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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1230828
審判番号 不服2010-22122  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-01 
確定日 2011-01-20 
事件の表示 特願2010-102574「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月29日出願公開、特開2010-162384〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年5月22日に出願した特願2000-150678号の一部を、平成19年6月6日に新たな特許出願(特願2007-150166号)とし、その一部を平成20年3月7日に新たな特許出願(特願2008-57501号)とし、さらにその一部を平成21年2月23日に新たな特許出願(特願2009-38815号)とし、さらにその一部を平成21年6月22日に新たな特許出願(特願2009-147882号)とし、さらにその一部を平成22年4月27日に特許出願したものであって、同年6月1日付の拒絶理由通知に対して同年7月8日付で手続補正がなされ、これに対し、同年8月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月1日付で拒絶査定不服に対する審判の請求および手続補正がなされたものである。

2.平成22年10月1日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月1日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1に記載された
「【請求項1】数字、記号、模様または絵などの多種多様な図柄を変動表示器に変動表示して、普通図柄が揃って停止すると普通大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態になる一方、特別図柄が揃って停止すると普通大当りよりも好条件の確率変動大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態よりも高い確率で何れかの大当りが発生しやすい確率変動状態になる遊技機において、
発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定する制御部を具備し、
前記制御部は、確率変動状態で発生させる乱数の種類数を、通常状態で発生させる乱数の種類数よりも少なくし、及び、普通大当りとなる乱数を減少させ且つ確率変動大当りとなる乱数を増加させることにより、普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更すること、
を特徴とする遊技機。」
という発明を、
「【請求項1】数字、記号、模様または絵などの多種多様な図柄を変動表示器に変動表示して、普通図柄が揃って停止すると普通大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態になる一方、特別図柄が揃って停止すると普通大当りよりも好条件の確率変動大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態よりも高い確率で何れかの大当りが発生しやすい確率変動状態になる遊技機において、
発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定すると共に、通常状態と確率変動状態とで発生させる乱数の種類数を変更する制御部を具備し、
前記制御部は、確率変動状態で発生させる乱数の種類数を、通常状態で発生させる乱数の種類数よりも少なくし、及び、普通大当りとなる乱数を減少させ且つ確率変動大当りとなる乱数を増加させることにより、普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更した前記確率変動状態にすること、
を特徴とする遊技機。」
という発明に変更することを含むものである。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1における、「発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定する制御部を具備し」を「発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定すると共に、通常状態と確率変動状態とで発生させる乱数の種類数を変更する制御部を具備し」と変更することで制御部の制御内容を限定しており、「普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更すること」を「普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更した前記確率変動状態にすること」とした変更には実質的に変更はない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由(平成22年6月1日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開平11-57140号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0019】遊技領域3の中央には、複数種類の画像を変動表示するための可変表示装置4が設けられている。可変表示装置4は、本実施の形態の場合にはCRTより構成されており、左,中,右の3つの可変表示部の図柄の画像およびキャラクタ等の画像を表示可能な画像表示部5を有している。ここで、キャラクタとは、可変表示装置4に表示される人間,動物,あるいは物等を表わす映像をいう。なお、可変表示装置4は、CRTの表示装置に限らず、LCD表示装置(液晶表示装置)、プラズマ表示装置、または、マトリックスLED表示装置等のその他の画像表示装置を用いてもよい。また、可変表示装置4は、そのような画像表示装置に限らず、回転ドラム式、複数の図柄が付されたベルトが巡回することにより表示状態が変化するいわゆるベルト式、リーフ式、複数の図柄が付された回転円板が回転することにより表示状態が変化するいわゆるディスク式等の機械式の表示装置で構成されてもよい。」

(イ)「【0021】可変入賞球装置10は、ベース板60を遊技領域3に固定することにより取付けられている。可変入賞球装置10は、遊技領域3の前後方向に所定範囲で傾動可能な開閉板61を有しており、後述するソレノイド74が励磁状態にされることにより開閉板61が傾動することにより開成して打玉が入賞可能な遊技者にとって有利となる第1の状態と、ソレノイド74が非励磁状態にされることにより開閉板61が閉成して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能に構成されている。可変入賞球装置10には、遊技状態に応じて点灯または点滅表示する6個のLED62が設けられている。」

(ウ)「【0025】始動口9に打玉が入賞し、後述する始動玉検出器29が打玉を検出することにより可変表示装置4の画像表示部5上に表示される3つの可変表示部において、図柄の変動表示(可変表示)が行なわれる(以下、それぞれの図柄を特に「特別図柄」という)。特別図柄の変動表示が停止したとき、3つの可変表示部の特別図柄の組合せが予め定められた特定の組合せとなって大当りが発生すると、可変入賞球装置10は上記第2の状態から、打玉が入賞可能な遊技者にとって有利な第1の状態として、開閉板61が開成状態となる。大当りが発生した遊技状態を特に特定遊技状態という。以下の説明においては、左可変表示部に表示される特別図柄を左図柄、中可変表示部に表示される特別図柄を中図柄、右可変表示部に表示される特別図柄を右図柄と呼ぶ。
【0026】可変入賞球装置10の前記第1の状態は、開閉板61が開成状態となった後に、30秒が経過するか、または、可変入賞球装置10の大入賞口に打玉が10個入賞するかのうちのいずれか早い方の条件が成立したことにより終了する。すなわち、上記条件が成立したとき開閉板61が閉成状態となり、可変入賞球装置10が遊技者にとって不利な第2の状態となる。大入賞口に入賞した打玉は、可変入賞球装置10の大入賞口内部に設けられた後述する入賞玉検出器28により検出される。
【0027】大入賞口の内側の左側部分には、通常「Vポケット」と呼ばれる特定領域が設けられている。大入賞口に入った打玉がこの特定領域に入賞すれば、その特定入賞玉がVポケットに設けられた後述する特定玉検出器27により検出される。特定入賞玉が検出されると、その回の可変入賞球装置10の遊技者にとって有利な第1の状態が終了するのを待って、再度、可変入賞球装置10を前記第1の状態に駆動制御する繰返し継続制御が行なわれる。この繰返し継続制御により可変入賞球装置10は最高16回連続して前記第1の状態となる。なお、大入賞口に入った打玉の個数は、個数表示器24に逐次表示される。繰返し継続制御の終了後、遊技者にとって有利な第1の状態から遊技者にとって不利な第2の状態となる。」

(エ)「【0038】次に、パチンコ遊技機1の遊技上の特徴点についてさらに詳細に説明する。可変表示装置4の可変表示部で可変表示される特別図柄が所定の組合せで停止表示されたとき、大当りが発生する。大当りとなる特別図柄の組合せの中には、特別遊技状態としての高確率(確率変動)状態を発生させる特別の組合せが含まれている。この組合せを特に確率変動図柄の組合せと呼ぶ。遊技が高確率状態にある場合には、通常状態に比べて大当りが発生する確率が高くされる。また、普通図柄可変表示器17における普通図柄の可変表示結果が当りとなる確率も高くされる。以下、確率変動図柄は、確変図柄または特別図柄とも呼ぶ。
【0039】本実施の形態に示すパチンコ遊技機1では、確率変動図柄の組合せに基づいて大当りが発生して、所定回数の繰返し継続制御がすべて終了した後に確率変動が生じ、高確率状態になる。その確率変動時に発生した大当りが確率変動図柄の組合せによるものである場合には、その大当り以降、改めて確率変動が生じる。すなわち、確率変動図柄の組合せにより大当りとなった場合には、その大当り以降、大当りが1回発生するまでの間、繰返し継続制御が行なわれていない遊技者にとって不利な第2の状態において高確率状態となる。確率変動が発生しているときに大当りとなった図柄の組合せが確率変動図柄の組合せでなかった場合、大当りに伴う繰返し継続制御終了後、確率変動の生じていない状態に戻る。」

(オ)「【0066】図5は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機1に用いられるランダムカウンタの種類とその内容を示す説明図である。ランダムカウンタとは、可変表示装置4の特別図柄の変動表示制御等の制御に用いられる乱数をカウントするカウンタである。本実施の形態では、WC RND1、WC RND L、WC RND C、WC RND R、および、WC RND RCHの5種類のランダムカウンタが用いられる。これらのランダムカウンタの値がパチンコ遊技中の所定のタイミングで読出され、その値に基づいて可変表示装置4の変動表示動作が制御される。ランダムカウンタのカウント値の抽出処理は、基本回路66の内部に設けられたCPU661がROM662の制御プログラムに従って実行する。
【0067】WC RND1は、可変表示装置4における特別図柄の変動表示の結果、大当りを発生させるか否かを事前に決定するための大当り決定用ランダムカウンタである。WC RND1は、前述した確率設定スイッチの設定操作により決定される、設定1?設定3の3種類のカウンタ値範囲を有する。設定1では、0?293の範囲で、カウンタ値が0.002秒ごとに1つずつカウントアップされる。そして、その上限までカウントアップされると、再度0からカウントをし直すように構成されている。なお、0.002秒とは、基本回路66において、定期リセット回路71から出力された定期リセット信号に応答して制御用プログラムが繰返し実行される間隔である。設定2の場合には、0?377の範囲でカウンタ値が設定1と同様にカウントアップされる。設定3では、0?407の範囲でカウンタ値が設定1と同様にカウントアップされる。
【0068】WC RND L、WC RND C、WC RND Rは、可変表示装置4の特別図柄の変動表示の結果、大当り以外とすることが事前に決定された場合に左、中、右の可変表示部のそれぞれにおいて停止表示させる左、中、右図柄(予定停止図柄)の種類を決定するためのランダムカウンタである。WC RNDL,Rのカウント範囲は、0?12である。WC RND Cのカウント範囲は、0?15である。WC RND Lのカウンタ値は0.002秒ごとに1つずつカウントアップされる。WC RND Cのカウンタ値は0.002秒ごとに1つずつカウントアップされるとともに、基本回路66の割込処理動作の余り時間を利用してカウントアップされる。WC RND Rのカウンタ値はWC RND Cの桁上げのとき1つずつカウントアップされる。WC RND Lは、大当りを発生させる場合の大当り図柄の決定にも用いられる。」

(カ)「【0074】図6は、前述した大当り発生確率が設定1に設定されている場合のフローチャートである。始動入賞に応じてWC RND1およびWC RND Lのそれぞれのあたいが抽出される。抽出したWC RND1の値が大当り判定値である「7」であれば大当りとなり、「7」以外であれば大当り以外となる。なお、高確率状態においては、WC RND1がその場合の大当り判定値である「7」,「11」,「79」のうち、いずれかであれば大当りとなり、これらの値以外であれば大当り以外となる。このような大当りの判定用の値は、大当り判定値と呼ばれる。
【0075】大当りとすることが決定された場合には、抽出したWC RND Lの値を引続いて判定することにより、大当りを発生させるための特別図柄(大当り図柄)の種類を決定する。」

(キ)「【0079】以上より、大当りが発生する確率は通常状態において設定1では、1/294に設定されており、設定2では1/378に設定されており、設定3では1/408に設定されている。一方、高確率状態において大当りが発生する確率は、設定1では3/294に設定されており、設定2では7/378に設定されており、設定3では8/408に設定されている。
【0080】このパチンコ遊技機1においては、前述したように、大当りの図柄が確率変動図柄になっている場合に、確率変動により高確率状態が発生する。このような高確率状態は、次回に発生する大当りの図柄が確率変動図柄になれば再度発生する。このため、高確率状態が繰返し連続的に発生する場合がある。しかし、このパチンコ遊技機1の場合には、高確率状態を所定回数以上連続的に発生させないように、高確率状態の連続回数を制限する制御が行なわれる。この実施の形態の場合には、最初に確率変動図柄で大当りが発生すると、それ以降、連続的に4回高確率状態に制御された場合に、その次の回(5回目)の大当りが確率変動図柄での大当りにならないように制御される。以下、このような制御を回数制限制御と呼ぶ。」

以上、上記(ア)乃至(キ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「左,中,右の3つの可変表示部の特別図柄の画像を表示可能な画像表示部5を有した可変表示装置4を備え、可変表示装置4の可変表示部で可変表示される特別図柄が所定の組合せで停止表示されたとき、大当りが発生し、可変入賞球装置10は開閉板61が閉成して打玉が大入賞口に入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態から、打玉が入賞可能な遊技者にとって有利な第1の状態として、開閉板61が開成状態となる特定遊技状態となり、大入賞口に入った打玉が特定領域に入賞すれば、その回の可変入賞球装置10の遊技者にとって有利な第1の状態が終了するのを待って、再度、可変入賞球装置10を前記第1の状態に駆動制御する繰返し継続制御が行なわれ、この繰返し継続制御により可変入賞球装置10は最高16回連続して前記第1の状態となり、上記特別図柄の所定の組合せには、所定回数の繰返し継続制御がすべて終了した後に、通常状態となる特別図柄の組合せと、特別遊技状態としての高確率(確率変動)状態を発生させる特別図柄の組合せが含まれているパチンコ遊技機1において、
ランダムカウンタのカウント値の抽出処理は、基本回路66の内部に設けられたCPU661がROM662の制御プログラムに従って実行し、
可変表示装置4における特別図柄の変動表示の結果、大当りを発生させるか否かを事前に決定するための大当り決定用ランダムカウンタWC RND1を備え、大当りとすることが決定された場合には、抽出したWC RND Lの値を引続いて判定することにより、大当りを発生させるための特別図柄(大当り図柄)の種類を決定し、大当りの図柄が確率変動図柄になっている場合に、大当り判定値を「7」から「7」,「11」,「79」とし、通常状態に比べて大当りが発生する確率が高くされ、確率変動により高確率状態が発生するパチンコ遊技機1」
の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明1」という。)。

(4)対比
引用発明1の「左,中,右の3つの可変表示部の特別図柄の画像」は、本願補正発明の「数字、記号、模様または絵などの多種多様な図柄」に相当する。以下同様に、
「可変表示装置4」は「変動表示器」に、
「可変表示」は「変動表示」に、
「パチンコ遊技機1」は「遊技機」に、
「CPU661」は「制御部」に、それぞれ相当する。

引用発明1は、「可変表示装置4の可変表示部で可変表示される特別図柄が所定の組合せで停止表示されたとき、大当りが発生し」「通常状態となる特別図柄の組合せと、特別遊技状態としての高確率(確率変動)状態を発生させる特別の組合せが含まれている」のであるから、「普通図柄が揃って停止すると普通大当りとなり」「通常状態になる一方」「特別図柄が揃って停止すると普通大当りよりも好条件の確率変動大当りとなり」「通常状態よりも高い確率で何れかの大当りが発生しやすい確率変動状態になる」「遊技機」であるといえる。
また、引用発明1は、「大当りが発生し、可変入賞球装置10は開閉板61が閉成して打玉が大入賞口に入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態から、打玉が入賞可能な遊技者にとって有利な第1の状態として、開閉板61が開成状態となる特定遊技状態となり、大入賞口に入った打玉が特定領域に入賞すれば、その回の可変入賞球装置10の遊技者にとって有利な第1の状態が終了するのを待って、再度、可変入賞球装置10を前記第1の状態に駆動制御する繰返し継続制御が行なわれ、この繰返し継続制御により可変入賞球装置10は最高16回連続して前記第1の状態となり、所定回数の繰返し継続制御がすべて終了した後に」「通常状態となる特別図柄の組合せと、特別遊技状態としての高確率(確率変動)状態を発生させる特別の組合せが含まれている」のであるから、「普通大当り」か「確率変動大当り」かのいずれかの「大当りゲームの終了後に」「通常状態」となるか「確率変動状態」となる「遊技機」であるといえる。
また、引用発明1は、「可変表示装置4における特別図柄の変動表示の結果、大当りを発生させるか否かを事前に決定するための大当り決定用ランダムカウンタWC RND1を備え、大当りとすることが決定された場合には、抽出したWC RND Lの値を引続いて判定することにより、大当りを発生させるための特別図柄(大当り図柄)の種類を決定し、大当りの図柄が確率変動図柄になっている場合に、大当り判定値を「7」から「7」,「11」,「79」とし、通常状態に比べて大当りが発生する確率が高くされ、確率変動により高確率状態が発生する」のであるから、「発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定」しているといえる。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「数字、記号、模様または絵などの多種多様な図柄を変動表示器に変動表示して、普通図柄が揃って停止すると普通大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態になる一方、特別図柄が揃って停止すると普通大当りよりも好条件の確率変動大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態よりも高い確率で何れかの大当りが発生しやすい確率変動状態になる遊技機において、
発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定する制御部を具備し、
前記制御部は、大当り発生確率を変更した前記確率変動状態にすること、
を特徴とする遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明では、通常状態と確率変動状態とで発生させる乱数の種類数を変更する制御部を具備し、確率変動状態で発生させる乱数の種類数を、通常状態で発生させる乱数の種類数よりも少なくし、及び、普通大当りとなる乱数を減少させ且つ確率変動大当りとなる乱数を増加させることにより、普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更した前記確率変動状態にしているのに対して、引用発明1では、そのような確率変動状態としていない点。

(5)判断
<相違点>について
まず、本願補正発明における「乱数の種類数を変更する」という記載について検討すると、「種類」とは一般的に「いくつかの個体に共通の性質によって分類しまとめたもの。また、そのようにして総体を分類したときに生ずるまとまり。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であり、「数」とは一般的に「一つ、二つ、三つなど、ものを個々にかぞえて得られる値。この概念(自然数)を拡張した抽象的概念(普通には「すう」と呼ぶ)をもいう。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であることから、記載の意味が必ずしも明確とはいえないが、本願の明細書の【0033】を参酌すると、乱数の数を変更することであるから、「乱数の種類数を変更する」とは、乱数の数を変更することであると解釈して以下検討を進めることとする。
遊技機の分野において「発生させる乱数の種類数を少なくして、発生確率を高めること」、すなわち、大当りとなる乱数の種類数である分子を変更せずに、発生させる乱数である分母の種類数を少なくして、大当りとなる確率を高めることは、たとえば、特開2000-116884号公報(特に、【0045】、【0046】を参照)、特開平10-127878号公報(特に、【0017】を参照)にみられるように周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
また、遊技機の分野において「確率変動状態で普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更すること」は、例えば、特開平9-182845号公報(特に、【0036】を参照)、特開平8-323000号公報(特に、【0036】、【0037】を参照)にみられるように周知技術(以下「周知技術2」という。)である。
ここで、遊技機の大当り確率をどのように変更するかは、数学的な手法として周知な手法や従来より遊技機の分野において周知な手法から当業者が適宜選択し得る事項に過ぎないため、引用発明1において、大当り発生確率を変更する手段を上記周知技術1と置換することは当業者が容易に想到し得たことであり、また、大当りの振り分けをどのようにするかは当業者が所望の遊技性等に応じて当業者が適宜決定し得る事項に過ぎないため、引用発明1において、確率変動状態における大当りの振り分けに上記周知技術2を採用し、その際に、普通大当りと確率変動大当りの確率の変更の手法として、確率を変更する際に数学的に広く一般に知られている分子を変更する手法を用いて、普通大当りとなる乱数を減少させ、確率変動大当りとなる乱数を増加させることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1及び周知技術1、2から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

なお、本願補正発明における「発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定する」点は、この記載では、引用発明1とその点において相違しないものの、本願の明細書の【0033】の「この大当り確率を変更する第1の方法としては、0から999までの値(1000種類)を乱数で発生させ、その値が0または10の場合を普通大当り、5または15の場合を確率変動大当りとすれば・・・」との記載から、発生させた乱数により普通大当りであるか確率変動大当りであるかを一度に決定しており、発明を実施するための形態では、その点において引用発明1と相違をするものの、発生させた乱数により普通大当りであるか確率変動大当りであるかを一度に決定することは、遊技機の分野において、例えば、特開平11-299988号公報(特に、【0005】、【0006】を参照)、特開2000-79219号公報(特に、【0049】、【0050】を参照)にみられるように周知技術(以下「周知技術3」という。)であるから、引用発明1の普通大当り、確率変動大当りの決定手段を、上記周知技術3と置換することは当業者が容易になし得たことである点に留意されたい。

(6)本願補正発明についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成22年10月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成22年7月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである
「【請求項1】数字、記号、模様または絵などの多種多様な図柄を変動表示器に変動表示して、普通図柄が揃って停止すると普通大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態になる一方、特別図柄が揃って停止すると普通大当りよりも好条件の確率変動大当りとなり、大当りゲームの終了後に通常状態よりも高い確率で何れかの大当りが発生しやすい確率変動状態になる遊技機において、
発生させた乱数により普通大当りや確率変動大当りを決定する制御部を具備し、前記制御部は、確率変動状態で発生させる乱数の種類数を、通常状態で発生させる乱数の種類数よりも少なくし、及び、普通大当りとなる乱数を減少させ且つ確率変動大当りとなる乱数を増加させることにより、普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更すること、
を特徴とする遊技機。」(この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-57140号公報(引用文献1)に記載された発明は、前記「2.(3)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(2)で検討したとおり本願補正発明から、制御部の制御内容を限定した技術事項、及び、「普通大当りが当選する普通大当り確率よりも確率変動大当りが当選する確率変動大当り確率が高くなるように大当り発生確率を変更すること」が「確率変動状態」であることを確認的に追加した部分、をそれぞれ削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(5)に記載したとおり、引用発明1及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-25 
結審通知日 2010-11-26 
審決日 2010-12-09 
出願番号 特願2010-102574(P2010-102574)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
発明の名称 遊技機  

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