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審決分類 審判 全部無効 特39条先願  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1231829
審判番号 無効2008-800148  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-08-11 
確定日 2011-01-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3274407号「遊技機の回路基板ボックス」の特許無効審判事件についてされた平成21年11月16日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成21年(行ケ)第10410号、平成22年2月19日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第一.手続の経緯
本件特許第3274407号に係る発明についての手続の経緯の概略は以下のとおりである。
1.平成10年 2月17日:特許出願(原出願である特願平5-85228号の出願日は平成5年3月19日)
2.平成14年 2月 1日:特許権の設定登録
3.平成20年 8月11日:無効審判請求
4.平成20年12月 1日:答弁書(第1回)提出及び訂正請求
5.平成21年 2月25日:弁駁書提出
6.平成21年 7月 8日:答弁書(第2回)提出
7.平成21年11月16日:審決(請求項1の訂正を認めず、特許無効)
8.平成21年12月16日:被請求人による審決取消訴訟の提起
(平成21年(行ケ)10410号)
9.平成22年 1月 5日:訂正審判請求
(訂正2010-390002号)
10.平成22年 2月19日:特許法181条2項の規定に基づく決定
(審決取消の決定)
11.平成22年 3月 2日:特許法134条の3第2項の規定に基づく
通知書
12.平成22年 3月12日:被請求人より訂正請求書提出
13.平成22年 5月 7日:請求人より上申書及び手続補正書提出
14.平成22年11月24日:補正許否の決定(補正許可)

第二.平成22年3月12日付けの訂正請求について
まず、この審決においては、平成22年3月12日付けの訂正請求(以下「本件訂正」という。)に係る明細書及び図面並びに特許請求の範囲の請求項1を、それぞれ「訂正後の明細書等」並びに「訂正後の請求項」と記載し、設定登録時の願書に添付した明細書及び図面並びに特許請求の範囲の請求項1を、それぞれ「訂正前の明細書等」並びに「訂正前の請求項」と記載することとする。
さらに、訂正後の請求項に係る発明及び訂正前の請求項に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明」及び「訂正前発明」と記載し、また、遊技機の分野における通常の知識を有する者のことを「当業者」ということとする。

1.訂正請求の内容
本件訂正は、訂正前の明細書等を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。(下線部は訂正により追加又は変更された箇所を示す。)
なお、平成21年11月16日付け審決により、平成20年12月1日付け訂正請求書による訂正のうち、請求項2を削除する訂正は確定している。

・訂正事項1
特許請求の範囲のうち請求項1を次のとおり訂正する。
「【請求項1】遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設け、前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる一方、前記箱体に前記回路基板を止着したことを特徴とする回路基板ボックス。」

・訂正事項2
明細書の段落番号【0004】の記載を次のとおり訂正する。
「【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明が採用した解決手段を図面を参照して説明すると、図1及び図2に示すように、遊技機に設けられる回路基板70を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックス50において、該回路基板ボックス50には、前記箱体51の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体60の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部66aが形成された係止垂下片66とを係合することにより、前記カバー体60に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体60の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片66の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段57,66を設け、前記箱体51の底面には、長方形状の開口53が開設され、前記開口を閉塞するために透明板59が前記箱体51の内側から底面に当接して設けられる一方、前記箱体51に前記回路基板70を止着したことを特徴とするものである。このように構成することにより、内部に被覆される回路基板70を取り出すには、係止垂下片の前記回路基板ボックス50に対して外部に突出している部分を切断する以外に方法はなく、仮に係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。また、切断すべき係止垂下片66の頭部が透明合成樹脂製カバー体60から外部に突出しているので、遊技場等での実地検査を行う場合に容易に被覆状態を解除することができる。」

・訂正事項3
明細書の段落番号【0039】の記載を次のとおり訂正する。
「【発明の効果】以上、説明したところから明らかなように、本発明においては、前記係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を切断する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が切断されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。また、前記係止垂下片の切断すべき部分が透明合成樹脂製カバー体から外部に突出しているので、遊技場等での実地検査を行う場合に容易に被覆状態を解除することができる。なお、回路基板ボックスは、回路基板のハンダ面が外部から透視し得ることにより、仮にハンダ面に不正な工作をした場合には、直ちに分かるようになっている。」

2.本件訂正に関する被請求人の主張
平成22年3月12日付けの訂正請求書における、本件訂正についての被請求人の主張は次のとおりである(5?7頁、6.(4))。
(1)訂正事項1は、訂正前の明細書等の段落【0017】及び【0021】の記載に基づき「回路基板ボックス」を「箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体」に限定し、同段落【0024】の記載に基づき「固着手段」の構成を限定し、同段落【0018】及び【0020】の記載に基づき「箱体」の構成を限定したものである。
(2)訂正事項2及び3は、特許請求の範囲の訂正により明りょうでなくなった事項を明りょうにする訂正である。

3.本件訂正に関する請求人の主張
請求人は、平成22年5月7日付け手続補正書において「平成22年3月12日付けの訂正請求による訂正を認める。」としている(2頁、6.(A)(3))。

4.本件訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
a.訂正事項1のうち「回路基板ボックス」について、「箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックス」とする訂正は、訂正前の明細書等の段落【0017】における「しかして、回路基板ボックス50は、遊技制御回路基板70を被覆支持する箱体51と、該箱体51の上面を閉塞するカバー体60とから組付構成され、」との記載及び同段落【0021】における「一方、上記した箱体51の上面を閉塞するカバー体60は、透明な合成樹脂によって一体的に成形されるもので、」との記載に基づいて、「回路基板ボックス」を「箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる」ものに限定するものである。
b.訂正事項1のうち「回路基板ボックスは、」を「回路基板ボックスには、」とする訂正は、その述語が「設け」であることから、文法的に正しい表現とするための訂正であるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
c.訂正事項1のうち「前記回路基板を被覆するための箱体と透明合成樹脂製カバー体とからなる構成部品に係る所定の部位を破壊しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段」について、「前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段」とする訂正は、訂正前の明細書等の段落【0019】における「また、箱体51の長手方向両側壁内側には、係止突起57が形成されている。この係止突起57は、カバー体60を箱体51に被覆したときにカバー体60の裏面に垂下形成される係止垂下片66と係合するようになっており、この係止突起57と係止垂下片66との係合状態は、外部から操作してその係合状態を解除することができない固着手段を構成している。」との記載及び同段落【0024】における「係止垂下片66は、箱体51の側壁内側に設けられる係止突起57に対応するもので、図1(B)に示すように、係止垂下片66は、カバー体60に形成された貫通穴66bを貫通して一旦上方に突出された後U字状に曲折されてカバー体60の上面と一体的に接続されて形成され、その下端に外側に突設する爪部66aが形成されている。一方、係止突起57は、その上面が傾斜面57aとなっており、その下部が鋭角的に切り込まれた係合面57bとなっている。・・・一旦カバー体60を箱体51に装着した後には、簡単にカバー体60を箱体51から外すことはできない。しかして、これを外そうと思えば、図1(B)に示すように回路基板ボックス50に対して外部に突出している部分をB-B線に沿ってニッパ等で切断して図1(C)に示すように、係止垂下片66をカバー体60から分離させなければならない。」との記載に基づいて、「固着手段」を限定するものである。
d.訂正事項1のうち「前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」を追加する訂正は、訂正前の明細書等の段落【0018】の「また、箱体51の底面には、比較的大きな長方形状の開口53が開設され、」の記載及び【0020】の「また、箱体51の前記開口53を閉塞するために透明板59が箱体51の内側から底面に当接して設けられる。」の記載に基づき「箱体」の構成を限定したものである。
e.訂正事項1のうち「特徴とする遊技機の回路基板ボックス」を「特徴とする回路基板ボックス」とする訂正は、訂正後においても「回路基板ボックス」は、遊技機に設けられる回路基板を被覆するものであることから「遊技機の」を削除しても意味は変わらず、不要な記載の削除に当たるので、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
f.よって、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮又は明りようでない記載の釈明を目的としている。

(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、訂正後の特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載が整合するように、訂正前の明細書等の段落【0004】及び【0039】の記載を訂正するものであるから、訂正事項2及び3は、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正事項1?3は、いずれも特許請求の範囲の減縮又は明りようでない記載の釈明を目的としており、かつ、訂正前の明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、上記訂正事項1?3は、平成6年法律116号による改正前の特許法134条2項ただし書に適合し、同法134条5項において準用する同法126条2項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第三.当事者の主張(本件訂正に関するものを除く)
1.請求人の主張
(1)請求人が提出した書証
請求人は、平成20年8月11日付けの審判請求書において、本件特許は特許法123条1項2号により無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第19号証を提出し(同書5?17頁、7(3)(ロ)及び26、27頁、8(1)(2))、また、平成21年2月27日付けの弁駁書において、甲第20号証を提出している(同書12頁、8(1))。
さらに、請求人は、平成22年5月7日付け手続補正書において、本件訂正発明は特許法39条2項及び同法29条2項の規定により特許を受けることができないものであると主張し、証拠方法として甲第20号証?甲第26号証を追加提出している(同書2頁6(A)(2)及び16?24頁6(A)(4)(ロ)(20)?(26))。
以下、この審決においては「甲第1号証」を「甲1」と記載し、「甲第2号証」等についても同様に記載することとする。

【平成20年8月11日付けの審判請求書に添付】
甲1 :特許第2954445号公報
甲2 :「特許実用新案審査基準」表紙、序、備考、第4章1?15頁及び奥付(社団法人発明協会発行)
甲3 :特開平4-231987号公報
甲4 :実願昭54-164697号(実開昭56-81853号)のマイクロフィルム
甲5 :実願昭55-88124号(実開昭57-11760号)のマイクロフィルム
甲6 :特開平1-139363号公報
甲7 :実願昭61-106465号(実開昭63-13871号)のマイクロフィルム
甲8 :グリコ乳業株式会社ホームページの抜粋「パッケージデザインの歴史001」
甲9 :実願昭61-98744号(実開昭63-3915号)のマイクロフィルム
甲10:実公平3-12653号公報
甲11:実公平2-37717号公報
甲12:実公昭60-27412号公報
甲13:実公平2-10547号公報
甲14:実公平4-1583号公報
甲15:実公平4-3333号公報
甲16:実公昭63-6047号公報
甲17:実願昭53-91825号(実開昭55-9550号)のマイクロフィルム
甲18:特開平5-41466号公報
甲19:特開平5-42790号公報

【平成21年2月25日付けの弁駁書に添付】
甲20:特開平5-42249号公報

【平成22年5月7日付けの手続補正書に添付】
甲20:特開平5-42249号公報
甲21:無効2008-800147号(特許第2954445号)の平成20年12月1日付け訂正請求書
甲22:無効2008-800147号(特許第2954445号)の平成21年6月30日付け審決
甲23:特開平4-215781号公報
甲24:特開平4-276278号公報
甲25:特開平4-325174号公報
甲26:特開平4-269983号公報

(2)先後願違反(手続補正書24?27頁、6(A)(4)(ハ))
本件訂正発明と本件特許出願の原出願にかかる特許第2954445号の発明(甲21の訂正請求書により訂正がなされ、甲22の審決により訂正が認められたもの、以下「原出願訂正発明」という。)とを対比すると以下の点で相違する。
<相違点A>
本件訂正発明では、「前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」構成であるのに対し、原出願訂正発明ではそのように構成されていない点。
<相違点B>
本件訂正発明では、「前記箱体に前記回路基板を止着」する構成であるのに対し、原出願訂正発明ではそのように構成されていない点。

しかし、相違点Aについては、「前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」構成は、甲23?25に記載されているように、本件特許の出願当時における周知慣用技術に過ぎない。
また、相違点Bについては、「前記箱体に前記回路基板を止着」する構成は、甲3、23、24、26に記載されているように本件特許の出願当時における周知慣用技術に過ぎない。
よって、相違点A、Bは「周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの」に相当することから、本件訂正発明と原出願訂正発明との同一性を判断する上で相違点となり得ず、本件訂正発明は特許法39条2項の規定に違反する。
以下、この無効理由を「無効理由1」という。

(3)進歩性(手続補正書28?36頁、6(A)(4)(ニ))
本件訂正発明と甲3(特開平4-231987号公報)に記載された発明(以下「甲3記載の発明」という。)とを対比すると以下の点で相違する。
<相違点1>
本件訂正発明では、「前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起」を備える構成であるのに対し、甲3記載の発明ではそのような構成を備えていない点。
<相違点2>
本件訂正発明では、「前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片」を備える構成であるのに対し、甲3記載の発明ではそのような構成を備えていない点。
<相違点3>
本件訂正発明では、「貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片」を備えるのに対し、甲3記載の発明ではそのような構成を備えていない点。
<相違点4>
本件訂正発明では、「係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除できない」構成であるのに対し、甲3記載の発明ではそのような構成を備えていない点。
<相違点5>
本件訂正発明では、「前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」構成であるのに対し、甲3記載の発明ではそのような構成を備えていない点。

<相違点1、2について>
甲20(特開平5-42249号公報)の段落【0026】には「枠制御ボックス70の一部を構成する下カバー72は、周縁部に起立片84を有すると共に、適宜位置に係止爪85を有しており、該係止爪85を後述する上カバー73の係止孔86に係止さることにより、上カバー73と下カバー72とを一体とする。」との記載があり、甲20の図6(B)を見ればわかるように、下カバー72の「係止爪85」の先端が上カバー73の「係止孔86」に嵌り込んで係止している。そして、爪と孔による係止構造において、「係止孔86」を、上カバー73の内壁面に形成した突起に置き換え、さらにその突起の一方端部を、本件訂正発明のように、鋭角的に切り込まれた係合面とすることは当業者であれば容易に想到可能である。
一方、甲20の「係止爪85」は下カバー72の周縁部に設けられているが、「係止爪85」を下カバー72の表面あるいは裏面に起立して形成することも当業者であれば容易に想到可能であり、そのようにすると、係止状態にある「係止爪85」および突起は外部から操作することができず、上、下カバー72,73が透明でない場合には外部から見ることもできない。このように2つの部材の結合部分を隠す技術は周知の日本建築における「ほぞ」による継手技術があり、この技術に着想を得れば、本件訂正発明のような構造を採用することに何等格別の困難性はない。
<相違点3について>
甲3には少なくとも爪部47が透明カバー体45の側壁外側に突設され、かつ、下方へ伸びて形成されている旨が記載されている。このように突設された爪部47を破壊すれば、爪部47と係合孔43との係合を解除できるのは当然である。また、分野は異なるが、甲4?8に、密封あるいは密閉された容器において突出形成した部分を破壊・切断して密封・密閉状態を解除する技術が開示されている。
このように、密封・密閉容器の突出部分を破壊・切断して密封・密閉状態を容易に解除する技術は、本件特許の出願当時においてすでに周知の技術であり、外部操作により破壊・切断可能にするために密封・密閉容器に突出部分を形成することと、本件訂正発明のように「係止垂下片」をカバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折してカバー体の上面と一体に接続し、「係止突起」と係合状態にある「係止垂下片」のうち唯一外部操作によって切断可能な部位を形成することに格別な技術的差異はない。
してみると、相違点3の構成は甲3?8に基づき、当業者が容易になし得た事項である。
<相違点4について>
相違点4に係る「係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない」構成とするのは、段落【0003】の記載から、「不正」を防止することにあるのは明白であるが、甲3には不正開封の発見を容易にすることに関し、「封印シール81」(段落【0022】及び図1参照)が記載されている。これ以外にも、甲9?19に記載された発明から明らかなように、内部に収納物を収納した収納体を封印する技術に関し、構成部品の一部若しくは全部を破壊しない限り内部のものを取り出せないようにし、不正行為の痕跡・形跡が残るようにすることは、本件特許の出願当時すでに周知の技術である。
してみると、相違点4の構成は甲3、甲9?19に基づき、当業者が容易になし得た事項である。
<相違点5について>
相違点5に係る「前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」点は、<相違点Aについて>で既に述べたように周知慣用技術である。
したがって、相違点5の構成は甲23?25に基づき、当業者が容易になし得た事項に過ぎない。

以上のように、本件訂正発明は、甲3記載の発明に、甲4?20並びに甲23?26に記載の発明を組み合わせることで、当業者が容易になし得た程度のものに過ぎず、進歩性を欠くものであるから、特許法29条2項の規定に違反する。
以下、この無効理由を「無効理由2」という。

2.被請求人の主張(本件訂正に関するものを除く)
(1)無効理由1に対して(答弁書(第1回)2、3頁、7.1)
平成20年12月1日付け訂正請求書に係る請求項1記載の発明(以下「旧訂正発明」という。)と原出願訂正発明とをみると、両者の関係は明らかに「周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって新たな効果を奏するものではないもの」に該当しないから、両発明は同一の発明に該当しない。

(2)無効理由2の甲20による主張に対して(答弁書(第2回)3?7頁、6.2(1))
旧訂正発明の「固着手段」と甲20の「固着手段」とは、その構成が全く相違している。
なぜ、甲20の記載から旧訂正発明の「係止突起」と「係止垂下片」の組み合わせも容易に思い付くとの結論が導かれるのか全く不可解である。
係止爪85および係止孔86を鋭角的に形成することが、甲20の記載からどうして導かれるのか、その主張・立証がなされてしかるべきであるが、なされていない。
甲20には、そのどこにも旧訂正発明の係止垂下片の構成は記載されていない。

第四.本件審判請求についての当審の判断
1.特許第3274407号の発明
上記第二.4.で述べたとおり、本件訂正は適法なものであるので、特許第3274407号の発明(本件訂正発明)は訂正後の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設け、前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる一方、前記箱体に前記回路基板を止着したことを特徴とする回路基板ボックス。」

2.無効理由1について
(1)特許第2954445号の発明
本件特許出願の原出願である特願平5-85228号について登録された特許第2954445号は、本件と同様に特許無効審判が請求され(無効2008-800147号)、平成20年12月1日に訂正の請求がされ、平成21年6月30日付けで訂正を認めるとともに審判の請求は成り立たない旨の審決がなされた。そして、平成21年9月16日に確定審決の登録がなされた。
したがって、特許第2954445号の発明(原出願訂正発明)は、平成20年12月1日付け訂正明細書の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。」

(2)本件訂正発明と原出願訂正発明との対比
そこで、本件訂正発明と原出願訂正発明とを対比すると、両者は、
「遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とする回路基板ボックス。」
の点で一致し、以下の点で相違していることが明らかである。

[相違点A]
本件訂正発明は「箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」ものであるのに対し、原出願訂正発明はそのような構成を有していない点。

[相違点B]
本件訂正発明は「箱体に前記回路基板を止着した」ものであるのに対し、原出願訂正発明は回路基板の止着に関する構成が明らかでない点。

(3)相違点についての判断
[相違点Aについて]
遊技機の回路基板ボックスにおいて、回路基板を収納する箱体の底面に、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられるようにすることは、例えば、甲23(特開平4-215781号公報、特に、段落【0014】及び図1?3)や甲24(特開平4-276278号公報、特に、段落【0023】【0024】及び図1)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術A」という。)であるといえる。
すなわち、原出願訂正発明を先願発明、本件訂正発明を後願発明とした場合、本件訂正発明は先願発明である原出願訂正発明に対して周知技術Aを付加するものといえる。
しかし、周知技術Aを付加することで、訂正後の明細書等の段落【0020】に記載されるように「箱体51の底面を透明板59で閉塞することにより、遊技制御回路基板70の裏面(ハンダ面)が外部から透視し得ることとなり、仮にハンダ面に不正な工作(例えば、ジャンパー配線を接続したり、電子素子を実装したりする不正工作)をした場合には、直ちに分かる」という新たな効果が奏されるものと認められるから、両発明を同一の発明であるとすることはできない。

[相違点Bについて]
遊技機の回路基板ボックスにおいて、「箱体に前記回路基板を止着した」点は、例えば、甲23(特に、段落【0014】及び図1、2)や甲24(特に、段落【0024】及び図1)に記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術B」という。)であるといえる。
すなわち、原出願訂正発明を先願発明、本件訂正発明を後願発明とした場合、本件訂正発明は先願発明である原出願訂正発明に対して周知技術Bを付加するものということができ、逆に原出願訂正発明を後願発明、本件訂正発明を先願発明とした場合、原出願訂正発明は先願発明である本件訂正発明から周知技術Bを削除するものといえる。
まず前者の場合について検討すると、原出願訂正発明は回路基板の止着に関する構成が明らかでないとはいえ、回路基板は何らかの手段によって回路基板ボックス内に固定されているものと認められ、「箱体に前記回路基板を止着した」ことによる効果としては、回路基板の回路基板ボックスへの固定以外の効果を訂正後の明細書等から見いだすことはできないので、原出願訂正発明に対して周知技術Bを付加することによって、新たな効果が奏されるものとはいえない。
次に後者の場合について検討すると、「箱体に前記回路基板を止着した」ことを削除した効果を、訂正後の明細書等から見いだすことはできないので、本件訂正発明から周知技術Bを削除することによって、新たな効果が奏されるものとはいえない。
したがって、相違点Bについては実質的な相違点ということはできない。

(4)まとめ
よって、本件訂正発明と原出願訂正発明とを同一の発明とすることはできず、本件特許が特許法39条2項の規定に違反してされたものということはできない。

3.無効理由2について
(1)証拠方法
請求人が証拠方法として提出した甲3?20及び甲23?26は、上記第三.1.(1)に記載したとおりである。

(1-a)甲3(特開平4-231987号公報)に記載されている発明
甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
【0001】【産業上の利用分野】本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシン等で代表される遊技機を制御するための電子装置を含む遊技制御基板を覆う基板用収容体に関する。
【0020】図1は、基板ケース17の構造を示す分解斜視図である。基板ケース17は、基板収容ボックス本体46、透明カバー体45および開閉カバー体48を備えている。基板収容ボックス本体46および開閉カバー体48は、導電性を有するようにするために、たとえばポリプロピレンにカーボンを混ぜた合成樹脂で形成されている。この樹脂の色は黒色である。また、透明カバー体45は、ポリカーボネイト等で透明に構成されている。
【0021】基板収容ボックス本体46の内部の四隅には、取付部57a,57bが設けられている。MPU,RAM,ROMが実装された遊技制御メイン基板37は、取付部57a,57bにビス59で固定されている。
遊技制御メイン基板37には、コネクタ接続部41があり、コネクタ接続部41にコネクタ19が接続される。
【0022】基板収容ボックス本体46には、係合孔43が設けられており、透明カバー体45に設けられた爪部47がその係合孔43に挿入される。また、基板収容ボックス本体46に設けられた係合孔58には、透明カバー体45に設けられた係合爪部60が係合する。さらに、基板収容ボックス本体46に設けられた係合孔49には、透明カバー体45に設けられた係合爪部51が係合する。係合孔43、49、58、爪部47、係合爪部51、60によって、透明カバー体45は基板収容ボックス本体46に固定される。これにより、透明カバー体45と基板収容ボックス本体46とで構成される包囲体で遊技制御メイン基板37を包囲し、遊技制御メイン基板37を外部から触れることができないようにしている。透明カバー体45と基板収容ボックス本体46とにわたって封印シール81が貼られる。基板収容ボックス本体46には、採光窓75が設けられている。採光窓75を設けた理由は後で説明する。
【0042】図1に示すように、この発明の第1実施例においては、遊技制御メイン基板37の表面(つまり、電子部品が取り付けられている面)側にだけ透明カバー体45を配置している。しかしながら、この発明においてはこれに限定されるわけではなく、遊技制御メイン基板37全体を透明カバー体で覆ってもよい。このようにすれば、遊技制御メイン基板37の裏面(つまり、電子部品同士を接続する配線パターンが形成されている面)を、封印を剥がすことなく検査することができる。

また、段落【0022】の記載及び【図1】、【図5】等からみて、基板収容ボックス本体46には、その長手方向両側壁に設けた係合孔43、49、58があり、透明カバー体45には、その側部に垂下形成され、その下端に突設する爪部47、係合爪部51、60が形成された係止垂下片があるものと認められる。さらに、段落【0042】に記載されているように、遊技制御メイン基板37全体を透明カバー体で覆う場合には、基板収容ボックス本体46全体が透明になっているものと認められる。

摘記した上記の記載及び図面の記載等によれば、甲3には、
「 遊技制御メイン基板37を包囲する基板収容ボックス本体46とポリカーボネイト等で透明に構成されている透明カバー体45を備えている基板ケース17において、
該基板ケース17は、前記基板収容ボックス本体46の長手方向両側壁に設けた係合孔43、49、58と、前記透明カバー体45の側部に垂下形成され、その下端に突設する爪部47、係合爪部51、60が形成された係止垂下片があり、前記係合孔43、49、58と、前記爪部47、係合爪部51、60がそれぞれ係合することにより、前記透明カバー体45が前記基板収容ボックス本体46に固定され、前記遊技制御メイン基板37を包囲し、
前記基板収容ボックス本体46全体が透明になっている一方、前記基板収容ボックス本体46の内部の四隅に設けられている取付部57a,57bに前記遊技制御メイン基板37がビス59で固定されている基板ケース17。」
の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

(1-b)甲4記載の技術
甲4(実願昭54-164697号(実開昭56-81853号)のマイクロフィルム)には、キャップ2の頂壁21に肉薄のヒンジ22を形成し、ヒンジ22に連ねて周壁23へ一対の肉薄破断線24を縦設し、角に爪掛け突部25を突設し、内容物を取り出す時には爪掛け突部25に爪を掛けて強く引き上げ、肉薄破断線24を破断させる封印容器が開示されている。

(1-c)甲5記載の技術
甲5(実願昭55-88124号(実開昭57-11760号)のマイクロフィルム)には、硬質プラスチックよりなる帯状板(1)の両側縁に互いに対向するコ状係合縁(2)を付設し、その縁内に容器(5)における外向フランジ(6)を嵌合係止し、帯状板(1)の他の両側縁に舌片(3)を突設し、それを下向折曲した封印効果を備える容器(5)が開示されている。

(1-d)甲6(特開平1-139363号公報)記載の技術
甲6には、空間1を蓋5でシールする容器において、蓋5の突き出た部分を蓋引きはがし用のつまみとし、そのつまみを引っ張ると第2の継ぎ目9が破壊されて、第1の継ぎ目6の境界線8に達するまで蓋5を引きはがすことができ、空間1の内容物を流出させることを可能とする技術が開示されている。

(1-e)甲7記載の技術
甲7(実願昭61-106465号(実開昭63-13871号)のマイクロフィルム)には、小型容器1の外向きフランジ2の張出部4に対応する蓋片5の張出部6に、蓋片5を引裂いて抽出口9を開口させるための摘み片9を突設する技術が開示されている。

(1-f)甲8記載の技術
甲8(グリコ乳業株式会社ホームページの抜粋)には、容器の底につけた突起を折ってプリンを容器から出し易くしたプリン容器が開示されている。

(1-g)甲9記載の技術
甲9(実願昭61-98744号(実開昭63-3915号)のマイクロフィルム)には、薬、菓子等の内容物を収納するための箱において、開封に際しては、天板(11)に設けた開封部(10)を破って内容物を取り出すようにして、使用前に内容物に対する不正使用を防止できる技術が開示されている。

(1-h)甲10(実公平3-12653号公報)記載の技術
甲10には、紙材により組み立てられた箱体の開口縁に形成したフラップの一辺に、この一辺と交差する複数の切れ目又は開口を形成し、フラップを閉じて接着テープにより箱体を封緘した後にその接着テープを剥がすと、切れ目又は開口の切断縁からフラップが破壊され、開梱の形跡が残される技術が開示されている。

(1-i)甲11(実公平2-37717号公報)記載の技術
甲11には、化粧用壜容器等を収容する外装容器において、一旦開封すると帯部6が切断されてしまうために、開封の事実が明らかとなり最終消費者が自ら開封するまでは内容物の未使用が保証される技術が開示されている。

(1-j)甲12(実公昭60-27412号公報)記載の技術
甲12には、ガス等のメーター用の封印具において、本体部12の肉薄部16をさらに凹溝20によって一部的に極く肉薄に形成することにより、封印体Aをこじ開けようとすると破壊されて不正開封を発見できるようにする技術が開示されている。

(1-k)甲13(実公平2-10547号公報)記載の技術
甲13には、電力量計器等の閉鎖箇所を固定する固定金具を封印する封印具において、張出片部2の内壁面に切込溝8を設けることにより、封印具の張出片部2等を動かそうとすれば、張出片部2の先端部分が切離され、不正行為が行われたことが明瞭に看取されるようにする技術が開示されている。

(1-l)甲14(実公平4-1583号公報)記載の技術
甲14には、計器箱の不正な開閉を防止するための封印具において、封印具本体1の水平片部2及び垂直片部3の表面に圧潰し易いように先鋭状としたリブ7を突設することにより、封印具を回そうとする行為によりリブ7の形が崩れて不正を行おうとした跡が残るようにする技術が開示されている。

(1-m)甲15(実公平4-3333号公報)記載の技術
甲15には、積算電力計等の封印ねじの頭部を隠蔽させる封印具において、本体部材1の外側壁2の上部を肉薄にすることにより、不正行為に伴う衝撃が加えられると封印具を修復不能に破断されるようにして不正行為があったことを速やかに発見できるようにする技術が開示されている。

(1-n)甲16(実公昭63-6047号公報)記載の技術
甲16には、合成樹脂製のキャップにおいて、嵌合されたキャップを開栓方向に回動させると、キャップのスカート2に設けられた上部弱化ライン3aが破壊されるようにして、内容物の詰め替えなどの不正が防止できる技術が開示されている。

(1-o)甲17記載の技術
甲17(実願昭53-91825号(実開昭55-9550号)のマイクロフィルム)には、通信機器の筐体の封印機構において、封印キャップの外周に溝11が形成されており、開封時には治具を用いて溝11に沿って切断する技術が開示されている。

(1-p)甲18(特開平5-41466号公報)記載の技術
甲18には、半導体装置において、半導体素子をモールド樹脂3で覆う技術が開示されている。

(1-q)甲19(特開平5-42790号公報)記載の技術
甲19には、ICカードにおいて、チップ状部品4を樹脂モールド部5で封入する技術が開示されている。

(1-r)甲20(特開平5-42249号公報)記載の技術
パチンコ機本体側に設けた諸装置の制御処理を行うための枠制御基板を収設した枠制御ボックス70において、下カバー72が周縁部に起立片84を有すると共に、適宜位置に係止爪85を有しており、該係止爪85を上カバー73の係止孔86に係止させることにより、上カバー73と下カバー72とを一体とする技術(特に、段落【0021】【0026】【図4】【図6】【図7】を参照。)が開示されている。

(1-s)甲23(特開平4-215781号公報)記載の技術
遊技機の制御回路基板収納ケースにおいて、固定ケース21の底板部25に長方形状の開口24が開設され、該開口24の内側に合成樹脂製の透明板32が開口24を閉塞するように設けられ、制御回路基板22のハンダ面38を透視することができる技術(特に、段落【0010】【0014】及び【図1】?【図3】を参照。)及び固定ケース21の底板部25の偶角部に基板固定ピン30が突設され、制御回路基板22をビス39で止着する技術(特に、段落【0013】【図1】【図2】を参照。)が開示されている。

(1-t)甲24(特開平4-276278号公報)記載の技術
遊技制御基板収容ボックス36において、収容ボックス本体37の底板38に開口部39、40が設けられ、透明板50が取付けられ、遊技制御基板53の裏面の配線パターンを開口部39、40から透明板50を介して視認することができる技術及びビス57を取付ボス41aにねじ込むことにより、遊技制御基板53を収容ボックス本体37に固定する技術(特に、段落【0023】【0024】【図1】【図2】を参照。)が開示されている。

(1-u)甲25(特開平4-325174号公報)記載の技術
パチンコ機の回路ボックス31において、深皿状の上ケース44と浅皿状の下ケース45を、内部が透視可能なように透明な合成樹脂で形成する技術(特に、段落【0013】を参照。)及び上ケース44に回路基板30を支える支持部52を形成する技術(特に、段落【0014】【図4】を参照。)が開示されている。

(1-v)甲26(特開平4-269983号公報)記載の技術
パチンコ機の制御基盤収納ケースにおいて、制御基盤130を収納ケース本体110内の底部の四隅部に立設された取付支柱110aにビス等によって固定する技術(特に、段落【0012】【図5】を参照。)が開示されている。

(2)本件訂正発明と甲3発明との対比
そこで、本件訂正発明と甲3発明とを比較すると、甲3発明の「遊技制御メイン基板37」は、本件訂正発明の「遊技機に設けられる回路基板」に相当し、以下同様に、
「包囲する」は「被覆するための」に、
「基板収容ボックス本体46」は「箱体」に、
「ポリカーボネイト等で透明に構成されている透明カバー体45」は「透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体」に、
「を備えている」は「とからなる」に、
「基板ケース17」は「回路基板ボックス」に、それぞれ相当する。

また、甲3全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.甲3発明の「係合孔43、49、58」と「爪部47、係合爪部51、60」は、それぞれが係合することにより、透明カバー体45が基板収容ボックス本体46に固定され、遊技制御メイン基板37を包囲するものであるから、甲3発明の「基板ケース17」には本件訂正発明の「固着手段」に相当する手段を設けているといえる。また、甲3発明の「係合孔43、49、58」と本件訂正発明の「係止突起」とは、“係合部”である点で共通し、甲3発明の「爪部47、係合爪部51、60」は、本件訂正発明の「爪部」に相当しているから、甲3発明と本件訂正発明は、“前記箱体の長手方向両側壁に設けた係合部と前記カバー体に垂下形成されその下端に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、遊技機に設けられる回路基板を被覆する固着手段を設けた”点で共通しているといえる。

b.甲3発明において「前記基板収容ボックス本体46全体が透明になっている」ことと、本件訂正発明において「前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」ことは、“少なくとも箱体の底面の一部が透明になっている”点では共通している。
また、甲3発明において「前記基板収容ボックス本体46の内部の四隅に設けられている取付部57a,57bに前記遊技制御メイン基板37がビス59で固定されている」ことは、本件訂正発明において「前記箱体に前記回路基板を止着した」ことに相当するといえる。

以上を総合すると、両者は、
「遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁に設けた係合部と前記カバー体に垂下形成されその下端に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、遊技機に設けられる回路基板を被覆する固着手段を設け、少なくとも前記箱体の底面の一部が透明になっている一方、前記箱体に前記回路基板を止着した回路基板ボックス。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
“係合部”に関して、本件訂正発明は「箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起」となっているのに対し、甲3発明は「基板収容ボックス本体46の長手方向両側壁に設けた係合孔43、49、58」となっている点、
“係止垂下片”に関して、本件訂正発明は「カバー体の裏面」に垂下形成され、「カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成され」ているのに対し、甲3発明は「透明カバー体45の側部」に垂下形成されている点、及び
「固着手段」に関して、本件訂正発明が「係止垂下片の、回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない」ものであるのに対し、甲3発明は遊技制御メイン基板37を包囲している状態の解除がどのようになされるのか不明である点。

[相違点2]
本件訂正発明の「箱体」は「底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる」のに対し、甲3発明の「基板収容ボックス本体46」は「全体が透明になっている」点。

(3)本件訂正発明と甲3発明の相違点についての判断
[相違点1について]
まず“係合部”について検討すると、係合爪と係合する係止突起として、上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっているものは、例えば、実公平1-18088号公報(特に、5欄10?19行及び第4図)や実公平4-7090号公報(特に、3欄10?23行及び第4図)に記載されるように、容器の分野において従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるから、甲3発明の係合孔に代えて、上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起とすることは、当業者にとって格別困難とはいえない。
しかし、甲3発明の係合孔43、49、58は、基板収容ボックス本体46の側壁の内側に設けたものではなく、周知技術1の係止突起も容器の側壁の外側に設けられている。さらに、甲20(特開平5-42249号公報)記載の係止孔86も、上カバー73の側壁外側から係止爪85と係止されるように設けられているので、係合孔に代えた係止突起を基板収容ボックス本体46の側壁の内側に設けることは、当業者が容易に想到できるものであるとはいえない。
次に“係止垂下片”について検討すると、上記(1-r)に記載したように、甲20には、「パチンコ機本体側に設けた諸装置の制御処理を行うための枠制御基板を収設した枠制御ボックス70において、下カバー72が周縁部に起立片84を有すると共に、適宜位置に係止爪85を有しており、該係止爪85を上カバー73の係止孔86に係止させることにより、上カバー73と下カバー72とを一体とする技術」が開示されているものの、係止爪85は下カバー72の周縁部に設けられている起立片84の適宜位置から直接垂下形成され、下カバー72に係止爪85が貫通する貫通穴は形成されていない。そして、構成部品の一部若しくは全部の破壊によって不正行為の痕跡・形跡が残るようにすることは、請求人主張のとおり、甲9?19に記載されるように、従来周知の技術であるということができたとしても、甲9?19には、筐体に設けた係止孔又は係止突起と蓋体に設けた係止爪とを係止させて、筐体と蓋体を固定する固着手段において、蓋体の筐体側に垂下する係止爪が蓋体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されるような構造は開示されておらず、また、そのような構造について開示した証拠を新たに発見することもできないので、上記相違点1に係る本件訂正発明における係止垂下片の構成を、当業者が容易に想到し得るということはできない。
上記“係合部”や“係止垂下片”の構成について請求人は、甲20記載の「係止孔86」を、上カバー73の内壁面に形成した突起に置き換えること、「係止爪85」を下カバー72の表面あるいは裏面に起立して形成することは、2つの部材の結合部分を隠す技術として従来周知の日本建築における「ほぞ」の技術に基づけば、当業者が容易に想到可能であると主張している(手続補正書の30頁18行?31頁11行)。
しかし、本件訂正発明が係止突起を側壁内側に設けるとともに係止垂下片をカバー体の裏面に垂下形成しているのは、係止突起と係止垂下片の結合部分を隠すためではなく、係止突起と係止垂下片が結合した後、その結合部分を外側から直接操作して係合状態を解除できないようにするためであるから、2つの部材の結合部分を隠す技術である「ほぞ」の技術に基づいて、本件訂正発明の“係合部”や“係止垂下片”に関する構成は、当業者が容易に想到可能であるという請求人の主張は採用できない。
さらに、基板の被覆状態の解除がどのようにしてなされるか検討すると、上記“係合部”や“係止垂下片”についての検討からも分かるように、甲3発明及び甲20記載の技術における固着手段は、いずれも係止孔又は係止突起と係止爪との係合部が、外部から直接その係合状態を解除できないような構造にはなっていない。すなわち、甲3発明は、「封印シール81」が貼られるものであるが、この「封印シール81」は基板ケース17の外側に貼り付けるものであるから剥すことができないものではなく、剥してしまえば、爪部47及び係合爪部51、60を外側から操作することにより、基板収容ボックス本体46と透明カバー体45を固定解除することができ、基板収容ボックス本体46と透明カバー体45を破壊することなく基板ケース17を開け、その後にもとの状態に戻すことができるものであって、本件訂正発明の固着手段のように「回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない」というものではない。また、甲20記載の技術においても、係止爪85及びビス119を外側から操作することにより、上カバー73と下カバー72を破壊することなく固定解除することができ、その後にもとの状態に戻すことができるものであって、本件訂正発明の固着手段のように「回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない」というものではない。
そして、「回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない」ようにすることが、遊技機の分野において従来公知でも周知でもない以上、甲4?8に記載されるように密封・密閉容器の突出部分を破壊・切断して密封解除する技術が従来周知であり、甲9?19に記載されるように内部に収納物を収納した収納体において構成部品の一部若しくは全部の破壊によって不正行為の痕跡・形跡が残るようにする技術が従来周知であったとしても、甲3発明の「係合孔43、49及び58」と「爪部47及び係合爪部51、60」を、回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない構成にすることが、当業者にとって容易であるということはできない。
よって、上記相違点1に係る本件訂正発明のような構成とすることは、甲3発明、甲20記載の技術、周知技術1、甲4?8記載の技術、甲9?19記載の技術及び「ほぞ」の技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。

[相違点2について]
第四.2.(3)[相違点Aについて]の項で述べたように、遊技機の回路基板ボックスにおいて、回路基板を収納する箱体の底面に、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられるようにすることは、周知技術Aであるとともに、甲3発明及び周知技術Aはボックス内の基板の裏面を検査できるようにする点で共通しているから(甲3の段落【0042】、甲23の段落【0006】及び甲24の段落【0033】を参照)、甲3発明に周知技術Aを適用し、「基板収容ボックス本体46」を底面に長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる箱体として、上記相違点2に係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、その構成により得られる効果も、甲3発明及び周知技術Aから当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

(4)まとめ
よって、本件訂正発明は、甲3発明、甲4?20及び甲23?26記載の技術等に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではなく、本件特許が特許法29条2項の規定に違反してされたものということはできない。

第五.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機の回路基板ボックス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設け、前記箱体の底面には、長方形状の開口が開設され、前記開口を閉塞するために透明板が前記箱体の内側から底面に当接して設けられる一方、前記箱体に前記回路基板を止着したことを特徴とする回路基板ボックス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遊技機、例えば、パチンコ遊技機やスロットマシンに設けられる回路基板を被覆する回路基板ボックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、遊技機に設けられる回路基板の代表的なものとして遊技動作を制御する遊技制御回路基板が挙げられるが、その遊技制御回路基板には、マイクロコンピュータを構成するMPU、ROM、RAM等の電子素子が多数実装されている。そして、遊技動作を制御するプログラムが格納されるROMを交換することにより、多くの場合、異なる遊技内容を実現することが可能である。しかし、このようなROM交換は、当初の認められた遊技内容と異なるため、許可されておらず、これを防止するために、遊技制御回路基板を被覆する回路基板ボックスの組付構成部品に破損し易い封印紙を貼付し、この封印紙が破損していた場合には、不正なROM交換が行われたとみなしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近、封印紙の糊を特殊な方法で解かして封印紙を剥し、内部のROMを交換して再度封印紙を貼り付ける不正行為が行われ、封印紙の破損状態を見ただけでは、回路基板ボックスを開放して遊技制御回路基板に不正な処理がされたか否かが分からないという問題が生起してきた。本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、内部に被覆される回路基板に不正な処理を施すことができない遊技機の回路基板ボックスを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明が採用した解決手段を図面を参照して説明すると、図1及び図2に示すように、遊技機に設けられる回路基板70を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックス50において、該回路基板ボックス50には、前記箱体51の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体60の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部66aが形成された係止垂下片66とを係合することにより、前記カバー体60に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体60の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片66の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段57,66を設け、前記箱体51の底面には、長方形状の開口53が開設され、前記開口を閉塞するために透明板59が前記箱体51の内側から底面に当接して設けられる一方、前記箱体51に前記回路基板70を止着したことを特徴とするものである。このように構成することにより、内部に被覆される回路基板70を取り出すには、係止垂下片の前記回路基板ボックス50に対して外部に突出している部分を切断する以外に方法はなく、仮に係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。また、切断すべき係止垂下片66の頭部が透明合成樹脂製カバー体60から外部に突出しているので、遊技場等での実地検査を行う場合に容易に被覆状態を解除することができる。
【0005】前記回路基板ボックス50は、前記回路基板70のハンダ面が外部から透視し得ることにより、仮にハンダ面に不正な工作をした場合には、直ちに分かるようになっている。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図11及び図12を参照して、実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機1の構成について説明する。図11は、パチンコ遊技機1の正面図であり、図12は、パチンコ遊技機1の背面図である。図12において、パチンコ遊技機1の額縁状に形成された前面枠2の開口には、扉保持枠3が周設され、該扉保持枠3にガラス扉枠4と前面扉板5とが一側(左側)を軸として開閉自在に設けられている。ガラス扉枠4の後方には、遊技盤11が配置され、前面扉板5の前面には、打球供給皿6が取り付けられている。この打球供給皿6は、払い出された景品玉を貯留し且つ打玉として発射位置に1個ずつ供給するものであり、その上流側の内部空間に遊技に関連する効果音を発生するスピーカ7が内蔵されている。また、前記前面枠2の下方には、打玉を発射する際に操作する操作ハンドル9と、前記打球供給皿6に貯留し切れない余剰の景品玉を貯留する余剰玉受皿8とが設けられている。また、前面枠2には、その上部前面に特定遊技状態となったことを報知する遊技効果ランプ装置10が設けられている。
【0007】ところで、前記遊技盤11の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール12がほぼ円状に植立され、該誘導レール12で区画された領域が遊技領域13を構成している。遊技領域13のほぼ中央上部には、複数(3つ)の回転ドラム15a?15cを有する可変表示装置14が配置されている。この可変表示装置14の回転ドラム15a?15cは、図示しないが独立したドラムモータ16によって回転駆動され、その図柄停止位置を検出するためにドラムセンサ18が内蔵され、更に表示される図柄を照射装飾するためのドラムランプ17(符号は、いずれも図5のブロック図に表示)を内蔵している。また、各回転ドラム15a?15cの外周面に描かれる図柄は、図10に示すようになっているが、これについては、後に詳述する。
【0008】また、可変表示装置14には、その上部に飾りLED20が設けられ、該飾りLED20の下部に始動記憶LED21が設けられている。飾りLED20は、0?9までの符号のついた10個のLEDから構成され、後述する特定遊技状態となったときに所定のランダム数から抽出される値に対応するLEDが点灯するようになっている。そして、飾りLED20は、特定遊技状態の発生に関連していずれか1つがランダムに点灯表示されるもので、遊技内容には直接関係しないが、遊技場が所定のサービス(例えば、特定遊技状態で獲得した多量の景品玉を使用して継続して遊技を行うことを許可するサービス)を提供する場合に使用できる。例えば、「7」の飾りLED20で点灯停止したときに所定のサービスを提供するようにすれば良い。また、始動記憶LED21は、後述する始動入賞口23に入賞した打玉のうち記憶したものを表示するものである。更に、可変表示装置14の両サイドには、回転ドラム15a?15cの縦横3つの図柄によって構成される5本の当りラインを表示するライン表示LED22が設けられている。本実施形態における当りラインは、図示するように、上段水平の当りライン1と、右下がり対角線の当りライン2と、中断水平の当りライン3と、右上り対角線の当りライン4と、下段水平の当りライン5と、があり、いずれかの当りライン上に所定の図柄(大当り図柄という場合がある)が並んだときに大当りとなって特定遊技状態を生起せしめる。
【0009】なお、本実施形態における3つの回転ドラム15a?15cの外周面に描かれる図柄は、図10に示すように、全部で21個あり、大当り図柄として「7(赤)」「7(青)」「FEVER(以下、FVと略称)」「トランプのキング(以下、Kと略称)」「トランプのクィーン(以下、Qと略称)」「トランプのジャック(以下、Jと略称)」「トランプのエース(以下、Aと略称)」「トランプのジョーカー(以下、JKと略称)」の8種類と、外れ図柄として各列15a?15cに13個の「ハートマーク」「スペードマーク」「ダイヤマーク」がそれぞれ描かれている。そして、上記した同一の大当り図柄が前記した当りライン1?5のいずれかに並んだときに大当りとなるが、すべての大当り配列パターンは、図9に示すように、予め所定のランダム数に対応させてあり、始動入賞時にそのランダム数の中から1つの値を抽出することにより、どの大当り図柄がどの当りラインに並ぶかが決定される。また、大当り図柄の種類によって特定遊技状態の出現確率が所定期間向上するようにしても良い。
【0010】上記のように構成される可変表示装置14の下方には、前記回転ドラム15a?15cの回転を許容する始動入賞口23が設けられている。この始動入賞口23に入賞した入賞玉は、遊技盤11の裏面に導かれて始動口スイッチ24によって検出される。なお、始動入賞口23への入賞に基づく可変表示装置14の回転は、所定回数(例えば、4回)記憶され、その旨が可変表示装置14に設けられる始動記憶LED21によって表示されるようになっている。
【0011】前記可変表示装置14の下方に入賞領域26を有する可変入賞球装置25が設けられている。可変入賞球装置25の入賞領域26には、下端両サイドを軸支して、遊技盤11面に対して垂直方向に開閉自在とされる開閉板27によって塞がれている。この開閉板27は、開閉板用ソレノイド28によって開閉制御され、開成中には、遊技盤11の表面を落下する打玉を受止めて入賞領域26に導き入賞玉とする。また、入賞領域26の内部は、3つに区画され、その中央に特定領域29が形成され、その左右に通常領域が形成されている。特定領域29には、特定領域スイッチ30が設けられ、また、通常入賞領域にも10カウントスイッチ31a,31bが設けられている。
【0012】なお、入賞領域26の後面壁には、その中央に打玉が特定領域29に入賞して特定領域スイッチ30をONしたときに、継続権が成立した旨を報知するV表示LED32が設けられ、その一側に特定遊技状態における開閉板27の開放回数を表示する開成回数表示器33が設けられている。また、入賞領域26の下方のには、特定領域スイッチ30及び10カウントスイッチ31a,31bで検出された打玉数を表示する個数表示LED34が設けられている。更に、可変入賞球装置25の取付基板7の左右部には、通常の入賞口(符号なし)が一体的に形成され、入賞口の外側にアタッカーランプ35が設けられている。
【0013】しかして、上記のように構成される可変入賞球装置25は、以下のように作動する。即ち、打玉がいずれかの始動入賞口23に入賞して始動口スイッチ24をONさせると、可変表示装置14の回転ドラム15a?15cが回転を開始し、一定時間(例えば、5秒)が経過すると、左側の回転ドラム15a?15caから順次停止され、すべての回転ドラム15a?15cの停止時の図柄の組み合せが前記大当り図柄の組合せとなったときに特定遊技状態となる。そして、この特定遊技状態においては、可変入賞球装置25の開閉板27が所定期間(例えば、20秒経過するまで、あるいは10個の入賞玉が発生するまで)開放するように設定され、その開放している間遊技盤11の表面を落下する打玉を受止めるようになっている。そして、入賞領域26内に設けられた特定領域29に入賞すると、再度上記した開放状態を繰り返し、特定領域29に入賞玉が入賞する毎に継続権が成立して開放状態を最高16回繰り返すことができるようになっている。
【0014】更に、遊技盤11の表面には、前記可変表示装置14の上部左右側方に風車ランプ37が設けられ、下部側方に入賞口(符号なし)が設けられている。また、前記風車ランプ37は、前記特定遊技状態時や始動入賞時等に点灯又は点滅してその旨を報知するものであり、同様な機能を有するものとして、遊技領域13の左右にサイドランプ36が設けられている。また、遊技盤11の表面の最下方には、上記したいずれの入賞領域にも入賞しなかった打玉が遊技盤11の後方に導かれるアウト口(図示しない)が設けられている。また、誘導レール12の外周に沿ってレール飾りランプ38が設けられている。
【0015】一方、パチンコ遊技機1の裏面構成においては、図12に示すように、機構板41が開閉自在に設けられている。この機構板41の中央には、窓開口42が開設され、該窓開口42に対応する遊技盤11の裏面には、入賞玉集合カバー体39が設けられている。入賞玉集合カバー体39には、前記可変表示装置14の後面突出部が貫通しており、その後面突出部の裏面にドラム中継基板19が設けられている。このドラム中継基板19には、前記ドラムモータ16、ドラムランプ17、ドラムセンサ18等からの配線がコネクタを介して接続される一方、後述する遊技制御回路基板70とを接続される配線もコネクタを介して接続されるようになっている。また、入賞玉集合カバー体39の裏面には、可変表示装置14以外の遊技盤11に設けられる電気機器(例えば、始動口スイッチ24、ソレノイド28、特定領域スイッチ30、10カウントスイッチ31a,31b、各種の表示器及びランプ等)からの配線がコネクタを介して接続される一方、遊技制御回路基板70からの配線もコネクタを介して接続される中継基板40も設けられている。要は、ドラム中継基板19も中継基板40も遊技制御回路基板70と遊技盤11に設けられる電気機器との配線の中継を行うものである。
【0016】ところで、機構板41には、周知のように発生した入賞玉に基づいて所定個数の景品玉を払い出すための景品玉タンク43、景品玉払出装置44、入賞玉処理装置45等の各種の機構が設けられるものであるが、更に、前記した遊技盤11に設けられる可変表示装置14や可変入賞球装置25等の遊技装置の遊技動作を制御する遊技制御回路基板70を被覆する回路基板ボックス50も機構板41の裏面に取り付けられている。この回路基板ボックス50に被覆される遊技制御回路基板70は、機構板41の上部一側に設けられるターミナル基板46に接続されて電源の供給を受けている。また、ターミナル基板46は、遊技制御回路基板70に電源を供給するだけでなく、パチンコ遊技機1に設けられる電気的駆動源、例えば、打球発射装置47にも電源を供給すると共に、パチンコ遊技機1の内部での信号線の中継、あるいはパチンコ遊技機1と外部との信号線の中継を行うための端子も設けられている。
【0017】次に、本実施形態の要部を構成する回路基板ボックス50の構成について図1乃至図4を参照して説明する。図1は、回路基板ボックス50の断面図と拡大部分断面図であり、図2は、回路基板ボックス50の分解斜視図であり、図3は、回路基板ボックス50の平面図であり、図4は、回路基板ボックス50の側面図である。しかして、回路基板ボックス50は、遊技制御回路基板70を被覆支持する箱体51と、該箱体51の上面を閉塞するカバー体60とから組付構成され、そのように組付構成された回路基板ボックス50は、前記機構板41の裏面に止着される取付台80に着脱自在に取り付け得るようになっている。以下、各組付構成部品毎に説明する。
【0018】まず、箱体51は、上面が開放した直方体状に合成樹脂(金属でも良い)で形成され、その側壁のほぼ全域に内部で発生する熱を放熱するための放熱孔52が多数穿設されている。また、箱体51の底面には、比較的大きな長方形状の開口53が開設され、該開口53の長手方向開口縁には、取付台80の後述する係合レール81に係合するL字状の係合片54が垂下形成されている。なお、箱体51の底面は、図1(A)に示すように、側壁の下端よりもやや上方の位置に底上げ状態で形成されているため、垂下形成される上記係合片54は、箱体51の側壁と同一平面状に位置することとなる。
【0019】更に、箱体51には、その前方部中央に係止孔51aが形成され、その前方部左右に支持位置決め突起55が突設され、その後方部左右に止め突起56が突設されている。係止孔51aは、回路基板ボックス50を取付台80に装着した際に取付台80に形成される係止突起84と係合して回路基板ボックス50全体を機構板41の裏面に支持固定するものである。また、支持位置決め突起55は、遊技制御回路基板70の前方部両端をカバー体60に設けられる後述する押え部材67と挾持して支持するものであり、止め突起56は、遊技制御回路基板70の後方部両端をビス73で止着支持するものである。なお、支持位置決め突起55及び止め突起56については、後に詳述する。また、箱体51の長手方向両側壁内側には、係止突起57が形成されている。この係止突起57は、カバー体60を箱体51に被覆したときにカバー体60の裏面に垂下形成される係止垂下片66と係合するようになっており、この係止突起57と係止垂下片66との係合状態は、外部から操作してその係合状態を解除することができない固着手段を構成している。この点については、後に詳述する。更に、箱体51の後部側壁は、高さが低く形成された配線引き出し凹部58となっている。
【0020】また、箱体51の前記開口53を閉塞するために透明板59が箱体51の内側から底面に当接して設けられる。このため、透明板59の四隅には、間隔保持筒部59aが上面に形成され、この間隔保持筒部59aが図1(A)に示すように、前記支持位置決め突起55及び止め突起56を貫通して所定の位置に保持され、また、間隔保持筒部59aの上面に遊技制御回路基板70の下面が当接して透明板59と遊技制御回路基板70との間隔を保持している。しかして、箱体51の底面を透明板59で閉塞することにより、遊技制御回路基板70の裏面(ハンダ面)が外部から透視し得ることとなり、仮にハンダ面に不正な工作(例えば、ジャンパー配線を接続したり、電子素子を実装したりする不正工作)をした場合には、直ちに分かるようになっている。この意味で、透明板59によって閉塞される開口53の大きさは、回路基板ボックス50を傾けながらハンダ面の全域が見える程度の大きさがあれば十分である。
【0021】一方、上記した箱体51の上面を閉塞するカバー体60は、透明な合成樹脂によって一体的に成形されるもので、その後方部が下方向に曲折された仕切片61となっている。この仕切片61の位置は、カバー体60を箱体51に装着したときに図3に示すように、遊技制御回路基板70のコネクタ実装領域72が外部に現れて接続開口62を形成するような位置で曲折される。これにより、箱体51にカバー体60を組付構成した状態で接続開口62に臨むコネクタに外部からの配線を接続することができる。また、カバー体60の表面のほぼ全域には、内部で発生した熱を外部に放出するための放熱孔63が表示領域69を除く範囲(図3の二点鎖線で囲んだ範囲)で多数形成されている。また、カバー体60の上面両サイドには、L字状のL型突起64が列状に形成されている。このL型突起64は、外部からのノイズの影響が大きい場合に、必要に応じてノイズ防止用の金属薄板を挿入することができるものである。更に、カバー体60の長手方向端縁には、図1(A)及び図3に示すように、箱体51の側壁上端縁と係合する掛止部65が上下2カ所ずつ突設され、該掛止部65の間のカバー体60には、下方に向かって垂下される係止垂下片66が形成されている。更に、カバー体60の前方部両側に押え部材67が垂下されており、また、カバー体60を箱体51に組み付けた状態で前方の掛止部65の間であって係止垂下片66の上端と箱体51の側壁との間を差し渡すように封印紙68が貼付される。
【0022】上記した押え部材67と係止垂下片66の詳細な説明をする前に、遊技制御回路基板70の構造について簡単に説明すると、遊技制御回路基板70は、周知のようにプリント配線基板によって構成され、その上面が電子部品の実装面とされ、その実装面の大部分が電子部品実装領域71として使用され、後方の一部がコネクタ実装領域72とされる。また、遊技制御回路基板70には、その前方左右に前記支持位置決め突起55に対応する係止穴74が形成され、その後方左右に前記止め突起56に対応する止め穴75が形成されている。
【0023】上記のように構成されるカバー体60の押え部材67と係止垂下片66の作用について以下説明する。まず、押え部材67の作用について説明する。透明板59が装着された状態の箱体51において、遊技制御回路基板70の前方の係止穴74を支持位置決め突起55の先端突起部に差し込み、後方の止め穴75を止め突起56に載置する。この状態で止め穴75と止め突起56の穴を一致させてビス73を螺着することにより、一応、遊技制御回路基板70を箱体51に止着したこととなる。そして、その後、カバー体60を箱体51の上方から装着する。この際、押え部材67の先端部が図1(A)(この図は、図3のA-A線で切断した断面図である)に示すように、遊技制御回路基板70の上面に当接すると共に、係止穴74を貫通している支持位置決め突起55の先端突起部が押え部材67の中心に形成された穴に係合するので、遊技制御回路基板70の前方部が支持位置決め突起55と押え部材67とによって挾持止着された状態となり、後方部のビス73による止着とで完全に遊技制御回路基板70を回路基板ボックス50内に止着したこととなる。
【0024】一方、係止垂下片66の作用について説明すると、係止垂下片66は、箱体51の側壁内側に設けられる係止突起57に対応するもので、図1(B)に示すように、係止垂下片66は、カバー体60に形成された貫通穴66bを貫通して一旦上方に突出された後U字状(逆凹字形状)に曲折されてカバー体60の上面と一体的に接続されて形成され、その下端に外側に突設する爪部66aが形成されている。一方、係止突起57は、その上面が傾斜面57aとなっており、その下部が鋭角的に切り込まれた係合面57bとなっている。しかして、カバー体60を箱体51の上方から装着すると、係止垂下片66の爪部66aが傾斜面57aに沿って弾性変形しながら下方に移動し、遂には、爪部66aと係合面57bとが係合した状態となる。この状態で係止垂下片66と係止突起57の係合状態は、係止垂下片66の爪部66aを内側に移動させなければならないが、回路基板ボックス50の外側からこのような移動操作はできないので、一旦カバー体60を箱体51に装着した後には、簡単にカバー体60を箱体51から外すことはできない。しかして、これを外そうと思えば、図1(B)に示すように回路基板ボックス50に対して外部に突出している部分をB-B線に沿ってニッパ等で切断して図1(C)に示すように、係止垂下片66をカバー体60から分離させなければならない。
【0025】このように、本実施形態においては、回路基板ボックス50が遊技制御回路基板70を含む箱体51やカバー体60の複数の構成部品によって組み付け構成される一方、組付構成部品であるカバー体60を組み付けたときに係止垂下片66と係止突起57とからなる固着手段が設けられているので、内部に被覆される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66の回路基板ボックス50に対して外部に突出している部位を切断する以外に方法はなく、仮にカバー体60の一部である係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理工作が行われたことが直ちに分かる。なお、上記した係止垂下片66をカバー体60の裏面に直接(貫通穴66bを形成することなく)形成しても良く、この場合には、係止垂下片66部分のカバー体60を破壊しなければ、カバー体60と箱体51の係合状態を解除することができない。また、係止垂下片66が多数形成されている場合には、カバー体60のほぼ全部を破壊しなければ係合状態を解除することができない。
【0026】上記のように外部からは分離できないように組付構成された回路基板ボックス50は、図2に示すような機構板41に止着される取付台80に着脱自在に取り付けられるようになっている。ここで簡単に取付台80について説明すると、取付台80は、合成樹脂(金属でも良い)によって一体的に形成され、その中央に前記係合片54と係合する一対の係合レール81が逆L字状に形成され、その上下端縁に回路基板ボックス50の側壁を案内するガイド片82(このガイド片82は必ずしも必要でない)が突設されている。一方、取付台80の一側端部には、弾性変形する係止解除レバー83が形成され、該係止解除レバー83の基部に前記係止孔51aと係合する係止突起84が突設されている。しかして、回路基板ボックス50を取付台80に装着するときには、取付台80の側方から係合片54が係合レール81に係合するように押し込み、更に強く押し込むことにより係止突起84上面の傾斜面に沿って係止解除レバー83が下方に弾性し、遂には、係止突起84と係止孔51aとが係合して装着が完了する。一方、回路基板ボックス50を取り外すには、係止解除レバー83を下方に押圧して係止孔51aと係止突起84との係合を解除した状態で回路基板ボックス50を押し込み方向とは逆の方向に引き抜くことにより簡単に取り外すことができる。
【0027】ところで、図11に示すパチンコ遊技機1によって出現される遊技動作は、前述したとおりであるが、その遊技動作を制御する遊技制御回路基板70に形成される回路構成は、図5に示すようになっている。図5は、遊技制御回路をブロック構成で示す回路図であり、MPU、ROM、RAM、入出力回路を含むメインの基本回路90によって、制御される。また、可変表示装置14は、基本回路90によって制御されるサブの基本回路91によって制御される。しかして、メイン基本回路90には、スイッチ入力回路98を介して10カウントスイッチ31a,31b、特定領域スイッチ30、及び始動口スイッチ24からの検出信号が入力され、アドレスデコード回路92からメイン基本回路90にチップセレクト信号が与えられる。また、電源投入時に初期リセット回路93からメイン基本回路90にリセット信号が与えられ、所定時間毎にクロック用リセットパルス発生回路94からメイン基本回路90及びサブ基本回路91に定期リセット信号が与えられる。
【0028】一方、メイン基本回路90からは、以下の装置及び回路に制御信号が与えられる。即ち、音回路95を介してスピーカ7に音声信号が与えられ、7セグ・LED・ランプ駆動回路96を介して開成回数表示器33、個数表示LED34、飾りLED20、V表示LED32、ライン表示LED22、及び始動記憶LED21に表示制御信号が与えられ、また、ランプ・ソレノイド・情報出力回路97を介して開閉板用ソレノイド28、サイドランプ36、レール飾りランプ38、アタッカーランプ35、遊技効果ランプ10、風車ランプ37が駆動され、大当り情報、当り情報、及び有効始動情報が外部に導出される。
【0029】また、前記した可変表示装置14の回転ドラム15a?15cは、専用のサブ基本回路91によって制御されるが、このサブ基本回路91にメイン基本回路90から制御信号が与えられる。しかして、サブ基本回路91からは、ドラムランプ回路99を介してドラムランプ17に駆動信号が与えられ、ドラムモータ回路100を介してドラムモータ16に駆動信号が与えられ、ドラムモータ16に内蔵されるドラムセンサ18からは、センサ入力回路101を介してサブ基本回路91及び基本回路90に入力信号が送られる。なお、上記したドラムランプ17を除く装置や回路には、電源回路102から各種の電圧を有する電力が供給され、ドラムランプ17には、ドラムランプ用電源103から所定の電圧を有する電力が供給されている。
【0030】以上、説明した遊技制御回路の具体的な動作の一例を図6乃至図10に示すタイムチャート及び説明図を参照して説明する。図6は、始動入賞口23への打玉の入賞に基づく可変表示装置14の可変表示動作を示すタイムチャートであり、図7は、当り外れに使用されるランダム数の一覧表図であり、図8は、打玉が始動入賞口23に入賞したときに決定される当り図柄の選択方法を説明する説明図であり、図9は、大当り図柄とランダム数との対応関係を示す一覧表図であり、図10は、回転ドラム15a?15cの外周面に形成される図柄の展開図である。図6において、始動入賞口23に打玉が通過して始動口スイッチ24をONさせ、始動信号S1が導出されると、その始動信号S1の立ち上がり時にランダム1から1つの値が抽出されて格納される。ランダム1は、図7に示すように、当り図柄か否かを決定するためのランダム数であり、電源投入後「0?253」の254通りの数値が刻々と変動している。
【0031】また、始動信号S1導出後、0.128秒又は0.130秒経過したときに格納したランダム1の値を読み出すと共に、始動信号S1導出後、0.132秒又は0.134秒経過したときにランダム1の読み出した値が当りでない時にランダム3から1つの値が抽出され、ランダム1の読み出した当りが当りである時にランダム2、4、5から1つの値が抽出される。図7に示すように、ランダム2は、図9に示す大当り図柄の配列を決定するためのランダム数であり、「0?39」の40通りの数値が刻々と変化する。ランダム3は、「0?9260」の9261通りの数値が刻々と変化するものであり、抽出された値に対応する図柄が遊技者に視認し得る位置であって所定の位置に表示されるようになっている。また、ランダム4は、飾りLED20の点灯位置を決定するためのランダム数であり、ランダム5は、リーチ時又は大当り時における回転ドラム15a?15cの回転パターンを決定するためのランダム数である。
【0032】しかして、ランダム1から抽出された数値が「8」であるときには、図8に示すように、大当りと判定され、ランダム2データにより大当りとなる図柄及び配列が決定され、ランダム1から抽出された数値が「8」以外であるときには、大当りではなく、外れと判定され、前記したようにランダム3で抽出された値に対応する図柄が遊技者に視認し得る位置であって所定の位置に表示されるようになっている。ただし、抽出した値が偶然に大当り図柄と一致した場合には、ランダム3データに1を加算して外れ図柄にして表示する。
【0033】上記したように、始動信号S1の導出時に、可変表示装置14に表示される図柄の組合せが当りか否かが決定されると共に、停止時に表示される図柄も決定され、それらの決定が終了した後(本実施形態においては、始動信号S1導出後0.206秒経過後)、まず、左側の回転ドラム15a(以下、図柄15aという)が変動を開始し、僅かな時間間隔(0.100秒)を置いて右側の回転ドラム15c(以下、図柄15cという)、中央の回転ドラム15b(以下、図柄15bという)が順次変動を開始する。なお、図柄15a?15cの可変開始動作においては、通常時は上記のように決められた順序で回転を開始し、リーチ時又は大当り時には、その開始順序が変化するようにしても良い。これにより、変動結果がリーチ又は大当りとなることを予告的に遊技者に知らせることができる。
【0034】しかして、図柄15aの変動表示においては、基本時間(6.300秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、1図柄分の変動時間が経過したときに停止される。同様に図柄15cの変動表示においては、上記よりやや短い基本時間(6.200秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、6図柄分の変動時間が経過したときに停止される。
【0035】一方、図柄15bの変動表示においては、既に停止した図柄15a,15cに表示される当りライン上の停止図柄が当り図柄でないとき(リーチ状態でないとき)と、当り図柄であるとき(リーチ状態のとき)とでは、異なる態様で変動表示される。そこで、まずリーチ状態でないときの変動表示について説明すると、上記よりさらに短い基本時間(6.100秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、11図柄分の変動時間が経過したときに停止される。
【0036】一方、リーチ状態のときの変動表示においては、前記ランダム5の抽出された値によって異なるパターンで変動表示される。具体的には、ランダム5の抽出された値が「4」以外のときには、リーチ1と表示される変動パターン、即ち、基本時間(6.100秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、ややゆっくりとした変動速度で21?42図柄変動して停止される。また、ランダム5の抽出された値が「4」であるときには、リーチ2と表示される変動パターン、即ちリーチ1と同じパターンで変動して停止した後、再度短い変動と停止とを複数回行って停止する。この短い変動と停止は、停止図柄が「7(赤)」である場合には、その停止図柄「7(赤)」の4図柄手前の当り図柄「7(青)で一旦停止し、次に3図柄手前の当り図柄「J」で一旦停止し、次に2図柄手前の当り図柄「A」で一旦停止し、更に1図柄手前の当り図柄「JK」で一旦停止し、最後に停止図柄「7(赤)」で停止するようになっている。つまり、停止図柄の4個(この数の計算には外れ図柄を数えない)手前の当り図柄毎に停止するように制御される。なお、このような短い変動と停止を最後に停止する図柄15bだけでなく、他の図柄15a,15cにおいても同時に行わせても良い。また、リーチ2の変動態様は、最終的に大当りとなるときにだけ行うようにしても良い。
【0037】以上、実施形態に係る遊技制御回路基板70を被覆する回路基板ボックス50の構成及び作用について説明してきたが、本実施形態によれば、回路基板ボックス50が遊技制御回路基板70を含む箱体51やカバー体60の複数の構成部品によって組み付け構成される一方、組付構成部品であるカバー体60を組み付けたときに係止垂下片66と係止突起57とからなる固着手段が設けられているので、内部に被覆される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66の回路基板ボックス50に対して外部に突出している部位を切断する以外に方法はなく、仮にカバー体60の一部である係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理工作が行われたことが直ちに分かる。
【0038】上記した実施形態では、回路基板ボックス50の組付構成部品として、箱体51とカバー体60と遊技制御回路基板70としたが、遊技制御回路基板70を被覆するものであれば、どのような構造のものでも良い。例えば、回路基板ボックスを一体的に構成し、その一体的に構成された回路基板ボックスの挿入口から遊技制御回路基板70を挿入した時に破壊しない限り解除できない固着手段によって遊技制御回路基板70が被覆される構造のものでも良い。また、回路基板ボックス50に被覆される基板も遊技動作を制御するものに限らず、不正行為が行われ易い制御回路(例えば、景品玉払出制御回路)を被覆する回路基板ボックスにも応用することができる。
【0039】
【発明の効果】以上、説明したところから明らかなように、本発明においては、前記係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を切断する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が切断されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。また、前記係止垂下片の切断すべき部分が透明合成樹脂製カバー体から外部に突出しているので、遊技場等での実地検査を行う場合に容易に被覆状態を解除することができる。なお、回路基板ボックスは、回路基板のハンダ面が外部から透視し得ることにより、仮にハンダ面に不正な工作をした場合には、直ちに分かるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る回路基板ボックスの断面図と拡大部分断面図である。
【図2】回路基板ボックスの分解斜視図である。
【図3】回路基板ボックスの平面図である。
【図4】回路基板ボックスの側面図である。
【図5】遊技制御回路基板に形成される遊技制御回路をブロック構成で示す回路図である。
【図6】始動入賞口への打玉の入賞に基づく可変表示装置の可変表示動作を示すタイムチャートである。
【図7】当り外れに使用されるランダム数の一覧表図である。
【図8】打玉が始動入賞口に入賞したときに決定される当り図柄の選択方法を説明する説明図である。
【図9】大当り図柄とランダム数との対応関係を示す一覧表図である。
【図10】回転ドラムの外周面に形成される図柄の展開図である。
【図11】実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の正面図である。
【図12】パチンコ遊技機の背面図である。
【符号の説明】
1 パチンコ遊技機
50 回路基抜ボックス
51 箱体
57 係止突起(固着手段)
57a 傾斜面
57b 係合面
60 カバー体
66 係止垂下片(固着手段)
66a 爪部
66b 貫通穴
70 遊技制御回路基板(回路基板)
80 取付台
90 基本回路
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-10-28 
結審通知日 2010-12-01 
審決日 2009-11-16 
出願番号 特願平10-52847
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
P 1 113・ 4- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司土屋 保光  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 澤田 真治
伊藤 陽
登録日 2002-02-01 
登録番号 特許第3274407号(P3274407)
発明の名称 遊技機の回路基板ボックス  
代理人 振角 正一  
代理人 杉山 猛  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 加治 信貴  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 根本 恵司  
代理人 加治 信貴  
代理人 根本 恵司  
代理人 杉山 猛  
代理人 川下 清  

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