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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1229858 |
審判番号 | 不服2009-25150 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-18 |
確定日 | 2011-01-06 |
事件の表示 | 特願2004-333442「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-141556〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯等 本願の手続の経緯概要は以下のとおりである。 平成16年11月17日 出願 平成21年 6月24日 拒絶理由通知 平成21年 8月26日 手続補正 平成21年 9月16日 拒絶査定 平成21年12月18日 拒絶査定不服審判請求、手続補正 平成22年 5月 7日 審尋 第2.平成21年12月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年12月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「所定の図柄を表示可能に構成された表示手段と、大当たりの当選又はハズレのいずれかを、少なくとも高低二種類の当選確率のいずれかで抽選可能な大当たり抽選手段と、前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づいて、前記表示手段に対して図柄を変動表示させる変動時間及び停止表示させる図柄をそれぞれ決定する表示図柄決定手段と、前記大当たり抽選手段による抽選が高確率の当選確率で実行される高確率状態と前記大当たり抽選手段による抽選が前記高確率よりも低い低確率の当選確率で実行される低確率状態とを切り替える当選確率切替手段と、前記高確率状態のときに前記高確率状態から前記低確率状態に切り替えて前記高確率状態を終了させるべきか否かを抽選する転落抽選手段と、少なくとも前記転落抽選手段の抽選結果に応じて前記高確率状態の終了を判定する高確率状態終了判定手段と、を備え、 前記大当たり抽選手段の抽選と前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とは、互いに独立して実行され、 前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づく前記表示図柄決定手段による図柄の決定と前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とも、互いに独立して実行され、 前記当選確率切替手段は、前記高確率状態のときに、前記大当たり抽選手段による抽選結果がハズレであり、かつ、前記高確率状態終了判定手段にて前記高確率状態の終了が判定された場合、前記高確率状態から前記低確率状態へ切り替えることを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。 上記補正は、補正前請求項1における「前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づく前記表示図柄決定手段による図柄の決定」と「前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選」との関係を限定する「前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づく前記表示図柄決定手段による図柄の決定と前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とも、互いに独立して実行され、」との事項を補正前請求項1に付加するものであり、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-245919号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 【請求項5】複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示領域における可変表示ゲームに関連して所定の遊技価値を付与可能であるとともに、確率変動状態を発生可能な遊技機であって、前記所定の遊技価値には、遊技者にとって有利な特別遊技状態を含み、確率変動状態に突入するかどうかを決定する確率変動決定手段と、前記確率変動決定手段により確率変動状態に突入することが決定されて確率変動状態に突入している場合に、前記可変表示装置の表示領域によって特別遊技状態に移行するかどうかを決定する可変表示ゲームに使用する識別情報の予め定めた所定の組み合わせが、出現した時点で、前記確率変動状態を終了して通常遊技状態に移行させる制御を行うモード制御手段と、を備え、前記予め定めた所定の組み合わせは、前記特別遊技状態を発生させない組み合わせのうちの一部であり、かつ1/1未満の確率で出現するものであることを特徴とする遊技機。 【請求項6】前記識別情報の予め定めた所定の組み合わせを、確率変動状態に突入している場合にのみ出現させる出現規制手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の遊技機。 【0013】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態をパチンコ遊技機に適用した例として図面を参照して説明する。 【0024】ここで、遊技制御装置100および表示制御装置200は全体として確率変動決定手段、モード制御手段、態様変化制御手段、出現回数表示手段、出現規制手段を構成する。可変表示装置の表示領域における可変表示ゲーム(例えば、特図ゲーム)に関連した所定の遊技価値には、特別遊技状態が含まれる。確率変動決定手段は、確率変動状態に突入するかどうかを決定する。モード制御手段は確率変動決定手段により確率変動状態(確変モード)に突入することが決定されて確率変動状態に突入している場合に、可変表示装置(特別図柄可変表示装置4)の表示領域によって特別遊技状態(大当り)に移行するかどうかを決定する可変表示ゲームに使用する識別情報(特図)の予め定めた所定の組み合わせが、所定回数出現した時点で確率変動状態を終了して通常遊技状態(通常モード)に復帰させる制御を行い、前記予め定めた所定の組み合わせは、特別遊技状態(大当り)を発生させない組み合わせのうちの一部であり、かつ1/1未満の確率で出現するものである。この所定の組み合わせは、例えば毎回、出現する確率は極めて低く、後述の図11(c)に示すような外れ特殊図柄「7、7、4」である。 【0025】態様変化制御手段は、確率変動状態に突入している場合に、前記識別情報(特図)の予め定めた所定の組み合わせが出現する度に、前記可変表示装置の画面の態様を変化させる。出現回数表示手段は、確率変動状態に突入している場合に、前記識別情報の予め定めた所定の組み合わせの出現に関する回数を表示し、かつ該出現がある度に出現に関する回数を更新して表示する。出現規制手段は、前記識別情報の予め定めた所定の組み合わせを、確率変動状態に突入している場合にのみ出現させる。本実施の形態では、確率変動決定手段は特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)の表示領域にて大当り(特別遊技状態)に移行するかどうかを決定する可変表示ゲームに使用する特図(識別情報)とは別の識別情報である確変獲得決定図柄(確率変動決定識別情報)を表示して、確率変動状態に突入するかどうかを決定するゲームを行う。 【0029】C.遊技の概要 次に、遊技制御装置100の制御フローを説明する前に、本実施の形態の遊技機で行われる遊技の概要について説明する。ガイドレール2を介して遊技領域中に打込まれた遊技球が、特別図柄始動口を兼ねた普通変動入賞装置6に入賞すると、特別図柄可変表示装置4の変動表示部4aの複数の領域において多数の識別図柄(数字、文字、記号、図柄等よりなるもの)が移動(スクロール)する表示(いわゆる変動表示)が行われて、変動表示ゲーム(特図ゲーム)が行われる。そして、この変動表示ゲーム結果としての停止表示態様が所定の態様(例えば、「7、7、7」などのゾロ目の特定表示結果)であれば、大当りと呼ばれる特別遊技状態が発生する。 【0031】そして、確率変動状態に突入するかどうかを決定するゲームの結果、確変モードになった場合には、大当り確率を高めて次回の大当りを当りやすくする遊技(確率変動遊技)を行い、所定期間だけその後の大当りの確率が通常よりも高確率とする。そして、確変モード中に予め定めた所定の特図の組み合わせが所定回数出現した時点で通常モードへ移行する。 【0036】・大当り乱数カウンタ 大当り確率は1/311であり、大当り乱数として0?310のうちの何れか1つ(例えば、始動入賞にて抽出された乱数)がここに格納される。 ・確変獲得決定乱数カウンタ 確変獲得決定乱数として0?11が設定され、そのうち0?5は通常モード(確変獲得の確率は6/11)、6?11が確変モード(確変獲得の確率は6/12)となる乱数であり、0?11のうちの何れか1つが確変獲得決定乱数カウンタの値として、ここに格納される。 ・外れパターン用乱数カウンタ 確変モードの余命の更新(詳細は後述)に用いるパターン乱数として0?24の25種類があり、そのうちの何れか1つがここに格納される。確変モード中に特殊な外れ図柄を含むどの外れ図柄を出現させるか決定するための値として外れパターン用乱数カウンタに0?24の何れか1つが格納される。 【0040】始動入賞があると、ステップS4で始動記憶を「+1」だけ更新(インクリメント)し、遊技者に新たに始動入賞があって記憶されたことを報知する。次いで、ステップS5で入賞記憶領域(図4(b)参照)の該当箇所へ大当り乱数カウンタのデータを格納する。ここでの大当り乱数カウンタは図4(a)に示すように0?310の間で一定時間毎に更新されており、今回の大当り乱数カウンタのデータを始動入賞のタイミングで抽出して取り出すことで、大当りあるいは外れの判定を行うものである。したがって、図4(a)に示す大当り乱数カウンタに格納されているデータが、入賞記憶領域(図4(b)参照)の該当箇所へ格納されることになる。例えば、今回の始動入賞により入賞記憶数が1になれば第1保留記憶領域に大当り乱数カウンタの値を格納し、今回の始動入賞により入賞記憶数が4になれば第4保留記憶領域に大当り乱数カウンタの値を格納するというように、そのときの入賞記憶数の状態に応じて該当する保留記憶領域に大当り乱数カウンタの値を格納する。 【0041】同様に、ステップS6では入賞記憶領域(図4(b)参照)の該当箇所へ確変獲得決定乱数カウンタのデータを格納する。ここでの確変獲得決定乱数カウンタは図4(a)に示すように0?11の間で一定時間毎に更新されており、今回の確変獲得決定乱数カウンタのデータを始動入賞のタイミングで抽出して取り出すことで、確変あるいは通常の判定を行うものである。 【0042】次いで、ステップS7で入賞記憶領域(図4(b)参照)の該当箇所へ外れパターン用乱数カウンタのデータを格納する。ここでの外れパターン用乱数カウンタは図4(a)に示すように0?24の間で一定時間毎に更新されており、今回の外れパターン用乱数カウンタのデータを始動入賞のタイミングで抽出して取り出すことで、確変モードの余命の更新を行うことを可能にするものである。 【0044】次いで、ステップS11でシーケンス単位での遊技制御処理を行う。ここでは、上述した各乱数以外の遊技制御を行う。例えば、後述の特図ゲームとか賞球制御処理等である。次いで、ステップステップS12で遊技価値に関連しない乱数の更新を行う。例えば、特図の停止図柄を決定するための乱数、確変獲得決定図柄の停止図柄を決めるための乱数等がある。 【0049】次いで、ステップS34で確変状態フラグはセットされているか否かを判別し、セットされていると、ステップS35で確変モード時大当り判定処理を行う。確変モード時大当り判定処理では、大当り確率がアップしている状態(すなわち、確変モード)で大当りの判定を行う。具体的には、変動対象記憶に格納されている大当り乱数カウンタの値と、「7、17、27、37、47」との一致を判定する。この場合、通常状態(確変モードで無いとき)には、大当りになる乱数は「7」の1つであるが、確変モードでは「7、17、27、37、47」という5つの乱数で大当りが発生するから、大当り確率が5倍にアップしていることになる。一方、ステップS34で確変状態フラグがセットされていないときは、ステップS36に分岐して通常モード時大当り判定処理を行う。通常モード時大当り判定処理は大当り確率がアップしていない状態で大当りの判定を行うもので、具体的には、変動対象記憶に格納されている大当り乱数カウンタの値と、「7」との一致を判定する。通常状態では大当りになる乱数は「7」の1つであり、大当り確率はアップしていない。 【0050】ステップS35あるいはステップS36を経ると、ステップS37に進み、判定結果は大当りか否かを判別する。 大当りのとき 判定結果が大当りのときはステップS38に進み、大当り判定フラグに「55H」を設定する。次いで、ステップS39で特図の停止図柄に大当り図柄を設定する。このとき、前述した遊技制御シーケンスのステップS12にて生成(更新)した特図の停止図柄を決定するための乱数が使用されて、大当り時の停止図柄が決定される。 【0055】外れのとき ステップS37の判定結果が外れのときはステップS48に分岐し、大当り判定フラグに「00H」を設定する。次いで、ステップS49で外れ(図面では、”はずれ”)図柄設定処理を行う。外れ図柄設定処理は、外れとなるように特図の停止図柄を決定するものであり、このとき確変中断モード選択番号に基づいて確変モードの寿命を判定し、特図の停止図柄に特殊図柄(確変モード終了への進行の要因となる図柄)を出現させる等の処理を行うが、詳細はサブルーチンで後述する。なお、特図が外れのときは、確変獲得決定乱数の判定はなく、ステップS50で確変獲得判定フラグに「00H」を設定する。次いで、ステップS51に進み、その後、ステップS52に進む。 【0056】(d)外れ図柄設定処理 図7は、図柄変動開始処理における外れ図柄設定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンが開始されると、まずステップS71で確変中断モード選択番号=02H(図面では確変中断モード番号、以下同様)であるか否かを判別し、ステップS72で確変中断モード選択番号=01Hであるか否かを判別する。そして、ステップS71およびステップS72の判別結果によって、以下のようにステップS73?ステップS75の何れかに分岐する。 確変中断モード選択番号=02Hのとき ステップS71でYESのときはステップS73に進み、長寿命確変モードでの判定処理を行う。ここで、変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタは0?24のうちの1つの乱数を格納しており、その格納している値により外れ図柄が決定されるが、その外れ図柄を決定する際に、図7(b)に示すように確変中断モード選択番号=02Hとなる長寿命確変モードにて判定する。具体的には、変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタが「0」の場合には外れ図柄として特殊図柄(例えば、リーチとなる外れ図柄)を設定すべしとの、また、「1?24」であれば一般図柄(例えば、リーチとならない外れ図柄)を設定すべしとの決定を行う。つまり、1/25の確率で外れ図柄として特殊図柄が設定されることになる。 【0057】確変中断モード選択番号=01Hのとき ステップS71でNO、ステップS72でYESのときはステップS74に進み、短寿命確変モードでの判定処理を行う。ここで、変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタは0?24のうちの1つの乱数を格納しており、その格納している値により外れ図柄が決定されるが、その外れ図柄を決定する際に、図7(b)に示すように確変中断モード選択番号=01Hとなる短寿命確変モードにて判定する。具体的には、変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタが「0?2」の場合には外れ図柄として特殊図柄(例えば、リーチとなる外れ図柄)を設定すべしとの、また、「3?24」であれば一般図柄(例えば、リーチとならない外れ図柄)を設定すべしとの決定を行う。つまり、3/25の確率で外れ図柄として特殊図柄が設定されることになる。 【0058】確変中断モード選択番号=00Hのとき ステップS71でNO、ステップS72でNOのときはステップS75に進み、通常モードでの判定処理を行う。ここで、変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタは0?24のうちの1つの乱数を格納しており、その格納している値により外れ図柄が決定されるが、その外れ図柄を決定する際に、図7(b)に示すように確変中断モード選択番号=00Hとなる通常モードにて判定する。具体的には、変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタが「0?1」の場合には外れ図柄として特殊図柄(例えば、リーチとなる外れ図柄)を設定すべしとの、また、「2?24」であれば一般図柄(例えば、リーチとならない外れ図柄)を設定すべしとの決定を行う。つまり、2/25の確率で外れ図柄として特殊図柄が設定されることになる。ところで、これらの処理にて決定された外れ図柄になるように、ステップS23の図柄変動停止処理(図5)にて特図が停止表示される。そして、後述するように、この停止表示された図柄が外れの特殊図柄(例えば、リーチとなる外れ図柄)の場合には確変中断カウンタが更新され、所定の更新回数に到達すると、確変モードが終了して通常モードに移行することになる。したがって、外れ図柄として特殊図柄が設定されにくいということは、それだけ確変モードが長寿命という設定になっているといえる。また、逆の場合には短寿命の設定といえる。なお、確変中断モード選択番号は02H、01H、00Hのいずれの値であっても、大当り確率は同じである。 【0059】ステップS73?ステップS75の何れかのステップを経ると、次いで、ステップS76で特殊図柄(例えば、外れのリーチ図柄)の出現を決定したか否かを判別する。これは、前述したように今回の確変中断モード選択番号の元で図7(b)に示す関係において、外れ図柄として特殊図柄が選択されたかどうかで判断する。特殊図柄の出現が決定されていなければ、ステップS77で特図の停止図柄に一般の外れ図柄(例えば、リーチとならない外れ図柄)を設定し、ステップS78で外れ特殊図柄出現フラグをクリアして図柄変動開始処理に復帰する。一方、特殊図柄の出現が決定されていると、ステップS79で特図の停止図柄に特殊の外れ図柄を設定し、ステップS78で外れ特殊図柄出現フラグをセットして図柄変動開始処理に復帰する。外れ特殊図柄出現フラグは後述の大当り判定処理のルーチンで使用するもので、外れ特殊図柄出現フラグがセットされていると確率中断カウンタをデクリメントしていき、確率モードの寿命が短くなる。このように、確変中断モード選択番号の値に応じて図7(b)に示す関係に沿って外れ図柄に特殊図柄を出現するかどうかを決定し、決定結果に従って特図の停止図柄が設定される。なお、外れ特殊図柄は、可変表示装置の表示領域によって特別遊技状態に移行するかどうかを決定する可変表示ゲームに使用する識別情報(特図)の予め定めた所定の組み合わせに相当する。この外れ特殊図柄は、特別遊技状態(大当り)を発生させない組み合わせのうちの一部であって、全図柄ではなく(全ての図柄が外れ特殊図柄ではない)、かつ1/1未満の確率(多くても3/25の割合)で出現する。 【0064】確変獲得判定フラグ=「AAH」であるときは通常モードから確変モードへ変わるべきと判断してステップS113に進み、確変状態フラグをセットする。これにより、確変モードに移行する。次いで、ステップS114で確変獲得判定フラグに「00H」を設定する。確変獲得判定フラグに「00H」を設定するのは、今回のルーチンで確変獲得判定フラグを判定して、モードを変更したので、確変獲得判定フラグの参照が終了したことから確変獲得判定フラグをクリアしておくためである。次いで、ステップS115で確変中断カウンタに初期値n(例えば、n=5)を設定し、特図ゲームの進行処理のステップS22に戻ってルーチンを繰り返す。n=5を設定すると、大当り終了後の特図変動ゲームで外れ特殊図柄が5回出現した時点で、確変モードが終了して通常モードに移行することになる。一方、ステップS112で確変獲得判定フラグ=「AAH」でなければ、ステップS116に分岐して確変中断カウンタに「0」を設定し、特図ゲームの進行処理のステップS22に戻ってルーチンを繰り返す。確変中断カウンタ=0に設定するのは、確変モードに入っていないからである。このように、大当りが終了する度に、確変モードのときは確変中断カウンタに初期値nを設定し、通常モードのときは確変中断カウンタに「0」を設定する。 【0077】「第3の実施の形態」第3の実施の形態では、確変モード中に、確変モード終了の要因となる図柄(予め定めれた外れ特殊図柄)が出現した時点で(すなわち、1回出現すると)、通常モードに移行する制御を行う。つまり、ステップS115で確変中断カウンタの初期値nに1を設定したものである。第3の実施の形態では、遊技制御装置100および表示制御装置200は全体としてモード制御手段を構成し、モード制御手段は確率変動ゲーム手段により確率変動状態に突入することが決定されて確率変動状態に突入している場合に、特別図柄可変表示装置4(可変表示装置)の表示領域によって特別遊技状態に移行するかどうかを決定する可変表示ゲームに使用する識別情報(特図)の予め定めた所定の組み合わせ(予め定めれた外れ特殊図柄)が、出現した時点で、確率変動状態を終了して通常遊技状態に移行させる制御を行う。すなわち、確変モード中に予め定めれた外れ特殊図柄の1回目の出現があった時点で、直ちに通常モードへ移行する。この場合も予め定めれた外れ特殊図柄は、特別遊技状態(大当り)を発生させない組み合わせのうちの一部であり、かつ1/1未満の確率で出現するものである。 【0078】第3の実施の形態によれば、確変モード終了の要因となる図柄(予め定めれた外れ特殊図柄)が必ずしも毎回出現するわけではないので、確変モードがどこまで続くか不確定になり、遊技者に緊張感を与えることができる。また、確変モード終了の要因となる図柄(予め定めれた外れ特殊図柄)の出現頻度が固定的な値でないので、遊技者に様々な度合いの緊張感を与えることができる。特に、外れ特殊図柄の1回目の出現があっただけで直ちに確率モードが終了するので、確率モード中の遊技の進行において遊技者に特にインパクトのある刺激を与え、遊技の興趣を格段に高めることができる。 「第3の実施の形態」(【0077】、【0078】参照)を採用して整理すると、以上の記載を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。 「複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置と、確変モード時大当り判定処理では、大当り確率がアップしている状態(すなわち、確変モード)で大当りの判定を行い、通常モード時大当り判定処理では大当り確率がアップしていない状態で大当りの判定を行う手段と、大当たりのときには遊技制御シーケンスのステップS12にて生成(更新)した特図の停止図柄を決定するための乱数が使用して、大当り時の停止図柄を決定し、外れのときには、外れ図柄として特殊図柄の出現を決定された場合には特図の停止図柄に特殊の外れ図柄を設定するとともに、特殊図柄の出現が決定されていなければ特図の停止図柄に一般の外れ図柄を設定する手段と、確変獲得判定フラグ=「AAH」であるときは通常モードから確変モードへ変わるべきと判断して確変状態フラグをセットすることにより確変モードに移行させる手段と、確変モード中に外れ特殊図柄が出現した時点で通常モードに移行させる手段と、を備え、 変動対象記憶に格納されている大当り乱数カウンタの値が特定の値(「7」等)の場合に大当りと判定し、変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタが所定の値(「0」等)の場合に外れ図柄として特殊図柄を決定するパチンコ遊技機。」(以下、「引用発明」という。) 3.対比 本願補正発明と引用発明を対比すると、 引用発明の「確変モード」は本願補正発明の「高確率状態」に相当し、以下同様に、「通常モード」は「低確率状態」に、「複数種類の識別情報を表示可能な可変表示装置」は「所定の図柄を表示可能に構成された表示手段」に、「確変モード時大当り判定処理では、大当り確率がアップしている状態(すなわち、確変モード)で大当りの判定を行い、通常モード時大当り判定処理では大当り確率がアップしていない状態で大当りの判定を行う手段」は「大当たりの当選又はハズレのいずれかを、少なくとも高低二種類の当選確率のいずれかで抽選可能な大当たり抽選手段」に、「確変獲得判定フラグ=「AAH」であるときは通常モードから確変モードへ変わるべきと判断して確変状態フラグをセットすることにより確変モードに移行させる手段」及び「確変モード中に外れ特殊図柄が出現した時点で通常モードに移行させる手段」はあわせて「前記大当たり抽選手段による抽選が高確率の当選確率で実行される高確率状態と前記大当たり抽選手段による抽選が前記高確率よりも低い低確率の当選確率で実行される低確率状態とを切り替える当選確率切替手段」に、それぞれ相当する。 そして、以下のことがいえる。 ・引用発明の「大当たりのときには遊技制御シーケンスのステップS12にて生成(更新)した特図の停止図柄を決定するための乱数が使用して、大当り時の停止図柄を決定し、外れのときには、外れ図柄として特殊図柄の出現を決定された場合には特図の停止図柄に特殊の外れ図柄を設定するとともに、特殊図柄の出現が決定されていなければ特図の停止図柄に一般の外れ図柄を設定する手段」と本願補正発明の「前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づいて、前記表示手段に対して図柄を変動表示させる変動時間及び停止表示させる図柄をそれぞれ決定する表示図柄決定手段」は、「前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づいて、表示手段に対して停止図柄を決定する表示図柄決定手段」である点において共通している。 ・引用発明は「変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタが所定の値(「0」等)の場合に外れ図柄として特殊図柄を決定する」ものであって「特殊図柄」とするか否かを「抽選」するものということができ、「特殊図柄」が出現して確変モードから通常モードに移行することは遊技者にとって有利な状態が終了して不利な状態に移行するものであって「転落」と呼ぶことができるから、引用発明の「確変モード中に外れ特殊図柄が出現した時点で通常モードに移行させる手段」は、本願補正発明の「前記高確率状態のときに前記高確率状態から前記低確率状態に切り替えて前記高確率状態を終了させるべきか否かを抽選する転落抽選手段」及び「少なくとも前記転落抽選手段の抽選結果に応じて前記高確率状態の終了を判定する高確率状態終了判定手段」に相当する。また、引用発明において「確変モード中」すなわち「高確率状態」のときに、「外れ図柄」として「特殊図柄」が出現したときに「通常モード」に移行するものであるから、引用発明は、本願補正発明の「前記当選確率切替手段は、前記高確率状態のときに、前記大当たり抽選手段による抽選結果がハズレであり、かつ、前記高確率状態終了判定手段にて前記高確率状態の終了が判定された場合、前記高確率状態から前記低確率状態へ切り替える」に相当する構成を実質的に具備している。 ・引用発明において、大当たり判定は変動対象記憶に格納されている大当り乱数カウンタの値によって行うものであり、外れ図柄としての特殊図柄の決定すなわち転落抽選は変動対象記憶の外れパターン用乱数カウンタの値に基づいて行うものであるが、大当り乱数カウンタの値と外れパターン用乱数カウンタの値は別のものであって、関連しているものではないから、引用発明は、本願補正発明の「前記大当たり抽選手段の抽選と前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とは、互いに独立して実行され」に相当する構成を実質的に具備している。 そうすると、両者は、 「所定の図柄を表示可能に構成された表示手段と、大当たりの当選又はハズレのいずれかを、少なくとも高低二種類の当選確率のいずれかで抽選可能な大当たり抽選手段と、前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づいて、前記表示手段に対して停止図柄を決定する表示図柄決定手段と、前記大当たり抽選手段による抽選が高確率の当選確率で実行される高確率状態と前記大当たり抽選手段による抽選が前記高確率よりも低い低確率の当選確率で実行される低確率状態とを切り替える当選確率切替手段と、前記高確率状態のときに前記高確率状態から前記低確率状態に切り替えて前記高確率状態を終了させるべきか否かを抽選する転落抽選手段と、少なくとも前記転落抽選手段の抽選結果に応じて前記高確率状態の終了を判定する高確率状態終了判定手段と、を備え、 前記大当たり抽選手段の抽選と前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とは、互いに独立して実行され、 前記当選確率切替手段は、前記高確率状態のときに、前記大当たり抽選手段による抽選結果がハズレであり、かつ、前記高確率状態終了判定手段にて前記高確率状態の終了が判定された場合、前記高確率状態から前記低確率状態へ切り替える、パチンコ遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 表示図柄決定手段は、前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づいて、前記表示手段に対して停止表示させる図柄を決定する他、本願補正発明においては、図柄を変動表示させる変動時間をも決定しているのに対し、引用発明ではそのような構成でない点。 <相違点2> 本願補正発明においては、大当たり抽選手段の抽選結果に基づく前記表示図柄決定手段による図柄の決定と転落抽選手段の高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とも、互いに独立して実行するのに対し、引用発明においてはそのような構成でない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について パチンコ遊技機において、大当たり抽選手段の抽選結果に基づいて、前記表示手段に対して図柄を変動表示させる変動時間及び停止表示させる図柄をそれぞれ決定することは、例を挙げるまでもなく従来周知技術であるから、引用発明において、表示手段に対して停止表示させる図柄を決定する他、図柄を変動表示させる変動時間をも決定することとし、相違点1にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。 (2)相違点2について 当審で発見した特開2003-169922号公報(以下、「引用文献2」という。段落【0026】?【0030】参照。)には、停止図柄乱数に応じて停止図柄を決定する一方、停止図柄乱数とは別で関係のない確率変動終了乱数に応じて確率変動を終了させるか否かを判定する弾球遊技機が記載されており、当該弾球遊技機は図柄の決定と高確率状態を終了させるか否かの抽選を互いに独立して実行しているものといえる。 そうすると、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用し、大当たり抽選手段の抽選結果に基づく前記表示図柄決定手段による図柄の決定と転落抽選手段の高確率状態を終了させるべきか否かの抽選を互いに独立して実行するものとし、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明 1.本願発明の認定 平成21年12月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年8月26日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「所定の図柄を表示可能に構成された表示手段と、大当たりの当選又はハズレのいずれかを、少なくとも高低二種類の当選確率のいずれかで抽選可能な大当たり抽選手段と、前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づいて、前記表示手段に対して図柄を変動表示させる変動時間及び停止表示させる図柄をそれぞれ決定する表示図柄決定手段と、前記大当たり抽選手段による抽選が高確率の当選確率で実行される高確率状態と前記大当たり抽選手段による抽選が前記高確率よりも低い低確率の当選確率で実行される低確率状態とを切り替える当選確率切替手段と、前記高確率状態のときに前記高確率状態から前記低確率状態に切り替えて前記高確率状態を終了させるべきか否かを抽選する転落抽選手段と、少なくとも前記転落抽選手段の抽選結果に応じて前記高確率状態の終了を判定する高確率状態終了判定手段と、を備え、 前記大当たり抽選手段の抽選と前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とは、互いに独立して実行され、 前記当選確率切替手段は、前記高確率状態のときに、前記大当たり抽選手段による抽選結果がハズレであり、かつ、前記高確率状態終了判定手段にて前記高確率状態の終了が判定された場合、前記高確率状態から前記低確率状態へ切り替えることを特徴とするパチンコ遊技機。」 2.進歩性の判断 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、「前記大当たり抽選手段の抽選結果に基づく前記表示図柄決定手段による図柄の決定と前記転落抽選手段の前記高確率状態を終了させるべきか否かの抽選とも、互いに独立して実行され、」との構成を省いたものである。 そうすると、前記第2で検討した相違点2は生じることはなく、相違点1については上述のとおりであるから、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明(引用発明)、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-05 |
結審通知日 | 2010-11-09 |
審決日 | 2010-11-24 |
出願番号 | 特願2004-333442(P2004-333442) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阿南 進一 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
小原 博生 川島 陵司 |
発明の名称 | パチンコ遊技機 |
代理人 | 山本 晃司 |