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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1230782
審判番号 不服2008-5699  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2011-01-20 
事件の表示 特願2005- 10646「対話処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日出願公開、特開2006-201870〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年1月18日の出願であって、平成19年11月6日付けで拒絶理由通知がなされ、平成20年1月15日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月3日付けで審判請求書の「請求の理由」を補正した手続補正書(方式)及び手続補正書が提出され、当審において、平成22年6月11日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年8月10日付けで回答書が提出されたものであって、「対話処理装置」に関するものと認める。

2.原査定の理由及び請求人の主張

2-1.平成19年11月6日付けの拒絶理由通知
平成19年11月6日付けで審査官が通知した拒絶理由は、次の内容を含むものである。

「1.この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)?(2)(略)

(3)特許請求の範囲第1及び10項の「応答手段」に関する記載では、何らかの「応答知識」を何らかの方法で用いて何らかの「発話」を生成したい、という(『技術的思想』とは言い難い)願望の範疇を超えない。
したがって、当該記載では、「発明」(自然法則を利用した『技術的思想』の創作)が明確でない。

(4)?(5)(略)」

2-2.平成20年1月15日付けで提出された意見書における請求人の主張
上記拒絶理由1.(3)の通知に対し、請求人は、平成20年1月15日付け手続補正書により、旧請求項1?11を新請求項1?3に補正するとともに、上記意見書において、次のような主張をしている。

「【意見の内容】
(1)?(2)(略)
(3)・・・(中略)・・・
また、請求項2の記載を補正し、・・・(中略)・・・「応答生成手段」について、「距離算出手段」によって算出されたユーザの発話とルールとの「距離が最も近い一つのルールの前記抽出された自立語に一致する項目以外の項目の自立語を用いて、」応答用の発話を生成することを明確に記載致しました。
・・・(中略)・・・
従って、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていると思料致します。
(4)?(5)(略)」

2-3.平成20年1月29日付けの拒絶査定
上記意見書の主張を踏まえた上での審査官の平成20年1月29日付けの拒絶査定は、次の内容を含むものである。

「この出願については、平成19年11月6日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。

備考

<理由1について>
(1)(2)(4)(略)

(3)特許請求の範囲第1乃至2項の「応答生成手段」に関する記載では、得られた「自立語」と「応答用の発話」とが如何なる「技術的思想」によって結び付けられているのか不明であるため、如何にして応答生成を行うのか特定できない。
したがって、当該記載では、依然として、「発明」(自然法則を利用した『技術的思想』の創作)が明確でない。」

2-4.平成20年3月6日に提出された審判請求書の「請求の理由」を補正した平成20年4月3日付け手続補正書(方式)における請求人の主張
上記拒絶査定に対し、請求人は、平成20年4月3日付け手続補正書により、旧請求項1?3のうち旧請求項1を削除し、旧請求項2?3を新請求項1?2に補正するとともに、上記手続補正書(方式)において、次のような主張をしている。

「(3)本願発明が特許されるべき理由
1)?2)(略)

3)特許法第36条第6項第2号の拒絶理由に関して
・・・(中略)・・・
また、審査官殿は、補正前の請求項2に記載された「応答生成手段」に関する記載では、得られた「自立語」と「応答用の発話」とが如何なる「技術的思想」によって結び付けられているのか不明である、としておりますが、この点については、平成20年4月3日付け手続補正書において、距離が最も近い一つのルールの、抽出された自立語の基本形に一致する項目以外の項目を候補として、一つの項目を選択し、ユーザの発話に対する応答となるように選択した項目の表現を言い換えた応答用の発話を生成することを明確に致しました。
上述しましたように、平成20年4月3日付け手続補正書において、請求項1の記載を補正し、ルールの内容及び応答生成手段の処理内容を明確に致しました。従って、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていると思料致します。

4)(略)」

2-5.平成22年6月11日付けで行われた前置報告書を利用した審尋
当審における上記審尋は、次の内容を含むものである。

「この審判事件について、下記の点に対する回答書を、この審尋の発送の日から60日以内に提出して下さい。



この審判事件については、審査官による審査(特許法第162条、前置審査)の結果、以下の《前置報告書の内容》のとおり、特許をすべき旨の査定ができない旨の報告(同法第164条第3項、前置報告書)が特許庁長官になされました。この審判事件の審理は、今後、この《前置報告書の内容》を踏まえて行うことになります。
この審尋(同法第134条第4項)は、この審判事件の審理を開始するにあたり、《前置報告書の内容》について、審判請求人の意見を事前に求めるものです。意見があれば回答してください。
・・・(中略)・・・
《前置報告書の内容》
・・・(中略)・・・
また、仮に補正を認めたとしても、補正後の応答生成手段に関する、「ユーザの発話に対する応答となるように前記選択した項目の表現を言い換えた応答用の発話を生成する」との記載では、査定理由の理由1(3)で示したように、選択した項目を用いてどのように応答用の発話を生成するのかが明らかでなく、応答生成手段の具体的構成が明確でない。
・・・(中略)・・・
(この点に関しては、発明の詳細な説明を見ても、【0045】段落に、漠然とした処理例が示されるだけであり、実施可能要件の問題を含め、治癒は難しいと思われる。)
よって、この点においても、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。」

2-6.平成22年8月10日付けで提出された回答書における請求人の主張
上記審尋に対し、請求人は、上記回答書において、次のような主張をしている。

「1.前置報告書の補正に関する新規事項の判断について
・・・(中略)・・・
(4)補正案
請求項1における誤記を訂正するために、以下の補正案を提示させて頂きます。

[書類名] 特許請求の範囲(案)
[請求項1]
・・・(中略)・・・
前記算出された距離が最も近い一つのルールの前記抽出された自立語の基本形に一致する項目以外の項目を候補として、前記候補からランダムに又は対話の履歴を用いて一つの項目を選択し、該ユーザの発話に対する応答となるように、前記選択した項目の表現を前記項目を提示するような表現に言い換えた応答用の発話を生成する応答生成手段と、
・・・(中略)・・・

2.前置報告書の記載要件の判断について
(1)審尋で引用された前置報告書では、
「補正後の応答生成手段に関する、「ユーザの発話に対する応答となるように前記選択した項目の表現を言い換えた応答用の発話を生成する」との記載では、査定理由の理由1(3)で示したように、選択した項目を用いてどのように応答用の発話を生成するのかが明らかでなく、応答生成手段の具体的構成が明確でない。」と記載されています。

しかし、この点について出願人は以下のように回答します。
(2)本願発明の内容
本願発明では、「応答生成手段」が、「前記算出された距離が最も近い一つのルールの前記抽出された自立語の基本形に一致する項目以外の項目を候補として、前記候補からランダムに又は対話の履歴を用いて一つの項目を選択し、該ユーザの発話に対する応答となるように前記選択した項目の表現を言い換えた応答用の発話を生成」しております。

(3)記載の明確性について
ユーザの発話に対する自然な応答となるように表現に言い換えるために、システム側で、語尾等の表現を自動的に言い換えることは周知技術であり、当業者であれば、どのように応答用の発話を生成するのかが明らかであります。
また、応答生成手段の内容をより明確にするために、上記の補正案を提示させて頂きます。

(4)補正案の特許性について
補正案における「該ユーザの発話に対する応答となるように、前記選択した項目の表現を前記項目を提示するような表現に言い換えた応答用の発話を生成する応答生成手段」との補正事項は、段落番号[0045]の「根拠の項目から応答用の発話を生成する場合は、「友達とハイキングに行けるからね」のように自立語の基本形を根拠を提示するような表現に言い換えてシステムの応答用の発話を生成する。」との記載に基づくものです。

補正案における請求項1に係る発明では、「応答生成手段」が、「前記算出された距離が最も近い一つのルールの前記抽出された自立語の基本形に一致する項目以外の項目を候補として、前記候補からランダムに又は対話の履歴を用いて一つの項目を選択し、該ユーザの発話に対する応答となるように、前記選択した項目の表現を前記項目を提示するような表現に言い換えた応答用の発話を生成」しております。
また、ある項目を提示するような表現に言い換えるために、システム側で、項目と語尾等との対応関係を記憶しておき(根拠の項目であれば、「・・・からね。」が対応(段落番号[0045]参照))、当該対応関係を用いて自動的に語尾等の表現を言い換えることは周知技術であり、当業者であれば、どのように応答用の発話を生成するのかが明らかであります。
このように、補正案の請求項1における応答生成手段に関する記載は、明確であると思料致します。」

3.当審の判断
本願の請求項1に記載された発明は、平成20年4月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「ユーザの発話を認識する音声認識手段と、
各々が、原因を表わす自立語の基本形を含む原因の項目、結果を表わす自立語の基本形を含む結果の項目、及び根拠を表わす自立語の基本形を含む根拠の項目から構成された複数のルールを記憶した記憶手段と、
前記音声認識手段で認識されたユーザの発話から自立語の基本形を抽出する抽出手段と、
前記記憶手段に記憶された複数のルールの各々について、前記抽出手段によって抽出された自立語の基本形が前記ルールの各項目に含まれる自立語の基本形に一致する個数の逆数を、前記ユーザの発話と前記ルールとの距離として算出する距離算出手段と、
前記算出された距離が最も近い一つのルールの前記抽出された自立語の基本形に一致する項目以外の項目を候補として、前記候補からランダムに又は対話の履歴を用いて一つの項目を選択し、該ユーザの発話に対する応答となるように前記選択した項目の表現を言い換えた応答用の発話を生成する応答生成手段と、
前記応答手段で生成した応答用の発話を音声合成して出力する音声合成手段と、
を含む対話処理装置。」

上記請求項1の記載のうち、「応答生成手段」に関する「該ユーザの発話に対する応答となるように前記選択した項目の表現を言い換えた応答用の発話を生成する」との記載について検討する。
上記記載に関し、発明の詳細な説明には、段落【0045】に、次の記載がなされている。
「候補から応答用の発話を選択するには、上記で説明したランダムで選択する方法や対話の履歴を用いる方法を使用することができるが、根拠の項目から応答用の発話を生成する場合は、「友達とハイキングに行けるからね」のように自立語の基本形を根拠を提示するような表現に言い換えてシステムの応答用の発話を生成する。」
上記記載によれば、システムの「応答生成手段」は、図5の「根拠」の項目の「友達とハイキングに行く」という表現を「友達とハイキングに行けるからね」という「根拠を提示するような表現」に言い換える動作を行うとされている。
しかしながら、上記段落【0045】の記載を見ても、選択した「根拠」の項目の「友達とハイキングに行く」という表現を、どのようにして「友達とハイキングに行けるからね」という「根拠を提示するような表現」に言い換えるのかが不明である。

この点に関し、請求人は、上記「2-6.」に摘記した回答書において、「ユーザの発話に対する自然な応答となるように表現に言い換えるために、システム側で、語尾等の表現を自動的に言い換えることは周知技術であり、当業者であれば、どのように応答用の発話を生成するのかが明らかであ」ると主張するとともに、「応答生成手段」に関する「該ユーザの発話に対する応答となるように前記選択した項目の表現を言い換えた応答用の発話を生成する」との記載について「該ユーザの発話に対する応答となるように、前記選択した項目の表現を前記項目を提示するような表現に言い換えた応答用の発話を生成する」との補正案を提示し、「ある項目を提示するような表現に言い換えるために、システム側で、項目と語尾等との対応関係を記憶しておき(根拠の項目であれば、「・・・からね。」が対応(段落番号[0045]参照))、当該対応関係を用いて自動的に語尾等の表現を言い換えることは周知技術であり、当業者であれば、どのように応答用の発話を生成するのかが明らかであ」る旨の主張をしている。
しかしながら、上記段落【0045】には、「システム側で、項目と語尾等との対応関係を記憶しておき、当該対応関係を用いて自動的に語尾等の表現を言い換える」という周知技術を用いて応答用の発話を生成する旨の記載はなされておらず、依然として、選択した項目の表現をどのようにして言い換えて応答用の発話を生成するのかが明らかであるとはいえず、応答生成手段の具体的構成が明確でない。
さらに、例えば、「根拠」の項目に「・・・からね。」という語尾を対応させることを記憶していただけでは、「友達とハイキングに行く」という表現の「行く」の部分を「行ける」に変換して「友達とハイキングに行けるからね」という表現に言い換えることにはならず、この点からも、選択した項目の表現をどのようにして言い換えて応答用の発話を生成するのかが明らかでなく、応答生成手段の具体的構成が明確でない。

したがって、上記請求項1に記載された発明は、依然として明確でない。

4.むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-17 
結審通知日 2010-11-24 
審決日 2010-12-07 
出願番号 特願2005-10646(P2005-10646)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太成瀬 博之  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 飯田 清司
久保 正典
発明の名称 対話処理装置  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  

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