金属薄膜層はクロームまたは酸化クローム、モリブデンシリサイドの層を単層又は複数層積層させて形成する。本発明に用いる両面ブランクは前記ガラス基板の表、裏面に遮光用金属薄膜層を形成して作製する。前記遮光用金属薄膜は真空蒸着法、スパッタリング法により成膜する。次に、スピンコーター機を用いて、前記両面ブランクの表面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する。(工程(a)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は「(工程a)石英ガラス基板の表裏両面にクロームの層からなる遮光用金属薄膜層を形成して両面ブランク作製した後、前記両面ブランクの表面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程」を有していると認められる。
ウ 引用例1の段落【0016】の「次に、前記両面ブランクのレジスト層に表パターンを描画する。……、レジスト層を露光させてパターンの図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て表パターンを形成したフォトマスクができる。(工程(b)参照)」との記載及び段落【0017】の「……前記表パターンには検査用パターンが含まれている。」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程b)表側のレジスト層を露光させてパターンの図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て、検査用パターンを含む表パターンを形成したフォトマスクを形成する工程」を有していると認められる。
エ 引用例1の段落【0018】の「次に、前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する。(工程(d)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程d)前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程」を有していると認められる。
オ 引用例1の段落【0019】の「前記両面ブランクの裏面に、アライメントパターンを描画する。パターンを露光させて図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て、アライメントパターンを形成したフォトマスクができる。前記アライメントパターンには検査用パターンが含まれている。(工程(e)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程e)前記両面ブランクの裏面をパターンを露光させて図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て、前記両面ブランクの裏面に検査用パターンを含むアライメントパターンを形成する工程」を有していると認められる。
カ 引用例1の段落【0020】の「前記両面ブランクの裏面のアライメントパターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを本発明の方法により測定する。(工程(f)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程f)前記両面ブランクの裏面のアライメントパターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを測定する工程」を有していると認められる。
キ 引用例1の段落【0021】の「再度、前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する。(工程(g)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程g)再度、前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程」を有していると認められる。
ク 引用例1の段落【0022】の「前記測定した表面のアライメントパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションを比較し、その差分を補正して、裏面パターンをアライメントマーク(アライメントパターン中の基準点)でアライメント(位置合わせ)をとる方法で描画を行う。装置上で補正する機能がない場合は、裏面パターンのJOBファイル中のアライメントパターン読み込み位置座標を変更する。すなわち、前記差分をJOBファイルに登録したアライメントパターン位置座標の差分に変換して、アライメントをずらすことにより補正する方法である。(工程(h)参照)」との記載を参酌すると、段落【0017】の記載に照らすと「表面のアライメントパターン」は「表面のパターン」の誤記と認められるから、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程h)前記測定した表面のパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションを比較し、その差分を補正して、裏面パターンをアライメントマーク(アライメントパターン中の基準点)でアライメント(位置合わせ)をとる方法で描画を行う工程であって、装置上で補正する機能がない場合は、前記差分をJOBファイルに登録したアライメントパターン位置座標の差分に変換して、アライメントをずらすことにより補正する方法で行う工程」を有していると認められる。
ケ 引用例1の段落【0023】の「裏パターンの現像のみを行う。(工程(i)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程i)裏パターンの現像のみを行う工程」を有していると認められる。
コ 引用例1の段落【0024】の「両面ブランク裏面の前記裏面パターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを本発明の方法により測定する。前記裏パターンには検査用パターンが含まれている。(工程(j)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程j)両面ブランク裏面の前記裏面パターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを測定する工程」を有していると認められる。
サ 引用例1の段落【0025】の「前記測定により、前記の裏面パターンと表面パターンのセントラリティ及びローテイションの対比により、表面裏面パターンの重ねのずれに問題がないことを確認後、エッチング、レジスト層の剥膜し、本発明の両面マスクが完成する。(工程(k)参照)」との記載を参酌すると、引用例1の両面マスクの製造方法は、「(工程k)前記測定により、前記の裏面パターンと表面パターンのセントラリティ及びローテイションの対比により、表面裏面パターンの重ねのずれに問題がないことを確認後、エッチング、レジスト層を剥膜し、両面マスクを完成する工程」を有していると認められる。
シ 以上を総合すると、引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「ブランクの両面にパターンを有するフォトマスク(両面マスク)の作成方法であって、その製造工程が下記の工程からなる両面マスクの作成方法。
(工程a)石英ガラス基板の表裏両面にクロームの層からなる遮光用金属薄膜層を形成して両面ブランク作製した後、前記両面ブランクの表面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程
(工程b)表側のレジスト層を露光させてパターンの図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て、検査用パターンを含む表パターンを形成したフォトマスクを形成する工程
(工程d)前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程
(工程e)前記両面ブランクの裏面をパターンを露光させて図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て、前記両面ブランクの裏面に検査用パターンを含むアライメントパターンを形成する工程
(工程f)前記両面ブランクの裏面のアライメントパターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを測定する工程
(工程g)再度、前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程
(工程h)前記測定した表面のパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションを比較し、その差分を補正して、裏面パターンをアライメントマーク(アライメントパターン中の基準点)でアライメント(位置合わせ)をとる方法で描画を行う工程であって、装置上で補正する機能がない場合は、前記差分をJOBファイルに登録したアライメントパターン位置座標の差分に変換して、アライメントをずらすことにより補正する方法で行う工程
(工程i)裏パターンの現像のみを行う工程
(工程j)両面ブランク裏面の前記裏面パターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを測定する工程
(工程k)前記測定により、前記の裏面パターンと表面パターンのセントラリティ及びローテイションの対比により、表面裏面パターンの重ねのずれに問題がないことを確認後、エッチング、レジスト層を剥膜し、両面マスクを完成する工程」

(3)引用例2及び引用例2に記載された事項
拒絶理由通知書で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-21317号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】 アライメント光に対して非透光膜からなるマスクアライメント用パターンをウエハの表面に形成する工程と、上記パターンを基準として上記ウエハの表面側に設定されたマスクとの位置合わせを行なう工程と、上記ウエハの表裏面を反転させてその裏面を上記マスクに対向させる工程と、この表裏面の反転されたウエハとマスクとの位置合わせを上記パターンを基準として行なう工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
イ 段落【0005】ないし【0016】
「【0005】この発明は上記課題を解決するためになされたもので、簡単な手段で容易かつ安価に形成され、高精度なマスクアライメントを行なうことができる半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明による半導体装置の製造方法は、アライメント光に対して非透光膜からなるマスクアライメント用パターンをウエハの表面に形成する工程と、上記パターンを基準として上記ウエハの表面側に設定されたマスクとの位置合わせを行なう工程と、上記ウエハの表裏面を反転させてその裏面を上記マスクに対向させる工程と、この表裏面の反転されたウエハとマスクとの位置合わせを上記パターンを基準として行なう工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
【作用】上記製造方法によれば、ウエハの表裏面のマスクアライメントを上記ウエハの表面側に設定されたマスクで行なうものであるから、片面マスクアライメントの露光機を用いて転写することが可能となり、これによつて製造された半導体集積回路自体が安価となる。また、上記ウエハの表裏面のマスクアライメントを上記ウエハの表面に形成された同一のマスクアライメント用パターンを基準として行なうものであるから、上記ウエハの表裏面におけるマスクとの位置合わせが高精度に達成される。しかも、上記マスクアライメント用パターンはウエハの片面のみに形成すればよいから、上記パターンの形成が容易である。
【0008】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面にもとづいて説明する。図1は、この発明による一実施例をウエハの表面にマスクアライメント用パターンを形成するまでの製造方法を説明する断面図である。同図(a)で示すように、たとえば、ケイ素Si からなる半導体ウエハ1の表面1aに、これを酸化させることによつて、2酸化ケイ素(SiO2)からなる絶縁層2が被着形成される。つぎに、同図(b)で示すように、上記絶縁層2の表面にホトレジスト膜(感光性塗膜)3が被着されたのち、同図(c)で示すように、所望の食刻用パターン4が形成されたマスク5を対向配設し、このマスク5を通して紫外線のような活性化光線Aを上記ホトレジスト膜3に照射する。この光線Aの照射で、上記ホトレジスト膜3における露光された部分3aと、露光されていない部分3bとを形成し、上記露光された部分3aを定着するとともに、露光されていない部分3bを洗浄して、同図(d)で示すように、上記ホトレジスト膜3に所望の食刻用パターンをもつた開口3cが形成される。
【0009】つぎの同図(e)で示す食刻工程において、上記ホトレジスト膜3に対して耐食性を有し、かつ上記絶縁層3を腐蝕させることができる、たとえば、フツ化水素酸からなる食刻液を用いると、上記ホトレジスト膜3の小孔3cに対応する部分の絶縁層2が食刻されて、この絶縁層2に小孔2aが形成される。その後、上記ホトレジスト膜3は溶剤で除去され、上記半導体ウエハ1の表面に小孔2aを有する絶縁層2が同図(f)で示すように被着形成される。さらに、上記半導体ウエハ1の露出表面および絶縁層2の表面に、同図(g)で示すように、たとえば、アルミニウム(Al)からなる非透光膜6が被着される。上記ウエハ1上の絶縁層2は、フツ化水素酸による腐蝕処理その他の適当な手段で除去されて、同図(h)で示すように、上記半導体ウエハ1の表面1aにマスクアライメント用パターン7が被着形成される。
【0010】図2は、図1の後工程において上記ウエハの表面に成膜して食刻する製造工程の一例を説明する断面図である。同図(a)で示すように、半導体ウエハ1の表面1aに2酸化ケイ素(SiO2)からなる絶縁層21を被着形成し、その表面にホトレジスト膜31を同図(b)のように被着したのち、同図(c)で示すように、食刻用マスク51を上記ウエハ1の表面1aのマスクアライメント用パターン7と位置合わせをして露光現像する。これを洗浄して、同図(d)のような所望の食刻用パターンをもつたホトレジスト膜31が形成される。
【0011】つぎの同図(e)で示す食刻工程において、上記ホトレジスト膜31の小孔31aを通して上記絶縁層21を腐蝕させたのち、上記ホトレジスト膜31を除去すると、半導体ウエハ1の表面に小孔21aを有する絶縁層21が同図(f)で示すように被着形成される。
【0012】図3は、図2の後工程において上記ウエハの裏面に成膜して食刻する製造工程の一例を説明する断面図である。同図(a)で示すように、半導体ウエハ1の表裏面を反転させて、その裏面1bに2酸化ケイ素(SiO2)からなる絶縁層22を被着形成し、その裏面にホトレジスト膜32を同図(b)のように被着したのち、同図(c)で示すように、食刻用マスク52を上記ウエハ1の裏面1bのマスクアライメント用パターン7と位置合わせをして露光現像する。
【0013】上記位置合わせに際し、アライメント光Bとして赤外線やレーザ光が使用され、これらの光はウエハ1を透過するけれども、上記パターン7を形成するアルミニウム(Al)を透過しないから、上記マスク52とウエハ1との位置合わせを適確に行なうことができる。その後、同図(e)のようにホトレジスト膜32の小孔を通して上記絶縁層22を腐蝕させたのち、上記ホトレジスト膜32を除去して、同図(f)のように、上記半導体ウエハ1の裏面1bに小孔22aを有する絶縁層22が被着形成される。
【0014】上述のようにして、半導体ウエハ1にはその表裏面1a,1bに絶縁層21,22が形成され、これら各絶縁層21,22の小孔21a,22aから不純物を注入すると、上記半導体ウエハ1の表裏面1a,1bに半導体層8,9が形成されて、図4で示すような半導体装置が製造される。
【0015】上記製造方法によれば、ウエハ1の表裏面1a,1bのマスクアライメントを上記ウエハ1の表面1a側に設定されたマスク51,52で行なうものであるから、片面マスクアライメントの露光機を用いて転写することが可能となり、これによつて製造された半導体集積回路自体が安価となる。また、上記ウエハ1の表裏面1a,1bのマスクアライメントを上記ウエハ1の表面1aに形成された同一のマスクアライメント用パターン7を基準として行なうものであるから、上記ウエハ1の表裏面におけるマスク51,52との位置合わせが高精度に達成される。しかも、上記マスクアライメント用パターン7はウエハ1の片面のみに形成すればよいから、上記パターンの形成が容易である。
【0016】
【発明の効果】以上のように、この発明の製造方法によれば、簡単な手段で容易かつ安価に形成され、高精度なマスクアライメントを行なうことができる。」
ウ 【図1】ないし【図3】
【図1】ないし【図3】にはそれぞれ次のことが図示されている。
【図1】 ウエハの表面にマスクアライメント用パターンを形成するまでの製造方法を説明する断面図
【図2】 図1の後工程においてウエハの表面に成膜して食刻する製造工程の一例を説明する断面図
【図3】 図2の後工程においてウエハの裏面に成膜して食刻する製造工程の一例を説明する断面図

(4)引用例3及び引用例3に記載された事項
拒絶理由通知書で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-43860号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 段落【0002】ないし【0005】
「【0002】
【従来の技術】図1に基づいて、透明基板の表面にフォトリソグラフィ法によってパターニングを施す従来方法を説明する。先ず、図1(a)に示すように、透明基板1の表面にパターニングを施す導電膜2を形成し、この導電膜2の表面にポジ型フォトレジスト膜3を形成する。尚、透明基板1の隅部にはアライメントマーカーMを形成している。
【0003】次いで、同図(b)に示すように、露光機に設けた顕微鏡でアライメントマーカーMを基準に透明基板1をアライメントした後、フォトレジスト膜3上にマスク4を重ね、この状態で同図(c)に示すように、露光を行い、光(紫外線)が当った部分を可溶化する。
【0004】この後、同図(d)に示すように、現像にて露光部(可溶化した部分)を洗い流し、同図(e)に示すように、エッチングを行い、更に同図(f)に示すように、フォトレジスト膜3をアッシングにて除去することで、パターニングを施す。
【0005】そして、透明基板1の裏面にもパターニングを施すには、図2に示すように、透明基板1の裏面側に導電膜2及びフォトレジスト膜3を形成するとともに、透明基板1の表面側に設けたアライメントマーカーMを裏面側から顕微鏡で見てアライメントを行い、フォトレジスト膜3上にマスク4を重ね、この後は前記と同様の手順によって裏面側にもパターニングを施すようにしている。」
イ 【図1】及び【図2】
【図1】及び【図2】にはそれぞれ次のことが図示されている。
【図1】 基板の表面側にパターニングを施す従来法の工程図
【図2】 裏面側のアライメントを行う従来法を説明した図

(5)引用例4及び引用例4に記載された事項
拒絶理由通知書で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-100713号公報(以下「引用例4」という。)には、図面とともに以下事項が記載されている。
ア 段落【0001】ないし【0074】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、両面に露光可能な光透過性の被露光基板、露光装置、露光方法、及びデバイスの製造方法に関し、特にデバイスとして表面に微細なパターンが形成されたいわゆる回折光学素子に適用して好適な発明である。
…(中略)…
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明の被露光基板は、両面に露光されるものであって、アライメント光に対して光透過性を有し、一方の面に、両面のそれぞれの露光時に用いる位置合わせ用のアライメントマークを備える。
…(中略)…
【0014】本発明の露光装置の一態様は、前記所定パターンを通過した照明光を前記被露光面に指向する第1光学系と、前記アライメントマークを照明し、その反射光を検出して位置合わせを行う第2光学系とを備え、前記補正光学系が前記第2光学系に設けられている。
…(中略)…
【0017】本発明の露光方法は、前記被露光基板に所定パターンを投影露光する露光方法であって、前記一方の面を被露光面として露光する際には、表面に存する前記アライメントマークを照明して位置合わせを行い、他方の面を被露光面として露光する際には、裏面に存する前記アライメントマークを照明して位置合わせを行う。
…(中略)…
【0032】光源9からの光束は照明用レンズ8により集光し、ハーフミラー9で反射させ、結像レンズ7を介しウェハー5面上のアライメントマークAMを照明している。10はCCDカメラである。結像レンズ7はウェハー5面上のアライメントマークAMをハーフミラー19,18を介してCCDカメラ10面上に結像している。20は画像処理回路であり、CCDカメラ10面上に結像したウェハー5面上のアライメントマークAMの位置情報よりレチクル4とウェハー5との位置関係を求めている。
…(中略)…
【0073】本実施形態においては、両面に露光可能であって片面のみにアライメントマークが設けられた光透過性の被露光基板であるウェハー5を用いて、先ず一方の被露光面、例えばアライメントマークが設けられた第1面に当該アライメントマークを使用した位置合わせを行った後に露光する。次いで、ウェハー5を裏返して設置し、他方の被露光面である第2面を露光する。ここで、アライメントマークはその裏面(第1面)に設けられたかたちとなるが、所定の補正光学系31を用いて集光位置をシフトさせ、裏面に存するアライメントマークを照明して同様に位置合わせを行う。このとき、第1面の露光と同一のアライメントマークを用いるため、第1面及び第2面の双方にそれぞれアライメントマークを設ける場合に比べて正確な位置合わせが可能となり、コストパフォーマンスにも優れている。更に、第2面を第1面と自己整合的に露光することができるため、両面の露光パターンが互いに強い関連性を持つ回折光学素子の露光を正確に行うことができる。
【0074】また、本実施形態では、両面が露光されて各々所定パターンの形成された素子として回折光学素子を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば被露光基板を半導体ウェハーとして、半導体メモリ等の素子を形成する場合にも適用可能である。」
イ 【図1】及び【図12】
【図1】及び【図12】にはそれぞれ次のことが図示されている。
【図1】 第1の実施形態のステッパーの概略構成を示す模式図
【図12】 第1の実施形態において、裏面に存するアライメントマークを照明して位置合わせを行う様子を示す模式図

(6)引用例5及び引用例5に記載された事項
拒絶理由通知書で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-214118号公報(以下「引用例5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 特許請求の範囲の欄
「 半導体基板主面のパターンを位置合わせマークとして用いて半導体裏面に所望のパターンを形成する半導体製造装置において、両面を同時に可視光で観察するのではなく、半導体基板裏面側から赤外線を透過させ、反射してくる赤外線を検知し、半導体基板主面側のパターンを認識する事を特徴とする半導体製造装置。」
イ 第1頁左欄第13ないし第2頁左下欄第2行
「〔産業上の利用分野〕
この発明はウエハを裏返しにした状態で下側面のパターンと上側面のパターンを同時に観察しマスク合せの為のアライメントを行う半導体装置に関するものである。
…(中略)…
〔課題を解決するための手段〕
この発明に係る赤外線アライメント法は観察光線を可視光線から赤外線に変え、両面を同時に観察するのではなく、基板を透過させ反射してくる赤外線のコントラストの違いを赤外線カメラで検知し、CRTモニタ上に映し出す構造にしたものである。
〔作用〕
この発明における赤外線アライメント方法は赤外線が、例えばGaAsウエハを透過するという特徴を利用してこれにより、GaAs中を透過し反射して来た赤外線のコントラストの違いを検知する事にパターン形状を認識する事ができる。
以下、この発明の一実施例を図に基づいて説明する。第1図(a)はこの発明の半導体製造装置のアライメント方法の構成図を示したもので、図において、(1)はGaAsウエハ、(2)は対物レンズ、(3)は赤外線カメラ、(4)は信号線、(5)はCRTモニタ、(6)は赤外線ランプである。
即ち、ウエハ(1)の裏側から赤外線を透過させ、第1図(b)のウエハ拡大断面図に示すように、反射してくる赤外線のコントラストの違い(A’)(B’)(C’)を対物レンズ(2)を介して赤外線カメラ(3)で検知し、CRTモニタ(5)上へ映し出す方法を取つている。ここで特筆すべき事はGaAs基板は赤外線を透過するという事で、基板を透過した赤外線は表面のパターンの材質(GaAs,SiN等の無機膜または金属膜等)によりその反射率が異なる為、反射してくる赤外線のコントラストが異なるという事の2点である。この2点を利用して赤外線の反射光をカメラで検知させる様にした。
なお上記実施例においては半導体基板はGaAsウエハと説明したが赤外線を透過する物質、例えばSi InGaAs等のウエハであっても同一の効果を得ることは論をまたない。
〔発明の効果〕
以上のようにこの発明によれば、マーク検知用の光線を可視光線から赤外線に変え、さらに基板を透過させ、反射してくる赤外線を検知する様にしたので、ウェハの下側に対物レンズを設置する必要がなく、装置を小型化および簡略化する事が可能になる。」
イ 第1図及び第2図
第1図(a)には、半導体製造装置のアライメント方法の構成図が、第1図(b)にはウェハの拡大断面図が、第2図は従来の半導体製造装置のアライメント方法の構成図がそれぞれ図示されている。

(7)引用例6及び引用例6に記載された事項
拒絶理由通知書で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-166877号公報(以下「引用例6」という。)には、図面とともに以下事項が記載されている。
ア 段落【0015】ないし段落【0035】
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の光半導体素子の製造方法は、受光部を有する光半導体素子を半導体ウエハに形成する光半導体素子の製造方法であって、(a)半導体素子を半導体ウエハに形成すると同時に、半導体ウエハの半導体素子が形成されない領域にフォトマスクとの位置決め用のマークを形成する第1の工程と、(b)半導体素子が形成されていない領域であって、マークの形成領域を含む領域にテープを貼付し、マークを被覆する第2の工程と、(c)半導体ウエハの表面全体に感光性の黒色レジストを塗布する第3の工程と、(d)テープを半導体ウエハから剥離し、マークを露出させる第4の工程と、(e)検出されたマークの位置に従って、半導体ウエハとフォトマスクとの位置決めを行う第5の工程とを備えることを特徴とする。
…(中略)…
【0023】次いで、テープを半導体ウエハから剥離し、マークを露出させる。この結果、黒色レジストが完全な遮光性を有していても、光によるマークの検出が可能となる。引き続き、検出されたマーク位置に従って、半導体ウエハとフォトマスクとの位置決めを行う。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の光半導体素子の製造方法の実施の形態を説明する。なお、図面の説明にあたって同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】図1および図2は、本発明の光半導体素子の製造方法の一実施形態の工程図である。なお、図中、左側には半導体ウエハを上方から見た場合の態様を、右側には半導体ウエハの断面図を示す。図1および図2に示すように、本実施形態の光半導体素子の製造方法では、まず、半導体ウエハ100にホトリソグラフィ工程、デポジッション工程、エッチング工程などの工程を施して半導体素子110を多数形成すると同時に、半導体ウエハ100の半導体素子110が形成されていない領域にフォトマスクとの位置決め用のマーク120を形成する(図1(a)参照)。ここで、フォトマスクとの位置決め用のマーク120は、光半導体素子の製造工程のホトリソグラフィ工程で素子のパターン露光をする際に用いるフォトマスクと半導体素子との位置決め用マークを用いることができる。なお、半導体ウエハ100には、ホトリソグラフィ工程での方向検知用に半導体ウエハ100の結晶学的基準方向を示す切り欠きであるオリエンテーションフラット130が設けられている。マーク120は、オリエンテーションフラット130に対し、ほぼ平行に2箇所設けられる。
【0026】次に、半導体素子110が形成されていない領域であって、マーク120の領域を含む領域にマスキングテープ200を貼付してマーク120を被覆(図1(b)参照)後、半導体ウエハ100の表面全体に感光性の黒色レジスト300を塗布する(図1(c)参照)。感光性の黒色レジスト300の塗布にあたっては、半導体ウエハ100をレジストコーティング用の回転塗布装置にセットして、液状の感光性の黒色レジスト剤を滴下し、1000rpmの回転により所定の膜厚となるように塗布する。図1(c)に示すように、黒色レジスト300は、半導体素子110の形成面の全面を覆うとともに、マスキングテープ200上も覆う。
…(中略)…
【0028】次いで、感光性の黒色レジフト300が塗布された半導体ウエハ100に80℃で30分間程度の加熱処理を施して、感光性の黒色レジスト300をプリベークし、以後の露光時に寸法不良を誘発する原因となる感光性の黒色レジスト300の溶剤を蒸発させる。このプリベークにより、半導体ウエハ100と感光性の黒色レジストとは、ある程度密着した状態となる。
【0029】次に、マスキングテープ200を半導体ウエハ100から剥離し、マーク120を露出させる(図2(a)参照)。この結果、感光性の黒色レジスト300が完全な遮光性を有していても、光によるマーク120の検出が可能となる。
【0030】引き続き、マスクアライナ装置によって、検出されたマーク120の位置に従って半導体ウエハ100とフォトマスク(図示せず)との位置決めを行う。そして、フォトマスクを介して感光性の黒色レジスト300を露光し、現像、リンス後ポストキュア(230℃、15分間)して、露光された感光性の黒色レジストの不要部を除去し、パターン付けを完了する。こうして、半導体素子110の表面に遮光膜の機能を果たす黒色レジスト300が所定のパターンで形成される(図2(b)参照)。
…(中略)…
【0035】
【発明の効果】以上、詳細に説明した通り、本発明の光半導体素子の製造方法によれば、半導体ウエハのフォトマスクとの位置決め用マークをテープで被覆して感光性の黒色レジストを塗布し、その後にテープを剥離してマークを露出させて黒色レジストのホトリソグラフィ工程でのフォトマスクとの位置決めを行うこととしたので、光半導体素子のパターンをホトリソグラフィ工程で露光する際に用いるフォトマスクと半導体素子との位置決め用マークを利用することができ、従来の製造装置を変更することなく完全な遮光性を有する黒色レジストが形成された光半導体素子を製造することができる。」
イ 【図1】及び【図2】
【図1】及び【図2】には、光半導体素子の製造方法の説明図が図示されている。

(8)引用例7及び引用例7に記載された事項
拒絶理由通知書で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-274013号公報(以下「引用例7」という。)には、図面とともに以下事項が記載されている。
ア 【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体基板上に予め形成された位置検出マークを有する半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造工程における露光装置のアライメント、もしくは現像後の重ね合わせ測定などによる位置検出では、半導体装置を構成する各薄膜層に位置検出マークを形成し、それらの位置検出マークを可視光及びレーザー光を用いることで検出している。例えば露光装置のアライメントに使用する位置検出マークとして数μmの正方形上のパターンが等間隔で連なった回折格子マークが、また重ね合わせ測定に使用する位置検出マークとして10?数十μmの正方形上のパターンを重ね合わせたマークが利用されている。
…(中略)…
【0004】また図4はアライメント用の位置検出マークの場合である。層間絶縁膜5及び接続孔の埋め込む第1配線膜6で形成されたアライメント用の位置検出マークを、第2配線膜7が被覆し、フォトレジスト4がその上に塗布されており、このような膜構成でアライメントが実行されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】…(中略)…
【0006】また図4はアライメント用の位置検出マークを示しているが、このように層間絶縁膜5と埋め込み第1配線膜6を化学的機械研磨法などで平坦化し、第2配線膜7として金属薄膜を成膜した場合には、回折・干渉及び画像処理のいずれの方式によっても位置検出マークを検出できないという問題が発生する。
【0007】
【課題を解決するための手段】以上の様な課題を解決するために本発明では、予め位置検出用に形成された位置検出マークを含む半導体基板上に、少なくとも一層の薄膜が成膜されている半導体装置の製造方法において、半導体基板に形成された前記位置検出マークを含む領域に成膜された薄膜を選択的に除去し、前記位置検出マークを露出させる工程を有することを特徴とする。また予め半導体基板上に形成された位置検出マークを検出する工程を有する半導体装置の製造方法において、前記請求項1記載の半導体装置の製造方法によって露出された位置検出マークを検出する工程を有することを特徴とする。
【0008】
【実施例】…(中略)…
【0014】次に位置検出マークが露光装置のアライメントマークである場合の本発明の実施例が図2であり、層間絶縁膜の接続孔に配線膜を形成する例である。
【0015】まず前工程で、ゲート電極パターンなどが形成された半導体基板1上に、層間絶縁膜5が成膜されており、接続孔と同時に形成されたアライメントマークの段差部には、例えばタングステン等の第1配線膜6が化学的機械研磨法によって埋め込みで形成されている。さらに層間絶縁膜5及び第1配線膜を被覆して、アルミニウム等の第2配線膜が成膜されている(図2(a))。従来の半導体装置の製造方法ではこのような膜構成のもとで実施されており、図4に示すようなフォトレジストが塗布されたアライメント時では、層間絶縁膜5に形成されて第1配線膜で埋め込まれたアライメントマークが、平坦化されたアルミニウムなどの金属膜によって検出できなくなる。
【0016】本発明では、以下に示す工程によって第2配線層に配線パターンを形成する前に、アライメントマークを構成する第1配線膜6及びその周辺の層間絶縁膜5をのみを露出させる。
【0017】まず図2(a)の膜構成上にフォトレジスト4を塗布する(図2(b))。続けて、アライメントマークを構成する第1配線膜6及びその周辺の層間絶縁膜5のみを開口させるフォトマスクパターンを介して、前記フォトレジスト4を露光し、さらに現像によって除去する(図2(c))。この時のフォトマスクパターンのアライメントにも、アライメントマークが必要となるが、本実施例ではそのアライメントマークは検出できない。しかしながら、図2(c)において開口させる領域が、アライメントマークを使用せずに露光装置の機械的なアライメント精度で可能な程度に大きければ、十分実施可能である。例えば、露光装置の機械的なアライメント精度が10μm程度で、アライメントマークの寸法が100μm程度ならば、200μmの寸法の開口部で十分アライメント可能である。
【0018】さらに、前記開口されたフォトレジスト4をエッチングマスクとして、例えばBCl3,Cl2の混合ガスによって前記第2配線膜7をドライエッチングし、アライメントマークを構成する第1配線膜6及び層間絶縁膜6を露出させる(図1(d))。
【0019】この後の工程では従来と同様に、フォトレジストを塗布し、配線パターンを有するフォトマスクパターンを露光・現像し、フォトレジストパターンを形成する。この時の配線パターンのアライメントでは、図2(e)に示すように既にアライメントマーク上の第2配線膜が除去されているため、アライメントマークが遮蔽されることなく位置検出が可能となる。
…(中略)…
【0022】
【発明の効果】…(中略)…
【0023】第2の実施例ではより本発明の効果が顕著である。従来の半導体装置の製造方法では遮蔽されて検出不可能であった位置検出マークであっても、本発明を適用することにより、位置検出マーク上の膜を除去することで位置検出マークが露出され、高精度の位置検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
イ 【図2】及び【図4】
【図2】には、半導体装置の製造方法の第2の実施例の断面図が、【図4】には、従来の半導体装置のアライメント時の断面図がそれぞれ図示されている。

(9)引用例8及び引用例8に記載された事項
拒絶理由通知書で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-45933号公報(以下「引用例8」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 段落【0002】ないし【0013】
「【0002】
【従来の技術】
厚膜レジストで両面レジストパターンを形成する場合、厚膜レジストは液状であるため、基板の表裏に対して同時に厚膜レジストを塗布することができず、片面ずつレジスト塗布、ベーク、露光及び現像が行われる。
【0003】
表裏のレジストパターンの位置を精度良く露光するため、両面アライメント機能を有する片面露光機が用いられている。
【0004】
次に、従来の両面レジストパターンの形成方法を説明する。
【0005】
図2(A)?(G)は従来の両面レジストパターンを形成する工程を示す図である。
【0006】
まず、基板110の表面110aに所望の厚さの表面用ネガレジスト150を塗布し、ベークする(図2(A)参照)。
【0007】
次に、両面アライメント用アライメントマーク130a,130bとレジストパターン130cとが描画されている表面用マスク130をネガレジスト150の表面に載置し、露光し、ネガレジスト150にアライメントマーク130a,130bとレジストパターン130cとを転写する(図2(B)参照)。
【0008】
その後、現像を行い、基板110の表面110aにアライメントマーク151,152とレジストパターン153とを形成する(図2(C)参照)。
【0009】
次に、アライメントマーク151,152とレジストパターン153とを形成した表面110aを下側にして基板110の裏面110bに所望の厚さの裏面用ネガレジスト160を塗布し、ベークする(図2(D)参照)。
【0010】
その後、両面アライメント用アライメントマーク140a,140bとレジストパターン140cとが描画されている裏面用マスク140をネガレジスト160の表面に載置する(図2(E)参照)。このとき、前述した片面露光機によって、基板110の表面110aに形成されたアライメントマーク151,152と裏面用マスク140に描画されているアライメントマーク140a,140bとの位置合わせを行う。
【0011】
位置合わせ後、露光し、ネガレジスト160にアライメントマーク140a,140bとレジストパターン140cとを転写する(図2(F)参照)。
【0012】
その後、現像を行い、基板110の裏面110bにアライメントマーク161,162とレジストパターン163とを形成する。
【0013】
その結果、基板110の表面110aにアライメントマーク151,152とレジストパターン153とが形成されるとともに、裏面110bにアライメントマーク161,162とレジストパターン163とが形成される(図2(G)参照)。」
イ 【図2】
【図2】には、従来の両面レジストパターンを形成する工程を示す図が図示されている。

4 本願発明と引用発明の対比
(1)本願発明と引用発明における発明特定事項の対応関係
引用発明における「石英ガラス基板」、「ブランク裏面」、「ブランク表面」及び「クロームの層からなる遮光用金属薄膜層」が、それぞれ、本願発明の「透明基板」、「透明基板の他方の面(上面)」、「透明基板の一方の面(下面)」及び「遮光層」に相当することは明らかである。また、引用発明における「裏パターン」、「表パターン」は、それぞれ、本願発明の「透明基板の他方の面(上面)」に形成される「メインパターン」に相当するパターン及び「透明基板の一方の面(下面)」に形成される「メインパターン」に相当するパターンを包含していることは明らかである。

(2)本願発明と引用発明の対比
以下、上記「(1)」を踏まえて、本願発明と引用発明を、本願発明の発明特定事項の記載の順に従って対比する。
引用発明における「ブランクの両面にパターンを有するフォトマスク(両面マスク)の作成方法であって、その製造工程が下記の工程からなる両面マスクの作成方法」を本願発明における「表裏両面にパターンを有するフォトマスク(いわゆる両面マスク)の作成方法において、その製造工程が下記の工程からなることを特徴とする両面マスクの作成方法」と対比すると、両者は「表裏両面にパターンを有するフォトマスク(いわゆる両面マスク)の作成方法」の点で一致する。
引用発明における「(工程a)石英ガラス基板の表裏両面にクロームの層からなる遮光用金属薄膜層を形成して両面ブランク作製した後、前記両面ブランクの表面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程」及び「(工程b)表側のレジスト層を露光させてパターンの図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て検査用パターンを含む表パターンを形成したフォトマスクを形成する工程」を本願発明における「(a)透明基板の一方の面(下面)に遮光層を形成し、リソグラフィー手法により、転写有効領域内に該遮光層からなるメインパターンと、転写有効領域外に該遮光層からなるアライメントマークを形成する工程」と対比する。引用発明における「表パターン」は「両面マスク」の被転写パターンであるから、これが「両面マスク」の転写有効領域内に形成されていることは明らかであるから、両者は「(a)透明基板の少なくとも一方の面(下面)に遮光層を形成し、リソグラフィー手法により、転写有効領域内に該遮光層からなるメインパターンを形成する工程」の点で一致する。
引用発明における「(工程a)石英ガラス基板の表裏両面にクロームの層からなる遮光用金属薄膜層を形成して両面ブランク作製した後、前記両面ブランクの表面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程」を本願発明における「(b)透明基板の他方の面(上面)の転写有効領域に遮光層を形成する工程」と対比すると、両者は「(b)透明基板の他方の面(上面)の少なくとも転写有効領域に遮光層を形成する工程」の点で一致する。
引用発明における「(工程g)再度、前記両面ブランクの裏面に光感光性のレジスト樹脂を塗布する工程」を本願発明における「(c)透明基板の他方の面(上面)の全面にレジスト層を形成する工程」と対比すると、引用発明において光感光性のレジスト樹脂は全面に塗布するのが通常であるから、両者は、「(c)透明基板の他方の面(上面)の全面にレジスト層を形成する工程」の点で一致する。
引用発明における「前記測定した表面のアライメントパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションを比較し、その差分を補正して、裏面パターンをアライメントマーク(アライメントパターン中の基準点)でアライメント(位置合わせ)をとる方法で描画を行う工程であって、装置上で補正する機能がない場合は、前記差分をJOBファイルに登録したアライメントパターン位置座標の差分に変換して、アライメントをずらすことにより補正する方法で行う工程」を本願発明における「(d)透明基板の他方の面(上面)からレジスト層と透明基板を通して、透明基板の一方の面(下面)に形成されたアライメントマークのレーザー光による反射像を認識し、該アライメントマークの座標を測定し、前記一方の面(下面)のアライメントマークの座標を基準座標とすることでメインパターンのアライメントを調整して、他方の面(上面)のレジスト層にメインパターンを描画する工程」と対比すると、両者は、「透明基板の一方の面(下面)側のメインパターンと透明基板の他方の面(上面)側のメインパターンを位置を合わせるように、透明基板の他方の面(上面)側のメインパターンのアライメントを調整して、他方の面(上面)のレジスト層にメインパターンを描画する工程」の点で一致する。
引用発明における「前記測定した表面のアライメントパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションを比較し、その差分を補正して、裏面パターンをアライメントマーク(アライメントパターン中の基準点)でアライメント(位置合わせ)をとる方法で描画を行う工程であって、装置上で補正する機能がない場合は、前記差分をJOBファイルに登録したアライメントパターン位置座標の差分に変換して、アライメントをずらすことにより補正する方法で行う工程」、「(工程i)裏パターンの現像のみを行う工程」、「(工程j)両面ブランク裏面の前記裏面パターンの位置精度、すなわち、セントラリティと及びローテイションを測定する工程」及び「(工程k)前記測定により、前記の裏面パターンと表面パターンのセントラリティ及びローテイションの対比により、表面裏面パターンの重ねのずれに問題がないことを確認後、エッチング、レジスト層を剥膜し、両面マスクを完成する工程」を本願発明における「(e)リソグラフィー手法により、他方の面(上面)の遮光層にメインパターンを形成して、上面の遮光層からなるメインパターンを形成する工程」と対比すると、両者は「(e)リソグラフィー手法により、他方の面(上面)の遮光層にメインパターンを形成して、上面の遮光層からなるメインパターンを形成する工程」の点で一致する。

(3)本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
以上を総合すると、本願発明と引用発明は、
「表裏両面にパターンを有するフォトマスク(いわゆる両面マスク)の作成方法において、その製造工程が下記の工程を備えた両面マスクの作成方法。
(a’)透明基板の少なくとも一方の面(下面)に遮光層を形成し、リソグラフィー手法により、転写有効領域内に該遮光層からなるメインパターンを形成する工程
(b’)透明基板の他方の面(上面)の少なくとも転写有効領域に遮光層を形成する工程
(c)透明基板の他方の面(上面)の全面にレジスト層を形成する工程
(d’)透明基板の一方の面(下面)側のメインパターンと透明基板の他方の面(上面)側のメインパターンの位置を合わせるように、透明基板の他方の面(上面)側のメインパターンのアライメントを調整して、他方の面(上面)のレジスト層にメインパターンを描画する工程
(e)リソグラフィー手法により、他方の面(上面)の遮光層にメインパターンを形成して、上面の遮光層からなるメインパターンを形成する工程」
の点で一致し、次の相違点1ないし相違点3において相違する。

<相違点1>(工程(d’)に関連した相違点)
透明基板の一方の面(下面)側のメインパターンと透明基板の他方の面(上面)側のメインパターンの位置を合わせるように、透明基板の他方の面(上面)側のメインパターンのアライメントを調整するに当たり、本願発明においては、透明基板の他方の面(上面)からレジスト層と透明基板を通して、透明基板の一方の面(下面)に形成されたアライメントマークのレーザー光による反射像を認識し、該アライメントマークの座標を測定し、前記一方の面(下面)のアライメントマークの座標を基準座標とすることでメインパターンのアライメントを調整するという方法を採用しているのに対し、引用発明はこのような方法を採用しておらず、測定した表面のパターンと裏面のアライメントパターンのセントラリティ及びローテイションを比較し、その差分を補正して、裏面パターンをアライメントマーク(アライメントパターン中の基準点)でアライメント(位置合わせ)をとる方法で描画を行う工程であって、装置上で補正する機能がない場合は、前記差分をJOBファイルに登録したアライメントパターン位置座標の差分に変換して、アライメントをずらすことにより補正する方法で行う点。

<相違点2> (工程(b’)に関連した相違点)
本願発明の透明基板の他方の面(上面)側の遮光層は透明基板の他方の面(上面)の転写有効領域に形成されるのに対し、引用発明のブランク裏面側の遮光用金属薄膜層にはこのような限定がなく全面に形成されると考えられる点。

<相違点3>(工程(a’)に関連した相違点)
本願発明においては、透明基板の一方の面(下面)に遮光層を形成する工程と透明基板の他方の面(上面)に遮光層を形成する工程が別工程で行われるとともに、透明基板の一方の面(下面)に遮光層を形成する工程と透明基板の他方の面(上面)に遮光層を形成する工程との間に、透明基板の一方の面(下面)にリソグラフィー手法により、転写有効領域内に該遮光層からなるメインパターンと、転写有効領域外に該遮光層からなるアライメントマークを形成する工程が行われているのに対し、引用発明においては、石英ガラス基板の表裏両面にクロームの層からなる遮光用金属薄膜層を形成して両面ブランク作製した後に、表側のレジスト層を露光させてパターンの図形を形成し、現像工程、エッチング及びレジスト層を剥膜する工程を経て、検査用パターンを含む表パターンを形成したフォトマスクを形成する工程を行う点。

5 相違点の検討・判断
(1)相違点1及び相違点2について
下面側のパターンに上面側のパターンを位置合わせするために、下面に設けられたアライメントマークを基準にして、上面側から基板を通してアライメントマークの位置を捉えて、上面側のパターンを下面側のパターンに位置合わせすることは、本願の出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、引用例2ないし引用例5を参照)。したがって、このような位置合わせの手法を引用発明に適用することを試みることは当業者が適宜なし得ることである。そして、引用発明おいては、両面ブランクの裏面に遮光用金属薄膜層が存在するので、反対側の面(表面)にアライメントマークを設けても裏面側からは見ることができないが、このようにアライメントマークの検知を邪魔する層がある場合にこれが存在しないようにすればいいことは、引用例3、引用例6及び引用例7等に照らせば、当業者には自明であると認められる。さらに、基板の反対側に設けたアライメントマークを用いて位置合わせをする具体的技術として、引用例2には、上面側からウエハ1(「基板」に相当する。)及びホトレジスト膜を透過するレーザ光であるアライメント光と、ウエハ1の下面に設けられた前記アライメント光を透過しないアルミニウム製のアライメントマークを用いて位置合わせを行うことが記載されており(引用例2の段落【0013】を参照)、アライメント光を用いた位置合わせ手段として、アライメントマークからの反射像を認識することは、本願の出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、引用例4及び引用例5を参照)。
これらを踏まえれば、両面ブランクを構成する透明基板である石英ガラス基板上の表パターンと裏パターンの位置を合わせるように裏パターンのアライメントを調整するに当たり、周知技術を踏まえて、アライメントマークが見える(光が届く)ようにするために転写有効領域以外のブランク裏面側の遮光用金属薄膜層が存在しないようにして、引用例2に記載された、ウエハ及びホトレジスト膜を透過するレーザ光と該レーザ光を反射するアライメントマークを用いて位置合わせ、すなわち、ブランク表面側に形成されたアライメントマークを基準にして、裏パターンが表パターンと位置合わせされるように裏パターンの位置座標を記載した描画手順ファイル(JOBファイル)中の裏パターンの位置座標を補正し(「アライメントマークの座標を測定し、前記一方の面(下面)のアライメントマークの座標を基準座標とすることでメインパターンのアライメントの調整を行うことに相当する。)、さらに、アライメントマークの反射像を認識して位置合わせを行うようにして、相違点1及び相違点2に係る発明特定事項を得るようにすることは当業者が容易に想到し得たものであると認められる。
したがって、相違点1及び相違点2は格別なものとは認められず、相違点1及び相違点2をもって進歩性を認めることはできない。

(2)相違点3について
両面にパターンを形成するに際して、1)両面に被加工層を形成してからそれぞれパターン加工することと、2)一面にのみ被加工層を形成してパターン加工し、その後に他面に被加工層を形成してパターン加工することの2つの選択肢があることは、当業者には自明の事項である。そして、パターン加工される被加工層を用いて何らかのマークをパターンと同時に形成することも当業者には周知の事項である(例えば引用例1を参照)。さらに、下面に形成されたパターンに位置合わせされるように上面にパターンを形成する際、まず、前記下面にパターンが形成される層を形成し、次いで、前記パターンが形成される層に、リソグラフィ手法により前記パターンとアライメントマークを形成し、その後、前記上面にパターンが形成される層を形成することは、引用例8にも記載されているように(段落【0006】ないし【0009】及び図2参照)、パターン加工の分野で知られていることである。してみれば、引用発明のブランク表面側にアライメントマークを形成するに当たり、まず、引用発明のブランク表面側に遮光用金属薄膜層を形成し、次いで、前記遮光用金属薄膜層に、リソグラフィ手法により、表パターンとアライメントマークを形成し、その後、ブランク裏面側の転写有効領域に遮光用金属薄膜層を形成することは、当業者にとって容易に想到し得ることであると認められる。
したがって、相違点3は格別なものとは認められず、相違点3をもって進歩性を認めることはできない。

(3)小括
以上検討したとおり、相違点1ないし相違点3は格別なものとは認められない。そして、本願発明の作用効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項及び周知技術から当業者が予測し得る域を超えるものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-08 
結審通知日 2010-10-12 
審決日 2010-10-25 
出願番号 特願2005-16413(P2005-16413)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 海  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 岡田 吉美
小松 徹三
発明の名称 両面マスクの作成方法  

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