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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1231272
審判番号 不服2008-476  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-09 
確定日 2011-01-31 
事件の表示 特願2002-189312「カード遊戯具」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月29日出願公開、特開2004- 24745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願の手続の経緯概要は以下のとおりである。
平成14年 6月28日 出願
平成19年 7月23日 拒絶理由通知
平成19年12月 3日 拒絶査定
平成20年 1月 9日 拒絶査定不服審判請求、手続補正(A)
平成21年 3月 9日 審尋
平成21年 5月18日 回答書
平成21年 8月17日 補正却下(Aについて)、拒絶理由通知
平成21年10月22日(差出)手続補正
平成21年12月22日 拒絶理由通知(最後)
平成22年 3月 4日(差出)手続補正(B)
平成22年 6月22日 補正却下(Bについて)、拒絶理由通知 (最後)
平成22年 8月28日(差出)手続補正

第2.平成22年8月28日(差出)の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年8月28日(差出)付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成22年3月4日(差出)の手続補正は平成22年6月22日付けで却下されているので、本件補正は平成21年10月22日(差出)の手続補正によって補正された明細書を補正するものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「数字の+5の文字が表記された+5カード、数字の+10の文字が表記された+10カード、数字の+15の文字が表記された+15カード、数字の+20の文字が表記された+20カード、数字の+25の文字が表記された+25カードというように+5刻みに増えるあるいは減る数字の文字が、該文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記されたカード群からなる+カード群と、
数字の-5の文字が表記された-5カード、数字の-10の文字が表記された-10カード、数字の-15の文字が表記された-15カード、数字の-20の文字が表記された-20カード、数字の-25の文字が表記された-25カードというように-5刻みに増えるあるいは減る数字の文字が、該文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記されたカード群からなる-カード群を設けてなるとともに、
前記カードの全てが長方形であり且つ該長方形を縦向き形態として前記文字のそれぞれが横書きで表記され、前記文字の内の二桁数字の文字の横幅が前記カードの1/3以上の横幅であり、前記カードを横に並べた状態においては前記文字と文字の間に該文字以外の記号、文字、絵柄などが介在しない足し算と引き算からなる算数の式が形成されることを特徴とするカード遊戯具。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

本件補正は、補正前請求項1の「カード」について「前記カードの全てが長方形であり且つ該長方形を縦向き形態として前記文字のそれぞれが横書きで表記され、」との限定を付すものであり、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献
平成22年6月22日付けの拒絶理由通知に引用された登録実用新案第3062599号公報(発行日:平成11年10月8日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。なお、「/」は原文における改行を示す。

・【実用新案登録請求の範囲】/【請求項1】 カードにマイナスあるいはプラスの点数を表示すると共に、右あるいは左側の人に渡すべく表示してあるカードを混在させてなることを特徴とするカードゲーム。/【請求項2】 罰ゲーム等を表示したカードを混在させてなることを特徴とする請求項1記載のカードゲーム。
・【0006】/【考案の実施の形態】/1は、カードゲームの中のプラスの点数(この実施例の場合100)を示したプラスカードである。/2は、カードゲームの中のマイナスの点数(この実施例の場合100)を示したマイナスカードである。/3は、カードゲームの中のプラスの点数(この実施例の場合200)を示すと共に、左の人にこのカードをあげるべくメッセージ3aを表示してなる左側渡しカードである。/4は、カードゲームの中のマイナスの点数(この実施例の場合200)を示すと共に、右の人にこのカードをあげるべくメッセージ4aを表示してなる右側渡しカードである。/5は、カードゲームの中で罰ゲーム5a(この実施例の場合、自分の得意な曲を歌う、と表示してある)を表示してなる罰ゲームカードである。/なお、点数の合計は例えばプラスは10,000点、マイナスも10,000点(プラス・マイナスを合計で0とする)とし枚数は80枚程度とし、罰ゲームカード5は10?20枚程度とする。
・【0007】/以上の各カードを必要枚数(この実施例の場合100枚程度)組合せてなるカードゲームであり、遊び方としては、例えばテーブルT上に各カードを裏返しにして並べる。/つぎに、参加者Aから順次時計回り(B?Hへ)に各カードを取っていく、この時各参加者A?Hは引いたカードを参加者に見せてもよく、見せなくてもよい。・・・このように、参加者A?Hが全員各カードを引き終った時点で各カードの合計点を計算し、順位等を決めるものである。
・【0008】・・・さらに、プラス及びマイナスの点数も自由に設定すればよく、合計点数や合計枚数も必要に応じて増減すればよい。
・【図1】には、「+100」の文字のみが一つだけ、該文字の左右に文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記された長方形のカードが図示されており、数字の文字の横幅はカードの1/3以上の横幅であることが図示されている。
・【図2】には、「-100」の文字のみが一つだけ、該文字の左右に文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記された長方形のカードが図示されており、数字の文字の横幅はカードの1/3以上の横幅であることが図示されている。

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「数字の「+100」の文字のみが一つだけ表記されたプラスカード1、数字の「-100」の文字のみが一つだけ表記されたマイナスカード2、プラスの点数を示すと共に、左の人にこのカードをあげるべくメッセージ3aを表示してなる左側渡しカード3、カードゲームの中のマイナスの点数を示すと共に、右の人にこのカードをあげるべくメッセージ4aを表示してなる右側渡しカード4、罰ゲーム5aを表示してなる罰ゲームカード5からなり、点数の合計は例えばプラスは10,000点、マイナスも10,000点(プラス・マイナスを合計で0とする)とし枚数は80枚程度とし、罰ゲームカード5は10?20枚程度とし、さらに、プラス及びマイナスの点数も自由に設定すればよいものであり、
プラスカード1とマイナスカード2は、長方形であり、「+100」又は「-100」の文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記されたカードであって、文字内の数字の文字の横幅はカードの1/3以上の横幅である、
カードゲーム。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
・引用発明の「カードゲーム」は、その【実用新案登録請求の範囲】における記載を含む引用文献1全体の記載からみて、本願補正発明の「カード遊戯具」に相当する。
・引用発明の「プラスカード1」及び「マイナスカード2」も、本願補正発明の「カード」も、「+」及び「-」を含む数字の文字のみが一つだけ表記され、「文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記された」点で一致している。
・引用発明の「プラスカード1」及び「マイナスカード2」はそれぞれ何枚あるか引用文献1には明記されていないが、「(点数の合計は例えばプラスは10,000点、マイナスも10,000点とし)枚数は80枚程度とし」ている点及び「カードにマイナスあるいはプラスの点数を表示すると共に、右あるいは左側の人に渡すべく表示してあるカードを混在させてなる」(【請求項1】)との記載からみて、「プラスカード1」及び「マイナスカード2」はそれぞれ複数枚数のカードから構成されていることは自明である。そうすると、複数枚数の「プラスカード1」及び「マイナスカード2」は、それぞれ「カード群からなる+カード群」及び「カード群からなるマイナスカード群」を構成するものである。
・数字の桁が二桁か三桁かは別として、引用発明と本願補正発明は、文字のうち数字の文字の横幅がカードの1/3以上の横幅である点では共通している。
・引用発明において、「プラスカード1」及び「マイナスカード2」に表記されている数字の文字である「+100」及び「-100」は一例であって、プラス及びマイナスの点数は自由に設定すればよいものである。

したがって、本願補正発明と引用発明は、
「「+」を含む数字の文字が、該文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記されたカード群からなる+カード群と、
「-」を含む数字の文字が、該文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記されたカード群からなる-カード群を設けてなるとともに、
文字のうち数字の文字の横幅がカードの1/3以上である、カード遊戯具。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
+カード群を構成するカードに一つだけ表記される数字の文字が、本願補正発明においては、数字の+5の文字、数字の+10の文字、数字の+15の文字、数字の+20の文字、数字の+25の文字というように+5刻みに増えるあるいは減る数字の文字であるのに対して、引用発明では「+100」を例として自由に設定すればよいものである点。
<相違点2>
-カード群を構成するカードに一つだけ表記される数字の文字が、本願補正発明においては、数字の-5の文字、数字の-10の文字、数字の-15の文字、数字の-20の文字、数字の-25の文字というように-5刻みに増えるあるいは減る数字の文字であるのに対して、引用発明では「-100」を例として自由に設定すればよいものである点。
<相違点3>
本願補正発明では、カードのすべてが長方形であり且つ該長方形を縦向き形態として文字のそれぞれが横書きで表記されているのに対し、引用発明ではそのような構成でない点。
<相違点4>
横幅がカードの1/3以上の横幅となっている、文字のうちの数字の文字が、本願補正発明では二桁であるのに対し、引用発明では三桁である点。
<相違点5>
本願補正発明では、カードを横に並べた状態においては文字と文字の間に該文字以外の記号、文字、絵柄などが介在しない足し算と引き算からなる算数の式が形成されるのに対し、引用発明においては不明な点。
<相違点6>
本願の請求項1には「のみ」とは記載されていないが、本願補正発明が「+カード群」と「-カード群」のみからカード遊戯具が構成されると解する余地があるので、このように解すると、次の点で相違する。
本願補正発明では「+カード群」と「-カード群」のみからカード遊戯具が構成されるのに対し、引用発明では「+カード群」と「-カード群」に加えて「左側渡しカード3」、「右側渡しカード4」及び「罰ゲームカード5」からカード遊戯具が構成される点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1、2について
相違点1、2は関連しているので、あわせて検討する。
各カードに表記する数字をどのようものにするかは、それによって格別の技術的効果が奏されるものでもなく、遊戯性を考慮しつつ適宜決定すればよい事項に過ぎないものである。
また、加減を行う数字カードにおいて、「5飛びの順列となる5、10、15、20・・・50」の数字を対象とすることは、実願昭58-113639号(実開昭60-21763号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という、端的には明細書第3頁2-4行及び第1図、5図を参照)に示されているから、引用発明において、演算を簡易とするとともに「100点上り」にスムーズに到達することを勘案し、カードの点数を「5飛びの順列となる5、10、15、20、・・・・50」とし、「+5刻みに増えるあるいは減る数字の文字」及び「-5刻みに増えるあるいは減る数字の文字」とすることは、想到容易な事項でもある。
(2)相違点3について
カードのすべてが長方形であり且つ該長方形を縦向き形態として文字のそれぞれが横書きで表記されているものは、例えばトランプに示されるようによく知られているものであり、また、上記引用文献2、特開平6-39080号公報、特開平6-274100号公報に示されるように従来周知である。
そうすると、引用発明において、カードのすべてを長方形とし且つ該長方形を縦向き形態として文字のそれぞれを横書きで表記することにより、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。
(3)相違点4について
引用発明において「+5刻みに増えるあるいは減る数字の文字」及び「-5刻みに増えるあるいは減る数字の文字」とすることは適宜決定すればよい事項に過ぎず、また想到容易であることは上記したとおりであるが、その結果カードに表記する数字が二桁の場合に、引用発明において三桁の数字を表記していた横幅と同じ横幅でその二桁の数字を表記することは格別の技術的困難性はなく、設計事項にすぎない。
(4)相違点5について
カードゲームにおいて、1ゲームの最後に、各自が手持ちのカードを自分の前に並べて他者に曝し、他者と手持ちカードの優劣(点数)を競うことが従来よりよく行われていることであることは、例を挙げるまでもないことである。
そして、引用発明においては、「参加者A?Hが全員各カードを引き終った時点で各カードの合計点を計算し、順位等を決めるものである。」(【0007】)から、カードを並べて置くことは十分想定されるものであり、かつ引用発明においても「該文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記された」ものである。そうすると、引用発明のカードにおいて「カードを横に並べた状態」とすることは十分に想定されることであって、カードに数字以外のものが表記されていない以上、カードを横に並べた状態で数式が形成されることは明らかであるから、引用発明も「カードを横に並べた状態においては前記文字と文字の間に該文字以外の記号、文字、絵柄などが介在しない足し算と引き算からなる算数の式が形成される」ものであり、相違点5は実質的な相違点ではない。
(5)相違点6について
引用発明において「+カード群」及び「-カード群」以外のカードは、加減算を行うゲームに更に変化を与えるためのものであって、付加的なカードである。そして、ゲームの多様性、年齢、能力等を考慮してそのような変化を与えることが不要な場合にそのようなカードを採用しないことは、適宜なし得た事項といわざるを得ない。
また、実公昭38-12853号公報(以下、「引用文献3」という。)に「+または-を附した数字」を記載した絵カードのみからなるゲームカードが記載されているから、引用発明において加減算を行わないカードを含ませないことは想到容易でもある。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明
1.本願発明の認定
平成22年8月28日(差出)の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年10月22日(差出)の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「数字の+5の文字が表記された+5カード、数字の+10の文字が表記された+10カード、数字の+15の文字が表記された+15カード、数字の+20の文字が表記された+20カード、数字の+25の文字が表記された+25カードというように+5刻みに増えるあるいは減る数字の文字が、該文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記されたカード群からなる+カード群と、
数字の-5の文字が表記された-5カード、数字の-10の文字が表記された-10カード、数字の-15の文字が表記された-15カード、数字の-20の文字が表記された-20カード、数字の-25の文字が表記された-25カードというように-5刻みに増えるあるいは減る数字の文字が、該文字の左右に該文字以外の記号、文字、絵柄などが無く表記されたカード群からなる-カード群を設けてなるとともに、
前記文字の内の二桁数字の文字の横幅が前記カードの1/3以上の横幅であり、前記カードを横に並べた状態においては前記文字と文字の間に該文字以外の記号、文字、絵柄などが介在しない足し算と引き算からなる算数の式が形成されることを特徴とするカード遊戯具」

2.進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「カード」についての「前記カードの全てが長方形であり且つ該長方形を縦向き形態として前記文字のそれぞれが横書きで表記され、」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、引用文献2、3に記載されて技術事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2、3に記載されて技術事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-18 
結審通知日 2010-10-26 
審決日 2010-11-11 
出願番号 特願2002-189312(P2002-189312)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 立川 功
井上 昌宏
発明の名称 カード遊戯具  

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