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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G |
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管理番号 | 1232131 |
審判番号 | 不服2009-10641 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-04 |
確定日 | 2011-02-07 |
事件の表示 | 特願2000-521687「電子在庫管理のためのシステムと方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月 3日国際公開、WO99/26462、平成13年11月27日国内公表、特表2001-523631〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件出願は、1998年11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年11月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成12年5月22日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面(国内書面)並びに同法第184条の4第1項の規定による明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明)及び要約の日本語による翻訳文がそれぞれ提出され、平成17年11月18日付けで手続補正書が提出され、平成20年5月13日付けの拒絶理由通知に対して同年8月18日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年3月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同時に手続補正がなされ、その後、当審において同年12月8日付けで書面による審尋がなされたものである。 [2]平成21年6月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成21年6月4日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 1.本件補正の内容 (1)平成21年6月4日付けの手続補正書による明細書を補正する手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成20年8月18日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記のa)に示す請求項1を、下記のb)に示す請求項1と補正するものを含んでいる。 a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 複数の電波識別(RFID)タグ(102)と、 タグ読取り装置(104)とを備え、 少なくとも1つのRFIDタグ(102)は、複数のタイムスロットのうちの1つの間に、前記タグ読取り装置(104)に応答するように設定されており、前記タグ読取り装置(104)は、2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答するときに、タイムスロット競合を避けるために、前記RFIDタグ(102)の複数読取りを実行するように設定されており、 各タグ(102)は、複数のビットにより識別され、 タグ(102)は、第1の読取りの間には、前記複数のビットの第1のサブセットで、第2の読取りの間には、前記複数のビットの第2のサブセットで、前記タグ読取り装置(104)に応答するように設定されており、 前記複数のビットの前記第1のサブセットは、前記複数のビットの前記第2のサブセットよりも前記複数のビットにおける異なるビット位置に対応し、前記複数のビットの前記第1のサブセットのビットの数は、前記複数のビットのビットの数よりも少ないことを特徴とする在庫システム。」 b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 複数の電波識別(RFID)タグ(102)と、 タグ読取り装置(104)とを備え、 少なくとも1つのRFIDタグ(102)は、複数のタイムスロットのうちの1つの間に、前記タグ読取り装置(104)に応答するように設定されており、前記タグ読取り装置(104)は、2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答して、タイムスロット競合を起こしているときに、タイムスロット競合を避けるために、前記RFIDタグ(102)の複数読取りを実行するように設定されており、 各タグ(102)は、複数のビットにより識別され、 タグ(102)は、第1の読取りの間には、前記複数のビットの第1のサブセットで、第2の読取りの間には、前記複数のビットの第2のサブセットで、前記タグ読取り装置(104)に応答するように設定されており、 前記複数のビットの前記第1のサブセットは、前記複数のビットの前記第2のサブセットよりも前記複数のビットにおける異なるビット位置に対応し、前記複数のビットの前記第1のサブセットのビットの数は、前記複数のビットのビットの数よりも少ないことを特徴とする在庫システム。」(下線は補正箇所を示す。) (2)すなわち、本件補正は、特許請求の範囲に関して、補正後の請求項1については、本件補正前の請求項1における「前記タグ読取り装置(104)は、2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答するときに、タイムスロット競合を避けるために、前記RFIDタグ(102)の複数読取りを実行するように設定されており」の記載を「前記タグ読取り装置(104)は、2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答して、タイムスロット競合を起こしているときに、タイムスロット競合を避けるために、前記RFIDタグ(102)の複数読取りを実行するように設定されており」とする補正がなされており、請求項1に関する補正事項は、補正前の請求項1における「2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答するとき」に関する発明特定事項について「タイムスロット競合を起こしている」ということに関する限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)そこで、本件補正により補正された請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、単に「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.本件補正の適否についての判断 (1)引用刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-21875号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、例えば、次のような事項が記載されている。 ア)「【0002】本発明は、主に、高周波(RF)識別(ID)システムの分野に関する。特に、本発明は、コントローラと、共通RFフィールド内にある複数のトランスポンダの選ばれたもの又は他のサブセットとの間の通信を開始するシステム及び方法に関する。本発明のシステム及び方法は、コロラド州 80111、 エングルウッド、 グリーンウッド プラザ ブールバード 6080のラコム システムズ インコーポレイテッド(会社名:Racom Systems, Inc.)から入手できるラコムRFM256(商品名)受動・近接RF読取り/書込みカード式トランスポンダ(RF/IDタグ)、及び、関連するRFC100コア(商品名)読取り/書込み電子モジュールコントローラ、又は、他の類似する装置について特に有用である。」(段落【0002】) イ)「【0009】 【発明が解決しようとする課題】ラコム及び他のRF/IDタグ通信システムに関しては、コントローラ又は「読取装置」が、コントローラの電力供給RFフィールド内にある複数のトランスポンダの中から、特定のトランスポンダ、又は、トランスポンダの選ばれたサブセットを、いつでも選び出すことができることが重要である。ある実施例においては、特定のトランスポンダを識別し、全ての他のトランスポンダからそれを区別し、そして2つ以上のトランスポンダが同時にコントローラと通信しようとして互いに干渉し合い、コントローラとトランスポンダとの間のデータ読取り又は書込みの誤りを引起こす可能性を無くすることによって、コントローラと特定のトランスポンダとの間の通信がより確実になる。他の実施例においては、ここで開示されたシステム及び方法は、それぞれが固有の共通ID番号又はそれらの応用におけるID番号部を持つ複数のトランスポンダの選ばれたサブセットと通信するために利用することができる。このシステム及び方法においては、例えば、トランスポンダの選択されたグループに同時にデータを書込むことが望ましい。この後者の実施例は、所定のあて先に向けられた手荷物に付けられた全てのトランスポンダに、同じあて先情報が同時に書込まれる手荷物タグの応用において特に役に立つ。」(段落【0009】) ウ)「【0017】 【実施例】図1には、複数のトランスポンダ10又は「タグ」が、トランスポンダ10の選ばれたものからデータを読取り、また、そこにデータを書込む通信装置を有するコントローラ12又は「読取装置」と共に、示されている。」(段落【0017】) エ)「【0018】コントローラ12は、アンテナ20に連結されたFSK送信部16の動作を制御するマイクロプロセッサ14を有する。内蔵された不揮発性メモリアレイからデータを読取るか又はそこにデータを書込むための指令を、トランスポンダ10の選ばれたものに与えるために、コントローラ12は、例えば、FSK変調された125[KHz]信号をトランスポンダ10に送信する。さらに、FSK変調された125[KHz]信号は、トランスポンダ10の不揮発性メモリアレイ及び他の関連する論理ブロックのための内部電力を得るためにも用いられる。 【0019】トランスポンダ10の特定のものに向けられた指令に応じて、その特定のトランスポンダ10は、例えば、62.5[KHz]PSK変調された信号によって、構成データ又は不揮発性メモリアレイ内に格納されたデータを用いて応答する。この62.5[KHz]信号は、アンテナ20によって受信され、PSK受信部18によってマイクロプロセッサ14に伝えられる。図示されるように、コントローラ12は、RS-232又はウィーガンド(Wiegand)インタフェースによって、ホストコンピュータ22に接続される。」(段落【0018】及び【0019】) オ)「【0020】もしコントローラ12から送信されるFSK変調された信号の有効範囲内に一つのトランスポンダ10だけがあるならば、どのトランスポンダ10がコントローラ12からの指令に応答しており、又は、どのトランスポンダ10がコントローラ12と通信しようとしているのか混同することはない。しかし、もしコントローラ12の共通RFフィールド内に複数のトランスポンダ10があるならば、コントローラ12は、2つのトランスポンダ10が同時にコントローラ12と通信しようとする可能性を無くして、データ劣化の可能性を生じさせる相互送信を防ぐために、それぞれのトランスポンダ10を個々に確実に選び出すことができなければならない。」(段落【0020】) カ)「【0021】本発明の具体的な実施例によれば、トランスポンダ10のそれぞれは、内部にプログラムされた固有の2値ID(識別)番号を有する。例えば、「タグX」は“010”という固有のID番号を持ち、「タグY」は“011”という固有のID番号を持ち、「タグZ」は“110”という固有のID番号を持つ。固有のnビットのアドレスは、8,16,32等のいかなるビット数をも含むことができる。以下に、より完全に説明される処理によれば、トランスポンダ10は、コントローラ12から一連の指令/問合せを受信し、この指令/問合せに対して応答するか、又は、応答せずにトランスポンダ自身をリセットさせる。トランスポンダ10は、複数のトランスポンダ10が偶然に応答した場合に、コントローラ12が少なくとも一つのトランスポンダ10が応答したことを認識することができるように、コントローラ12に対して応答する。個々の応答のために、コントローラ12は、何台のトランスポンダ10が応答したかを判断することを要求されない。根本的には、コントローラ12は、トランスポンダの固有のID番号に基づいてトランスポンダ10の個々のものを選び出す一連の指令を送信する。コントローラ12が送信できる4つの指令は、以下の通りである。 【0022】リセット0 RFフィールド内にある全てのトランスポンダ10をリセットし、トランスポンダの固有のID番号の最初のビットとして“0”を持つかについて全てのトランスポンダ10に問合せる。 【0023】ビット0 RFフィールド内にある全てのトランスポンダ10に、トランスポンダの固有のID番号の現在のビットとして“0”を持つかについて問合せる。 【0024】ビット1 トランスポンダ10に、トランスポンダの固有のID番号の現在のビットとして“1”を持つかについて問合せる。 【0025】ファウンド(見つけ出された) コントローラ12から、共通RFフィールド内のトランスポンダ10に、トランスポンダ10の適切なものが見つけ出されたという指令である。 【0026】以下の典型的な実施例に関しては、リセット0指令は“00”に対応し、ビット0指令は“01”に対応し、ビット1指令は“10”に対応し、ファウンド指令は“11”に対応する。」(段落【0021】ないし【0026】) キ)「【0027】以下の表1?8には、コントローラ12から複数のトランスポンダ10に送信される一連の指令が、「リセット0」で始まり「ファウンド」指令で終っていることが示されている。固有のID番号におけるそれぞれの現在のビット位置に対応する「ビット0」指令及び「ビット1」指令の特定の送信を挟むことによって、トランスポンダ10の特定のものの身元は固有のID番号に基づいて判断することができる。それゆえ、表3に示される指令シーケンスは、示された指令シーケンスに対する適当な応答によって、例えば、「タグX」を見分け、同時に、同じID番号を持たず、偶然にコントローラ12のRFフィールド内にある全ての他のトランスポンダ10をリセットさせるであろう。同様に、表4は、「タグY」を見分けるための指令シーケンスを示し、また、表7は、リセット0指令がコントローラ12によって再び送信されるまでリセット状態に入る全ての他のトランスポンダ10から「タグZ」を見分けるために必要な対応する「リセット0」指令と、「ビット0」指令と、「ビット1」指令と、「ファウンド」指令とを示す。 【0028】 【表1】 ・・・(略)・・・ 【0029】 ※ ※【表2】 ・・・(略)・・・ 【0030】 【表3】 ・・・(略)・・・ 【0031】 * *【表4】 ・・・(略)・・・ 【0032】 ※30※【表5】 ・・・(略)・・・ 【0033】 【表6】 ・・・(略)・・・ 【0034】 * *【表7】 ・・・(略)・・・ 【0035】 ※ ※【表8】 ・・・(略)・・・」(段落【0027】ないし【0035】) ク)「【0042】さらに、図2には、コントローラ12の共通の電場内にある複数のトランスポンダ10の選ばれたものとの通信を開始させるための論理フロー100が示されており、このコントローラ12はトランスポンダ10の特定のものを順に見分ける。論理フロー100は、リセットカウントを0にセットするリセットステップ102で始まる。リセット0送信ステップ104において、コントローラ12は共通RFフィールド内の全てのトランスポンダ10に“00”を送信する。判断ステップ106において、コントローラ12は1台以上のトランスポンダ10がリセット0指令に応答したか否かを判断する。もし1台以上のトランスポンダ10からの応答が検出されたならば、論理フロー100は、以下に、より完全に説明されるように、増加カウントステップ112に進む。 【0043】もしリセット0指令に対する応答が検出されなければ、コントローラ12のファームウエアは、ビット1送信ステップ108において、“10”が送信されることを命じる。その後、判断ステップ110において、コントローラ12は、ビット1指令に対する応答が検出されたか否かを判断する。もし応答が検出されなければ、論理フロー100はリセットステップ102に戻る。代わりに、もしビット1指令に対する応答が検出されるならば、カウントは、増加カウントステップ112において、1だけ増加する。 【0044】増加カウントステップ112に続いて、ビット0送信ステップ114において、コントローラ12は、“01”を送信する。その後、コントローラ12は、判断ステップ116において、応答があったか否かを知るために、RFフィールド内のトランスポンダ10を監視する。もし判断ステップ116において応答が検出されなかったなら、ビット1送信ステップ118において、コントローラ12は、“10”を送信する。もし判断ステップ116又は判断ステップ120においてトランスポンダ10からの応答が検出されたなら、最終のカウント判断ステップ122において、カウントが、{(固有のIDビット数)-1}に等しい「31」、即ち、2^(5)-1の値に等しくなったか否かが判断される。もし最終のカウント判断ステップ122において、「31」の最終カウントに到達しなかったなら、論理フロー100は、増加カウントステップ112に戻る。もしカウント値が「31」に等しければ、送信ステップ124において、指令「ファウンド」又は“11”がRFフィールド内のトランスポンダ10の全てに送信される。そして、ファウンドタグステップ126に到達する。もし判断ステップ120において、トランスポンダ10からの応答が検出されなければ、論理フロー100は、図示されるように、リセットステップ102に戻る。」(段落【0042】ないし【0044】) ケ)「【0048】図4には、トランスポンダの論理フロー130が示されている。トランスポンダの論理フロー130は、カウント値を0にリセットするリセットステップ132で始まる。その後、判断ステップ134において、リセット0指令(“00”)が受信されたかについて判断がなされる。もしリセット0指令が受信されたなら、トランスポンダの論理フロー130は判断ステップ136に進む。しかし、もしリセット0が受信されず、代わりにビット0(“01”)、ビット1(“10”)、又はファウンド(“11”)の一つが検出されたなら、その後、処理はリセットステップ132に戻る。判断ステップ136において、もしビット[カウント]値が0に等しければ、その後、トランスポンダの論理フロー130は応答ステップ138に進む。もしビット[カウント]値が0に等しくなければ、その後、判断ステップ146において、ビット1指令が受信されたか否かの判断がなされる。もしビット1指令が受信されたなら、トランスポンダ論理フロー130は、応答ステップ138に進む。また、もし他の指令が受信されたなら、トランスポンダの論理フロー130はリセットステップ132に戻る。 【0049】最終カウントの判断ステップ140においては、「31」の最終カウントが内部カウンタに到達したかを判断する。もし最終カウントに到達したなら、その後、トランスポンダの論理フロー130は、判断ステップ148に進む。ここで、もし“11”が受信されたなら、ファウンドタグステップ150において適当なトランスポンダ10が決定される。代わりに、もし“00”、“01”、又は、“10”が受信されたなら、判断ステップ148の後にリセットステップ132が続く。もし最終カウントの判断ステップ140において最終カウントに到達したなかったら、その後、判断ステップ142において、トランスポンダ10は“ビット0”指令が受信されたかを判断し、もしされたなら、その後、トランスポンダの論理フロー130は、カウント値が1だけ増加する増加カウントステップ144に進む。また、もしビット0指令以外の指令が受信されたなら、トランスポンダの論理フロー130はリセットステップ132に戻る。 【0050】先に述べた図に関しては、コントローラ12は、コントローラ12の有効RFフィールド内のトランスポンダ10の全てをリセットさせるリセット0(“00”)指令を最初に送信する。トランスポンダの固有のID番号の最初のビット位置に“0”を持つトランスポンダ10の全てが、コントローラ12に応答する。その後、コントローラ12は、リセット0指令に対する応答を受信したか否かに基づいて、2つの二者択一のコースの動作に着手し始める。もしコントローラ12が応答を検出したなら、コントローラは内部カウンタを増加させ、ビット0(“01”)指令を送信する。他方、もしコントローラ12が応答を受信しなかったら、コントローラはビット1(“10”)指令を送信する。 【0051】第2の指令を受信すると、個々のトランスポンダ10はそれぞれ、どの指令が受信されたかによって選ばれた方法によって反応する。もしトランスポンダ10が、最初のビット位置において“1”を持ち、トランスポンダがビット0指令を受信するのであれば、トラスポンダは自身をリセットする。また、もしトランスポンダ10が最初のビット位置において“1”を持ち、ビット1指令を受信するなら、トランスポンダは応答し、内部カウンタを増加させる。もしトランスポンダ10が最初のビット位置に“0”を持ち、ビット0指令を受信するなら、もし固有のID番号の2番目のビットに“0”を持つなら、トランスポンダは応答する。 【0052】それゆえ、それぞれのトランスポンダ10は、トランスポンダに固有のID番号のディジタル値及びコントローラ12から受信された指令シーケンスに基づいて応答する。指令の正しいシーケンスを受信しなかった全てのトランスポンダ10は、通信シーケンスの間にそれら自身をリセットし、リセット0指令が送信されるまでコントローラ12からのさらなる指令に応答しない。このように、ただ一つのトランスポンダ10のみが、最初の通信中に自身をリセットしない。このトランスポンダ10は、共通RFフィールド内に存在することもある他のトランスポンダ10からの干渉なしに通信することができる。加えて、もしコントローラ12が、特定の固有のID番号を持つ特定のトランスポンダ10を選び出したいのであれば、それは所望の固有のID番号に基づく特定の指令シーケンスを送り、適当な回数それが応答を受信することを確認する必要のみがある。他の全てのトランスポンダ10は、送信された指令の結果として、それら自身をリセットする。」(段落【0048】ないし【0052】) コ)「【0056】以上において、特定の装置及び方法に関して本発明の原理が説明されたが、前述の説明は一例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことは明確に理解される。特に、本発明の原理は、固有のID番号を持つただ一つのトランスポンダを持つ選択されたサブセットのトランスポンダ、又は、固有の共通ID番号又はID番号セグメントを持つ多数のサブセットのトランスポンダを持つ通信の開始に適用できる。」(段落【0056】) サ)「【図面の簡単な説明】 【図1】 関連するRFコントローラ(又は「読取装置」)の電力を供給する電磁場内に入れられた複数の受動RF/IDトランスポンダ(又は「タグ」)の簡略化された代表的な図である。このRFコントローラによる125[KHz]FSK変調された信号によって、固有のアドレスに基づいて、トランスポンダの特定のものに、指令を向けることができる。適当なトランスポンダは、PSK変調された62.5[KHz]信号によって応答するが、残りのトランスポンダはリセット状態になる。 【図2】 例えば、所定のシーケンスにおいて所定の指令を送信し、共通RFフィールド内の複数のトランスポンダからコントローラへの応答を監視するコントローラのマイクロプロセッサのファームウエアの論理フロー図である。共通RFフィールドは、固有のID番号又はアドレスに基づく特定の標的トランスポンダとの通信を開始するために用いることができる。 【図3】・・・(略)・・・ 【図4】 トランスポンダに固有のID番号に基づいて複数のトランスポンダの中の特定のものを見分け、同時にコントローラのRFフィールド内の他のトランスポンダをリセット状態にする図2又は図3のコントローラの論理フローに関連して役に立つトランスポンダの制御ロジック又は限定された状態の装置のための論理フロー図である。 【図5】・・・(略)・・・ 【符号の説明】 10 トランスポンダ、 12 コントローラ、 14 マイクロプロセッサ、 16 FSK変調器、 18 PSK変調器、 20 アンテナ、 22ホストコンピュータ。」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】) 上記ア)ないしサ)及び図面の記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下、単に「引用刊行物に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。 「複数のトランスポンダ10と、 コントローラ12とを備え、 少なくとも1つのトランスポンダ10は、複数の指令の受信のうちの1つの間に、前記コントローラ12に応答するように設定されており、前記コントローラ12は、2つ以上のトランスポンダ10が同時に応答して、互いに干渉し合うのを防ぐために、前記トランスポンダ10の複数読取りを実行するように設定されており、 各トランスポンダ10は、複数のビットからなる固有のID番号により識別され、 トランスポンダ10は、リセット0指令に対する応答の間には、前記複数のビットからなる固有のID番号の最初のビットで、第2の指令に対する応答の間には、前記複数のビットからなる固有のID番号の2番目のビットで、前記コントローラ12に応答するように設定されており、 前記複数のビットからなる固有のID番号の前記最初のビットは、前記複数のビットからなる固有のID番号の前記2番目のビットよりも前記複数のビットからなる固有のID番号における異なるビット位置に対応し、前記複数のビットからなる固有のID番号の前記最初のビットのビットの数は、前記複数のビットからなる固有のID番号のビットの数よりも少ないRF/IDタグ通信システム。」 (2)対比 本願補正発明と引用刊行物に記載された発明とを対比するに、引用刊行物に記載された発明における「トランスポンダ10」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「電波識別(RFID)タグ(102)」、「RFIDタグ」、「RFIDタグ(102)」及び「タグ(102)」に相当し、以下同様に、「コントローラ12」は「タグ読取り装置(104)」に、「複数の指令の受信のうちの1つの間」は「複数のタイムスロットのうちの1つの間」に、「2つ以上のトランスポンダ10が同時に応答」は「2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答」に、「互いに干渉し合うのを防ぐ」は「タイムスロット競合を避ける」に、「複数のビットからなる固有のID番号」は「複数のビット」に、「リセット0指令に対する応答の間」は「第1の読取りの間」に、「最初のビット」は「第1のサブセット」に、「第2の指令に対する応答の間」は「第2の読取りの間」に、「2番目のビット」は「第2のサブセット」に、それぞれ相当する。 また、引用刊行物1に記載された発明における「RF/IDタグ通信システム」は、「システム」という限りにおいて、本願補正発明における「在庫システム」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用刊行物に記載された発明とは、 「複数の電波識別(RFID)タグと、 タグ読取り装置とを備え、 少なくとも1つのRFIDタグは、複数のタイムスロットのうちの1つの間に、前記タグ読取り装置に応答するように設定されており、前記タグ読取り装置は、2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答して、タイムスロット競合を避けるために、前記RFIDタグの複数読取りを実行するように設定されており、 各タグは、複数のビットにより識別され、 タグは、第1の読取りの間には、前記複数のビットの第1のサブセットで、第2の読取りの間には、前記複数のビットの第2のサブセットで、前記タグ読取り装置に応答するように設定されており、 前記複数のビットの前記第1のサブセットは、前記複数のビットの前記第2のサブセットよりも前記複数のビットにおける異なるビット位置に対応し、前記複数のビットの前記第1のサブセットのビットの数は、前記複数のビットのビットの数よりも少ないシステム。」 である点で一致し、次の各点で相違している。 <相違点1> 「タグ読取り装置」が、「2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答するとき」に、「タイムスロット競合を避けるために、RFIDタグの複数読取りを実行する」について、本願補正発明においては、「2つ以上のRFIDタグが同一のタイムスロットの間に応答して、『タイムスロット競合を起こしているとき』」としているのに対し、引用刊行物に記載された発明においては、その点が明確でない点(以下、単に「相違点1」という。)。 <相違点2> 本願補正発明は、「在庫システム」の発明であるのに対し、引用刊行物に記載された発明は、「RF/IDタグ通信システム」の発明である点(以下、単に「相違点2」という。)。 (3)当審の判断 上記各相違点について検討する。 <相違点1について> 引用刊行物に記載された発明は、「コントローラ12[タグ読取り装置(104)]は、2つ以上のトランスポンダ10[RFIDタグ]が同時[同一のタイムスロットの間]に応答して、『互いに干渉し合うのを防ぐために[タイムスロット競合を避けるために]』、前記トランスポンダ10[RFIDタグ(102)]の複数読取りを実行するように設定されて」いる以上、このようなRFIDタグの複数読取りを、実際に「タイムスロット競合を起こしている」ときにおいても実行するようにして、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば格別困難なく想到し得るものである。 <相違点2について> 「複数の電波識別(RFID)タグと、タグ読取り装置とを備えた在庫システム。」は周知の技術(例えば、米国特許第5591951号明細書(1997年1月7日公開。)を参照。以下、単に「周知技術」という。)である。 そうすると、「RF/IDタグ通信システム」の発明である引用刊行物に記載された発明を、同種の「複数の電波識別(RFID)タグと、タグ読取り装置とを備えた」「在庫システム」に関する周知技術において適用することにより上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば格別困難なく想到し得るものである。 そして、本願補正発明を全体として検討しても、引用刊行物に記載された発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 (4)以上のように、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 [3]本願発明について 1.手続の経緯および本願発明 平成21年6月4日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし37に係る発明は、平成20年8月18日付けの手続補正書により補正された特許法第184条の6第2項の規定により同法第36条第2項の規定により願書に添付して提出した明細書とみなされる同法第184条の4第1項の規定による明細書の翻訳文並びに同法第184条の6第1項の規定により同法第36条第1項の規定により提出した本件出願の願書とみなされる国際特許出願に係る国際出願日における願書に最初に添付した図面(図面の中の説明を除く。)及び同法第184条の4第1項の規定による図面の中の説明の翻訳文の記載からみて、平成20年8月18日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし38に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、前記[2]の〔理由〕1.(1)のa)に記載したとおりのものである。 2.引用刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用刊行物に記載された発明は、前記[2]の〔理由〕2.(1)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記[2]の〔理由〕1.(1)及び(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記[2]の〔理由〕2.(1)ないし(3)に記載したとおり、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-09-03 |
結審通知日 | 2010-09-10 |
審決日 | 2010-09-22 |
出願番号 | 特願2000-521687(P2000-521687) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 見目 省二 |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
河端 賢 小谷 一郎 |
発明の名称 | 電子在庫管理のためのシステムと方法 |
代理人 | 阿部 和夫 |
復代理人 | 市原 政喜 |
代理人 | 谷 義一 |
復代理人 | 濱中 淳宏 |